(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056502
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】外用液体組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230412BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20230412BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230412BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230412BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/368
A61K8/34
A61Q19/00
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160938
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021165810
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000231796
【氏名又は名称】日本臓器製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 禎隆
(72)【発明者】
【氏名】下村 玲奈
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC311
4C083AC312
4C083AD301
4C083AD302
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD351
4C083AD352
4C083DD01
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD47
4C083EE01
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】ユズ種子エキスを含有しながらも細菌汚染が抑制された外用液体組成物を提供すること。
【解決手段】ユズ種子エキス及び抗菌剤を含有する、外用液体組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A成分)ユズ種子エキス及び(B成分)抗菌剤を含有する、外用液体組成物。
【請求項2】
前記ユズ種子エキスがユズ種子のエタノール抽出液である、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項3】
前記ユズ種子エキスの含有量が外用液体組成物100質量%に対して1~10質量%である、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項4】
前記抗菌剤が(B1成分)安息香酸及び安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(B2成分)フェノキシエタノールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項5】
前記抗菌剤が(B1成分)安息香酸及び安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(B2成分)フェノキシエタノールを含む、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項6】
(C成分)グリセリンを含有する、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項7】
(D成分)アルギン酸及びアルギン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項8】
(E成分)ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項9】
(F成分)キサンタンガムを含有する、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項10】
(G成分)ユズ果実油を含有する、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項11】
水の含有量が外用液体組成物100質量%に対して80質量%以上である、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項12】
(C成分)グリセリン、
(D成分)アルギン酸及びアルギン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、
(E成分)ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに
(F成分)キサンタンガムを含有し、且つ
前記C~F成分それぞれの含有量が外用液体組成物100質量%に対して1質量%以下である、請求項1に記載の外用液体組成物。
【請求項13】
皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善用である、請求項1~12のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【請求項14】
手指の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善用である、請求項1~12のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の外用液体組成物を充填してなるポンプ式ボトル製品。
【請求項16】
皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善用製品の製造のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の外用液体組成物の使用。
【請求項17】
皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善用製品が、ポンプ式ボトル製品である、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用液体組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水仕事による肌荒れを防止又は改善する目的で、ハンドクリームが利用されている。水仕事後にハンドクリームを肌に塗布することにより、水仕事により流出した油分を補ったり、乾燥による皮膚の荒れを抑制したりすることができる。しかしながら、ハンドクリームは、一般的には、使用後のべたつき感、使用後の手指等が接触した対象物へのべたつきの移行、水接触時のヌルヌル感等の問題があるので、水仕事前及び水仕事中の使用や、使用後に食材や、食器、スマートフォン等の表面が滑らかなものに触れることは、忌避される。
【0003】
特許文献1には、べたつき等が抑制されたハンドクリームについて開示されている。しかし、当該ハンドクリームも油性成分を一定以上含むクリーム状の形態である以上、上記の問題は避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは研究を進める中で、ユズ種子エキスに着目した。ユズ種子エキスは、肌への保湿効果を有する成分であるが、液体製剤として使用するとサラッとしてべたつきが生じにくいので、使用後に食材や、食器、スマートフォン等の表面が滑らかなものに触れることも可能である。また、ユズ種子エキスは毒性のない天然由来成分であるので、食材や食器に付着しても有害性の問題も生じにくいため、安心して使用することが可能である。
【0006】
しかしながら、本発明者らは、ユズ種子エキスを含有する外用液体組成物の開発を進める中で、ユズ種子エキスを配合すると、汚染微生物の増殖が顕著になるという問題を確認した。
【0007】
そこで、本発明は、ユズ種子エキスを含有しながらも微生物汚染が抑制された外用液体組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、ユズ種子エキス及び抗菌剤を含有する外用液体組成物であれば、上記問題を解決できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0009】
項1. (A成分)ユズ種子エキス及び(B成分)抗菌剤を含有する、外用液体組成物。
【0010】
項2. 前記ユズ種子エキスがユズ種子のエタノール抽出液である、項1に記載の外用液体組成物。
【0011】
項3. 前記ユズ種子エキスの含有量が外用液体組成物100質量%に対して1~10質量%である、項1又は2に記載の外用液体組成物。
【0012】
項4. 前記抗菌剤が(B1成分)安息香酸及び安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(B2成分)フェノキシエタノールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1~3のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0013】
項5. 前記抗菌剤が(B1成分)安息香酸及び安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(B2成分)フェノキシエタノールを含む、項1~4のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0014】
項6. (C成分)グリセリンを含有する、項1~5のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0015】
項7. (D成分)アルギン酸及びアルギン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1~6のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0016】
項8. (E成分)ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1~7のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0017】
項9. (F成分)キサンタンガムを含有する、項1~8のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0018】
項10. (G成分)ユズ果実油を含有する、項1~9のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0019】
項11. 水の含有量が外用液体組成物100質量%に対して80質量%以上である、項1~10のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0020】
項12. (C成分)グリセリン、
(D成分)アルギン酸及びアルギン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、
(E成分)ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに
(F成分)キサンタンガムを含有し、且つ
前記C~F成分それぞれの含有量が外用液体組成物100質量%に対して1質量%以下である、項1~11のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0021】
項13. 皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善用である、項1~12のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0022】
項14. 手指の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善用である、項1~13のいずれか一項に記載の外用液体組成物。
【0023】
項15.項1~14のいずれか一項に記載の外用液体組成物を充填してなるポンプ式ボトル製品。
【0024】
項16.皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善用製品の製造のための、項1~14のいずれか一項に記載の外用液体組成物の使用。
【0025】
項17.皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善用製品が、ポンプ式ボトル製品である、項16に記載の使用。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ユズ種子エキスを含有しながらも微生物汚染が抑制された外用液体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0028】
本発明は、その一態様において、(A成分)ユズ種子エキス及び(B成分)抗菌剤を含有する、外用液体組成物(本明細書において、「本発明の液体組成物」と示すこともある。)、に関する。以下にこれについて説明する。
【0029】
ユズ種子エキス(A成分)は、ユズ(学名:Ctrus junos)の種子から得られるエキスであって、その限りにおいて特に制限されない。ユズの種子は、ユズ果実中に存在する種子である。
【0030】
ユズ種子エキスは、典型的には、ユズの種子を溶媒で抽出して得られる抽出液、その濃縮物、又は乾燥物である。ユズ種子エキスは、好ましくは抽出液であることができる。抽出に使用される溶媒としては、特に制限されず、例えば、エタノール等のアルコール、水、酢酸等、それらの混合溶媒が挙げられ、これらの中でも好ましくはエタノール、エタノール水溶液が挙げられる。抽出溶媒としてエタノール及び/又はエタノール水溶液を用いた場合のユズ種子エキスのエタノール含有量は、ユズ種子エキス100質量%に対して、好ましくは20~60質量%、より好ましくは25~50質量%、さらに好ましくは30~45質量%、よりさらに好ましくは35~40質量%である。ユズ種子エキスは、好ましくは、ユズの種子をエタノール又はエタノール水溶液で抽出して得られる抽出液(ユズ種子のエタノール抽出液)であることができる。抽出方法は、特に制限されず、公知の方法に従った又は準じた方法、例えばユズの種子を溶媒に浸漬して、必要に応じて撹拌しながら、一定期間放置する抽出方法が挙げられる。抽出条件は、ユズペクチンが抽出され、抽出液にとろみが出る条件であれば特に制限されず、例えばユズ種子を、3~20倍量(好ましくは5~12倍量)の溶媒を用いて、室温(1~30℃)で2~10日間抽出する条件であることができる。
【0031】
A成分は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0032】
A成分の含有量(濃縮及び乾燥していない抽出液量換算)は、ユズ種子エキスの有用作用(皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善作用)を発揮できる程度の量である限り、特に制限されない。A成分の含有量(濃縮及び乾燥していない抽出液量換算)は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~9質量%、さらに好ましくは5~8質量%、よりさらに好ましくは6~8質量%である。A成分の含有量を上記範囲とすることによって、本発明の液体組成物において、ユズ種子エキスに起因する特有の臭い、着色、皮膚に適用した際のつっぱり感等を抑えつつも上記したユズ種子エキスの有用作用をより効果的に発揮させることが可能である。
【0033】
抗菌剤(B成分)は、化粧品分野又は食品分野において用いられ得る、エタノール等の脂肪族アルコール以外の水に溶解可能な抗菌成分(水溶性抗菌剤)であって、その限りにおいて特に制限されない。B成分により、ユズ種子エキスの配合により顕著となる微生物汚染を抑制することができる。本明細書において、「水溶性抗菌剤」とは、水に僅かでも溶解できる抗菌剤であれば良い。例えば、0.1質量%以上の割合、好ましくは、0.5質量%以上の割合で水に溶解できれば良い。抗菌剤としては、例えば安息香酸、安息香酸塩、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等)、チモール、イソプロピルメチルフェノール、カプリルヒドロキサム酸、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ソルビン酸、ソルビン酸塩、クロロブタノール、メチルイソチアゾリン等が挙げられる。これらの抗菌剤において、塩としては、好ましくはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、より好ましくはナトリウム塩が挙げられる。
【0034】
B成分は、好ましくは、(B1成分)安息香酸及び安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも1種並びに(B2成分)フェノキシエタノールのB1成分及びB2成分からなる群より選択される少なくとも1種を含み、特に好ましくは、(B1成分)安息香酸及び安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも1種、並びに(B2成分)フェノキシエタノールを含む。本発明の液体組成物において、B1成分、B2成分を使用することにより(特にB1成分とB2成分を組み合わせて使用することにより)、白濁、沈殿、黄変等を抑制しつつ、ユズ種子エキスの配合により顕著となる微生物汚染をさらに効果的に抑制することができる。
【0035】
B成分は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
B成分の含有量は、微生物汚染の抑制作用を発揮できる程度の量である限り、特に制限されない。B成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.3~1.2質量%、さらに好ましくは0.5~1.1質量%、よりさらに好ましくは0.7~1.0質量%、とりわけ好ましくは0.8~1.0質量%である。B成分の含有量を上記範囲とすることによって、抗菌剤による刺激性、毒性、アレルギー等のリスクを抑えつつ、微生物汚染をより効果的に抑制することができる。
【0037】
本発明の液体組成物がB1成分及び/又はB2成分を含有する場合、B1成分及びB2成分の合計含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.3~1.2質量%、さらに好ましくは0.5~1.1質量%、よりさらに好ましくは0.7~1.0質量%、とりわけ好ましくは0.8~1.0質量%である。
【0038】
本発明の液体組成物がB1成分及び/又はB2成分を含有する場合、B1成分及びB2成分の合計含有量は、B成分100質量%に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上、とりわけ好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0039】
本発明の液体組成物がB1成分を含有する場合、B1成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.05~0.9質量%、より好ましくは0.15~0.8質量%、さらに好ましくは0.25~0.7質量%、よりさらに好ましくは0.35~0.6質量%、とりわけ好ましくは0.4~0.6質量%である。
【0040】
本発明の液体組成物がB2成分を含有する場合、B2成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.05~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.7質量%、さらに好ましくは0.2~0.6質量%、よりさらに好ましくは0.3~0.5質量%である。
【0041】
B成分の中でも、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン類)は一部で忌避される傾向にあるので、使用しない、又は使用量が少ないことが好ましい。この観点から、パラオキシ安息香酸エステルの合計含有量は、B成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0042】
B成分の中でも、デヒドロ酢酸及びデヒドロ酢酸塩はユズ種子エキス含有液体を黄変させるので、使用しない、又は使用量が少ないことが好ましい。この観点から、デヒドロ酢酸及びデヒドロ酢酸塩の含有量は、B成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、よりさらに好まくは1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0043】
本発明の液体組成物は、グリセリン(C成分)を含有することが好ましい。C成分により、保湿効果を向上させることができる。
【0044】
本発明の液体組成物がC成分を含有する場合、C成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.05~0.9質量%、より好ましくは0.15~0.8質量%、さらに好ましくは0.25~0.7質量%、よりさらに好ましくは0.35~0.6質量%、とりわけ好ましくは0.4~0.6質量%である。C成分の含有量を上記範囲とすることによって、べたついた使用感になるのを抑制しつつ保湿効果をより効果的に発揮することができる。
【0045】
本発明の液体組成物は、アルギン酸及びアルギン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種(D成分)を含有することが好ましい。D成分により、適度な粘性を付与し且つ保湿効果を向上させることができる。これにより、使用後のつっぱり感を抑えることができる。アルギン酸塩としては、好ましくはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、より好ましくはナトリウム塩が挙げられる。
【0046】
D成分は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0047】
本発明の液体組成物がD成分を含有する場合、D成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.0025~0.1質量%、より好ましくは0.005~0.05質量%、さらに好ましくは0.01~0.04質量%、よりさらに好ましくは0.01~0.03質量%である。D成分の含有量を上記範囲とすることによって、べたついた使用感になるのを抑制しつつ、より適度な粘性を付与し且つ保湿効果をより効果的に発揮することができる。
【0048】
本発明の液体組成物は、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種(E成分)を含有することが好ましい。E成分により、保湿効果を向上させることができる。ヒアルロン酸塩としては、好ましくはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、より好ましくはナトリウム塩が挙げられる。
【0049】
E成分は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
本発明の液体組成物がE成分を含有する場合、E成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.001~0.05質量%、より好ましくは0.002~0.03質量%、さらに好ましくは0.005~0.02質量%、よりさらに好ましくは0.007~0.015質量%である。E成分の含有量を上記範囲とすることによって、べたついた使用感になるのを抑制しつつ、保湿効果をより効果的に発揮することができる。
【0051】
本発明の液体組成物は、キサンタンガム(F成分)を含有することが好ましい。F成分により、適度な粘性を付与し且つ保湿効果を向上させることができる。
【0052】
F成分は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0053】
本発明の液体組成物がF成分を含有する場合、F成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.05~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.7質量%、さらに好ましくは0.2~0.6質量%、よりさらに好ましくは0.3~0.5質量%である。F成分の含有量を上記範囲とすることによって、べたついた使用感になるのを抑制しつつ、より適度な粘性を付与し且つ保湿効果をより効果的に発揮することができる。
【0054】
本発明の液体組成物は、その好ましい態様において、C成分、D成分、E成分、及びF成分を含有し、且つC~F成分それぞれの含有量(すなわち、C成分含有量、D成分含有量、E成分含有量、及びF成分含有量のそれぞれ)が本発明の液体組成物100質量%に対して1質量%以下である。特に好ましい態様において、C~F成分それぞれの含有量は、上述の範囲を満たす。これらの好ましい態様であれば、白濁、沈殿、黄変等を抑制しつつ、べたつきを抑制し、さらに皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善作用をより効果的に発揮することができる。
【0055】
本発明の液体組成物は、ユズ果実油(G成分)を含有することが好ましい。G成分により、ユズの香りを付与することができる。ユズ果実油は、ユズ(Citrus junos)の果実から得られる精油であり、その限りにおいて特に制限されない。
【0056】
G成分は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0057】
本発明の液体組成物がG成分を含有する場合、G成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.00005~0.0009質量%、より好ましくは0.00015~0.0008質量%、さらに好ましくは0.00025~0.0007質量%、よりさらに好ましくは0.00035~0.0006質量%、とりわけ好ましくは0.0004~0.0006質量%である。
【0058】
本発明の液体組成物は、エタノール(H成分)を含有することが好ましい。H成分は、A成分がエタノール含有溶媒による抽出液又はその濃縮物である場合はその一部であり、またA成分とは別に添加することができ、H成分を添加する場合の配合量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%、よりさらに好ましくは0.7~1.5質量%である。本発明の液体組成物がH成分を含有する場合、H成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、好ましくは1~6質量%、より好ましくは2~5質量%、さらに好ましくは2.5~4.5質量%、よりさらに好ましくは3~4質量%である。
【0059】
本発明の液体組成物は、溶媒として水を含有する。本発明の液体組成物は、べたつきを抑えるために、水を多く含有する。水の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは88質量%以上である。当該含有量の上限は、上記成分の必要量を配合可能である限り特に制限されず、例えば99質量%、97質量%、95質量%、93質量%、又は92質量%である。なお、上記成分のうちH成分以外については、各成分の「含有量」を「配合量」に読み替えることが可能である。
【0060】
本発明の液体組成物は、上記以外に、任意の他の成分を含有することができる。他の成分は、化粧品分野又は食品分野において使用され得るものであれば特に制限されない。他の成分としては、例えば酸化防止剤、pH調整剤、安定化剤、着色剤、香料、刺激軽減剤、清涼成分、保湿成分、抗菌若しくは殺菌成分、ビタミン類、アミノ酸若しくはその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、血行促進成分、角質軟化成分、収斂成分、抗糖化成分、又はペプチド若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0061】
本発明の液体組成物における他の成分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、例えば10質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、よりさらに好ましくは0.01質量%以下である。
【0062】
本発明の液体組成物は、使用後のべたつき、水接触時のヌルヌル感、油性成分による汚染等の問題を抑えるべく、G成分以外の油分を含有しない、又はG成分以外の油分の含有量が極めて少ないことが好ましい。ここで、油分とは、基剤又は担体として使用される油分であり、例えば炭化水素油、エステル油、油脂類、シリコーン類、ロウ類等である。
【0063】
本発明の液体組成物における油分の含有量は、本発明の液体組成物100質量%に対して、例えば2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、よりさらに好ましくは0.001質量%以下である。
【0064】
本発明の液体組成物のpHは、皮膚や粘膜に対する低刺激性、及び皮膚使用感の良さという観点から、好ましくは4.0~7.0、より好ましくは4.5~6.5、さらに好ましくは5.0~6.0である。
【0065】
本発明の液体組成物の製造方法は特に制限されない。本発明委の液体組成物は、例えば、各成分を、混合することにより、得ることができる。
【0066】
本発明の液体組成物は、好ましくはローション剤として、使用することができる。本発明の液体組成物は、例えば、微生物汚染の問題が生じにくいような量(例えば500mL以下、好ましくは300mL以下、より好ましくは200mL以下、さらに好ましくは150mL以下)を容器(例えばポンプボトル、スプレーボトル等)に充填して使用することができる。本発明の液体組成物は、具体的には、適量を皮膚に塗布して、塗り広げることにより使用することができる。
【0067】
本発明の液体組成物は、べたつきが抑制されており、皮膚をスベスベにすることができ、皮膚のうるおい効果を発揮することができる。このため、本発明の液体組成物は、皮膚の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善のために、好適に用いることができる。特に、本発明の液体組成物は、使用後のべたつき感が抑制されていることから、使用後の手指等が接触した対象物へのべたつきの移行が抑制されているので、手指等の荒れ及び/又は乾燥の防止及び/又は改善のために、好適に用いることができる。また、上記特長から、本発明の液体組成物は、水仕事後のみならず、水仕事前、水仕事中、調理中等のあらゆる場面で使用することができる。
【実施例0068】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0069】
実施例1.外用液体組成物の調製
水、ユズ種子エキス(ユズ種子を9倍量のエタノール水溶液で抽出して得られる抽出液、エキスのエタノール濃度:35~39質量%)、エタノール、グリセリン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、及びユズ果実油を混合し、無色透明且つ無着色の外用液体組成物(pH5.7)を得た。外用液体組成物100質量%に対する各成分の配合量を表1に示す。
【0070】
【0071】
試験例1.保存効力試験
実施例1の外用液体組成物中の細菌数及び真菌数を第十七改正日本薬局方の「微生物限度試験 I.非無菌製品の微生物限度試験:生菌数試験」に準じて測定した。
【0072】
その結果、細菌数は10個/g 未満であり、真菌数も10個/g 未満であった。
【0073】
続いて、第十七改正日本薬局方の「保存効力試験」に準じて試験した。実施例1の外用液体組成物を含む容器5個の各々の中に表2に記載の細菌(E.c、P.a及びS.a)及び真菌(C.a及びA.b)の各試験菌を無菌的に接種した後、これらの容器を遮光下で20~25℃に保存し、経時的(接種後7日目、14日目、21日目、及び28日目)に外用液体組成物中の各生菌数を測定した。外用液体組成物1g当たりの接種菌数、及び測定された生菌数(いずれも、単位は個/g(外用液体組成物1g当たりの菌の個数))を表2に示す。
【0074】
【0075】
上記の結果から、実施例1の外用液体組成物は、微生物に対して良好な保存効力を示すことが分かった。
【0076】
試験例2.皮膚アレルギー試験
実施例1の外用液体組成物を用いて、被検者20名に対してパッチテストを行った。具体的には、被検者の背部に外用液体組成物を24時間閉塞貼付し、除去60分後と24時間後に観察し、以下の判定を行った。
【0077】
各被検者について、外用液体組成物の貼布除去60分後と24時間後の皮膚の状態を表3の判定基準に基づいて評価し、除去60分後と24時間後の評点のうち高値を当該被検者の評点として採用した。
【0078】
【0079】
外用液体組成物の皮膚刺激性指数(被検者全員の評点の和÷被検者数×100)を算出した結果、0.0であった。皮膚刺激性指数による評価分類(表4)から、実施例1の外用液体組成物は「安全品」であると判定された。
【0080】
【0081】
試験例3.アンケート調査
水仕事で手が荒れやすい主婦160名(手が非常に荒れている人110名、手が少し荒れている人50名)に対して、試験品(実施例1の外用液体組成物)を提供し、約1カ月間使用してもらった。調査地域は、日本国内の、北海道などの寒い地域であり、調査期間は3月下旬~5月上旬であった。試験品の約1カ月間の使用期間終了後、アンケートを実施し、回答を得た。アンケートの設問、及びその設問に対する回答結果(表5~11)を以下に示す。
【0082】
設問A.「試験品」を実際に使用して手はスベスベになりましたか。回答は1つだけお選び下さい。
【0083】
【0084】
設問B.設問Aで「1. 確かにスベスベになった」、「2. スベスベになったと思う」とお答えいただい方にお伺いします。何日くらいで手がスベスベになりましたか。おおよそでご回答下さい。回答は1つだけお選び下さい。
【0085】
【0086】
設問C.同じような質問で恐縮ですが、「試験品」を実際に1ヵ月間ご使用された後で、手はスベスベになりましたか。回答は1つだけお選び下さい。
【0087】
【0088】
設問D.「試験品」は使用後、べたつきがありましたか。回答は1つだけお選び下さい。
【0089】
【0090】
設問E.同じような質問で恐縮ですが、「試験品」の使用後、うるおい効果はありましたか。回答は1つだけお選び下さい。
【0091】
【0092】
設問F.下記に「試験品」の特長1~6を掲載してあります。実際に使用されて、特長の通りであったと思われましたか。特長1~6それぞれについて、1~5の中から1つだけお選び下さい。
【0093】
【0094】
設問G.それでは、全体的な評価をお聞きします。実際に使用されて、「試験品」はいかがでしたか。回答は1つだけお選び下さい。
【0095】
【0096】
以上の結果から、本発明外用液体組成物は、皮膚刺激性が非常に少なく、荒れた手をスベスベにし、べたつきはなく、うるおい効果を有すると共に微生物汚染が抑制され、安全に使用できるという優れた特徴を有するものであることが示された。