(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056583
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】残存型枠工事の安全対策用柵
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20230413BHJP
E02B 7/02 20060101ALI20230413BHJP
E04G 5/14 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
E04G21/32 C
E02B7/02 B
E04G5/14 302A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165870
(22)【出願日】2021-10-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】317018011
【氏名又は名称】四国ブロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181571
【弁理士】
【氏名又は名称】栗本 博樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 準
(72)【発明者】
【氏名】岡山 一人
(57)【要約】
【課題】板状の残存型枠を用いたコンクリート構造物に係る土木工事において、残存型枠の設置時及びコンクリート打設作業時に連続して、高所作業の作業員の安全を確保しつつ、再利用可能な仮設の安全柵。
【解決手段】残存型枠の上部背面若しくは上面に固定する着設受具と、該着設受具と係合して、残存型枠に着設する着設具と、該着設具に装着する取外し容易な連結具と、該連結具に立設する支柱部材と、該支柱部材間に略水平に架設する手摺部材と、を備えた安全柵を提供するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向きに連設する板状の残存型枠を用いたコンクリート構造物に係る土木工事において、前記残存型枠のうち下方の残存型枠(以下、下段型枠とし、該下段型枠に載置する残存型枠を上段型枠とする。)に設置する仮設の安全柵であって、
前記下段型枠の上部背面若しくは上面に固定する着設受具と、
該着設受具に係合し、前記下段型枠の上部背面若しくは上面に着設する板材である接合部と、該接合部から延設し前記上段型枠背面に略直角方向の板材である連結受部と、該連結受部を貫通する連結受部係止孔と、を備えた着設具と、
該着設具の連結受部に載置され、該連結受部の上面を摺動することができる面を下面とする上板部と、該上板部の短手方向の両端部から垂設され、前記上板部の前記連結受部上での短手方向の滑り止めとなる側板部と、該側板部から横設され、前記上板部が前記連結受部上で上方へ動くことを制限する下板部と、前記連結受部係止孔に連通できる前記上板部に設けられた上板孔と該上板孔及び前記連結受部係止孔を挿通する軸止ピンとを備えた軸止部と、を備え、前記連結受部から取外し可能な連結具と、
該連結具の上板部の上面に立設する支柱部材と、
該支柱部間に略水平に架設する手摺部材と、
を備えた安全柵。
【請求項2】
上向きに連設する板状の残存型枠を用いたコンクリート構造物に係る土木工事において、前記残存型枠のうち下方の残存型枠(以下、下段型枠とし、該下段型枠に載置する残存型枠を上段型枠とする。)に設置する仮設の安全柵であって、
前記下段型枠の上部背面若しくは上面に固定する着設受具と、
該着設受具に係合し、前記下段型枠の上部背面若しくは上面に着設する板材である接合部と、該接合部から延設し前記上段型枠背面に略直角方向の板材である連結受部と、該連結受部を貫通する連結受部係止孔と、を備えた着設具と、
該着設具の連結受部に載置される上板部と、前記連結受部係止孔に連通する前記上板部に設けられた上板孔と該上板孔及び前記連結受部係止孔を挿通し前記上板部を前記連結受部に止着する止着部材とを備えた止着部と、を備え、前記連結受部から取外し可能な連結具と、
該連結具の上板部の上面に立設する支柱部材と、
該支柱部間に略水平に架設する手摺部材と、
を備えた安全柵。
【請求項3】
前記着設受具からの取外しが可能な前記着設具を備えた請求項1若しくは請求項2の安全柵。
【請求項4】
前記着設受具が下段型枠に埋め込まれた埋込雌螺子であり、前記着設具が前記埋込雌螺子に螺合する接合部材ボルトと該接合部材ボルトが貫通する接合部材挿入孔とを備えた板材の接合部を備えた着設具である請求項1、請求項2若しくは請求項3の安全柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造物構築のための残存型枠を用いた工事の施工時の安全対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート工事においては、現場作業員の不足や安定した品質確保の観点からプレキャスト製品が頻繁に用いられている。プレキャストコンクリート製品とは、事前に工場で製作した現場に即したコンクリート製品である。土木工事に用いられる残存型枠は、型枠脱型の必要のないコンクリート製の板材で、連結して使用され、背面側に生コンクリートを打設し、打設コンクリートと残存型枠とが一体のコンクリート構造物を構築する。
【0003】
土木工事における残存型枠は、特に、砂防堰堤工事等の高所において、脱型の作業が無いため足場を使用する必要がなく、幅広く利用されている。その場合、残存型枠設置に係る残存型枠の吊り上げやコンクリート投入のためのクレーンの作業等を除き、残存型枠組立やコンクリートの締固め等の打設作業を残存型枠背面側で作業員が進めることとなる。一般に、高さ2m以上の作業床で作業員の墜落の危険がある場合には、作業床の端部に手摺等の設置がなされる。しかしながら、残存型枠は、次々と積上げられ、その都度、仮設の安全対策を効率的に施すのは手間のかかる作業で、高所における作業員の墜落・転落防止等安全対策は、重要な課題となっている。
【0004】
図11(1)~
図11(4)に残存型枠を用いた工事の施工手順の概略を示す。
図11(1)は、硬化したコンクリート面を基面とし、設置済み残存型枠上に新たな残存型枠を組立ている状態でその残存型枠には、下方の設置済みの残存型枠との連結金具やコンクリート中に埋め込まれたアンカーから残存型枠に架設された残存型枠支持棒材が設置済みの状態である。残存型枠を固定させ、基面上に打設する生コンクリートからの圧力に対抗するためである。
図11(2)は、残存型枠が設置された段階で、残存型枠上に工事用の仮設の安全柵を設けている。次の作業として、基面上から組み立て済みの残存型枠の上面まで生コンクリートを打設する際の作業員の安全を確保するためである。
図11(3)は、生コンクリート打設途上を示すもので、この状態で、作業員は、クレーン等で投入された生コンクリートの敷均しや締固めを足元が不安定な生コンクリート上で行う必要がある。
図11(4)は、計画面まで生コンクリートを打設し、養生作業を行い、コンクリート硬化後、新たな残存型枠を組立てている状態である。コンクリート上面のレイタンスの除去や洗浄作業は、残存型枠設置前に行われるのが一般的である。その後、
図11(4)に示すように、安全柵の取り外しや残存型枠の組立て作業が高所で安全柵の無い状態で行われているのが現状である。
【0005】
図12に示すのが高所での残存型枠工事に一般的に使用されている安全柵である。
図12(1)は、隣接する残存型枠間に鉛直方向に円筒上の空間を設け、安全柵の支柱を容易に立て込めるようにしたものである。
図12(1-1)は、隣接する残存型枠間の詳細図を示している。
図12(2)及び
図12(2-1)は、残存型枠上面にコンクリート用インサートナットを埋込み、安全柵の支柱基礎をボルト固定したものである。
【0006】
このような残存型枠工事の高所作業における安全対策としては、
図12に示すような残存型枠上面に設けられた支柱建て込み用孔若しくはインサートナットを利用して支柱を建て、該支柱に手摺を取り付けた安全柵を用いている。関連するコンクリート工事における高所作業に関しては、型枠の横端太材を上下には挟み込んで固定する下部固定部と型枠天端の桟木に取付ける上部抑え金物などによって支柱を取付ける発明が提案されている(特開2014-43678)。これらの安全対策では、型枠に直付けであり、型枠設置、撤去時には、安全柵は設けられていないなど、作業時全体に亘る安全対策としては、不充分である。
【0007】
また、関連する高所作業時における安全対策として、補強土壁工事の施工段階での壁面材に連結して、敷網材を敷設し、壁面材の前面起立部の内面に安全柵支柱支持管を取付ける発明が提案されている(特開2010-112133)。その他、壁面パネル(壁面材)の開口部における安全策として、着脱自在に固定される把持部と開口部前側に設ける水平手摺を備えた発明があり(特開2005-188170号)、開口部を挟んで壁面材の上端部に少なくとも2つの鉤状係止具の鉤部をそれぞれ引掛けて、鉤状係止具に開口部を横切る棒状部材を係止する柵の発明がある(特開2012-154085号)。これらの補強土壁工事に係る安全対策として十分ではない点は、壁面材の組立ての際、壁面材のコネクティブ(補強材連結金具)部分が支障になるため、柵を外さざるを得ない点や安全柵を壁面材前面に設ける提案では、安全柵を撤去する作業に危険を伴うなどの問題がある。
【0008】
出願人は、補強土壁工事における安全対策として、上記の問題点を解決するため、補強土壁の壁面材に突設されたコネクティブに支柱を有する連結部を装着し、該支柱部間に略水平に架設する手摺部を備えた安全柵を提供する発明を提案した。(特許第6346369号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-43678号公報
【特許文献2】特開2010-112133号公報
【特許文献3】特開2005-188170号公報
【特許文献4】特開2012-154085号公報
【特許文献5】特許第6346369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする課題は、残存型枠を用いたコンクリート構造物築造工事において、高所で鉛直またはそれに近い勾配の残存型枠付近における作業である残存型枠組立てやコンクリート打設作業等の一連の工程全体において、安全ベルトの着用等作業員の行動に制限を加えることなく安全を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、板状の残存型枠を用いたコンクリート構造物に係る土木工事における安全柵を容易に設置するためのものであって、残存型枠の上部背面若しくは残存型枠の上面に設置する着設受具と、該着設受具と係合して残存型枠に着設する着設具と、該着設具に装着する連結具と、該連結具に立設する支柱部材と、該支柱部材間に略水平に架設する手摺部材と、を備えた安全柵を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
残存型枠を用いたコンクリート構造物築造工事における本発明の安全柵は、鉛直またはそれに近い勾配の残存型枠組立時に、作業員の手摺や安全ベルト設置柵となり、作業時の安全対策となる。また、残存型枠背面側へのコンクリート打設工事におけるレイタンス除去、生コンクリートの締固め、その後の養生等の作業時に、作業員が高所から落下等しないよう安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の安全柵の設置状況の説明図である。(実施例1)
【
図2】
図2は、安全柵の基礎部を示した説明図である。(実施例1)
【
図3】
図3は、着設受具及び着設具の詳細を示した説明図である。(実施例1)
【
図4】
図4は、連結具の詳細を示した説明図である。(実施例1)
【
図5】
図5は、本発明の安全柵の設置手順を示した説明図である。(実施例2)
【
図6】
図6は、着設受具を下段型枠上面に設置した説明図である。(実施例3)
【
図7】
図7は、着設受具と着設具について、滑動可能な係合構造の説明図である。(実施例4)
【
図8】
図8は、下段型枠上面に着設した取外し可能な着設具の例を示した説明図である。(実施例5)
【
図9】
図9は、下段型枠と上段型枠の背面勾配が変化する場合における着設具に関する説明図である。(実施例6)
【
図10】
図10は、着設具と連結具をボルト締結する場合の説明図である。(実施例7)
【
図11】
図11は、一般的な残存型枠の工事の施工手順等を示した説明図である。
【
図12】
図12は、一般的な残存工事に用いる安全柵を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
高所における残存型枠を使用したコンクリート工事について、本明細書では、安全柵に係る箇所以外は、必要な場合を除いて記載及び図示を省略する。安全柵に係る箇所以外とは、例えば、「0004」に記載した残存型枠連結金具や残存型枠支持棒材などである。以下、本明細書において用いられる用語について、説明する。
上向きに連設する板状の残存型枠を用いたコンクリート構造物に係る土木工事において、前記残存型枠のうち下方の残存型枠を下段型枠とし、該下段型枠に載置する残存型枠を上段型枠とする。
板状の残存型枠とは、前面と背面を有し、上下面及び左右の側面に利用できる程度の面積を有するコンクリート製の型枠である。前面は、コンクリート構造物が空間若しくは土と接する面であり、背面は生コンクリートが投入される面である。直方体であるとは限らない。前面及び背面に勾配を有し、上面を水平面とする平行6面体等も含まれる。また、前面形状が長方形でない異形の形状である場合でも連結することによって前面の上端が水平方向になりうるものは、対象とする。
高所作業における残存型枠の利用例として、堰堤に利用される構造物の構築を主として実施例で示し、前面の勾配は3分~鉛直のものを示す。3分勾配とは、高さ1に対して、水平方向長さ0.3の勾配をいう。即ち、tanθ=1/0.3のθに相当する傾きである。但し、本発明の利用に係る残存型枠の勾配を上記範囲に限定するものではない。
【0015】
実施例においては、着設受具、着設具、連結具及び支柱部材は、金属製品を想定しており、着設具の接合部及び連結受部並びに連結具の上板部、下板部、側板部は、所定の厚みを有する鋼材で例えば構造用圧延鋼材の曲げ加工したものや溶接構造用圧延鋼材の溶接加工したもの用いている。接合部材ボルト、連結具係止ボルト等の連結金具は12mm~16mmが用いられるため、ボルト挿入孔は15mm~20mm程度の直径である。連結具係止ピンは、鋼棒を加工したものである。本発明は、支柱部材及び手摺部材に関しては、円管を基本とした実施例を示すが、支柱部材に関しては、円管の他、角パイプや溝形鋼、山形鋼等の形鋼など支柱としての強度を有するものであればよい。手摺に関しては、円管以外、棒材等もある。但し、上記全て部材に関して、鋼材や金属であることを限定するものではなく、所定の強度を有するものであればよい。
【実施例0016】
図1は、本発明の安全柵2を、前面及び背面共に鉛直勾配の下段型枠11の背面上部に、設置した状況図である。上段型枠12は、前記下段型枠と同一形状で同一勾配であるが、前記安全柵設置段階で、上段型枠は未設置であるため破線で表示している。上記安全柵の設置状況で、着設受具3、着設具4及び連結具5並びに支柱部材6の下部についての拡大図が
図2(1)、
図2(2)である。
図2には、各構成部材についての配置を示し、分解した部材構造図若しくは断面図を
図3及び
図4に示す。
本例での着設受具は、
図1に示すように下段型枠背面16上部の2箇所に埋め込まれている埋込雌螺子31である。詳細は、
図3(1-1)、(1-2)に示している。
図3(1-2)は、
図2(1)に表示するA-A方向で、
図2(2)の範囲abcdを表したもので、
図3(1-1)は、
図2(2)に表示するB-B方向で、
図2(1)の範囲efghを表示したものである。前記埋込雌螺子は、下段型枠の背面側に挿入部を有し、下段型枠内部中央付近に先端フランジを有する。
【0017】
本例の着設具4について、
図2に示す着設具及び接合部材ボルト44を、接触する部材間に離隔を確保して分離した状態で表したものが
図3(2-1)~(2-4)である。
図3(2-1)は、
図2の範囲ijklを示す着設具を分離した左側面図である。
図3(2-2)は、
図2の範囲mnopを示す残存型枠背面側からの正面図のであり、
図3(2-4)は、接合部材ボルトの正面図である。
図3(2-3)は、
図2の着設具の平面図である。これらは、先述のように、下段型枠11、上段型枠12との接触面から離隔した状態で、
図2に示す連結具5を取り除いた状態を表している。着設具全体としては、
図3(2-1)の側面視で示すような逆L型である。
着設具の下部の平板の区間である接合部41は、下段型枠背面16に着接する接合面42と、接合部材挿入孔43を有している。前記着設受具の埋込雌螺子31に螺合する接合部材ボルト44によって締付けられ、着接箇所に作用する摩擦力によって下段型枠背面に鉛直上方を長手方向に着設されている。請求項1及び請求項2に記載の「該着設受具に係合し」とは、本例においては、着設受具の埋込雌螺子と該雌螺子に螺合する接合部材ボルト及び接合部材挿入孔との係合をいう。
連結受部45は、下段型枠と上段型枠の境界の上方で、上段型枠背面に対して略直角方向に曲折した後の平板区間であり、中央部に連結具を係止するための連結受部係止孔46が設けられている。前記の連結受部の上段型枠背面に対して略直角方向であることに関しては、支柱部材6及び手摺部材7等を取り付けた状態での形状である。支柱部材及び手摺部材の重量を考慮する必要があるからである。略直角方向に設置しているのは、連結具5に立設する前記支柱部材6及び手摺部材7が上段型枠設置の支障になることなく、安全柵2として高所作業の端部での安全を確保するためである。
【0018】
本例の連結具5の詳細は、
図4(1)~(6)に示す。
図4(2)のA-A断面図、4(3)の正面図及び4(4)のB-B断面図に示すように、前記着設具4の連結受部45が連結具の上板部51、下板部52及び側板部53の囲まれた空間に挿入する状態で、連結受部の上面は、上板部と下面と接している。連結具が連結受部上に載置され、着設具と連結具が連結具係止ピン57によって軸止されている。
図4(5)の模式の斜視図で説明すると、前記連結具係止ピンで軸止前の状態では、連結受部上を連結具は、前後(長手方向)、左右(短手方向)、上下に動き得る状態であるが、摺動可能な左右の短手方向の動きに対しては、上板部の両端部から垂設されている側板部によって制限され、支柱部材6からの荷重に係る上下方向の動きは、上板部及び横板部から横設されている下板部によって制限されている。本例では、下板部が左右の両側板部と連結した状態で連続した1枚の板になっているが、上板が上に動くことを制限できれば良いので、例えば両横板部から帯状に横設されていても良いし、片方からの横設によっても連結具が連結受部から落下しない程度の幅で充分である。また、
図4(2)に示す上板孔及び下板孔を通じて連結受部を貫通する連結具係止ピンは、連結受部上で連結部を軸止し、前後(長手方向)の動きを止めており、
図4(6)に示すように軸止部を形成している。本例では、下板孔が必要になるが、先述の理由で下板孔の形状によっては、必ずしも必要なものではない。
本例では、連結受部が連結具の上板部、下板部及び側板部に囲まれた状態は、遊挿状態であるが、前記の様に連結受部上での連結具の動きが制限され、連結具係止ピンの軸止と連結受部上面と連結具の上板部下面の摩擦に加え、支柱部材間を架設する手摺部材7の効果が加わり、安定した連結状態となっている。連結具が着設具に対して着脱容易で独立した部材としているのは、連結具を下段型枠11に着設された着設具から取外し、上段型枠12に着設された着設具に容易に装着させることができることを目指したためである。また、安全柵2の用途上の本体部分に相当する支柱部材及び手摺部材に関しては、支柱部材は、前記連結具上に立設されており、連結具の着設具への装着によって、同時に支柱部材が必要な箇所に設置される。本例において、手摺部材7は、
図1(1)U字の取付け金具である手摺取付け部材71によって支柱部材間を水平方向に架設されている。従って、必要な人員若しくは吊り機器の配置によって、所定の支柱間に架設された手摺部材をも同時に設置することが可能となっている。手順については、実施例2で説明する。
【0019】
本例の着設受具3は、
図3(1-1)に示すように、下段型枠11の背面上部に埋め込まれた埋込雌螺子31で、
図3(1-2)に示すように型枠背面16に設置されている。着設受具は、着設具4の接合部41を下段型枠の面に接合させる接合部と係合する部材であればよいので埋込雌螺子に限らない。但し、着設具は、着設受具から取外して再利用できるためには、取り外し可能な接合部材と着設受具でなければならない。また、型枠背面若しくは上面をスライドさせて、着設させる着設受具は、実施例4で説明する。
【0020】
本例の着設具4に関して、
図3の(2-1)~(2-3)に示すように、接合部41は、下段型枠11背面に接し、鉛直方向を長手に有し、上段型枠12背面下部に達する。上段型枠背面に直角方向に折曲し、長手方向先端までが連結受部45である。本例の着設具は、上記のように逆L型の形状に鋼板を曲げ加工をし、接合部の接合部材挿入孔43と連結受部の連結受部係止孔46とを穴抜き加工を施したものである。この着設具には、該着設具に装着される連結具5及び支柱等の安全柵本体の荷重を支持する強度が必要であり、材質SS400、厚さ6mm、幅50mm、接合部長さ25cm、連結部長さ8cmの鋼材を曲げ加工した部材で、前記連結具及び該連結具に立設し、載荷された高さ80cmで質量約10kg/1箇所の安全柵の重量等に耐えうる部材であることを確認した。
【0021】
本例の連結具5は、
図4(1)
図4(6)に示すように、上板部51、下板部52及び側板部53で前記着設具4の連結受部45を囲み、上下板孔55、56と連通する連結受部係止孔46を貫通する連結具係止ピン57によって、着設具と連結している。また、上板部には、支柱部材6が立設している。このような着設具に関しては、上板部と側板部は、材質SS400、厚さ6mm、幅120mmを曲げ加工し、上板部の幅80mmで左右の側板部の高さを20mmの鋼材に対して、下板部として幅80mm、厚さ6mmの平板を溶接し、支柱として外径60mm、厚み2mmの円管を溶接加工したものを用いた。また、連結具係止ピンに関しては、13mmの丸鋼を加工したものを用いた。