(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056515
(43)【公開日】2023-04-19
(54)【発明の名称】モデル化オブジェクトの設計
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20230412BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20230412BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022161852
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21306414
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(71)【出願人】
【識別番号】511027965
【氏名又は名称】エコール ポリーテクニーク
(71)【出願人】
【識別番号】508157749
【氏名又は名称】シーエヌアールエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド・ヘンリー ガルニエ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ピエール シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン ロメール
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146EA09
5B146EA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、特に、物性に対して異方性を有する材料に形成された機械部品を表すモデル化オブジェクトの設計コンピュータ実装方法、プログラム、記憶媒体及びシステムを提供する。
【解決手段】方法は、第1のメッシュと、モデル化オブジェクトの少なくとも境界を表す密度場と、所望の異方性挙動を表す配向テンソル場とを提供することと、i番目のメッシュ上の異方性反応拡散パターンを計算することと、を含む。第iのメッシュは、第1のメッシュよりも高い解像度を有し、モデル化オブジェクトの境界によって境界付けられる。方法はさらに、ブール演算によって、第2のメッシュ上に投影された計算された異方性反応拡散パターンを結合することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物性について異方性を有する材料で形成された機械部品を表すモデル化オブジェクトを設計するコンピュータ実装方法であって、
第1のメッシュ、
モデル化オブジェクトの少なくとも境界を表す密度場、及び
所望の異方性挙動を表す配向テンソル場
を提供するステップと、
前記配向テンソル場の各第iの主方向について、第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターン(Si)を計算するステップであって、当該第iのメッシュは、前記第1のメッシュよりも高い解像度を有し、モデル化オブジェクトの境界によって境界が決められるステップと、
ブール演算によって、第2のメッシュ上に投影された計算された異方性反応拡散パターンの結合をするステップと
を有するコンピュータ実装方法。
【請求項2】
第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップが、
前記配向テンソル場に基づいて異方性拡散テンソル(σi)を計算するステップと、
反応-拡散系に基づいて第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップであって、当該反応-拡散系は計算された異方性拡散テンソルに依存する拡散を含むステップと
を含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記反応-拡散系に基づいて前記第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップが、
前記反応-拡散系を満足する第iのメッシュ上の数値の分布である、第iのメッシュ上の反応-拡散系の解を計算するステップと、
等値面値に対する計算された解の等値面を計算することによって前記パターンを計算するステップと
を含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記第iのメッシュの要素ごとに、隣接する要素における配向テンソル場の配向に対する要素における配向テンソル場の配向のアライメントを表す物体材料マップ(Γ)を提供するステップと、
前記反応-拡散系に基づいて第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターン(Si)を計算するステップが、
前記反応-拡散系に基づいて前記第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップであって、前記反応-拡散系が、計算された異方性拡散テンソルに依存する拡散と、提供された物体マップ(Γ)に依存する反応とを含むステップ
を含む、請求項2又は3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記反応-拡散系が、グレイ-スコットモデルの形式であり、主方向iについて、
【数1】
ここで、σinは異方性拡散テンソルであり、dは等方性拡散パラメータであり、∇は勾配演算子であり、∇
2はラプラス演算子であり、
【数2】
は、x∈Ωdの場合は値1であり、それ以外はゼロであり、λ、F及びkは反応パラメータである
請求項2~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターン(Si)を計算するステップが、前記第iのメッシュ上の前記配向テンソル場及び前記密度場のアップサンプリングをさらに含む
請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記モデル化オブジェクトが3Dモデル化オブジェクトであり、
前記ブール演算による前記結合が、第iのメッシュ上の第1のパターン(Si)と第jのメッシュ上の第2のパターン(Sj)との接合の集合の分離(ここでi≠jである)を計算するステップ
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記モデル化オブジェクトが、2Dモデル化オブジェクトであり、
前記ブール演算による前記結合が、第iのメッシュ上の第1のパターン(Si)と第jのメッシュ上の第2のパターン(Sj)との分離(ここでi≠jである)を計算するステップを含む
請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記第1のメッシュが有限要素メッシュであり、
前記密度場を提供することが、前記第1のメッシュに関連するデータを提供するステップを含み、前記データが、
1つ以上のそれぞれの荷重ケースを形成する1つ以上の力、
一つ以上の境界条件、
材料に関連する1つ又は複数のパラメータ、及び
有限要素メッシュ内の材料の大域的量に対する大域的量制約
を含む
請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記密度場を提供するステップが、さらに、
前記第1のメッシュに基づいて、かつ第1のメッシュに関連付けられたデータに基づいてトポロジー最適化を実行し、それにより密度場を取得し、前記密度場が、3Dモデル化オブジェクトの材料量の分布をさらに表す
請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記配向テンソル場を提供するステップが、前記配向テンソル場の各ロケーションについて、
前記密度場と、前記第1のメッシュに関連するデータとに基づいて、局所応力テンソルを計算するステップと、
前記局所応力テンソル場に基づいて位置における配向テンソル場を計算するステップと
を含む、請求項9又は10に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記配向テンソル場を計算するステップが、
前記局所応力テンソルの主固有ベクトルに基づく第1の配向を計算するステップと、
主固有ベクトル及び局所応力テンソルに基づいて1つ又は複数の他の配向を計算するステップと
第1の配向及び1つ又は複数の他の配向に基づいて配向テンソル場を計算するステップと
を含む、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
請求項13に記載のコンピュータプログラムが記録されたメモリに結合されたプロセッサを含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータプログラム及びシステムの分野に関し、より具体的には、物性に関して異方性挙動を有する材料に形成された機械的部品を表すモデル化オブジェクトを設計するための方法、システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の設計、エンジニアリング及び製造のために、多数のシステム及びプログラムが市場に提供されている。CADはコンピュータ支援設計の頭字語であり、例えば、オブジェクトを設計するためのソフトウェアソリューションに関する。CAEはコンピュータ支援エンジニアリングの頭字語であり、例えば、将来の製品の物理的挙動をシミュレートするためのソフトウェアソリューションに関連する。CAMはコンピュータ支援製造の頭字語であり、例えば、製造処理及び動作を定義するためのソフトウェアソリューションに関する。そのようなコンピュータ支援設計システムでは、グラフィカルユーザインターフェースは、これらの技術(CAD、CAE、CAM)の効率に関して役割を果たすことができる。これらの技術は、製品ライフサイクル管理(PLM)システム内に組み込まれてもよい。PLMとは、企業が製品データを共有し、共通の処理を適用し、企業知識を活用して、長期的な企業のコンセプトを越えて、コンセプトから生涯にわたる製品の開発に役立てることを支援するビジネス戦略のことをいう。ダッソーシステムズにより、CATIA(TM)、ENOVIA(TM)、及びDELMIA(TM)の下で提供されるPLMソリューションは、製品エンジニアリング知識を編成するエンジニアリングハブ、製造エンジニアリング知識を管理する製造ハブ、及びエンジニアリングハブと製造ハブの両方への企業統合及び接続を可能にするエンタープライズハブを提供する。すべてのシステムは、製品、プロセス、リソースをリンクするオープンオブジェクトモデルを提供し、最適化された製品定義、製造準備、及び製造(生産)を推進する動的で知識ベースの製品作成及び意思決定サポートを可能にする。
【0003】
このような工業デザインにおいて、物性に対して異方性を有する材料に形成された機械部品を表すモデル化オブジェクトを設計することが重要になってきている。文献Wu et al., "Topology optimization of multi-scale structures: a review", Structural and Multidisciplinary Optimization, 63, 2021, pp. 1455-1480は、マルチスケール構造を設計するためのトポロジー最適化(TO)をレビューしており、文献Choi et al., "Topology optimization using a reaction-diffusion equation", Computer Methods in Applied Mechanics and Engineering, 200(29-32), 2011, pp. 2407-2420は、反応-拡散(RD)式に基づく構造トポロジー最適化法を提示しており、ここでトポロジー最適化の設計感度は、反応-拡散式における反応項として直接採用される。
【0004】
しかしながら、公知の従来技術では、高効率の異方性配向微細構造からなる設計を作成することはできない。特に、既知の先行技術は、(例えば、ある幾何学的制約を満たすために)局所パターンの制御を提供せず、又は製造の信頼性を改善しない。さらに、従来技術は、古典的な等方性材料と比較して、特に調整された異方性微細構造の高い物理的性能を提供しない。加えて、公知の先行技術は、高度に詳細な設計の迅速な生成を提供しない。
【0005】
この文脈内で、物性に関して異方性挙動を有する材料内に形成された機械的部品を表すモデル化オブジェクトを設計するための改善された方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、物性に対して異方性を有する材料に形成された機械的部品を表すモデル化オブジェクトを設計するコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、第1のメッシュと、モデル化オブジェクトの少なくとも境界を表す密度場と、所望の異方性挙動を表す配向テンソル場とを提供するステップを含む。この方法は、さらに、第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターンを計算するステップを含み、第iのメッシュは、第1のメッシュよりも高い解像度を有し、モデル化オブジェクトの境界によって境界付けられる。この方法は、ブール演算によって、第2のメッシュ上に投影された計算された異方性反応拡散パターンを結合することをさらに含む。
【0007】
この方法は、以下のうちの1つ又は複数を含むことができる:
第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップが、前記配向テンソル場に基づいて異方性拡散テンソル(σi)を計算するステップと、反応-拡散系に基づいて第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップであって、当該反応-拡散系は計算された異方性拡散テンソルに依存する拡散を含むステップとを含む。
前記反応-拡散系に基づいて前記第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップが、
前記反応-拡散系を満足する第iのメッシュ上の数値の分布である、第iのメッシュ上の反応-拡散系の解を計算するステップと、
等値面値に対する計算された解の等値面を計算することによって前記パターンを計算するステップと
を含む。
前記第iのメッシュの要素ごとに、隣接する要素における配向テンソル場の配向に対する要素における配向テンソル場の配向のアライメントを表す物体材料マップ(Γ)を提供するステップと、
前記反応-拡散系に基づいて第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターン(Si)を計算するステップが、
前記反応-拡散系に基づいて前記第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップであって、前記反応-拡散系が、計算された異方性拡散テンソルに依存する拡散と、提供された物体マップ(Γ)に依存する反応とを含むステップ
を含む。
前記反応-拡散系が、グレイ-スコットモデルの形式であり、主方向iについて、
【数1】
ここで、σinは異方性拡散テンソルであり、dは等方性拡散パラメータであり、∇は勾配演算子であり、∇
2はラプラス演算子であり、
【数2】
は、x∈Ωdの場合は値1であり、それ以外はゼロであり、λ、F及びkは反応パラメータである。
前記第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターン(Si)を計算するステップが、前記第iのメッシュ上の前記配向テンソル場及び前記密度場のアップサンプリングをさらに含む。
前記モデル化オブジェクトが3Dモデル化オブジェクトであり、前記ブール演算による前記結合が、第iのメッシュ上の第1のパターン(Si)と第jのメッシュ上の第2のパターン(Sj)との接合の集合の分離(ここでi≠jである)を計算するステップを含む。
前記モデル化オブジェクトが、2Dモデル化オブジェクトであり、前記ブール演算による前記結合が、第iのメッシュ上の第1のパターン(Si)と第jのメッシュ上の第2のパターン(Sj)との分離を計算するステップを含む。
前記第1のメッシュが有限要素メッシュであり、前記密度場を提供することが、前記第1のメッシュに関連するデータを提供するステップを含み、前記データが、
1つ以上のそれぞれの荷重ケースを形成する1つ以上の力、
一つ以上の境界条件、
材料に関連する1つ又は複数のパラメータ、及び
有限要素メッシュ内の材料の大域的量に対する大域的量制約
を含む。
前記密度場を提供するステップが、さらに、前記第1のメッシュに基づいて、かつ第1のメッシュに関連付けられたデータに基づいてトポロジー最適化を実行し、それにより密度場を取得し、前記密度場が、3Dモデル化オブジェクトの材料量の分布をさらに表す。
前記配向テンソル場を提供するステップが、前記配向テンソル場の各ロケーションについて、
前記密度場と、前記第1のメッシュに関連するデータとに基づいて、局所応力テンソルを計算するステップと、
前記局所応力テンソル場に基づいて位置における配向テンソル場を計算するステップと
を含む。
前記配向テンソル場を計算するステップが、
前記局所応力テンソルの主固有ベクトルに基づく第1の配向を計算するステップと、
主固有ベクトル及び局所応力テンソルに基づいて1つ又は複数の他の配向を計算するステップと
第1の配向及び1つ又は複数の他の配向に基づいて配向テンソル場を計算するステップと
を含む。
本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムがさらに提供される。
さらに、コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
さらに、メモリに結合されたプロセッサ及びを含むシステムが提供され、メモリは、その上に記録されたコンピュータプログラムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】方法の一例示的な実施のフローチャートを示す。
【
図3A】力及び境界条件、トポロジー最適化によって得られる密度場、主応力配向、及び物体材料マップを含む粗スケールグリッド上のカンチレバー2D問題の模式図を示す。
【
図3B】力及び境界条件、トポロジー最適化によって得られる密度場、主応力配向、及び物体材料マップを含む粗スケールグリッド上のカンチレバー2D問題の模式図を示す。
【
図3C】力及び境界条件、トポロジー最適化によって得られる密度場、主応力配向、及び物体材料マップを含む粗スケールグリッド上のカンチレバー2D問題の模式図を示す。
【
図3D】力及び境界条件、トポロジー最適化によって得られる密度場、主応力配向、及び物体材料マップを含む粗スケールグリッド上のカンチレバー2D問題の模式図を示す。
【
図4】配向され、十分に接続されたパターンについての反応-拡散方程式のパラメータのマップを示す。
【
図5A】カンチレバー2D問題のための応力配向構造を示す。
【
図5B】カンチレバー2D問題のための応力配向構造を示す。
【
図6A】本方法の実施例の適用によって設計された2D及び3D力インバータを示す。
【
図6B】本方法の実施例の適用によって設計された2D及び3D力インバータを示す。
【
図7】本方法の実施形態による力インバータの設計の時間発展を示す。
【
図8】システムのグラフィカルユーザインターフェースの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1のフローチャートを用いて、物性に対して異方性を有する材料に形成された機械的部品を表すモデル化オブジェクトを設計するコンピュータ実装方法が提案される。機械部品を表すモデル化オブジェクトは、機械部品を表すモデル化オブジェクトであってもよく、機械部品は、現実世界のデバイス上の動作部品である。この方法は、第1のメッシュと、モデル化オブジェクトの少なくとも境界を表す密度場と、所望の異方性挙動を表す配向テンソル場とを提供するステップ(S10)を含む。本方法は、配向テンソル場のそれぞれの第iの主方向について、第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターンを計算するステップ(S20)をさらに含む。第iのメッシュは、第1のメッシュよりも高い解像度を持ち、モデル化された対象の境界によって境界付けられる。この方法は、第2のメッシュ上に投影された計算された異方性反応拡散パターンをブール演算によって結合するステップ(S30)をさらに含む。
【0010】
これは、物性に関して異方性挙動を有する材料に形成された機械的部品を表すモデル化オブジェクトを設計するための改良された方法を構成する。特に、この方法は、マルチスケールワークフローを使用することによって設計の効率を改善する。そのようなマルチスケールワークフローでは、密度場は、第1のメッシュ上に設計されたオブジェクトの少なくとも境界を提供することによって、初期設計を提供することができる。そのような第1のメッシュは、粗いメッシュであってもよく、したがって、初期設計を提供することは、計算上効率的である。次に、第1のメッシュよりも高い解像度を有し、提供された密度場によって表されるモデル化オブジェクトの境界によって境界される第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターンを計算することによって設計を実行する。したがって、本方法は、初期設計によって境界付けられた領域上のみにパターンを計算し、より高い解像度のメッシュを使用して、それによって初期設計を精緻化する。そのような改良は、高解像度計算が、密度場によって提供されるより良好な初期条件(すなわち、初期推測)から、及び初期設計の領域(すなわち、より小さい設計空間)上で開始されるので、計算効率がよい。言い換えれば、本方法は、より高い解像度のメッシュ上のパターンを計算することによって、モデル化オブジェクト(密度場によって提供される)のための所与の設計を改良する、すなわち、局所的な微細構造を得ること、及び初期設計に基づいてモデル化オブジェクトのための新しい設計を得ることを可能にする。
【0011】
加えて、そのようなマルチスケールワークフローは、密度場を提供するために、文献における任意の既知の方法を使用することを可能にする。例では、提供される密度場は、トポロジー最適化の結果であってもよく、又はユーザ(例えば、設計者)によって設計されたオブジェクトであってもよく、次いで、方法は、各主方向について異方性反応拡散パターンを計算し、パターンを組み合わせることによって、モデル化オブジェクトを設計してもよい。
【0012】
加えて、そのようなマルチスケールワークフローは、方法が、最初に提供された設計(提供された密度場によって表される)を自動完了及び/又は高速編集することを可能にする。例では、ユーザ(例えば、設計者)は、いくつかの領域を対話的に消去するか、又は制約として作用するガイド形状を描画することができ、次いで、方法は、消去された領域内の各主方向について異方性反応拡散パターンを計算することによって、モデル化オブジェクトを再設計し、モデル化オブジェクトを更新するためにパターンを結合することができる。これにより、設計方法の人間工学が改善される。
【0013】
さらに、この方法は、設計されたモデル化オブジェクトを得るために、それらを組み合わせる前に、配向テンソル場の主方向ごとに反応拡散パターンを計算する。これは、方法が、各方向についてモデル化オブジェクトを設計することができ、したがって異方性構造を得るので、解決策を改善する。このような特別に調整された異方性微細構造は、古典的な等方性材料と比較して高い物理的性能を有する。
【0014】
この方法は、異方性反応-拡散パターンを結合することによってモデル化オブジェクトを設計する。反応-拡散パターンは局所パターンであり、したがって、本方法は、例えば、ある幾何学的制約を満たすために、又は製造の信頼性を改善するためにモデルを適応させるために、モデル化オブジェクトの局所パターンを制御することができる。これは、設計されたオブジェクトのいくつかの標的領域において、例えば配向場における特異点の近くで、改善された規則性を有する構造を設計することをさらに容易にする。このような規則性は、例えば付加製造によって、設計されたオブジェクトの製造を改善する。これは、以下に説明するように、CADを製造する分野に特に関連する。
【0015】
この方法は、コンピュータで実施される。これは、該方法のステップ(又は実質的に全てのステップ)が少なくとも1つのコンピュータ又は任意のシステムによって実行されることを意味する。したがって、本方法のステップはコンピュータによって、場合によっては完全に自動的に、又は半自動的に実行される。例では、方法のステップのうちの少なくともいくつかのトリガがユーザ/コンピュータ対話を介して実行されてもよい。必要とされるユーザ/コンピュータ対話のレベルは予測される自動化のレベルに依存し、ユーザの希望を実施する必要性とバランスをとることができる。例では、このレベルがユーザ定義及び/又は事前定義されてもよい。
【0016】
この方法のコンピュータ実装の典型的な例は、この目的のために適合されたシステムを用いて方法を実行することである。システムはメモリに結合されたプロセッサと、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)とを備えることができ、メモリには、本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが記録されている。メモリはまた、データベースを記憶してもよい。メモリはそのような記憶装置に適合された任意のハードウェアであり、場合によっては、いくつかの物理的に別個の部分(例えば、プログラムのための部分、及び場合によってはデータベースのための部分)を備える。
【0017】
この方法は一般に、モデル化オブジェクトを操作する。モデル化オブジェクトは、例えばデータベースに格納されたデータによって定義される任意のオブジェクトである。拡張により、表現「モデル化オブジェクト」は、データ自体を指定する。システムのタイプに応じて、モデル化オブジェクトは、異なる種類のデータによって定義されてもよい。システムは、実際にはCADシステム、CAEシステム、CAMシステム、PDMシステム、及び/又はPLMシステムの任意の組み合わせであってもよい。これらの異なるシステムでは、モデル化オブジェクトが対応するデータによって定義される。したがって、CADオブジェクト、PLMオブジェクト、PDMオブジェクト、CAEオブジェクト、CAMオブジェクト、CADデータ、PLMデータ、PDMデータ、CAMデータ、CAEデータについて言うことができる。しかしながら、モデル化オブジェクトはこれらのシステムの任意の組み合わせに対応するデータによって定義されてもよいので、これらのシステムは他のシステムのうちの1つを排他的にするものではない。したがって、システムは以下に提供されるそのようなシステムの定義から明らかになるように、CADシステム及びPLMシステムの両方であってもよい。
【0018】
CADシステムとは、さらに、CATIAのような、モデル化オブジェクトのグラフィック表現に基づいてモデル化オブジェクトを少なくとも設計するように適合された任意のシステムを意味する。この場合、モデル化オブジェクトを定義するデータは、モデル化オブジェクトの表現を可能にするデータを含む。CADシステムは例えば、ある場合には、顔又は表面を有するエッジ又は線を使用してCADモデル化オブジェクトの表現を提供することができる。線、エッジ、又は表面は様々な方法、例えば、不均一有理Bスプライン(NURBS)で表すことができる。具体的には、CADファイルは仕様を含み、そこからジオメトリーを生成することができ、これにより表現を生成することができる。モデル化オブジェクトの仕様は、単一のCADファイル又は複数のCADファイルに格納することができる。CADシステム内のモデル化オブジェクトを表すファイルの典型的なサイズは、部品当たり1メガバイトの範囲内である。そして、モデル化オブジェクトは、典型的には何千もの部品のアセンブリであってもよい。
【0019】
CADの文脈において、モデル化オブジェクトは、典型的には、2D又は3Dであってもよい。3Dモデル化オブジェクトは、例えば、部品もしくは部品のアセンブリ、又は場合によっては製品のアセンブリなどの製品を表すことができる。2Dモデル化オブジェクトは、部品もしくは部品のアセンブリ、又は場合によっては製品のアセンブリなどの製品の簡略化された表現であってもよい。例えば、2Dモデル化オブジェクトは、曲線(例えば、押出軸)に沿って押出された3D製品のプロファイルを表すことができる。そのような2D表現は、製品の物性又は物理的挙動を効率的に表すことができる。「モデル化オブジェクト」とは、その2D又は3D表現を可能にするデータによってモデル化される任意のオブジェクトを意味する。2D又は3D表現は、全ての角度から部品を見ることを可能にする。例えば、2D又は3Dモデル化オブジェクトは、2D又は3Dが表されるとき、その軸のいずれかの周りで、又は表現が表示される画面内の任意の軸の周りで取り扱われ、回転されてもよい。2D又は3D表現の表示は、設計を容易にする(すなわち、設計者が統計的にそのタスクを達成する速度を増加させる)。これは、製品の設計が製造ステップの一部であるため、産業界における製造ステップを高速化する。
【0020】
モデル化オブジェクトは、例えば、(例えば、機械的である)部品又は部品のアセンブリ(又は等価的に部品のアセンブリ、部品のアセンブリは、方法の観点から部品自体見ることができる、又は方法は、アセンブリの各部品に独立して適用することができる)、又はより一般的には任意の剛体アセンブリ(例えば、可動機構)などのCADソフトウェアソリューション又はCADシステムを用いて、その仮想設計の完了後に現実世界で製造されるべき生成物のジオメトリーを表すことができる。CADソフトウェアソリューションにより、航空宇宙、建築、建設、消費財、ハイテク機器、産業機器、輸送、海洋、及び/又は沖合の石油/ガス生産又は輸送など、さまざまな産業分野で製品を設計することが可能になる。よって、3Dモデル化オブジェクトは、任意の機械部品であり得る産業製品であってよく、例えば、陸上車両の部品(例えば、自動車及び軽トラック機器、レーシングカー、オートバイ、トラック及びモーター機器、トラック及びバス、列車などを含む)、航空車両の部品(例えば、機体機器、航空宇宙機器、推進機器、防衛製品、航空機器、宇宙機器などを含む)、海上車両の部品(例えば、海軍機器、商用船、沖合機器、ヨット及び作業船、船舶機器などを含む)、一般的な機械部品(例えば、産業用製造機械、重機用機械又は機器、設置機器、産業用機器製品、金属加工製品、タイヤ製造製品などを含む)、電気機械又は電子部品(例えば、家電機器、セキュリティ及び/又は制御及び/又は計測製品、コンピューティング及び通信機器、半導体、医療装置及び機器などを含む)、消費財(例えば、家具、家庭及び庭用製品、レジャー用品、ファッション製品、耐久消費財小売業者の製品、織物類小売業者の製品などを含む)、パッケージ(例えば、食品及び飲料及びタバコ、美容及びパーソナルケア、家庭用品の包装などを含む)である。
【0021】
モデル化オブジェクトは、例えば、機械部品などの現実世界からのオブジェクトを表す、3D実世界オブジェクトの離散的な幾何学的表現を形成することができる。離散的な幾何学的表現は、2D又は3Dであってもよい。離散的な幾何学的表現は、データの離散的なセットを含むデータ構造である。各データは、同等に、離散要素と呼ばれることがある。各データは、3D空間(離散的幾何学的表現が3Dである場合)又は2D空間(離散的幾何学的表現が2Dである場合)に配置されたそれぞれの幾何学的実体を表す。それぞれの幾何学的実体は、3Dオブジェクトのそれぞれの位置(言い換えれば、3Dオブジェクトによって表される物体を構成する物質のそれぞれの一部)又はその2D表現を表す。幾何学的エンティティの集合(すなわち、和集合又は並置)は、全体として、3Dオブジェクト又はその2D表現を表す。離散的な幾何学的表現は、例では、100、1000、又は10000よりも高い、いくつかのそのようなデータを含むことができる。
【0022】
離散的な幾何学的表現は、例えば点群であってもよく、各々の幾何学的エンティティは点である。離散的な幾何学的表現は、代替的に、メッシュであってもよく、各幾何学的エンティティは、メッシュ要素(例えば、タイルもしくは面、又は体積)である。メッシュは、規則的であっても不規則であってもよい(すなわち、同じタイプの面からなるか、又は、同じタイプの面から構成されない)。メッシュは、多角形メッシュ、例えば三角形メッシュ又は多面体メッシュ、例えば四面体メッシュであってもよい。メッシュは、点群から、例えば、点群を三角測量することによって(例えば、ドローネー三角測量によって)得ることができる。
【0023】
PLMシステムとは、さらに、物理的に製造された製品(又は製造される製品)を表すモデル化オブジェクトの管理に適合された任意のシステムを意味する。したがって、PLMシステムでは、モデル化オブジェクトが物理的オブジェクトの製造に適したデータによって定義される。これらは、典型的には寸法値及び/又は公差値であってもよい。オブジェクトを正確に製造するためには、このような値を有することが実際に好ましい。
【0024】
CAMソリューションとは、さらに、製品の製造データを管理するように適合された任意のソリューション、ハードウェアのソフトウェアを意味する。製造データは一般に、製造する製品、製造ステップ、及び必要な資源に関するデータを含む。CAMソリューションは製品の製造処理全体を計画し、最適化するために使用される。例えば、CAMユーザに、製造プロセスの実現可能性、製造プロセスの継続時間、又は製造プロセスの特定のステップで使用することができる特定のロボットなどのリソースの数に関する情報を提供することができ、したがって、管理又は必要な投資に関する決定を可能にする。CAMは、CAD処理及び潜在的CAE処理の後の後続処理である。このようなCAMソリューションは、ダッソーシステムズによってDELMIA(登録商標)の商標で提供されている。
【0025】
CAEソリューションとは、さらに、モデル化オブジェクトの物理的挙動の分析に適合された任意のソリューション、ハードウェアのソフトウェアを意味する。よく知られ、広く使用されているCAE技法は有限要素法(FEM)であり、これは、典型的にはモデル化オブジェクトを、物理的挙動を計算し、式によってシミュレートすることができる要素に分割することを含む。このようなCAEソリューションは、ダッソーシステムズによって、SIMULIA(登録商標)の商標で提供されている。別の成長するCAE技術は、CADジオメトリーデータなしで物理学の異なる分野からの複数の構成要素を構成する複雑なシステムのモデリング及び分析を伴う。CAEソリューションはシミュレーションを可能にし、したがって、製品の最適化、改善、及びバリデーションを生成することを可能にする。このようなCAEソリューションは、ダッソーシステムズによってDYMOLA(登録商標)の商標で提供されている。
【0026】
PDMは、製品データ管理を意味する。PDMソリューションとは、特定の製品に関連するすべてのタイプのデータを管理するように適合された任意のソリューション、ハードウェアのソフトウェアを意味する。PDMソリューションは、製品のライフサイクルに関与するすべての行為者(主にエンジニアだけでなく、プロジェクトマネージャー、ファイナンス担当者、販売担当者、及び購入者も含む)によって使用されてもよい。PDMソリューションは一般に、製品指向データベースに基づく。それは、行為者が彼らの製品に関する一貫性のあるデータを共有することを可能にし、したがって、行為者が異なるデータを使用することを防ぐ。このようなPDMソリューションは、ダッソーシステムズによってENOVIA(登録商標)という商標で提供されている。
【0027】
「モデル化オブジェクトの設計」は、モデル化オブジェクトを精緻化するプロセスの少なくとも一部である任意のアクション又は一連のアクションを示す。したがって、本方法は、モデル化オブジェクトをゼロから作成することを含むことができる。代替的に、方法は、以前に作成されたモデル化オブジェクトを提供することと、次いで、モデル化オブジェクトを修正することとを含んでもよい。モデル化オブジェクトの設計は、特に、CADを製造する分野、すなわち、設計プロセス及び製造プロセスを支援するためのソフトウェアソリューションに関連し、それによって、目的は、設計されたモデル化オブジェクトに対応する物理的製品を生成することである。この文脈において、モデル化オブジェクトは、その設計の下流で製造されてもよい製造製品を表す。したがって、方法は、そのような設計及び/又は製造ステップの一部であってもよい。本方法は、例えば、そのような設計及び/又は製造ステップを形成するか、又はその一部とすることができる。言い換えれば、本方法は、CADモデルが製造CADプロセスの後続のステップ(例えば、さらなる設計/編集動作、試験、製造及び/又はシミュレーション)で使用するために適合/取得/編集されるステップにおいて、製造CADプロセスに含まれてもよい。本方法は、本方法によって検出されたCAD特徴を使用する多くの他のアプリケーションに含まれてもよい。
【0028】
上述のように、方法は、製造プロセスに含まれてもよく、製造プロセスは、方法を実行した後に、モデル化オブジェクトに対応する物理的製品を生成することを含んでもよい。いずれの場合も、本方法によって設計されたモデル化オブジェクトは、製造オブジェクトを表すことができる。したがって、モデル化オブジェクトはモデル化された立体(すなわち、立体を表すモデル化オブジェクト)とすることができる。製造対象物は、部品などの製品、又は部品のアセンブリであってもよい。この方法はモデル化オブジェクトの設計を改善するので、この方法はまた、製品の製造を改善し、したがって、製造プロセスの生産性を増加させる。
【0029】
モデル化オブジェクトは、材料に形成された機械部品を表す。材料は、物性に関して異方性挙動を有する、すなわち、物性は、材料内の方向/配向に従って変化する。
【0030】
この方法は、ステップS10において、いくつかの入力を提供することを含む。ここで、入力について説明し、さらなる入力も提供されてもよいことを理解されたい。
【0031】
入力は第1のメッシュを含む。したがって、第1のメッシュが提供される(又は取得される)。第1のメッシュは、当技術分野で知られているように、有限要素メッシュ(FEメッシュ)であってもよい。第1のメッシュは、モデル化オブジェクトを含む空間を表す。FEメッシュは規則的であっても不規則であってもよい。通常のFEメッシュは、例えばトポロジー最適化の間、より容易な計算を可能にする。FEメッシュは、例えば、各有限要素が三角形又は長方形(メッシュが2Dである場合)、又は四面体又は六面体(メッシュが3Dである場合)である、任意のタイプのものであってもよい。FEメッシュを提供することは、モデル化オブジェクトを含むように構成された空間を定義することと、空間のメッシュ化とを含むことができる。本方法は、FEメッシュをユーザに表示することと、ユーザによって、トポロジー最適化の他の入力を定義することとを含むことができ、例えば、表示されたFEメッシュ上のグラフィカルユーザインタラクションによるものを含む。要素を定義することに関する「グラフィカルユーザインタラクション」とは、ここでは、設計者が触覚システム(例えば、マウス、又は感応/タッチスクリーンもしくは感応/タッチパッドなどのタッチデバイス)を使用して、表示部の1つ又は複数の位置を起動し、要素がどこに配置されるかを決定する、任意のユーザインタラクションを意味する。シーンのロケーションをアクティブにすることは、マウスのカーソルをその上に配置すること、又はその上でタッチを実行することを含んでもよい。起動後に実質的にリアルタイムで、定義された要素の表現を表示することができる。
【0032】
入力は、密度場をさらに含む。密度場は、モデル化オブジェクトの少なくとも境界を表す。モデル化オブジェクトの境界は、モデル化オブジェクトの限界を表し、内部及び外部点を定義し、内部点は、オブジェクトに属するものであり、外部点は、オブジェクトに属さないものである。例では、モデル化オブジェクトは、物体である3Dモデル化オブジェクトであり、モデル化オブジェクトの境界は、物体(例えば、オブジェクトの物質)に属し、物体の外側を指す点を定義する。例では、モデル化オブジェクトは、2D表面を制限する2Dモデル化オブジェクトであり、2D表面に属する内部点は、2Dモデル化オブジェクトを表す。
【0033】
例では、密度場は、モデル化オブジェクトの材料量の分布、すなわち、メッシュ上の材料の体積分率の値(たとえば、メッシュがFEメッシュであるときのメッシュの有限要素ごと)をさらに表してもよい。材料分布は、メッシュ上の材料の量(例えば、体積分率)の分布(すなわち、レイアウト)、すなわち、密度場であってもよい。上述のように、密度場は、トポロジー最適化の結果であってもよい。それ自体知られているように、トポロジー最適化は、目的関数を最適化するために、設計変数又は自由変数として、メッシュの各要素における材料量(例えば、体積分率)を変更/修正することによって、候補材料分布を探索することができる。例では、目的関数の自由変数は、メッシュ上の材料の量(例えば、体積分率)の分布(すなわち、レイアウト)に直接的であってもよい。目的関数は、材料パラメータに依存し得(すなわち、目的関数の固定変数は、材料パラメータを含み得る)、最適化は、グローバル量制約を含む制約(すなわち、制約付き最適化)の下で実行されてもよい。メッシュの各要素は、それぞれ値「0」及び「1」によって定義される、材料が空であるか又は材料が満たされているかを定義する所与の相対密度値を有し得る。さらに、最適化問題を連続的にするために、一般的なトポロジー最適化は、要素が0と1との間の任意の値をとることを可能にし得る。これは、「緩和」と呼ばれることがある。中間密度を有する要素の解釈はあいまいである可能性があるので、一般的なトポロジー最適化ワークフローは、それぞれ0又は1の下限及び上限を有する要素よりも、構造挙動のために中間要素密度が全体的に効率的でないように強制するペナルティ化アプローチを導入することができる。最適化は、当分野で知られている任意のアルゴリズム、例えば反復アルゴリズムに従って実行されてもよい。
【0034】
入力は、配向テンソル場をさらに含む。配向テンソル場は、所望の異方性挙動を表す。「所望の異方性挙動」とは、設計される物体が設計される条件に対応する、設計される物体の異方性を意味する。
【0035】
次に、ステップS20において、第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターンを、配向テンソル場の第iの主方向ごとに算出する。「主方向」とは、それ自体、配向テンソル場の固有値の方向、すなわち、配向テンソル場の主曲率に対応する方向を意味する。
【0036】
それぞれの第iのメッシュは、第1のメッシュよりも高い解像度を有する、すなわち、より多数のメッシュ要素を有する。たとえば、第1のメッシュは、離散的な幾何学的セル及びトポロジーカルセルを備えるFEメッシュであり、それぞれの第iのメッシュは、第1のメッシュのセルの数よりも大きい、いくつかの同様のセルを有する。
【0037】
それぞれの第iのメッシュは、モデル化された対象の境界によって境界付けられる。言い換えれば、各第iのメッシュは、第1のメッシュ内に包含され、第1のメッシュ及び第iのメッシュの境界は、一致し得る。したがって、それぞれの第iのメッシュは、第1のメッシュ上の密度場によって表されるモデル化オブジェクトの境界によって境界付けられた面積/体積内に、又はそれと一致して画定された面積/体積を有する。第iのメッシュのいずれも、上述したように、FEメッシュであってもよい。第iの主方向に対応するそれぞれの第iのメッシュは、第jの主方向に対応する第jのメッシュと同じであってもよい。例えば、全ての第iのメッシュは、同じメッシュであってもよい。「異方性反応-拡散パターン」とは、反応-拡散方程式の異方性系の解に対応するパターンを意味する。
【0038】
次に、ステップS30において、この方法は、ブール演算によって、第2のメッシュ上に投影された計算された異方性反応拡散パターンを結合する。ブール演算は、1つ又は複数の異方性反応拡散パターンの1つ又は複数の結合及び/又は分離を含むことができる。「第2のメッシュ上に投影される」とは、異方性反応拡散パターンの各々が第2のメッシュ上に投影されることを意味する。ブール演算は、次いで、投影されたパターンに適用されてもよい。第2のメッシュは、第iのメッシュのいずれであってもよい。例では、第2のメッシュは、上述のようなFEメッシュであってもよい。
【0039】
例えば、第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターンの計算は、配向テンソル場に基づいて異方性拡散テンソルを計算することを含むことができる。第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターンの計算は、反応-拡散系に基づいて第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターンを計算することをさらに含むことができる。反応-拡散系は、計算された異方性拡散テンソルに依存する拡散を含むことができる。
【0040】
例えば、反応-拡散系に基づく第iのメッシュ上の異方性反応-拡散系の計算は、第iのメッシュ上の反応-拡散系の解を計算することを含む。解は、反応-拡散系を満たす第iのメッシュ上の数値の分布であってもよい。「第iのメッシュ上の反応-拡散系の解を計算する」とは、第iのメッシュの要素ごとの値の分布から値を得ることを意味する。反応-拡散方程式の系は、時間依存(すなわち、過渡)の方程式の系であってもよい。例において、反応拡散の時間依存系の解は、方程式系の定常状態解であってもよい。時間依存方程式系の定常状態解は、1つ又は複数の収束基準を満たす解とすることができる。例では、1つ又は複数の収束基準は、2つの連続する解(すなわち、2つの連続する時間瞬間に対応する解)間の差(たとえば、密度場から計算された総質量の差)がしきい値よりも小さいときに満たされる。例では、しきい値は、0.1、0.05、又は0.01以下であってもよい。代替的又は追加的に、1つ又は複数の収束基準は、特定の数の解(たとえば、それぞれが時間瞬間に属する)が計算されるとき、又は特定の時間瞬間における解が計算された後に満たされる。さらに代替的に又は追加的に、1つ又は複数の収束基準は、ユーザの入力時に、たとえば、ユーザが、結果が画面上でユーザに示されるときに結果によって満たされるときに満たされる。
【0041】
反応-拡散系は、初期条件及び1つ又は複数の境界条件を含むことができる。したがって、反応-拡散系の解の計算は、初期条件及び境界条件にさらに基づく。
【0042】
例では、反応-拡散系に基づく異方性反応拡散パターンの計算は、等値面値について計算された解の等値面を計算することによってパターンを計算することをさらに含むことができる。等値面は、一定値の点を表す2D又は3D表面(等価的に2Dにおける等値線又は等値曲線と呼ぶことができる)であり、言い換えれば、それは連続関数のレベルセットである。したがって、パターンは、それぞれの等値面の等値面値に有意に等しい値を有する点に対応し得る。「有意に等しい」とは、パターンの値が、それぞれの等表面値を含む範囲、例えば、sがそれぞれの等表面値であり、α及びβが2つの正の数である[s-α,s+β]であってもよいことを意味する。例において、α及びβは、等表面値の大きさ(例えば、等表面値の絶対値)の10パーセント又は5パーセント以下であってもよい。本方法は、コンピュータグラフィックス又は計算ジオメトリーの技術分野における任意の既知の方法(例えば、マーチングキューブアルゴリズム又はデュアルコンターニングアルゴリズム)に従って等値面を計算することができる。等値面値は、予め定義された値であってもよいし、方法によって設定された値であってもよい。例では、すべての等値面値(それぞれが主方向に対応する)は同じ値に等しくてもよい。あるいは、等値面値は、主方向ごとに異なる値に等しくてもよい。これにより、第iの主方向が第1主方向に沿って配向されているか否かに応じて、等値面を算出することができる。例では、本方法は、ブール演算を実行する前に等値面のシフトを実行することによって、第1の主方向に沿って配向されたパターンを拡大し、及び/又は第1の主方向に沿って配向されていないパターンを低減し得る。「シフトする」とは、それぞれの等値面の値をシフトすること、すなわち(例えば、閾値に従って)修正することを意味する。例では、シフトは、各方向に対して等値をシフトするために適用される2つの値の間の等値面を閾値化することを含むフィルタリングステップの一部であってもよい。これは、他の方向に沿って配向されたパターンと比較して、第1の主応力方向に沿って配向されたパターンを拡大することによって、設計されたモデル化オブジェクトの構造性能を向上させることによって、改善された解決策を構成する。特に、これは、各方向に沿ってパターンを厚くするか又は薄くすることを可能にする。
【0043】
実施例では、本方法は、物体材料マップを提供することをさらに含むことができる。本方法は、全ての第iのメッシュが同じメッシュである場合に、第iのメッシュ毎に物体材料マップを計算してもよいし、1つの物体材料マップのみを計算してもよい。(第iのメッシュ上の)物体材料マップは、第iのメッシュの要素ごとに、隣接する要素における配向テンソル場の配向に対する要素における配向テンソル場の配向のアライメントを表すことができる。本方法は、第1の主方向に対するアライメントを評価することができる。これにより、本方法は、特異性を有する配向テンソル場の領域を検出することができる。さらに、反応-拡散系は、計算された異方性拡散テンソルに依存する拡散と、提供された物体材料マップに依存する反応とを含むことができる。これにより、この方法は、配向テンソル場の特異点に対応する領域に異方性反応拡散パターンを充填することができる。
【0044】
例において、反応-拡散の系は、主方向iについて、形態のグレイ-スコットモデルである:
【数3】
ここで、σiは計算された異方性拡散テンソルであり、dは等方性拡散パラメータであり、∇は勾配演算子であり、∇
2はラプラス演算子であり、Ωdはモデル化オブジェクトの境界によって境界付けられた領域を表す。
【数4】
は、(σi(x)∇)と∇uiとの間のドット積を表す。さらに、
【数5】
は、x∈Ωdである場合に値1をとり、それ以外の場合はゼロである。λ、F、及びkは反応パラメータである。グレイ-スコットモデルは、計算された異方性拡散テンソルσiに依存する拡散を含むことができ、すなわち、第1の方程式(uiの時間的変化を支配する)の拡散は、計算された異方性拡散テンソルに等しい。異方性拡散テンソルを用いたグレイ-スコットモデルは、テンソル場の各主方向に沿って規則的及び局所的パターンを計算することを可能にする。
【数6】
は、モデル化オブジェクトの境界によって境界付けられた領域内のパターンを境界付け(すなわち、制限)することを可能にする。本方法は、例えば、パラメータF及びkの値を設定し、それぞれのパターンが配向され、十分に接続されるようにすることができる。例えば、F=0.0395であり、k=0.059である。この方法は、パラメータλ>0の値を、λ≫Fとなるように設定することができ、例えば、λはFの値の例えば、5倍、10倍、20倍、又は30倍の値である。特定の例では、F=0.0395であり、λ=1である。グレイ-スコットモデルは、初期条件及び境界条件を含むことができる。例では、
【数7】
グレイ-スコットモデルの境界条件は、周期的、対称的、及び/又は反射的、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。グレイ-スコットモデルの解は、種(例えばui及びvi)の密度が外部で殺されるので、境界条件の種類によっては著しく影響されない。パターンの計算は、グレイ-スコットモデルの計算された解uiの等値面を計算することができる。
【0045】
例えば、第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターンの計算は、第iのメッシュ上の配向テンソル場及び密度場のアップサンプリングをさらに含むことができる。例では、密度場及び/又は配向テンソル場を提供することは、そのようなアップサンプリングを備え得る。「配向テンソル場及び第iのメッシュ上の密度場のアップサンプリング」とは、より粗いメッシュ(すなわち、第1のメッシュ)上に提供された値から、より細かいメッシュ(すなわち、第iのメッシュ)上の配向テンソル場及び密度場のそれぞれの値を見つけることを意味する。それ自体知られているように、アップサンプリングは、サンプリングレート(例えば、メッシュ解像度)を増加させるためのプロセスである。本方法は、より高い解像度を有するメッシュ上の異方性反応拡散パターンを計算することができ、アップサンプリングは、本方法が、より高い解像度を有するメッシュ上のそれぞれの値を得ることを可能にする。例では、アップサンプリングは、σiの値及び上記で説明したグレイ-スコットモデルにおける(少なくともΩdの境界を表す)密度場を取得してもよい。反応-拡散系が、上述のように提供された物体材料マップに依存する反応を含む例では、本方法は、物体材料マップのアップサンプリングをさらに含むことができる。この方法は、任意の既知の方法に従ってアップサンプリングを実行することができる。例えば、密度場及び物体材料マップのアップサンプリングは、グリッドの解像度を増加させる(例えば、2倍にする)こと、ガウシアンフィルタのいくつかのステップ(例えば、4又は5ステップ)によって結果を平滑化すること、及び所望の解像度(すなわち、第iのメッシュの解像度)に達するまで処理を繰り返すことを含んでもよい。アップサンプリングの後に、くりこみステップを行うことができる。くりこみステップの存在は、入力フィールド(たとえば、アップサンプリングから生じたフィールド)の品質に依存し得る。例では、本方法は、平滑化ステップなしで、密度場及び物体材料マップのアップサンプリングと同じ配向テンソル場のアップサンプリングを実行することができる。
【0046】
モデル化オブジェクトが3Dモデル化オブジェクトである例示では、ブール演算による結合は、第iのメッシュ上の第1のパターン(Si)と第jのメッシュ上の第2のパターン(Sj)との結合の集合(i≠jである)の分離を計算することを含むことができる。結合のブール演算は、パターンの交差に対応することができ、一方、分離のブール演算は、パターンの結合に対応することができる。反応-拡散の系が上記で論じたグレイ-スコットモデルである例では、結合は、以下の形態のものであってもよい。
【数8】
ここで、
【数9】
は、それぞれ、任意選択で上述のようにシフトされた計算された解ui及びujである。
【0047】
モデル化オブジェクトが2Dモデル化オブジェクトである場合、ブール演算による結合は、i≠jの第jのメッシュ上の第1のパターン(Si)と、第2のパターン(Sj)との分離を計算することを含むことができる。反応-拡散の系が上記で論じたグレイ-スコットモデルである例では、結合は、以下の形態のものであってもよい。
【数10】
ここで、
【数11】
は、それぞれ、任意選択で上述のようにシフトされた計算された解u1及びu2である。
【0048】
例では、第1のメッシュは、有限要素メッシュであってもよく、密度場を提供することは、第1のメッシュに関連付けられたデータを提供することを含んでもよい。関連データは、機械部品の使用条件を表すデータを含むことができる。第1のメッシュに関連付けられたデータは、1つ又は複数のそれぞれの荷重ケースを形成する1つ又は複数の力を含んでもよい。言い換えれば、関連する(デジタル)データは、(例えば、ニュートン又はその倍数の大きさを有する)それぞれが適用可能であり、FEメッシュの1つ又は複数の有限要素にリンクされた(デジタル)ベクトルを含む。これらの(デジタル/仮想)力は、使用時に機械部品が受ける現実世界の負荷を表す。言い換えれば、それぞれの力がデータ中に存在するFEメッシュの1つ又は複数の有限要素の各々について、データは、前記1つ又は複数の有限要素に対応する位置における機械部品の材料が現実世界における対応する負荷を受けるという事実を表す。しかし、機械部品は、理論的には無数の負荷にさらされることがあるので、すべての負荷がデータ中に存在するデジタル力によって表されるわけではない。デジタル力は、負荷のセット全体、例えば、最上位のもの及び/又は最も代表的なものの制限を表すに過ぎない。デジタル力は、モデリング問題ごとに決定されてもよく、これらの現実世界力が最大の変形及び機械的応力を引き起こす傾向があるので、オブジェクトがその寿命中に受ける可能性がある最大(すなわち、最大の大きさ)現実世界力であるように選択されてもよい。CADを製造する分野からそれ自体知られているように、同時に加えられる1つ又は複数の現実世界の力のセットは、いわゆる荷重ケースにグループ化されてもよい。2つ以上の荷重ケースが存在する場合、それらは、必ずしも機械部品に同時に印加されるとは限らず、互いに蓄積/補償することができない。産業上の問題は、例えば、1~12個の荷重ケースを有することがある。例では、ユーザは、FEメッシュのグラフィカルユーザインタラクション有限要素を介して選択し、次いで、それに適用可能な力を指定することができる。言い換えれば、荷重ケースは、一度に物理オブジェクトに作用する実世界の荷重/力のセットを含むことができる。モデルは、異なる時間に異なる荷重ケースを経験することができる(例えば、突風にさらされる建物を考慮する)。したがって、関連データ内のデジタル力は、同時に物理的オブジェクトに加えられるいくつかの現実世界の力、すなわち、負荷の場合を表してもよい。
【0049】
第1のメッシュに関連付けられたデータは、1つ又は複数の境界条件をさらに含んでもよい。境界条件は、モデル化オブジェクトの境界に対する制約である。各境界条件は、メッシュの1つ又は複数の有限要素に適用され、リンクされ、機械部品が使用される境界に対するそれぞれの制約を表す。境界条件は、等価的に運動学的制約と呼ばれ得る。言い換えれば、各境界条件は、前記1つ以上の有限要素に対応する位置における機械部品の材料が、例えばディリクレ境界条件を使用して、その変位に対する制約を受けるという事実を表す。要素は、平面に沿って、曲線に沿って、軸に沿って/軸の周りに、又は点の周りに(とりわけ)拘束されたその変位を有することができ、及び/又はその変位は、並進のみ、回転のみ、又は並進及び回転の両方において拘束されることができる。並進及び回転の両方の点に拘束される変位の場合、要素は、3D又は2D空間に固定され、「クランプされる」と呼ばれる。しかしながら、要素は、平面に沿って並進するように拘束されるが、前記平面上で自由に移動する(例えば、軸受に取り付けられた物体に属する場合)、軸に沿って並進するが、前記軸上で自由に移動する(例えば、ピストン内で)、又は軸(例えば、ロボットアームの関節)の周りで回転する、その変位を有することができる。例では、境界条件は、すべての制約された境界を表す。言い換えれば、最終的に制約される(例えば、固定されたままである)材料を含むことが意図されるFEメッシュの各有限要素について、境界(例えば、クランプ)条件が、この事実をトポロジー最適化に統合するために関連付けられ得る。例では、ユーザは、FEメッシュのグラフィカルユーザインタラクション有限要素を介して選択し、次いで、境界条件がそれに適用可能であることを指定することができる。例では、機械部品の1つ又は複数の制約された境界は、1つ又は複数の固定された境界(すなわち、前記1つ又は複数の境界における材料は移動できない)を含むか、又はそれからなり、対応する1つ又は複数の境界条件は、クランプ条件である。
【0050】
第1のメッシュに関連するデータは、材料に関連する1つ又は複数のパラメータをさらに含んでもよい。これらの材料パラメータは、特に、材料の物性、例えば、物性に関する材料の特性を表してもよい。材料パラメータは、例えば、物性に関する材料の構成則に関連し得る。例えば、材料パラメータは、構成則に関連する任意の物理量を含むことができる。例では、ユーザは、材料(例えば、木材、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックマトリックス材料、又はアルミナマトリックス材料などの積層体及び/又は複合体)を、例えば、リストからの選択によって指定することができ、及び/又はシステムは、材料パラメータを自動的に決定し、及び/又は、例えば、1つ又は複数の式及び/又はデータベースに基づいて、その材料パラメータの選択をユーザに提案することができる。材料は、任意の材料、例えば、金属(例えば、鋼、銀、金、チタン)、プラスチック(ナイロン、ABS、ポリカーボネート、樹脂)、セラミック、又は複合材料などの物体及び/又は等方性材料であってもよい。物理的特性は剛性であってもよく、構成則は、機械学の分野からそれ自体知られているように、応力と歪みとの構成関係として剛性を表してもよい。剛度は、ヤング率、ポアソン比、及び、それ自体が機械学の分野から知られているようなせん断弾性率に依存し得る。
【0051】
データは、有限要素メッシュ内の材料の大域的量に対する大域的量制約をさらに含むことができる。大域的量制約は、FEメッシュ内の材料の大域的量に対するものである。言い換えれば、大域的量制約は、FEメッシュ全体における材料の総量の値を制限する。大域的量制約は、例えば、材料で充填されてもよい(全体の)FEメッシュの画分の境界、例えば、前記画分の上限として提供されてもよい。あるいは、グローバル量制約は、境界ではなく、到達されなければならない値を提供することができる。しかしながら、トポロジー最適化が実行される例では、前記トポロジー最適化は、最適化された結果において利用可能な限り多くの材料を使用する傾向がある目的関数を最適化することができ、そのような等式制約を上限制約と等価にする。全ての場合において、画分は、体積画分(このような場合、「グローバル体積制約(Global Volume Constraint)」のように、GVCとも呼ばれる)であってもよい。他の例では、大域的量制約は、材料の重量を表す値を含んでもよい。
【0052】
例では、密度場を提供することは、第1のメッシュに基づいて、かつ第1のメッシュに関連付けられたデータに基づいてトポロジー最適化を実行すること、したがって、密度場を取得することをさらに含んでもよい。言い換えれば、トポロジー最適化を実行することにより、密度場が得られる。この方法は、任意の既知の方法に従って位相最適化を実行することができる。上述のように、密度場は、モデル化オブジェクトの少なくとも境界を表す。
【0053】
例では、配向テンソル場を提供することは、配向テンソル場の各ロケーションについて、密度場と第1のメッシュに関連付けられたデータとに基づいて局所応力テンソルを計算することを備え得る。配向テンソル場を提供することは、局所応力テンソル場に基づいて、位置における配向テンソル場を計算することをさらに含んでもよい。本方法は、任意の既知の方法、例えば有限要素解析を使用して、局所応力テンソルを計算することができる。計算された局所応力テンソルは、対称的現実テンソルとすることができ、したがって、例えば正規直交基底で対角化することができる。これは、(2Dで2つ、3Dで3つの)垂直主方向を抽出することを可能にし、これらの主方向は、次いで、各方向上の異方性反応拡散パターンを計算するための異方性方向として使用される。
【0054】
例では、配向テンソル場の計算は、局所応力テンソルの主固有ベクトルに基づいて第1の配向を計算することを含むことができる。それ自体知られているように、主固有ベクトルは、最大の大きさの固有値(すなわち、最大の絶対固有値)に対応する固有ベクトルである。配向テンソル場の計算は、主固有ベクトル及び局所応力テンソルに基づいて1つ又は複数の他の配向を計算することをさらに含むことができる。モデル化オブジェクトが2Dモデル化オブジェクトである例では、本方法は、主固有ベクトルに垂直である1つ以上の他の方向を計算することができる。モデル化オブジェクトが3Dモデル化オブジェクトである例では、本方法は、局所応力テンソルの第2及び第3の固有ベクトルとして2つの他の配向を計算することができる(任意選択で、それぞれの固有値の大きさによってソートされる)。本方法は、他の向きの各々が、各フィールド内のベクトル間の最大アライメントを有する2つのベクトルフィールドを記述するように、向きを計算することができる。代替的に、又は第2及び/又は第3の固有ベクトルが低レベルの応力に対応する例では、すなわち、第2及び第3の固有ベクトルの各々についての対応する固有値が小さい大きさ(例えば、最大の大きさの固有値の10パーセント又は5パーセントよりも小さい)とき、方法は、第1の配向と一定のベクトル(例えば、標準基底)との間のクロス積によって、第2及び第3の配向を生成し得る。これは、計算された配向テンソル場のコヒーレンスを改善する。3次元の場合、最後の2つのベクトルフィールドは、それらの実際の手段大域的配向とのそれらの整列に従ってソートされてもよい。言い換えれば、もし、v1(x)及びv2(x)がxに位置する要素の最後の2つの固有ベクトルであり、かつ、
【数12】
がグローバル平均固有ベクトルである場合、v1(x)及びv2(x)は、もし(v1(x),v2(x))がより
【数13】
と足並みを揃えることが発見された場合、例えば、
【数14】
である場合、v1(x)及びv2(x)は入れ替えられる。さらに代替的に、配向テンソル場を提供することは、目的関数に関して第1のメッシュ上に分布される配向場を最適化することを含んでもよい。目的関数は、物性に関して配向連続性に報酬を与えることができる。そのような最適化は、第1のメッシュと、第1のメッシュに関連付けられたデータとに基づき得る。配向場のそのような最適化は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月16日に出願された欧州特許出願(出願番号EP19306655.2)に開示された3Dモデル化オブジェクトを設計するための方法に従って実行されてもよい。
【0055】
図8はシステムのGUIの一例を示し、システムはCADシステムである。特に、トポロジー最適化の方法の出力は、ユーザがその上で設計エディションを実行できるように、GUI2100にインポートされてもよい。GUI2100は、標準的なメニューバー2110、2120、並びに底部及び側部ツールバー2140、2150を有する、典型的なCAD様インターフェースであってもよい。このようなメニューバー及びツールバーはユーザが選択可能なアイコンのセットを含み、各アイコンは当技術分野で知られているように、1つ又は複数の操作又は関数に関連付けられている。これらのアイコンのいくつかは、GUI2100に表示された3Dモデル化オブジェクト2000を編集及び/又は作業するように適合されたソフトウェアツールに関連付けられる。ソフトウェアツールは、ワークベンチにグループ化することができる。各ワークベンチは、ソフトウェアツールの部分集合を含む。特に、ワークベンチの1つは、モデル化された製品2000の幾何学的特徴を編集するのに適した編集ワークベンチである。動作中、設計者は例えば、オブジェクト2000の一部を事前に選択し、次いで、適切なアイコンを選択することによって、動作(例えば、寸法、色などを変更する)又は幾何学的制約を編集することができる。例えば、典型的なCAD動作は、画面上に表示される3Dモデル化オブジェクトの打ち抜き加工又は折り畳みのモデル化である。GUIは例えば、表示された製品2000に関連するデータ2500を表示することができる。図の例では「特徴木」として表示されるデータ2500、及びそれらの3D表現2000はブレーキキャリパ及びディスクを含むブレーキアセンブリに関する。GUIは編集された製品の動作のシミュレーションをトリガするために、又は表示された製品2000の様々な属性をレンダリングするために、例えば、オブジェクトの3D配向を容易にするための様々なタイプのグラフィックツール2130、2070、2080をさらに示すことができる。カーソル2060はユーザがグラフィックツールと対話することを可能にするために、触覚デバイスによって制御されてもよい。
【0056】
図9は、システムがクライアントコンピュータシステム、例えばユーザのワークステーションであるシステムの一例を示す。
【0057】
この例のクライアントコンピュータは、内部通信バス1000に接続された中央処理装置(CPU)1010と、やはりバスに接続されたランダム・アクセス・メモリ(RAM)1070とを備える。クライアントコンピュータには、さらに、BUSに接続されたビデオランダムアクセスメモリ1100に関連するグラフィカル・プロセッシング・ユニット(GPU)1110が設けられている。ビデオRAM1100は、当技術分野ではフレームバッファとしても知られている。大容量記憶装置コントローラ1020は、ハードドライブ1030などの大容量記憶装置へのアクセスを管理する。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に具現化するのに適した大容量メモリデバイスは、例として、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、並びにCD-ROMディスク1040を含む、すべての形態の不揮発性メモリを含む。前述のいずれも、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補足されるか、又はその中に組み込まれてもよい。ネットワークアダプタ1050は、ネットワーク1060へのアクセスを管理する。クライアントコンピュータは、カーソル制御デバイス、キーボードなどの触覚デバイス1090も含むことができる。ユーザがディスプレイ1080上の任意の所望の位置にカーソルを選択的に位置決めすることを可能にするために、カーソル制御装置がクライアントコンピュータ内で使用される。さらに、カーソル制御装置はユーザが様々なコマンドを選択し、制御信号を入力することを可能にする。カーソル制御装置は、システムに制御信号を入力するための多数の信号発生装置を含む。典型的にはカーソル制御装置がマウスであってもよく、マウスのボタンは信号を生成するために使用される。代替的に又は追加的に、クライアントコンピュータシステムは、センシティブパッド及び/又はセンシティブスクリーンを含むことができる。
【0058】
コンピュータプログラムはコンピュータによって実行可能な命令を含むことができ、命令は、上記装置に該方法を実行させるための手段を含む。プログラムは、システムのメモリを含む任意のデータ記憶媒体に記録可能であってもよい。プログラムは例えば、デジタル電子回路において、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアにおいて、又はそれらの組み合わせにおいて実装されてもよい。プログラムは装置、例えば、プログラマブルプロセッサによる実行のための機械可読記憶デバイスに有形に具現化された製品として実装されてもよい。方法のステップは入力データに対して動作し、出力を生成することによって、方法の機能を実行するための命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行されてもよい。したがって、プロセッサはプログラム可能であり、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、それらにデータ及び命令を送信するように結合されてもよい。アプリケーションプログラムは、高レベルの手続き型又はオブジェクト指向プログラミング言語で、あるいは必要に応じてアセンブリ言語又は機械語で実装することができる。いずれの場合も、言語は、コンパイルされた言語又は解釈された言語であってもよい。プログラムはフルインストールプログラムであってもよいし、更新プログラムであってもよい。システム上にプログラムを適用すると、いずれにしても、この方法を実行するための命令が得られる。
【0059】
本発明の実装は、
図2の例示的なフローチャートに関連して説明される。
【0060】
本実装は、マルチスケールワークフローにおけるトポロジー最適化と反応-拡散系を組み合わせることにより、高効率の異方性配向微細構造からなる設計を作成することを可能にする。実装は、配向微細構造を生成するために反応拡散法を使用する。特に、実装は、以下を追求することによってマルチスケールの仕組みを作り出す。
・例えば、ある幾何学的制約を満たすか、又は製造の信頼性を向上させるための、局所パターンの制御。
・古典的な等方性材料と比較して、特に調整された異方性微細構造の高い物理的性能。
・粗いスケールで大域的問題のみを解決し、次いで、細かいスケールで詳細な微細構造を生成することによって、高度に詳細な設計を迅速に生成すること。
【0061】
本実装は、局所的な模様の管理、特別に調整された異方性微細構造の高物理性能、及び高度に詳細な設計の迅速な生成を提供する。
【0062】
実装は、マルチスケール手法であり、これら2つの連続するステップに従う。
【0063】
第1のステップは、考慮される設計問題上の低解像度(すなわち、粗いスケール)トポロジー最適化を解くことにある。これは、当技術分野で知られているように実行することができ、2つの重要な構成要素、すなわち、密度場の形態の材料分布についての情報と、配向場の形態の材料方向についての情報とを提供する。本実装は、空間内のそれぞれの点における局所応力テンソルの算出によって配向場を提供することを含むことができる。代替的に、本実装は、最適化された材料配向を生成するために特になされたトポロジー最適化問題の別の定式化によって配向テンソル場を提供することを含んでもよい。例えば、本実装は、2019年12月16日に出願された欧州特許出願(出願番号EP19306655.2)に開示された3Dモデル化オブジェクトを設計するための方法に従って配向場を最適化することによって、配向場を提供することを含むことができ、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
第2のステップは、配向場の各主方向について高分解能(すなわち、微細スケール)異方性反応拡散を実行し、次いで、得られた反応拡散パターンを単一の完全な構造に結合することからなる。
【0065】
本実装は、配向特異性又は発散に近い、改善された規則性を有する構造を生成する。これは、複雑でしばしば信頼性のない再配向又はマッチングスキームを必要とする当該技術分野の他の投影又は非均質化方法と比較して有利である。この差は、反応拡散パターンが高度に規則的で低エネルギーの緩和された幾何学的構造に自然に定着する自然な傾向に起因する。さらに、反応拡散の本質的に局所的な成長に基づく特性は、該構造の一種の「自動完結」として実装を使用することを可能にする。これは、例えば、設計者が、不満足な領域を対話的に消去すること、又は制約として作用するガイド形状を描くことを可能にすることによって、構造の迅速な編集を可能にする。
【0066】
トポロジーの最適化
低解像度グリッド上の予備的な構造最適化(すなわち、上述の第1のステップ)の目的は、微細構造材料充填物の境界として使用される全体的な形状を見つけることである。予備的な構造最適化は、密度ベースの方法に依存するグローバルボリューム制約に従う古典的なコンプライアンス・トポロジー最適化問題を含むことができ、これは、物体等方性材料ペナリゼーション(SIMP)アプローチと口語的に呼ばれる。SIMP方法は、設計空間を2D又は3Dのそれぞれの個別の領域又は体積に分割することから始まる。したがって、この分割された設計空間において設計を生成することは、物体等方性材料で充填されるべき要素のサブセットを見つけるために低減され、一方、他の要素はボイドを表す。さらに、最適化プロセスを容易にするために、設計変数が緩和され、これは、バイナリ設定(すなわち、ソリッド/ボイド)を有する代わりに、設計空間Ω内の各要素eに、密度と呼ばれる連続的な特性0≦ρ(x)≦1が与えられることを意味する。
【0067】
基材のヤング率を有する各要素のヤング率E0は、その密度の関数として書かれる。
【数15】
【0068】
中間密度値(すなわち、0又は1とは異なる密度)の大きな領域は、直接的な物理的解釈を有さないので、SIMP補間スキームは、密度値に指数として適用されるペナルティ係数p>1を導入する。ペナルティ係数は、間隔]1、6[において値を有し、多くの場合、約p=3で選択され、最適化アルゴリズムが剛度の観点からそれらを維持することを妨げる。
【0069】
設計空間にわたる最良の材料分布を見出すことは、全歪みエネルギーによって測定され、以下のように表されるコンプライアンスを最小化することにある。
【数16】
ここで、f及びuはそれぞれ、節点力及び節点変位ベクトルである。
【0070】
線形構造モデルを仮定すると、ベクトルf及びベクトルuは、状態方程式からのグローバル剛性行列Kによって接続される。
【数17】
ここで説明するコンプライアンス最適化問題は、追加の制約が適用されない場合、負荷及び境界条件にかかわらず、すべての要素密度がその最大許容値(すなわち
【数18】
)に設定される、自明な解を認める。したがって、不等式制約が追加されて、最適化問題の完全な定式化を導く。
【数19】
ここで、vxは要素xの体積、vΩはグローバル体積、及び
【数20】
は総許容体積分率である。
【0071】
良好な最適化を確実にするために、実装は、密度場の長さスケールに制御を適用することができる。これは、フィルタの使用によって達成することができる。例えば、実装は、新たなフィルタリングされた感度が、それぞれの要素の周りの固定された近傍における感度の加重平均である勾配に対する畳み込みのような関数による感度フィルタを使用することができる。いずれのフィルタもなしで、それぞれの、x∈Ωに対する最適化変数ρxを用いた目的関数Jの勾配を書き込むことができる。
【数21】
ここで、ux及びKxは、特に有限要素xについての変位ベクトル及び剛性行列であり、言い換えれば、それらは、上記で定義されたメッシュ全体についての(ノード)変位ベクトル及び剛性行列の部分集合u及びKであり、すなわち、(ノード)変位ベクトル及び剛性行列である。さらに、
【数22】
は、すべての要素が同じ構成材料で作られ、最終的に同じ剛性行列を有するので、有限要素xのための物体材料の「ベースライン」剛性行列を示す。
【0072】
例において、フィルタリングされた勾配
【数23】
は、以下の形態であってもよい。
【数24】
ここで、ωは、xの近傍の要素の集合であり、wx,yは要素yに適用される要素xのマスクの重みであり、vyは要素yの体積である。フィルタ半径rmin及び要素rxの部分的な位置が与えられると、マスクは、線形減衰関数である。
【数25】
【0073】
図2を参照すると、予備的構造最適化は、有限要素モデルを計算し、境界条件を適用することによって(ステップ210)、設計変数を初期化することによって(ステップ211)、(トポロジー最適化の)目的関数を評価することによって(ステップ212)、設計変数に対する目的関数の勾配を評価することによって(ステップ213)、及び数学的プログラムを使用して設計変数を更新することによって(ステップ214)、ステップ210~214を含むことができる。実装は、収束が達成されるまで、ループ内でステップ212~214を反復的に繰り返すことができる。方法は、ステップ215において、収束後に最終応力テンソルを出力することができる。
【0074】
トポロジー最適化のための実装の実例を
図3に示す。
図3Aに示される境界条件310及び荷重311を有する最適化シナリオは、カンチレバー問題と呼ばれ、文献における標準的なテストケースである。
図3Bに、低解像度グリッドの数値最適化を示す。
【0075】
応力場
いったん最適化が行われると、
図2のステップ216に関して、実装は、その頂点の節点力を使用して、それぞれの正方形/立方形要素の応力テンソルを計算することができる。結果として得られる行列σ(x)は、対称的現実であり、直交基底で対角化することができる。言い換えれば、実装は、行列σ(x)の固有ベクトル及び固有値を計算することができる。これらの固有ベクトルは、2つ又は3つのコヒーレント配向場を構築するためにソートすることができる。第1の固有ベクトル場は、最大の絶対固有値を有する固有ベクトルによって与えられる。2Dでは、第2のベクトル場は、第1の固有ベクトルに直交することによって直接差し引かれる。3Dでは、実装は、2つの最後の固有ベクトルを、それぞれのフィールド内のベクトル間の最大アライメントを有する2つのベクトルフィールドを記述するように記憶する。2番目と3番目の固有ベクトルがそれぞれの固有値で無視できるような例では、応力の相対的な低値のために、実装は、一定ベクトルを持つ1番目の方向のクロス積からこれらの方向を人為的に生成する。定数ベクトルは、デカルト座標系(すなわち、ex、ey、又はez)の標準ベースのうちの1つであってもよい。これは、依然として主方向に関連するコヒーレントなテンソル場を生成するのに役立つ。計算された応力テンソルの例を
図3Cに示す。
【0076】
配向場に沿ったほとんどの噛み合い問題は、特異点がある場所に現れるので、実装は、これらの領域に完全な固形物質を充填することができる。したがって、実装は、「物体材料マップ」(
図2のステップ217)を計算して、これらの問題のある領域(又は領域)がどこで起こるかを示すことができる。この方法は、このような問題のある領域を完全に埋めることができる。例えば、実装は、それぞれの要素について、その周辺ベクトルに対するそのアライメントを局所的に評価するために、その近傍との(絶対値での)平均スカラー積を計算する。
【数26】
ここで、N(x)及びNxは、それぞれ、要素xの近傍の集合と数である。次に、実装は物体材料マップを次のように定義する。
【数27】
ここで、βは物体領域のサイズを増加させ、Zはくりこみ因子である。
図3Dに示される場合、カンチレバー2Dの問題に対するそのようなマップの一例である。例では、物体材料マップは、代替的に又は追加的に、他の特定の領域に充填するためにユーザ(例えば、設計者)によって完成(すなわち、設定)されてもよい。マップがユーザによって部分的に設定される例では、最終的なマップは、以下のように取得されてもよい。
【数28】
ここで、Γdesignerは、ユーザが設定したマップの一部であり、Γσは次のようにして取得された物体材料マップであってもよい。
【数29】
【0077】
異方性グレイ-スコット反応拡散
チューリングパターンの概念は、ストライプ、スポット、スパイラル、フロント、ターゲット、六角形などの自然なパターンが、均質で均一な状態から自然に生じ得ることを記述する。チューリングパターンの理論は、反応拡散機構によるパターン形成を説明している。反応拡散システムは、一般に、1つ又は複数の化学物質(生物学の分野に関連する場合にはモルフォゲンとも呼ばれる)の密度の空間及び時間の変化を研究するために使用される。2つのプロセス、すなわち、物質が互いに変換される局所的な化学反応と、物質が空間内の表面上に広がる拡散とが、密度変動の原因である。
【0078】
その最も一般的な形態において、反応-拡散(RD)系は、この偏微分方程式(PDE)によって記述することができる。
【数30】
式中、Cはモルフォゲン密度のベクトルであり、Dは種の拡散テンソルであり、Rは全ての局所反応を説明する。
【0079】
本実装は、特に、1つの種のみが異方的に拡散する2成分RDモデル、グレースコットモデルを用いることができる。対応するPDEは、以下のように書くことができる。
【数31】
ここで、d<1は2つの種間の拡散速度であり、σは異方性拡散行列(Tr(σ)=1であるように、ここでTrはトレースである)、γは、種のパターン長さスケールを制御し、Fは、種uの供給速度であり、kは種vの死滅速度である。
【0080】
実装は、
図4に示されるように、マップを用いてF及びkの値を設定し、ここで、RDは、値
【数32】
について計算される。実装は、F及びkの値を領域410内の値に設定し、これにより、配向され、十分に接続された模様が得られる。例えば、実装では、F-0.0395及びk=0,059に設定することができ、これは好都合である。
【0081】
RD系は、σによって与えられる局所的な好みの方向に応じて配向パターンを生成することができる。実装は、構造設計用のパターンを完全に制御するために、設計領域Ωd内部のパターン成長を制限する。
【数33】
ここで、
【数34】
は、x∈Ωdのとき値1をとり、それ以外では0である。λ>0かつλ≫Fであり、これにより種vは対象領域(例えばΩd)の外では指数関数的に「死滅」(すなわち消滅)する。例では、Ωdは、トポロジー最適化によって与えられる密度場上の閾値処理によって定義される。
【0082】
実装は、RDの初期条件を、
【数35】
と設定することができる。また、実装は、領域Ωの境界にRDの境界条件を設定してもよい。領域Ωは、直方体であってもよく、Ωd⊂Ωである。境界条件は、周期的、対称的、及び/又は反射的であってもよい。境界条件の選択は、種の密度がΩdの外部で死滅するので、RD解に有意な影響を及ぼさない。
【0083】
実装はまた、物体材料マップΓ(x)によって与えられるいくつかの具体的な領域を(例えば、完全に)満たすことができる。次いで、パラメータkは、このマップを考慮に入れて、これらの位置で種vを「死滅させる」反応を阻止する。
【数36】
【0084】
パラメータα∈[0,1](典型的にはα=0.5)は、これらの領域をどれだけ充填するかを調整する。
【0085】
構造体の編集
上記で算出された応力テンソルは、直交基底で対角化可能であり、各要素に書き込むことができる。
【数37】
ここで、Rは、上述のようにソートされた固有ベクトルから(すなわち、第1の固有ベクトルから第2の固有ベクトル(2Dで)及び第3の固有ベクトル(3Dで)へ)計算された回転行列であり、Λは対応する固有値の対角行列である。
【0086】
実装は、カスタム異方性としてξ>1を定義することによって、主応力方向iごとに応力テンソル上に拡散テンソルを構築することができ、
【数38】
ここで、Diは、対角線上は1で、位置(i,i)においてξで埋められた対角線行列である。ξの値は、区間]1,10]内の値であってもよく、好ましくは5である。
図2に関して、実装は、ステップ218において、拡散テンソルを計算(すなわち、構築)することができる。
【0087】
実装は、トポロジー最適化によって与えられる密度場をアップサンプリングして、平滑なアップサンプリングされた密度場を得ることができる。次に、実装は、設計領域Ωd のためのスムーズアップサンプリング密度場、(スムージングなしの)σ(x)について関連するアップサンプリング応力テンソル場、及び、Γ(x)についてスムーズにアップサンプリングした物体材料マップをしきい値付けすることができる。全体をまとめることによって、実装は、それぞれの主応力方向に垂直なパターン(2Dの縞及び3Dの箔)を細かいスケールで充填した配向構造を生成することができる。各構造(Si)は、以下の各システムの有限差分積分によって得られる正規化密度場によって表される。
【数39】
【0088】
構造Siは、
【数40】
によって生成される密度場の等表面抽出によって記述される。
図2を参照すると、実装は、ステップ219でパターンを計算し、それによって、構造220、221、及び222(例えば、3D)を得ることができる。カンチレバー2D問題のためのそのような(応力配向)構造の例が
図5に示されており、
図5A及び5Bの各々は、1つの主方向について計算されたパターンS1及びS2(すなわち、
図5Aのパターン510及び
図5Bのパターン520)のうちの1つを示す。
【0089】
最終的に、実装は、寸法に応じてブール演算(
図2のステップ223)によって最終構成をコンパイルすることができる。2Dでは、
【数41】
であり、3Dでは、
【数42】
である。
【0090】
結果として得られる構成の構造性能を向上させるために、実装は、第1の主方向に沿って配向されるビームの(厚さ)を拡大するか、又は、以下のようにブール演算を実行する以前の
【数43】
の等表面シフトを行うことによって、第1の主方向に沿って配向されないビームの(厚さ)を低減することができる
【数44】
ここで、s1>s2=s3 である。実装では、s1=0.8、s2=s3=0.65、sm=0.15と設定されてもよい。実装は、
図2のステップ222において、そのような等表面偏移を実行することができる。実装は、
図2のステップ224において、最終構造をユーザに、例えば、CADファイルにおいて、又はGUI上に最終構造を表示することによって、出力することができる。
【0091】
カンチレバー問題に対する2D及び3Dにおける最終構造の例を、それぞれ
図6A及び
図6Bに示す。2Dカンチレバー問題の時間発展を
図1に示す。
図7(a)から
図7(i)までの時間(RD方程式の各時間)を(i)とする。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物性について異方性を有する材料で形成された機械部品を表すモデル化オブジェクトを設計するコンピュータ実装方法であって、
第1のメッシュ、
モデル化オブジェクトの少なくとも境界を表す密度場、及び
所望の異方性挙動を表す配向テンソル場
を提供するステップと、
前記配向テンソル場の各第iの主方向について、第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターン(Si)を計算するステップであって、当該第iのメッシュは、前記第1のメッシュよりも高い解像度を有し、モデル化オブジェクトの境界によって境界が決められるステップと、
ブール演算によって、第2のメッシュ上に投影された計算された異方性反応拡散パターンの結合をするステップと
を有するコンピュータ実装方法。
【請求項2】
第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップが、
前記配向テンソル場に基づいて異方性拡散テンソル(σi)を計算するステップと、
反応-拡散系に基づいて第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップであって、当該反応-拡散系は計算された異方性拡散テンソルに依存する拡散を含むステップと
を含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記反応-拡散系に基づいて前記第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップが、
前記反応-拡散系を満足する第iのメッシュ上の数値の分布である、第iのメッシュ上の反応-拡散系の解を計算するステップと、
等値面値に対する計算された解の等値面を計算することによって前記パターンを計算するステップと
を含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記第iのメッシュの要素ごとに、隣接する要素における配向テンソル場の配向に対する要素における配向テンソル場の配向のアライメントを表す物体材料マップ(Γ)を提供するステップと、
前記反応-拡散系に基づいて第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターン(Si)を計算するステップが、
前記反応-拡散系に基づいて前記第iのメッシュ上の前記異方性反応-拡散パターン(Si)を計算するステップであって、前記反応-拡散系が、計算された異方性拡散テンソルに依存する拡散と、提供された物体マップ(Γ)に依存する反応とを含むステップ
を含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記反応-拡散系が、グレイ-スコットモデルの形式であり、主方向iについて、
【数1】
ここで、σinは異方性拡散テンソルであり、dは等方性拡散パラメータであり、∇は勾配演算子であり、∇
2はラプラス演算子であり、
【数2】
は、x∈Ωdの場合は値1であり、それ以外はゼロであり、λ、F及びkは反応パラメータである
請求項
2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記第iのメッシュ上の異方性反応拡散パターン(Si)を計算するステップが、前記第iのメッシュ上の前記配向テンソル場及び前記密度場のアップサンプリングをさらに含む
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記モデル化オブジェクトが3Dモデル化オブジェクトであり、
前記ブール演算による前記結合が、第iのメッシュ上の第1のパターン(Si)と第jのメッシュ上の第2のパターン(Sj)との接合の集合の分離(ここでi≠jである)を計算するステップ
を含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記モデル化オブジェクトが、2Dモデル化オブジェクトであり、
前記ブール演算による前記結合が、第iのメッシュ上の第1のパターン(Si)と第jのメッシュ上の第2のパターン(Sj)との分離(ここでi≠jである)を計算するステップを含む
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記第1のメッシュが有限要素メッシュであり、
前記密度場を提供することが、前記第1のメッシュに関連するデータを提供するステップを含み、前記データが、
1つ以上のそれぞれの荷重ケースを形成する1つ以上の力、
一つ以上の境界条件、
材料に関連する1つ又は複数のパラメータ、及び
有限要素メッシュ内の材料の大域的量に対する大域的量制約
を含む
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記密度場を提供するステップが、さらに、
前記第1のメッシュに基づいて、かつ第1のメッシュに関連付けられたデータに基づいてトポロジー最適化を実行し、それにより密度場を取得し、前記密度場が、3Dモデル化オブジェクトの材料量の分布をさらに表す
請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記配向テンソル場を提供するステップが、前記配向テンソル場の各ロケーションについて、
前記密度場と、前記第1のメッシュに関連するデータとに基づいて、局所応力テンソルを計算するステップと、
前記局所応力テンソル場に基づいて位置における配向テンソル場を計算するステップと
を含む、請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記配向テンソル場を計算するステップが、
前記局所応力テンソルの主固有ベクトルに基づく第1の配向を計算するステップと、
主固有ベクトル及び局所応力テンソルに基づいて1つ又は複数の他の配向を計算するステップと
第1の配向及び1つ又は複数の他の配向に基づいて配向テンソル場を計算するステップと
を含む、請求項11に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
請求項13に記載のコンピュータプログラムが記録されたメモリに結合されたプロセッサを含むシステム。
【外国語明細書】