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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056610
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】オイルフェンス装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 15/06 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
E02B15/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165917
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】593066634
【氏名又は名称】海和テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】小坂 康之
【テーマコード(参考)】
2D025
【Fターム(参考)】
2D025BA08
(57)【要約】
【課題】給排気ホースの内径の大きさにかかわらず、強制沈下部から給排気接続部に向けての円滑な沈下を確保して、沈下時間が短い、速やかな沈下を実現する。
【解決手段】複数の浮沈式のオイルフェンス1を接続して、港湾内の係留設備101と、係留されたタンカーTを取り囲む。フロート7の給排気を行う2つの給排気接続部12が設けられ、空気を給気したり排気したりすることで、浮沈式オイルフェンス1を浮上させたり沈下させたりする。給排気接続部12の間の中間位置で沈下の際に最も早く沈下する強制沈下部21に、上端がオイルフェンス1のフロート7に連通され、下端を水中に開口される強制沈下部浮力体29を設ける。給排気接続部12に設けられる給排気ホース41の通路断面積を、フロート7の通路断面積の3.4~3.8%の範囲内とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の浮沈式のオイルフェンスを複数のコネクタを介して接続して、港湾内の係留設備と、前記係留設備に係留されたタンカーを取り囲む構成とされ、
前記オイルフェンスは、フェンス上下方向に一定幅を有する帯状体を有し、前記帯状体のフェンス上下方向の中間位置にフロートがフェンス長手方向に沿って一体に設けられ、下部にフェンス長手方向に沿って複数のウエイトが間隔を開けて設けられ、
前記複数のコネクタのうち2つのコネクタに対して給排気ホースが設けられて、前記フロートの給排気を行う給排気接続部とされ、前記給排気ホースを通じて空気を給気したり排気したりすることで、前記浮沈式オイルフェンスを浮上させたり沈下させたりするようになっているオイルフェンス装置であって、
前記給排気接続部の間の中間位置で沈下の際に最も早く沈下する強制沈下部に、上端が前記オイルフェンスのフロートに連通されると共に下端が水中に開口され、下部に前記強制沈下部浮力体に生ずる浮力とバランスする複数のウエイトを有する強制沈下部浮力体が設けられ、
前記給排気ホースの通路断面積は、前記フロートの通路断面積の3.4~3.8%の範囲である、
ことを特徴とするオイルフェンス装置。
【請求項2】
前記給排気ホースの内径は、73.9~78.1mmであり、前記フロートの内径は、400mmである、請求項1に記載のオイルフェンス装置。
【請求項3】
前記給排気ホースのホース長さは、45~90mである、請求項1又は2に記載のオイルフェンス装置。
【請求項4】
前記帯状体は、前記強制沈下部の両側において、下部に複数の強制沈下部ウエイトが間隔を開けて設けられ、
前記強制沈下部ウエイトは、他の部分よりも単位長さ当たりの重量が大きくなるように配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のオイルフェンス装置。
【請求項5】
前記強制沈下部浮力体は、前記オイルフェンスの浮上時に、前記フロート内から海水を外部に排出する水抜き部材を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のオイルフェンス装置。
【請求項6】
前記係留設備は、オイルフェンス操作装置が配置されるプラットホームを含み、
前記給排気ホースは、一方のホース端部が前記オイルフェンス操作装置に接続され、他方のホース端部が、給排気ホース接続管を介して前記フロートに接続され、
前記オイルフェンス操作装置によって前記給排気ホース及び前記給排気ホース接続管を通じての、前記フロートの給排気制御が行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載のオイルフェンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてタンカーが港湾内の係留設備に係留された状態で、前記タンカーを取り囲むオイルフェンス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、タンカーが港湾内の係留設備に係留された状態で、浮沈式オイルフェンスで前記タンカーを取り囲むオイルフェンス装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなオイルフェンス装置は、複数の浮沈式のオイルフェンスを複数のコネクタを介して接続して、港湾内の係留設備に係留されたタンカーと、係留設備とを取り囲む構成とされている。このオイルフェンスは、フェンス上下方向(深さ方向)に一定幅を有する帯状体を有し、この帯状体のフェンス上下方向の中間位置にフロートがフェンス長手方向に沿って一体に設けられ、下部にフェンス長手方向に沿って多数のウエイトが間隔を開けて設けられている。
【0003】
そして、前記複数のコネクタのうち2つのコネクタに対して給排気ホースが設けられて、前記フロートの給排気を行う給排気接続部とされ、残りのコネクタに対して隣り合うフロートの端部同士を接続する連通ホースが設けられて、連通接続部とされている。そして、前記給排気ホースを通じて前記フロート内の空気を給気したり排気したりすることで、浮沈式オイルフェンスを浮上させたり沈下させたりするようになっている。その場合、給排気接続部の間の中間位置が、沈下の際に最も早く沈下する強制沈下部とされる。
【0004】
ところで、前述したようなオイルフェンス装置では、タンカーが出航する場合には、浮沈式オイルフェンスを沈下させる必要があるが、タンカーが通過できる程度まで沈下させるのに25分間程度を要しているのが現状である。
【0005】
近年、地震発生などの緊急時に、係留設備とタンカーとの接続を速やかに解除し、タンカーをできるだけ沖の方に早く移動させ、地震発生などによる影響を回避したいという要求がある。そのため、オイルフェンスをより早く沈下させることが望まれている。
【0006】
津波発生時などの緊急時に、タンカーの船首に対応する部分を、早く沈下させ、タンカーを速やかに出港させて退避させることも提案されている(例えば、特許文献2参照)が、緊急時だけでなく、通常時の場合も考慮して、強制沈下部から給排気接続部に向かって順に沈下させる形で、オイルフェンス全体を速やかに沈下させたいという要求が高い。
【0007】
そこで、排気接続部付近に、排気弁を有しフロートの排気を前記排気弁によって行う排気部が設けることも提案されている(例えば、特許文献3参照)が、余分な構造物として排気部や排気部を設置するプラットホームなどを設ける必要が生ずる。
【0008】
そこで、そのような余分の構造物を必要としないために、本体に付いているフランジも含めて給排気ホースの内径を大きく(呼び径50Aから80Aに変更)して、給排気接続側から排気する排気能力を高めることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-348854号公報
【特許文献2】特開2015-22760号公報
【特許文献3】特開2016-245018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、給排気ホースの内径を大きくすると、給排気ホースによる排気量が多くなるが、強制沈下部を最も早く沈下させ、それから給排気接続部に向けて順に沈下させるという制御が困難になる。つまり、給排気ホースによる排気量が多くなり過ぎるため、強制沈下部から給排気接続部に向けての前記フロート内の空気の移動が前記排気量に追従せず、空気溜まりがフロートの任意の箇所に生じて不良沈下の原因となり、有効な浮沈式の機能を発揮させることができない。
【0011】
そこで、発明者は、給排気ホースの内径を大きくするだけでなく、強制沈下部の沈下をより速やかに行わせることで、強制沈下部から給排気接続部に向けてのフロート内の空気の移動速度(流れ)を高め、給排気ホースによる排気速度に見合うようにすれば、強制沈下部から給排気接続部に向けての円滑な沈下を確保して、沈下時間を短くできることに着想し、本発明をなした。
【0012】
本発明は、給排気ホースの内径を大きくすると共に、強制沈下部の沈下速度を速め、強制沈下部から給排気接続部に向けての円滑な沈下を確保して、沈下時間が短い、速やかな沈下を実現できるオイルフェンス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、複数の浮沈式のオイルフェンスを複数のコネクタを介して接続して、港湾内の係留設備と、前記係留設備に係留されたタンカーを取り囲む構成とされ、前記オイルフェンスは、フェンス上下方向に一定幅を有する帯状体を有し、前記帯状体のフェンス上下方向の中間位置にフロートがフェンス長手方向に沿って一体に設けられ、下部にフェンス長手方向に沿って複数のウエイトが間隔を開けて設けられ、前記複数のコネクタのうち2つのコネクタに対して給排気ホースが設けられて、前記フロートの給排気を行う給排気接続部とされ、前記給排気ホースを通じて空気を給気したり排気したりすることで、前記浮沈式オイルフェンスを浮上させたり沈下させたりするようになっているオイルフェンス装置であって、前記給排気接続部の間の中間位置で沈下の際に最も早く沈下する強制沈下部に、上端が前記オイルフェンスのフロートに連通されると共に下端が水中に開口され、下部に前記強制沈下部浮力体に生ずる浮力とバランスする複数のウエイトを有する強制沈下部浮力体が設けられ、前記給排気ホースの通路断面積は、前記フロートの通路断面積の3.4~3.8%の範囲である、ことを特徴とする。なお、「バランスする」には、わずかに重い場合も含まれる。
【0014】
このようにすれば、強制沈下部を最も早く沈下させ、それから給排気接続部に向けて順に沈下させることを確保して、オイルフェンスの沈下時間を短縮することができる。特に、強制沈下部浮力体が設けられるとともに、給排気ホースの内径が大きく、給排気ホースの通路断面積が、前記フロートの通路断面積の3.4~3.8%の範囲となるようにされているので、給排気ホースを通じての排気割合に強制沈下部浮力体の沈下に伴うフロート内の空気の、前記給排気接続部への移動割合がバランスされ、スムーズに排気動作が行われる。よって、排気量が大きくなっても、フロート内に空気溜まりを生成することなくフロートが強制沈下部から給排気接続部に向かって滞りなく速やかに沈下することになる。
【0015】
この場合、請求項2に記載のように、前記給排気ホースの内径は、73.9~78.1mmであり、前記フロートの内径は、400mmとしたり、請求項3に記載のように、前記給排気ホースのホース長さは、45~90mとしたりすることができる。このようにすれば、給排気ホースによる排気量を従来よりも大きくすることができ、オイルフェンスの沈下時間の短縮に有利に働く。
【0016】
請求項4に記載のように、前記帯状体は、前記強制沈下部の両側において、下部に複数の強制沈下部ウエイトが間隔を開けて設けられ、前記強制沈下部ウエイトは、他の部分よりも単位長さ当たりの重量が大きくなるように配置されている、ことが望ましい。ここで、「強制沈下部ウエイトは、他の部分よりも単位長さ当たりの重量が大きくなるように配置されている」とは、強制沈下部ウエイトの配列間隔が他の部分のウエイトの配列間隔よりも小さいことや、他の部分よりも重量が大きいウエイトが配置されていることを意味する。
【0017】
このようにすれば、帯状体は、強制沈下部の両側において、下部に複数の強制沈下部ウエイトが間隔を開けて設けられているので、給排気ホースの内径の大きさにかかわらず、強制沈下部を早く沈下させる。
【0018】
請求項5に記載のように、前記強制沈下部浮力体は、前記オイルフェンスの浮上時に、前記フロート内から海水を外部に排出する水抜き部材を有する、ことが望ましい。
【0019】
このようにすれば、損傷などによりフロート内に海水が侵入した場合であっても、オイルフェンスを浮上させる際に、海水は強制沈下部浮力体内に集められ、水抜き部材を通じて排出される。
【0020】
これらの場合、請求項6に記載のように、前記係留設備は、オイルフェンス操作装置が配置されるプラットホームを含み、前記給排気ホースは、一方のホース端部が前記オイルフェンス操作装置に接続され、他方のホース端部が、給排気ホース接続管を介して前記フロートに接続され、前記オイルフェンス操作装置によって前記給排気ホース及び前記給排気ホース接続管を通じての、前記フロートの給排気制御が行われる、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、強制沈下部から給排気接続部に向けての円滑な沈下を確保して、沈下時間が短い、速やかな沈下を実現することができる。つまり、強制沈下部浮力体を設けるとともに、給排気ホースの通路断面積を、フロートの通路断面積の3.4~3.8%の範囲としているので、強制沈下部浮力体の沈下に伴うフロート内の空気の、前記給排気接続部への移動割合と給排気ホースを通じての排気割合とがバランスされ、スムーズに排気動作が行われることになる。よって、給排気ホースの内径を大きくして排気量が大きくなっても、フロートが強制沈下部から給排気接続部に向かって滞りなく速やかに順に沈下することになり、タンカーを早期に出航させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】係留設備にタンカーが係留された状態を示す、本発明のオイルフェンス装置を概略的に示す平面図である。
図2】前記オイルフェンス装置の給排気接続部を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は図2(a)のA-A線における断面図である。
図3】前記オイルフェンス装置の強制沈下部を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
図4】前記オイルフェンス装置の一般部(連通接続部)を示す正面図である。
図5】前記オイルフェンス装置の給排気ホースを示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は接続部分を示す図である。
図6】フロート径を直径400mmとした場合の、給排気ホースの配管サイズと沈下時間との関係を示す図である。
図7】フロート径を直径400mmで、給排気ホースの配管サイズを80Aとした場合の、ホース長さと沈下時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0024】
図1は係留設備にタンカーが係留された状態を示す、本発明のオイルフェンス装置を概略的に示す平面図である。
【0025】
図1に示すように、タンカーTは係留設備101に係留され、油荷役作業が行われる。係留設備101は、大型のプラットホーム102を中心に、小型のプラットホーム103が間隔を開けて配置され、各プラットホーム102,103の間が桟橋104で接続されている。具体的には図示していないが、陸上に設置された油タンクなどの油貯留設備からの油給排用配管が大型のプラットホーム102を通じてタンカーTの油送出口に接続される。これにより、タンカーTと油貯留設備との間で、油の給排が行われる。
【0026】
フェンス長さが異なる複数種類の浮沈式オイルフェンス1(長さが異なってもすべて1として表示する)を、コネクタ2を介して接続することで、タンカーTおよび係留設備101の周囲を囲むオイルフェンス装置3が構成されている。各オイルフェンス1は、多数のアンカー4付きロープ5でもって張設され、移動しないようにされている。
【0027】
隣り合うオイルフェンス1はコネクタ2によって接続されている。コネクタ2は、図2に示すように、フロート7の給排気を行う給排気ホース41が接続される給排気ホース接続管11,11が設けられている給排気接続部12,12となるか、図3に示すように、2つの給排気接続部12,12の間の中間位置に設けられオイルフェンス1の沈下の際に最も早く沈下する強制沈下部21,21となるか、図4に示すように、隣り合うフロート7を相互に連通する連通ホース51が設けられ隣り合うフロート7同士を連通する連通接続部52となる構成とされている。なお、各給排気ホース接続管11の上端部は、フロート7の端部に接続され、下端部は、具体的に図示していないが、例えばプラットホーム103上に配置されるオイルフェンス操作装置から延びる給排気ホース41のホース端部が接続され、オイルフェンス操作装置によって各給排気ホース41及び給排気ホース接続管11を通じての、フロート7の給排気制御が行われる。なお、給排気接続部12において、給排気ホース接続管11(給排気ホース41)は2つ設ける必要はなく、1つとすることも可能である。
【0028】
各オイルフェンス1は、図4に示すように、フェンス上下方向(深さ方向)に一定幅を有する帯状体6を備え、帯状体6のフェンス上下方向の中間位置においてフロート7がフェンス長手方向に沿って一体に設けられている。帯状体6は、例えば補強基布を芯体として内蔵するゴムシートで、帯状体6の下部にはフェンス長手方向に沿って多数のウエイト8が、浮遊安定性を高めるため、間隔を開けて設けられている。
【0029】
給排気接続部12は、図2に示すように、隣り合うフロート7の対向する端部には、フランジ付きニップル押さえ金具13が設けられ、上下の給排気接続金具14A,14Bにて結合されている。そして、補助フロート15によって浮くようにされている。隣合うフロート7の端部に連通するフランジ付きニップル16がフランジ付きニップル押さえ金具13に支持され、フランジ付きニップル16にエルボ17及びフレキシブルジョイント18を介して給排気ホース接続管11,11が接続されている。これにより、給排気ホース41が、給排気ホース接続管11,11、フレキシブルジョイント18、エルボ17及びニップル16を介して、フロート7に接続される。
【0030】
強制沈下部21,21では、図3に示すように、隣り合うフロート7の対向する端部には、フランジ付きニップル押さえ金具22,22が設けられ、上下に離れて配置される強制沈下部接続金具23A,23Bにて結合されている。押さえ金具22,22の上下方向の中間部位にはフランジ付きニップル24が設けられ、それらが、安全弁25を有する主配管26にて接続されている。ニップル押さえ金具22,22の間にはゴムカバー27が設けられている。この強制沈下部21,21の下側には、上下にフランジ付きニップル押さえ金具28,28が設けられた強制沈下部浮力体29が設けられている。強制沈下部浮力体29は、上端がオイルフェンス1のフロート7に連通され、下端が水中に開口され、下部には、強制沈下部浮力体29に生ずる浮力とバランスするかあるいはわずかに重い複数のウエイト30が積み重ねて設けられている。
【0031】
上の強制沈下部接続金具23Aには、上端にバルブ31を有し下端が主配管26に接続される水抜き配管32が設けられている。それと共に、強制沈下部浮力体29には、上下方向に延び上端がフレキシブルジョイント33を挟んで主配管26に接続される内装水抜きホース34が設けられている。
【0032】
そして、強制沈下部21の両側では、帯状体6の下部にフェンス長手方向に沿って、ウエイト8よりも重量が重い複数の強制沈下部ウエイト35(26.5kg/set)が一定間隔を開けて設けられている。
【0033】
つまり、ウエイト8は、大部分において、一定間隔でもって規則的に配置されているが、強制沈下部21の両側においては、ウエイト8よりも重量が重い強制沈下部ウエイト35が一定間隔を開けて設けられている。よって、フロート7内の空気を排気すると、強制沈下部ウエイト35が設けられている強制沈下部21は、ウエイト8が設けられている他の部分よりも早く沈下するようにされている。
【0034】
給排気ホース接続管11,11に接続される給排気ホース41は、呼び径80Aで、図5(a)に示すように、両端にフランジ42付きニップル43が設けられている。内面ゴム44の外側に、補強コード45、補強ワイヤー46、中間ゴム47、補強コード48及び外面ゴム49が順に設けられている。
【0035】
表1は給排気ホースの内径(mm)を、表2は給排気ホースの断面積(m2)を、配管サイズに応じて、それぞれ示す。
【表1】
【表2】
給排気ホース41(配管サイズ80A)の内径は、73.9~78.1mmで、従来よりも大きくなっている。給排気ホースの断面積は、0.004289~0.004790m2である。
【表3】
【0036】
フロート7の内径は400mmであるから、表3に示すように、フロート7に対する給排気ホース41の通路断面積比は0.0341~0.0381であり、給排気ホース41の通路断面積はフロート7の通路面積の3.4~3.8%の範囲である。給排気ホース41の通路断面積がフロート7の通路断面積の3.4~3.8%の範囲であれば、前述したような強制沈下部扶翼隊29を設けたものでは、強制沈下部浮力体29の沈下に伴うフロート7内の空気の、給排気接続部12への移動割合と給排気ホース41を通じての排気割合とがバランスすることとなり、強制沈下部浮力体19の沈下時にオイルフェンス1のフロート7内での空気の溜まりの生成が抑制され、スムーズで速やかな排気が実現される。そして、図6に示すように、従来の場合(50A)に比べて、沈下時間(図1において一点鎖線で示す部分(長さ278m)が沈下するのに要する時間)は大幅に低下することが分かる。
【0037】
また、図7に示すように、給排気ホース41のホース長さは、長くなるほど、沈下時間が長くなるので、45~90mの範囲にあることが望ましい。なお、給排気ホース41同士は、ボルト50とナット51を用いて、フランジ42同士が締結されて長さが調整される。
【0038】
このように、強制沈下部浮力体29の沈下に伴うフロート7内の空気の、給排気接続部41への移動割合と給排気ホース41を通じての排気割合とがバランスするように、強制沈下部21のウエイト30、35の重さも、計算や実験により求められる。
【0039】
オイルフェンス装置3によれば、タンカーTが港湾内に入港して係留設備101に係留される前には、オイルフェンス1は海底に沈下している。そして、タンカーTが入港してタンカーTが係留設備101に係留された状態で、図示しないオイルフェンス操作装置を操作して、給排気接続部12において給排気ホース41及び連通ホース51を通じて各オイルフェンス1のフロート7内に空気を導入する。これにより、オイルフェンス1は、空気が導入されたフロート7の浮力により海面に浮上する。
【0040】
また、損傷などによりフロート7内に海水が侵入している場合であっても、海水は、空気の導入により、強制沈下部浮力体22内に集められる。そして、浮上の際に水抜き配管32及び内装水抜きホース34を通じて排出される。
【0041】
オイルフェンス1はあらかじめ多数のアンカー4付きロープ5に接続されているから、海面に浮上したときに浮遊状態で定位置に配置され、漂流が防止される。
【0042】
このとき、係留設備101も、タンカーTと一緒にオイルフェンス1により取り囲まれる。これにより、油の荷役作業を開始し、仮に油送出口等から油が漏れ出しても、周囲に油が拡散するのが、オイルフェンス1によって防止される。
【0043】
そして、油荷役作業が終了した場合、あるいは同作業が終了してタンカーTが出港する場合には、オイルフェンス操作装置を操作して、各給排気接続部12において給排気ホース41,41を通じてオイルフェンス1のフロート7内の空気を排出する。フロート7は連通ホース51により相互に連通されているので、すべてのフロート7から空気が排気される。これにより、オイルフェンス1は海面下に沈下する。
【0044】
この際、給排気接続部12間の中央位置が、オイルフェンスが最初に沈下する強制沈下部21,21となる。つまり、フロート7よりも高い水圧下にある強制沈下部浮力体29が最初に潰れ、また、強制沈下部ウエイト35が設けているので、浮力のバランスがくずれて強制沈下部21,21から沈下が開始され、給排気接続部12に向けてオイルフェンス1が順に沈下する。
【0045】
このとき、給排気ホース接続管11及び給排気ホース41,41は内径が従来に比べて大きく、給排気ホース接続管11及び給排気ホース41,41を通じての時間あたりの排気量は従来に比べて多くなるが、強制沈下部浮力体29を設けるとともに、給排気ホースの通路断面積を、前記フロートの通路断面積の3.4~3.8%の範囲となるようにしているので、給排気ホース41,41を通じて排気割合に、強制沈下部21の沈下に伴うフロート7内の空気量の減少割合がバランスされる。よって、強制沈下部21,21から沈下が開始されると、フロート7内に空気が滞留することなく、各給排気接続部12に向けてオイルフェンス1が順に沈下する。給排気ホース41,41を通じての排気量は従来に比べて多くなっているので、結果として、オイルフェンス1の沈下に要する時間も従来に比べて短くなる。なお、オイルフェンス1はいずれも多数のアンカー4付きロープ5に接続されているので、漂流は防止される。
【0046】
以上のように、給排気ホース接続管11及び給排気ホース41,41の内径を従来に比べて大きくするだけでなく、給排気ホースの通路断面積を、前記フロートの通路断面積の3.4~3.8%の範囲とし、強制沈下部21の下側に強制沈下部浮力体29を設けることにより、給排気ホース41,41を通じて排気割合に、強制沈下部21の沈下に伴うフロート7内の空気量の減少割合をバランスさせることができ、フロート7内に空気を滞留させることなく、強制沈下部21から各給排気接続部12に向けてオイルフェンス1を順に沈下させることができる。
【0047】
以上のとおり、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 浮沈式オイルフェンス
2 コネクタ
3 オイルフェンス装置
4 アンカー
5 ロープ
6 帯状体
7 フロート
8 ウエイト
11 給排気ホース接続管
12 給排気接続部
14A,14B 給排気接続金具
21 強制沈下部
29 強制沈下部浮力体
30 ウエイト
32 水抜き配管
34 内装水抜きホース
35 強制沈下部ウエイト
41 給排気ホース
101 係留設備
T タンカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7