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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056509
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 201M
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161514
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0133381
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0104109
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヨン リム
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スー ホワン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク、セ フン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC31
5E082CC03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い強度を有して信頼性に優れた積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、第1方向に交互に配置される第1誘電体層111及び内部電極121、122を含む複数の容量形成部Ac1、Ac2並びに隣接する容量形成部の間に配置され、第2誘電体層を含む中間層140を含み、第1方向に対向する第1面及び第2面、第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体110と、本体上に配置され、内部電極と連結される外部電極と、を含む。第2誘電体層は、グラフェンを含み、第1誘電体層はグラフェンを含まないか又は第2誘電体層に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に交互に配置される第1誘電体層及び内部電極を含む複数の容量形成部、並びに隣接する容量形成部の間に配置され、第2誘電体層を含む中間層を含み、
前記第1方向に対向する第1面及び第2面、前記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、前記第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記第2誘電体層はグラフェンを含み、
前記第1誘電体層はグラフェンを含まないか、又は前記第2誘電体層に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記本体は、前記第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極上に配置されたカバー部を含み、
前記中間層の平均厚さをt1、前記カバー部の平均厚さをt2、前記第1誘電体層の平均厚さをt3とするとき、t3<t1<t2を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記t1及びt2はt1/t2≦0.8を満たす、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記t1及びt3はt1/t3≧7を満たす、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1誘電体層及び前記第2誘電体層は、複数の結晶粒及び隣接する結晶粒の間に形成された結晶粒界を含み、
前記第2誘電体層に含まれたグラフェンは、前記第2誘電体層の結晶粒界に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第2誘電体層は前記グラフェンを複数個含み、
前記第2誘電体層に含まれた複数のグラフェンのうち少なくとも一つは、
一面が前記第2誘電体層に含まれた複数の結晶粒のうち少なくとも2以上の結晶粒の表面に沿って配置される、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第1誘電体層の結晶粒の平均粒径をD1、前記第2誘電体層の結晶粒の平均粒径をD2とするとき、
D2<D1を満たす、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
(D1-D2)/D1≦0.3を満たす、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第2誘電体層は、ラマン(Raman)分析時にDバンド(D-band)及びGバンド(G-band)でピークが検出される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第1誘電体層は、ラマン分析時にDバンド及びGバンドで同時にピークが検出されないか、又は前記第2誘電体層で検出されたDバンド及びGバンドのピークより低い強度のDバンド及びGバンドのピークが検出される、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記第2誘電体層は、Gバンドで検出されたピークの強度に対する前記Dバンドで検出されたピークの強度比率が0.03~0.5である、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記Dバンドは1300~1400cm-1で検出され、
前記Gバンドは1500~1600cm-1で検出される、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記第2誘電体層はチタン酸バリウム(BaTiO)系主成分を含み、
主成分100重量部に対して前記第2誘電体層に含まれたグラフェンの含量は0.1重量部~1.0重量部である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記第2誘電体層に含まれたグラフェンは、長軸の長さが0.3μm~10μmである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記第1誘電体層の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記本体は前記中間層を複数個含み、
複数個の前記中間層は互いに離隔して配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記複数の容量形成部は前記第1方向に配列される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記内部電極は、第5面及び第6面と離隔して配置され、第3又は第4面と連結されるように配置され、
前記中間層は、前記本体の第3面から第6面と連結される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
前記カバー部はグラフェンをさらに含む、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項20】
前記カバー部は、ラマン分析時にDバンド及びGバンドでピークが検出される、請求項19に記載の積層型電子部品。
【請求項21】
前記内部電極は、前記第5面及び第6面と連結されるように配置され、第3又は第4面と連結されるように配置され、
前記中間層は前記本体の第3面から第6面と連結され、
前記第5面及び第6面にはサイドマージン部が配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項22】
前記サイドマージン部はグラフェンをさらに含む、請求項21に記載の積層型電子部品。
【請求項23】
前記サイドマージン部は、ラマン分析時にDバンド及びGバンドでピークが検出される、請求項22に記載の積層型電子部品。
【請求項24】
前記本体は、前記第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極上に配置され、グラフェンを含むカバー部を含む、請求項22に記載の積層型電子部品。
【請求項25】
第1方向に交互に配置される第1誘電体層及び内部電極を含む複数の容量形成部、並びに隣接する容量形成部の間に配置され、第2誘電体層を含む中間層を含み、
前記第1方向に対向する第1面及び第2面、前記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、前記第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記第2誘電体層はグラフェンを含み、
前記中間層の平均厚さをt1、前記第1誘電体層の平均厚さをt3とするとき、t3<t1を満たす、積層型電子部品。
【請求項26】
前記本体は、前記第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極上に配置されたカバー部を含み、
前記カバー部の平均厚さをt2とするとき、t3<t1<t2を満たす、請求項25に記載の積層型電子部品。
【請求項27】
前記本体は前記中間層を複数個含み、
複数個の前記中間層は互いに離隔して配置される、請求項25に記載の積層型電子部品。
【請求項28】
前記内部電極は、第5面及び第6面と離隔して配置され、第3又は第4面と連結されるように配置され、
前記中間層は前記本体の第3面から第6面と連結される、請求項25に記載の積層型電子部品。
【請求項29】
前記カバー部はグラフェンをさらに含む、請求項26に記載の積層型電子部品。
【請求項30】
前記内部電極は、前記第5面及び第6面と連結されるように配置され、第3又は第4面と連結されるように配置され、
前記中間層は前記本体の第3面から第6面と連結され、
前記第5面及び第6面にはサイドマージン部が配置される、請求項25に記載の積層型電子部品。
【請求項31】
前記サイドマージン部はグラフェンをさらに含む、請求項30に記載の積層型電子部品。
【請求項32】
前記本体は、前記第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極上に配置され、グラフェンを含むカバー部を含む、請求項31に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用できる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器の小型化、高出力化に伴い、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
また、最近、自動車用電装部品に対する業界の関心が高まり、積層セラミックキャパシタも自動車あるいはインフォテインメントシステムに使用されるために高信頼性の特性が求められている。
【0005】
積層セラミックキャパシタは、複数の誘電体層と上記誘電体層の間に互いに異なる極性を有する内部電極が交互に積層される構造を有することができる。このとき、上記誘電体層は、圧力を加えると電圧が発生する圧電性、及び電圧を加えると圧力が発生する電歪性を有する。
【0006】
これにより、積層セラミックキャパシタに直流又は交流電圧が印加されるときに内部電極の間で応力が発生し、脆性の高いセラミックの特性により積層セラミックキャパシタに電歪クラックが発生し、積層セラミックキャパシタの信頼性が低下する可能性がある。
【0007】
このような問題点を解決するために、従来は、積層セラミックキャパシタの中央部にバッファ用セラミック層を挿入して積層セラミックキャパシタの強度を改善する方法を適用していたが、厚いバッファ用セラミック層により積層セラミックキャパシタの容量が過度に低下するという問題点が存在する。
【0008】
したがって、積層セラミックキャパシタの容量が過度に低下することなく、積層セラミックキャパシタの強度を効果的に向上させることができる研究が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2014-0088746号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明のいくつかの目的の一つは、高い強度を有して信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0011】
本発明のいくつかの目的の一つは、容量に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0012】
本発明のいくつかの目的の一つは、耐湿信頼性及び破壊電圧に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0013】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、第1方向に交互に配置される第1誘電体層及び内部電極を含む複数の容量形成部、並びに隣接する容量形成部の間に配置され、第2誘電体層を含む中間層を含み、上記第1方向に対向する第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、上記第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記第2誘電体層はグラフェンを含み、上記第1誘電体層はグラフェンを含まないか、又は上記第2誘電体層に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含むことができる。
【0015】
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品は、第1方向に交互に配置される第1誘電体層及び内部電極を含む複数の容量形成部、並びに隣接する容量形成部の間に配置され、第2誘電体層を含む中間層を含み、上記第1方向に対向する第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、上記第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記第2誘電体層はグラフェンを含み、上記中間層の平均厚さをt1、上記第1誘電体層の平均厚さをt3とするとき、t3<t1<t2を満たすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の様々な効果の一つとして、高い強度を有して信頼性に優れた積層型電子部品を提供することができる。
【0017】
本発明の様々な効果の一つとして、容量に優れた積層型電子部品を提供することができる。
【0018】
本発明の様々な効果の一つとして、耐湿信頼性及び破壊電圧に優れた積層型電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示す。
図2図1のI-I'線に沿った断面図である。
図3図2のII-II'線に沿った断面図である。
図4】積層型電子部品の本体を分解して概略的に示す分解斜視図である。
図5図2のK1領域の拡大図である。
図6図2のK2領域の拡大図である。
図7図2の変形例を示す。
図8】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示す。
図9図8のIII-III'線に沿った断面図である。
図10図8のIV-IV'線に沿った断面図である。
図11】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示す。
図12図11の本体及びサイドマージン部を分解して概略的に示す分解斜視図である。
図13図11のV-V'線に沿った断面図である。
図14図11の変形例を示す。
図15図14の本体及びサイドマージン部を分解して概略的に示す分解斜視図である。
図16図14のVI-VI'線に沿った断面図である。
図17】グラフェンの構造式である。
図18】グラフェン(graphene)を含む第2誘電体層に対するラマン(Raman)分析結果を示すグラフである。
図19】発明例及び比較例の曲げ強度を測定して示すグラフである。
図20】発明例及び比較例の破壊靭性(Fracture toughness)を測定して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張されてもよく、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0021】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0022】
図面において、第1方向は厚さT方向又は積層方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、図2は、図1のI-I'線に沿った断面図であり、図3は、図2のII-II'線に沿った断面図であり、図4は、積層型電子部品の本体を分解して概略的に示す分解斜視図である。
【0024】
図1図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、第1方向に交互に配置される第1誘電体層111及び内部電極121、122を含む複数の容量形成部Ac1、Ac2、並びに隣接する容量形成部Ac1、Ac2の間に配置され、第2誘電体層112を含む中間層140を含み、上記第1方向に対向する第1面1及び第2面2、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面3及び第4面4、上記第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5面5及び第6面6を含む本体110と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含み、第2誘電体層112はグラフェンを含み、第1誘電体層111はグラフェンを含まないか、又は第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含むことができる。
【0025】
上述したように、積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタは、圧電性及び電歪性を有する誘電体層によって電圧印加時に電歪クラックが発生することがあり、これにより積層セラミックキャパシタの信頼性が低下する可能性がある。
【0026】
これに対し、本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、隣接する容量形成部Ac1、Ac2の間に配置され、第2誘電体層112を含む中間層140を含み、第2誘電体層112がグラフェンを含むことにより、積層型電子部品100の強度及び信頼性が向上することができる。
【0027】
また、第1誘電体層111はグラフェンを含まないか、又は第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含むことにより、耐湿信頼性及び破壊電圧等の劣化を防止することができる。
【0028】
以下、本発明の一実施形態による積層型電子部品100に含まれる各構成についてより詳細に説明する。
【0029】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0030】
本体110は、第1方向に対向する第1面1及び第2面2、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面3及び第4面4、上記第1面から第4面と連結され、第3方向に対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0031】
本体110は、上記第1方向に交互に配置される第1誘電体層111及び内部電極121、122を含んで容量が形成される複数の容量形成部Ac1、Ac2を含むことができる。互いに隣接する容量形成部Ac1、Ac2は、例えば、中間層140を間に挟んで上記第1方向に配列されることができる。
【0032】
容量形成部Ac1、Ac2を形成する複数の第1誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する第1誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0033】
第1誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤、添加剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することによって形成されることができる。セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されないが、例えば、チタン酸バリウム系(BaTiO)系粉末を使用することができる。
【0034】
第1誘電体層111の平均厚さt3は特に限定する必要はない。一方、積層型電子部品100の小型化及び高容量化を達成するためには、第1誘電体層111の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があるが、従来の場合、第1誘電体層111の厚さが薄くなるほど、電圧印加時に発生する応力により本体110にクラック(crack)が発生しやすく、これにより積層型電子部品100の信頼性が低下するという問題点がある。
【0035】
これに対し、本発明の一実施形態による積層型電子部品100の場合、複数の容量形成部Ac1、Ac2の間に配置される中間層140を含んで高い強度を有することにより、第1誘電体層111の厚さが薄い場合でも、クラックの発生を防止し、信頼性を向上させることができる。これにより、第1誘電体層111の平均厚さt3は0.4μm以下であることができ、この場合、本発明によるクラック防止及び信頼性の向上効果が顕著となることができる。
【0036】
ここで、第1誘電体層111の平均厚さt3は、内部電極121、122の間に配置される第1誘電体層111の平均厚さを意味することができる。第1誘電体層111の平均厚さt3は、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの第1誘電体層111の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Ac1、Ac2で指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の第1誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、第1誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0037】
内部電極121、122は、第1誘電体層111と交互に配置されることができ、例えば、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122とが第1誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置されることができる。複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、その間に配置された第1誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0038】
内部電極121、122は、本体110の第5面5及び第6面6と離隔して配置され、第3面3又は第44と連結されるように配置されることができる。例えば、複数の第1内部電極121は、それぞれ第4面4、第5面5、第6面6と離隔し、第3面3と連結されるように配置されることができる。また、複数の第2内部電極122は、それぞれ第3面3、第5面5及び第6面6と離隔し、第4面4と連結されるように配置されることができる。
【0039】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上であってもよいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定の厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを塗布し焼成することにより形成されることができる。また、容量形成部Ac1、Ac2は、上記内部電極用導電性ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層して焼成することにより形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
内部電極121、122の平均厚さは特に限定する必要はない。このとき、内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。一方、上述したように、本発明の一実施形態による積層型電子部品100の場合、複数の容量形成部Ac1、Ac2の間に配置される中間層140を含んで高い強度を有することにより、内部電極121、122の厚さが薄い場合でも、クラックの発生を防止して信頼性を向上させることができる。これにより、内部電極121、122の平均厚さは0.4μm以下であることができ、この場合、本発明によるクラック防止及び信頼性の向上効果が顕著となることができる。
【0042】
ここで、内部電極121、122の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極121、122の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Ac1、Ac2で指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0043】
本体110は、上記第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極121、122上に配置されるカバー部113、114を含むことができる。例えば、カバー部113、114は、上記第1方向を基準に最上部に配置された内部電極121、122上に配置される第1カバー部113及び最下部に配置された内部電極121、122上に配置される第2カバー部114を含むことができ、カバー部113、114は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。カバー部113、114は、内部電極を含まないことを除いては、第1誘電体層111と同じ構成を有することができ、後述するように第2誘電体層112と同じ構成を有することもできる。
【0044】
カバー部113、114の平均厚さt2は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化のために、カバー部113、114の平均厚さt2は20μm以下であってもよい。上述したように、カバー部113、114の平均厚さt2が20μm以下の場合であっても、容量形成部Ac1、Ac2の間に中間層140を配置すると、クラックの発生を防止して信頼性を向上させることができる。ここで、カバー部113、114の平均厚さt2は、第1カバー部113及び第2カバー部114のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0045】
カバー部113、114の平均厚さt2は、カバー部113、114の第1方向への平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第2方向の断面において等間隔である5個の地点で測定した第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0046】
容量形成部Ac1、Ac2は、第1誘電体層111及び内部電極121、122の上記第3方向の両端面上に配置されたマージン部115、116を含むことができる。すなわち、マージン部115、116は、本体110を第1方向及び第3方向に切断した断面において内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。このとき、マージン部115、116は、本体110の第5面5と連結される第1マージン部115及び本体110の第6面6と連結される第2マージン部116を含むことができる。
【0047】
マージン部115、116は、内部電極121、122を含まないことを除いては、容量形成部Ac1、Ac2の第1誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0048】
マージン部115、116は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0049】
マージン部115、116は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、内部電極用導電性ペーストを塗布し焼成することにより形成されたものであってもよい。
【0050】
マージン部115、116の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化のために、マージン部115、116の平均厚さは20μm以下であってもよい。上述したように、マージン部115、116の平均厚さが20μm以下の場合であっても、容量形成部Ac1、Ac2の間に中間層140を配置すると、クラックの発生を防止して信頼性を向上させることができる。ここで、マージン部115、116の平均厚さは、第1マージン部115及び第2マージン部116のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0051】
マージン部115、116の平均厚さは、マージン部115、116の第3方向の平均サイズを意味することができ、本体110の第1方向及び第3方向の断面において、等間隔である5個の地点で測定した第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0052】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されて第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6のそれぞれの一部まで延びることができる。外部電極131、132は、複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0053】
外部電極131、132は、金属などのような、電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。例えば、外部電極131、132は導電性金属を含むことができ、外部電極131、132に含まれる導電性金属としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/又はこれらを含む合金などが挙げられる。
【0054】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されて内部電極121、122と連結される第1電極層131a、132a、及び第1電極層131a、132a上に配置される第2電極層132a、132bを含むことができる。
【0055】
第1電極層131a、132aは、本体110の第3面3及び第4面4を導電性金属及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することにより形成されることができる。あるいは、導電性金属及びガラスを含むシートを転写する方式で形成されることもできる。したがって、第1電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよい。
【0056】
また、第1電極層131a、131bは、例えば、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。第1電極層131a、131bは、導電性金属及び樹脂を含むペーストを塗布及び硬化する方法で形成されることができる。
【0057】
第1電極層131a、132aに含まれる導電性金属としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/又はこれらを含む合金などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
第2電極層131b、132bは実装特性を向上させることができる。第2電極層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及び/又はこれらを含む合金などを含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。第2電極層131b、132bは、例えば、ニッケル(Ni)めっき層又は錫(Sn)めっき層であってもよく、ニッケル(Ni)めっき層及び錫(Sn)めっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、第2電極層131b、132bは、複数のニッケル(Ni)めっき層及び/又は複数の錫(Sn)めっき層を含むこともできる。
【0059】
図面では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、これに限定されるものではなく、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0060】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、複数の容量形成部Ac1、Ac2の間に配置され、第2誘電体層112を含み、本体110の第3面3、第4面4、第5面5、第6面6と連結される中間層140を含み、第2誘電体層112はグラフェンを含む。
【0061】
図17はグラフェンの構造式である。図17を参照すると、グラフェンは炭素原子からなっており、原子1つの厚さからなる薄い膜状である。すなわち、グラフェンは2次元の板状構造を有する。グラフェンは約0.2nmの厚さで物理的、化学的安定性が非常に高く、銅よりも伝導度が100倍以上大きく、機械的強度も鋼より200倍以上強いことが知られている。
【0062】
したがって、第2誘電体層112がグラフェンを含むことにより、中間層140は、第1誘電体層111に比べて高い強度及び破壊靭性(Fracture toughness)を有することができ、これにより、積層型電子部品100への電圧印加時に発生する応力による電歪クラックの発生を防止することができる。
【0063】
また、第2誘電体層112がグラフェンを含むことにより、中間層140は、従来のバッファ用セラミック層に比べて薄い厚さを有しても、高い強度及び破壊靭性を有するため、従来に比べて中間層140の厚さを薄く形成することができるため、中間層140による積層型電子部品100の容量低下を最小化することができる。
【0064】
また、積層型電子部品の外部を構成するカバー部113、114、マージン部115、116、又は後述するサイドマージン部M1、M2にグラフェンが含まれる場合と異なり、中間層140は、隣接する容量形成部Ac1、Ac2の間、すなわち本体110の内部に配置されることで、高温環境でもグラフェンが酸化、燃焼及び破壊されることを防止することができる。これにより、積層型電子部品の強度及び信頼性をより効果的に改善することができる。
【0065】
第2誘電体層112は、チタン酸バリウム系(BaTiO)系主成分及びグラフェンが添加されたセラミックグリーンシートを焼成することにより形成することができる。上記グラフェンを含むセラミックグリーンシートは、例えば、セラミック粉末、有機溶剤、グラフェンを含む添加剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥することにより形成することができる。あるいは、上記バインダーにグラフェンを混合し、これをボールミリング(Ball-milling)してグラフェンを上記バインダーに予め分散させた後、上記グラフェンが分散したバインダーと、セラミック粉末、有機溶剤及び添加剤などを混合してセラミックスラリーを製造し、これを用いてセラミックグリーンシートを形成することもできる。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、グラフェン粉末が混合されたセラミック粉末を用いて上記セラミックグリーンシートを形成することもできる。第2誘電体層112は、グラフェンを含むことを除いては、第1誘電体層111と同じ構成を有することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
中間層140は、上記グラフェンが添加されたセラミックグリーンシートを一つ以上積層し焼成することにより形成されることができる。すなわち、中間層140は、内部電極用導電性ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層する過程に、別途作製されたグラフェンを含むセラミックグリーンシートを一つ以上積層する過程を挿入することにより、隣接する容量形成部Ac1、Ac2の間に配置され、第2誘電体層112を含む中間層140を形成することができる。
【0067】
より具体的に、一つ以上のセラミックグリーンシートを積層して第2カバー部114を積層し、内部電極用導電性ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを複数個積層して第2容量形成部Ac2を積層した後、グラフェンを含むセラミックグリーンシートを一つ以上積層して中間層140を積層することができる。その後、内部電極用導電性ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを複数個積層して第2容量形成部Ac1を積層し、セラミックグリーンシートを積層して第1カバー部113を積層することで積層体を設けることができる。このとき、上記グラフェンを含むセラミックグリーンシートのうち、上記第1方向を基準に最上部に積層されたセラミックグリーンシート上には、内部電極用導電性ペーストが塗布されていてもよい。これにより、第1容量形成部Ac1の最下部に配置された内部電極と第2容量形成部Ac2の最上部に配置された内部電極との間には、第2誘電体層からなる中間層140が形成されることができる。
【0068】
但し、本発明はこれに限定されるものではなく、製造工程をより簡単にするために、中間層140を形成する複数のセラミックグリーンシートのうち、第1方向を基準に最上部に積層されたセラミックグリーンシートはグラフェンを含まず、内部電極用導電性ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートであってもよい。これにより、中間層140は第1誘電体層111を1つ含むこともできる。
【0069】
本発明の一実施形態によると、第1誘電体層111はグラフェンを含まないか、又は第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含む。
【0070】
グラフェンは様々な利点を有する物質ではあるが、積層型電子部品100の電気的特性と直接に関連した第1誘電体層111に含まれる場合、第1誘電体層の結晶粒の粒径が不均衡になったり、焼結駆動を抑制して積層型電子部品100の強度の不均衡を招いたりすることがある。
【0071】
また、第1誘電体層111にグラフェンが含まれる場合、誘電率の向上などの一部有利な効果があり得るが、グラフェンの低い分散性により全てのグラフェンの位置を制御することは難しいため、積層型電子部品100の耐湿信頼性や破壊電圧などが劣化するという問題点が発生することがある。
【0072】
したがって、本発明の一実施形態による積層型電子部品の場合、第1誘電体層111がグラフェンを含まないか、又は第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含むことにより、耐湿信頼性及び破壊電圧が劣化するという問題点を防止することができる。
【0073】
すなわち、上記耐湿信頼性及び破壊電圧が劣化する問題点を防止するために、第1誘電体層111がグラフェンを含まないことが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1誘電体層111の誘電率の向上のために、第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含むこともできる。
【0074】
一方、第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量は、目標強度、積層型電子部品のサイズ、積層数を考慮して設定することができ、特に限定する必要はない。
【0075】
但し、第2誘電体層112に含まれたチタン酸バリウム(BaTiO)系主成分100重量部に対して第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量は、0.1重量部~1.0重量部であることができる。
【0076】
第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量が主成分100重量部に対して0.1重量部未満である場合、積層型電子部品の強度の上昇効果が不十分である可能性があり、主成分100重量部に対して1.0重量部を超える場合、グラフェンの分散性が悪化し、粘度が上昇してグラフェンが均一に分布されにくいという問題点が発生する可能性がある。
【0077】
第1誘電体層111がグラフェンを含む場合、第1誘電体層111に含まれたグラフェンの含量は、第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量より少なければよく、その含量を特に限定する必要はない。例えば、第1誘電体層111に含まれたグラフェンの含量は、主成分100重量部に対して1.0重量部未満であってもよい。
【0078】
第2誘電体層112に含まれたグラフェンの長さは、目標強度、後述する第2誘電体層112の結晶粒の平均粒径などを考慮して決定することができ、特に限定する必要はない。
【0079】
但し、第2誘電体層112に含まれたグラフェンは、長軸の長さが0.3μm~10μmであることができる。上記範囲を満たす場合、上記グラフェンが第2誘電体層112に含まれた複数の結晶粒を適切なレベルで覆って存在することができる。これにより、積層型電子部品に発生する電歪クラックの発生を防止し、積層型電子部品の強度及び信頼性をさらに効果的に改善することができる。
【0080】
第2誘電体層112に含まれるグラフェンの種類は特に限定する必要はない。すなわち、上記グラフェンは様々な形態のグラフェンを含むことができる。例えば、上記グラフェンは、多層グラフェン(Few Layer Graphene)、ナノグラフェン板状体(Nanosized Graphene Plate)、及びグラフェンナノリボン(Graphene Nanoribbon)など、様々な形態のグラフェンを含むことができる。
【0081】
また、上記グラフェンは、ボールミリング(Ball-Miling)工程により形成されたグラフェンフレーク(Graphene Flake)及び化学気相蒸着法(CVD)により形成されたCVDグラフェンなど、様々な工程により形成されたグラフェンを含むことができる。
【0082】
また、上記グラフェンは、99at%以上の炭素原子からなる純粋グラフェン(Pristine Graphene)、1at%以上20at%以下の酸素原子を含む酸化グラフェン(GO;Graphene Oxide)及び還元されたグラフェン酸化物(RGO;Reduced Graphene Oxide)のうち一つ以上を含むことができるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、水素(H)、窒素(N)、ホウ素(B)、フルオリン(F)、塩素(Cl)、ブロミン(Br)及びヨウ素(I)など、様々な非炭素原子を含むグラフェンを含むこともできる。
【0083】
一実施形態において、中間層140の平均厚さt1は、カバー部114、115の平均厚さt2より薄く、第1誘電体層111の平均厚さt3より厚いことができる(t3<t1<t2)。上記条件を満たすことにより、積層型電子部品の容量が過度に低下することなく、積層型電子部品の強度を効果的に改善することができる。
【0084】
中間層140の平均厚さt1がカバー部114、115の平均厚さt2より厚い場合、積層型電子部品の容量が過度に低下する可能性がある。また、中間層140の平均厚さt1が第1誘電体層111の平均厚さt3より薄い場合、積層型電子部品の強度の改善効果が僅かである可能性がある。
【0085】
積層型電子部品の容量が過度に低下する問題点を防止するために、カバー部114、115の平均厚さt2に対する中間層140の平均厚さt1の比率t1/t2は、例えば、0.8以下であってもよい。上記t1/t2比率の下限は、特に限定する必要はないが、例えば0.01以上であってもよい。
【0086】
また、積層型電子部品の強度を効果的に改善するために、第1誘電体層111の平均厚さt3に対する中間層140の平均厚さt1の比率t1/t3は、例えば7以上であってもよい。上記t1/t3比率の上限は特に限定する必要はないが、例えば100以下であってもよい。
【0087】
中間層140の平均厚さt1は、中間層140の第1方向の平均サイズを意味することができる。中間層140の厚さは、中間層140と最も隣接した2つの内部電極121、122の間の第1方向の距離を意味することができる。また、中間層140の平均厚さt1は、走査電子顕微鏡(SEM)で測定した本体110の第1方向及び第2方向の断面において等間隔である5個の地点で測定した第1方向のサイズを平均した値であることができる。一方、中間層140が複数個配置される場合、複数個の中間層140のそれぞれの平均厚さを意味することができる。
【0088】
図5は、図2のK1領域の拡大図であり、図6は、図2のK2領域の拡大図である。
【0089】
一実施形態において、第1誘電体層111及び第2誘電体層111、112は、複数の結晶粒11a、12a及び隣接する結晶粒の間に形成された結晶粒界11b、12bを含み、第2誘電体層112に含まれたグラフェン12cは、第2誘電体層112の結晶粒界12bに配置されることができる。また、第2誘電体層112に含まれた複数のグラフェン12cのうち少なくとも一つは、一面が第2誘電体層112に含まれた複数の結晶粒12aのうち少なくとも2以上の結晶粒12aの表面に沿って配置されることができる。
【0090】
第2誘電体層112に含まれたグラフェン12cは、第2誘電体層112の結晶粒界12bに配置され、第2誘電体層112に含まれた複数の結晶粒12aのうち少なくとも2以上の結晶粒12aの表面に沿って配置されることによって、グラフェン12cは、第2誘電体層112に含まれた複数の結晶粒12aを適切なレベルで覆って存在することができる。
【0091】
これにより、積層型電子部品に加わる応力を効果的に分散して電歪クラック等を防止し、積層型電子部品の強度及び信頼性をさらに効果的に改善することができる。
【0092】
一実施形態において、第2誘電体層112の結晶粒12aの平均粒径D2は、第1誘電体層の結晶粒11aの平均粒径D1より小さくてもよい(D2<D1)。また、第1誘電体層111の平均粒径D1及び第2誘電体層112の平均粒径D2は、0<(D1-D2)/D1≦0.3を満たすことができる。
【0093】
このような結晶粒の平均粒径の差は、第2誘電体層112に含まれたグラフェン12cによるものであり、第2誘電体層112は第1誘電体層111より平均粒径が小さくて高靭性を有することができる。これにより、電歪クラックを効果的に防止し、積層型電子部品の強度及び信頼性を向上させることができる。
【0094】
第1誘電体層111の結晶粒11aの平均粒径D1及び第2誘電体層112の結晶粒12aの平均粒径D2は、結晶粒の結晶粒界の或る地点から他の地点に直線を引いたとき、最大値を有する線を長軸、上記長軸に直交する直線のうち最大値を有するものを短軸とし、上記長軸と短軸の平均値を結晶粒のサイズとすることができる。また、500個以上の結晶粒のサイズを平均した値を結晶粒の平均粒径とすることができる。
【0095】
また、結晶粒11a、12aの平均粒径D1、D2は、本体110の第1方向及び第3方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られた画像イメージから測定することができる。このとき、倍率は結晶粒のサイズに応じて異ならせることができ、500個以上の結晶粒のサイズが測定可能になるように倍率を調節することができる。但し、一つの画像イメージに500個以上の結晶粒が含まれるように倍率を調節して測定する必要はなく、複数の画像イメージに含まれた結晶粒の総個数が500個以上になるように倍率を調節し、複数の画像イメージから測定することができる。
【0096】
一実施形態において、第2誘電体層112は、ラマン(Raman)分析時にDバンド(D-band)及びGバンド(G-band)でピーク(peak)が検出されることができる。より具体的に、第2誘電体層112は、ラマン分析時にGバンドで検出されたピークの強度が、Dバンドで検出されたピークの強度より高いことができる。また、第2誘電体層112は、ラマン分析時に2Dバンドでもピークが検出されることができる。
【0097】
ここで、上記Dバンドは、ラマンスペクトル分析において1300~1400cm-1で検出され、上記Gバンドは、ラマンスペクトル分析において1500~1600cm-1で検出され、2Dバンドは、ラマンスペクトル分析において2600~2800cm-1で検出されることができる。
【0098】
Gバンドで現れるピークは黒鉛系物質から共通して発見されるピークを示すことができ、Dバンドで現れるピークは結晶内の欠陥によるピークを示すことができる。Dバンドで現れるピークの強度が高いほど、グラフェン内に欠陥が多く存在することを意味することができる。2Dバンドは、1300~1400cm-1のエネルギーを有するフォノンによる非弾性散乱が2回連続して発生した場合に現れることができる。特に、多層構造を有するグラフェンの場合、様々な散乱が発生し、これにより2Dバンドで検出されるピークの強度が増加することができる。すなわち、2Dバンドで現れるピークの強度が高いほどグラフェンの層数が高いことを意味することができる。
【0099】
一般的に、グラフェンはエッジ(edge)に存在するsp欠陥によりDバンド及びGバンドでピークが検出され、グラフェンの他の炭素同素体であるグラファイトはGバンドでのみピークが検出され、Dバンドではピークが検出されない。
【0100】
したがって、ラマン分析法によりグラフェンの存在の有無及び他の炭素同素体との区別が可能であり、第2誘電体層112のラマン分析時にGバンド及びDバンドでピークが検出されるいうのは、第2誘電体層112にグラフェンが含まれていることを意味することができる。
【0101】
一実施形態において、第1誘電体層111は、ラマン分析時にDバンド及びGバンドで同時にピークが検出されないか、又は第2誘電体層112で検出されたDバンド及びGバンドのピークより低い強度のDバンド及びGバンドのピークが検出されることがある。
【0102】
第1誘電体層111のラマン分析時にDバンド及びGバンドで同時にピークが検出されないというのは、第1誘電体層111がグラフェンを含まないことを意味することができる。
【0103】
また、第1誘電体層111のラマン分析時に第2誘電体層112で検出されたDバンド及びGバンドのピークより低い強度のDバンド及びGバンドのピークが検出されるというのは、第1誘電体層111が第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含むことを意味することができる。
【0104】
上述したように、グラフェンが第1誘電体層111に直接に含まれる場合、積層型電子部品の強度の不均衡を招くことがあり、耐湿信頼性や破壊電圧などが劣化するという問題点が発生する可能性がある。
【0105】
したがって、第1誘電体層111のラマン分析時にDバンド及びGバンドで同時にピークが検出されないことが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、誘電率の向上のために第1誘電体層111が第2誘電体層112に含まれたグラフェンの含量より少ない含量のグラフェンを含む場合、第1誘電体層111のラマン分析時に第2誘電体層112で検出されたDバンド及びGバンドのピークより低い強度のDバンド及びGバンドのピークが検出されることもある。
【0106】
一実施形態において、第2誘電体層112は、上記Gバンドで検出されたピークの強度に対する上記Dバンドで検出されたピークの強度比率が0.03~0.5であることができる。
【0107】
このとき、上記Gバンドで検出されたピークの強度に対する上記Dバンドで検出されたピークの強度比率は、グラフェンの品質を示すものであり、上記比率が低いほどグラフェン内に欠陥が少なく、上記比率が高いほどグラフェン内に欠陥が多いことを意味することができる。
【0108】
第2誘電体層112は、上記比率を満たす欠陥の少ないグラフェン、例えば、炭素原子の比率が90at%以上であるグラフェンを含むことにより、積層型電子部品の強度及び信頼性を向上させることができる。第2誘電体層112に含まれたグラフェンが上記比率から外れた場合、高温環境で上記グラフェンが酸化、燃焼、及び破壊されることがある。
【0109】
図7は、図2の変形例を示すものである。図7を参照すると、本発明の一実施形態による積層型電子部品200の本体210は、中間層140を複数個含み、複数個の中間層140は互いに離隔して配置されることができる。
【0110】
図7では、3つの容量形成部Ac1、Ac2、Ac3及び隣接する容量形成部Ac1、Ac2、Ac3の間に配置される中間層140を2つ含む本体210を示しているが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、本体210は互いに離隔して配置された中間層140を3つ以上含むことができ、中間層140の個数の上限は特に制限されるものではないが、例えば、10個以下であってもよい。
【0111】
本発明の一実施形態による積層型電子部品200の場合、中間層140が複数個配置されることにより、本体210の内部において強度が脆弱な各領域に中間層140が配置されることができ、積層型電子部品の強度及び信頼性をより効果的に改善することができる。
【0112】
図8は、本発明の一実施形態による積層型電子部品300の斜視図を概略的に示すものであり、図9は、図8のIII-III'線に沿った断面図であり、図10は、図8のIV-IV'線に沿った断面図である。
【0113】
図8図10を参照すると、本発明の一実施形態による積層型電子部品300の本体310は、上記第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極121、122上に配置されるカバー部313、314を含み、カバー部313、314はグラフェンを含むことができる。積層型電子部品300の外部を構成するカバー部313、314がグラフェンを含むことにより、積層型電子部品に上記第1方向に加わる応力を効果的に分散させ、積層型電子部品の強度及び信頼性をより効果的に改善することができる。
【0114】
カバー部313、314は、例えば、上記第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極121、122上に第2誘電体層112を複数個積層して形成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0115】
一実施形態において、カバー部313、314は、ラマン分析時にDバンド及びGバンドでピークが検出されることができる。
【0116】
上述したように、カバー部313、314のラマン分析時にGバンド及びDバンドでピークが検出されるというのは、カバー部313、314にグラフェンが含まれていることを意味することができる。
【0117】
図11は、本発明の一実施形態による積層型電子部品400の斜視図を概略的に示すものであり、図12は、図11の本体及びサイドマージン部を分解して概略的に示す分解斜視図であり、図13は、図11のV-V'線に沿った断面図である。
【0118】
本発明の一実施形態による積層型電子部品400の本体410は、本体410の第5面5及び第6面6と連結されるように配置され、第3面3又は第4面4と連結されるように配置される内部電極421、422を含むことができる。
【0119】
より具体的に、内部電極421、422は、本体410の第3面3、第5面5及び第6面6と連結されるように配置され、第4面4と離隔するように配置される第1内部電極421を含み、本体410の第4面4、第5面5、第6面6と連結されるように配置され、第3面3と離隔するように配置される内部電極422を含むことができる。
【0120】
本発明の一実施形態による積層型電子部品400は、本体410の第5面5及び第6面6に配置されるサイドマージン部M1、M2を含むことができる。より具体的に、サイドマージン部M1、M2は、本体410の第5面5に配置される第1サイドマージン部M1、及び本体410の第6面6に配置される第2サイドマージン部M2を含むことができる。
【0121】
すなわち、内部電極421、422は、本体410の第5面5及び第6面6においてサイドマージン部M1、M2と連結されることができ、本体410の第3面3、第4面4、第5面5、第6面6と連結される中間層140は、本体410の第5面5及び第6面6においてサイドマージン部M1、M2と連結されることができる。
【0122】
サイドマージン部M1、M2は、内部電極421、422による段差を抑制するために、積層後の内部電極421、422が本体410の第5面5及び第6面6と連結されるように切断した後、本体410の第5面5及び第6面6に第1誘電体層111又は第2誘電体層112を積層して形成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0123】
サイドマージン部M1、M2の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品400の小型化及び高容量化のために、サイドマージン部M1、M2の平均厚さは20μm以下であってもよい。サイドマージン部M1、M2の平均厚さが20μm以下の場合であっても、容量形成部Ac1、Ac2の間に中間層140を配置すると、クラックの発生を防止し、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。サイドマージン部M1、M2の平均厚さとは、第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部のそれぞれの平均厚さを意味することができる。
【0124】
サイドマージン部M1、M2の平均厚さは、サイドマージン部M1、M2の第3方向の平均サイズを意味することができ、積層型電子部品400の第1方向及び第3方向の断面において、等間隔である5個の地点で測定した第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0125】
一実施形態において、本体410の第1方向の中央部領域に対応する上記第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm1に対して第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極421、422の末端と接する第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン領域の厚さtm2の比率は1.0以下であってもよい。
【0126】
本体410の第1方向の中央部領域に対応する上記第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm1に対して第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極421、422の末端と接する第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm2の比率の下限値は特に制限されるものではないが、0.9以上であることが好ましい。
【0127】
従来は、サイドマージン部を、セラミックスラリーを塗布又は印刷する方式で形成したため、サイドマージン部の位置別厚さのばらつきが激しかった。具体的に、従来の場合には、本体の第1方向の中央部領域に対応する第1又は第2サイドマージン部領域の厚さが他の領域の厚さに比べて厚く形成されていた。
【0128】
例えば、従来の場合、本体の第1方向の中央部領域に対応する第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さに対して第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極の末端と接する第1又サイドマージン部領域は第2サイドマージン部領域の厚さの比率は0.9未満程度であって、そのばらつきが大きい。
【0129】
このようにサイドマージン部の位置別厚さのばらつきが大きい従来の場合、同一サイズの積層型電子部品において、サイドマージン部が占める部分が大きいため、容量形成部のサイズを大きく確保することができず、高容量の確保に困難がある。
【0130】
これに対し、本発明の一実施形態によると、本体410の第1方向の中央部領域に対応する上記第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm1に対して第1方向を基準に最外郭に配置される内部電極421、422の末端と接する上記第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm2の比率は0.9以上1.0以下であるため、第1サイドマージン部M1及び第2サイドマージン部M2の第1方向のサイズを小さく形成して容量形成部Ac1、Ac2のサイズを大きく確保することができる。
【0131】
一方、本体410の第1方向の中央部領域に対応する第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm1に対して本体410の角と接する上記第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm3の比率は1.0以下であってもよい。
【0132】
本体の第1方向の中央部領域に対応する上記第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm1に対して上記本体410の角と接する上記第1サイドマージン部領域又は第2サイドマージン部領域の厚さtm3の比率の下限値は特に制限されるものではないが、0.9以上であることが好ましい。
【0133】
上記の特徴により、サイドマージン部の領域別厚さのばらつきが少なく、容量形成部のサイズを大きく確保することができ、これにより高容量積層型電子部品の実現が可能である。
【0134】
一実施形態において、サイドマージン部M1、M2はグラフェンをさらに含むことができる。積層型電子部品400の外部を構成するサイドマージン部M1、M2がグラフェンを含むことにより、積層型電子部品に上記第3方向に加わる応力を効果的に分散させ、積層型電子部品の強度及び信頼性を改善することができる。
【0135】
サイドマージン部M1、M2は、第2誘電体層112を積層して形成されることによりグラフェンを含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0136】
一実施形態において、サイドマージン部M1、M2は、ラマン分析時にDバンド及びGバンドでピークが検出されることができる。
【0137】
上述したように、サイドマージン部M1、M2のラマン分析時にGバンド及びDバンドでピークが検出されるというのは、サイドマージン部M1、M2にグラフェンが含まれていることを意味することができる。
【0138】
図14は、図11の変形例を示すものであり、図15は、図14の本体及びサイドマージン部を分解して概略的に示す分解斜視図であり、図16は、図14のVI-VI'線に沿った断面図である。
【0139】
図14図16に示すように、本発明の一実施形態による積層型電子部品500の本体510は、グラフェンを含むカバー部513、514を含むことができる。
【0140】
積層型電子部品500の外部を構成するカバー部513、514及びサイドマージン部M1、M2がグラフェンを含むことにより、積層型電子部品に上記第1方向及び第3方向に加わる応力を効果的に分散させ、積層型電子部品の強度及び信頼性をさらに効果的に改善することができる。
【0141】
一実施形態において、サイドマージン部M1、M2及びカバー部513、514は、ラマン分析時にDバンド及びGバンドでピークが検出されることができる。
【0142】
上述したように、サイドマージン部M1、M2及びカバー部513、514のラマン分析時にGバンド及びDバンドでピークが検出されるというのは、サイドマージン部M1、M2及びカバー部513、514にグラフェンが含まれていることを意味することができる。
【0143】
以下、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。但し、本発明の一実施形態による積層型電子部品は、上述した本発明の他の一実施形態と同様の構成を有することができる。したがって、上述した説明と重複する内容は省略する。
【0144】
図1図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、第1方向に交互に配置される第1誘電体層111及び内部電極121、122を含む複数の容量形成部Ac1、Ac2、並びに隣接する容量形成部Ac1、Ac2の間に配置され、第2誘電体層112を含む中間層140を含み、上記第1方向に対向する第1面1及び第2面2、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面3及び第4面4、上記第1面から第4面と連結され、上記第3方向に対向する第5面5及び第6面6を含む本体110と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含み、上記第2誘電体層はグラフェンを含み、上記中間層の平均厚さをt1、上記第1誘電体層の平均厚さをt3とするとき、t3<t1を満たすことができる。
【0145】
上述のように、第2誘電体層112がグラフェンを含むことにより、中間層140は、第1誘電体層111に比べて高い強度及び破壊靭性(Fracture toughness)を有することができ、そのような強度及び破壊靭性の向上効果はt3<t1を満たすことにより、さらに顕著となることができる。これにより、積層型電子部品100への電圧印加時に発生する応力による電歪クラックの発生を防止することができる。
【0146】
一実施形態において、カバー部114、115の平均厚さt2をt2とするとき、t3<t1<t2を満たすことができる。上述したように、中間層140の平均厚さt1がカバー部114、115の平均厚さt2より厚い場合、積層型電子部品の容量が過度に低下する可能性がある。
【0147】
図7を参照すると、一実施形態において、積層型電子部品220の本体210は中間層140を複数個含み、複数個の中間層140は互いに離隔して配置されることができる。
【0148】
上述したように、本発明の一実施形態による積層型電子部品200の場合、中間層140が複数個配置されることにより、本体210の内部において強度が脆弱な各領域に中間層140が配置されることができ、積層型電子部品の強度及び信頼性をより効果的に改善することができる。
【0149】
図8図10を参照すると、一実施形態において、カバー部313、314はグラフェンを含むことができる。
【0150】
上述したように、積層型電子部品300の外部を構成するカバー部313、314がグラフェンを含むことにより、積層型電子部品に上記第1方向に加わる応力を効果的に分散させ、積層型電子部品の強度及び信頼性をより効果的に改善することができる。
【0151】
図11図13を参照すると、一実施形態において、サイドマージン部M1、M2はグラフェンをさらに含むことができる。積層型電子部品400の外部を構成するサイドマージン部M1、M2がグラフェンを含むことにより、積層型電子部品に上記第3方向に加わる応力を効果的に分散させ、積層型電子部品の強度及び信頼性を改善することができる。
【0152】
図14図16を参照すると、一実施形態において、サイドマージン部M1、M2及びカバー部513、514はグラフェンを含むことができる。
【0153】
上述したように、積層型電子部品500の外部を構成するカバー部513、514及びサイドマージン部M1、M2がグラフェンを含むことにより、積層型電子部品に上記第1方向及び第3方向に加わる応力を効果的に分散させ、積層型電子部品の強度及び信頼性をさらに効果的に改善することができる。
【0154】
(実験例)
<第2誘電体層のラマン分析>
まず、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末を含むスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数個のセラミックグリーンシートを設けた。
【0155】
上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを塗布し、上記内部電極用導電性ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを複数回積層した後、焼成して第1誘電体層及び内部電極を含む本体を形成し、上記本体の外部に外部電極を形成してサンプルを製造した。
【0156】
このとき、別途作製されたグラフェンを含むセラミックグリーンシートを複数回積層し、内部電極用導電性ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層する過程に挿入することにより、隣接する容量形成部の間に配置され、第2誘電体層を含む中間層を形成した。
【0157】
その後、サンプルの第2方向への長さが半分である地点まで第2方向と垂直な方向にサンプルをポリシング(polishing)した後、サンプルの第2方向と垂直な断面に露出した第2誘電体層に対するラマン(Raman)分析を行った。ラマン分析は、レーザ波長:532nm、露出時間:10秒、累積回数:3回、レーザパワー(ND filter):5%、倍率:100倍の条件で行った。
【0158】
図18は、グラフェン(graphene)を含む第2誘電体層のラマン(Raman)分析結果を示すグラフである。
【0159】
図18を参照すると、第2誘電体層に対するラマン分析時に1300~1400cm-1でDバンドのピークが検出されることが確認でき、1500~1600cm-1でGバンドのピークが検出されることが確認できる。また、第2誘電体層は、ラマン分析時に2600~2800cm-1で2Dバンドのピークが検出されることが確認できる。これにより、第2誘電体層がグラフェンを含むことが確認できる。
【0160】
また、第2誘電体層は、ラマン分析時にGバンドで検出されたピークの強度が、Dバンドで検出されたピークの強度より高いことを確認することができる。これにより、第2誘電体層は、欠陥の少ないグラフェン、例えば、炭素原子の比率が90at%以上であるグラフェンを含むことが確認できる。
【0161】
<曲げ強度の評価>
本体の内部に第2誘電体層を含む中間層が配置された発明例、並びに第2誘電体層及び中間層を含まない比較例をそれぞれ32個ずつ設けた。このとき、発明例の第2誘電体層には、チタン酸バリウム(BaTiO)100重量部に対して0.5重量部のグラフェンを添加した。このとき、第2誘電体層の包含の有無を除いては、発明例及び比較例は同じ条件で製造され、発明例及び比較例は、焼成前の第1方向のサイズが1mm、第2方向のサイズが7mm、第3方向のサイズが1.8mmのサイズで作製された。
【0162】
次に、発明例及び比較例に対する3点曲げ強度テストにより、それぞれの曲げ強度を測定した。上記曲げ強度テストは、TIRA社の万能材料試験機により評価し、試験片を支持する一対の支持台間の距離は5mmに設定した。このとき、曲げ強度値とは、発明例及び比較例のそれぞれに第1方向と垂直な方向に力を加えたとき、試験片が破壊されるまで測定された応力のうち最大応力値を意味する。
【0163】
図19は、発明例及び比較例の曲げ強度を測定して示すグラフである。図19を参照すると、発明例は、比較例に比べて曲げ強度が優れていることが確認できる。これは、グラフェンを含む第2誘電体層が高い強度を有するためであり、これにより積層型電子部品の曲げ強度が改善できることを確認することができる。
【0164】
<破壊靭性(Fracture toughness)の評価>
焼成温度(1140℃、1150℃、1160℃又は1170℃)に応じて本体の内部に第2誘電体層を含む中間層が配置された発明例、及び第2誘電体層を含まない比較例をそれぞれ20個ずつ設けた。発明例の第2誘電体層には、チタン酸バリウム(BaTiO)100重量部に対して0.25重量部のグラフェンを添加し、第2誘電体層の包含の有無を除いては、発明例及び比較例は同じ条件及び同じサイズで製造された。
【0165】
次に、発明例及び比較例の破壊靭性(Fracture toughness)を測定した。破壊靭性はビッカース(Vickers)マイクロ圧入試験により測定し、発明例及び比較例のそれぞれの上面のうち第2方向及び第3方向への長さが半分である中央地点に100gの荷重を加えたとき、上記圧入により形成されたクラックの長さによって破壊靭性を測定した。
【0166】
図20は、発明例及び比較例の破壊靭性(Fracture toughness)を測定して示すグラフである。より具体的に、焼成温度による発明例及び比較例の破壊靭性(Fracture toughness)及び曲げ強度(Flexural strength)を測定して示すグラフである。
【0167】
図20を参照すると、発明例は、比較例に比べて破壊靭性が高いことが確認できる。これは、グラフェンを含む第2誘電体層が高い破壊靭性を有するためであり、これにより、グラフェンを含む第2誘電体層が積層型電子部品に発生したクラックの伝播を抑制できることが確認できる。
【0168】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当該技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0169】
なお、「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態に説明された事項が他の一実施形態において説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【符号の説明】
【0170】
100、200、300、400、500:積層型電子部品
110、210、310、410、510:本体
111:第1誘電体層
112:第2誘電体層
113、114、313、314、513、514:カバー部
115、116:マージン部
121、122、421、422:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:第1電極層
131b、132b:第2電極層
140:中間層
11a、12a:結晶粒
11b、12b:結晶粒界
12c:グラフェン
M1、M2:サイドマージン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20