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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056465
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】蛍光体デバイス及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102068
(22)【出願日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2021165146
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中島 功康
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】森 俊雄
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA07
2H148AA19
2H148AA25
2H148AA27
2H148AA28
(57)【要約】
【課題】蛍光部で発生する熱の放熱性を良くすることができるとともに、隣接する2つの部材の界面で剥離が生じることを抑制できる蛍光体デバイス等を提供する。
【解決手段】蛍光体デバイス1は、基板部材10と、少なくとも蛍光部21及び光反射部22を有する波長変換部材20と、を備え、蛍光部21と基板部材10とは、接着後の状態において可撓性を有する透明接着層30を介して接着されており、蛍光部21の主成分は、蛍光体セラミックスであり、蛍光部21の厚みは、200μm以上であり、蛍光部21と基板部材10とにおいて、線膨張係数の小さい方の線膨張係数の値は、線膨張係数の大きい方の線膨張係数の値の97%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部材と、
少なくとも蛍光部及び光反射部を有する波長変換部材と、を備え、
前記蛍光部の主成分は、蛍光体セラミックスであり、
前記蛍光部の厚みは、200μm以上であり、
前記蛍光部と前記基板部材とにおいて、線膨張係数の小さい方の線膨張係数の値は、線膨張係数の大きい方の線膨張係数の値の97%以下であり、
前記蛍光部と前記基板部材とは、接着後の状態において可撓性を有する透明接着層を介して接着されている、
蛍光体デバイス。
【請求項2】
前記光反射部は、前記蛍光部と熱的に接している、
請求項1に記載の蛍光体デバイス。
【請求項3】
前記光反射部は、アルミナによって構成されている、
請求項1に記載の蛍光体デバイス。
【請求項4】
前記光反射部は、樹脂材料からなるバインダと、無機材料からなる光反射粒子とによって構成されている、
請求項1に記載の蛍光体デバイス。
【請求項5】
前記バインダは、前記蛍光部の上面にかかっていない、
請求項4に記載の蛍光体デバイス。
【請求項6】
前記透明接着層のヤング率は、0.1GPa未満である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項7】
前記透明接着層の厚みは、0.5μm以上20μm以下である、
請求項6に記載の蛍光体デバイス。
【請求項8】
前記透明接着層は、シリコン樹脂を主成分とする、
請求項7に記載の蛍光体デバイス。
【請求項9】
前記透明接着層の厚みは、0.5μm以上20μm以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項10】
前記透明接着層は、シリコン樹脂を主成分とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項11】
前記基板部材は、透光基材と、前記透光基材の前記波長変換部材側の面である第1の面に設けられた誘電体多層膜と、を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項12】
前記透光基材を構成する材料の主成分は、Al、AlN、又は、GaNである、
請求項11に記載の蛍光体デバイス。
【請求項13】
前記基板部材は、さらに、前記透光基材の前記第1の面に背向する第2の面に設けられた反射防止膜を有する、
請求項11に記載の蛍光体デバイス。
【請求項14】
さらに、前記基板部材の前記波長変換部材側の面とは反対側の面に接合層を介して設けられた金属板を備え、
前記金属板は、前記蛍光体デバイスに入射する光が通過する開口部を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体デバイス。
【請求項15】
前記接合層は、樹脂材料によって構成されている、
請求項14に記載の蛍光体デバイス。
【請求項16】
前記接合層は、高熱伝導フィラーを有する、
請求項14に記載の蛍光体デバイス。
【請求項17】
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体デバイスと、
前記蛍光体デバイスに入射する光を発する光源と、を備え、
前記蛍光体デバイスにおける前記蛍光部の外形サイズは、前記光源から出射した光が前記蛍光部に入射するときのスポットサイズと同等である、
発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体デバイス及び蛍光体デバイスを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ、内視鏡、車載ヘッドランプ、照明装置又は液晶表示装置等には、LED又は半導体レーザ等の固体発光素子を光源とする発光装置が用いられている。この種の発光装置は、例えば、光源と、光源が発する光を励起光として蛍光を発する蛍光体デバイスとを備える。この場合、プロジェクタ又は内視鏡に用いられる発光装置については高輝度が要求されるので、光源としては半導体レーザが用いられる。
【0003】
この種の蛍光体デバイスとして、特許文献1には、透光部材と、透光部材の上に配置された、蛍光部及び光反射部を有する波長変換部材とを備える光学部品が開示されている。特許文献1に開示された光学部品では、波長変換部材の蛍光部と透光部材との間に空間を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-53130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光体デバイスでは、蛍光部に励起光が照射されることで蛍光部から所定の色の光が放出される。このとき、蛍光部に励起光が照射されることで蛍光部が発熱する。特に、蛍光部の光入射側の部分が高温になる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された蛍光体デバイスでは、蛍光部における高温になる部分と透光部材との間に空間が設けられているので、蛍光部で発生する熱の放熱性が悪い。このため、蛍光部の発光効率が低下し、蛍光体デバイスの効率及び輝度が低下する。
【0007】
そこで、蛍光部と透光部材との間の空間を無くして蛍光部と透光部材とを接合させることが考えられるが、蛍光体デバイスは、リジッドな部材の積層構造になっているので、蛍光部と透光部材とを直接接合させると、蛍光部と透光部材との線膨張係数(線膨張率)の差及びそれらの部材の厚みの影響によって、蛍光部と透光部材との界面で剥離が生じるおそれがある。また、リジッドな部材の積層構造になっていると、蛍光部と透光部材との界面以外の部材間の界面でも剥離が生じるおそれがある。つまり、蛍光体デバイスでは、隣接する2つの部材の任意の界面で剥離が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、蛍光部で発生する熱の放熱性を良くすることができるとともに、隣接する2つの部材の界面で剥離が生じることを抑制できる蛍光体デバイス及び発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る蛍光体デバイスの一態様は、基板部材と、少なくとも蛍光部及び光反射部を有する波長変換部材と、を備え、前記蛍光部の主成分は、蛍光体セラミックスであり、前記蛍光部の厚みは、200μm以上であり、前記蛍光部と前記基板部材とにおいて、線膨張係数の小さい方の線膨張係数の値は、線膨張係数の大きい方の線膨張係数の値の97%以下であり、前記蛍光部と前記基板部材とは、接着後の状態において可撓性を有する透明接着層を介して接着されている。
【0010】
また、本発明に係る発光装置の一態様は、上記の蛍光体デバイスと、前記蛍光体デバイスに入射する光を発する光源と、を備え、前記蛍光体デバイスにおける前記蛍光部の外形サイズは、前記光源から出射した光が前記蛍光部に入射するときのスポットサイズと同等である。
【発明の効果】
【0011】
蛍光部で発生する熱の放熱性を良くすることができるとともに、隣接する2つの部材の界面で剥離が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態1に係る蛍光体デバイスの構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係る発光装置の構成を示す図である。
図3A図3Aは、従来の蛍光体デバイスの構成を示す図である。
図3B図3Bは、従来の蛍光体デバイスに励起光が入射したときの様子を説明するための図である。
図4図4は、実施の形態1に係る蛍光体デバイスにおいて、蛍光部の厚みと色度との関係を示す図である。
図5図5は、実施の形態1の変形例に係る蛍光体デバイスの断面図である。
図6A図6Aは、透明接着層及び接合層の応力緩和効果に関するシミュレーションを行う際の実施の形態1の変形例に係る蛍光体デバイスの構造解析モデルの仕様を示す図である。
図6B図6Bは、図6Aの仕様における実施の形態1の変形例に係る蛍光体デバイスの4つのサンプルについての応力の計算結果を示す図である。
図7A図7Aは、接合層による蛍光部の放熱効果に関するシミュレーションを行う際の実施の形態1の変形例に係る蛍光体デバイスの熱解析モデルの仕様を示す図である。
図7B図7Bは、図7Aの仕様における実施の形態1の変形例に係る蛍光体デバイスの3つのサンプルについての蛍光部の温度上昇の計算結果を示す図である。
図8図8は、透明接着層におけるヤング率と厚みとの関係をシミュレーションにより分析する際の実施の形態1の変形例に係る蛍光体デバイスの構造解析モデルの仕様を示す図である。
図9A図9Aは、図8の仕様で構造解析を行ったときに蛍光部に働く主応力と透明接着層のヤング率との関係を示す図である。
図9B図9Bは、図8の仕様で構造解析を行ったときに基板部材に働く主応力と透明接着層のヤング率との関係を示す図である。
図9C図9Cは、図8の仕様で構造解析を行ったときに透明接着層に働く相当応力と透明接着層のヤング率との関係を示す図である。
図10図10は、透明接着層の厚みと蛍光部及び透明接着層の温度との関係をシミュレーションにより分析する際の実施の形態1の変形例に係る蛍光体デバイスの熱解析モデルの仕様を示す図である。
図11A図11Aは、図10の仕様で熱解析を行ったときの透明接着層の厚みと蛍光部及び透明接着層の温度との関係を示す図である。
図11B図11Bは、図10の仕様で熱解析を行ったときの透明接着層の熱抵抗と蛍光部及び透明接着層の温度との関係を示す図である。
図12図12は、実施の形態2に係る蛍光体デバイスの構成を示す図である。
図13図13は、実施の形態2の変形例に係る蛍光体デバイスの断面図である。
図14A図14Aは、サイドフィル構造を有する光反射部の放熱効果を確かめるための実験結果を示す図である。
図14B図14Bは、図14Aにおける5つの水準の温度上昇を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0014】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。また、本明細書において、線膨張率と線膨張係数とは同義である。
【0015】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1の構成を示す図である。図1において、(a)は、同蛍光体デバイス1の上面図であり、(b)は、(a)のIb-Ib線における同蛍光体デバイス1の断面図である。
【0016】
図1に示すように、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1は、基板部材10と、波長変換部材20とを備える。基板部材10と波長変換部材20とは、透明接着層30を介して接着されている。
【0017】
基板部材10は、透光基材11と、透光基材11に設けられた誘電体多層膜12及び反射防止膜13とを有する。また、波長変換部材20は、少なくとも、蛍光を発する蛍光部21と、光を反射する光反射部22とを有する。
【0018】
基板部材10の透光基材11は、透光性を有する基板であり、波長変換部材20側の面である第1の面11a(上面)と、第1の面11aに背向する第2の面11b(下面)とを有する。
【0019】
透光基材11は、光透過率が高い基板であるとよい。具体的には、透光基材11は、向こう側が透けて見える程度に透過率が高い透明基板であるとよい。また、透光基材11としては、耐熱性が高い基板であるとよい。このような透明基板としては、Alからなるアルミナ基板、AlNからなる窒化アルミニウム基板、又は、GaNからなる窒化ガリウム基板を用いることができる。この場合、透光基材11を構成する材料の主成分は、それぞれ、Al、AlN、又は、GaNとなる。また、耐熱性及び光透過率が高い透明基板としては、これらの透明基板に限るものではなく、サファイア基板又はガラス基板等の透明基板であってもよい。一例として、透光基材11の形状は、縦7.5mm×横7.5mm×厚さ0.6mmの矩形薄板状である。
【0020】
なお、サファイア基板は、ヤング率が470GPaで、線膨張率が7.7×10-6/Kである。窒化アルミニウム基板は、ヤング率が320GPaで、線膨張率が4.6×10-6/Kである。窒化ガリウム基板は、ヤング率が約200GPaで、線膨張率が5.5×10-6/Kである。
【0021】
誘電体多層膜12は、透光基材11の第1の面11aに設けられている。本実施の形態において、誘電体多層膜12は、基板部材10の最上層となる表面膜である。
【0022】
誘電体多層膜12は、複数の誘電体膜が積層された構成になっており、特定の光を反射するとともに、他の特定の光を透過する。本実施の形態における誘電体多層膜12は、波長変換部材20の蛍光部21の蛍光体で蛍光発光する光を反射し、かつ、蛍光体デバイス1に入射する励起光を透過する。例えば、蛍光部21が黄色蛍光体によって構成され、蛍光体デバイス1に入射する励起光が紫外光又は青色光である場合、誘電体多層膜12は、少なくとも蛍光部21が発する黄色光を反射し、かつ、励起光である紫外光又は青色光を透過する。
【0023】
このように透光基材11の第1の面11a側(波長変換部材20側)に誘電体多層膜12を設けることで、波長変換部材20の蛍光部21が発する光のうち基板部材10に向かう光を誘電体多層膜12で反射させることができる。これにより、蛍光体デバイス1から取り出せる蛍光部21の光を多くすることができる。
【0024】
反射防止膜13は、透光基材11の第2の面11bに設けられている。本実施の形態において、反射防止膜13は、基板部材10の最下層となる表面膜である。
【0025】
反射防止膜13は、単層膜及び多層膜のいずれであってもよい。一例として、反射防止膜13は、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等の少なくとも2種類の誘電体膜が積層された多層膜である。
【0026】
このように透光基材11の第2の面11bに反射防止膜13を設けることで、透光基材11の第2の面11b側から蛍光体デバイス1に入射する光が反射することを抑制することができる。これにより、透光基材11の第2の面11b側から透光基材11に入射する光を効率良く透光基材11に取り込むことができる。具体的には、蛍光部21を蛍光発光させるために蛍光体デバイス1に入射させる励起光を効率良く透光基材11に取り込むことができる。
【0027】
波長変換部材20の蛍光部21は、光を発する発光層であり、励起光により励起されて可視領域の所定の波長の光を蛍光発光する。一例として、蛍光部21は、黄色蛍光体によって構成された黄色蛍光体層である。この場合、黄色蛍光体層である蛍光部21は、黄色光よりも短波長の光(例えば紫外光~青色光)を励起光として蛍光を発する。つまり、黄色蛍光体層では、励起光の波長を当該励起光よりも長波長の黄色光に波長変換する。
【0028】
蛍光部21は、蛍光体のみから成る蛍光体層である。具体的には、蛍光部21は、焼結された単一の結晶相の蛍光体によって構成された蛍光体セラミックス層であり、主成分が蛍光体セラミックスである。このように、蛍光部21として蛍光体セラミックス層を用いることで、耐熱性及び放熱性を向上させることができる。また、蛍光部21として蛍光体セラミックス層を用いることで、蛍光の散乱による光損失を抑制できるため、蛍光部の変換効率を向上させることができる。本実施の形態において、蛍光部21は、単一の結晶相のみから成る蛍光体セラミックス層である。
【0029】
なお、蛍光部21は、蛍光体がバインダ(結合剤)によって封止することで結合された蛍光体層であってもよい。具体的には、蛍光部21は、蛍光体がアルミナ等のセラミックスからなるセラミックス焼結体(単結晶で屈折率約1.8)で結合された蛍光体セラミックス層であってもよい。このように、蛍光部21として蛍光体セラミックス層を用いることで、耐熱性及び放熱性を向上させることができる。蛍光部21は、単結晶から成る蛍光体セラミックス層であってもよい。蛍光部21が単結晶からなる蛍光体層である場合、蛍光部21が空気を含まないため、蛍光部21の熱伝導性がよくなる。
【0030】
蛍光部21は、ガーネット構造を有する第1結晶相を含む。より具体的には、本実施の形態においては、蛍光部21は、ガーネット構造を有する第1結晶相のみによって構成されている。つまり、本実施の形態に係る蛍光部21は、ガーネット構造とは異なる構造を有する結晶相を含まない。ガーネット構造とは、A12の一般式で表される結晶構造である。元素Aには、Ca、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb及びLuなどの希土類元素が適用され、元素Bには、Mg、Al、Si、Ga及びScなどの元素が適用され、元素Cには、Al、Si及びGaなどの元素が適用される。このようなガーネット構造としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet))、LuAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(Lutetium Aluminum Garnet))、LuCaMgSi12(ルテチウム・カルシウム・マグネシウム・シリコン・ガーネット(Lutetium Calcium Magnesium Silicon Garnet))及びTAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット(Terbium Aluminum Garnet))などが挙げられる。本実施の形態において、蛍光部21を構成する蛍光体の材料は、(Y1-xCeAlAl12(つまり、(Y1-xCeAl12)(0.00001≦x<0.1)で表される結晶相、すなわちYAGによって構成されており、蛍光部21は、焼結YAGのみからなる蛍光体セラミックス層である。具体的には、蛍光部21は、YAG蛍光体からなる黄色蛍光体層である。蛍光部21がYAG蛍光体である場合、蛍光部21は、ヤング率が約230GPa~約290GPaで、線膨張率が約8×10-6/K~約9.2×10-6/Kである。
【0031】
なお、蛍光部21を構成する第1結晶相は、化学組成の異なる複数のガーネット結晶相の固溶体であってもよい。このような固溶体としては、(Y1-xCeAlAl12(0.00001≦x<0.1)で表されるガーネット結晶相と(Lu1-dCeAlAl12(0.00001≦d<0.1)で表されるガーネット結晶相との固溶体((1-a)(Y1-xCeAl12・a(Lu1-dCeAlAl12(0<a<1))が挙げられる。また、このような固溶体としては、(Y1-xCeAlAl12(0.00001≦x<0.1)で表されるガーネット結晶相と(Lu1-zCeCaMgSi12(0.00001≦z<0.15)で表されるガーネット結晶相との固溶体((1-b)(Y1-xCeAlAl12・b(Lu1-zCeCaMgSi12(0<b<1))などが挙げられる。蛍光部21が化学組成の異なる複数のガーネット結晶相の固溶体から構成されることで、蛍光部21が放つ蛍光の蛍光スペクトルがより広帯域化し、緑色の光成分と赤色の光成分が増える。そのため、色域の広い出力光を放つ蛍光体デバイスを提供できる。
【0032】
また、蛍光部21を構成する第1結晶相は、前記した一般式A12で表される結晶相に対して、化学組成がずれた結晶相が含まれていてもよい。このような結晶相としては、(Y1-xCeAlAl12(0.00001≦x<0.1)で表される結晶相に対してAlがリッチな(Y1-xCeAl2+δAl12(δは正の数)が挙げられる。また、このような結晶相としては、(Y1-xCeAlAl12(0.00001≦x<0.1)で表される結晶相に対してYがリッチな(Y1-xCe3+ζAlAl12(ζは正の数)などが挙げられる。これらの結晶相は、一般式A12で表される結晶相に対して、化学組成がずれているが、ガーネット構造は維持している。蛍光部21が化学組成がずれた結晶相から構成されることで、蛍光部21の中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光及び蛍光がより散乱され、蛍光部21の発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い蛍光体デバイスを提供できる。
【0033】
さらに、蛍光部21は、第1結晶相と、ガーネット構造以外の構造を有する異相とを含んでいてもよい。蛍光部21がこのような第1結晶相及び異相から構成されることで、蛍光部21の中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光及び蛍光がより散乱され、蛍光部21の発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い蛍光体デバイスを提供できる。
【0034】
蛍光部21の密度は、理論密度の95%以上100%以下であればよく、理論密度の97%以上100%以下であればよりよい。ここで、理論密度とは、層中の原子が理想的に配列しているとした場合の密度である。換言すると、理論密度とは、蛍光部21中に空隙がないと仮定したときの密度であり、結晶構造を用いて計算される値である。例えば、蛍光部21の密度が99%である場合、残りの1%は空隙に相当する。つまり、蛍光部21の密度が高いほど、空隙が少ない。蛍光部21の密度が上記範囲であると、蛍光部21が放つ全蛍光量が増えるため、放射される光量がより多い蛍光体デバイスを提供できる。
【0035】
また、蛍光部21の密度は、4.32g/cm以上4.55g/cm以下であればよく、4.41g/cm以上4.55g/cm以下であればよりよい。本実施の形態で示すように、蛍光部21がYAGで構成されている場合、蛍光部21の密度が上記範囲であると、蛍光部21の密度がそれぞれ理論密度の95%以上100%以下及び97%以上100%以下となる。蛍光部21の密度が上記範囲であることで、蛍光部21が吸収した励起光を効率よく蛍光に変換することができる。つまり、発光効率の高い蛍光部21が実現される。
【0036】
蛍光部21の上面視形状は、矩形状であるが、これに限らない。蛍光部21の上面視形状は、円形であってもよい。また、蛍光部21の厚みは、200μm以上の厚い膜厚にするとよい。これにより、蛍光部21の側面からの放熱性を確保できるとともに、検出角による色度のシフトを抑制して蛍光部21の色度の安定化を図ることができる。なお、蛍光部21の厚さは、一定であるが、これに限らない。一例として、蛍光部21の形状は、縦1.1mm×横1.1mm×厚み0.4mmの矩形の薄板状である。
【0037】
波長変換部材20の光反射部22は、蛍光部21の周囲に設けられている。本実施の形態において、光反射部22は、上面視において、蛍光部21の周囲全体を囲っている。具体的には、蛍光部21の上面視形状が矩形状であるので、光反射部22は、矩形状の開口部を有する。具体的には、光反射部22の上面視形状は、矩形状の開口部を有し且つ外形が矩形状の矩形枠状である。なお、光反射部22の上面視形状は、矩形枠状に限るものではなく、円環状等であってもよい。一例として、光反射部22の外形形状は、縦7.5mm×横7.5mm×厚み0.4mmである。
【0038】
光反射部22は、蛍光部21と熱的に接している。つまり、蛍光部21と光反射部22とは、蛍光部21で発生する熱が光反射部22に伝導できるように設けられている。本実施の形態において、光反射部22は、物理的に蛍光部21に接触している。具体的には、光反射部22の内周側面の全てが蛍光部21の外周側面に接している。つまり、蛍光部21は、光反射部22の開口部に充填するように設けられている。
【0039】
なお、光反射部22の厚み(高さ)は、蛍光部21の厚み(高さ)と同じになっているが、これに限らない。つまり、光反射部22の厚みは、蛍光部21の厚みよりも低くてもよいし、蛍光部21の厚みよりも高くてもよい。ただし、光反射部22は、蛍光部21の上面にかからないように設けられているとよい。つまり、光反射部22は、光反射部22を構成する材料(バインダ等)が蛍光部21の上面にはみ出さないように形成されているとよい。
【0040】
光反射部22は、アルミナ等のセラミックス材料からなるセラミックス層、又は、樹脂材料等からなる樹脂層等によって構成されている。本実施の形態において、光反射部22は、可視光帯域の波長の光を反射するので白色である。つまり、光反射部22は、白色セラミックス層又は白樹脂層である。
【0041】
光反射部22の内部には、光を散乱反射させるための無数の光散乱部22aが存在している。具体的には、光反射部22がセラミックス層である場合、セラミックス層の内部には、光を散乱反射させるため光散乱部22aとして無数の空隙(空気層)が存在している。また、光反射部22が樹脂層である場合、樹脂層の内部には、光を散乱反射させるため光散乱部22aとして無数の光反射粒子が存在している。
【0042】
本実施の形態における蛍光部21は、焼結蛍光体のみからなる蛍光体セラミックス層であるので、光反射部22は、アルミナ等のセラミックスによって構成されたセラミックス層であるとよい。これにより、蛍光部21と光反射部22とが一体化しやすくなる。
【0043】
なお、蛍光部21がYAG蛍光体とアルミナのバインダとによって構成されている場合には、光反射部22はアルミナによって構成されたセラミックス層であるとよい。すなわち、光反射部22の主成分と蛍光部21のバインダとは、同一の無機材料によって構成されているとよい。これにより、蛍光部21と光反射部22とが一体化しやすくなる。
【0044】
また、このように光反射部22をアルミナ等のセラミックス焼結体によって構成する場合、焼結温度等を制御することによって、光反射部22を構成するセラミックス焼結体の内部に、光散乱部22aとして多数の空隙を形成することができる。これにより、光反射部22に入射する光は、セラミックス(アルミナ)と空隙との界面で散乱される。光反射部22がアルミナからなるセラミックス層である場合、光反射部22は、ヤング率が約280GPa~約380GPaで、線膨張率が約6×10-6/K~約10×10-6/Kである。
【0045】
一方、光反射部22を樹脂材料からなる樹脂層で構成する場合、光反射部22は、例えば、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる絶縁性樹脂材料をバインダとして、このバインダに光散乱部22aとして光を散乱反射させるための光反射粒子を分散させることで形成することができる。この場合、光反射部22を構成する絶縁性樹脂材料としては、シリコン樹脂、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂等を用いることができる。また、この絶縁性樹脂材料に分散させる光反射粒子(光散乱部22a)としては、空気粒子(空気層)、又は、SiO(シリカ)、TiO、Al、ZrO、MgO等の無機材料からなる微粒子等を用いることができる。例えば、バインダとなる絶縁性樹脂材料に無数の光反射粒子を分散させたペーストを塗布して硬化させることで、白色樹脂層の光反射部22を形成することができる。なお、光反射粒子としては、金属微粒子を用いてもよい。光反射部22がシリコン樹脂からなる樹脂層である場合、光反射部22は、ヤング率が0.002GPaで、線膨張率が400×10-6/Kである。
【0046】
基板部材10と波長変換部材20の蛍光部21とは、透明接着層30によって接着されている。本実施の形態では、基板部材10と蛍光部21とが透明接着層30を介して接着されているだけではなく、基板部材10と光反射部22とについても透明接着層30を介して接着されている。
【0047】
例えば、波長変換部材20として蛍光部21と光反射部22とが一体になったものを用いる場合、基板部材10及び波長変換部材20のうちの少なくとも一方に、液状の透明接着剤を塗布して硬化させることで、基板部材10と波長変換部材20とを透明接着剤で貼り合わせることができる。これにより、基板部材10と波長変換部材20との間に、硬化した透明接着剤が透明接着層30となって形成される。つまり、基板部材10と蛍光部21及び光反射部22とが透明接着層30で貼り合わされる。
【0048】
基板部材10と波長変換部材20との間の透明接着層30は、接着後の状態において可撓性を有する。つまり、接着後(硬化後)の透明接着層30のヤング率は、比較的に小さな値になっている。具体的には、透明接着層30のヤング率は、1GPa未満であり、より好ましくは0.1GPa未満、さらに0.01GPa未満であるとよい。特に、透明接着層30は、ゴム弾性を有するとよいので、透明接着層30のヤング率は、0.001GPa以上0.01GPa未満であるとよい。本実施の形態において、透明接着層30は、シリコン樹脂を主成分としている。この場合、シリコン樹脂からなる透明接着層30のヤング率は、0.002GPa程度である。なお、透明接着層30を構成する樹脂材料は、シリコン樹脂に限るものではない。
【0049】
透明接着層30の厚みは、特に限定されるものではないが、0.5μm以上50μm以下である。より好ましくは、透明接着層30の厚みは、5μm以上10μm以下である。
【0050】
このように構成される蛍光体デバイス1は、線膨張係数(線膨張率)が異なる複数の部材によって構成されている。例えば、蛍光部21の線膨張係数と基板部材10の線膨張係数とは異なっている。この場合、蛍光部21と基板部材10とについては、上記のどのような材料の組み合わせであっても、線膨張係数の小さい方の線膨張係数の値は、線膨張係数の大きい方の線膨張係数の値の97%以下になっている。
【0051】
次に、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1を用いた発光装置100の構成と蛍光体デバイス1の光学作用について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1に係る発光装置100の構成を示す図である。
【0052】
本実施の形態に係る発光装置100は、蛍光体デバイス1と、蛍光体デバイス1に入射する光を発する光源2とを備える。
【0053】
光源2は、波長変換部材20の蛍光部21を発光させるための励起光を出射する励起光源である。蛍光部21に含まれる蛍光体は、光源2から出射する励起光によって励起されて蛍光を発する。本実施の形態において、発光装置100は、蛍光体デバイス1に入射する励起光が蛍光体デバイス1を透過する透過型の発光装置である。つまり、蛍光体デバイス1に入射する励起光は、波長変換部材20を透過する。したがって、光源2は、光源2が出射する光が蛍光体デバイス1を透過するように配置されている。具体的には、光源2は、蛍光体デバイス1の下方(基板部材10側)に配置されている。
【0054】
光源2としては、例えば紫外光又は青色光のレーザ光を出射する半導体レーザを用いることができる。レーザ光は直進性に優れているので、光源2として半導体レーザを用いることで、蛍光部21に対して所望の入射角でレーザ光(励起光)を入射させることができる。なお、光源2は、半導体レーザに限らず、LED等の他の固体発光素子、又は固体発光素子以外の励起光源であってもよい。
【0055】
このように構成される発光装置100では、光源2から出射する光が蛍光体デバイス1に入射することで蛍光体デバイス1から所定の色の光が放出される。
【0056】
具体的には、本実施の形態において、光源2から出射した光は、基板部材10の裏面に入射する。基板部材10に入射した光源2の光は、基板部材10及び透明接着層30を透過して波長変換部材20の蛍光部21に到達する。このとき、蛍光部21の外形サイズは、光源2から出射した光が蛍光部21に入射するときのスポットサイズ(励起光のスポットサイズ)と同等になっているとよい。
【0057】
本実施の形態では、光源2の励起光が青色光で、蛍光部21が黄色蛍光体層である。この場合、蛍光部21には、光源2の青色光が入射する。これにより、蛍光部21の黄色蛍光体(YAG蛍光体)は、光源2の青色光の一部を吸収して励起されて蛍光として黄色光を発する。そして、蛍光部21では、この黄色光と黄色蛍光体に吸収されなかった光源2の青色光とが混ざり合って白色光となり、蛍光部21からは白色光が放射される。つまり、波長変換部材20から白色光が取り出される。
【0058】
このとき、基板部材10には、蛍光部21が発する黄色光を反射し、かつ、励起光である紫青色光を透過する誘電体多層膜12が形成されている。この構成により、蛍光部21が発する黄色光のうち光源2側に向かう光は、誘電体多層膜12で反射して光源2側とは反対側に進むことになる。
【0059】
また、蛍光部21の周囲には白色の光反射部22が形成されている。この構成により、蛍光部21から放出される白色光(青色光+黄色光)のうち横方向側に進行する光は、光反射部22で反射して、蛍光部21に戻って蛍光部21から外部に放射される。これにより、蛍光部21から取り出すことができる光を多くすることができる。
【0060】
また、本実施の形態において、蛍光体デバイス1は、リモートフォスファ型であり、蛍光体デバイス1と光源2とは空間的に離されて配置されている。これにより、蛍光体デバイス1(特に蛍光部21)が光源2で発生する熱の影響を受けることを抑制することができる。
【0061】
なお、図2において、光源2から出射する光は、基板部材10の裏面に対して垂直に入射されているが、基板部材10の裏面に対して斜めに入射されてもよい。
【0062】
次に、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1の作用効果について、従来の蛍光体デバイス1Xと比較しながら、本発明の一態様を得るに至った経緯も含めて説明する。図3Aは、従来の蛍光体デバイス1Xの構成を示す図であり、図3Bは、従来の蛍光体デバイス1Xに励起光が入射したときの様子を説明するための図である。
【0063】
図3Aに示すように、従来の蛍光体デバイス1Xは、基板部材10Xと、基板部材10Xの上に配置された波長変換部材20Xとを備える。基板部材10Xは、透光基材11Xと、誘電体多層膜12Xと、反射防止膜13Xとによって構成されている。また、波長変換部材20Xは、蛍光部21Xと光反射部22Xとによって構成されている。光反射部22Xの内部には、光を散乱反射させるための光散乱部22aが存在している。
【0064】
波長変換部材20Xの光反射部22Xと基板部材10Xとは、接続部材30Xによって接続されているが、波長変換部材20Xの蛍光部21Xと基板部材10Xとは接続されていない。つまり、波長変換部材20Xの蛍光部21Xと基板部材10Xの誘電体多層膜12Xとは接触しておらず、蛍光部21Xと基板部材10Xとの間には、接続部材30Xの厚み分の厚さの空間40Xが存在する。
【0065】
このように構成される従来の蛍光体デバイス1Xでは、図3Bに示すように、上記実施の形態1における蛍光体デバイス1と同様に、波長変換部材20Xの蛍光部21Xに励起光が入射することで白色光を放射する。
【0066】
蛍光部21Xに励起光が照射されると蛍光部21Xが発熱する。このとき、励起光の入射側の蛍光部21Xの下側の部分が上側の部分と比べて高温になる。
【0067】
しかしながら、従来の蛍光体デバイス1Xでは、蛍光部21Xにおける高温になる部分(下側の部分)と基板部材10Xとの間に空間40Xが設けられているので、蛍光部21Xで発生する熱が基板部材10Xに伝導しにくくなる。つまり、蛍光部21Xで発生する熱の放熱性が悪くなる。このため、従来の蛍光体デバイス1Xでは、蛍光部21Xの発光効率が低下し、蛍光体デバイス1Xの効率及び輝度が低下する。
【0068】
そこで、蛍光部21Xと基板部材10Xとの間の空間40Xを無くして蛍光部21Xと基板部材10Xとを直接接合して蛍光部21Xで発生する熱の放熱性を良くすることが考えられるが、従来の蛍光体デバイス1Xは、リジッドな部材の積層構造になっているので、蛍光部21Xと基板部材10Xとを直接接合させると、蛍光部21Xと基板部材10Xとの線膨張係数(線膨張率)の差及びそれらの部材の厚みの影響によって、励起光が照射される蛍光体デバイス1Xの温度が上昇したときに、蛍光部21Xと基板部材10Xとの界面で剥離が生じるおそれがある。
【0069】
また、リジッドな部材の積層構造からなる蛍光体デバイスでは、蛍光部と透光部材との界面以外の部材間の界面でも剥離が生じるおそれがある。つまり、隣接する2つの部材の任意の界面で剥離が生じるおそれがある。例えば、従来の蛍光体デバイス1Xでは、蛍光部21Xと光反射部22Xとの間の界面に剥離が生じたり、光反射部22Xと基板部材10Xとの間の界面に剥離が生じたりするおそれがある。
【0070】
このような課題に対して、本願発明者らが鋭意検討した結果、蛍光部を有する波長変換部材が基板部材に設けられた蛍光体デバイスにおいて、波長変換部材が蛍光部だけではなく光反射部を有するように構成するとともに、蛍光部の主成分の材料を限定し且つ蛍光部の厚みを厚くした上で、さらに、蛍光部と基板部材とを可撓性を有する透明接着層で接着することで、蛍光部で発生する熱の放熱性を良くすることができるとともに、蛍光部と基板部材との界面等、隣接する2つの部材の界面で剥離が生じることを抑制できることを見出した。
【0071】
具体的には、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1では、まず、波長変換部材20が蛍光部21だけではなく光反射部22を有しており、さらに、蛍光部21の主成分を蛍光体セラミックスとし、且つ、蛍光部21の厚みを200μm以上にしている。
【0072】
このように、蛍光部21の主成分を蛍光体セラミックスとすることで、蛍光部21の主成分を蛍光体樹脂にする場合と比べて、蛍光部21で発生する熱の放熱性を大幅に向上させることができる。しかも、波長変換部材20が蛍光部21だけではなく光反射部22を有しているので、蛍光部21の厚みを200μm以上にすることで、蛍光部21で発生する熱を蛍光部21の側面から光反射部22へと効率良く伝導させることができる。これにより、蛍光部21の主成分を蛍光体セラミックスにしたことによる放熱性の向上効果に加えて、蛍光部21で発生する熱の放熱性をさらに向上させることができる。
【0073】
さらに、波長変換部材20が蛍光部21だけではなく光反射部22を有することで、蛍光部21から放出される光を光反射部22で反射させることができる。これにより、蛍光部21から取り出すことができる光を多くすることができる。したがって、蛍光部21の輝度を向上させることができる。
【0074】
しかも、蛍光部21の厚みを200μm以上にすることで、蛍光部21の色度を安定化させることもできる。この点について実験を行ったので、その実験内容と実験結果を図4を用いて説明する。図4は、実施の形態1に係る蛍光体デバイス1において、蛍光部21の厚みと色度との関係を示す図である。
【0075】
この実験では、YAG蛍光体がアルミナ焼結体で結合された蛍光部21が表面に形成された基板部材10(表面に青透過/緑・赤反射のダイクロイックコート膜が形成され、裏面に可視光帯域ARコート膜が形成されたサファイア基板)の裏面側から青色レーザ光を入射させ、分光器(MCPD-700)によって、検出角がθ=0°の場合とθ=45°の場合との色度を測定した。
【0076】
図4のxy色度図は、蛍光部21の厚みを、125μm(Ce濃度0.08%)、300μm(Ce濃度0.03%)、400μm(Ce濃度0.01%)に変化させたときの各蛍光部21の色度を測定したときの結果を示している。つまり、図4のxy色度図には、t=125μm、t=300μm、t=400μmの場合の各々について、検出角がθ=0°の場合とθ=45°の場合との合計で6つの色度点(x、y)がプロットされている。なお、この6つの色度点のxy座標を図4の下欄に示す。
【0077】
図4に示すように、t=125μmの場合は、検出角がθ=0°の場合とθ=45°の場合とで色度点が大きくずれており、色度のシフトが大きくなることが分かった。一方、t=300μmの場合は、検出角がθ=0°の場合とθ=45°の場合とで色度点の差がt=125μmの場合と比べて大幅に小さくなり、色度が安定化することが分かった。さらに、t=400μmになると、検出角の違いによる色度点の差がほぼなくなることも分かった。この結果から、蛍光部21の厚みは、少なくとも125μm以上であるとよく、200μm以上にすることで、色度点の差がなくなると考えられる。また、蛍光部21の色度を安定化させるとの観点では、蛍光部21の厚みは、250μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは300μm以上であり、400μm以上にするとさらによい。
【0078】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1では、蛍光部21と基板部材10とは、可撓性を有する透明接着層30を介して接着されている。これにより、従来の蛍光体デバイス1Xのように、蛍光部21Xと基板部材10Xとの間に空間40Xを設ける場合と比べて、蛍光部21で発生する熱を基板部材10に効率良く伝導させることができる。したがって、蛍光部21で発生する熱の放熱性を向上させることができる。
【0079】
さらに、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1では、蛍光部21と基板部材10とにおいて線膨張係数の小さい方の線膨張係数の値が線膨張係数の大きい方の線膨張係数の値の97%以下になっており、蛍光部21と基板部材10との間に線膨張係数差が存在している。このため、蛍光部21と基板部材10との間の線膨張係数差に起因して蛍光部21又は基板部材10が変形し、その変形の応力によって蛍光部21と基板部材10との間の界面で剥離が生じるおそれがある。例えば、基板部材10が変形すると、基板部材10の変形による応力によって蛍光部21と基板部材10とが剥離するおそれがある。
【0080】
しかしながら、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1では、蛍光部21と基板部材10とは、可撓性を有する透明接着層30を介して接着されているので、蛍光部21と基板部材10との間の線膨張係数差に起因して基板部材10等が変形したとしても、その変形による応力を透明接着層30によって吸収することができる。つまり、可撓性を有する透明接着層30が応力を吸収する緩衝材として機能する。これにより、波長変換部材20が基板部材10等の変形の影響を受けにくくなるので、波長変換部材20と基板部材10との間の線膨張係数差によって生じる応力によって波長変換部材20と基板部材10との間に剥離が生じることを抑制できる。具体的には、蛍光部21と基板部材10との間に剥離が生じることを抑制できるとともに、光反射部22と基板部材10との間に剥離が生じることを抑制することができる。
【0081】
しかも、波長変換部材20が基板部材10等の変形の影響を受けにくくなることで、波長変換部材20と基板部材10との間に剥離が生じることを抑制できるだけではなく、波長変換部材20における蛍光部21と光反射部22との間の界面に剥離が生じることも抑制できる。つまり、蛍光部21と光反射部22との密着性が向上する。
【0082】
この点について、本願発明者らが実験を行ったところ、可撓性を有する透明接着層30を用いずに波長変換部材20と基板部材10とを接合して蛍光体デバイスを複数個作製したところ、その中のいくつかの蛍光体デバイスについては、蛍光体デバイスの作製中及び蛍光体デバイスの使用中に波長変換部材20における蛍光部21と光反射部22との界面に剥離が生じたが、本実施の形態のように、可撓性を有する透明接着層30によって波長変換部材20と基板部材10とを接着して蛍光体デバイス1を作製した場合には、蛍光部21と光反射部22との界面に剥離が生じるものは存在しなかった。
【0083】
このように、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、可撓性を有する透明接着層30を用いることで、蛍光体デバイス1における各部材間の界面に剥離が生じることを抑制できる。特に、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、上記のように、放熱性を良くするとの観点により蛍光部21の厚みを200μm以上に厚くしているため、熱応力が増加して各部材間の界面に剥離が生じる可能性が高くなるが、可撓性を有する透明接着層30が緩衝材として機能するので、蛍光部21の厚みを200μm以上に厚くしたとしても、各部材間の界面に剥離が生じることを効果的に抑制することができる。つまり、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、放熱性を良くすることと剥離を抑制することとの両立を図ることができる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1は、基板部材10と、少なくとも蛍光部21及び光反射部22を有する波長変換部材20とを備えており、蛍光部21の主成分は蛍光体セラミックスであり、蛍光部21の厚みは200μm以上であり、蛍光部21と基板部材10とにおいて線膨張係数の小さい方の線膨張係数の値は線膨張係数の大きい方の線膨張係数の値の97%以下であり、蛍光部21と基板部材10とは、接着後の状態において可撓性を有する透明接着層30を介して接着されている。
【0085】
この構成により、蛍光部21で発生する熱の放熱性を良くすることができるとともに、隣接する2つの部材の界面で剥離が生じることを抑制することができる。これにより、高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1と発光装置100とを実現することができる。
【0086】
また、波長変換部材20と基板部材10とを接着する透明接着層30のヤング率は、1GPa未満であるとよい。
【0087】
これにより、透明接着層30のヤング率が小さくなるので、基板部材10等の変形による応力を透明接着層30によってより吸収することができる。したがって、隣接する2つの部材の界面で剥離が生じることを一層抑制することができる。
【0088】
また、波長変換部材20と基板部材10とを接着する透明接着層30は、シリコン樹脂が主成分になっているとよい。
【0089】
これにより、透明接着層30のヤング率が小さくなるので基板部材10等の変形による応力を透明接着層30によってより吸収することができるとともに、透明接着層30の厚みを小さくしても透明接着層30による応力吸収機能を効果的に発揮させることができるので、透明接着層30を薄肉化することができる。これにより、蛍光部21で発生する熱の放熱性を向上させることができる。このように、透明接着層30の主成分をシリコン樹脂にすることで、蛍光部21で発生する熱の放熱性の向上と透明接着層30による応力吸収機能の発揮との両立を図ることができる。
【0090】
また、透明接着層30の厚みが厚すぎると、蛍光部21で発生する熱が基板部材10に伝導しにくくなる。一方、透明接着層30が薄すぎると、透明接着層30の応力吸収機能が低減してしまう。
【0091】
そこで、波長変換部材20と基板部材10とを接着する透明接着層30の厚みは、0.5μm以上50μm以下であるとよい。
【0092】
これにより、蛍光部21で発生する熱の放熱性の向上と透明接着層30による応力吸収機能の発揮との両立をさらに図ることができる。
【0093】
また、本実施の形態に係る発光装置100において、蛍光部21の外形サイズは、光源2から出射した光が蛍光部21に入射するときのスポットサイズ(励起光のスポットサイズ)と同等になっている。
【0094】
この構成により、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1と発光装置100とを実現することができる。
【0095】
また、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、光反射部22は、蛍光部21と熱的に接している。
【0096】
この構成により、蛍光部21で発生する熱が、蛍光部21の側面から光反射部22へと効果的に伝導することになる。したがって、蛍光部21で発生する熱の放熱性が向上する。これにより、蛍光部21の発光効率を向上させることができるので、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1と発光装置100とを実現することができる。
【0097】
また、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、光反射部22は、アルミナによって構成されている。
【0098】
アルミナは熱伝導率が高いので、光反射部22をアルミナによって構成することで、蛍光部21で発生する熱が蛍光部21の側面から光反射部22へとさらに伝導しやすくなる。これにより、蛍光部21で発生する熱の放熱性がさらに向上する。
【0099】
また、本実施の形態における蛍光体デバイス1では、光反射部22が、樹脂材料からなるバインダと、無機材料からなる光反射粒子とによって構成されているとよい。
【0100】
この構成により、高い光反射率を有する光反射部22を蛍光部21の周囲に設けることができるので、蛍光部21から取り出すことができる光を多くすることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1と発光装置100とを実現することができる。
【0101】
しかも、光反射部22の主成分を樹脂材料にすることで、部材間の線膨張係数差によって光反射部22が変形したとしても、光反射部22が変形する際の追随性を向上させることができる。また、蛍光部21と光反射部22との密着性を向上させることもできる。
【0102】
また、光反射部22を樹脂材料からなるバインダによって構成する場合、このバインダは、蛍光部21の上面にかからないようにするとよい。
【0103】
光反射部22のバインダが蛍光部21の上面にかかると、蛍光部21の外形サイズを励起光のスポットサイズと同等にすることの妨げになり、蛍光部21の輝度が低下するおそれがある。そこで、光反射部22のバインダが蛍光部21の上面にかからないようにすることで、光反射部22のバインダが蛍光部21の外形サイズを励起光のスポットサイズと同等にすることの妨げにならないので、蛍光部21の輝度が低下することを抑制できる。
【0104】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1において、基板部材10は、透光基材11と、透光基材11の第1の面11aに設けられた誘電体多層膜12とを有している。
【0105】
この構成により、蛍光部21が発する光のうち基板部材10に向かう光を誘電体多層膜12で反射させることができる。これにより、蛍光体デバイス1から取り出せる蛍光部21の光を多くすることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1と発光装置100とを実現することができる。
【0106】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1において、基板部材10は、さらに、透光基材11の第2の面11bに設けられた反射防止膜13を有している。
【0107】
この構成により、蛍光体デバイス1に入射する励起光の取り込み効率を向上させることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1と発光装置100とを実現することができる。
【0108】
また、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1において、基板部材10の透光基材11を構成する材料の主成分は、Al、AlN、又は、GaNであるとよい。
【0109】
このようにすることで、基板部材10の熱伝導率を高くすることができる。これにより、蛍光部21で発生する熱を基板部材10にさらに効率良く伝導させることができるので、蛍光部21で発生する熱の放熱性をさらに向上させることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1と発光装置100とを実現することができる。
【0110】
また、図5に示される蛍光体デバイス1Aのように、上記蛍光体デバイス1に対して、さらに、金属板40を備えるように構成してもよい。図5は、実施の形態1の変形例に係る蛍光体デバイス1Aの断面図である。
【0111】
金属板40は、基板部材10の波長変換部材20側の面とは反対側の面に接合層50を介して設けられている。具体的には、金属板40は、接合層50を介して基板部材10の反射防止膜13に接合されている。金属板40としては、銅板又はアルミニウム板を用いることができる。
【0112】
この構成により、上記蛍光体デバイス1よりも、蛍光部21で発生する熱の放熱性を向上させることができる。したがって、さらに高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1Aと発光装置とを実現することができる。
【0113】
接合層50としては、樹脂材料を主成分とする樹脂接着剤を用いることができる。接合層50を構成する樹脂材料は、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂等である。このように、接合層50を樹脂材料によって構成することで、接合層50のヤング率を小さくすることができる。これにより、基板部材10と金属板40との間の線膨張係数差に起因する基板部材10等の変形による応力を接合層50で吸収することができる。したがって、基板部材10と金属板40との間に剥離が生じることを抑制することができる。
【0114】
また、接合層50が樹脂材料によって構成されている場合、樹脂材料には無機材料からなる高熱伝導フィラーが分散されているとよい。これにより、接合層50の熱伝導率が高くなるので、蛍光部21で発生する熱を基板部材10及び金属板40を介して効率良く放熱することができる。なお、高熱伝導フィラー(無機フィラー)は、溶融又は焼結しないものである。例えば、無機フィラーを含む樹脂接着剤としては、溶融しない銀フィラーを含む銀ペースト接着剤を用いることができる。
【0115】
なお、接合層50は、樹脂材料を主成分とする樹脂接着剤に限るものではなく、主成分の金属が溶融凝固、共晶又は焼結等する金属接着剤であってもよい。この場合、接合層50としては、焼結銀ペースト接着剤又は半田等の金属接着剤を用いることができる。
【0116】
また、蛍光体デバイス1Aにおいて、金属板40は、蛍光体デバイス1Aに入射する光が通過する開口部41を有する。例えば、金属板40は、矩形状の開口部41を有する。具体的には、金属板40の平面視形状は、矩形状の開口部41を有し且つ外形が矩形状の矩形枠状である。なお、本実施の形態において、金属板40の開口部41は、光反射部22の開口部と同じサイズ及び同じ形状であるが、これに限らない。
【0117】
ここで、図5に示される構成の蛍光体デバイス1Aについて、構造解析モデルによって透明接着層30及び接合層50の応力緩和効果を確かめるシミュレーションを行ったので、以下、このシミュレーションの内容と結果について、図6A及び図6Bを用いて説明する。
【0118】
図6Aは、透明接着層及び接合層の応力緩和効果に関するシミュレーションを行う際の蛍光体デバイス1Aの構造解析モデルの仕様を示している。なお、図6Aの「接合」の項目において、「接着」は、樹脂接着剤(透明接着層30)による接合を想定し、「金属接合」は、金属接着剤による接合を想定している。
【0119】
図6Bは、図6Aの仕様における図5に示される構成の蛍光体デバイス1Aの応力の計算結果を示す図である。図6Bでは、蛍光部21と基板部材10との間の接合状態及び基板部材10と金属板40との間の接合状態を「接着」又は「金属接合」で変えたときの4つのサンプル(比較例1、比較例2、実施例1、実施例2)についての応力の計算結果を示している。
【0120】
比較例1の蛍光体デバイス1Aは、蛍光部21と基板部材10とが直接接合され、基板部材10と金属板40とが金属接着剤で接合された構成である。つまり、基板部材10と金属板40とを接合する接合層50が金属接着剤である。
【0121】
比較例2の蛍光体デバイス1Aは、蛍光部21と基板部材10とが直接接合され、基板部材10と金属板40とが樹脂接着剤で接合された構成である。つまり、基板部材10と金属板40とを接合する接合層50が樹脂接着剤である。
【0122】
実施例1の蛍光体デバイス1Aは、蛍光部21と基板部材10とが樹脂接着剤で接合され、基板部材10と金属板40とは金属接着剤で接合された構成である。つまり、蛍光部21と基板部材10とを接着する透明接着層30が樹脂接着剤であり、基板部材10と金属板40とを接合する接合層50が金属接着剤である。
【0123】
実施例2の蛍光体デバイス1Aは、蛍光部21と基板部材10とが樹脂接着剤で接合され、基板部材10と金属板40とも樹脂接着剤で接合されている。つまり、蛍光部21と基板部材10とを接着する透明接着層30も基板部材10と金属板40とを接合する接合層50も樹脂接着剤である。
【0124】
このシミュレーションでは、比較例1、比較例2、実施例1及び実施例2の4つの蛍光体デバイス1Aに対して温度変化による荷重を加えて、このときの蛍光部21と基板部材10と接合層50(基板部材10と金属板40との接合部分)との各部位の応力を算出した。なお、このシミュレーションでは、蛍光体デバイス1Aに対して一様に200℃から-20℃に冷却(ΔT=220℃)することで、温度変化による荷重を与えた。温度による荷重を与えることで、各部材間の線膨張係数差によって各部材に圧縮応力又は引張応力等の応力が生じる。
【0125】
図6Bに示すように、比較例1と実施例1とを比べると、蛍光部21と基板部材10とを直接接合するのではなく樹脂接着剤(透明接着層30)で接着することによって、蛍光部21及び基板部材10の応力を大幅に低減できることが分かる。同様に、比較例2と実施例2とを比べても、蛍光部21と基板部材10とを樹脂接着剤(透明接着層30)で接着することによって、蛍光部21及び基板部材10の応力を大幅に低減できることが分かる。
【0126】
また、実施例1と実施例2とを比べると、蛍光部21と基板部材10とを樹脂接着剤(透明接着層30)で接着するだけではなく、基板部材10と金属板40とを樹脂接着剤で接着することで、蛍光部21及び基板部材10の応力をさらに低減できることが分かる。しかも、蛍光部21及び基板部材10の応力を低減できるだけではなく、基板部材10と金属板40との接合部である接合層50の応力を低減できることも分かる。
【0127】
ただし、樹脂接着剤は金属接着剤と比べて熱伝導率が低いことから、接合層50が樹脂接着剤であると、接合層50が金属接着剤である場合と比べて、蛍光部21で発生する熱の放熱効果が低下する。
【0128】
そこで、上記のように、接合層50に高熱伝導フィラーを含ませて、接合層50の熱伝導率を高くするとよい。
【0129】
この点について、図5に示される構成の蛍光体デバイス1Aについて、熱解析モデルによって接合層50による蛍光部21の放熱効果を確かめるシミュレーションを行ったので、以下、このシミュレーションの内容と結果について、図7A及び図7Bを用いて説明する。
【0130】
図7Aは、接合層による蛍光部の放熱効果に関するシミュレーションを行う際の蛍光体デバイス1Aの熱解析モデルの仕様を示している。図7Bは、図7Aの仕様における図5の蛍光体デバイス1Aにおいて、接合層50の熱伝導率を変えたときの3つのサンプル(実施例3、実施例4、実施例5)についての蛍光部21の温度上昇の計算結果を示している。
【0131】
実施例3及び実施例4は、上記の実施例2と同様に、基板部材10と金属板40とを接合する接合層50が樹脂接着剤である。ただし、実施例3の接合層50は、高熱伝導フィラーを有しておらず、熱伝導率が0.2W/mKである。一方、実施例4の接合層50は、高熱伝導フィラーを有しており、熱伝導率が5W/mKである。
【0132】
実施例5は、上記の実施例1と同様に、基板部材10と金属板40とを接合する接合層50が金属接着剤である。したがって、実施例5の接合層50の熱伝導率は、100W/mKと高くなっている。
【0133】
このシミュレーションでは、蛍光部21を発熱させて、このときの蛍光部21の温度上昇を算出している。なお、このシミュレーションでは、蛍光体デバイス1Aの蛍光部21の中央1mm角の領域に3.75Wの熱を付与することで蛍光部21を発熱させた。
【0134】
その結果、図7Bに示すように、接合層50が樹脂接着剤である場合に接合層50が金属接着剤の場合と同等の放熱効果を得るには、接合層50の熱伝導率が数W/mK以上であればよいことが分かる。具体的には、接合層50が樹脂接着剤であっても、接合層50の熱伝導率が5W/mK以上であれば、金属接着剤の場合と同等の放熱効果を得ることができる。
【0135】
次に、図5に示される構成の蛍光体デバイス1Aについて、構造解析により透明接着層30のヤング率と厚みとの関係をシミュレーションにより分析したので、以下、このシミュレーションの内容と結果について、図8図9A図9Cを用いて説明する。
【0136】
図8は、透明接着層30におけるヤング率と厚みとの関係をシミュレーションにより分析する際の蛍光体デバイス1Aの構造解析モデルの仕様を示している。なお、図8に示すように、このシミュレーションにおいて、透明接着層30のサイズ(厚み)及びヤング率は、変数(パラメータ)であり、変更される。
【0137】
このシミュレーションでは、蛍光体デバイス1Aの構造解析モデルに温度変化による荷重を加えて、このときの蛍光部21と基板部材10と透明接着層30との各部位の応力を算出した。なお、このシミュレーションでは、蛍光体デバイス1Aに対して一様に200℃から-20℃に冷却(ΔT=220℃)することで、温度変化による荷重を与えた。温度による荷重を与えることで、各部材間の線膨張係数差によって各部材に圧縮応力又は引張応力等の応力が生じる。
【0138】
図9A図9B及び図9Cは、そのシミュレーション結果を示している。図9Aは、図8の仕様で構造解析を行ったときに蛍光部21に働く主応力と透明接着層30のヤング率との関係を示している。図9Bは、図8の仕様で構造解析を行ったときに基板部材10に働く主応力と透明接着層30のヤング率との関係を示している。図9Cは、図8の仕様で構造解析を行ったときに透明接着層30に働く相当応力と透明接着層30のヤング率との関係を示している。なお、図9A図9Cにおいて、主応力がプラスの場合は、引張応力が働いていることを示しており、主応力がマイナスの場合は、圧縮応力が働いていることを示している。なお、脆性材料であるYAG及びアルミナは主応力で評価し、延性材料であるシリコン樹脂については相当応力で評価した。
【0139】
また、このシミュレーションでは、図9A図9Cに示すように、透明接着層30の厚みが、0.5μm、10μm、50μm、100μmの場合について、蛍光部21、基板部材10及び透明接着層30のそれぞれに働く主応力又は相当応力と透明接着層30のヤング率との関係を分析した。
【0140】
その結果、YAG蛍光体からなる蛍光部21及びアルミナからなる光反射部22の破断応力は、曲げ応力が約300MPaで、圧縮応力が約2000MPaであるので、図9Aに示すように、透明接着層30の厚みが0.5μm~100μmの範囲においては、蛍光部21の破断応力には至らない。図9Aに示す結果から、透明接着層30のヤング率としては、1000MPa(=1GPa)未満であることが好ましく、より好ましくは、100MPa(=0.1GPa)未満である。なお、図9Aのグラフにプロットされた主応力は、波長変換部材20を構成するYAGの部分とアルミナの部分とにおいて、最も主応力の大きかった部分の値である。具体的には、中央部のYAGよりも周辺部のアルミナの方が主応力は大きい。このため、図9Aのグラフにプロットした値が算出された部分は、アルミナの角部(7.5mm角の角部分)であり、表面側ではなく裏面側(透明接着層30との界面側)である。
【0141】
また、サファイアからなる基板部材10の破断応力は、曲げ応力が約500MPaで、圧縮応力が約3000MPaであるので、図9Bに示すように、透明接着層30の厚みが0.5μm~100μmの範囲においては、基板部材10の破断応力には至らない。図9Bに示す結果から、透明接着層30のヤング率としては、1000MPa(=1GPa)未満であることが好ましく、より好ましくは、100MPa(=0.1GPa)未満である。
【0142】
また、シリコン樹脂からなる透明接着層30の破断応力は、約50MPaであるので、図9Cに示すように、透明接着層30の厚みが0.5μm~100μmの範囲においては、透明接着層30のヤング率としては、100MPa(=0.1GPa)未満であることが好ましい。
【0143】
以上、図9A図9Cを総合的に勘案すると、応力を低減するとの観点では、透明接着層30の厚みが0.5μm~100μmの範囲において、透明接着層30のヤング率は、100MPa(=0.1GPa)未満であるとよい。
【0144】
次に、図5に示される構成の蛍光体デバイス1Aについて、熱解析により透明接着層30の厚みと温度との関係をシミュレーションにより分析したので、以下、このシミュレーションの内容と結果について、図10図11A及び図11Bを用いて説明する。
【0145】
図10は、透明接着層30の厚みと蛍光部21及び透明接着層30の温度との関係をシミュレーションにより分析する際の蛍光体デバイス1Aの熱解析モデルの仕様を示している。なお、図10に示すように、このシミュレーションにおいて、透明接着層30のサイズ(厚み)は、変数(パラメータ)であり、変更される。
【0146】
このシミュレーションでは、蛍光体デバイス1Aの蛍光部21を発熱させたときの透明接着層30の厚みに対する蛍光部21の温度と透明接着層30の温度とを算出した。なお、このシミュレーションでは、蛍光体デバイス1Aの蛍光部21の中央0.8mm角の領域に3.75Wの熱(7W励起相当)を付与することで蛍光部21を発熱させた。このとき、周囲温度は30℃で一定とし、金属板40の下面温度は30℃で一定とした。
【0147】
図11A及び図11Bは、そのシミュレーション結果を示している。図11Aは、図10の仕様で熱解析を行ったときの透明接着層30の厚みと蛍光部21及び透明接着層30の温度との関係を示している。図11Bは、図10の仕様で熱解析を行ったときの透明接着層30の熱抵抗と蛍光部21及び透明接着層30の温度との関係を示している。
【0148】
YAG蛍光体からなる蛍光部21の温度は、YAG蛍光体の消光温度(230℃~240℃程度)以下であることが好ましく、また、熱伝導率が約0.2W/mKのシリコン樹脂からなる透明接着層30の温度は、シリコン樹脂の耐熱温度(約200℃)以下であることが好ましい。
【0149】
したがって、蛍光部21の消光温度及び透明接着層30の耐熱温度の観点からは、図11Aに示すように、透明接着層30の厚みは、20μm以下であることが好ましい。透明接着層30の厚みを20μm以下にすることで、蛍光部21で発生する熱を効果的に放熱することができ、蛍光部21の温度を消光温度以下に維持することができるとともに、透明接着層30の温度を耐熱温度以下に維持することができる。
【0150】
このように、応力低減のみの観点では、上記のように、透明接着層30の厚みは、0.5μm以上100μm以下であるとよいが、応力低減と放熱性とを両立するとの観点では、透明接着層30の厚みは、0.5μm以上20μm以下であるとよい。
【0151】
また、蛍光部21の消光温度及び透明接着層30の耐熱温度の観点から、図11Bに示すように、透明接着層30の熱抵抗は、35KW以下であることが好ましい。なお、透明接着層30を構成する材料がシリコン樹脂ではない場合、透明接着層30の熱伝導率は材料により異なるが、この場合も、透明接着層30の熱抵抗は、35KW以下であることが好ましい。
【0152】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る蛍光体デバイス1Bについて、図12を用いて説明する。図12は、実施の形態2に係る蛍光体デバイス1Bの構成を示す図である。図12において、(a)は、同蛍光体デバイス1Bの上面図であり、(b)は、(a)のXIIb-XIIb線における同蛍光体デバイス1Bの断面図である。
【0153】
本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Bは、上記実施の形態1に係る蛍光体デバイス1に対して、波長変換部材20Bの構成が異なる。具体的には、図12に示すように、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Bの波長変換部材20Bは、上記実施の形態1に係る蛍光体デバイス1の波長変換部材20と同様に、蛍光部21及び蛍光部21の側面を囲む光反射部22Bを有するが、本実施の形態における光反射部22Bは、サイドフィル構造になっている。したがって、光反射部22Bは、基板部材10の上面の全面に形成されておらず、蛍光部21の周辺部のみに形成されており、蛍光部21の側面を覆うように壁状に形成されている。
【0154】
また、本実施の形態において、透明接着層30は、蛍光部21と基板部材10との間のみに形成されている。つまり、透明接着層30は、蛍光部21の下方のみに形成されている。このため、本実施の形態における光反射部22Bは、蛍光部21の側面を覆っているだけではなく、透明接着層30の側面も覆っている。
【0155】
なお、光反射部22Bの材料は、上記実施の形態1における光反射部22と同様のものを用いることができる。具体的には、光反射部22Bは、樹脂層又はセラミックス層とすることができるが、サイドフィル構造の光反射部22Bとするには、光反射部22Bは、樹脂層であるとよい。一例として、光反射部22Bは、シリコン樹脂に光散乱部22aとして酸化チタン粒子が分散された白色樹脂層である。
【0156】
以上、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Bは、上記実施の形態に係る蛍光体デバイス1と同様に、波長変換部材20Bが蛍光部21だけではなく光反射部22Bを有しており、さらに、蛍光部21の主成分を蛍光体セラミックスとし、且つ、蛍光部21の厚みを200μm以上にしている。さらに、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Bは、上記実施の形態に係る蛍光体デバイス1と同様に、蛍光部21と基板部材10とにおいて線膨張係数の小さい方の線膨張係数の値が線膨張係数の大きい方の線膨張係数の値の97%以下になっており、蛍光部21と基板部材10とは、可撓性を有する透明接着層30を介して接着されている。
【0157】
これにより、本実施の形態に係る蛍光体デバイス1Bは、上記実施の形態に係る蛍光体デバイス1と同様の効果を奏する。つまり、蛍光部21で発生する熱の放熱性を良くすることができるとともに、隣接する2つの部材の界面で剥離が生じることを抑制することができる。これにより、高効率及び高輝度の蛍光体デバイス1B及び発光装置を実現することができる。
【0158】
また、図13に示される蛍光体デバイス1Cのように、上記蛍光体デバイス1Bに対して、さらに、金属板40を備えるように構成してもよい。図13は、実施の形態2の変形例に係る蛍光体デバイス1Cの断面図である。
【0159】
金属板40は、基板部材10の波長変換部材20側の面とは反対側の面に接合層50を介して設けられている。具体的には、金属板40は、接合層50を介して基板部材10の反射防止膜13に接合されている。金属板40としては、銅板又はアルミニウム板を用いることができる。また、金属板40は、蛍光体デバイス1Cに入射する光が通過する開口部41を有する。つまり、本変形例に係る蛍光体デバイス1Cは、図5に示される蛍光体デバイス1Aと同じ構成の金属板40及び接合層50を有する。
【0160】
この構成により、本変形例に係る蛍光体デバイス1Cは、図5に示される蛍光体デバイス1Aと同様の効果を奏する。
【0161】
ここで、図13に示される構成の蛍光体デバイス1Cについて、サイドフィル構造を有する光反射部22Bの放熱効果を確かめる実験を行ったので、以下、この実験の内容と結果について、図14A及び図14Bを用いて説明する。
【0162】
図14Aは、蛍光体デバイス1Cにおいて蛍光部21と基板部材10との間の接合状態及び基板部材10と金属板40との間の接合状態を変えたときの5つの水準(水準1、水準2、水準3、水準4、水準5)について、基板部材10の裏面側から励起光を照射したときの蛍光体デバイス1Cの温度上昇を示している。
【0163】
なお、本実験において、蛍光部21は焼結YAG蛍光体のみからなる蛍光体セラミックス層(縦5mm×横5mm×厚さ0.2mm)であり、透光基材11はサファイア基板(縦7mm×横7mm×厚さ1mm)であり、金属板40は、φ3mmの開口部41を有する銅基板(縦24mm×横24mm×3mm)である。また、蛍光体デバイス1Cに照射する励起光は、出力15W(2.7A)の青色レーザ光であり、蛍光部21でのレーザスポット径はφ3mmである。また、温度上昇は、蛍光部21の温度と金属板40の温度との差分とした。各水準については、それぞれ2つのサンプル(n=2)で温度上昇を測定した。
【0164】
図14Aにおいて、蛍光部21と基板部材10との間の接合状態の項目の「無し」及び「シリコン」は、それぞれ、蛍光部21と基板部材10とを接合する透明接着層30が存在しない場合と透明接着層30としてシリコン樹脂接着剤が存在する場合とを示している。また、サイドフィルの項目の「無し」及び「有り」は、それぞれ、光反射部22としてサイドフィル構造が存在しない場合とサイドフィル構造が存在する場合とを示している。サイドフィル構造が存在しない場合は、蛍光部21及び透明接着層30の各々の側面は光反射部22で覆われておらず露出している。また、基板部材10と金属板40との間の接合状態を示す、「無し」、「銀ペースト層」及び「銀焼結層」は、それぞれ、基板部材10と金属板40とを接合する接合層50が存在しない場合と接合層50として銀ペースト層が存在する場合と接合層50として銀焼結層が存在する場合とを示している。なお、銀ペースト層及び銀焼結層の厚さは、0.05mmとした。
【0165】
図14Bは、図14Aにおける5つの水準(各2個)の温度上昇をグラフにしたものである。
【0166】
図14Bに示すように、水準1と水準2とを比べると、蛍光部21と基板部材10とをシリコン樹脂接着剤からなる透明接着層30で接着することで、蛍光部21で発生する熱の放熱性が向上することが分かる。
【0167】
また、水準2と水準3とを比べると、蛍光部21の側面をサイドフィル構造の光反射部22で覆うことで、蛍光部21で発生する熱の放熱性がさらに向上することが分かる。
【0168】
また、水準3と水準4、5とを比べると、蛍光部21の側面をサイドフィル構造の光反射部22で覆うことで、基板部材10と金属板40とを銀ペースト層又は銀焼結層からなる高熱伝導率の接合層50で接合した場合と同等の放熱効果が得られることが分かる。
【0169】
(変形例)
以上、本発明に係る蛍光体デバイス及び発光装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0170】
例えば、上記実施の形態1、2において、波長変換部材20は、蛍光部21に加えて光反射部22を有していたが、これに限らない。また、上記実施の形態1、2において、基板部材10は、透光基材11に加えて、誘電体多層膜12及び反射防止膜13を有していたが、これに限らない。具体的には、波長変換部材20は、光反射部22を有しておらず、蛍光部21のみによって構成されていてもよいし、基板部材10は、誘電体多層膜12及び反射防止膜13を有しておらず、透光基材11のみによって構成されていてもよい。
【0171】
また、上記実施の形態1、2において、発光装置は、蛍光体デバイスに入射する励起光が蛍光体デバイスを透過する透過型の発光装置であったが、これに限らない。例えば、発光装置は、蛍光体デバイスに入射する励起光が蛍光体デバイスを透過せずに蛍光体デバイスで反射する反射型の発光装置であってもよい。つまり、発光装置は、光源2から出射する光が波長変換部材で反射するように構成されていてもよい。この場合、波長変換部材が形成される基板部材は、反射基板となり、波長変換部材の上方から励起光が照射される。
【0172】
また、上記実施の形態1、2において、発光装置は、蛍光体デバイスが動かない固定型の発光装置であったが、これに限らない。具体的には、発光装置は、蛍光体デバイスが回転する回転型の発光装置であってもよい。この場合、蛍光体デバイスは、例えば、回転する蛍光体ホールとして用いることができる。
【0173】
その他、上記実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0174】
1、1A、1B、1C 蛍光体デバイス
2 光源
10 基板部材
11 透光基材
11a 第1の面
11b 第2の面
12 誘電体多層膜
13 反射防止膜
20、20B 波長変換部材
21 蛍光部
22、22B 光反射部
30 透明接着層
40 金属板
41 開口部
50 接合層
100 発光装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B