(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056494
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】生活者モニタリングシステム、生活者モニタリング方法、及び生活者モニタリングプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20230412BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230412BHJP
【FI】
G16H50/30
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159287
(22)【出願日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2021165763
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521443966
【氏名又は名称】MBTリンク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】梅田 智広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄一
(72)【発明者】
【氏名】中西 亮平
(72)【発明者】
【氏名】服部 亮
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA24
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】家宅内の電気機器の使用状況の取得を通じて生活者の生活を把握して生活者に対する支援に結びつけやすくする生活者モニタリングシステムを提供する。
【解決手段】家宅内に設置された複数の電気機器の電力消費量を電気機器の種類に応じ分類し電気機器の電力消費状態を種類別電力消費状態として所定期間に亘り取得する種類別消費状態取得部と、所定期間に亘り予め取得された過去分の種類別電力消費状態に基づいて生活者の行動態様を推定する行動態様推定部と、所定期間に亘り予め取得された過去分の種類別電力消費状態と現在取得中の種類別電力消費状態とを比較して比較情報を生成する比較生成部と、生活者の健康情報と比較情報に基づいて生活者の行動態様の変化を推定する行動変化推定部と、生活者の行動態様の変化に対する出力を行う出力部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生活者の家宅内に設置された配電盤に接続され、前記家宅内の複数の電気機器の種類毎の電力消費状態を検出する消費電力検出器を用いる生活者モニタリングシステムであって、
前記家宅内に設置された複数の電気機器の電力消費状態を、前記複数の電気機器の種類に応じて分類し、当該分類された種類に含まれる電気機器の電力消費状態を種類別電力消費状態として所定期間に亘り取得する種類別消費状態取得部と、
所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態に基づいて、前記生活者の行動態様を推定する行動態様推定部と、
所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態と、現在取得中の電気機器の前記種類別電力消費状態とを比較して比較情報を生成する比較生成部と、
前記生活者の健康情報と前記比較情報に基づいて前記生活者の行動態様の変化を推定する行動変化推定部と、
前記生活者の前記行動態様の変化に対する出力を行う出力部と、を備える
ことを特徴とする生活者モニタリングシステム。
【請求項2】
前記種類別消費状態取得部における前記種類別電力消費状態の前記所定期間に亘る取得は、季節変動を含む少なくとも1年間である請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項3】
前記行動態様推定部は、前記過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態を1日における複数の時間帯に区分し、
前記複数の時間帯毎の電気機器の前記種類別電力消費状態により、いずれの種類の電気機器が使用されているのかに基づいて前記生活者の前記行動態様を推定する請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項4】
前記行動態様推定部は、前記過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態を週毎または月毎に区分し、
前記週毎または前記月毎の電気機器の前記種類別電力消費状態により、いずれの種類の電気機器が使用されているのかに基づいて前記生活者の前記行動態様を推定する請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項5】
前記比較生成部は、前記過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態と、前記現在取得中の電気機器の前記種類別電力消費状態との比較から、電気機器の種類及び当該電気機器の電力消費状態の増減に基づいて比較情報を生成する請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項6】
前記出力に前記生活者の生活習慣の改善の所見が含まれる請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項7】
前記生活者が単身者である請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項8】
前記行動態様推定部は機械学習部を備え、
前記機械学習部は、前記過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態から電気機器の種類及び当該電気機器の電力消費状態の増減に基づく機械学習を実行し、前記生活者の行動態様を推定する請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項9】
前記電力消費状態は、電気機器の使用時の電力消費量及び電気機器の使用時の電流の波形である請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項10】
前記行動態様推定部は、前記種類別電力消費状態に基づいて、前記生活者の身体活動の量をメッツ・時として前記生活者の行動態様を推定する請求項1に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項11】
前記出力に前記生活者の前記メッツ・時に基づく生活習慣の改善の所見が含まれる請求項10に記載の生活者モニタリングシステム。
【請求項12】
生活者の家宅内に設置された配電盤に接続され、前記家宅内の複数の電気機器の種類毎の電力消費状態を検出する消費電力検出器を用いる生活者モニタリングシステムにおける生活者モニタリング方法であって、
コンピュータが、
前記家宅内に設置された複数の電気機器の電力消費状態を、前記複数の電気機器の種類に応じて分類し、当該分類された種類に含まれる電気機器の電力消費状態を種類別電力消費状態として所定期間に亘り取得する種類別消費状態取得ステップと、
所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態に基づいて、前記生活者の行動態様を推定する行動態様推定ステップと、
所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態と、現在取得中の電気機器の前記種類別電力消費状態とを比較して比較情報を生成する比較生成ステップと、
前記生活者の健康情報と前記比較情報に基づいて前記生活者の行動態様の変化を推定する行動変化推定ステップと、
前記生活者の前記行動態様の変化に対する出力を行う出力ステップと、を実行する
ことを特徴とする生活者モニタリング方法。
【請求項13】
生活者の家宅内に設置された配電盤に接続され、前記家宅内の複数の電気機器の種類毎の電力消費状態を検出する消費電力検出器を用いる生活者モニタリングシステムにおける生活者モニタリングプログラムであって、
コンピュータに、
前記家宅内に設置された複数の電気機器の電力消費状態を、前記複数の電気機器の種類に応じて分類し、当該分類された種類に含まれる電気機器の電力消費状態を種類別電力消費状態として所定期間に亘り取得する種類別消費状態取得機能と、
所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態に基づいて、前記生活者の行動態様を推定する行動態様推定機能と、
所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の前記種類別電力消費状態と、現在取得中の電気機器の前記種類別電力消費状態とを比較して比較情報を生成する比較生成機能と、
前記生活者の健康情報と前記比較情報に基づいて前記生活者の行動態様の変化を推定する行動変化推定機能と、
前記生活者の前記行動態様の変化に対する出力を行う出力機能と、を実現させる
ことを特徴とする生活者モニタリングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活者モニタリングシステム、生活者モニタリング方法、及び生活者モニタリングプログラムに関し、特に生活者が生活する家宅内の電気機器の電力消費状態から生活者の生活が平常通りであることを見守る生活者モニタリングシステムとその方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢の単身者の場合、家宅にて過ごす時間が長くなる。この場合、訪問看護、ホームヘルパーの往診等がなければ、生活の変調等が発見されず、症状悪化、死亡等が看過されるおそれがある。しかしながら、常時訪問することとなると、市町村等の自治体の公費負担が大きい。また、訪問時間以外に生じた生活者の異常に対応しにくい。
【0003】
この場合、監視のためのカメラを生活者の家宅内に設置して常時監視することも可能ではあるものの、生活者のプライバシーが損なわれて好ましくない。カメラによる直接的な監視の代わりに、家宅内の電気機器の使用状況を通じて間接的に生活者の生活を把握する方法が提案されている(特許文献1等参照)。電気機器の種類に応じて電力消費時に特有の波形が生じることが知られている。そこで、生じた波形から電気機器の種類を特定することが可能となっている。
【0004】
家宅内の毎日の食事、洗濯、清掃等において使用する電気機器は決まっている。このため、電気機器の使用状況が判明することにより、間接的に生活者の日々の行動把握が可能となる。このように、家宅内の電気機器の使用状況の監視から、生活者のプライバシーの保護を図りつつ生活者の日々の行動把握は大きく活用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現状の家宅内の電気機器の使用状況の監視の機器、システム等にあっては、漫然と家宅内の電気機器の使用状況を取得するに留まり、生活者に対するフィードバックは十分ではなかった。
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、家宅内の電気機器の使用状況の取得を通じて生活者のそれぞれの生活、行動を把握するとともに、個々の生活者のそれぞれに対する支援に結びつけやすくする生活者モニタリングシステムとその方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、実施形態は、生活者の家宅内に設置された配電盤に接続され、家宅内の複数の電気機器の種類毎の電力消費状態を検出する消費電力検出器を用いた生活者モニタリングシステムであり、家宅内に設置された複数の電気機器の電力消費状態を、複数の電気機器の種類に応じて分類し、当該分類された種類に含まれる電気機器の電力消費状態を種類別電力消費状態として所定期間に亘り取得する種類別消費状態取得部と、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態に基づいて、生活者の行動態様を推定する行動態様推定部と、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態と、現在取得中の電気機器の種類別電力消費状態とを比較して比較情報を生成する比較生成部と、生活者の健康情報と比較情報に基づいて生活者の行動態様の変化を推定する行動変化推定部と、生活者の行動態様の変化に対する出力を行う出力部とを備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、種類別消費状態取得部における種類別電力消費状態の所定期間に亘る取得は、季節変動を含む少なくとも1年間であることとしてもよい。
【0010】
さらに、行動態様推定部は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態を1日における複数の時間帯に区分し、複数の時間帯毎の電気機器の種類別電力消費状態により、いずれの種類の電気機器が使用されているのかに基づいて生活者の行動態様を推定することとしてもよい。
【0011】
さらに、行動態様推定部は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態を週毎または月毎に区分し、週毎または月毎の電気機器の種類別電力消費状態により、いずれの種類の電気機器が使用されているのかに基づいて生活者の行動態様を推定することとしてもよい。
【0012】
さらに、比較生成部は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態と、現在取得中の電気機器の種類別電力消費状態との比較から、電気機器の種類及び当該電気機器の電力消費状態の増減に基づいて比較情報を生成することとしてもよい。
【0013】
さらに、出力に生活者の生活習慣の改善の所見が含まれることとしてもよい。また、生活者が単身者であることとしてもよい。
【0014】
さらに、行動態様推定部は機械学習部を備え、機械学習部は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態から電気機器の種類及び当該電気機器の電力消費状態の増減に基づく機械学習を実行し、生活者の行動態様を推定することとしてもよい。
【0015】
さらに、電力消費状態は、電気機器の使用時の電力消費量及び電気機器の使用時の電流の波形であることとしてもよい。
【0016】
さらに、行動態様推定部は、種類別電力消費状態に基づいて、生活者の身体活動の量をメッツ・時として生活者の行動態様を推定することとしてもよい。
【0017】
さらに、出力に生活者のメッツ・時に基づく生活習慣の改善の所見が含まれることとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の生活者モニタリングシステムによると、生活者の家宅内に設置された配電盤に接続され、家宅内の複数の電気機器の種類毎の電力消費状態を検出する消費電力検出器を用いた生活者モニタリングシステムであり、家宅内に設置された複数の電気機器の電力消費状態を、複数の電気機器の種類に応じて分類し、当該分類された種類に含まれる電気機器の電力消費状態を種類別電力消費状態として所定期間に亘り取得する種類別消費状態取得部と、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態に基づいて、生活者の行動態様を推定する行動態様推定部と、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態と、現在取得中の電気機器の種類別電力消費状態とを比較して比較情報を生成する比較生成部と、生活者の健康情報と比較情報に基づいて生活者の行動態様の変化を推定する行動変化推定部と、生活者の行動態様の変化に対する出力を行う出力部とを備えるため、家宅内の電気機器の使用状況の取得を通じて生活者のそれぞれの生活、行動を把握するとともに、個々の生活者のそれぞれに対する支援に結びつけやすくすることができる。生活者モニタリング方法及び生活者モニタリングプログラムであっても、同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の生活者モニタリングシステムの構成を示す概要図である。
【
図2】(A)家宅内の電気機器を示す模式図であり、(B)電気機器の24時間の電力消費量のグラフである。
【
図3】家宅内の電気機器から検出される電流の波形を示す模式図である。
【
図4】生活者モニタリングシステムのコンピュータの構成を示すブロック図である。
【
図5】コンピュータの機能部の構成を示すブロック図である。
【
図7】(A)1日の電気機器の電力消費量の棒グラフであり、(B)1日の電気機器を分類して示す電力消費量の棒グラフである。
【
図10】(A)出力の第1画面例、(B)出力の第2画面例、(C)出力の第3画面例である。
【
図11】実施形態の生活者モニタリング方法を説明する第1フローチャートである。
【
図12】実施形態の生活者モニタリング方法を説明する第2フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態の生活者モニタリングシステムは、生活者(居住者)の家宅内に設置された配電盤に接続された消費電力検出器を用いて生活者が生活している家宅内の電気機器の使用状況を時間、曜日、月、季節毎に計測する。そして、生活者モニタリングシステムは、生活者の日常の行動態様を電気機器の使用状況から間接的に把握し(ライフスタイルセンシング)、健康状態とともに生活者に変化、変調が生じた際に関係各所に出力して生活者の生活の質(QOL:Quality of Life)を高めるためのシステムである。
【0021】
図1は実施形態の生活者モニタリングシステム1の構成を示す概要図である。電力は電柱に懸架された電線(電力線)3から各家宅4に供給される。生活者の家宅4には配電盤5が設置され、配電盤5を介して家宅4内の各種の電気機器(
図2参照)に電力が供給される。そこで、家宅4内の各種の電気機器の使用状況を検出するための消費電力検出器6は配電盤5に接続される。消費電力検出器6は、次出の
図2及び
図3に示すように各電気機器の電力使用量(電力消費量)と各電気機器の稼働時の電流の変化により生じる波形の両方を取得する機器である。消費電力検出器6は、背景技術に開示の特許文献1等の公知の検査機器等が用いられる。
【0022】
各家宅4の消費電力検出器6は有線または無線により、インターネット回線2に接続される。そして、生活者モニタリングシステム1のコンピュータ10もインターネット回線2に接続される。生活者モニタリングシステム1における出力の対象として、訪問介護施設7、かかりつけ医(家庭医、主治医)の病院8、市町村等の役所9(行政機関)がインターネット回線2に接続される。そこで、生活者モニタリングシステム1のコンピュータ10からの出力の内容が、訪問介護施設7、病院8、役所9に通報される。この結果、生活者に対するモニタリング、見守りの効率化が図られ、当該モニタリングを通じて生活者のQOL(生活の質)が保たれやすくなる。
【0023】
実施形態の生活者モニタリングシステム1が想定する生活者は、専ら単身者である。複数人で家宅4に居住している場合、たいてい或る生活者の体調不良等は他の生活者に把握される。そこで、他の生活者が早期に訪問介護施設7、病院8、役所9等へ連絡することにより対処可能である。これに対し、生活者が単身者である場合、自身の体調に生じた変調を迅速に連絡することができずに体調を悪化させてしまうおそれがある。
【0024】
そのような場合に対して生活者モニタリングシステム1は有効である。また、生活者が複数人で家宅4に居住している場合、家宅4内の電気機器の使用状況について、生活者の特定が難しい。そのため、生活者特有の家宅4内の電気機器の使用状況を把握するためにも、生活者は単身者であることが望ましい。なお、家宅4は一般住宅に限らず、集合住宅、寮、事業所等も含まれる。つまり、恒常的に生活者が存在し、電気機器が生活者により使用されている場所であれば、いずれであっても良い。家宅4内の電気機器の使用状況を通じての生活者のモニタリングにより、自動的かつ恒常的なライフスタイルセンシングが可能となる。
【0025】
図2(A)は、前出
図1の各家宅4内の電気機器を示す一例の模式図である。家宅4には、配電盤5が設置され、同配電盤から室内の電力線を通じて個々の電気機器に電力が供給される。図示では、エアコンディショナー51(エアコン、クーラー)、冷蔵庫52、電気ポット53、電子レンジ54(マイクロウェイブオーブン)、洗濯機55が示される。むろん図示以外にも、テレビジョン(テレビ)、パーソナルコンピュータ(PC)、掃除機、炊飯器、電磁調理器、調理器(ホットプレート)、ドライヤ、扇風機、ヒーター、コーヒーメーカー、ミキサー、乾燥機、アイロン、食器洗浄機、オーディオ機器、照明機器、さらには、電気自動車の充電設備等の機器が挙げられる。
【0026】
実施形態では、消費電力検出器6は配電盤5に接続されている。消費電力検出器6は配電盤5を経由して供給される個々の電気機器のエアコンディショナー51、冷蔵庫52等の電力消費状態を時系列で検出する。電力消費状態とは、電気機器の稼働時の電力消費量(例えば1分毎のワット数)と、電気機器の稼働時の電流の変化により生じる波形の両方を含む情報を示す。つまり、消費電力検出器6は電力消費量と電流の波形の両方を検出する。
【0027】
図2(B)は或る家宅内の電気機器の24時間の電力消費量のグラフである。左端は0時、右端は24時であり、1分間毎の電力消費量の変動を示している。なお、グラフの折れ線は重なっているものの、個々の電気機器のそれぞれの電力消費量の変動を示している。
【0028】
具体的に
図2(B)には、エアコンディショナー、洗濯機、電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器、テレビジョン、掃除機、電磁調理器、高熱家電(給湯器、ドライヤ等)、待機電力、その他の1分毎のワット数の時系列変化が表されている。グラフ中、7時と8時の間に上昇したピークが存在する。これは、起床後、朝食の支度をする際に電子レンジ、炊飯器を作動させた影響である。また、18時と19時の間の上昇したピークは、夕食の支度の際に電子レンジ等の調理家電を作動させた影響である。なお、概ね1時間おきに現れる細かなピークは、待機電力、高熱家電等の温度維持の作動と考えられる。
【0029】
このように、家宅内の電気機器のおおまかな種類と使用時間を把握することにより、ある程度の当該家宅の生活者の生活、行動態様の把握が可能となる。しかしながら、一般的な傾向であるため、特定の生活者毎の生活、行動態様の特性までを掌握仕切れていない。また、電気機器の種類が多くなりすぎて、かえって生活者毎の生活、行動態様の特性がわかりにくくなる。
【0030】
そこで、実施形態の生活者モニタリングシステム1は、以降の説明のとおり、生活者毎の生活、行動態様の特性の把握の精度を高めることに注力している。具体的には、実施形態の生活者モニタリングシステム1では、消費電力検出器6は個々の電気機器の稼働時に現れる電流の波形も検出可能としている。
図3は、個々の電気機器の稼働時に現れる電流の波形を概念的に示した模式図である。前出の
図2の電気機器(家電製品)について、エアコンディショナー51、冷蔵庫52、電気ポット53、電子レンジ54、洗濯機55等の各電気機器が紙面左側に示される。そして、紙面右側には、個々の電気機器の電流の波形(51w、52w、53w、54w、及び55w)が示される。電気機器の動作時(稼働時)に内部のモータ、インバータ等の影響により固有の電流の波形が生じる。そのため、消費電力検出器6を通じて電力消費量と電流の波形の両方が検出されることにより、個別の電気機器の種類の特定が容易となり、各電気機器の使用状況も客観的に把握可能となる。なお、
図3の電気機器とそれらの電流の波形は例示であり、当然ながら、図示以外の電気機器に固有の電流の波形も検出される。
【0031】
図4は、実施形態の生活者モニタリングシステム1の制御を司るコンピュータ10の構成を示すブロック図である。コンピュータ10は、ハードウェア的に、CPU11、ROM12、RAM13、記憶部14、I/O15(インプット/アウトプットインターフェイス)により構成される。その他にメインメモリ、LSI等も含まれる。そして、I/O15にインターネット回線2(
図1参照)が接続される。生活者モニタリングシステム1のコンピュータ10は、パーソナルコンピュータ(PC)、メインフレーム、ワークステーション、クラウドコンピューティングシステム等、種々の電子計算機(計算リソース)により構成される。
【0032】
図4のコンピュータ10の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、コンピュータ10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行することで実現される。このプログラムを格納する記録媒体は、「一時的でない有形の媒体」、例えば、CD、DVD、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、このプログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワーク、放送波等)を介して生活者モニタリングシステム1のコンピュータ10に供給されてもよい。
【0033】
コンピュータ10の記憶部14は、HDDまたはSSD等の公知の記憶装置である。記憶部14は外部のサーバ(図示せず)としても良い。記憶部14は、各種のデータ、情報、生活者モニタリングプログラム、同プログラムの実行に必要な各種のデータ等を記憶する。また、各種の算出、演算等の演算実行する各機能部はCPU11等の演算素子である。加えて、キーボード、マウス等の入力装置(図示せず)、表示部(ディスプレイ等の表示装置)、データ類を出力する出力装置等も適式にコンピュータ10のI/O15に接続されてもよい。
【0034】
コンピュータ10のCPU11における各機能部は、
図5の概略ブロック図のとおり示される。各機能部は、種類別消費状態取得部110、行動態様推定部120、機械学習部121、比較生成部130、行動変化推定部140、出力部150等を備える。コンピュータ10の処理、実行は、ソフトウェア的に、メインメモリにロードされた生活者モニタリングプログラム等により実現される。
【0035】
種類別消費状態取得部110は、家宅4内に設置された複数の電気機器(
図2(A)参照)の電力消費状態を、複数の電気機器の種類に応じて分類し、当該分類された種類に含まれる電気機器の電力消費状態を種類別電力消費状態として所定期間に亘り取得する。
【0036】
前出の
図2(B)及び
図3のとおり、個々の電気機器の時系列の電力消費状態(電力消費量と電流の波形の両方)は消費電力検出器6を通じて取得可能である。この結果、どの電気機器が、いつの時点において、どのくらい電力消費しているのかが判明して、電気機器、使用時点、及び使用量が相互に結び付けられる。そこで、当該電気機器(種類、機種)、使用時点、及び使用量が結び付けられた情報を元に、複数の電気機器の種類に応じての分類が可能となる。
【0037】
図6の表は、複数の電気機器の種類に応じた分類の例である。表は、複数の電気機器を「生活、食事、活動、その他」の4種類に分類する。「生活」の分類には、エアコンディショナー、テレビジョン等の電気機器、待機電力が含まれる。いわば、生活者が家宅内において生活する際、起床から就寝に至るまで常時使用する電気機器である。「食事」の分類には、電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器、電磁調理器等の調理に使用される電気機器が含まれる。いわゆる調理家電は、生活者の食事の支度、調理に使用される。「活動」の分類には、洗濯機、掃除機、高熱家電(アイロン、ドライヤ)等が含まれる。これらの電気機器は、着衣の洗濯、家宅の清掃等の用途であり、体を動かす日常生活に使用される。「その他」の分類には、前出の分類には該当しない種類の電気機器が該当する。
【0038】
図7(A)は1日の電気機器の電力消費状態のうち電力消費量の棒グラフである。当該棒グラフは、或る家宅の1日の電気機器の消費電力を1時間毎に単純集計した結果を示し、概ね0時から24時(一部省略あり)に相当する。
図7(A)の棒グラフの変化から、起床から就寝に至るまでの電力消費量は、生活者の活動に応じて増減していること、使用された個々の電気機器の種類とその消費電力量は判明する。なお、週別、月別として棒グラフによる表示は可能である。
【0039】
図7(B)は、
図6の表の分類に従って1日の電気機器の電力消費状態のうち電力消費量を集計し直した棒グラフである。棒グラフは
図7(A)と同様に概ね0時から24時(一部省略あり)に相当する。電気機器は4種類の分類に集約されるため、恒常的な電力消費量と、時間に応じて発生する電力消費量が判明する。例えば、
図7(B)の棒グラフ中、「活動」に分類される電気機器の電力消費量が存在する時間帯と存在しない時間帯がある。
【0040】
そこで、種類別消費状態取得部110は、
図7(B)の棒グラフのような1日の分類別の電力消費量は所定期間に亘り取得する。さらに、種類別消費状態取得部110は季節変動(春夏秋冬の寒暖)を含む少なくとも1年間分を取得する。家宅4の存在する地域毎に気候に差がある。夏期と冬期のそれぞれの期間が異なることに加え、夏期と冬期の使用する冷房機器、暖房機器の種類が相違する。そのため、季節変動の影響を把握する必要から少なくとも1年間分の分類別の電力消費状態の取得が好ましい。
【0041】
行動態様推定部120は、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態に基づいて、生活者の行動態様を推定する。例えば、
図7(B)の棒グラフに示される家宅4の生活者の場合、6時から7時頃から急激に電力消費量が増大し、次に10時から11時頃、14時から15時頃、18時から19時頃にも電力消費量の増大が見られる。電力消費量の増大の要因は1日3回の食事の支度であると推定される。電力消費量の増大が生じた時間では、
図6の表の「食事」の分類が増加している。また、電力消費量の増大した時間帯においては、「活動」に分類される電気機器の電力消費量が存在する。また、「生活」の分類電気機器の電力消費量は起床から就寝までほぼ同様である。むろん、電気機器の電力消費状態に包含されている固有の電流の波形を通じて、電気機器の種類の特定と分類も容易である。
【0042】
行動態様とは、家宅の生活者の日常生活の営みについて行動に着目した項目である。つまり、起床から就寝に至るまでの日常生活において発生する種々の動作の積み重ねである。具体的には、起床後の、食事の支度と後片付け、洗濯、アイロンがけ、清掃、入浴、排泄等の行動と、それらの頻度である。例えば、家宅の生活者は午前7時から9時の間に朝食と後片付け、12時から14時の間に昼食と後片付け、清掃、18時から20時の間に夕食と後片付け、入浴等、日常生活においてほぼ毎日同様の時間に繰り返される行動態様に基づいて、今後も同様の時間、頻度において繰り返すと考えられる。行動態様の推定とは、同様の時間、頻度において繰り返される行動態様から将来に亘っても同様の行動態様が想定されることをいう。
図6の表のように、複数の電気機器の種類に応じた分類(「生活、食事、活動、その他」の4種類)とすることにより、食事、活動の分類の電気機器の増減が包括的に把握されることとなり、家宅の生活者の活動の活発化、沈滞等の把握が容易となる。
【0043】
また、行動態様推定部120は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態を1日における複数の時間帯に区分する。そして、複数の時間帯毎の電気機器の種類別電力消費状態により、いずれの種類の電気機器が使用されているのかに基づいて生活者の行動態様を推定する。加えて、行動態様推定部120は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態を曜日毎または月毎に区分する。そして、曜日毎または月毎の電気機器の種類別電力消費状態により、いずれの種類の電気機器が使用されているのかに基づいて生活者の行動態様を推定する。
【0044】
図7は例示のため或る1日の時間帯別の電力消費状態のうちの電力消費量の推移である。
図7(B)の棒グラフに示される家宅4の生活者の場合、電力消費量の変動から起床と就寝は推定される。そして、「食事」の分類の電力消費量の増加から、適度に時間をかけて自炊していることが推定される。また、同時間帯において「活動」に分類される電気機器の電力消費量も増加していることから、食事の後片付け、部屋の清掃等が行われていると推定される。従って、当該家宅4の生活者は、単身者であっても自立した生活をしていると推定される。
【0045】
図7ほど1時間ずつの細分化をせずとも、1日をいくつかの時間帯に集約して家宅4の生活者の行動態様を推定することは可能である。電気機器の消費電力状態の検出をあまりに細分化してもデータ量が多くなり重複も生じる。そこで、例えば、1日は0時から6時(深夜の時間帯)、6時から12時(午前の時間帯)、12時から18時(午後の時間帯)、18時から24時(夜の時間帯)の4つの時間帯に区分され、各時間帯の電気機器の分類別の消費電力状態が集約される。
【0046】
一般に0時から6時の深夜の時間帯であれば就寝中であり電力消費状態のうちの電気機器の消費電力量は他の時間帯と比較して少ない。通常、待機電力以外、電気機器の電力消費は少ない。6時から12時の午前の時間帯は起床、朝食の支度、後片付け、洗濯等と短時間に多くの電気機器が使用される傾向にあり、電子レンジ、食器洗浄機、洗濯機等が使用される。12時から18時の午後の時間帯は日中の体を動かす清掃等の電気機器が使用される傾向にあり、エアコンディショナーに加えて掃除機、アイロン等が使用される。18時から24時の夜の時間帯は夕食、後片付け、入浴等の電気機器が使用される傾向にあり、電子レンジ、食器洗浄機、ドライヤ等が使用される。
【0047】
これらの時間帯毎の電気機器の種類と種類別消費電力状態から、いずれの種類の電気機器が使用されているのかが容易に判明する。そこで、例えば、1日のエアコンディショナーの稼働の変化と電力使用量、電子レンジの使用状況と電力消費量、ドライヤの使用状況と電力消費量等から、家宅4の生活者の起床、食事、入浴、就寝等の行動態様の推定が可能となる。
【0048】
また、行動態様推定部120の種類別電力消費状態の区分は、前述の1日における時間帯の区分に限られず、さらに長い期間に拡張される。すなわち、曜日毎の種類別電力消費状態の変動を把握するため、種類別電力消費状態の区分は1週間毎とされる。各週の変動を緩和するため、種類別電力消費状態の区分は月毎とされる。
【0049】
例えば、掃除機の使用は午後の時間帯であるとして、毎日使用されるとは限らず水曜日と土曜日等のような低頻度の使用もあり得る。そうすると、1週間単位で種類別電力消費状態を検出する方がより実情に近く、生活者の行動態様の推定に好適である。また、月毎の場合、季節変動(気温の上下)が種類別電力消費状態の変化に多く影響する。このため、月毎の種類別電力消費状態の季節変動を含めた変化から、家宅4の生活者の行動態様の推定は可能となる。例えば、活動の分類の掃除機の使用頻度(電力消費量)に着目すると、毎週ほぼ2回の頻度において半年間以上継続していれば、週2回の清掃が続けられており、日常生活における身体の不具合は少なく、病症の発症もないと行動態様は推定される。行動態様の推定に際しては、複数人の観察が蓄積されて解析される。
【0050】
さらに、行動態様推定部120は機械学習部121を備える。機械学習部121は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態から電気機器の種類及び当該電気機器の電力消費量の増減に基づいて機械学習を実行し、家宅4の生活者の行動態様を推定する。
【0051】
これまでの説明のとおり、1日の時間毎、時間帯毎、週毎、月毎において、逐次電気機器の種類別電力消費状態が検出される。しかし、個別に検出された種類別電力消費状態のデータのままでは、毎回の変動、ぶれ等が大きく傾向を把握して行動態様を推定することは容易ではない。また、家宅4の生活者の数(戸数に相当する人数)が増える場合、個々の家宅4の生活者について、種類別電力消費状態のデータから判断して行動態様を推定することは煩雑かつ時間、費用等を要する。
【0052】
そこで、統計処理の手法から特異的な傾向の抽出が可能である。具体的には、種類別電力消費状態(その種類毎、並びに種類別の消費電力量)について、日、週、月の平均値(算術平均)、「最大値」、「最小値」、「標準偏差」等が算出される。これらの算出より、家宅4の生活者の行動態様の特徴が抽出される。また、「標準偏差/平均値」も算出される。特に、「標準偏差/平均値」が算出されることにより、数値幅が大きくなり、より顕著に家宅4の生活者の行動態様の特徴の抽出が可能となる。
【0053】
一連の統計的算出は行動態様推定部120において実行される。加えて、サポートベクター(Support Vector Machine:SVM)、モデルツリー、決定ツリー、ニューラルネットワーク、多重線形回帰、局部的重み付け回帰、確立サーチ方法、重回帰分析等のデータ処理に好適な機械学習の手法が適宜用いられる。
【0054】
行動態様推定部120が機械学習部121を備えて、演算実行することにより、日毎、週毎、月毎の種類別電力消費状態から、家宅4の生活者の電気機器の使い方の特徴が検出され、結果的に生活者の行動態様の特徴の抽出が可能となる。さらに詳しく述べると、消費電力量及び使用される電気機器の推移と、その時の行動態様をラベルとした教師データを学習させた学習モデルが生成される。そして、生成した学習モデルに対して消費電力の推移のデータが入力され、行動態様は推定される。
【0055】
比較生成部130は、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態と、現在取得中の電気機器の種類別電力消費状態とを比較して比較情報を生成する。より具体的には、比較生成部130は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態(主に消費電力量)と、現在取得中の電気機器の種類別電力消費状態態(主に消費電力量)との比較から、電気機器の種類及び当該電気機器の電力消費量の増減に基づいて比較情報を生成する。
【0056】
図8は比較情報の生成の一例を示す模式図である。
図8の紙面左側の棒グラフは、家宅4の生活者の週の平均化した合計の電気機器(過去分)の種類別電力消費状態であり、当該生活者の1週間の標準的な電気機器の種類別の電力消費の状況に相当する。これに対し、
図8の紙面右側の棒グラフは、直近1週間の合計の電気機器(現在分)の種類別電力消費状態のうちの種類別電力消費量である。双方の棒グラフにおいて、「生活」と「その他」に分類される種類別電力消費量の変化は少ない。しかしながら、「食事」、特に「活動」に分類される種類別電力消費量が大きく減少している。
【0057】
そこで、双方の棒グラフの比較より「生活」、「食事」、「活動」、「その他」に分類される種類別電力消費量について差分が求められる。この差分が比較情報となる。むろん、
図8の棒グラフとしての図示は例示であり、図示の棒グラフに限られず、比較情報は、折れ線グラフによる平均値、標準偏差からの所定の閾値を含めた差分として生成されてもよい。さらに、季節変動への対処として、比較情報は、過去分となる前年同月と現在分である今月の種類別電力消費量の差分から生成されてもよい。
【0058】
行動変化推定部140は、生活者の健康情報と比較情報に基づいて生活者の行動態様の変化を推定する。生活者の健康情報とは、当該生活者のプライバシーを考慮して訪問介護施設7、病院8等、生活者モニタリングシステム1の運営者等に連絡される生活者の身体に関する情報である。具体的には、年齢、性別、身長、体重、胴囲、血圧、既往歴、疾患の有無、喫煙歴、1日当たりの歩行数、認知症の有無、さらには遺伝型等である。これらに加えて、地域要因(日照時間、降水量、降雪量等)が含められても良い。各種の生活者の健康情報は、訪問介護施設7、病院8等にて取得後、適時生活者モニタリングシステム1に送信される。
【0059】
図8の模式図を例にとると、双方の棒グラフの比較より、現在分の「食事」に分類される種類別電力消費状態の減少は電子レンジ、オーブン等の調理家電の使用時間、頻度の減少が主要因である。また、現在分の「活動」の種類別電力消費状態の減少は、当該1週間当たりの掃除機、洗濯機の使用時間、頻度の減少が主要因である。このことから、家宅4の生活者は、直近1週間において、体を動かす頻度(活動量)が減少していると言える。
【0060】
前出の
図8の例示のとおり、種類別電力消費状態のうちの種類別電力消費量の比較、電気機器の種類及び当該電気機器の電力消費状態のうちの電力消費量の増減に基づいて比較情報が生成される。なお、比較情報は、多面的な材料、根拠による行動態様の推定を担保するため、
図7に開示の1週間毎の他に、毎日、毎月(前年同月比較)からも生成可能である。
【0061】
図9は行動態様の推定を示す模式図である。行動変化推定部140を通じて生成される複数の比較情報に基づいて家宅4の生活者の行動態様の変化が推定される。例えば、
図8を例に取ると、「生活」と「その他」に分類される種類別電力消費状態のうちの種類別電力消費量の変化は少ない。当該当該比較情報から、生活者の行動態様は、日常生活は送ることができ、直ちに生命の危険が迫っている状況ではないと推定される。ただし、「食事」、「活動」に分類される種類別電力消費状態のうちの種類別電力消費量は減少している。当該当該比較情報から、生活に必要な積極的な活動、行動の減少から、四肢の障害、発熱、下痢等を伴う感染症の発症等の生活者の行動態様の変化が推定される。
【0062】
また、「食事」、「活動」に分類される種類別電力消費状態のうちの種類別電力消費量が、直近半年で徐々に低下している場合、生活者の筋力の低下等の生活者の行動態様の変化が推定される。また、生活者の行動態様の変化を推定の精度の点から、生活者の健康情報も加えられる。例えば、「食事」、「活動」に分類される種類別電力消費状態のうちの種類別電力消費量とともに、生活者の体重減少、1日当たりの歩行数の減少が見られる場合、生活者は鬱状態に転じたことが推定される。
【0063】
行動変化推定部140により実行される生活者の健康情報と比較情報に基づいた生活者の行動態様の変化の推定においても、複数の生活者の健康情報と複数の比較情報の処理に多変量解析、線形回帰、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン等の回帰分析等の機械学習の解析方法が適用される。
【0064】
出力部150は、生活者の行動態様の変化に対する出力を行う。比較情報に基づく生活者の行動態様の変化が推定され、特に対処が必要な場合に、家宅4の生活者に関係する者、部署等に対し出力が行われる。出力の形態は、ファクシミリによる画像、文書の送信、電話による音声案内、電子メールの通知、SNSによるメッセージ通知、チャット等の多種の態様から選択される。
【0065】
図1の実施形態の生活者モニタリングシステム1の構成のとおり、生活者モニタリングシステム1のコンピュータ10はインターネット回線2に接続され、生活者モニタリングシステム1のコンピュータ10からの出力の内容が、訪問介護施設7、病院8、役所9に通報される。そこで、生活者モニタリングシステム1のコンピュータ10の出力部150から出力を受け取った訪問介護施設7、病院8、役所9等は速やかに家宅4の生活者を訪問するほか、関係各所とも連絡を取り合うことが可能となる。このように、個々の家宅4とその生活者について、電気機器を通じてのモニタリングにより、生活状態の把握(ライフスタイルセンシング)が容易となる。
図1の訪問介護施設7、病院8、役所9は出力の連絡先の一例であり、その他の施設、近隣住民、家宅4の生活者の親族等が出力の連絡先に含められてもよい。
【0066】
生活者モニタリングシステム1を用いた生活状態の把握(ライフスタイルセンシング)の例として、
図10の画面例が示される。
図10は出力の画面例であり、出力の文章、画像を表している。
図10(A)の画面例では、「P地区のXさん、直近1週間で活動量の低下を確認。熱中症、感染症の可能性あり。」の文章表示である。例えば、直近1週間において、「食事」、「活動」に分類される種類別電力消費状態のうちの種類別電力消費量が1週間前と比較して低下している場合、体調不良により体を動かすことができなくなっていると考えられる。そこで、想定し得る事態として、
図10(A)の画面例が生成される。
図10(B)の画面例では、「Q集落のYさん、昨晩からテレビ、照明が付いたまま。至急容体を確認してください。」の文章表示である。加えて、
図10(C)の画面例では、「R番地のZさん、活動量が減っています。リハビリへ誘ってください。」の文章表示である。むろん、
図10は例示であり、比較情報に基づく生活者の行動態様の変化の推定に応じて、複数種類の文章表示が用意される。
【0067】
このように、直接家宅4の生活者を常時監視することなく、家宅内の電気機器の電力消費状態、その使用状況(電力消費量)の増減、電気機器の種類の変化を根拠に関節的に生活者の容体のモニタリングが可能となる。特に、経時変化の把握が可能であることから、
図9(C)の画面例のように、出力に生活者の生活習慣の改善に関する所見、具体的には運動量を増加させる提言等を含めることができる。
【0068】
特に、生活者が単身者の場合、加齢に伴い外に出たがらなくなり運動量が低下しやすい。また冬期の降雪により外出が制限される。このような場合について、生活者の健康情報を踏まえつつ、寝たきりを回避する筋力維持の観点から生活者の活動量を向上させる予防的な出力に意義がある。また、万が一にも生活者の容体に変化が生じた場合であっても、訪問介護施設7、病院8、役所9等に対し生活者の行動態様の変化が出力され、関係者による早期の対応が可能となる。結果として、生活者へのモニタリングの効率化が図られ、さらには生活習慣の改善を通じた生活者のQOL(生活の質)が高められる。
【0069】
行動態様推定部120における生活者の行動態様の推定に際しては、行動態様そのものに加えて、比較換算可能な数値指標も用いられる。すなわち、行動態様推定部120は、種類別電力消費状態に基づいて、生活者の身体活動の量を後述するメッツ・時として生活者の行動態様を推定する。
【0070】
さらに、比較生成部130では、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態に見合った身体活動の量のメッツ・時と、現在取得中の電気機器の種類別電力消費状態に見合った身体活動の量のメッツ・時とを比較して比較情報を生成することができる。
【0071】
そして、行動変化推定部140では、生活者の健康情報と比較情報に基づいて生活者の行動態様の変化の推定に際し、生活者の身体活動の量であるメッツ・時を用いることができる。
【0072】
出力部150では、生活者の行動態様の変化に対する出力に際し、出力に生活者のメッツ・時に基づく生活習慣の改善の所見を含む。
【0073】
例えば、健康づくりのための運動指針2006(抜粋)によると、身体活動の強さを表す単位として、身体活動の強さには「メッツ」が用いられる。「メッツ」は身体活動の強さについて、安静時の何倍に相当するかを表す単位であり、座って安静にしている状態が1メッツであり、普通歩行が3メッツに相当する。そして、身体活動の量についてはメッツに身体活動の実施時間が掛け合わされる「メッツ・時」、もしくは「エクササイズ」が用いられる。ここで、メッツとは、「METs:metabolic equivalents(代謝当量)」の略語であり、国際的に広く使用されている身体活動の強度を示す単位である。
【0074】
例えば、3メッツの身体活動を1時間行った場合、3メッツ×1時間=3メッツ・時(エクササイズ)となる。
また、6メッツの身体活動を30分行った場合、6メッツ×0.5時間=3メッツ・時(エクササイズ)となる。
【0075】
身体活動の種類とメッツとの換算については、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所の発行による2012年4月11日改訂の改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』等(https://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf)が参考にされる。例えば、掃除機をかけるは3.3メッツ、アイロンがけをするは1.8メッツ、座って静かにテレビを見るは1.3メッツ、睡眠は1.0メッツ等であり、広範に身体活動毎にメッツの数値が規定されている。身体活動と対応するメッツの数値はコンピュータ10の記憶部14に記憶される他、インターネット回線2経由により取得可能である。
【0076】
そこで、前述の種類別電力消費状態(種類別電力消費量)により、どのような種類の電気機器が使用されたか、及びその電気機器の使用時間が判明する。そこで、電気機器の使用に応じて生活者の動作に応じた身体活動の種類とメッツが判明し、身体活動の動作時間との積から、メッツ・時(エクササイズ)が判明する。すると、生活者の1日、1週間、1ヶ月間、半年間等の合計の身体活動の総量の把握が数値換算可能となる。結果、比較生成部130が比較情報を生成するに際し、生活者の月単位等の長期的な身体活動が活発になっているのか、あるいは不活発になっているのかの把握に活用される。
【0077】
行動変化推定部140は、生活者の健康情報及び比較情報の一つの項目として、身体活動の強さと身体活動の時間の積となるメッツ・時(エクササイズ)を採用することができる。メッツ・時の使用により、生活者の身体活動の総量の把握が数値換算されて、所定期間に亘る行動変化の傾向分析が容易となる。例えば、所定期間におけるアイロンの使用頻度が増えているようであれば、アイロンをかけるほど身体の筋力が十分であると言える。また、アイロンがけは衣類を洗濯してから行う動作である。このことから、生活者は自身の衣類の洗濯をはじめとする身だしなみに十分に気を遣う精神状態と考えられる。従って、生活者の精神は鬱状態では無いこと等の類推材料を間接的に得ることができる。
【0078】
一連の説明のとおり、生活者の健康情報及び比較情報の一つの項目として、身体活動の強さと身体活動の時間の積となるメッツ・時(エクササイズ)を採用可能であるため、生活者の個々の行動態様における活動の有無に加えて、複数種類の身体活動の合算(合計)による評価も可能である。例えば、夏期は高温のため、冬期は寒冷のため、身体活動は少なくなりやすい。また、季節毎に使用される電気機器の種類も変化する。そうすると、生活者の身体には問題無いものの、個別の電気機器によっては使用頻度、使用時間等の年間の季節変動要因によるばらつきをそのまま反映するおそれがある。従って、メッツ・時の活用により、生活者の行動把握に客観性が加わる。
【0079】
さらに、出力部150による生活者の行動態様の変化に対する出力に際して、生活者にメッツ・時に基づいて、現状の生活習慣からの改善の所見を加えることができる。
【0080】
具体的には、所定期間における掃除機の使用頻度が徐々に減少しているようであれば、掃除機をかけるために必要な筋力の低下の可能性がある。このことから、生活者の身体に生じたリウマチ等の慢性疾患の発見が可能となる。加えて、掃除機は生活者自身の家屋内を清浄に保とうとする意欲に基づいて使用される電気機器であることから、家屋内の清掃に十分に気を遣うことができない精神状態と考えられる。従って、生活者の精神は鬱状態等の類推材料を間接的に得ることができる。
【0081】
そこで、仮に、生活者にリウマチ等の慢性疾患が発現しているようであれば、掃除機の使用の対応するメッツ・時に基づいて、「足踏みを1日10分しましょう。」のような文章表示が、代替となる動作を生活習慣の改善の所見として生活者の端末に表示される。むろん、これは例示であり、比較情報に基づく生活者の行動態様の変化の推定に応じて、複数種類の文章表示が用意される。また、精神状態の変調については、生活者のかかりつけ医、ホームヘルパー、行政機関等に家宅訪問を促すメッセージが生活者モニタリングシステム1を通じて送信可能である。
【0082】
これより、
図11と
図12のフローチャートを用い、生活者モニタリングシステム1における生活者モニタリング方法と生活者モニタリングプログラムをともに説明する。生活者モニタリング方法は、生活者モニタリングプログラムに基づいて、コンピュータ10のCPU11により実行される。生活者モニタリングプログラムは、
図4のコンピュータ10に対して、種類別消費状態取得機能、行動態様推定機能、比較生成機能、行動変化推定機能、出力機能、さらには機械学習の各種機能を実行させる。これらの各機能は図示の順に実行される。なお、各機能は前述の生活者モニタリングシステム1の説明と重複するため、詳細は省略する。
【0083】
図11のフローチャートより、コンピュータ10(CPU11)の処理は、種類別消費状態取得ステップ(S110)、行動態様推定ステップ(S120)、比較生成ステップ(S130)、行動変化推定ステップ(S140)、出力ステップ(S150)の各種ステップを備える。さらに、
図12のフローチャートより、コンピュータ10(CPU11)の処理は、機械学習ステップ(S121)を備える。むろん、コンピュータ10(CPU11)自体の可動に必要な各種ステップは当然に含まれる。
【0084】
種類別消費状態取得機能は、家宅4内に設置された複数の電気機器(
図2参照)の電力消費状態を、複数の電気機器の種類に応じて分類し、当該分類された種類に含まれる電気機器の電力消費状態を種類別電力消費状態として所定期間に亘り取得する(S110;種類別消費状態取得ステップ)。行動態様推定機能は、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態に基づいて、生活者の行動態様を推定する(S120;行動態様推定ステップ)。比較生成機能は、所定期間に亘り予め取得された過去分の電気機器の種類別電力消費状態と、現在取得中の電気機器の種類別電力消費状態とを比較して比較情報を生成する(S130;比較生成ステップ)。行動変化推定機能は、生活者の健康情報と比較情報に基づいて生活者の行動態様の変化を推定する(S140;行動変化推定ステップ)。出力機能は、生活者の行動態様の変化に対する出力を行う(S150;出力ステップ)。種類別消費状態取得機能、行動態様推定機能、比較生成機能、行動変化推定機能、出力機能はコンピュータ10のCPU11により実行される。
【0085】
機械学習機能は、過去分の電気機器の種類別電力消費状態から電気機器の種類及び当該電気機器の電力消費状態の増減に基づく機械学習を実行し、生活者の行動態様を推定する(S121;機械学習ステップ)。機械学習機能はコンピュータ10のCPU11により実行される。
【0086】
上述した本発明のコンピュータプログラムは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体に記録されていてよく、記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。
【0087】
なお、上記コンピュータプログラムは、例えば、ActionScript、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語、Objective-C、Java(登録商標)などのオブジェクト指向プログラミング言語、HTML5などのマークアップ言語などを用いて実装できる。
【符号の説明】
【0088】
1 生活者モニタリングシステム
2 インターネット回線
3 電線(電力線)
4 家宅
5 配電盤
6 消費電力検出器
7 訪問介護施設
8 病院
9 役所(行政機関)
10 コンピュータ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 記憶部
15 インプット/アウトプットインターフェイス
51 エアコンディショナー
52 冷蔵庫
53 電気ポット
54 電子レンジ
55 洗濯機
110 種類別消費状態取得部
120 行動態様推定部
121 機械学習部
130 比較生成部
140 行動変化推定部
150 出力部