(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056505
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A41D13/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161298
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021165817
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】394006521
【氏名又は名称】株式会社アオヤギ
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康之
(57)【要約】
【課題】 従来のマスクが有する問題、特に飲食時おける問題を解決することができるマスクを提供する。
【解決手段】 マスク本体10と、このマスク本体10を利用者の顔面に装着する装着手段15とを有するマスクにおいて、利用者の顔に密着する第一の部分10aと第二の部分10bの上下に区分けして構成された前記マスク本体10と、第一の部分10aが取り付けられ、利用者の顔に合わせて形状調整可能な第一の芯材11aと、第一の芯材11aの両端に設けられ、第一の芯材11aを回動させることで第一の部分10aを折り畳み開閉させる回動部材と、この回動部材に設けられ、第一の芯材11aを手で回動させるための摘み部材12aとを備える回動部12とを有し、少なくとも第一の部分10aは、利用者の顔に密着する閉鎖位置から所定の開放位置まで、第一の芯材11aの回動動作によって折り畳み開閉可能である構成としてある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の顔に密着するマスク本体と、このマスク本体を利用者の顔面に装着する装着手段とを有するマスクにおいて、
上下に区分けされ相対的に折り畳み開閉が可能な第一の部分及び第二の部分を有する前記マスク本体と、
前記第一の部分が取り付けられ、前記利用者の顔の形状に合わせて形成された第一の芯材と、
前記第一の芯材の両端に設けられ、前記第一の芯材を回動させることで前記第一の部分を折り畳み開閉させる回動部材と、この回動部材に設けられ、前記第一の芯材を手で回動させるための摘み部材とを備える回動部と、
を有し、
前記第一の部分は、前記利用者の顔に密着する閉鎖位置から、所定の開放位置まで、前記第一の芯材の回動動作によって折り畳み開閉可能であること、
を特徴とするマスク。
【請求項2】
前記第二の部分には、前記利用者の顔の形状に合わせて形成された第二の芯材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記第二の芯材の両端が、前記回動部材に取り付けられていて、前記第二の部分が、前記利用者の顔に密着する閉鎖位置から所定の開放位置まで、前記第二の芯材の回動動作によって折り畳み開閉可能であることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記回動部材の回動動作を前記閉鎖位置又は前記開放位置で規制する規制手段を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
前記規制手段が、前記閉鎖位置と前記開放位置との間の途中位置で前記回動部材の回動を規制することを特徴とする請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記規制手段が、前記回動部材と前記回動部材を回動自在に支持するベースとの間に設けられ、互いに係合することで前記回動部材の回動を規制する凹凸部又は互いに磁着することで前記回動部材の回動を規制する磁着部材であることを特徴とする請求項4に記載のマスク。
【請求項7】
前記マスク本体が上下共用に形成されていて、前記マスク本体の上下を反転させることで、前記第一の部分と前記第二の部分の上下を切り替えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマスク。
【請求項8】
前記回動部が、前記利用者の顔の左右両側で前記装着手段に設けられたベースと、このベースに軸支された軸とを有し、前記ベースと前記軸とは相対的に回動自在に係合されることで少なくとも一方が前記回動部材として構成され、前記摘み部材は左右の前記回動部材の少なくとも一方に設けられ、前記第一の芯材又は前記第二の芯材によって左右の前記軸又は前記ベースが連結されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマスク。
【請求項9】
前記規制手段が、左右の前記回動部材を軸支する軸と、左右の前記軸を支持する弾性部材とを有し、前記弾性部材は、押圧力の付与による弾性変形によって左右の前記軸を平行状態と非平行状態との間で姿勢変更させ、平行状態のときに、前記回動部材の回動の規制を解除するものであることを特徴とする請求項8に記載のマスク。
【請求項10】
前記弾性部材が前記第一の芯材又は前記第二の芯材の少なくとも一方であることを特徴とする請求項9に記載のマスク。
【請求項11】
前記第一の芯材及び前記第二の芯材の少なくとも一方が台形に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマスク。
【請求項12】
前記台形の上底辺が、矩形状の補助シートを取り付ける補助シート取付部として形成されていることを特徴とする請求項11に記載のマスク。
【請求項13】
台形状の前記第一の部分又は前記第二の部分の上底面に、前記第一の部分又は前記第二の部分を前記開放位置又は前記途中位置に回動させたときに、前記補助シートを挿通させる切り込みを形成し、前記補助シートが前記利用者の口の側から前記切り込みを挿通して前記マスク本体を被覆するようにしたことを特徴とする請求項12に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生マスク、医療用マスクやアイマスクのように、利用者の目、鼻又は口の周囲を被覆するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウィルスや新型コロナウイルスなどの感染防止対策として、衛生マスクの着用が効果的であるとされている。衛生マスクや医療用マスク(これらを総称して「マスク」と記載する)は、口及び鼻の周囲を覆う布製又は紙製のマスク本体の両端に耳掛け紐を取り付けたものが一般的で、感染の可能性を低減させるために、マスク本体にはなるべく手では触れないように注意が喚起されている。
飲食時においてもマスク着用が奨励されているが、マスクを付けたままでは飲食することはできないため、飲食物を口に運ぶ際にだけマスクを外すか、ずり降ろしている。しかしこの際、マスク本体を手で触ると感染リスクが高まることから、片手でマスクの耳掛け紐を耳から取り外し、飲食物を口に運んだ後は再び耳掛け紐を耳に掛けなおすという動作が奨励されている。
しかし、このような動作は現実的に実施することは困難であることから、マスク本体に触れずに簡単に口の周囲の被覆を解除して飲食を可能にするマスクなどが種々提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
このようなマスクは二種類のタイプに分類することができ、その一つは、例えば特許文献1に記載のマスクのように、マスク本体の一部を開閉自在として飲食時にマスク本体の口の部分を開口させるものである。他の一つは、特許文献2や非特許文献1に記載のマスクのように、マスク本体又はその一部を上下にスライド又は回動させて、飲食時に口の周囲の被覆を解除するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3231062号公報
【特許文献2】特許第5421507号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(楽天市場)日本製 マスク 食事 フレーム 開閉 会食マスク 飛沫予防 息がしやすい 会食 飲食用 開閉式 マスク会食 飲食可能 食べれる 洗える 布 スポーツ マスク:帽子屋 Bowsial (ボウシアル)(https://item.rakuten.co.jp/fis-coltd/233n111/)記載参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたようなマスクは、マスク本体に手が接触する可能性が高く、飲食物を口に運ぶたびに面ファスナーを外してマスク本体の口の部分を開閉させる動作は面倒であり、面ファスナーの結合を剥がす際に、一時的であるがマスク本体が引っ張られて顔面から離間するという欠点がある。また、飲食物を口に運ぶ際に、飲食物がマスク本体に触れてマスク本体を汚しやすいという問題がある。
特許文献2及び非特許文献2に記載されたマスクのように、マスク本体の一部を上下に開閉させるマスクでは、口の周囲から広範に被覆を解除でき、飲食物を口に運ぶ際に飲食物とマスク本体とが接触する可能性は小さくなるものの、マスク本体の一部を上下に回動させる際にはマスク本体の一部を手で持ち上げるか引き下げなければならず、マスク本体への手の接触の機会が増えて感染リスクの低減の効果が減少するという欠点がある。
さらに、上記した従来のマスクは、飲食時に飲食物がマスク本体に接触してマスクを汚すおそれがあり、飲食物に接触しないようにマスク本体を手で押さえるなど、マスク本体への手の接触機会がさらに増えるという問題があった。
本発明は、これら従来のマスクが有する問題を解決することができるマスクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に記載のマスクは、利用者の顔に密着するマスク本体と、このマスク本体を利用者の顔面に装着する装着手段とを有するマスクにおいて、上下に区分けされ相対的に開閉が可能な第一の部分及び第二の部分を有する前記マスク本体と、前記第一の部分が取り付けられ、前記利用者の顔の形状に合わせて形成された第一の芯材と、前記第一の芯材の両端に設けられ、前記第一の芯材を回動させることで前記第一の部分を折り畳み開閉させる回動部材と、この回動部材に設けられ、前記第一の芯材を手で回動させるための摘み部材とを備える回動部と、を有し、前記第一の部分は、前記利用者の顔に密着する閉鎖位置から、所定の開放位置まで、前記第一の芯材の回動動作によって折り畳み開閉可能である構成としてある。
【0007】
この構成によれば、利用者の顔に密着するマスク本体は、第一の部分と第二の部分の上下二つの部分に区分けされる。前記第一の部分はマスク本体の上部であってもよいし下部であってもよい。前記第一の部分は、不織布などの布や和紙など可撓性を有する材料で形成されていて折り畳み開閉可能であるので、前記第一の部分をマスク本体の上部に配置した場合、摘み部材を把持して回動部材を下方に回動させることで、第一の芯材とともに前記第一の部分が下方に折り畳まれ(マスク本体の上方が開くので「上開き」と称することがある)、例えば飲食の際に口の周囲の被覆を解除して飲食可能な状態にする。また、前記第一の部分をマスク本体の下部に配置した場合、摘み部材を把持して回動部材を上方に回動させることで、第一の芯材とともに前記第一の部分が上方に折り畳まれ(マスク本体の下方が開くので「下開き」と称することがある)、例えば飲食の際に口の周囲の被覆を解除して飲食可能な状態にする。
そのため、例えば飲食などの際に口の周囲のマスク本体の被覆を解除する必要がある場合に、前記マスク本体に手を触れることなく、第一の部分を上方又は下方に折り畳み開放することで口の周囲の被覆状態を解除することができる。また、マスク本体に触れることなく、前記摘み部分を摘んで前記回動部材を逆方向に回動させるだけで、口や鼻を被覆した元の状態に戻すことができる。
【0008】
請求項2に記載するように、前記第二の部分にも、前記利用者の顔の形状に合わせた第二の芯材を取り付けてもよい。この場合、請求項3に記載するように、前記第二の芯材の両端が、前記回動部に取り付けられていて、前記第二の部分は、前記利用者の顔に密着する閉鎖位置から所定の開放位置まで、前記第二の芯材の回動動作によって折り畳み開閉可能であるようにしてもよい。
このように構成すれば、前記マスク本体を構成する上下の前記第一の部分及び前記第二の部分の両方を折り畳み開閉可能とすることができる。
なお、前記第一の芯材又は前記第二の芯材は、前記利用者が自分で顔の形状に合わせることができるようにアルミ線や銅線などの柔らかい金属や樹脂などで形成してもよいし、予め利用者の顔に沿う形に形成された金属線や樹脂線で形成してもよい。
【0009】
請求項4に記載するように、前記回動部材の回動を、前記閉鎖位置又は前記開放位置で規制する規制手段を設けてもよい。このような規制手段を前記閉鎖位置に設けることで、前記回動部材を閉鎖位置に固定して、マスク使用時の顔とマスク本体との密着を保持することができる。また、前記開放位置に設けることで、飲食時に折り畳み開閉可能な前記第一の部分又は第二の部分の揺動を規制し、飲食物と前記第一の部分又は第二の部分との接触を防止できる。
前記規制手段による前記回動部材の回動の規制は、請求項5に記載するように、前記閉鎖位置と前記開放位置の間の途中位置でも行うようにしてもよい。
このように構成することで、例えば飲み物をストロー等で飲む際には、折り畳み開閉可能な前記第一の部分又は前記第二の部分を少しだけ開いた状態(つまり前記途中位置まで回動させた状態)としてストローなどで飲み物を飲むようにし、食事の際には、前記回動部材を前記開放位置まで回動させてマスク本体を大きく開いた状態で食事を摂ることができる。
【0010】
また、前記規制手段としては、例えば請求項6に記載するように、前記回動部材と前記回動部材を回動自在に支持するベースとの間に設けられ、互いに係合することで前記回動部材の回動を規制する凹凸部又は互いに磁着することで前記回動部材の回動を規制する磁着部材とすることができる。
請求項7に記載するように、前記マスク本体を上下共用とし、上下反転させても前記マスク本体として使用できるようにすれば、上下反転させることで前記第一部の部分と前記第二の部分との上下が入れ替わり、前記第一の部分のみが折り畳み開閉可能に形成されたマスク本体であっても、上開き、下開きの両使いすることが可能になる。
【0011】
前記回動部の具体的構成としては、例えば請求項8に記載するように、前記利用者の顔の左右両側で前記装着手段に設けられたベースと、このベースに軸支された軸とを有し、前記ベースと前記軸とは相対的に回動自在に係合されることで少なくとも一方が前記回動部材として構成され、前記摘み部材は左右の前記回動部材の少なくとも一方に設けられ、前記第一の芯材又は前記第二の芯材によって左右の前記軸又は前記ベースが連結されている構成とすることができる。
この場合、前記回動部材を規制手段として利用することも可能である。例えば請求項9に記載するように、前記規制手段が、左右の前記回動部材を軸支する軸と、左右の前記軸を支持する弾性部材とを有し、前記弾性部材は、押圧力の付与による弾性変形によって左右の前記軸を平行状態と非平行状態との間で姿勢変更させ、平行状態のときに、前記回動部材の回動の規制を解除するものとすることができる。請求項10に記載するように、前記弾性部材は前記第一の芯材又は前記第二の芯材であってよい。
前記第一の芯材及び第二の芯材は、利用者の顔や口の周囲の形状に合わせて種々の形状とすることができるが、例えば、請求項11に記載するように、前記第一の芯材及び前記第二の芯材の少なくとも一方を台形に形成してもよい。この場合は、請求項12に記載するように、前記台形の上底辺が、矩形状の補助シートを取り付ける補助シート取付部とするとよい。
この場合、請求項13に記載するように、台形状の前記第一の部分又は前記第二の部分の上底面に、前記第一の部分又は前記第二の部分を前記開放位置又は前記途中位置に回動させたときに、前記補助シートを挿通させる切り込みを形成し、前記補助シートが前記利用者の口の側から前記切り込みを挿通して前記マスク本体を被覆するように構成するとよい。前記補助シートとしては、飲食店のテーブルなどに置かれている一般的な紙ナプキンをそのまま使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を以下に説明する。
図1は、本発明のマスクの一実施形態にかかり、(a)はマスクを装着した状態を示す利用者の顔の正面図、(b)は同側面図、(c)は飲食を行う際にマスクの本体上部を下げた状態の正面図、(d)は同側面図である。
本発明のマスク1は、不織布などの布や和紙などの柔らかい材料で形成され、利用者の顔に密着するマスク本体10と、このマスク本体10の左右両端に連結された装着手段としての耳掛け紐15と、マスク本体10と耳掛け紐15との間に設けられた回動部12とを有している。
【0013】
マスク本体10は上下に区分けされ、利用者の口及び鼻の周囲を被覆する第一の部材としての本体上部10aと、利用者の口下の顎部分に掛かる第二の部材としての本体下部10bとから構成される。区分けされた本体上部10a及び本体下部10bのうち、この実施形態では、本体上部10aがマスク本体10の両端に設けられた回動部12を支点として上下に回動し、折り畳まれながら開閉する開閉部分である。そして、回動部12を支点として本体上部10aを下方に回動させることで、
図1(c)(d)に示すように、利用者の口の周囲を開放することができ、飲食が可能になる。
【0014】
図2は、マスク1の構成を説明する図で、(a)はマスク1を平坦状に拡げた状態を示す正面図、(b)は回動部12の構成を説明する部分拡大断面図、(c)は回動部12の変形例を示す部分拡大断面図である。
本発明のマスク1の構成を説明する便宜上、
図2ではマスク1を平坦状に拡げたものを図示しているが、実際の使用時には、利用者の顔の形状に合わせて、マスク本体10を後述の第一の芯材11a及び第二の芯材11bとともに湾曲させて顔に装着する。
マスク本体10は、マスク本体10の材料として一般的に使用されている布材(例えば不織布)や織物、和紙などで形成され、利用者の口及び鼻の周囲に密着して被覆できるように形成される。
【0015】
マスク本体10の上部にはアーチ状の第一の芯材11aが挿入又は縫い込まれている。この第一の芯材11aが挿入又は縫い込まれた部分が、マスク本体10の本体上部10aを形成している。
第一の芯材11aは、利用者の口及び鼻の周囲の形状に沿ってマスク本体10を変形させ、マスク本体10を利用者の口及び鼻の周囲に密着させることができるように、変形可能な金属線や樹脂線又はこれらの複合材から形成される。第一の芯材11aをアルミ線や銅線のような柔らかい金属線から形成することで、利用者が自分でマスク本体10を口や鼻を覆う形に調整することができる。
【0016】
マスク本体10の下部にはアーチ状の第二の芯材11bが挿入又は縫い込まれている。この第二の芯材11bが挿入又は縫い込まれた部分が、マスク本体10の本体下部10bを形成している。第一の芯材11aと同様に、マスク本体10を利用者の口及び鼻の周囲に密着させることができるように、第二の芯材11bも変形可能な金属線や樹脂線から形成される。第一の芯材11aと第二の芯材11bは同一の材料のものであってもよいし異種材料のものであってもよい。
なお、図示の例において第一の芯材11a及び第二の芯材11bは、台形アーチ状に形成されているが、マスク本体10によって利用者の口や鼻を覆うことができるものであれば、円弧状や三角状、多角形状など他の形状であってもよい。
【0017】
第二の芯材11bの両端には、円盤状のベース12bが取り付けられている。第二の芯材11bとベース12bとは、同一の材料で一体に形成してもよいし、同一の材料又は異種の材料で別々に形成して、接着や融着、溶着等により連結して形成してもよい。例えば、ベース12bの側周面に形成された孔に第二の芯材11bの先端を差し込んで両者を連結するようにすれば、ベース12bに対して長さや材質の異なる第二の芯材11bの交換が容易になる。
また、左右のベース12bの外端部には、耳掛け紐15を取り付けるための耳掛け紐取付部12cが突出形成されている。この実施形態では、第二の芯材11bの二つの隅部にも耳掛け紐取付部12cが形成されていて、ベース12bに形成された耳掛け紐取付部12cとこの第二の芯材11bの耳掛け紐取付部12cとに、耳掛け紐15の端部のそれぞれが連結されるようになっている。
【0018】
第一の芯材11aの両端には、摘み部材である突起状のつまみ12aが設けられていて、このつまみ12aを挿通する軸13がつまみ12aとベース12bとを連結している。
この実施形態では、つまみ12aが摘み部材及び回動部材を構成する。そして、マスク本体10を湾曲させて利用者の顔に装着したときに、この軸13を回動軸として、本体上部10aが第一の芯材11aとともに上下に回動できるようになっている。
なお、この実施形態では、ベース12bの外周から突出する耳掛け紐取付部12cを「つまみ」とすることで、第二の芯材11bを第一の芯材11aに対して回動させることが可能になる。この場合は、ベース12bも回動部材を構成する。
第一の芯材11aとつまみ12aとは、同一の材料で一体に形成してもよいし、同一の材料又は異種の材料で別々に形成して、接着や融着、溶着等により連結して形成してもよい。例えば、つまみ12aの側周面に形成された孔に第一の芯材11aの先端を差し込んで両者を連結するようにすれば、つまみ12aに対して長さや材質の異なる第一の芯材11aの交換が容易になる。
第一の芯材11a及び第二の芯材11bを回動部12に対して交換自在とすることで、サイズや硬さなどが異なる種々のマスク1を得ることができる。また、第一の芯材11a及び第二の芯材11bは、マスク本体10から取り外せるようにするのが好ましい。このようにすることで、マスク本体10を回動部12から取り外し第一の芯材11a及び第二の芯材11bを抜き取って洗濯したり、別の材質のマスク本体10に交換することも容易になる。
【0019】
つまみ12aとベース12bとの間には、つまみ12aを所定の回動角度位置で回動を規制する規制手段としてのストッパを設けるとよい。ストッパとしては、つまみ12aとベース12bのいずれか一方に凸部を形成し他方に凹部を形成した、両者の係合により回動が規制されるものであってもよいが、この実施形態では、
図2に示すようにベース12bに凹部14bが形成され、つまみ12aの下面に凹部14bと係合する凸部14aが形成されていて、凹部14bと凸部14aとが係合することで本体上部10aの回動を規制する。そのため、本体上部10aを下げて飲食を行う際に、本体上部10aが利用者の顔の動きに合わせて揺動することがなく、飲食の際に飲食物に本体上部10aが接触するという不具合を防止できる。
このようなストッパは、本体上部10aを上げたときの位置を規制するようにベース12bの上方にも設けてもよい。
上記したつまみ12a、ベース12b、軸13で第一の芯材11aとともに本体上部10aを折り畳み方向に開閉させる回動部12が構成される。
【0020】
回動部12の変形例を
図2(c)に示す。先の実施形態と同一部材、同一部分には同一の符号を付して、先の実施形態の説明を援用する。
先の実施形態では、つまみ12aやベース12bとは別体の軸13によって、ベール12bに対してつまみ12aを回動自在に軸支しているが、この変形例の回動部12′では、つまみ12aの下面に、各々に爪13′aを有する二つ割り状の軸13′がつまみ12aと一体に突出形成されているとともに、この軸13′が挿入できる段付き孔12dがベース12bに貫通形成されている。軸13′を段付き孔12dに押し込むと、爪13′aが径方向内側に移動しつつ段付き孔12dの入口の段付き部を乗り越え、乗り越えたところで前記段付き部に爪13′aが係合して軸13′が段付き孔12内に嵌装される。これにより軸13′及びつまみ12aは回動自在にベース12bに支持されるとともに、前記段付き部と爪13′aとの係合により容易につまみ12aがベース12bから外れることがない。
【0021】
図3は、この実施形態のマスク1の作用を説明する図で、(a)は通常のマスク
1の装着時を示す回動部12の部分拡大側面図、(b)は、飲食時において本体上部を下げたときの回動部12の部分拡大側面図である。
マスク1を装着する際には、通常のマスクと同様に、耳掛け紐15を左右の耳に掛け、第一の芯材11a及び第二の芯材11bを変形させながら、マスク本体10が利用者の鼻及び口の周囲の顔面に密着するよう調整する。
飲食を行う際には、回動部12のつまみ12aを摘み、第一の芯材11aとともに本体上部10aを下方に回動させる。この際、可撓性を有する布製の本体上部10aは、第一の芯材11aの回動動作により折り畳まれるように変形して利用者の口の部分を開放する。
第一の芯材11aは、規制手段であるストッパ(図示の例ではつまみ12aの下面に形成された凸部14aとベース12bに形成された凹部14b)によって回動動作が規制されることで、下限位置で固定される。これにより、本体上部10aは、(a)の状態から(b)に示す状態に移行して、利用者の口の周囲が開放され、飲食が可能になる。飲食終了後には、つまみ12aを摘み、第一の芯材11aとともに本体上部10aを上方に回動させる。これにより本体上部10aは、(a)の状態に戻る。
なお、耳掛け紐取付部12cを「つまみ」として利用すれば、第二の芯材11bとともに本体下部10bを上方に回動させることで、これにより本体下部10bが開放状態となり、下方に回動させることで閉鎖状態に戻る。
【0022】
図4は、本発明のマスクの他の実施形態にかかり、(a)は通常のマスク本体の装着時における平面図、(b)は本体上部10aを下方に回動させる際の平面図、(c)は本体上部10aを下方に回動させたときの平面図である。
図1,2を参照して説明した先の実施形態と同一部材、同一部分には同一の符号を付して、先の実施形態の説明を援用する。
回動部22は、第二の芯材21bの両端に設けられたベース22bと、このベース22bに形成された突起状の軸23と、この軸23が嵌装される軸孔22dを有し第一の芯材21aの両端に形成された軸受部22aとを有する。なお、左右の回動部20の軸受部22aのうち、少なくとも一方には、レバーや摘みなど手で摘むことのできる部分を形成するとよい。図示の例では、右側の回動部20の軸受部22aの頂部に、径方向外側に突出する鍔22eを形成している。
軸孔22dは貫通状に形成されていて、軸23の上端が軸孔22dから僅かに突出するようにする。また、軸受部22aの軸孔22dの内周面と軸23とは接触面積を可能な限り大きくするために、テーパ状に形成するとよい。この実施形態では、軸23と軸受部22aの軸孔22dの内周面との摩擦力によって、第二の芯材21bの回動が規制される。
【0023】
また、この実施形態において第一の芯材21a及び第二の芯材21bは、先の実施形態の第一の芯材11a及び第二の芯材11bと基本的に同じであり、これら芯材11a,11bに支持されるマスク本体10,本体上部10a,本体下部10bも先の実施形態と同様である。
この実施形態では、上記したように軸23と軸受部22aの軸孔22dの内周面との摩擦力によって、第二の芯材21bの回動を規制するものであるため、この摩擦力を発生させるために、第一の芯材21aとして常時外側(図において紙面の左右方向外側)に付勢する弾性力が作用するものを使用するか、第二の芯材21bとして、常時内側(図において紙面の左右方向内側)に付勢する弾性力が作用するものを使用する。
【0024】
このような第一の芯材21a又は第二の芯材21bを使用することで、左右の回動部22の軸23の軸線Cが
図4(a)に示すように平行から僅かに傾き、軸23が軸受部22aの軸孔22dの内周面に押し付けられて、その摩擦力によって第二の芯材21bの回動が規制される。
飲食を行う際には、
図4(b)に示すように、左右の軸受部22aの軸孔22dから露出する軸23の頂部を、指で矢印P方向に押す。これにより、左右の軸23の軸線Cが平行になり、軸23と軸孔22dの内周面との摩擦力が減少して、第一の芯材21a及び本体上部10a(
図2参照)が自重により下方に回動する。先の実施形態と同様の規制手段(磁石や凹凸14a,14b)を設けることで、第二の芯材21b及び本体上部10aは一定角度回動したところで回動動作が規制される。
飲食後は、軸受部22aに形成された鍔22eをつかんで第二の芯材21b及び本体上部10を上方に回動させればよい。
この実施形態においても、耳掛け紐取付部12cを「つまみ」として利用することで、第二の芯材11bとともに本体下部10bを上方に回動させることができ、これにより本体下部10bが開放状態となる。そして、開放状態から第二の芯材11bとともに本体下部10bを下方に回動させることで、閉鎖状態に戻る。
【0025】
図5は、本発明のマスクのさらに他の実施形態を示す図で、(a)はマスクを平坦状に拡げた状態を示す正面図、(b)はナプキン等のシートの装着状態を示す装着時におけるマスクの平面図である。なお、
図5の説明において先の実施形態と同一部位、同一部材には同一の符号を付して、先の実施形態の説明を援用する。
この実施形態のマスク本体10′において本体上部10aには、第一の芯材11aの上底辺に沿った部分に、飲食店に配置されている一般的なナプキン等の補助シート3が挿通できる切り込み10dが貫通形成されている。そして、この切り込み10dにシート3を挿通させた状態で、飲食時に本体上部10aを下方に回動させると、利用者の口の部分から切り込み10dを経てマスク本体10′を被覆することができ、飲食を行う際に飲食物がマスク本体10′に接触するという不都合を回避できる。
【0026】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記の説明では、磁石や凹凸14a,14b等のストッパは、本体上部10aを下方に回動させたときの下限位置を決定するものであるとしたが、下限位置の手前の途中位置に磁石や凹凸14a,14b等のストッパを設けてもよい。ストロー等で飲料を飲む際には、口の部分が少しだけ開口すれば足りるので、このような場合は本体上部10aを前記途中位置まで下げるようにする。このようにすることで、口周囲の開口を可能な限り小さくすることができ、感染リスクを低減することができる。
また、本体上部10a又は本体下部10bを開放又は閉鎖させた状態で維持できるのであれば、規制手段は上記のものに限らず、別の形態としてもよい。例えば、
図1の実施形態において、つまみ12aとベース12bとの接触摩擦力のみで開閉状態を維持できるようにしてもよい。
【0027】
また、上記の説明では本体上部10aを下方に回動させることで飲食を可能にしているが、本体下部10bを上方に回動させることで飲食が可能になるように構成してもよい。また、本体上部10a及び本体下部10bの両方を回動可能とし、状況に応じていずれかを回動させることで飲食可能な状態にするようにしてもよい。
さらに、上記の説明では装着手段として耳掛け紐15を挙げたが、マスク本体10,20を利用者の顔面に装着できるのであれば他のものでもよく、眼鏡のテンプル形のものであってもよい。
また、折り畳み開閉しない第二の部材(本体下部10b)は、不織布や和紙などの柔らかい材質のもので形成してもよいが、樹脂製のカバーとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のマスクは、上記した衛生用マスクに限らず、医師や看護師が外科手術の際に使用する外科手術用マスクなどの医療用マスクにも適用が可能であるほか、同様の構成は睡眠時に着用するアイマスクにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明のマスクの一実施形態にかかり、(a)はマスクを装着した状態を示す利用者の顔の正面図、(b)は同側面図、(c)は飲食を行う際にマスクの本体上部を下げた状態の正面図、(d)は同側面図である。
【
図2】マスク1の構成を説明する図で、(a)はマスク1を平坦状に拡げた状態を示す正面図、(b)は回動部12の構成を説明する部分拡大断面図、(c)は回動部12の変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図3】この実施形態のマスク1の作用を説明する図で、(a)は通常のマスク1の装着時を示す回動部12の部分拡大側面図、(b)は、飲食時において本体上部を下げたときの回動部12の部分拡大側面図である。
【
図4】本発明のマスクの他の実施形態にかかり、(a)は通常のマスク本体の装着時における平面図、(b)は本体上部10aを下方に回動させる際の平面図、(c)は本体上部10aを下方に回動させたときの平面図である。
【
図5】本発明のマスクのさらに他の実施形態を示す図で、(a)はマスクを平坦状に拡げた状態を示す正面図、(b)はナプキン等のシートの装着状態を示す装着時におけるマスクの平面図である。
【0030】
1 マスク
10,10′,20 マスク本体
10a,20a 本体上部
10b,20b 本体下部
10d 切り込み
11a,21a 第一の芯材
11b,21b 第二の芯材
12 回動部
12a つまみ
12b ベース
12c 耳掛け紐取付部(装着部)
12d 段付き孔
13 軸
13′a 爪
14a 凸部
14b 凹部
15 耳掛け紐(装着手段)
22 回動部
22a 軸受部
22b ベース
22c 耳掛け紐取付部(装着部)
22d 軸孔
22e 鍔
3 補助シート(ナプキン)