(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056366
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 5/00 20060101AFI20230412BHJP
B23B 5/40 20060101ALI20230412BHJP
B23B 39/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B23B5/00 Z
B23B5/40
B23B39/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165674
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】村山 和希
【テーマコード(参考)】
3C036
3C045
【Fターム(参考)】
3C036BB01
3C036BB20
3C045CA30
3C045DA11
3C045EA02
(57)【要約】
【課題】ツールをワークに挿入するときにはツールを回転可能としつつ、加工時にはツールを確実に保持する。
【解決手段】工作機械100は、ツール1と、ツール保持部2と、第1支持部3と、ツール挿入部4と、制御部6と、を備える。制御部6は、ツール保持部2に保持されたツール軸11をツール保持部2からツール挿入部4に渡し、湾曲部分13と加工刃15を開口Oに挿入するために開口Oの延長方向に対してツール軸11を傾斜させ、湾曲部分13と加工刃15を開口Oから内部空間Sに挿入しつつツール軸11を開口Oの延長方向と平行に戻す。また、湾曲部分13と加工刃15が内部空間Sに挿入された状態のツール1のツール軸11の端部E1の位置にツール保持部2を移動させ、ツール保持部2にツール軸11の端部E1を再度保持させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間と、外部から前記内部空間に延びて連通する開口と、を有し、前記開口の直径が前記内部空間の内径よりも小さいワークの前記内部空間の壁面を加工する工作機械であって、
直線状に延びるツール軸と、前記ツール軸に連結され、前記ツール軸との連結部分とは反対側の先端部分に前記壁面を加工するための加工刃が設けられ、前記ツール軸が前記開口に挿入されたときに前記加工刃を前記内部空間の壁面に当接させるよう前記連結部分から前記先端部分にかけて湾曲する湾曲部分と、を有するツールと、
前記ツール軸を端部で保持するツール保持部と、
前記ツール保持部を支持して移動させる第1支持部と、
前記ツール軸を回転可能であり、前記ワークの前記内部空間に前記湾曲部分と前記加工刃とを挿入するツール挿入部と、
前記ツール保持部と、前記第1支持部と、前記ツール挿入部と、を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ツール保持部に保持された前記ツール軸を前記ツール挿入部に持ち替えさせ、前記ツール軸を前記ツール保持部から前記ツール挿入部に渡し、
前記湾曲部分と前記加工刃とを前記開口に挿入するために、前記外部から前記内部空間に延びる前記開口の延長方向に対して前記ツール軸を傾斜させ、
その後、前記湾曲部分と前記加工刃とを前記開口から前記内部空間に挿入しつつ前記ツール軸を前記開口の前記延長方向と平行に戻して前記ツール軸を前記開口に挿入し、
前記開口に挿入された前記ツール軸の前記端部の位置に前記ツール保持部を移動させ、
前記ツール軸の前記端部を前記ツール保持部に再度保持させる、
工作機械。
【請求項2】
前記ツール保持部は、前記ツール軸の端部を保持するクランプ機構を有する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記ツール挿入部は、前記ツール軸の前記端部の近傍に設けられた把持部分を把持する把持部と、前記把持部を回転させる回転部と、前記把持部及び前記回転部を保持し移動させる第2支持部と、を有する、請求項1又は2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。特に、内部空間と、当該内部空間と外部とを連通させる開口と、を有するワークの当該内部空間の壁面を加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内部空間と、内部空間と外部とを連通する開口と、を有するワークの内部空間の壁面を加工することが知られている。例えば、内部空間の壁面に加工刃が届くよう加工刃が設けられた側が湾曲した特殊ツールを用いて、ワークの内部空間の壁面を加工する工作機械が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のワークには、内部空間と外部とを連結する開口の直径が、内部空間の内径よりも小さなものがある。このワークの開口から内部空間に特殊ツールの加工刃を挿入するためには、特殊ツールを傾斜させた状態で加工刃を開口から内部空間に挿入し、その後、特殊ツールの軸方向を開口の延長方向と平行に近づけつつ、加工刃を内部空間に挿入する必要がある。この動作を実現するために、従来の工作機械には、特殊ツールを回転させるための機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークの内部空間の壁面を適切に加工するためには、特殊ツールを、加工中に動かないよう確実に保持しておく必要がある。しかしながら、従来の工作機械では、特殊ツールを回転させるための機構に特殊ツールを取り付けたまま加工が実行されていた。特殊ツールを回転させる機構は可動部であるため、当該機構により特殊ツールを加工時の振動等により動かないように保持することは難しかった。
【0006】
本発明の目的は、内部空間と、内部空間と外部とを連通する開口と、を有するワークの内部空間の壁面を加工する工作機械において、ツールをワークの内部空間に挿入するときにはツールを回転可能としつつ、ワークの加工時にはツールが動かないよう確実に保持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る工作機械は、内部空間と開口とを有するワークの内部空間の壁面を加工する工作機械である。ワークの開口は、外部から内部空間に延びて連通する。また、開口の直径は、内部空間の内径よりも小さい。工作機械は、ツールと、ツール保持部と、第1支持部と、ツール挿入部と、制御部と、を備える。
【0008】
ツールは、ツール軸と、湾曲部分と、を有する。ツール軸は、直線状に延びる軸である。湾曲部分は、ツール軸に連結され、ツール軸との連結部分とは反対側の先端部分に、内部空間の壁面を加工するための加工刃が設けられる。また、湾曲部分は、ツール軸がワークの開口に挿入されたときに加工刃を内部空間の壁面に当接させるよう、ツール軸との連結部分から先端部分にかけて湾曲している。
【0009】
ツール保持部は、ツール軸の端部でツールを保持する。ここでの「保持」は、ツールの第2端を強い力で把持することで、ワークの振動などによりツールが動かないよう固定することを意味する。第1支持部は、ツール保持部を支持して移動させる。ツール挿入部は、ツール軸を回転可能であり、ワークの内部空間に湾曲部分と加工刃とを挿入する。
【0010】
制御部は、ツール保持部と、第1支持部と、ツール挿入部とを制御する。制御部は、ツール保持部に保持されたツール軸をツール挿入部に持ち替えさせ、ツール軸をツール保持部からツール挿入部に渡す。次に、湾曲部分と加工刃とをワークの開口に挿入するために開口の延長方向に対してツール軸を傾斜させ、その後、湾曲部分と加工刃とをワークの開口から内部空間に挿入しつつ、ツール軸を開口の延長方向と平行に戻してツール軸を開口に挿入する。制御部は、さらに、ワークの開口に挿入されたツール軸の端部の位置にツール保持部を移動させ、ツール軸の端部をツール保持部に再度保持させる。
【0011】
上記の工作機械では、制御部よる制御により、ツール保持部に保持されたツール軸をツール保持部からツール挿入部に持ち替えさせて、ツール軸をツール保持部からツール挿入部に渡す。次に、湾曲部分と加工刃とをワークの開口に挿入するために開口の延長方向に対してツール軸を傾斜させ、その後、湾曲部分と加工刃とをワークの開口から内部空間に挿入しつつ、ツール軸を開口の延長方向と平行に戻してツール軸を開口に挿入する。制御部は、さらに、開口に挿入されたツール軸の端部の位置にツール保持部を移動させ、ツール軸の端部をツール保持部に再度保持させる。すなわち、湾曲部分と加工刃が内部空間に挿入された後に、ツール挿入部とは別のツール保持部が、再度、湾曲部分と加工刃がワークの内部空間に挿入された状態のツールのツール軸の端部を強固に保持する。
【0012】
このように、ツールを回転可能な機構(すなわち、ツール挿入部)と、ワークの加工時にツールを保持する機構(すなわち、ツール保持部)と、を個別の機構とすることで、ツールをワークの内部空間に挿入するときにはツールを回転可能としつつ、ワークの加工時にはツールを確実に保持できる。ツール保持部によりツールを確実に保持できるので、ワークの加工時の振動などによりツールが動くことを防止して、適切にワークを加工できる。
【0013】
ツール保持部は、クランプ機構を有してもよい。クランプ機構は、ツール軸の端部を保持する。クランプ機構によりツール軸の端部を保持することで、より強い力でワークを確実に保持できる。
【0014】
ツール挿入部は、把持部と、回転部と、第2支持部と、を有してもよい。把持部は、ツール軸の把持部分を把持する。把持部分は、ツール軸の端部の近傍に設けられる。回転部は、把持部を回転させる。第2支持部は、把持部及び回転部を保持し移動させる。これにより、ツールを保持して回転させる機構を単純な構成により実現できる。
【発明の効果】
【0015】
ツールをワークの内部空間に挿入するときにはツールを回転可能としつつ、ワークの加工時にはツールが動かないよう確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】ツール保持部に保持されたツール軸の端部側を一対の把持部が把持した状態を示す図。
【
図4】湾曲部分と加工刃を開口に挿入した状態を示す図。
【
図5】湾曲部分と加工刃を開口から内部空間に挿入する様子を示す図
【
図6】湾曲部分と加工刃を内部空間に挿入した状態のツールのツール軸の端部の位置にツール保持部を移動させた状態を示す図。
【
図7】湾曲部分と加工刃が内部空間に挿入された状態のツールのツール軸の端部を、ツール保持部に保持させた状態を示す図。
【
図8】ツールがツール挿入部からツール保持部に受け渡された状態を示す図。
【
図9】ワークの内部空間の壁面を加工する様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
(1)工作機械の全体構成
図1を用いて、工作機械100の全体構成を説明する。
図1は、工作機械100の全体構成を示す図である。
図1において、左右方向をZ方向と定義し、上下方向をX方向と定義し、紙面に垂直な方向をY方向と定義する。
【0018】
工作機械100は、
図1に示すようなワークWの内部空間Sの壁面を加工するための装置である。ワークWは、外部空間から内部空間Sへと延びて外部空間と内部空間Sとを連通する開口Oを有する。後述するように、内部空間Sの壁面を加工するための加工刃15は、この開口Oから内部空間Sに挿入される。
図1に示すように、開口Oの直径rは、内部空間Sの内径Rよりも小さくなっている。このようなワークWとしては、例えば、自動車等のディファレンシャル・ギアを格納するデフケースがある。
【0019】
上記のワークWを加工する工作機械100は、ツール1と、ツール保持部2と、第1支持部3と、ツール挿入部4と、主軸5と、制御部6と、を備える。
【0020】
ツール1は、ワークWの内部空間Sの壁面の加工に用いられる。以下、
図1及び
図2を用いて、ツール1の構成を説明する。
図2は、ツール1の詳細構成を示す図である。ツール1は、ツール軸11と、湾曲部分13と、加工刃15と、を有する。ツール軸11は、端部E1から連結部分Jにかけて直線状に延びる軸である。湾曲部分13は、ツール軸11の連結部分Jにおいて、ツール軸11と連結されている。湾曲部分13は、ツール軸11の連結部分Jから先端部分E2にかけて、ツール軸11の延長方向に対して湾曲している。このようにツール軸11から湾曲した湾曲部分13は、ツール軸11がワークWの開口Oに挿入されたときに、先端部分E2に設けられた加工刃15をワークWの内部空間Sの壁面に当接させる。湾曲部分13が設けられることで、ツール1は、
図1に示すような狭い開口Oと大きな内部空間Sとを有するワークWの内部空間Sの内壁を加工できる。加工刃15は、湾曲部分13の先端部分E2に設けられ、ワークWの内部空間Sの壁面を加工するための刃である。
【0021】
ツール軸11の端部E1の近傍には、把持部分17が設けられる。把持部分17は、ツール軸11の外周に設けられたフランジ形状の部材である。後述するように、ツール挿入部4にてツール軸11を保持するときに、把持部分17は、ツール挿入部4の把持部43により把持される。
【0022】
ツール保持部2は、ツール1を保持する装置である。具体的には、ツール保持部2は、ツール軸11の端部E1を保持することで、ツール1を保持する。ツール保持部2は、ツール軸11の端部E1をクランプ方式で保持するクランプ機構21を有する。クランプ機構21は、例えば、油圧クランプ方式のチャックにより端部E1側を保持する機構である。油圧クランプ方式のチャックにより、強い力でツール軸11の端部E1を保持できるので、ワークWの加工時の振動などによりツール1が動くことを防止できる。なお、クランプ機構21は、ツール1がワークWの加工時に動かないよう端部E1を強固に保持できるものであれば、油圧クランプ方式のものに限られない。例えば、メカクランプをクランプ機構21として用いることもできる。
【0023】
第1支持部3は、ツール保持部2を支持する。第1支持部3は、Z方向及びX方向に移動可能である。ツール保持部2は、第1支持部3の移動に従って、Z方向及びX方向に移動できる。第1支持部3は、ツール軸11を保持する動力をツール保持部2に供給する。第1支持部3は、タレットなどの工作機械100で用いられる工具などを支持可能な装置である。
【0024】
ツール挿入部4は、ツール軸11を回転可能であり、湾曲部分13と加工刃15をワークWの内部空間Sに挿入するための装置である。具体的には、ツール挿入部4は、回転部41と、把持部43と、第2支持部45と、を有する。
【0025】
回転部41は、ツール挿入部4の筐体CにY方向の軸周りに回動可能に設けられた部材である。把持部43は、ツール軸11の把持部分17を把持可能な部材である。把持部43は、回転部41の主面上に一対設けられている。一対の把持部43は、互いに接近することで、一対の把持部43の間に配置されたツール軸11の把持部分17を把持できる。一方、ツール軸11の把持部分17を把持した状態の一対の把持部43が互いに離間することで、ツール軸11の把持部分17の把持を解除できる。
【0026】
把持部43は、回転部41の主面上に設けられているので、回転部41の回動に従って回動する。把持部43が把持部分17を把持した状態で、回転部41がY方向の軸周りに回動することで、ツール挿入部4は、把持部43により把持したツール軸11を、ツール軸11の把持部分17を中心として、Y方向の軸周りに回転できる。
【0027】
第2支持部45は、筐体Cを支持する。第2支持部45は、Z方向及びX方向に移動可能である。筐体Cに設けられた回転部41、及び、回転部41に設けられた把持部43は、第2支持部45の移動に従って、Z方向及びX方向に移動できる。第2支持部45は、回転部41をY方向の軸周りに回動させる動力、及び、一対の把持部43を互いに接近させ離間させる動力を供給する。第2支持部45は、タレットなどの工作機械100で用いられる工具などを支持可能な装置である。
【0028】
主軸5は、Z方向の軸周りに回動可能であり、先端にチャック51を有する。主軸5は、チャック51に把持したワークWをZ方向の軸周りに回動させる。
【0029】
制御部6は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、SSD、HDDなど)、各種インタフェースにより構成されたコンピュータシステムであって、工作機械100の各構成を制御する。制御部6は、例えば操作盤を用いたユーザの操作を受け付けて、当該操作に基づいて工作機械100を制御する。
【0030】
具体的には、制御部6は、第1支持部3に対して、第1支持部3を移動させる指令、及び、ツール保持部2に対してツール軸11の端部E1を保持させ又は保持を解除させる指令を出力する。また、第2支持部45に対して、第2支持部45を移動させる指令、回転部41を回動させる指令、及び、把持部43にツール軸11の把持部分17を把持させ又は当該把持を解除させる指令を出力する。
【0031】
なお、制御部6による工作機械100の制御の一部又は全部は、制御部6の記憶装置に記憶されたプログラムを制御部6が実行することにより実現されてもよいし、制御部6を構成するハードウェアにより実現されてもよい。
【0032】
(2)工作機械の動作
次に、上記の構成を有する工作機械100の動作を説明する。以下の説明では、ツール保持部2のクランプ機構21にてツール1を保持した状態から、ツール1の湾曲部分13と加工刃15をワークWの開口Oから内部空間Sに挿入して、加工刃15によりワークWの内部空間Sの壁面の加工を開始するまでの動作を説明する。
【0033】
主軸5のチャック51にワークWを装着後、制御部6が、ツール保持部2に保持されたツール軸11をツール挿入部4に持ち替えさせて、ツール軸11をツール保持部2からツール挿入部4に渡すよう指令する。具体的には、制御部6は、第2支持部45をツール保持部2に向けて移動させ、一対の把持部43の間に、ツール軸11の把持部分17を配置させる。その後、
図3に示すように、一対の把持部43にツール軸11の把持部分17を把持させる。
図3は、ツール保持部2に保持されたツール軸11の把持部分17を一対の把持部43が把持した状態を示す図である。
【0034】
把持部43により把持部分17を把持させた後、制御部6は、ツール保持部2のクランプ機構21にツール軸11の端部E1の保持を解除させる。これにより、ツール保持部2に保持されていたツール軸11が、ツール保持部2からツール挿入部4に持ち替えられる。
【0035】
その後、制御部6は、Z方向(ツール軸11の延長方向)のツール保持部2から離れる方向に第2支持部45を移動させる。これにより、ツール挿入部4に持ち替えられたツール軸11が、ツール保持部2から離れる方向に移動し、ツール軸11の端部E1が、ツール保持部2から引き抜かれる。このようにして、ツール軸11が、ツール保持部2からツール挿入部4に受け渡される。
【0036】
ツール軸11がツール保持部2からツール挿入部4に受け渡された後、制御部6は、第2支持部45を移動させて、ツール軸11がツール挿入部4(把持部43)にて把持されたツール1を、主軸5に把持されたワークWに向けて移動させる。その後、ツール1の湾曲部分13と加工刃15を、加工対象であるワークWの内部空間Sに挿入する。
【0037】
湾曲部分13と加工刃15とを開口Oから内部空間Sに挿入する場合、湾曲部分13と加工刃15に開口Oを通過させる必要がある。しかしながら、湾曲部分13と加工刃15に開口Oを通過させるときに、ツール軸11が外部空間から内部空間Sへと延びる開口Oの延長方向(すなわち、Z方向)と平行になっていると、湾曲部分13が開口Oの入口に当たってしまい、湾曲部分13と加工刃15を開口Oに挿入できない。
【0038】
従って、制御部6は、ツール1をワークWに向けて移動中に、
図4に示すように、回転部41を第1方向(
図4では、反時計回り)に回転させて、把持部43にて把持したツール軸11を回転して、ツール軸11をZ方向に対して傾斜させる。その後、ツール軸11をZ方向に対して傾斜させた状態で、第2支持部45をZ方向に移動させて、開口Oに湾曲部分13と加工刃15とを挿入する。
図4は、湾曲部分13と加工刃15を開口Oに挿入した状態を示す図である。
【0039】
なお、開口Oに湾曲部分13と加工刃15を挿入する際のツール軸11の傾斜角は、湾曲部分13と加工刃15とを開口Oに挿入できる角度であれば、例えば、湾曲部分13の寸法及び形状、開口Oの直径rの大きさ等に応じて任意に設定できる。
【0040】
湾曲部分13と加工刃15がワークWの開口Oと内部空間Sとの境界に到達した後、第2支持部45をZ方向にさらに移動させ、湾曲部分13と加工刃15を内部空間Sに挿入する。湾曲部分13と加工刃15を開口Oに挿入するときにはツール軸11をZ方向に傾斜させる必要がある一方、湾曲部分13と加工刃15を内部空間Sに挿入して加工刃15を内部空間Sの壁面に当接させるためには、ツール軸11を開口Oの延長方向(すなわち、Z方向)と平行にする必要がある。
【0041】
従って、制御部6は、
図5に示すように、湾曲部分13と加工刃15とを開口Oから内部空間Sに挿入させつつ、回転部41を第1方向とは反対の第2方向(
図4では、時計回り)に回転させて、把持部43にて把持したツール軸11をZ方向と平行に戻す。
図5は、湾曲部分13と加工刃15を開口Oから内部空間Sに挿入する様子を示す図である。
【0042】
湾曲部分13と加工刃15を内部空間Sに挿入後、制御部6は、
図6に示すように、第1支持部3をワークWに向けて移動させ、ツール保持部2をツール軸11の端部E1の近傍に移動させる。
図6は、湾曲部分13と加工刃15を内部空間Sに挿入したツール1のツール軸11の端部E1の近傍にツール保持部2を移動させた状態を示す図である。
【0043】
その後、制御部6は、
図7に示すように、第1支持部3をZ方向にさらに移動させ、ツール軸11の端部E1をツール保持部2に挿入させる。さらに、ツール保持部2のクランプ機構21にツール軸11の端部E1を保持させる。
図7は、湾曲部分13と加工刃15が内部空間Sに挿入されたツール1のツール軸11の端部E1を、ツール保持部2に保持させた状態を示す図である。
【0044】
ツール軸11の端部E1をツール保持部2にて保持後、制御部6は、
図8に示すように、ツール挿入部4の把持部43にツール軸11の把持部分17の把持を解除させ、第2支持部45をワークWから離間した位置に移動させる。このようにして、ツール1が、ツール挿入部4からツール保持部2に再度受け渡され、ツール保持部2のクランプ機構21にて保持されたツール1を用いてワークWの内部空間Sの壁面を加工する準備が完了する。
図8は、ツール1がツール挿入部4からツール保持部2に受け渡された状態を示す図である。
【0045】
ワークWの内部空間Sの壁面を加工する準備を完了後、制御部6は、
図9に示すように、主軸5によりワークWをZ方向の軸周りに回転させつつ、第1支持部3によりツール保持部2に保持したツール1の加工刃15を内部空間Sの壁面に沿って移動させることで、内部空間Sの壁面を加工刃15により加工できる。
図9は、ワークWの内部空間Sの壁面を加工する様子を示す図である。
【0046】
以上のように、工作機械100では、制御部6よる制御により、ツール保持部2に保持されたツール軸11をツール保持部2からツール挿入部4に持ち替えさせて、ツール軸11をツール保持部2からツール挿入部4に渡す。次に、ツール挿入部4が、湾曲部分13と加工刃15を開口Oに挿入するために、ツール軸11を開口Oの延長方向であるZ方向に対して傾斜させ、その後、湾曲部分13と加工刃15を開口Oから内部空間Sへ挿入しつつ、ツール軸11をZ方向と平行に戻す。
【0047】
湾曲部分13と加工刃15が内部空間Sに挿入された後に、ツール挿入部4とは別のツール保持部2が、再度、湾曲部分13と加工刃15がワークWの内部空間Sに挿入された状態のツール1のツール軸11の端部E1を強固に保持する。そして、ツール軸11の端部E1をツール保持部2にて強固に保持した状態で、ワークWの加工が開始される。
【0048】
このように、ツール1を回転可能な機構(すなわち、ツール挿入部4)と、ワークWの加工時にツール1を保持する機構(すなわち、ツール保持部2)と、を個別の機構とすることで、ツール1の加工刃15をワークWの内部空間Sに挿入するときにはツール軸11を回転可能としつつ、ワークWの加工時にはツール軸11を確実に保持できる。ツール保持部2によりツール軸11を確実に保持できるので、ワークWの加工時の振動などによりツール1が動くことを防止して、適切にワークWを加工できる。
【0049】
また、工作機械100は、工作機械100で用いられる工具等を支持して動作させることができる第1支持部3及び第2支持部45と、主軸5と、を有する一般的な工作機械に、上記のツール保持部2と、ツール挿入部4の筐体C(すなわち、回転部41及び把持部43)と、を第1支持部3及び第2支持部45に装着するだけで容易に実現できる。
【0050】
2.実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
工作機械(例えば、工作機械100)は、内部空間(例えば、内部空間S)と、外部から内部空間に延びて連通する開口(例えば、開口O)と、を有し、開口の直径(例えば、直径r)が内部空間の内径(例えば、直径R)よりも小さいワーク(例えば、ワークW)の壁面を加工する工作機械である。この工作機械は、ツール(例えば、ツール1)と、ツール保持部(例えば、ツール保持部2)と、第1支持部(例えば、第1支持部3)と、ツール挿入部(例えば、ツール挿入部4)と、制御部(例えば、制御部6)と、を備える。
【0051】
ツールは、ツール軸(例えば、ツール軸11)と、湾曲部分(例えば、湾曲部分13)と、を有する。ツール軸は、直線状に延びる軸である。湾曲部分は、ツール軸に連結され、ツール軸との連結部分(例えば、連結部分J)とは反対側の先端部分(例えば、先端部分E2)に、内部空間の壁面を加工するための加工刃(例えば、加工刃15)が設けられる。また、湾曲部分は、ツール軸がワークの開口に挿入されたときに加工刃を内部空間の壁面に当接させるよう、ツール軸との連結部分から先端部分にかけて湾曲している。
【0052】
ツール保持部は、ツール軸の端部でツールを保持する。第1支持部は、ツール保持部を支持して移動させる。ツール挿入部は、ツール軸を回転可能であり、ワークの内部空間に湾曲部分と加工刃とを挿入する。
【0053】
制御部は、ツール保持部と、第1支持部と、ツール挿入部とを制御する。制御部は、ツール保持部に保持されたツール軸をツール挿入部に持ち替えさせ、ツール軸をツール保持部からツール挿入部に渡す。次に、湾曲部分と加工刃とをワークの開口に挿入するために、開口の延長方向(例えば、Z方向)に対してツール軸11を傾斜させ、その後、湾曲部分と加工刃とをワークの開口から内部空間に挿入しつつ、ツール軸を開口の延長方向と平行に戻してツール軸を開口に挿入する。
【0054】
また、制御部は、さらに、ワークの開口に挿入されたツール軸の端部の位置にツール保持部を移動させ、ツール軸の端部をツール保持部に再度保持させる。
【0055】
上記の工作機械では、制御部よる制御により、ツール保持部に保持されたツール軸をツール保持部からツール挿入部に持ち替えさせて、ツール軸をツール保持部からツール保持部に渡す。次に、湾曲部分と加工刃とをワークの開口に挿入するために開口の延長方向に対してツール軸を傾斜させ、その後、湾曲部分と加工刃とをワークの開口から内部空間に挿入しつつ、ツール軸を開口の延長方向と平行に戻してツール軸を開口に挿入する。
【0056】
制御部は、さらに、開口に挿入されたツール軸の端部の位置にツール保持部を移動させ、ツール軸の端部をツール保持部に再度保持させる。すなわち、湾曲部分と加工刃が内部空間に挿入された後に、ツール挿入部とは別のツール保持部が、再度、湾曲部分と加工刃がワークの内部空間に挿入された状態のツールのツール軸の端部を強固に保持する。
【0057】
このように、ツールを回転可能な機構(すなわち、ツール挿入部)と、ワークの加工時にツールを保持する機構(すなわち、ツール保持部)と、を個別の機構とすることで、ツールをワークの内部空間に挿入するときにはツールを回転可能としつつ、ワークの加工時にはツールを確実に保持できる。ツール保持部によりツールを確実に保持できるので、ワークの加工時の振動などによりツールが動くことを防止して、適切にワークを加工できる。
【0058】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)上記の第1実施形態では、ツール挿入部4は、
図1に示すように、回転部41と、把持部43と、第2支持部45と、により構成されていた。ツール挿入部4は、ツール1を把持、回転可能であり、かつ、Z方向及びX方向に移動可能であれば、上記の構成に限定されない。
【0059】
例えば、ツール挿入部4は、ツール1を把持するガントリーローダと、ガントリーローダを傾動させる傾動機構と、ガントリーローダをZ方向及びX方向に移動可能な機構(例えば、タレット)と、により構成されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、内部空間と、当該内部空間と外部とを連結する開口と、を有するワークの当該内部空間の壁面を加工する工作機械に広く適用できる。
【符号の説明】
【0061】
100 工作機械
1 ツール
11 ツール軸
13 湾曲部分
15 加工刃
17 把持部分
J 連結部分
2 ツール保持部
3 第1支持部
4 ツール挿入部
41 回転部
43 把持部
45 第2支持部
C 筐体
5 主軸
51 チャック
6 制御部
W ワーク
O 開口
S 内部空間