(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056388
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20230412BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230412BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230412BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230412BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165711
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄斗
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA20
4F100AA20B
4F100AB12
4F100AB12A
4F100AB21
4F100AB21A
4F100AG00
4F100AG00A
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4F100YY00A
4J004AA11
4J004AB01
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4J004CC03
4J004CD05
4J004CE01
4J004FA05
4J004FA08
4J040EK031
4J040JA09
4J040JB09
(57)【要約】
【課題】優れた難燃性、絶縁性及び高い発色性を有する粘着テープを提供すること。
【解決手段】一実施形態によれば、粘着テープが提供される。粘着テープは、着色ファブリックと、中間層と、粘着剤層とを備える。中間層は、着色ファブリックの一方の面上に積層され、二酸化ケイ素粒子を含む。粘着剤層は、中間層上に積層されている。着色ファブリックは、ガラスクロス、並びに、ガラスクロスの両面上に形成されると共に、フッ素樹脂及び無機顔料を含む着色フッ素樹脂層を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色ファブリックと、
前記着色ファブリックの一方の面上に積層され、二酸化ケイ素粒子を含む中間層と、
前記中間層上に積層された粘着剤層とを備え、
前記着色ファブリックは、ガラスクロス、並びに、前記ガラスクロスの両面上に形成されると共に、フッ素樹脂及び無機顔料を含む着色フッ素樹脂層を備える粘着テープ。
【請求項2】
前記無機顔料は、スズ、チタン、タングステン及び亜鉛を含む複合酸化物である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)及びエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記着色フッ素樹脂層について、前記フッ素樹脂及び前記無機顔料の単位面積当たりの質量M2は、25.0g/m2~90.0g/m2の範囲内にある請求項1~3の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記着色フッ素樹脂層が含む前記無機顔料の単位面積当たりの質量M3は、例えば、1.0g/m2~5.0g/m2の範囲内にある請求項1~4の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記着色フッ素樹脂層について、前記フッ素樹脂及び前記無機顔料の単位面積当たりの質量M2に対する、前記無機顔料の単位面積当たりの質量M3の比M3/M2は、0.03~0.10の範囲内にある請求項1~5の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記着色ファブリックの表面の色をL*a*b*表色系で表した場合に、L*は59.0~62.0の範囲内にあり、a*は18.0~27.0の範囲内にあり、b*は25.0~55.0の範囲内にある請求項1~6の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記着色ファブリックの厚さは50μm~300μmの範囲内にある請求項1~7の何れか1項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば耐熱性、難燃性及び絶縁性等の目的でフッ素樹脂製の粘着テープが使用されている。フッ素樹脂製粘着テープに対して色を付ける場合には、例えば、粘着剤層に顔料を混合する手法が採られている。着色した粘着剤層上に透明又は半透明なフッ素樹脂フィルムが積層された場合、当該粘着テープを観察する者は、フッ素樹脂フィルムを介して粘着剤層の色を視認することができる。
【0003】
上記手法が採られている理由の一つに、フッ素樹脂の融点が高いことから、フッ素樹脂フィルムを作製又は加工する際に有機顔料を混合するのが困難であることが挙げられる。300℃前後の高温域で加工されるフッ素樹脂フィルムに有機顔料が混合されている場合、加工時に有機顔料が炭化又は分解する可能性がある。それ故、フッ素樹脂フィルム自体を有機顔料によって着色するのは困難であった。
【0004】
一方、粘着テープの用途としては、高電圧ケーブルの被覆など、優れた難燃性及び絶縁性を要求される場合がある。こうした要求を満たすために、フッ素樹脂フィルムの代わりに、ガラスクロス基材に対してフッ素樹脂が担持されたファブリックタイプのシートを用いた粘着テープが要望されている。加えて、このような粘着テープを、オレンジ色等に着色させることが求められている。これは、粘着テープが貼付された危険な部分又は部品を、作業者等が知覚し易くするためである。つまり、高電圧ケーブルの被覆などに使用される粘着テープには、優れた難燃性及び絶縁性のみならず、高い発色性で、オレンジ色等に着色されていることも要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされ、優れた難燃性、絶縁性及び高い発色性を有する粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、粘着テープが提供される。粘着テープは、着色ファブリックと、中間層と、粘着剤層とを備える。中間層は、着色ファブリックの一方の面上に積層され、二酸化ケイ素粒子を含む。粘着剤層は、中間層上に積層されている。着色ファブリックは、ガラスクロス、並びに、ガラスクロスの両面上に形成されると共に、フッ素樹脂及び無機顔料を含む着色フッ素樹脂層を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、優れた難燃性、絶縁性及び高い発色性を有する粘着テープを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る粘着テープの一例を概略的に示す断面図。
【
図2】含浸コーティング法に係る製造ラインの一例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ガラスクロスを含むファブリックの一方の面上に粘着剤層を備える粘着テープにおいては、仮に粘着剤層が着色していたとしても、ファブリックを介した粘着剤層の色の視認性は悪い。これは、例えば、ガラスクロスの存在のため、観察者が、粘着剤層から発出される反射光を視認しにくいことが一つの要因である。
【0011】
本発明者らは、従来において着色していた粘着剤層を着色するのではなく、ファブリック自体、特にはファブリックが備えるフッ素樹脂を着色することを試みた。フッ素樹脂の加工温度は高い。PTFEの場合、その加工温度は例えば343℃以上であり得る。それ故、ファブリックの発色性を高めるべく、有機顔料をフッ素樹脂に混合したとしても、前述の通り有機顔料が炭化又は分解してしまう。とりわけ、作業者等に危険性を認識させるためのオレンジ色を発色させるための顔料のほとんどは、有機顔料である。従って、従来、高い発色性でファブリックをオレンジ色に着色させることは困難であった。
【0012】
(第1実施形態)
実施形態によれば、粘着テープが提供される。粘着テープは、着色ファブリックと、中間層と、粘着剤層とを備える。中間層は、着色ファブリックの一方の面上に積層され、二酸化ケイ素粒子を含む。粘着剤層は、中間層上に積層されている。着色ファブリックは、ガラスクロス、並びに、ガラスクロスの両面上に形成されると共に、フッ素樹脂及び無機顔料を含む着色フッ素樹脂層を備える。
【0013】
実施形態に係る粘着テープは、芯材としてのガラスクロスと、その両面上に形成された着色フッ素樹脂層とを備えた着色ファブリックを備える。着色フッ素樹脂層は、無機顔料により着色している。それ故、着色フッ素樹脂層の作製時においても、顔料の色調は損なわれにくい。また、着色ファブリックはガラスクロスを備えるため、この粘着テープは優れた難燃性及び絶縁性を示す。
【0014】
以下、この粘着テープについて図面を参照しながら詳述する。
【0015】
図1は、実施形態に係る粘着テープの一例を概略的に示す断面図である。
粘着テープ10は、着色ファブリック1と、中間層4と、粘着剤層5とを備える。着色ファブリック1は、ガラスクロス2と、その両面上に形成された着色フッ素樹脂層3とを備える。
図1では明示していないが、着色フッ素樹脂層3は、フッ素樹脂及び無機顔料を含む。
【0016】
着色ファブリック1は、2つの主面を有している。着色ファブリック1が有する2つの主面のうち、一方の面は露出しており、他方の面には中間層4及び粘着剤層5がこの順で積層している。本願明細書及び特許請求の範囲において、着色ファブリック1が有する2つの主面のうち、露出している側の面を「表面」とし、露出していない側の面を「裏面」とする。
【0017】
中間層4は、着色ファブリック1の裏面上の少なくとも一部に設けられている。
図1に示す例では、中間層4は、着色ファブリック1の裏面上の全面に設けられている。粘着剤層5は、中間層4の表面上の少なくとも一部に設けられている。
図1に示す例では、粘着剤層5は、中間層4の表面上の全面に設けられている。
【0018】
(1)着色ファブリック
着色ファブリック1は、例えば、所定の厚みを有するシート又はフィルムであり得る。着色ファブリック1の厚みは、特に制限されないが、例えば、50μm~300μmの範囲内にある。着色ファブリック1が過剰に厚いと、粘着テープの剛直性が高くなりすぎて、粘着テープとしての柔軟性がなくなるため好ましくない。着色ファブリック1が過剰に薄いと、引張強さが不足して粘着テープが破断しやすいため好ましくない。
【0019】
ガラスクロスの厚さは、例えば25μm~200μmの範囲内にあり、好ましくは50μm~150μmの範囲内にある。ガラスクロスの厚さがこの範囲内にあると、例えば、粘着テープを用いてケーブル等を被覆する際に、良好な作業性を得る事ができる。また、コストを抑えることができる。
【0020】
ガラスクロスの単位面積当たりの質量は、例えば、25g/m2~200g/m2の範囲内にある。ガラスクロスの糸密度は、例えば30本/25mm~80本/25mmの範囲内にある。ガラスクロスの縦方向の糸密度と、横方向の糸密度とは異なっていてもよい。ガラス繊維ヤーン1本当たりのTEX番手は、例えば5g/1000m-80g/1000mの範囲内にある。
【0021】
着色フッ素樹脂層3が含むフッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)及びエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)からなる群より選択される少なくとも一種である。着色フッ素樹脂層3が含むフッ素樹脂の種類は、1種類であってもよく、2種類以上が混合されていてもよい。中でも、優れた耐熱性に加えて高い耐薬品性を有することから、着色フッ素樹脂層3は、フッ素樹脂としてPTFEを含むことが好ましい。着色フッ素樹脂層3に含まれるフッ素樹脂はPTFEのみであってもよい。
【0022】
着色フッ素樹脂層3がPTFEを含む場合、PTFEは樹脂粒子の焼結体として存在している。PTFE樹脂粒子の平均一次粒子径は、例えば0.02μm以上0.5μm以下の範囲内にあり、好ましくは0.1μm以上0.3μm以下の範囲内にある。PTFE樹脂粒子の平均一次粒子径は、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により測定することができる。
【0023】
着色フッ素樹脂層3は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤は、例えば、着色ファブリックを製造する際に、分散液中の無機顔料の分散性を高めたり、分散液の濡れ性を高めたりする目的で添加されるものである。添加剤は、例えば界面活性剤である。添加剤の例に、ヘプタメチル-3-(プロピル(ポリエチレンオキシド)メチル)トリシロキサン、及び、アリロキシポリエチレングリコールメチルエーテルが含まれる。なお、粘着テープの製造方法は後述する。
【0024】
着色フッ素樹脂層3が無機顔料により着色されているため、着色ファブリック1の表面は、着色フッ素樹脂層3自体に類似した色調を有する。厳密には、着色ファブリック1の表面の色は、着色ファブリック1の単位面積当たりに含まれるガラスクロス2の質量(坪量[g/m2])、着色ファブリック1の単位面積当たりに含まれる着色フッ素樹脂層3の質量(坪量[g/m2])、及び、着色フッ素樹脂層3の単位面積当たりに含まれる無機顔料の質量(坪量[g/m2])等に応じて変化する。
【0025】
本願明細書及び特許請求の範囲において、着色ファブリック自体の単位面積当たりの質量をM1で表す。着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量をM2で表す。着色フッ素樹脂層に含まれる無機顔料の単位面積当たりの質量をM3で表す。
【0026】
着色ファブリックの単位面積当たりの質量M1は、ガラスクロスの単位面積当たりの質量と、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2との合計値である。着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2は、着色フッ素樹脂層が含むフッ素樹脂の単位面積当たりの質量と、着色フッ素樹脂層が含む無機顔料の単位面積当たりの質量M3との合計値である。
【0027】
<単位面積当たりの質量M1、M2及びM3の測定方法>
まず、10mm×10mmの大きさに裁断した着色ファブリックの質量を測定する。この測定により着色ファブリックの単位面積当たりの質量M1が判明する。次に、質量を測定した着色ファブリックを細かく裁断してるつぼに入れる。このるつぼを加熱して、フッ素樹脂を燃焼させる。燃焼後に得られる残渣の質量を測定して、10mm×10mmの大きさを有するガラスクロスの質量を差し引くと、無機顔料の単位面積当たりの質量M3が算出される。また、先に測定した質量M1から、10mm×10mmの大きさを有するガラスクロスの質量を差し引くことにより、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2を測定することができる。なお、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2から、無機顔料の単位面積当たりの質量M3を差し引くことにより、着色フッ素樹脂層が含むフッ素樹脂の単位面積当たりの質量を算出することができる。
【0028】
着色ファブリックの単位面積当たりの質量M1は、例えば50.0g/m2~600g/m2の範囲内にあり、好ましくは80g/m2~300g/m2の範囲内にある。単位面積当たりの質量M1がこの範囲内にあると、例えば粘着テープをケーブル等に巻き付ける際の作業性を向上させることができる。
【0029】
着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2は、例えば、25.0g/m2~90.0g/m2の範囲内にあり、好ましくは60.0g/m2~70.0g/m2の範囲内にある。着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2が過剰に低い場合、ガラスクロスの両面上に担持されているフッ素樹脂及び無機顔料の量が少ないことを意味する。それ故、無機顔料による発色が得られにくく、ガラスクロス自体の色調が観察されやすい。一方、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2を高めていくと、徐々にガラスクロスによる、着色ファブリックの表面の色調への影響が排除されていき、M2が一定以上になると、着色ファブリックの表面の色調は、おおむね着色フッ素樹脂層自体の色調と同様の色調となる。従って、M2を過剰に大きくしても、或る一定の値を超えると着色ファブリックの表面の色は変化しにくい。但し、色調を変化させる目的ではなく、粘着テープとしての機械的強度等を調整する目的で、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2を変化させてもよい。例えば、粘着テープの剛直性を高める目的で、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2を高めることができる。
【0030】
着色フッ素樹脂層が含む無機顔料の単位面積当たりの質量M3は、例えば、1.0g/m2~5.0g/m2の範囲内にあり、好ましくは2.5g/m2~4.5g/m2の範囲内にある。着色フッ素樹脂層が含む無機顔料の単位面積当たりの質量M3が小さい場合、着色ファブリックの表面において無機顔料の色調を発色させることが難しい。但し、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりに含まれるフッ素樹脂量が少なければ、M3が小さくても、無機顔料の色調を発色させやすい。
【0031】
着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2に対する、無機顔料の単位面積当たりの質量M3の比M3/M2を算出することにより、所定面積内におけるフッ素樹脂質量に対する無機顔料の質量を評価することができる。比M3/M2の値が高いほど、所定面積内に含まれる無機顔料の質量が高いため、着色ファブリックを観察した観察者は、無機顔料自体の色調に近い色調を認識する。比M3/M2の値が低いほど、所定面積内に含まれる無機顔料の質量が低いため、着色ファブリックを観察した観察者は、フッ素樹脂自体の色調に近い色調を認識する。
【0032】
着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2に対する、無機顔料の単位面積当たりの質量M3の比M3/M2は、例えば0.03~0.10の範囲内にあり、好ましくは0.04~0.07の範囲内にある。比M3/M2が過剰に低いと、優れた発色性を得ることが困難である。比M3/M2が過剰に高いと、フッ素樹脂の特性が損なわれる傾向がある。比M3/M2を0.03~0.10の範囲内に調整することにより、着色ファブリックの表面における色調のバラつきを抑制することができる。
【0033】
着色フッ素樹脂層3において、フッ素樹脂と無機顔料との質量比は、例えば91:9~98:2の範囲内にあり、好ましくは96:4~94:6の範囲内にある。質量比がこの範囲内にある場合、フッ素樹脂の特性(例えば、難燃性及び絶縁性等)を維持しつつ、優れた発色性を得ることができる。
【0034】
無機顔料としては、当該粘着テープの用途に応じて種々の無機顔料を使用することができる。つまり、着色ファブリックに発現させるべき色調に応じて無機顔料の種類は適宜変更することができる。
【0035】
粘着テープを視認した観察者に対して危険性を予見させるための色調を発現させるためには、オレンジ色の色相を持つ無機顔料を使用することが好ましい。オレンジ色で着色フッ素樹脂層を着色させるためには、無機顔料としてはスズ、チタン、タングステン及び亜鉛を含む複合酸化物、及び、クロム、鉄、コバルト、銅及びマンガンを含む複合酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を使用することが好ましい。これらの無機顔料を使用する場合、分散安定性に優れている上に、着色フッ素樹脂層を作製する際の加熱によっても赤みを焼失しにくいという利点がある。
【0036】
無機顔料のメジアン径は特に制限されないが、例えば、0.1μm~2.0μmの範囲内にある。オレンジ色を発色させるための無機顔料のメジアン径がこの範囲内にある場合、分散安定性が高まり、発色性が向上する効果が得られる。
【0037】
着色ファブリックの表面の色は、以下の通りL*a*b*表色系で表すことができる。L*a*b*表色系は、物体色を表すのに用いられている指標である。L*a*b*表色系は、1976年に国際照明委員会(CIE)により規格化された指標であり、日本においては、日本工業規格JIS Z 8781-4において採用されている。L*a*b*表色系では、L*が明度を表しており、a*及びb*は、色度としての色相及び彩度を表している。L*が大きいほど明度が高いことを示す。また、a*及びb*は色の方向を示している。a*は赤方向を示し、-a*は緑方向を示す。b*は黄方向を示し、-b*は青方向を示す。なお、彩度は文字c*で表され、その値は(c*)=((a*)2+(b*)2)1/2で算出される。
【0038】
着色ファブリックの表面の色に関して、L*は、例えば59.0~62.0の範囲内にある。a*は例えば18.0~27.0の範囲内にあり、好ましくは20.0~24.0の範囲内にある。b*は、例えば25.0~55.0の範囲内にあり、好ましくは40.0~50.0の範囲内にある。L*が59.0~62.0の範囲内にあり、a*が18.0~27.0の範囲内にあり且つb*が25.0~55.0の範囲内にある場合、良好なオレンジ色を発現させることが可能である。L*が59.0~62.0の範囲内にあり、a*が20.0~24.0の範囲内にあり且つb*が40.0~50.0の範囲内にある場合、視認性により優れており、且つ、優れたオレンジ色の色調を持った着色ファブリックであると言える。
【0039】
なお、視認性に優れたオレンジ色を発色させるためには、着色ファブリックの表面が一定以上の赤みを有していることが好ましい。例えば、a*は20.0以上であることが好ましい。仮に、オレンジ色を発色させるために着色フッ素樹脂層に含有させる顔料として有機顔料を使用すると、有機顔料がフッ素樹脂の加工温度に耐えられず、赤みが消失する傾向がある。着色フッ素樹脂層は、有機顔料を更に含んでいてもよいが、含まなくてもよい。実施形態に係る着色フッ素樹脂層は無機顔料を含んでいるため、前述の通り、加工温度による赤みの消失を抑制することができる。
【0040】
着色ファブリックの表面の色をL*a*b*表色系で測定するには、KONICA MINOLTA社製の分光測色計CM-5及び色彩色差計CR-5、又は、これらと等価な機能を有する装置を使用することができる。この装置によれば、日本工業規格JIS Z 8781-4に準拠した測定を行うことが可能である。着色ファブリックの表面の色を測定する際には、着色ファブリックの表面上の任意の10箇所の位置で、それぞれL*、a*及びb*を測定し、10箇所の位置における各値の平均値(単純平均)を算出する。
【0041】
(2)中間層
中間層4は、着色ファブリック1の一方の面上に積層されている。中間層4は二酸化ケイ素粒子を含む。中間層4は、フッ素樹脂及び活性剤を更に含んでいてもよい。
【0042】
中間層4が含んでいる二酸化ケイ素粒子は、非粘着性の高い着色ファブリック1の裏面の非粘着性を低減させる。それ故、着色ファブリック1と粘着剤層5との間に中間層4が介在することにより、着色ファブリック1から粘着剤層5(及び中間層4)が剥離するのを抑制することができる。
【0043】
中間層4の厚みは、特に制限されないが、例えば1μm~30μmの範囲内にある。
【0044】
中間層4が含み得るフッ素樹脂は、着色フッ素樹脂層3が含むフッ素樹脂として記載したものと同様のものを使用することができる。なお、着色フッ素樹脂層3が含むフッ素樹脂を第1フッ素樹脂と呼ぶことができる。中間層4が含むフッ素樹脂を第2フッ素樹脂と呼ぶことができる。中間層4が含む第2フッ素樹脂の種類は、1種類であってもよく、2種類以上が混合されていてもよい。中間層4が含む第2フッ素樹脂と、着色フッ素樹脂層3が含む第1フッ素樹脂とは、互いに同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。
【0045】
中間層4に含まれ得る第2フッ素樹脂が溶融流動性フッ素樹脂を含む場合、着色ファブリック1と粘着剤層5との融着性をより高めることができる。ここで、溶融流動性フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)及びエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)からなる群より選択される少なくとも一種である。
【0046】
二酸化ケイ素粒子(SiO2)は、非晶質シリカであることが好ましい。非晶質シリカは、親水性非晶質シリカであることがより好ましい。
【0047】
二酸化ケイ素粒子は、Brunauer, Emmett, Teller(BET)の吸着等温式による比表面積が10m2/g以上であることが好ましい。比表面積を10m2/g以上にすることにより、着色ファブリックと粘着剤層との密着性を向上することができる。より好ましい範囲は50m2/g以上400m2/g以下である。
【0048】
二酸化ケイ素粒子の平均一次粒子径は5nm以上80nm以下の範囲であることが好ましい。より好ましい範囲は7nm以上40nm以下である。二酸化ケイ素粒子の平均一次粒子径は、TEM観察によって測定可能である。
【0049】
中間層の質量に占める二酸化ケイ素粒子の質量の割合は、0.5質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。この割合を0.5質量%以上にすることにより、着色ファブリックと粘着剤層との密着性を向上することができる。この割合を高めると、着色ファブリックと粘着剤層との密着性が高くなるものの中間層の脆性が高まり、粘着テープとしての柔軟性が低くなる恐れがある。この割合を30質量%以下にすることにより、粘着テープが優れた柔軟性を有する。当該割合のより好ましい範囲は、5質量%以上20質量%以下である。
【0050】
中間層の質量に占めるフッ素樹脂の質量の割合は、例えば、70質量%以上99.5質量%以下の範囲内にある。
【0051】
中間層が含み得る活性剤は、例えば、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1つである。中間層が活性剤を含んでいると、レベリング性及び濡れ性を高める効果を奏する。
【0052】
(3)粘着剤層
粘着剤層5は、粘着性を有した層である。粘着剤層は、例えば粘着剤及び硬化剤を含んでいる。
【0053】
粘着剤層5の厚みは、特に制限されないが、例えば25μm~80μmの範囲内にある。
【0054】
粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びアクリル系粘着剤から選択される少なくとも1つを使用することができる。これらの中でも、耐熱性の観点から、粘着剤はシリコーン系粘着剤及び/又はアクリル系粘着剤を含むことが好ましい。
【0055】
シリコーン系粘着剤の例は、過酸化物硬化型の粘着剤又は付加硬化型の粘着剤である。粘着剤として過酸化物硬化型の粘着剤を使用する場合、硬化剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化-p-クロルベンゾイル、過酸化-2,4-ジクロルベンゾイル及び過酸化ジ-t-ブチルからなる群より選択される少なくとも1つを使用することができる。粘着剤として付加硬化型の粘着剤を使用する場合は、硬化剤としては、例えば白金を使用することができる。
【0056】
(4)粘着テープ
粘着テープ10の厚みは、特に制限されないが、例えば、80μm~250μmの範囲内にある。
【0057】
一例に係る粘着テープ10の総厚(合計厚さ)に占める、着色ファブリック1の厚み、中間層4の厚み、及び、粘着剤層5の厚みの割合は、それぞれ、63%~73%、0.5%~2%及び27%~34%である。各層の厚みはこの割合を外れてもよいが、各層の厚みがこれら割合を満たすことにより、安定した機械強度と粘着性を得ることができる。この場合、粘着テープはケーブル被覆に適している。それぞれの層の層厚は、例えば、粘着テープの断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)により観察することで測定することができる。
【0058】
実施形態に係る粘着テープは、例えば、高電圧ケーブル及び導線等の被覆、及び、離型用粘着テープ等の用途で使用することができる。離型用粘着テープは、ヒートシール機及び真空包装機等に使用したり、樹脂成型工程で使用したりすることができる。
【0059】
<製造方法>
続いて、実施形態に係る粘着テープの製造方法の一例を説明する。
【0060】
<着色ファブリックの作製>
着色ファブリックは、例えば以下に説明する含浸コーティング法で作製することができる。含浸コーティング法では、ガラスクロスの両面上に着色フッ素樹脂層が形成された着色ファブリックを形成する。
図2は、芯材としてのガラスクロスに、フッ素樹脂及び無機顔料を含浸コーティングする装置及び製造ラインの一例を概略的に示す断面図である。ここでは一例として、フッ素樹脂がPTFE樹脂粒子である場合を説明する。
【0061】
図中の符号30は、基材であるガラスクロス31を送り出す、送出しロールを示す。送出しロール30の下流側には、水性分散液32を満たした含浸槽33が配置されている。水性分散液32には、少なくとも、PTFE樹脂粒子及び無機顔料粒子が分散されている。水性分散液32は添加剤等を更に含み得る。なお、着色フッ素樹脂層を形成するための分散液を便宜的に第1分散液と呼ぶ。後述するが、中間層形成用の分散液を便宜的に第2分散液と呼ぶ。
【0062】
無機顔料粒子の分散安定性を高めて着色ファブリックの発色性を向上させるためには、分散液への添加に先立ち、無機顔料粒子をビーズミル等の粉砕処理に供してもよい。
【0063】
含浸槽33の上方側には一対のドクターロール35が配置されている。ドクターロール35の上方側には、熱処理温度が夫々異なるように区切られた加熱炉7が配置されている。この加熱炉7は、下側から順に乾燥部7a,加熱処理部7b,焼成部7cの3つのブロックに区切られ、乾燥部7aから焼成部7cに向かって温度が順次高い状態の温度分布をもつように制御されている。加熱炉7の下流には、ロール34c、34d及び34eと、巻取りロール9が配置されている。
【0064】
上述の構成を有する装置を用いて、以下の手順でガラスクロス上に着色フッ素樹脂層を形成する。
【0065】
まず、送出しロール30に巻かれたガラスクロス31を、含浸槽33内であり且つ水性分散液32内に配置されたロール34b側に送り、ガラスクロス31に水性分散液32を塗布する。次に、一対のドクターロール35によりガラスクロス31の両面に塗布された余分の水性分散液32を掻きとる。続いて、水性分散液32が塗布されたガラスクロス31を加熱炉7の乾燥部7aに送り、塗布された水性分散液を100℃以下の温度で乾燥して、水性分散液中の水分を蒸発させる。次に、ガラスクロス31を加熱処理部7bに送り、例えば305℃以上の温度でゆっくり加熱処理して水性分散液32中の添加剤等を除去する。
【0066】
続く焼成部7cでは、焼成を行ってもよく、行わなくてもよい。焼成部7cでの焼成を行う場合、その焼成温度はPTFE樹脂の融点以上の温度とする。焼成温度は、例えば320℃~340℃の範囲内とする。焼成部7cを通過した積層体8は、ロール34c、34d及び34eを経て、巻取りロール9に巻き取られる。こうして、ガラスクロスの両面上に着色フッ素樹脂層が形成された着色ファブリックが得られる。着色フッ素樹脂層を形成する際には、上述の一連の含浸コーティング法を繰り返して、複数回のコーティングを施してもよい。
【0067】
第1分散液の組成、及び、含浸コーティングの回数などを調整することにより、ガラスクロスの両面上に担持される着色フッ素樹脂層の量、及び、着色ファブリックの表面の色調を適宜調整することができる。言い換えると、第1分散液の組成、及び、含浸コーティングの回数などを調整することにより、着色ファブリックの単位面積当たりの質量M1、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2、及び、着色フッ素樹脂層3の単位面積当たりに含まれる無機顔料の質量M3を、それぞれ、所望の値に調整することができる。
【0068】
第1分散液は、例えば、フッ素樹脂粒子を45.0質量%~60.0質量%の固形分濃度で含んでおり、無機顔料を1.0質量%~10.0質量%の固形分濃度で含んでいる。フッ素樹脂の固形分濃度は50.0質量%~55.0質量%の範囲内にあることが好ましい。無機顔料の固形分濃度は、2.0質量%~4.0質量%の範囲内にあることが好ましい。添加剤は、例えば、第1分散液中に0.5質量%~1.5質量%の濃度で含まれ得る。
【0069】
<中間層の形成>
次に、得られた着色ファブリックの裏面上の少なくとも一部に、中間層を形成する。中間層を形成する方法の一例として、上述した着色ファブリックの形成と同様に、含浸コーティング法が挙げられる。
【0070】
中間層形成用の分散液(第2分散液)として、例えば、二酸化ケイ素粒子及びフッ素樹脂粒子を含む水性分散液を準備する。
図2に例示したのと同様の装置を用いて、着色ファブリックの片面(裏面)上に中間層を形成することができる。
【0071】
ガラスクロス31の代わりに、着色ファブリック1を巻出しロール30に巻き付ける。また、第1分散液の代わりに、第2分散液を含浸槽33内に準備する。そして、ドクターロール35は、着色ファブリック1の表面に付着した第2分散液を、できるだけ多く掻き取ることができるものに変更する。これらの変更を除いて、上述した着色ファブリックの形成と同様に含浸コーティングを行うことで、中間層を形成することができる。
【0072】
第2分散液は、例えば、二酸化ケイ素粒子を0.1質量%~20質量%の固形分濃度で含んでおり、フッ素樹脂粒子を1質量%~30質量%の固形分濃度で含んでいる。
【0073】
<粘着剤層の形成>
その後、公知の方法に従って、中間層上に粘着剤層を形成する。粘着剤層は、例えば、粘着剤及び硬化剤を含んだ粘着剤含有溶液を用意し、中間層上にこの溶液を塗布し、更に熱処理することで形成することができる。この溶液に使用する溶媒としては、例えばトルエン及びキシレンなどが挙げられる。
【0074】
粘着剤含有溶液が含む硬化剤の含有割合は、例えば、0.1重量%~15重量%の範囲内にある。
【0075】
粘着剤層形成のための溶液の粘度は、例えば、1000cP~100000cPの範囲内にある。
【0076】
粘着剤含有溶液の塗布に続く熱処理により、粘着剤が硬化して粘着剤層が形成される。この熱処理は、例えば、160℃~220℃の範囲内の温度で、120秒~600秒の時間に亘って行う。
【0077】
以上のようにして粘着テープを製造することができる。この粘着テープは、粘着剤層が片面にのみ設けられているため、例えば、粘着剤層形成後にロール状に巻くことができる。粘着剤層の形成後に、粘着剤層上に剥離紙を貼付してもよい。
【0078】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
<着色ファブリックの作製>
まず、帯状且つ長尺な、厚さ55μmのガラスクロスを準備した。このガラスクロスは、単位面積当たりの質量が48g/m2であり、縦方向の糸密度が60本/25mmであり、横方向の糸密度が46本/25mmであり、縦糸及び横糸のTEX番手はいずれも、11g/1000mであった。
【0080】
ガラスクロスに対して、
図2を参照しながら説明した含浸コーティングを複数回繰り返した。分散液としては、溶媒としての水に、PTFE樹脂粒子、無機顔料粒子及び界面活性剤を分散させた第1分散液を使用した。PTFE樹脂粒子としては、三井ケマーズフロロプロダクツ株式会社製の水性分散液(固形分濃度60質量%)を使用した。無機顔料粒子としては、着色ファブリックをオレンジ色に発色させるため、スズ、チタン、タングステン及び亜鉛を含む複合酸化物を使用した。無機顔料粒子のメジアン径は0.3μmであった。第1分散液中のPTFE樹脂粒子、無機顔料粒子及び界面活性剤の質量は、それぞれ、85.0質量%、5.1質量%及び0.6質量%とした。
【0081】
複数回の含浸コーティングを繰り返すことにより、ガラスクロスの両面上に着色フッ素樹脂層が形成された着色ファブリックを得た。
【0082】
<中間層の形成>
溶媒としての水に、PFA樹脂粒子、二酸化ケイ素粒子及び活性剤を分散させ、中間層形成用分散液(第2分散液)を作製した。第2分散液を使用して、
図2を参照しながら説明した含浸コーティングを行った。第2分散液中のフッ素樹脂粒子及び二酸化ケイ素粒子の質量は、それぞれ8.6質量%及び2.9質量%であった。第2分散液を、着色ファブリックの片面に塗布、乾燥及び焼成して中間層を形成した。
【0083】
<粘着剤層の形成>
粘着剤として過酸化物硬化型のシリコーン系粘着剤を用意し、硬化剤として過酸化ベンゾイルを用意した。これら粘着剤及び硬化剤を、溶媒としてのキシレンに溶解させて、粘着剤含有溶液を作製した。この溶液は、溶液の質量に対して粘着剤を50質量%の量で含んでおり、硬化剤を1質量%の量で含んでいた。
【0084】
この溶液を、中間層上に塗布し、塗膜を形成した。中間層上に塗膜が形成された積層体を電気オーブンに入れて、静置した状態で熱処理に供した。この熱処理は、200℃の温度で、280秒に亘って実施した。以上のようにして、実施例1に係る粘着テープを作製した。作製された粘着テープにおいて、着色ファブリックの厚みは約65μmであり、中間層の厚みは約1μmであり、粘着剤層の厚みは約50μmであった。
【0085】
(実施例2~4)
実施例2~4として、着色ファブリックを作製する際、含浸コーティングの回数をそれぞれ変更したことを除いて、実施例1と同様に粘着テープを作製した。
【0086】
<着色ファブリック表面の色調評価>
各例において作製した粘着テープが備える着色ファブリックの表面の色調を、KONICA MINOLTA社製の分光測色計CM-5及び色彩色差計CR-5を用いてL*a*b*表色系にて測定した。測定の際には、着色ファブリックの表面上の任意の10箇所の位置で、それぞれL*、a*及びb*を測定し、10箇所の位置における各値の平均値を算出した。この結果を下記表1に示す。
【0087】
<質量測定>
各例において作製した粘着テープについて、前述した方法で、着色ファブリックの単位面積当たりの質量M1、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2及び着色フッ素樹脂層が含む無機顔料の単位面積当たりの質量M3を測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0088】
【0089】
実施例1~4に係る粘着テープについて、着色ファブリックの表面の色調は、いずれも良好なオレンジ色であった。中でも、着色フッ素樹脂層の単位面積当たりの質量M2が60.0g/m2~70.0g/m2の範囲内にある実施例1及び3では、黄方向の色相を示すb*が50.0を超えるのを抑制しつつ、赤方向の色相を示すa*について22.0以上の数値を示した。これら実施例1及び3に係る着色ファブリックでは、特に優れたオレンジ色の発色性を達成した。
【0090】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0091】
1…着色ファブリック、2…ガラスクロス、3…着色フッ素樹脂層、4…中間層、5…粘着剤層。