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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056392
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】撥水性付与ドライシート
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20230412BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20230412BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20230412BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20230412BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20230412BHJP
   D06M 13/46 20060101ALI20230412BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C09K3/18 104
C11D1/62
C11D17/06
C11D3/37
D06M15/643
D06M13/46
D06M13/224
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165718
(22)【出願日】2021-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000227331
【氏名又は名称】株式会社ソフト99コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】野中 純一
【テーマコード(参考)】
4H003
4H020
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AC03
4H003AC21
4H003AE05
4H003BA19
4H003BA22
4H003DA05
4H003DA11
4H003EB02
4H003EB19
4H003EB29
4H003EB37
4H003ED02
4H003FA21
4H003FA24
4H020AA06
4H020AB05
4H020AB07
4H020BA31
4H020BA32
4H020BA33
4L033AA02
4L033AA07
4L033AB07
4L033AC03
4L033BA21
4L033BA85
4L033CA59
(57)【要約】
【課題】自動車の樹脂素材や塗膜表面のような親油性面及び自動車のフロントガラスのような親水性面の両方の処理面を使用対象とするもので、洗浄後の処理面に残っている水滴を利用して処理面に対して撥水性被膜を塗り伸ばして形成することができる撥水性付与ドライシートを提供する。
【解決手段】シリコーン樹脂と、カチオン性物質と、界面活性剤とでなる有効成分を繊維性シートに保持させてなる。界面活性剤のHLB値を3~16とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性面及び親水性面の両方の処理面を使用対象とし、洗浄後の処理面に残った水滴を拭き上げて処理面に撥水性被膜を形成させるための撥水性付与ドライシートであって、
シリコーン樹脂とカチオン性物質と界面活性剤とを含む有効成分を繊維性シートに保持させたことを特徴とする撥水性付与ドライシート。
【請求項2】
シリコーン樹脂が、トリメチルシロキシケイ酸を、ジメチルポリシロキサン又はその変性体などのオイル状物質に溶かしてなる請求項1に記載した撥水性付与ドライシート。
【請求項3】
シリコーン樹脂の添加量が、繊維性シートの重量に対し、有効分として0.5~20.0wt%である請求項1又は請求項2に記載した撥水性付与ドライシート。
【請求項4】
カチオン性物質が、カチオン系界面活性剤である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した撥水性付与ドライシート。
【請求項5】
カチオン系界面活性剤が第4級アンモニウム塩である請求項4に記載した撥水性付与ドライシート。
【請求項6】
カチオン性物質の添加量が、繊維性シートの重量に対し、有効分として0.1~2.0wt%である請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載した撥水性付与ドライシート。
【請求項7】
変性シリコーンオイルが添加されている請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載した撥水性付与ドライシート。
【請求項8】
界面活性剤のHLB値が3~16である請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載した撥水性付与ドライシート。
【請求項9】
界面活性剤の添加量が、繊維性シートの重量に対し、有効分として0.01~5.0wt%である請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載した撥水性付与ドライシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性付与ドライシートに関する。詳しくは、洗浄後の処理面に残った水滴を拭き上げることと、その水滴を利用して処理面に撥水性被膜を形成することと、を意図した撥水性付与ドライシートに関する。
【背景技術】
【0002】
先行例として、自動車の塗膜表面を拭き上げるだけでその塗膜表面に撥水性を与えることのできる撥水性付与クロスが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1で提案されている撥水性付与クロスでは、トリメチルシロキシケイ酸のオルガノポリシロキサン溶液を主成分とし、さらに遊離の水酸基を有するトリメチルシロキシケイ酸誘導体を有機溶剤に溶解又は水に分散させてなる処理剤中の不揮発成分を布帛に含浸させている。また、特許文献1には、この撥水性付与クロスを用いると、自動車の塗膜表面を拭き上げるだけで塗膜表面に撥水性が付与され、撥水性付与クロスを水で濡らしておくとさらに効果が出やすくなる、旨の記載や、トリメチルシロキシケイ酸及びオルガノポリシロキサンの作用によって撥水性被膜の定着性が向上する、旨の記載がある。このものは、上記した処理剤中の不揮発成分を、有機溶剤又は水と共に布帛に含浸させたものであることから、使用前には撥水性付与クロスが乾燥した状態に保たれている。
【0003】
これに対し、ボディを拭き上げる作業を行うだけで汚れを除去することができ、併せて、撥水性をも付与することのできるウェットクロスが知られている(特許文献2、特許文献3参照)。特許文献2又は特許文献3によって提案されているウェットクロスは、トリメチルシロキシケイ酸を撥水性成分であるジメチルポリシロキサンのような不揮発性油剤成分に溶かし、これを界面活性剤で乳化分散させて繊維性織物でなるクロスに含浸させてなる。このものは、トリメチルシロキシケイ酸を溶かした不揮発性油剤成分が繊維性織物に含まれているために、使用前にはウエットシートが湿潤した状態に保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3387852号公報(0013、0033、請求項6)
【特許文献2】特許第3482517号公報
【特許文献3】特許第4583364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上掲の特許文献1には、撥水性付与クロスが、親油性に富む自動車の塗膜表面を使用対象にすることに関して記述されているだけであり、自動車のフロントガラスのような親水性に富むガラス表面を使用対象にすることについては触れられていない。特許文献2,3によって提案されているウェットクロスも同様に、親油性に富む自動車の塗膜表面を使用対象にすることに関して記述されているだけである。
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、自動車の樹脂素材や塗膜表面のような親油性面及び自動車のフロントガラスのような親水性面の両方の処理面を使用対象としているだけでなく、特に、水洗作業などに伴って洗浄後の処理面に残る水滴を利用して処理面に撥水性被膜を塗り伸ばして成膜させることができる撥水性付与ドライシートを提供することを目的としている。また、本発明は、湿潤状態のウエットシートに比べて軽量で保管しやすい撥水性付与ドライシートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撥水性付与ドライシートは、親油性面及び親水性面の両方の処理面を使用対象とし、洗浄後の処理面に残った水滴を拭き上げて処理面に撥水性被膜を形成させるための撥水性付与ドライシートであって、シリコーン樹脂とカチオン性物質と界面活性剤とを含む有効成分を繊維性シートに保持させてなる。
【0008】
この発明において、シリコーン樹脂は、処理面に撥水性を付与するために採用されている撥水成分である。このシリコーン樹脂は、処理面に撥水性を付与するのみならず、処理面の表面に残る洗浄後の水滴を細分化して繊維性シートによる拭き取り性能を高める作用をも発揮する。特にガラス面のような親水性面は親水性が強いため、処理面が十分な撥水性を有していないと、水滴をきれいに拭き上げたりきれいに仕上げたりすることができないことが判っている。そこで、撥水成分としてのシリコーン樹脂が含まれていると、そのような親水性面であっても、シリコーン樹脂の作用により水滴が細分化されて繊維性シートによる拭き取り性能が高められる。
【0009】
この発明において、カチオン性物質は、親水性面にシリコーン樹脂を定着させる成分である。カチオン性物質は、水溶液中では、分子中の親水性部分がプラス電荷を持ち、親油性部分がマイナス電荷を持つ。そして、カチオン性物質の親水性部分がガラス表面のような親水性面に馴染んで定着しやすく、親水性面に定着したカチオン性物質の親油性部分が表面に露呈して、ガラス表面のような親水性面が、見掛け上、親油性面に変性される。こうしてカチオン性物質の作用によって親水性面が親油性面に変性されると、カチオン性物質の親油性部分に親油性のシリコーン樹脂が馴染んで定着しやすくなり、ガラス表面のような親水性面にカチオン性物質を介して親油性の撥水成分としてのシリコーン樹脂が定着する。
【0010】
このことを言い換えると、自動車の樹脂素材表面や塗膜表面などの処理面は、表面に親油基(疎水基)が存在しているので、親油性のシリコーン樹脂が馴染みやすく均一に定着されやすいけれども、ガラス表面のような親油基(疎水基)を持たない処理面には、親油性のシリコーン樹脂が馴染みにくく均一に定着させることができない。また、シリコーン樹脂にはガラス表面に対する反応基が存在しないので、シリコーン樹脂をそのままガラス表面に塗っただけでは、ガラス表面にシリコーン樹脂を均一に定着させることができない。このことにより、ガラス表面はシリコーン樹脂のみで処理しても均一な撥水被膜が形成されないために水滴が細分化されず、繊維性シートで拭き取ってもきれいに仕上がらない。また、シリコーン樹脂のみで処理したガラス表面に水をかけてもきれいな水玉にはならない。これに対して、上記のようにカチオン性物質の作用によってガラス表面のような親水性面が親油性面に変性されていると、その親水性面にカチオン性物質を介してシリコーン樹脂でなる親油性の撥水成分としてシリコーン樹脂が均一に定着する。
【0011】
この発明において、界面活性剤は、シリコーン樹脂を処理面上で均一に展延させる成分であることに加えて、シリコーン樹脂をエマルジョン化することにも役立つ成分である。
【0012】
この発明において、繊維性シートには、中心に親水性繊維を配し、外層にPETやPEなどの疎水性繊維を配した3層構造の不織布を採用することができる。特に、水分の吸収性やクッション性に優れたエアレイド式の不織布を好適に採用することができる。この種の繊維性シートは、ガラス面での滑り性も良好なためにスムーズに作業することができるという利点を有している。外層にマイクロファイバーを使用するとも可能で、そうすることにより水滴の拭き取り性や汚れ除去性が向上する。また、繊維性シートには、上記の3層構造の不織布以外も使用はできるが、表層にレーヨンやパルプなどの親水性繊維の比率が多いと、水滴が残りやすかったり、滑り性が特にガラス面において悪く、シートが引っかかってしまい作業性が悪くなる。このため上記の3層構造の不織布でない場合は親水性繊維:疎水性繊維=50:50~0:100の割合で用いるのが望ましい。
【0013】
この発明においては、上掲のシリコーン樹脂とカチオン性物質と界面活性剤とでなる有効成分を繊維性シートに保持させる手法として、石油系溶媒のようなシリコーン樹脂を溶解させることのできる有機溶媒又はイオン交換水のような水を溶媒として使用し、この種の溶媒に、上記の有効成分を溶解又は分散させて繊維性シートに含浸させるという方法を利用することができる。この方法を利用して有効成分及び溶媒を繊維性シートに含浸させたままでは、繊維性シートがウエット状態になっているので、その後に乾燥処理を行ってドライ状態にすることが必要になる。
【0014】
繊維性シートの乾燥処理には、揮発性成分である溶媒を除去する処理のみでなく、シリコーン樹脂をエマルジョン化したものに含まれる揮発性成分である分散媒としての水分をも除去する処理も含んでいる。溶媒のうち不揮発性成分はこの乾燥処理によっては除去されない。つまり、揮発性の成分とは常温付近の温度で揮発し、また、この乾燥処理よって除去される成分であり、不揮発性成分は常温付近の温度では揮発せず、また、この乾燥処理よっても除去されない成分である。たとえば、実施例として後述するシリコーン樹脂エマルジョンAを使用する場合、シリコーン樹脂エマルジョンAはメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサンに溶かしたものをエマルジョン化したものであるので水分を含んでいる、この場合の水分は溶媒というより乳化における分散媒であり、揮発性の成分である。また、ジメチルポリシロキサンを溶媒と見た場合、ジメチルポリシロキサンは溶媒であっても揮発性が極めて低いことから常温付近の温度では揮発せず、また乾燥処理によっては揮発しないために除去されない不揮発性成分である。この発明において、乾燥処理された繊維性シートはドライ状態になっている。このため、洗浄に使われた水滴が残っているガラス面(親水性面)や塗膜表面(親油性面)などの処理面を拭き上げるのに伴って繊維性シートが処理面に残っている水滴を吸収することや、また、場合によっては使用する前にあらかじめ繊維製シート全体を水で濡らしてから軽く絞るという操作を行って水分を吸収させることで、有効成分中のシリコーン樹脂が界面活性剤の作用により処理面に付きやすくなる。シリコーン樹脂やカチオン性物質、界面活性剤などの有効成分は不揮発性の成分であって、繊維性シートを乾燥処理した後も、繊維性シートに有効成分として含浸されたままになる。
【0015】
本発明においては、シリコーン樹脂が、トリメチルシロキシケイ酸を、ジメチルポリシロキサン又はその変性体などのオイル状物質に溶かしてなるものを好適に採用することができる。
【0016】
親油性面である自動車の樹脂素材表面及び塗膜表面や親水性面である自動車フロントガラスなどのガラス表面に残った水滴をきれいに拭き上げるためには、樹脂素材表面や塗膜表面やガラス表面などの処理面を十分な撥水状態にしておく必要がある。処理面が十分な撥水状態になっていないと、処理面の表面に残る洗浄後の水滴が大きな水滴となって拭き残しの原因となる。処理面が十分な撥水状態になっていると、水滴は細分化されて繊維製シートに吸収されやすくなり、処理面に水分が残りにくくなる。このことから、ジメチルポリシロキサン又はその変性体にトリメチルシロキシケイ酸を溶かしてなるシリコーン樹脂は、処理面を拭き上げて処理面に十分な撥水性を付与し、きれいな光沢面や撥水面を形成させるために必要な成分であると云える。トリメチルシロキシケイ酸そのものは固体(粉体)状であるため、そのままで親水性面や親油性面などの処理面に一様に展延することができない。そこで、この発明では、トリメチルシロキシケイ酸の溶媒として、ジメチルポリシロキサン又はその変性体などのオイル状物質を採用している。トリメチルシロキシケイ酸の溶媒として採用することのできるオイル状物質としては、上記のジメチルポリシロキサン又はその変性体のほか、シクロペンタシロキサンなどの環状シリコーンから選ばれた溶媒を選択使用することが可能であり、そうすることによってによって、処理面に一様な撥水成分としてのシリコーン樹脂の被膜を均一に形成させることができるようになる。
【0017】
本発明においては、シリコーン樹脂の添加量が、繊維性シートの重量に対し、有効分として0.5~20.0wt%であることが望ましい。添加量が0.5wt%未満であると、処理面を十分な撥水面に仕上げることができず、処理面に付着した水滴が細分化されにくいためにきれいに拭き上げることが困難になる。添加量が20wt%を超えると、処理面に撥水成分としてのシリコーン樹脂が過剰に定着してしまい、撥水性被膜が不均一になったりムラになったりして特にガラス面でハレーションを起こしやすくなるために好ましくない。添加量が0.5~20.0wt%であると、上記のような不都合が起こりにくく、処理面を容易にきれいに仕上げることができる。
【0018】
本発明においては、カチオン性物質が、カチオン系界面活性剤であることが望ましく、特に、カチオン性物質が第4級アンモニウム塩であることが望ましい。
【0019】
カチオン系界面活性剤は疎水基(親油基)と親水基を有する化合物であって、親水基が水溶液中でプラスの電荷を持つことにより、ガラス表面のようなマイナス電荷の処理面上では、カチオン系界面活性剤のプラス電荷の親水基がガラス表面に引き寄せられることになって外側に向かって疎水基(親油基)が並び、その疎水基(親油基)に撥水成分としてのシリコーン樹脂が馴染むことにより撥水性被膜を形成すると考えられる。この種のカチオン性物質の役割は、ガラス表面のようなマイナス電荷の処理面でのシリコーン樹脂の定着性を強化することによって処理直後の撥水状態を改善し、併せて、処理後の撥水耐久性を改善することである。また、カチオン性物質が第4級アンモニウム塩であると、親水基部分が常にプラスに帯電しており、その状態が溶液のpHにかかわらず安定している。第4級アンモニウム塩としては、塩化(又は臭化、ヨウ化)ジアリルジメチルアンモニウムや、塩化アルキルベンザルコニウムがある。
【0020】
この点に関し、第4級アンモニウム塩に代えて、一般的にガラス撥水剤として多用されているアミノシリコーンを使用しても、本発明によって発揮される作用効果に似た作用効果を得ることができるけれども、このものは、繊維性シートに含浸されている状態のまま一定期間放置するとアミノシリコーンと繊維との親和性が進むことによって、ガラス面のようなマイナス電荷の処理面を撥水状態にすることができなくなり、シリコーン樹脂だけを配合したものと同じ状況になることを確認している。これは、繊維性シートに含まれたアミノシリコーンが、温度的又は経時的要素によって状態が不安定になり、親油性の強い繊維性シートの方に吸着されてしまうために、シリコーン樹脂だけを配合したものと同じ状況になるものと考えられる。このため、シートタイプの製品においてアミノシリコーンの使用は不向きであると云える。
【0021】
ところで、シリコーン樹脂を処理面上で均一に展延させる成分としての界面活性剤には、ノニオン系、カチオン系又はアニオン系の界面活性剤を使用することができる。ノニオン系海面活性剤は、撥水成分としてのシリコーン樹脂をエマルジョン化することに役立つ。カチオン系界面活性剤も撥水成分としてのシリコーン樹脂をエマルジョン化し得る可能性がある。また、アニオン系界面活性剤も少量であればノニオン系やカチオン系の界面活性剤との併用が可能である。
【0022】
また、本発明においては、界面活性剤が、撥水成分としてのシリコーン樹脂をエマルジョン化するために添加された界面活性剤と、撥水成分としてのシリコーン樹脂を処理面上で均一に展延させる成分として追加補充された界面活性剤とを含む、という構成を採用することも可能である。
【0023】
本発明に係る撥水性付与ドライシートは、有効成分を繊維性シート保持させたドライ状態のものである。そのため、繊維性シートにはシリコーン樹脂がエマルジョンとしては存在していない。その一方で、繊維性シートに含まれているシリコーン樹脂を処理面に付着させるためには、繊維性シートで拭き上げた水滴を有効成分中に素早く分散させて処理面に均一に伸ばせるようにすることが要求される。このことを考慮し、この発明では、界面活性剤が、シリコーン樹脂をエマルジョン化するために添加された界面活性剤と、シリコーン樹脂を処理面上で均一に展延させる成分として追加補充された界面活性剤とを含んでいる、という構成を採用しておくことが望ましいと云える。言い換えると、シリコーン樹脂をエマルジョン化するために添加された界面活性剤の量だけでは、シリコーン樹脂を処理面上で均一に展延させるためには不十分であるために、十分な量となるよう界面活性剤を処理液中に追加補充しておくことによってシリコーン樹脂を処理面に均一に伸ばせるだけの界面活性剤の量を確保しておくことが望ましいと云える。また、界面活性剤を処理液中に追加補充しておくと、疎水性の強い繊維性シートのようにドライ状態からの初期の吸水性が悪い繊維性シートを用いた場合であっても初期の吸水性が改善されるという利点がある。
【0024】
本発明では、カチオン性物質の添加量が、繊維性シートの重量に対し、有効分として0.1~2.0wt%であることが望ましい。カチオン性物質(たとえば、第4級アンモニウム塩のようなカチオン系界面活性剤)の添加量は繊維性シートの重量に対して0.1~2.0wt%が適切である。添加量が0.1wt%未満であると、ガラス表面に十分にシリコーン樹脂を定着させる効果が得にくくなり、2.0wt%を超えると、ガラス表面にシリコーン樹脂が過剰に定着してしまい、撥水性被膜が不均一になったりムラになったりして特にガラス面でハレーションを起こしやすくなるために好ましくない。添加量が0.1~2.0wt%であると、上記のような不都合が起こりにくく、処理面を容易にきれいに仕上げることができる。
【0025】
本発明では、変性シリコーンオイルが添加されていることが望ましい。変性シリコーンとしては、末端又は両末端に水酸基(OH基)を有するものが望ましく、この種の変性シリコーンオイルを添加しておくと、ガラス表面のような親水性の処理面を拭き上げた後の初期の撥水性やその後の撥水耐久性が向上する。これは、親水性の処理面との反応性はそれほど強くないけれども、変性シリコーンが水酸基を持っていることによって親水性の処理面の水酸基と部分的に反応していることによると考えられる。変性シリコーンオイルの望ましい添加量は、繊維性シートの重量に対して0.1~10.0wt%である。0.1wt%未満であると十分な撥水性を得にくく、10.0wt%を超えると、処理面に撥水成分としてのシリコーン樹脂が過剰に定着してしまい、撥水性被膜が不均一になったりムラになったりし、オイル過剰による撥水性被膜の耐久性低下を来すおそれがある。添加量が0.1~10.0wt%であると、上記のような不都合が起こりにくい。
【0026】
本発明では、界面活性剤のHLB値が3~16であることが望ましい。HLB値とは、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値、言い換えると、親水性と親油性のバランスの程度のことである。HLB値は0から20までの値をとり、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなり、HLB値によって界面活性剤の性質や用途もある程度決定される。HLB値が3よりも小さいと一部が水に溶解するだけでほとんど水には溶けない。このため、シリコーン樹脂をきれいに拭き伸ばしにくくなる。HLB値が16よりも大きいと、界面活性剤が洗浄後に残った水に分散しすぎて樹脂素材や塗膜表面やガラス面などの処理面に残りやすくなって処理面の撥水性が低下する。HLB値が3~16であれば、シリコーン樹脂を無理なくきれいに拭き伸ばすことができ、しかも、シリコーン樹脂が処理面に残りにくくなって処理面での撥水性の低下が起こりにくい。HLB値のさらに好ましい範囲は8~14程度である。
【0027】
本発明では、界面活性剤の添加量が、繊維性シートの重量に対し、有効分として0.01~5.0wt%であることが望ましい。この範囲は、特に、処理液中の界面活性剤としてノニオン系界面活性剤を採用した場合に有益である。添加量が0.01wt%未満であると、シリコーン樹脂を処理面に均一に伸ばしにくくなり、疎水性繊維を使用した際の初期の吸水性も向上しなくなる。添加量が5.0wt%を超えると、処理面にシリコーン樹脂が過剰に定着してしまい、撥水性被膜が不均一になったりムラになったりし、撥水性被膜の耐水性や耐久性の低下を来すおそれがある。添加量が0.01~5.0wt%であると、上記のような不都合が起こりにくい。
【0028】
本発明に係る撥水性付与ドライシートでは、任意添加成分として、ワックスのエマルジョンやディスパージョンを添加することが可能である。ワックスのエマルジョンやディスパージョンは撥水性被膜の耐久性を向上させることに役立つ。ワックス成分としては天然又は合成の各種ワックス状物質を挙げられる。具体的には、脂肪酸及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス、シュガーワックス、ライスワックス、木ロウ、硬化ヒマシ油、などの植物系天然ワックス、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン及びその誘導体などの動物系天然ワックスがある。また、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの石油系天然ワックスや、モンタンワックス、オゾケライトワックス、セレシンなどの鉱物系天然ワックス、さらには、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、及びそれらの誘導体などの合成系ワックスなどがある。これらのワックス成分のエマルジョンやディスパージョンと、トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサン又はその変性体などのオイル状物質に溶かしてなるシリコーン樹脂を界面活性剤で乳化したものと、を組み合わせることによって、被膜が厚くなり、洗車キズの上から被さることでキズが目立ちにくくなる。また、当然ながら初期のツヤとツヤの持続性が向上する。特に洗浄時におけるツヤ及び撥水の耐久性が顕著に向上する。しかしながら、ガラス面のような処理面においては多く添加しすぎるとハレーションの原因になるので、添加量としては少なく設定することが好ましい。添加量としては、繊維性シート(布)の重量に対し0.01~2.0wt%が適切で、0.01wt%未満であると十分なツヤ及び撥水の持続性が発揮されず、2.0wt%を超えると十分なツヤと撥水は発揮されるけれども、塗膜表面やガラス面に過剰に成分が付着して濃淡ムラやギラつきの原因になり、また固形分が過剰すぎてキレイに成分をのばすことができなくなる。
【0029】
本発明に係る撥水性付与ドライシートでは、その他の必須ではない任意的添加可能な成分として、色素や紫外線吸収剤や防腐剤、抗菌剤(抗ウイルス剤)、増粘剤や研磨剤やその他の機能性微粒子などを挙げられる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係る撥水性付与ドライシートは、シリコーン樹脂が親油性を示すこと、親水性面を親油性面に変性させることのできるカチオン性物質が親水性部分及び親油性部分の両方を備えていることに加えて、洗浄後の処理面に残った水滴が繊維性シートに吸収されて有効成分を処理面に塗り伸ばすための溶媒として作用すること、に着目したものであって、自動車の樹脂素材表面や塗膜表面のような親油性面と自動車のフロントガラスのような親水性面の両方の使用に馴染み、親油性面及び親水性面のどちらに使用しても、処理面の表面に残る洗浄後の水滴を拭き取ると共に、処理直後及び処理後の耐久性に優れた撥水性被膜を形成することと、が可能になる。なお、本発明に係る撥水性付与ドライシートの使用対象は、自動車の樹脂素材や塗膜表面やフロントガラスに限らず、他の親油性面や親水性面にも使用でき、また、撥水性だけでなく光沢も与えることができるため、自動車だけでなく家具やインテリア製品の艶出しシートとしても使用できる。ただし、水滴の存在していない家具やインテリア製品などの処理面に撥水性を付与するに当たっては、あらかじめ繊維性シートを濡らしておくことが必要である。そのほか、本発明に係る撥水性付与ドライシートに、湿潤状態のウエットシートに比べて軽量で保管しやすいという利点もある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を示す実施例を比較例と共に説明する。
【実施例0032】
実施例及び比較例について使用した原料は以下に列挙した通りである。
(1)シリコーン樹脂エマルジョンA
トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサンに溶かしたものをエマルジョン化したもの(シリコーン成分の有効濃度40wt%、使用したジメチルポリシロキサン粘度350cs、トリメチルシロキシケイ酸とジメチルポリシロキサンとの混合比率30:70、乳化剤としてノニオン系活性剤+アニオン系活性剤:6.0%を使用)
(2)シリコーン樹脂エマルジョンB
トリメチルシロキシケイ酸をシクロペンタシロキサンに溶かしたものをエマルジョン化したもの(シリコーン成分の有効濃度30wt% 使用したシクロペンタシロキサン粘度4cs、トリメチルシロキシケイ酸とシクロペンタシロキサンとの混合比率50:50、乳化剤としてノニオン系活性剤:6.0%を使用)
(3)シリコーン樹脂エマルジョンC
トリメチルシロキシケイ酸をジメチルシリコーンに溶かしたものをエマルジョン化したもの(シリコーン成分の有効濃度30wt%、使用したジメチルシロキサン粘度6cs、トリメチルシロキシケイ酸とジメチルシリコーンとの混合比率50:50、乳化剤としてノニオン系活性剤:3%)
(4)シリコーン樹脂D
トリメチルシロキシケイ酸をジメチルシリコーンに溶かしたもの(使用したジメチルシロキサン粘度6cs、トリメチルシロキシケイ酸とジメチルシリコーンの混合比率50:50、乳化剤は不添加)
(5)ジメチルシリコーンエマルジョンA
ジメチルポリシロキサンをエマルジョン化したもの(ジメチルポリシロキサンの粘度10cs、シリコーン成分の有効濃度30wt%、乳化剤としてノニオン系界面活性剤:5.0%)
(6)ジメチルシリコーンエマルジョンB
ジメチルポリシロキサンをエマルジョン化したもの(ジメチルポリシロキサンの粘度500cs、シリコーン成分の有効濃度30wt%、乳化剤としてノニオン系界面活性剤:3.0%)
(7)両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンA
両末端OH変性ジメチルポリシロキサンをエマルジョン化したもの(両末端OH変性ジメチルポリシロキサンの粘度粘度30cs、シリコーン成分の有効濃度30wt%、乳化剤としてノニオン系界面活性剤:3.0%)
(8)両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンB
両末端OH変性ジメチルポリシロキサンをエマルジョン化したもの(両末端OH変性ジメチルポリシロキサンの粘度700cs、シリコーン成分の有効濃度30wt%、乳化剤としてノニオン系界面活性剤:3.0%)
(9)両末端OH変性ジメチルシリコーンC
両末端OH変性ジメチルポリシロキサン(両末端OH変性ジメチルポリシロキサンの粘度700cs、乳化剤は不添加)
(10)カチオン系界面活性剤A
有効成分30% 化学組成としてセチルトリメチルアンモニウムクロライドで表されるカチオン系界面活性剤
(11)カチオン系界面活性剤B
有効成分50% 化学組成としてアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドであらわされるカチオン系界面活性剤
(12)ノニオン系界面活性剤A
有効成分100%、化学組成としてソルビタンモノラウレートであらわされるノニオン系界面活性剤、HLB8.6
(13)ノニオン系界面活性剤B
有効成分100%、ジメチルポリシロキサンの側鎖をポリエーテルで変性したシリコーン系界面活性剤であるノニオン系界面活性剤、HLB14
(14)ワックスエマルジョンB
ポリエチレンワックス(分子量約500)をエマルジョン化したもの(ワックス分の有効濃度30wt%、ノニオン系界面活性剤:5wt%)
【0033】
実施例1
シリコーン樹脂エマルジョンA 5.00wt%
カチオン系界面活性剤A 1.00wt%
ノニオン系界面活性剤A 0.50wt%
イオン交換水 93.50wt%
100.00wt%
イオン交換水にシリコーン樹脂エマルジョンA、カチオン系界面活性剤A及びノニオン系界面活性剤Aを溶解又は分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットしたレーヨン+ポリエステル(混紡比40:60)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に、不織布の重量に対して2.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0034】
実施例2
シリコーン樹脂エマルジョンB 5.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 1.00wt%
カチオン系界面活性剤B 1.00wt%
ノニオン系界面活性剤A 0.50wt%
イオン交換水 92.50wt%
100.00wt%
イオン交換水にシリコーン樹脂エマルジョンB、ジメチルシリコーンエマルジョンB、カチオン系界面活性剤B及びノニオン系界面活性剤Aを溶解又は分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットしたポリエチレン/ポリエステルのマイクロファイバー(0.5デニール)8割とポリエステル(1.7デニール)2割で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して3.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0035】
実施例3
シリコーン樹脂エマルジョンC 4.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンA 1.00wt%
両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンA 3.00wt%
カチオン系界面活性剤A 1.50wt%
ノニオン系界面活性剤B 0.30wt%
イオン交換水 90.20wt%
100.00wt%
イオン交換水にシリコーン樹脂エマルジョンC、ジメチルシリコーンエマルジョンA、両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンA、カチオン系界面活性剤A及びノニオン系界面活性剤Bを溶解または分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットした中層がパルプ、外層がポリエチレン/ポリプロピレン(1.2デニール)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して2.5重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0036】
実施例4
シリコーン樹脂エマルジョンC 4.00wt%
シリコーン樹脂エマルジョンB 1.50wt%
両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンA 2.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンA 1.00wt%
カチオン系界面活性剤A 1.50wt%
ノニオン系界面活性剤B 0.50wt%
イオン交換水 89.50wt%
100.00wt%
イオン交換水に、シリコーン樹脂エマルジョンC、シリコーン樹脂エマルジョンB、両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンA、ジメチルシリコーンエマルジョンA及びノニオン系界面活性剤Bを溶解または分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットした中層がパルプ、外層がポリエチレン/ポリプロピレンのマイクロファイバー(0.5デニール)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して3.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0037】
実施例5
シリコーン樹脂エマルジョンC 6.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 1.00wt%
両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンB 2.50wt%
カチオン系界面活性剤A 1.50wt%
ワックスエマルジョンA 0.50wt%
ノニオン系界面活性剤A 0.70wt%
イオン交換水 87.80wt%
100.00wt%
イオン交換水に、シリコーン樹脂エマルジョンC、ジメチルシリコーンエマルジョンB、両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンB、カチオン系界面活性剤A、ワックスエマルジョンA及びノニオン系界面活性剤Aを溶解又は分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットした中層がパルプ、外層がポリエチレン/ポリプロピレン(1.2デニール)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して3.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0038】
実施例6
シリコーン樹脂エマルジョンA 2.50wt%
シリコーン樹脂エマルジョンB 2.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 0.50wt%
カチオン系界面活性剤B 1.50wt%
ノニオン系界面活性剤B 1.00wt%
両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンA 3.50wt%
イオン交換水 88.50wt%
100.00wt%
イオン交換水に、シリコーン樹脂エマルジョンA、シリコーン樹脂エマルジョンB、ジメチルシリコーンエマルジョンA、ジメチルシリコーンエマルジョンB、カチオン系界面活性剤A、ノニオン系界面活性剤B及び両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンAを溶解または分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットした中層がレーヨン、外層がポリエチレン/ポリエステルのマイクロファイバーで構成された不織布(全体の目付け量:70g/m 中心層10g 外層の片側30g)に不織布の重量に対して3.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0039】
実施例7
シリコーン樹脂D 6.00wt%
両末端OH変性ジメチルシリコーンC 3.00wt%
カチオン系界面活性剤A 1.50wt%
ノニオン系界面活性剤A 1.50wt%
ミネラルスピリット 30.00wt%
イオン交換水 58.00wt%
100.00wt%
ミネラルスピリットにシリコーン樹脂D、両末端OH変性ジメチルシリコーンC及びノニオン系界面活性剤Aを溶解させた後、ホモミキサーにて撹拌しながらイオン交換水を加えてW/O型のエマルジョンとした後、カチオン系界面活性剤Aを添加し、均一分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットした中層がパルプ、外層がポリエチレン/ポリプロピレン(1.2デニール)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して2.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0040】
比較例1
ジメチルシリコーンエマルジョンA 4.00wt%
イオン交換水 96.00wt%
100.00wt%
イオン交換水にジメチルシリコーンエマルジョンAを分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットしたレーヨン+ポリエステル(混紡比40:60)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して4.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0041】
比較例2
シリコーン樹脂エマルジョンA 5.00wt%
イオン交換水 95.00wt%
100.00wt%
イオン交換水にシリコーン樹脂エマルジョンAを分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットしたコットン+ポリエステル(混紡比40:60)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して2.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0042】
比較例3
シリコーン樹脂エマルジョンA 6.00wt%
ワックスエマルジョンB 1.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 1.00wt%
ノニオン系界面活性剤B 1.00wt%
イオン交換水 91.00wt%
100.00wt%
イオン交換水にシリコーン樹脂エマルジョンA、ワックスエマルジョンB、ジメチルシリコーンエマルジョンB及びノニオン系界面活性剤Bを分散又は溶解させて処理液を調整した。
30×30cmにカットしたポリエステルとレーヨンの混紡品(混紡比率80:20 不織布の構成繊維径が2.0デニール)で構成された不織布(目付け量:70g/m)に不織布の重量に対して3.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0043】
比較例4
カチオン系界面活性剤A 1.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 5.00wt%
ノニオン系界面活性剤A 1.00wt%
イオン交換水 93.00wt%
100.00wt%
イオン交換水にカチオン系界面活性剤A、ジメチルシリコーンエマルジョンB及びノニオン系界面活性剤Bを分散又は溶解させて処理液を調整した。
30×30cmにカットした中層がパルプ、外層がポリエチレン/ポリプロピレン(1.2デニール)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して3.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0044】
比較例5
カチオン系界面活性剤A 1.00wt%
両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 3.00wt%
ノニオン系界面活性剤B 1.00wt%
イオン交換水 94.50wt%
100.00wt%
イオン交換水にカチオン系界面活性剤A、両末端OH変性ジメチルシリコーンエマルジョンA、メチルシリコーンエマルジョンB及びノニオン系界面活性剤Bを分散又は溶解させて処理液を調整した。
30×30cmにカットした中層がパルプ、外層がポリエチレン/ポリプロピレン(1.2デニール)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して3.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0045】
比較例6
シリコーン樹脂D 6.00wt%
ノニオン系界面活性剤A 1.50wt%
ミネラルスピリット 30.00wt%
イオン交換水 62.50wt%
100.00wt%
ミネラルスピリットに、シリコーン樹脂D及びノニオン系界面活性剤Aを溶解させた後、ホモミキサーにて撹拌しながらイオン交換水を加えてW/O型のエマルジョンとした後、カチオン系界面活性剤Aを添加し、均一分散させて処理液を調整した。
30×30cmにカットした中層がパルプ、外層がポリエチレン/ポリプロピレン(1.2デニール)で構成された不織布(全体の目付け量:80g/m)に不織布の重量に対して2.0重量倍に相当する処理液を均一に含浸させた後、温度60℃に設定した恒温槽にて5時間乾燥させ、揮発性の成分を除去してサンプルを得た。
【0046】
試験方法
作成した繊維性シート(布)を使用して処理直後の塗膜表面及びガラス面の汚れの除去性について調べた。
【0047】
評価試験は次のように行った。
試験用として2010年型トヨタカローラフィールダー(商品名)黒色塗装車のボンネット部分及びフロントガラス部分を使用した。ボンネット部分はクリーナーワックスをかけて汚れを除去し、さらに残っているワックスの被膜部分を脂肪族系溶剤で除去した後のボンネットを試験面とした。この試験面を12区分(1区分は約25×40cm四方)に分けた後、ボンネット表面にシャワーノズルを用いて水を均一にかけた状態にしてからそれぞれのサンプルを使用して拭き上げた。次に、フロントガラス部分はガラス用研磨剤をかけて汚れや撥水コート被膜を除去し、さらに残っている油膜をIPAで除去して、これを試験面とした。この試験面を12区分(1区分は約25×40cm四方)に分けた後、ボンネット表面にシャワーノズルを用いて水を均一にかけた状態にしてからそれぞれのサンプルを使用して拭き上げた。このとき1区画だけを空試験用として無処理で残しておくようにした。
【0048】
塗膜表面に残った水滴の除去性
各サンプルを4つ折りにし、試験面全体を拭き上げるように作業を往復10回行い、水滴の除去性を評価した。
◎ 大変良い(水滴がきれいに除去され、均一な艶が出ている状態)
○ 良い(水滴がきれいに除去されているが、少し濃淡ムラになっている状態)
△ 普通(水滴が拭きスジとなって少し残っている状態)
× 悪い(水滴が拭き取れず、撥水成分がムラになって筋状に残っている状態)
【0049】
ガラス面に残った水滴の除去性
各サンプルを4つ折りにし、試験面全体を拭き上げるように作業を往復10回行い、水滴の除去性を評価した。
◎ 大変良い(水滴がきれいに除去され、拭き残りやギラツキがなく均一な状態)
○ 良い(水滴がきれいに除去されているが、少し濃淡ムラがある状態)
△ 普通(水滴が少なくなったがところどころに撥水成分が筋状に残っている状態)
× 悪い(試験面全体に撥水成分が筋状に残っている状態)
【0050】
処理直後の撥水状態(塗膜表面)
試験面に水を掛け、水玉の状態を目視にて判定した。
◎ よく水玉になってはじく
○ はじきはあるが、水玉が少し変形している。
△ やや、はじきが鈍く、水玉がかなり変形している。
× 殆どはじかない
【0051】
処理直後の撥水状態(ガラス面)
試験面に水を掛け、水玉の状態を目視にて判定した。
◎ よく水玉になってはじく
○ はじきはあるが、水玉が少し変形している。
△ やや、はじきが鈍く、水玉がかなり変形している。
× 殆どはじかない
【0052】
撥水の耐久性
屋外に駐車した状態で1月放置した後、水洗い洗車を行った後に、試験面に水をかけ水玉の状態を目視にて判定した。
◎ よく水玉になってはじく
○ はじきはあるが、水玉が少し変形している。
△ やや、はじきが鈍く、水玉がかなり変形している。
× 殆どはじかない。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示した評価試験結果によると、塗膜表面やガラス面に残った水滴の除去性、及び、塗膜表面やガラス面での処理直後の撥水状態及び撥水の耐久性に関して、繊維性シートに、撥水成分であるシリコーン樹脂のほか、定着性を高めるカチオン系界面活性剤及び撥水成分としてのシリコーン樹脂を処理面上で展延させるためのノニオン系界面活性剤を含んでいる実施例3~7では、すべての項目において◎の評価が得られ、実施例1や実施例2では、一部の項目で△の評価になってはいるものの、残りの項目では○の評価が得られた。また、実施例1~7において、上記各項目で×と評価される事例はなかった。これに対して、比較例1~6では、上記各項目で◎の評価は全く得られず、一部に○と評価された事例があるものの、多くの項目で△や×の評価になった。このことから、本発明に係る撥水性付与ドライシートは、塗膜表面やガラス面に残った水滴の除去性、及び、塗膜表面やガラス面での処理直後の撥水状態及び撥水の耐久性に関して比較例1~6を凌駕していると云える。