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特開2023-56364フランジ接合装置及びフランジの接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056364
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】フランジ接合装置及びフランジの接合方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/036 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
F16L23/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165671
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】東海林 卓也
【テーマコード(参考)】
3H016
【Fターム(参考)】
3H016AC01
3H016AC04
3H016AD05
3H016AE02
(57)【要約】
【課題】既存の密封部材に対して押圧による過度な負荷をかけることなく、一対のフランジ間の距離を適正に保つことができるフランジ接合装置及びフランジの接合方法を提供する。
【解決手段】一方の管路構成部材1におけるフランジ1aと、他方の管路構成部材1’におけるフランジ1a’との接合を補強するフランジ接合装置10であって、フランジ1a,1a’の貫通孔1b,1b’に挿通されて締結される締結具31と、それぞれのフランジ1a,1a’の外側に延び、締結具31に追従する連結部11,21と、連結部11,21同士を固定する固定手段41,42と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管路構成部材におけるフランジと、他方の管路構成部材におけるフランジとの接合を補強するフランジ接合装置であって、
前記フランジの貫通孔に挿通されて締結される締結具と、
それぞれの前記フランジの外側に延び、前記締結具に追従する連結部と、
前記連結部同士を固定する固定手段と、を備えることを特徴とするフランジ接合装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記フランジの軸方向にさらに延びており、
前記連結部同士は、適正位置で固定可能になっていることを特徴とする請求項1に記載のフランジ接合装置。
【請求項3】
少なくとも一方の前記連結部は、前記フランジの軸方向に延びる長孔を有し、
前記連結部同士は、前記長孔を介して前記固定手段としてのボルトナットにより固定されることを特徴とする請求項1または2に記載のフランジ接合装置。
【請求項4】
一方の前記連結部は、他方の前記連結部により挟持可能となっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフランジ接合装置。
【請求項5】
前記一方の連結部と、前記他方の連結部との当接領域に、高摩擦領域が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のフランジ接合装置。
【請求項6】
一方の管路構成部材におけるフランジと、他方の管路構成部材におけるフランジとの接合を補強するフランジ接合装置による一対のフランジの接合方法であって、
既設のボルトナットを取り外す工程と、
前記フランジの貫通孔に、前記フランジの外側に延びる連結部を介して締結具を挿通する工程と、
前記締結具の締結作業を開始し、前記連結部同士を相対的に近接させる工程と、
前記締結作業の終了後に、前記連結部同士を固定手段により固定する工程と、を含むことを特徴とするフランジ接合装置による一対のフランジの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管同士のフランジに装着するフランジ接合装置及びフランジの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる管路を構成する管路構成部材には、隣接する管路構成部材の間に密封部材を配置し、対向配置される一対のフランジをボルトナットにより接合することで、連結されるものが知られている。
【0003】
このような管路構成部材同士の接続箇所においては、長期間の使用により管路構成部材そのものの劣化、ボルトナットによる接合の弛み等が生じる場合がある。そのため、既設のボルトナットを新規のボルトナットに更新する保全措置が行われる。この保全措置において、一対のフランジの接合を補強するために、フランジ接合装置が用いられる場合もある。
【0004】
例えば、特許文献1のフランジ接合装置は、対向配置される一対のフランジそれぞれの貫通孔に挿通されて締結される新規のボルトナットと、隣り合うボルトナットの間に配置されて一対のフランジを締結する補強具と、から構成されている。補強具は、各フランジよりも外径側に設けられた締結具を増し締めすることで、一対のフランジを挟圧可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-101289号公報(第8,9頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1のフランジ接合装置にあっては、フランジの周方向において、新規のボルトナットによって一対のフランジを接合することに加え、補強具によっても一対のフランジを接合することができる。これにより、一対のフランジの接合部分に作用する力が新規のボルト及び補強具に分散されるため、一対のフランジ間の距離が適正に保たれやすくなっている。
【0007】
ところで、新規のボルトナット及び補強具を用いてフランジを接合するにあたっては、一対のフランジに作用するそれぞれの締め付けトルクを所定の値に揃える必要がある。そのためには、まず既設のボルトナットを新規のボルトナットに取り換え、新規のボルトナットの締め付けトルクを所定の値に到達させる。続けて補強具を配置し、その締め付けトルクを所定の値に到達させる。
【0008】
このように、予め締結が想定されている新規のボルトナットとは別に補強具による締結が加わることで、一対のフランジにおいて、補強具の締め付けトルクが隣接する新規のボルトナット周辺の領域に作用する。これにより、当該ボルトナットの締め付けトルクが低下するため、再び締め付けトルクを所定の値に到達させる必要がある。すなわち、所定のボルトナット及び補強具それぞれの締め付けトルクが所定の値に揃うまで、新規のボルトの増し締めと、補強具の増し締めを交互に繰り返し行う必要がある。
【0009】
しかしながら、密封部材は、経年劣化により密封部材に硬化、亀裂等が生じている場合があり、特許文献1のフランジ接合装置のように増し締めを繰り返すことで、密封部材が過度に押圧され、密封部材の破断、粉状化等が生じて、流体漏洩のさらなる原因となる虞があった。
【0010】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、既存の密封部材に対して押圧による過度な負荷をかけることなく、一対のフランジ間の距離を適正に保つことができるフランジ接合装置及びフランジの接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明のフランジ接合装置は、
一方の管路構成部材におけるフランジと、他方の管路構成部材におけるフランジとの接合を補強するフランジ接合装置であって、
前記フランジの貫通孔に挿通されて締結される締結具と、
それぞれの前記フランジの外側に延び、前記締結具に追従する連結部と、
前記連結部同士を固定する固定手段と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、締結具による締結作業が完了した位置で、連結部同士を固定することにより、締結具による締め付けトルクで一対のフランジが固定されるため、既存の密封部材に対して押圧による過度な負荷をかけることなく、一対のフランジ間が連結部同士の固定によって適正な距離が維持され、一対のフランジの補強状態が確保される。
【0012】
前記連結部は、前記フランジの軸方向にさらに延びており、
前記連結部同士は、適正位置で固定可能になっていることを特徴としている。
この特徴によれば、締結具により締結が完了した適正位置で連結部同士が固定されるため、一対のフランジ間の適正な距離を確実に維持することができる。
【0013】
少なくとも一方の前記連結部は、前記フランジの軸方向に延びる長孔を有し、
前記連結部同士は、前記長孔を介して前記固定手段としてのボルトナットにより固定されることを特徴としている。
この特徴によれば、長孔に沿って移動するボルトナットによって連結部同士の相対移動が案内されることに加え、ボルトが停止した位置で連結部同士を固定することができるため、適正位置で連結部同士を容易に固定することができる。
【0014】
一方の前記連結部は、他方の前記連結部により挟持可能となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、一方の連結部が他方の連結部に対して相対的に回動することが規制されるため、締結具による締結が容易である。
【0015】
前記一方の連結部と、前記他方の連結部との当接領域に、高摩擦領域が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、固定手段によって固定された連結部同士の相対的な移動を抑止することができる。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明のフランジ接合装置は、
一方の管路構成部材におけるフランジと、他方の管路構成部材におけるフランジとの接合を補強するフランジ接合装置による一対のフランジの接合方法であって、
既設のボルトナットを取り外す工程と、
前記フランジの貫通孔に、前記フランジの外側に延びる連結部を介して締結具を挿通する工程と、
前記締結具の締結作業を開始し、前記連結部同士を相対的に近接させる工程と、
前記締結作業の終了後に、前記連結部同士を固定手段により固定する工程と、を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、締結具による締結の完了した位置で、連結部同士を固定することにより、締結具による締め付けトルクで一対のフランジが固定されるため、既存の密封部材に対して押圧による過度な負荷をかけることなく、一対のフランジ間が連結部同士の固定によって適正な距離が維持され、一対のフランジの補強状態が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1における管路構成部材のフランジ同士を既設のボルトナットで接合している様子を示す正面図である。
図2】管路構成部材のフランジ同士を接合しているフランジ接合装置を示す正面図である。
図3】(a)は、管路構成部材のフランジ同士を接合しているフランジ接合装置を示す平面図であり、(b)は、管路構成部材のフランジ同士を接合しているフランジ接合装置を示す底面図である。
図4】フランジ接合装置を構成する1つのフランジ接合ユニットの分解斜視図である。
図5】(a),(b)は、フランジ接合装置の取り付けを説明するための一部破断側面図である。
図6】(a),(b)は、フランジ接合装置の取り付けを説明するための正面図である。
図7】フランジ接合装置の取り付けを説明するための正面図である。
図8】変形例1におけるフランジ接合装置の一部破断側面図である。
図9】実施例2におけるフランジ接合装置を示す平面図である。
図10】実施例2におけるフランジ接合装置を示す正面図である。
図11】実施例3におけるフランジ接合装置を示す平面図である。
図12】実施例3におけるフランジ接合装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るフランジ接合装置及びフランジの接合方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0019】
実施例1に係るフランジ接合装置につき、図1から図8を参照して説明する。図1を参照して、地中に埋設される流体管路は、複数の流体管1,1’,…を互いに接続することにより構成されている。なお、流体管1,1’内の流体は、例えば、上水や工業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。また、一方又は両方の管路構成部材は、流体管に限らず、補修弁等の構造部材であってもよく、その他バルブや継手などであってもよい。
【0020】
流体管1,1’は、ダクタイル鋳鉄管であって、断面視略円筒状に形成されている。なお、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらになお、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0021】
流体管1,1’は、端部に管軸に対して直交する径方向に張り出す円形のフランジ1a,1a’をそれぞれ有している。また、フランジ1a,1a’には、その軸方向と略平行に貫通する貫通孔1bまたは貫通孔1bが’周方向に4等配されている。また、フランジ1aは、フランジ1a’に対向配置される端部に、流体管1の管軸方向に沿ってわずかに突出している環状突出部が形成されている、いわゆるRF(Raised Face)フランジである。これは、フランジ1a’についても同様である。
【0022】
流体管1,1’は、互いの環状突出部の間に弾性を有するガスケットP(密封部材)を介在させた状態でフランジ1a,1a’の貫通孔1b,1b’に接続ボルト2aを挿通し、接続ボルト2aにナット2bを取り付け、接続ボルト2a及びナット2bによってフランジ1a,1a’を締め付けることで接続されている。
【0023】
このような流体管1,1’の接続態様にあっては、ガスケットPの弾性変形により生じる復元力、流体管1,1’内の流体の圧力、地震等の不測の外力、老朽化による錆の発生等により、複数の接続ボルト2a及びナット2bに弛みや劣化が生じる場合がある。そのため、所定期間以上が経過することで、既設の接続ボルト2a及びナット2bを新規の接続ボルト及びナットに取り換える保全措置が必要となってくる。
【0024】
図2及び図3に示されるように、本発明のフランジ接合装置10は、新規の接続ボルト及びナットの替りにフランジ1a,1a’を接合するために取り付けられるものである。以降、フランジ接合装置10について説明する。
【0025】
図2及び図3に示されるように、フランジ接合装置10は、本実施例では一対のフランジ1a,1a’に対して周方向に4等配されているフランジ接合ユニット10A,10B,10C,10Dから構成されている。なお、各フランジ接合ユニット10A~10Dは、図3において、12時方向にあるものがフランジ接合ユニット10C、3時方向にあるものがフランジ接合ユニット10B、6時方向にあるものがフランジ接合ユニット10A、9時方向にあるものがフランジ接合ユニット10Dである。また、説明の便宜上異なる符号を付しているが、共に同一構成であるため、以下の説明においては、特に断らない限り、フランジ接合ユニット10Aを例に説明する。
【0026】
図2図4に示されるように、フランジ接合ユニット10Aは、流体管1のフランジ1a側に配置される第1補強具11(他方の連結部)と、流体管1’のフランジ1a’側に配置される第2補強具21(一方の連結部かつ締結具)と、第1補強具11及び第2補強具21を接合するための締結ボルト31(締結具)と、第1補強具11及び第2補強具21を固定するための固定ボルト41及びナット42(固定手段)と、から主に構成されており、第1補強具11、第2補強具21、固定ボルト41及びナット42により、一対のフランジ1a,1a’を側面視コ字状に外嵌している。
【0027】
第1補強具11は、フランジ1aの径方向に沿って配置される基部12と、フランジ1aの軸方向に沿って配置される連結部15と、を備えている。
【0028】
基部12は、平面視において平板状であって、フランジ面1dに面接触するように形成されている。また、基部12は、フランジ1aの内径側に配置される端部に、厚み方向に貫通する貫通孔12aが形成されている。また、貫通孔12aの外側には、締結ボルト31の頭部の一部を収容するためのザグリが形成されている。
【0029】
連結部15は、フランジ1aの外径側に配置される基部12の端部に略直交して延びる一対の連結片16,17にて構成されている。
【0030】
図4に示されるように、連結片16は、側面視において平板状に形成されている。また、連結片16には、長手方向中央から自由端側(流体管1’側)に延び、かつ厚み方向に貫通する長孔16aが形成されている。
【0031】
連結片17は、連結片16と同一形状に形成されており、長孔17aが形成されている。これら長孔16a,17aは、固定ボルト41の雄ネジ部41aを挿通可能に位置合わせがなされている。
【0032】
図2図3(b)に示されるように、第2補強具21は、フランジ1a’の径方向に沿って配置される基部22と、フランジ1a’の外周面1c’よりも外径側に配置される連結部25と、を備えている。
【0033】
図3(b)に示されるように、基部22は、平面視平板状であって、フランジ面1d’に面接触するように形成されている。また、基部22には、フランジ1aの内径側に配置される端部に、厚み方向に貫通する雌ネジ部22a(図4参照)が形成されている。雌ネジ部22aには、締結ボルト31の雄ネジ部31aを螺合可能となっている。すなわち、第2補強具21は、本発明の締結具の構成を一部兼ねている。
【0034】
図2に示されるように、連結部25は、側面視平板状であって、フランジ1a’よりも外径側に突出するように形成されている(図2におけるフランジ接合ユニット10B,10D参照)。また、連結部25は、平面視において、基部22の幅方向中央から、フランジ1a’の径方向に沿うように延びている(図3(b)参照)。また、連結部25は、第1補強具11における連結片16,17間に挿通可能に形成されている(図2におけるフランジ接合ユニット10B参照)。さらに、連結部25には、基部22の幅方向に貫通する貫通孔25aが形成されている。
【0035】
次に、フランジ接合装置10による一対のフランジ1a,1a’の接合方法について説明する。本説明を行うにあたって、図1に示されるように、フランジ1a,1a’は、各貫通孔1b,1b’を通じて取り付けられている既設の接続ボルト2a及びナット2bによって接合されているものとする。
【0036】
まず、図1図6を参照して、周方向に4等配されている接続ボルト2a及びナット2bのうち、図3における6時方向に位置する接続ボルト2a及びナット2bのみを取り外す。このとき、必要に応じて接続ボルト2a及びナット2bの近傍にシャコ万力等を取り付け、接続ボルト2a及びナット2bを取り外すことで失われる押圧力を補ってもよい。これは他の接続ボルト2a及びナット2bを取り外すにあたっても同様である。
【0037】
次いで、図5(a)に示されるように、接続ボルト2a及びナット2bを取り外した貫通孔1b,1b’に、第1補強具11の基部12の貫通孔12aに挿通させた締結ボルト31の雄ネジ部31aを挿通させる。
【0038】
次に、図6(a)に示されるように、第2補強具21の連結部25を、第1補強具11における連結片16,17間に挿通する。続けて、連結片16の長孔16a、連結部25の貫通孔25a、連結片17の長孔17aを通じて固定ボルト41の雄ネジ部41aを挿通し、雄ネジ部41aの先端にナット42の雌ネジ部42aを螺合させる。
【0039】
このとき、固定ボルト41及びナット42は、連結片16,17に対する増し締めがなされる前の状態にある。そのため、流体管1’側における連結片16,17の間の隙間は、第2補強具21の連結部25の幅よりもわずかに広くなっている。これにより、連結部25の移動に伴って過度な摩擦が生じにくくなっている。なお、図6(a)では、連結片16,17の間の隙間が下方に向けて漸次広がるように図示されているが、これに限られず、連結片16,17の間に第2補強具21の連結部25を挿入可能であればよく、例えば連結片16,17が略平行に形成されていてもよい。
【0040】
次いで、図5(a)に示されるように、第2補強具21の基部22の雌ネジ部22aに雄ネジ部31aを螺合し、締結作業を開始する。締結作業では、第1補強具11の回り止めをした状態で、例えばトルクレンチ(図示略)等の締結治具を用いて、図5(a)にて白抜き矢印で示すように、締め付けトルクが所定の値に到達するまで締結ボルト31を回転させる。この回転に応じて、図5(a)にて黒塗り矢印で示すように、第2補強具21が第1補強具11に対して近接方向に相対移動する。
【0041】
なお、第1補強具11の連結片16,17には、基部12がフランジ1a,1a’の径方向に沿って配置された状態で、外周面1c,1c’に当接するように径方向に延設されている平板状に形成されていてもよく、また外周面1c,1c’に当接するように突部等が形成されている等、締結作業において第1補強具11の回り止めを成すための回止部が設けられていてもよい。このような構成であれば、締結作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、回止部は、フランジ1a,1a’の外周面1c,1c’との接触箇所が弾性力を有するゴム板や樹脂材等の緩衝部材によって構成されていてもよい。このような構成であれば、回止部が接触することによりフランジ1a,1a’に傷が生じることを防止することができる。
【0043】
図6(a)を参照して、締結作業においては、第2補強具21の連結部25が第1補強具11における連結片16,17に挟まれていることから、締結ボルト31の回転により第2補強具21が共回りしようとしても、連結片16,17の少なくとも一方に当接する。すなわち、第2補強具21は第1補強具11に対して相対的に回動することが防止されている。
【0044】
これにより、別途第2補強具21の回り止めを行うことなく、第2補強具21を流体管1,1’の管軸方向に沿って移動させることができる。そのため、締結作業が容易である。
【0045】
図5(b)に示されるように、締結ボルト31及び第2補強具21の締め付けトルクが所定の締め付けトルクに到達することで、フランジ接合ユニット10Aの締付作業が終了する。
【0046】
次いで、フランジ接合ユニット10Aとはフランジ1a,1a’における径方向反対側、すなわち図3における12時方向に位置する接続ボルト2a及びナット2bのみを取り外す。そして、フランジ接合ユニット10Aと同様に、フランジ接合ユニット10Cの締付作業を行う。
【0047】
次いで、残り二組のうち、図3における3時方向に位置する接続ボルト2a及びナット2bのみを取り外し、フランジ接合ユニット10A,10Cと同様に、フランジ接合ユニット10Bの締付作業を行う。
【0048】
次いで、図3における9時方向に位置する接続ボルト2a及びナット2bのみを取り外し、フランジ接合ユニット10A,10B,10Cと同様に、フランジ接合ユニット10Dの締付作業を行う。
【0049】
すなわち、先に取り付けたフランジ接合ユニットに対して対角線上に位置する貫通孔1b,1b’に、次のフランジ接合ユニットを取り付けていく。これにより、例えば時計回り順にフランジ接合ユニットを取付ける構成と比較して、一対のフランジ1a,1a’同士の相対的な傾動、締め付けトルクの偏りが生じにくくなることから、略均一に各フランジ接合ユニットの締め付けトルクを所定の値に揃えやすくすることができる。なお、フランジ接合ユニット10A,10Cを取り付けた後、フランジ接合ユニット10Dを先に取り付けてもよい。
【0050】
そして、全てのフランジ接合ユニット10A,10B,10C,10Dの締結作業を行った後、再度トルクレンチにて締め付けトルクを確認する。このとき、フランジ接合ユニット10A~10Dにおいては、上述したように既設の接続ボルト2a及びナット2bと同様に、締結ボルト31及びナット32による締め付けトルクを所定の値に揃えるだけでよいため、特許文献1のフランジ接合装置のように、新規のボルトナットと補強具を併用し、交互に増し締めを行う構成と比較して、ガスケットPに対して過度な負荷をかけず、かつフランジ1a,1a’間を密封可能な適正位置でフランジ1a,1a’は接合される。
【0051】
次いで、フランジ接合ユニット10A~10Dにおいて、第1補強具11及び第2補強具21が適正位置に維持された状態で、図6(a)において白抜き矢印で示すように、固定ボルト41及びナット42を増し締めする。これにより、連結片16,17は、図6(a)において黒塗り矢印で示すように、固定ボルト41及びナット42によって挟圧されて互いに近接し、図6(b)に示されるように、第2補強具21の連結部25を挟圧・保持する。
【0052】
また、第1補強具11の連結片16,17は、互いに対抗する端面16b,17bが、微細な凹凸が形成されている高摩擦領域となっている。また、第2補強具21における連結部25は、端面16b,17bに対向するそれぞれの端面25b,25cが、微細な凹凸が形成されている高摩擦領域となっている。これにより、固定ボルト41及びナット42によって固定された連結片16,17及び連結部25同士の相対的な移動を抑止することができる。なお、高摩擦領域は、微細な凹凸に限らず、粘着剤、接着剤等であってもよく、適宜変更されてもよい。また、高摩擦領域は、設けられていなくともよい。
【0053】
さらに、図7に示されるように、第1補強具11の連結片16,17及び第2補強具21の連結部25は、溶接により結合された矩形状の黒塗りで示す溶接結合部W(固定手段)により固定される。これにより、フランジ1a,1a’の適正位置で、第1補強具11及び第2補強具21を確実に固定することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施例のフランジ接合装置10は、締結ボルト31及び第2補強具21による締結作業が完了した位置で、第1補強具11及び第2補強具21同士を固定することにより、締結ボルト31及び第2補強具21による締め付けトルクで一対のフランジ1a,1a’が固定されるため、既存のガスケットPに対して押圧による過度な負荷をかけることなく、一対のフランジ1a,1a’間が第1補強具11及び第2補強具21同士の固定によって適正な距離が維持され、一対のフランジ1a,1a’の補強状態が確保される。
【0055】
また、特許文献1のフランジ接合装置のように、新規のボルトナットと補強具を併用し、交互に増し締めを行う構成と比較して、新規のボルトナットだけで締結する場合と同様に、締結ボルト31及び第2補強具21を締結するだけでよく、さらに第1補強具11及び第2補強具21同士がフランジ1a,1a’の適正距離で固定されることから、既設のガスケットPに対して押圧による過度な負荷が及ぶことを防止することができる。
【0056】
また、フランジ接合装置10の締結完了後、一対のフランジ1a,1a’の接合部分に外力が作用した場合に、締結ボルト31及び第2補強具21の締結によって接合を維持するばかりでなく、これら締結ボルト31及び第2補強具21の適正な締結位置を、第1補強具11及び第2補強具21によって外力に抗して維持するため、単に既設の接続ボルト2a及びナット2bでフランジ1a,1a’を接合した場合と比較して、フランジ1a,1a’の接合は補強されている。
【0057】
また、固定ボルト41及びナット42は、連結片16,17の長孔16a,17aに沿って無段階に移動可能であることから、締結ボルト31及び第2補強具21により締結が完了した適正位置で第1補強具11及び第2補強具21同士が固定されるため、一対のフランジ1a,1a’間の適正な距離を確実に維持することができる。
【0058】
また、第2補強具21は、第1補強具11によって回り止めがなされていることから、接続ボルト2a及びナット2bで締結した場合と比較して、締結ボルト31及び第2補強具21は弛みにくくなっている。
【0059】
また、第2補強具21は、基部22と連結部25との面方向が交差するように設けられていることから、基部22に雌ネジ部22aを形成可能な領域を確保しつつ、連結部25を挟持するための第1補強具11の連結片16,17間の寸法を狭くすることができる。これにより、フランジ接合装置10をコンパクトに構成することができる。
【0060】
なお、図8に示される変形例のフランジ接合ユニット110Aのように、第2補強具121には、ボルト131の雄ネジ部131aを挿通可能な貫通孔122aが形成されており、貫通孔122aに挿通された雄ネジ部131aにナット132(締結具)が螺合される構成であってもよい。
【実施例0061】
次に、実施例2に係るフランジ接合装置につき、図9及び図10を参照して説明する。なお、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0062】
図9及び図10に示されるように、フランジ接合装置410は、フランジ接合ユニット410A~410Dによって構成されている。これらのフランジ接合ユニット410A~410Dは、共に同一構成である。
【0063】
第1補強具411は、基部412と、図9において基部412より時計回り方向に延びる第1延出部13と、図9において基部412より反時計回り方向に延びる第2延出部14と、連結部415と、を備えている。
【0064】
第1延出部13は、フランジ1aの外周面1cに沿って湾曲しながら延びる平板状である。第2延出部14は、第1延出部13に対して周方向に対称形状に形成されている。
【0065】
第2補強具421は、基部422と、連結部425と、を備え、さらに第1補強具411と同様に、第1延出部23と、第2延出部24と、連結部425と、を備えている。なお、第1延出部23は、第1補強具411の第1延出部13に対向配置され、第2延出部24は、第1補強具411の第2延出部14に対向配置される。
【0066】
これにより、フランジ接合装置410は、締結ボルト31及び第2補強具421の締結作用と同時に各延出部13,14,23,24がフランジ面1d,1d’に当接し、締結ボルト31及び第2補強具421による締め付けトルクが、締結ボルト31及び第2補強具421の基部422の位置からフランジ1a,1a’の周方向に分散されるため、既存のガスケットPに対して押圧による過度な負荷をかけずに、一対のフランジ1a,1a’に広い領域に亘って安定した押圧力を与えることができる。
【0067】
また、延出部13,14は、基部412を境とする対称形状であり、周方向に略均等に延びていることから、例えば延出部13だけを有する構成や、延出部13,14の周方向の長さが異なっている構成と比較して、締結ボルト31及び第2補強具421による締め付けトルクが周方向両側に均等に分散されやすくなるため、締結ボルト31及び第2補強具421で延出部13,14をフランジ1a,1a’に対して押圧させる効率がよい。
【実施例0068】
次に、実施例3に係るフランジ接合装置につき、図11及び図12を参照して説明する。なお、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0069】
図11及び図12に示されるように、フランジ接合装置510は、フランジ接合ユニット510A~510Dによって構成されている。これらのフランジ接合ユニット510A~510Dは、共に同一構成である。
【0070】
第1補強具511は、基部512及び連結部515を有する連結部材518と、基部512A及び延出部13,14を有する板状の延出部材519と、から構成されている。また、第2補強具521は、基部522及び連結部525を有する連結部材528と、基部522A及び延出部23,24を有する板状の延出部材529と、から構成されている。
【0071】
フランジ接合ユニット510Aの取り付けについては、第1補強具511における連結部材518の基部512とフランジ1aとの間に延出部材519を配置し、締結ボルト531の雄ネジ部531aを各貫通孔512a,512Aa,1b,1b’に挿通させる。
【0072】
続けて、第2補強具521における延出部材529の貫通孔522Aaを通じて、締結ボルト531の雄ネジ部531aに延出部材529を外嵌させる。そして、雄ネジ部531aを第2補強具521における連結部材528の雌ネジ部522aに螺入させ、締結作業を開始する。
【0073】
その後、締結ボルト531及び第2補強具521における連結部材528の締結により、延出部材519,529がフランジ面1d,1d’に圧接される。このように、第1補強具及び第2補強具は、複数の部材から構成されていてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0075】
例えば、前記実施例では、フランジ接合装置は、既設の接続ボルト及びナットの交換にあたり用いられるとして説明したが、これに限られず、新規の管路構成部材を接続するにあたってフランジ接合装置を用いてもよく、既設の接続ボルト及びナットの交換に用いられることに限定されるものではない。
【0076】
また、フランジ接合装置は、一対のフランジの貫通孔に合わせてフランジ接合ユニットが4等配されている構成として説明したが、これに限られず、一対のフランジの貫通孔に合わせてその数は適宜変更されてもよい。また、等配されていなくともよい。
【0077】
また、前記実施例では、第1補強具の連結部は、フランジの軸方向に沿って延びている構成として説明したが、これに限られず、第2補強具の連結部がフランジの軸方向に沿って延びていてもよく、第1補強具の連結部及び第2補強具の連結部は、交差可能に傾斜して延びていてもよく、交差可能であればその形状は適宜変更されてもよい。
【0078】
また、前記実施例では、第1補強具及び第2補強具を、固定ボルト及びナットによって増し締めした後、溶接する構成として説明したが、これに限られず、固定ボルト及びナットだけで固定してもよく、溶接だけで固定してもよい。すなわち、固定手段による固定方法は適宜変更されてもよい。
【0079】
また、前記実施例では、第1補強具の連結部により、第2補強具の連結部を挟む構成として説明したが、これに限られず、挟んでいなくてもよい。このような構成であっても、例えば固定ボルト及びナットにより、第1補強具及び第2補強具を相対移動可能に連結することで、第1補強具に対する第2補強具の回り止めを成すことができる。さらに、第1補強具の連結部を弾性変形させる必要がなく、弾性変形しにくい剛体でよいため、構造強度を高めることができる。
【0080】
また、前記実施例では、各フランジは円形である構成として説明したが、これに限られず、多角形状であってもよく、円形に限定されるものではない。例えば、多角形状であれば、その外周面に沿って延出部が直線状に延びていてもよく、さらに延出部の途中に外周面に沿って形成された角を有していてもよい。すなわち、フランジの外周面に沿って形成されていればその形状は適宜変更されてもよい。
【0081】
また、前記実施例では、延出部は、基部より周方向両側に延びている構成として説明したが、これに限られず、周方向一方側にのみ延びている構成であってもよい。
【0082】
また、前記実施例では、一つの補強具において、周方向両側に延びる一対の延出部は、一体に形成されている構成として説明したが、これに限られず、周方向一方側に延びる延出部と、周方向他方側に延びる延出部とが別体であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,1’ 流体管(管路構成部材)
1a,1a’ フランジ
1b,1b’ 貫通孔
1c,1c’ 外周面
1d,1d’ フランジ面
2a 接続ボルト(既設のボルト)
2b ナット(既設のナット)
10 フランジ接合装置
11 第1補強具(連結部)
16a,17a 長孔
16b,17b 端面(高摩擦領域)
21 第2補強具(連結部,締結具)
25b,25c 端面(高摩擦領域)
31 締結ボルト(締結具)
41 固定ボルト(固定手段)
42 ナット(固定手段)
121 第2補強具
131 ボルト
131a 雄ネジ部
132 ナット(締結具)
410 フランジ接合装置
411 第1補強具(連結部)
421 第2補強具(連結部)
510 フランジ接合装置
518 連結部材(連結部)
528 連結部材(連結部,締結具)
531 締結ボルト(締結具)
P ガスケット
W 溶接結合部(固定手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12