(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056615
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】義歯床フレーム及び義歯床
(51)【国際特許分類】
A61C 13/267 20060101AFI20230413BHJP
A61C 8/00 20060101ALI20230413BHJP
A61C 13/01 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61C13/267
A61C8/00 Z
A61C13/01
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165922
(22)【出願日】2021-10-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】517399701
【氏名又は名称】小林 健一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中野田 紳一
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA55
4C159AA56
4C159FF04
(57)【要約】
【課題】 義歯床とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする。
【解決手段】 義歯床フレーム10は、義歯床を構成するものであって、患者の口腔に沿う形状のベース部と、患者の口腔のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所にベース部と一体に形成された、義歯床を当該患者の口腔内に装着するためのアタッチメントを保持すると共に当該インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔12aを有するハウジング12と、ベース部又はハウジング12から延びており、患者の口腔のインプラント窩が形成される部分の近傍に接することでインプラント窩の形成の際にハウジング12を支持すると共に義歯床を構成する際には取り除かれる支持部13とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯床を構成する義歯床フレームであって、
患者の口腔に沿う形状のベース部と、
前記患者の口腔のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所に前記ベース部と一体に形成された、前記義歯床を当該患者の口腔内に装着するためのアタッチメントを保持すると共に当該インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔を有するハウジングと、
前記ベース部又は前記ハウジングから延びており、前記インプラント窩が形成される部分の近傍に接することで前記インプラント窩の形成の際に前記ハウジングを支持すると共に、義歯床を構成する際には取り除かれる支持部と、
を備える義歯床フレーム。
【請求項2】
前記支持部は、前記ベース部又は前記ハウジングからインプラント窩の方向に突出すると共に間隔を設けて形成される複数の部分を含んで構成される請求項1に記載の義歯床フレーム。
【請求項3】
前記ハウジングは、インプラント窩の形成の際のガイドとなる、前記貫通孔に繋がる溝を有する請求項1又は2に記載の義歯床フレーム。
【請求項4】
前記溝は、前記患者の口腔の外側かつ近心に向かう方向に設けられている請求項3に記載の義歯床フレーム。
【請求項5】
前記溝の幅は、前記貫通孔の径よりも小さい請求項3又は4に記載の義歯床フレーム。
【請求項6】
前記ハウジングには、前記貫通孔のインプラント窩とは逆側の開口部の周囲に、当該貫通孔と共に当該インプラント窩の形成の際のガイドになる複数の突起が設けられている請求項1~5の何れか一項に記載の義歯床フレーム。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項の記載の義歯床フレームから前記支持部が取り除かれた義歯床フレームを含んで構成される義歯床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療に用いられる義歯床フレーム及び義歯床に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インプラント支持を利用したパーシャルデンチャー及びオーバーデンチャー(IOD:Implant Over Denture)が知られている(例えば、特許文献1参照)。これらはインプラント義歯と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インプラント義歯による治療を行う場合、通常、ガイデッドサージェリーが行われる。ガイデッドサージェリーとは、撮像によって得られたレントゲン又はCT(Computed Tomography)画像等を基にコンピュータ上でインプラントの埋植位置等を設計し、それに合わせたサージカルガイドという樹脂製マウスピースを用いて行うインプラント手術である。このようにインプラント義歯による治療を行う場合、義歯とは別にサージカルガイドが必要となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、義歯床とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする義歯床フレーム及び義歯床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る義歯床フレームは、義歯床を構成する義歯床フレームであって、患者の口腔に沿う形状のベース部と、患者の口腔のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所にベース部と一体に形成された、義歯床を当該患者の口腔内に装着するためのアタッチメントを保持すると共に当該インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔を有するハウジングと、ベース部又はハウジングから延びており、インプラント窩が形成される部分の近傍に接することでインプラント窩の形成の際にハウジングを支持すると共に、義歯床を構成する際には取り除かれる支持部と、を備える。
【0007】
本発明に係る義歯床フレームに形成されたハウジングの貫通孔は、インプラント窩の形成の際のガイドとして用いることができる。また、支持部が、インプラント窩の形成の際にインプラント窩が形成される部分の近傍、例えば、顎骨に接して、ハウジングを支持することで、貫通孔を適切かつ確実にガイドとして用いることができる。従って、本発明に係る義歯床フレームによれば、義歯床とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする。
【0008】
支持部は、ベース部又はハウジングからインプラント窩の方向に突出すると共に間隔を設けて形成される複数の部分を含んで構成されることとしてもよい。この構成によれば、より適切かつ容易にインプラント窩を形成することができる。
【0009】
ハウジングは、インプラント窩の形成の際のガイドとなる、貫通孔に繋がる溝を有することとしてもよい。この構成によれば、貫通孔に加えて溝をガイドとして用いることで、より適切かつ容易にインプラント窩を形成することができる。
【0010】
溝は、患者の口腔の外側かつ近心に向かう方向に設けられていることとしてもよい。この構成によれば、より適切に溝をガイドとして用いることができる。
【0011】
溝の幅は、貫通孔の径よりも小さいこととしてもよい。この構成によれば、より適切に溝をガイドとして用いることができる。
【0012】
ハウジングには、貫通孔のインプラント窩とは逆側の開口部の周囲に、当該貫通孔と共に当該インプラント窩の形成の際のガイドになる複数の突起が設けられていることとしてもよい。この構成によれば、貫通孔に加えて突起をガイドとして用いることで、より適切かつ容易にインプラント窩を形成することができる。
【0013】
また、本発明に係る義歯床は、上記の義歯床フレームから支持部が取り除かれた義歯床フレームを含んで構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、義歯床とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る義歯床フレームの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る義歯床の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る義歯床フレームの構成要素であるハウジング及び支持部の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る義歯床フレームの構成要素であるハウジング及び支持部を側面から見た図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る義歯床フレームの構成要素であるハウジング及び支持部を上から見た図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る義歯床フレームの構成要素であるハウジング及び支持部を下から見た図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る義歯床フレームの使用方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る義歯床フレームの使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面と共に本発明に係る義歯床フレーム及び義歯床の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
本実施形態に係る義歯床フレーム10及び義歯床1は、歯科治療であるインプラント治療、より具体的には、トップダウントリートメントによるインプラント治療で用いられる。本実施形態に係る義歯床1は、患者の顎骨及び歯肉における欠損歯に相当する部分に埋植(埋設)されるインプラントに装着されて用いられる。義歯床1は、オーバーデンチャー又はパーシャルデンチャーである。本実施形態に係る義歯床フレーム10は、本実施形態に係る義歯床1のフレームである。
【0018】
図1は、本実施形態に係る義歯床フレーム10の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る義歯床1の斜視図である。
図1及び
図2では、患者の口腔100に装着されている義歯床フレーム10及び義歯床1を示す。義歯床フレーム10は、ベース部11とハウジング12とを備える。ベース部11は、患者の口腔100に沿う形状であって、より具体的には、患者の口腔100の歯肉(粘膜)の形状に沿っている。ベース部11は、
図2に示す、義歯床1の歯部20及び歯肉部21の土台となる。なお、歯部20は歯を模した部分であり、歯肉部21は歯肉を模した部分であって、これらは着色したレジン(樹脂)によって形成される。
【0019】
ベース部11は、患者の口腔100に装着できる薄い部材である。ベース部11は、少なくとも、患者の口腔100において歯部20に対応する部分を覆うように形成される。ベース部11の当該部分11aは、義歯床1の歯部20及び歯肉部21となるレジンがよく絡むように隙間を有する形状としてもよい。
図1に示すように例えば、当該部分11aは、患者の口腔100に沿うように複数のリングを組み合わせた形状としてもよい。あるいは、当該部分11aは、メッシュ状であったり、穴を有したりしてもよい。また、ベース部11は、義歯床1を適切に口腔100に装着できるように口蓋(義歯床1が上顎に装着されるものである場合)又は口腔底(義歯床1が下顎に装着されるものである場合)に沿う部分11bを有していてもよい。また、患者自身の歯(天然歯)が残存している場合には、義歯床1を適切に口腔100に装着できるように、当該部分11bは、患者自身の歯に装着される(引っ掛けられる)部分(クラスプ部)を有していてもよい。
【0020】
義歯床フレーム10は、ベース部11とハウジング12とに加えて、支持部13を備える。支持部13は、ハウジング12と一体に形成されており、患者に装着される状態でハウジング12からインプラント(インプラント窩)に向かう方向に延びる部分である。
図3~
図6にハウジング12と支持部13とを示す。
図3は、ハウジング12と支持部13とを斜めから見た図である。
図3において上から下に向かう方向が、インプラント(インプラント窩)に向かう方向である。
図4は、ハウジング12と支持部13とを側面から見た図である。
図5は、ハウジング12と支持部13とを上から見た図である。
図6は、ハウジング12と支持部13とを上から見た図である。
【0021】
ハウジング12は、義歯床1を患者の口腔100内に装着するためのアタッチメント(留め具)を保持する部材である。ハウジング12は、患者の口腔100のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所にベース部11と一体に形成されており、当該インプラント窩側に向かって開口を有する。ハウジング12は、インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔12aを有する。
【0022】
アタッチメントは、患者の口腔100内に義歯床1を装着するためものである。アタッチメントは、患者の口腔100内の支台(インプラント)側にも設けられている。義歯床1側のアタッチメントと、支台側のアタッチメントとが連結することで義歯床1が患者の口腔100内に装着される。アタッチメントは、例えば、嵌め合わせることで連結を行うロケータアタッチメント若しくはボールアタッチメント、又は磁力で連結を行うマグネットアタッチメント(マグネットキーパー)である。但し、アタッチメントとしては、上記以外のものでもよい。
【0023】
図1に示すように、通常、ハウジング12は、患者自身の歯がない領域に設けられる。より具体的には、ハウジング12は、
図1に示すベース部11の歯部20が配される部分11aに設けられる。なお、図面に示す例では、義歯床フレーム10にハウジング12は1つしか設けられていないが、患者の顎骨に形成されるインプラント窩の数、即ち、顎骨に埋植されるインプラントの数と同じ数のハウジング12が設けられる。
【0024】
顎骨に形成されるインプラント窩の位置、即ち、インプラントの埋植位置は、患者のレントゲン又はCT画像等を基に決められる。ハウジング12の位置は、決定されたインプラント窩の位置に応じて決められる。
【0025】
ハウジング12は、筒状部120を有する。筒状部120は、アタッチメントを収容する(嵌め込む)ことができる筒状の部材である。筒状部120に保持される、即ち、義歯床1へ固定されるアタッチメントは、例えば、柱状の部材であり、一方の端面で支台側のアタッチメントと連結する。
【0026】
筒状部120は、インプラント窩側に位置する一端部120aと、インプラント窩とは逆側に位置する他端部120bと、一端部120aと他端部120bとの間に位置する中間部120cとを有する。筒状部120の一端部120aは、インプラント窩に向かって開口している。貫通孔12aは、ハウジング12の他端部120b側に位置している。他端部120bにおける端面120dは、筒状部120の軸方向と垂直となっている。
【0027】
筒状部120の内側(空洞部分、窪み)の形状は、アタッチメントを嵌め込むことができるようにアタッチメントの形状にあわせたものである。例えば、アタッチメントが円柱状であれば、
図3~
図6に示すように、筒状部120の形状は円筒状とし、筒状部120の内側の空洞部分の形状は円柱状とする。なお、
図3~
図6に示すように、アタッチメントを固定的に保持できれば、筒状部120の中間部120cに隙間12cを設けてもよい。ドリルで顎骨にインプラント窩を形成する際に、この隙間12cから水をかけて顎骨及びドリルを冷やすことで、ドリリングによって生じる摩擦熱を低減することかできる。
【0028】
筒状部120の内径は、アタッチメントを保持できるようにアタッチメントの径と同程度とする。アタッチメントは、支台側のアタッチメントと連結する側の面が外側に向くように筒状部120に嵌め込まれる。なお、アタッチメントが筒状部120に嵌め込まれるのは、ハウジング12が後述するようにガイドとして用いられた後である。
【0029】
筒状部120の内側は、アタッチメントの軸方向の全体を嵌め込むことができる深さを有していてもよい。あるいは、筒状部120の内側は、アタッチメントを固定的に保持できる限りにおいてアタッチメントの軸方向の一部のみを嵌め込むことができる深さを有していてもよい。なお、筒状部120は、必ずしも上記の形状に限られず、上記以外でアタッチメントを固定的に保持できる形状、構成となっていてもよい。例えば、筒状部120の内側は、保持するアタッチメントの位置及び角度を多少変えられる程度の余裕を有していてもよい。
【0030】
筒状部120は、インプラント窩の中心軸が内部を通るようにベース部11と一体に形成される。筒状部120の中間部120c及び他端部120bは、ベース部11の上面、即ちインプラント窩に向かう面とは逆側の面から突き出るように形成される。
【0031】
図1、
図3、
図5及び
図6に示すように、ハウジング12は、筒状部120の他端部120b側に筒状の貫通孔形成部122を有する。貫通孔形成部122は、インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔12aを形成する部分である。より具体的には、貫通孔形成部122の筒状の内部が、貫通孔12aとなる。
【0032】
ハウジング12は、例えば、
図3~
図6に示すように、筒状部120内に貫通孔形成部122を連結した様な形状となっている。筒状部120と貫通孔形成部122とは一体に作成される。他端部120bの端面120dと貫通孔形成部122の一端面122aとは、同一平面上にある。なお、ハウジング12の形状はこれに限られず、貫通孔形成部122を有する代わりに、他端部120bの端面120dを部材で覆い、この部材に貫通孔12aとなる孔をあけるとしてもよい。
【0033】
貫通孔12aは、貫通孔12aの中心軸が患者の顎骨に形成されるインプラント窩の中心軸と一致するように形成される。貫通孔12aには、インプラント窩を形成する際に用いられるドリルが挿し込まれる。貫通孔12aの径のサイズは、ドリルの径に合ったものとし、ドリルが挿し込まれた際にドリルが軸方向以外に動かないものとする。また、貫通孔12aの軸方向長さは、ドリルが適切にガイドできるような長さとする。但し、後述するようにハウジング12に突起14が設けられる場合には、突起14とあわせてドリルが適切にガイドできるような長さであればよい。
【0034】
上記のようにハウジング12は、アタッチメントを保持する部分の内径と、貫通孔12aの径との2段階の内径を有する。
【0035】
貫通孔12aは、二回法でのインプラント治療が行われる場合には、次のように用いられてもよい。二回法では、インプラント窩にフィクスチャが埋植された後、カップリングバー等の穴開け用の器具によって、フィクスチャ埋植部分の歯肉に穴を開ける。この歯肉に穴を開ける際に、穴開け用の器具のガイドとして貫通孔12aが用いられてもよい。このようにハウジング12に設けられる貫通孔12aは、サージカルガイドの役目を果たす。
【0036】
また、ハウジング12は、インプラント窩の形成の際のガイドとなる、貫通孔12aに繋がる溝12bを有してもよい。当該溝12bは、ガイドされる器具、例えばドリルが貫通孔12aに挿し込まれる際に、当該ドリルの先端をガイドするものである。
図3及び
図5に示すように、溝12bは、筒状部120と貫通孔形成部122とにまたがって設けられる。溝12bが延びる方向に垂直の断面での溝12bの形状は、例えば、半円状である。但し、適切にドリルの先端を貫通孔12aにガイドできれば、半円状以外の断面の形状であってもよい。
【0037】
図1に示すように溝12bは、義歯床フレーム10が患者に装着される際に患者の口腔100の外側かつ近心に向かう方向に設けられている。また、溝12bは、患者の口腔100の頬側又は唇側から貫通孔12aに向かって延びるように設けられているとも言える。このような溝12bを設けることによって、ドリルの先端を、患者の口腔100の外側かつ近心側(頬側又は唇側)から溝12bに入れ、溝12bに沿って移動させながら貫通孔12aに誘導することができる。従って、ドリルを容易に貫通孔12aに挿し込むことができる。仮に溝12bがないとすると、インプラント窩の形成工程において、ドリルを貫通孔12aのほぼ真上から挿し込まなければならず、
図1に示すような口腔100の奥では、特に作業がしにくい。
【0038】
溝12bの幅は、貫通孔12aの径よりも小さくてもよい。溝12bによってガイドされるドリルは、通常、先端が尖っている。従って、溝12bの幅を貫通孔12aの径よりも小さくすれば、ドリルの先端を、溝12b上をずれ動くことなくスムーズに滑らせることができ、ドリルの適切なガイドが可能となる。また、溝12bは、貫通孔12aに向かうにしたがって傾斜していてもよい。傾斜の方向は、筒状部120の他端部120bから一端部120aに向かう方向である。溝12bが傾斜していることでスムーズにドリルの先端を貫通孔12aにガイドすることができる。
【0039】
図5に示すように、貫通孔12aの溝12bに接している部分は、他端部120bの端面120d側から見た時に、卵型に突出した形状となっていてもよい。貫通孔12aをこのような形状とすることで、溝12bによってガイドされたドリルの先端を、貫通孔12aにより挿し込みやすくすることができる。
【0040】
ハウジング12には、貫通孔12aのインプラント窩とは逆側の開口部の周囲に、当該貫通孔12aと共に当該インプラント窩の形成の際のガイドになる複数の突起14が設けられていてもよい。突起14は、貫通孔12aと共に貫通孔12aに挿し込まれたドリルが軸方向以外にずれ動かないようにするためのものである。より具体的には、
図3~
図5に示すように、突起14は、ハウジング12の貫通孔形成部122に設けられる。突起14は、貫通孔形成部122と一体に作成される。
【0041】
突起14は、貫通孔12aの中心軸と平行に貫通孔形成部122から突出している。また、当該突起14の貫通孔12a側の面は、貫通孔12aの周に沿うようにカーブしていてもよい。突起14は、貫通孔12aの周囲に、溝12bがある位置を除いて間隔をあけて複数(例えば、図に示す例では5つ)設けられる。なお、突起14の形状及び数は、上述したものに限られず、ドリルが軸方向以外にずれ動かないようにするという目的を果たし得るものであればどのようなものであってもよい。突起14は、義歯床フレーム10にレジンを付けて義歯床1を作成する際には取り除かれてもよい。但し、突起14を覆うようにレジンを付ける場合には、突起14は取り除かれる必要はない。
【0042】
支持部13は、ハウジング12から延びており、患者の口腔100のインプラント窩が形成される部分の近傍に接することでインプラント窩の形成の際にハウジング12を支持すると共に義歯床を構成する際には取り除かれる部材である。支持部13は、筒状部120の一端部120aからインプラント窩の方向に突出している。
【0043】
ところで、患者の口腔100にインプラント窩を形成するときには、インプラント窩の形成予定位置において歯肉を切開及び剥離し、顎骨を露出させる。そして、顎骨を露出させた状態で、義歯床フレーム10を患者の口腔100に装着する。このとき、ハウジング12と顎骨との間には剥離した歯肉の厚みに応じた隙間がある状態となる。もし、支持部13がなければ、この隙間が原因でハウジング12はぐらついてしまい安定したドリルのガイドが困難となる。支持部13をインプラント窩が形成される部分の周囲の顎骨に当接させることで、上記の隙間に起因するハウジング12のぐらつきを防ぐことができる。即ち、支持部13は、顎骨に対しハウジング12を位置固定するためのものであるから、ボーンストップとも呼ぶことができる。
【0044】
図3~
図6に示すように、例えば、支持部13は、筒状部120の一端部120a側に設けられる。支持部13は、ハウジング12と一体に作成される。支持部13は、ハウジング12の筒状部120からインプラント窩の方向に延びている。支持部13のうち、インプラント窩側に位置する先端部分が、顎骨に接する。
【0045】
支持部13のインプラント窩の方向に延びる長さは、適切にハウジング12を支持できる長さである。より具体的には、当該長さは、インプラント窩の形成工程において、義歯床フレーム10を患者の口腔100に装着した際に、支持部13が顎骨に接する長さである。
【0046】
支持部13がハウジング12を支持するために位置する、患者の口腔100内における部分は、インプラント治療が完了した時点では歯肉が存在する部分である。そのため、支持部13は、義歯床フレーム10にレジンが付けられて義歯床1を作成する際には義歯床フレーム10から取り除かれる。
【0047】
支持部13は、ハウジング12の筒状部120を周方向全てにわたってインプラント窩側に延ばし、更にそのうちの一部を切り欠いた形状、換言すると周方向に隙間を設けた形状としてもよい。より具体的には、
図3及び
図5に示すように支持部13は、ハウジング12からインプラント窩の方向に突出すると共に間隔を設けて形成される3つの脚のような形状としてもよい。
【0048】
上記のように支持部13を、ハウジング12をインプラント窩側に単に延ばしただけの形状ではなくすることで、即ち、周方向に隙間を設けた形状とすることで、ハウジング12と支持部13との境界が明確になり、支持部13を義歯床フレーム10から取り除く際にどの部分が支持部13であるか容易に判断することができる。
【0049】
インプラント窩の形成工程において、切開されて剥離された歯肉は、元の位置であるインプラント窩が形成される部分に戻ろうとする。支持部13は、上記のようにインプラント窩が形成される部分の周囲に接することで、歯肉を排除し、歯肉が元の位置に戻ることを防ぐことができる。
【0050】
また、歯肉を切開していない状態では、義歯床フレーム10を患者の口腔100に装着しても、ハウジング12及び支持部13は、適切に患者の口腔100に装着できない。具体的には、顎骨に接するべき支持部13の先端部分が顎骨を覆う歯肉に接して、ハウジング12及び支持部13が顎骨に対して浮いた状態となる。しかしながら、支持部13の先端が接する歯肉の部分は、切開されて剥離されるべき部分となる。そのため、歯肉を切開していない状態で義歯床フレーム10を患者の口腔100に装着し、支持部13を歯肉に押し付けて食い込ませることで、切開する部分の目印となる痕を付けることができる。なお、歯肉を切開する際には、当該歯肉の部分に麻酔をかけるため、支持部13を押し付けることによる患者の身体的負担は少ない。
【0051】
なお、支持部13の形状は、上述したものに限られず、インプラント窩の形成工程においてハウジング12のぐらつきを防ぐという上記の目的を果たし得るものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、支持部13は、隙間を開けて複数配した様な形状ではなく、単にハウジング12の筒状部120をインプラント窩側に延ばした形状としてもよい。
【0052】
また、上記の例では、顎骨を露出させる例を示したが、顎骨を露出しない場合でも、本実施形態を適用することができる。この場合、支持部13のインプラント窩の方向に延びる長さを、インプラント窩を形成する際に患者の口腔100の表面(例えば、歯肉の部分)に接する長さとすればよい。即ち、この場合、支持部13は、顎骨以外の口腔100の表面でハウジング12を支持すればよい。
【0053】
また、上記では支持部13は、ハウジング12から延びるものとしたが、インプラント窩の形成の際にハウジング12を支持できるのであれば、ハウジング12ではなく、ベース部11から延びていてもよい。例えば、支持部13は、ベース部11のハウジング12が設けられる部分の近くから延びていてもよい。
【0054】
ハウジング12及び支持部13のサイズの例を
図4及び
図5を用いて説明する。ハウジング12の筒状部120及び支持部13で形成される筒形状の外径L1は6.0mm、内径L2は5.0mmである。ハウジング12の筒状部120及び支持部13の厚さL3は、0.5mmである。ハウジング12の貫通孔12aの直径L4は、2.0mmである。ハウジング12の貫通孔形成部122の外径L5は3.0mmであり、ハウジング12の貫通孔形成部122の厚さL6は、0.5mmである。筒状部120の他端部120bにおける端面120dから、筒状部120の中間部12dに設けた隙間12cまでの長さL7は、1.0mmである。なお、長さL7は、貫通孔形成部122の軸方向長さでもある。突起14のハウジング12からの高さL8は、1.0mmである。これらの長さL7,L8の和L9、即ち、ドリルをガイドする部分の長さL9は、2.0mmである。ハウジング12の、中間部12dに設けた隙間12cから筒状部120の一端部120aにおける端面までの長さL10、即ち、アタッチメントを保持する部分の長さL10は、アタッチメントの長さに応じた長さであり、例えば、2.7mm以上である。支持部13のインプラント窩の方向に延びる長さL11は、患者の歯肉の厚みに応じた長さであり、例えば、2~3mmである。ハウジング12の溝12bの幅L12は、1.8mmである。
【0055】
ベース部11は、少なくともハウジング12以外の箇所で患者の口腔100に接触し、ハウジング12の箇所では当該患者の口腔100に接触せずに当該患者の口腔100に装着できるように形成されていてもよい。具体的には、義歯床フレーム10は、患者の口腔100の歯肉に密着する部分と、歯肉との間にわずかな隙間ができる(歯肉からわずかに浮く)部分とを有する。患者の口腔100に密着する部分は、例えば、口蓋又は口腔底に沿う部分又は患者自身の歯に装着される、ベース部11の部分11bである。歯肉との間にわずかな隙間ができる部分は、部分11aである。部分11aには義歯床1の歯肉部21となるレジンが付けられ、このレジンが歯肉とベース部11との隙間を埋める。これにより、義歯床1を患者の顎堤に密着させて装着させることができる。また、歯部20には噛んだ時に大きな力がかかるが、歯肉と部分11aとの間にレジンを介在させることにより、金属の義歯床フレーム10が顎堤に当たって歯肉を痛めることを防ぐ。
【0056】
義歯床フレーム10(即ち、ベース部11、ハウジング12、支持部13及び突起14)は、例えば、コバルトクロム、チタン又はチタン合金によって構成されている。強度の点でコバルトクロムが好適である。あるいは、義歯床フレーム10は、義歯床フレームに用いられ得る上記以外の金属によって構成されていてもよい。また、義歯床フレーム10は、金属以外の部材、例えば、樹脂によって構成されていてもよい。義歯床フレーム10は、例えば、患者毎に、CAD(Computer Aided Design)によって設計され、CAM(Computer Aided Manufacturing)によって作成される。具体的には、義歯床フレーム10は、ミリングマシン又は3Dプリンタによって作成される。
【0057】
義歯床1は、義歯床フレーム10を含んで構成される。インプラント窩の形成後、義歯床フレーム10から支持部13が取り除かれる。また、ハウジング12に突起14が設けられている場合には、義歯床フレーム10から突起14が取り除かれてもよい。支持部13及び突起14の除去は従来の方法で行われればよい。例えば、支持部13及び突起14をカットや切削により取り除けばよい。
【0058】
支持部13及び突起14の除去の後、義歯床1を作成するため、義歯床フレーム10のハウジング12にアタッチメントが取り付けられる。アタッチメントが取り付けられた義歯床フレーム10には、歯部20及び歯肉部21となるレジンが付けられて義歯床1となる。歯肉部21となるレジンは、歯部20の部分の根本及び患者の顎堤に接触する部分等に付けられる。
【0059】
義歯床1のレジンの部分の設計及び作成は、義歯床フレーム10の設計及び生成と同様にCAD及びCAMによって行われればよい。具体的には、義歯床1のレジンの部分の設計及び作成は、従来と同様に行われればよい。義歯床1に用いられるレジンは、従来と同様のものでよい。
【0060】
義歯床1の歯部20は、ハウジング12の真上に配されていてもよい。また、貫通孔12aから、あるいは筒状部120と貫通孔形成部122との間から、レジンを入れることでアタッチメントをハウジング12の筒状部120の一端部120a方向に押して移動させることができる。これによって、アタッチメントの軸方向の位置調整を行ってもよい。以上が、本実施形態に係る義歯床フレーム10及び義歯床1である。
【0061】
引き続いて、
図7及び
図8を用いて、本実施形態に係る義歯床フレーム10を用いたインプラント治療を説明する。
図7及び
図8は、患者の口腔100のインプラント窩が設けられる部分のインプラント窩の軸方向に沿った断面を模式的に示す図である。以下では、二回法でのインプラント治療の例を示すが、二回法以外でのインプラント治療でも本実施形態に係る義歯床フレーム10を用いることができる。
【0062】
まず、患者のレントゲン又はCT画像等を基に、患者の顎骨に形成されるインプラント窩の位置、即ち、インプラントの埋植位置が決められる。続いて、インプラント窩の位置に基づいて、義歯床フレーム10及び義歯床1の設計が行われる。この設計は、例えば、CADによって行われる。続いて、設計された義歯床フレーム10が作成される。この作成は、例えば、CAMによって行われる。
【0063】
図7(a)に示すように、患者の口腔100のインプラント窩が設けられる部分、即ち、患者の口腔100の歯牙欠損部は、顎骨110を歯肉130が覆った状態となっている。まず、
図7(b)に示すように当該部分の歯肉130が切開及び剥離されて、顎骨110が露出される。なお、切開の前に義歯床フレーム10が患者の口腔100に装着されて、ハウジング12及び支持部13が歯肉に押し付けられて切開する部分の目印となる痕が付けられてもよい。
【0064】
続いて、
図7(c)に示すように義歯床フレーム10が患者の口腔100に装着される。この際、義歯床フレーム10の支持部13はインプラント窩が形成される部分の近傍で顎骨(歯槽骨)に接することで、ハウジング12を支持する。即ち、ハウジング12は、顎骨に対して固定される。続いて、
図7(d)に示すように義歯床フレーム10に設けられたハウジング12の貫通孔12aに、インプラント窩を形成するためのドリル300が挿し込まれる。なお、貫通孔12aにドリル300が挿し込まれる前にドリル300の先端が、ハウジング12の溝12bによって貫通孔12aまでガイドされてもよい。突起14及び貫通孔12aをガイドとして、ドリル300によって患者の顎骨110にインプラント窩が形成される。
【0065】
この際、支持部13は、切開されて剥離された歯肉が元の位置に戻ることを防ぐ。また、上述したように支持部13が複数の脚のような形状となっていたり、ハウジング12が隙間12cを有していたりすると、支持部13の脚の間あるいは隙間12cから、インプラント窩を形成する部分を目視等で容易に確認することができる。また、インプラント窩を形成する際、支持部13の脚の間やハウジング12の隙間12cから水をかけて、顎骨及びドリル300を冷やしてもよい。これにより、ドリリングで生じる摩擦熱を低減することかでき、摩擦熱による骨組織の損傷を防ぐことができる。
【0066】
続いて、
図8(a)に示すように、形成されたインプラント窩にフィクスチャ200が埋植される。続いて、
図8(b)に示すように、歯肉130が閉じられ、フィクスチャ200が顎骨110に骨結合する(インテグレーション)のが待たれる。また、患者に対して以下に述べる処置を行うまでの間に、義歯床フレーム10から支持部13及び突起14が取り除かれる。
【0067】
フィクスチャ200の骨結合後、フィクスチャ200が埋植された位置の歯肉130に穴が開けられる。歯肉の穴開けは、例えば、カップリングバー等の穴開け用の器具によって行われる。この際、支持部13が取り除かれた義歯床フレーム10が患者の口腔100に再度装着され、ハウジング12の貫通孔12aが、器具による穴開けのガイドとされてもよい。貫通孔12aが、器具による穴開けのガイドとされる場合には、義歯床フレーム10からの突起14の除去は、ガイドが行われた後でもよい。あるいは、穴開けは、義歯床フレーム10が用いられずに行われてもよい。続いて、穴の下にあるフィクスチャ200に、支台側のアタッチメントが設けられたアバットメント210が取り付けられる。これによって、支台側は、
図8(c)に示す状態となる。
【0068】
一方で支持部13及び突起14が取り除かれた義歯床フレーム10にはアタッチメント30が取り付けられる。また、上記の設計に基づいて義歯床フレーム10には歯部20及び歯肉部21となるレジンが付けられて、
図2及び
図8(d)に示す義歯床1が作成される。義歯床1は、アタッチメント30が支台側のアタッチメントと連結することで、患者の口腔100内に装着されて利用される。以上が、本実施形態に係る義歯床フレーム10を用いたインプラント治療である。
【0069】
本実施形態に係る義歯床フレーム10に形成されたハウジング12の貫通孔12aは、インプラント窩の形成の際等のガイドとして用いることができる。従って、本実施形態によれば、義歯床1とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする。
【0070】
また、支持部13が、インプラント窩の形成の際にインプラント窩が形成される部分の近傍、例えば、顎骨に接して、ハウジング12を支持することで、ハウジング12を安定した状態にすることができる。これによって、ハウジング12の貫通孔12aを適切かつ確実にガイドとして用いることができる。従って、サージカルガイドを別に作成するコストをかけずにガイデッドサージェリーを実施することができ、容易かつ確実にインプラント治療を行うことができる。従来行われてきたガイデッドサージェリーでは、使用後のサージカルガイドは不要となり廃棄処分となり、環境に優しくない(エコではない)。本実施形態では、サージカルガイドが不要となるため、廃棄物の問題も解消でき、環境にも優しい(エコである)。
【0071】
また、上述したように支持部13は、インプラント窩の形成の際等に切開されて剥離された歯肉が元の位置に戻ることを防ぐこともできる。また、支持部13は、切開する部分の目印となる痕を付けるのにも用いることができる。
【0072】
また、上述した実施形態のように、支持部13はインプラント窩の方向に突出すると共に間隔を設けて形成される複数の部分を含んで構成されてもよい。このように支持部13に間隔が設けられていれば、その間隔の部分からインプラント窩を形成する部分を目視等で容易に確認することができる。また、その間隔の部分から、ドリルの使用による摩擦熱を下げるための水をかけることができる。従って、この構成によれば、より適切かつ容易にインプラント窩を形成することができる。
【0073】
また、支持部13をこのような構成とすることで、ハウジング12と支持部13との境界部分が明確になり、支持部13を義歯床フレーム10から取り除く際にどの部分が支持部13であるか容易に判断することができる。但し、支持部13は上記の構成とする必要はなく、ベース部11又はハウジング12から延びており、上記のようにハウジング12を支持できるものであればどのような構成であってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態のように、ハウジング12は、インプラント窩の形成の際のガイドとなる、貫通孔12aに繋がる溝12bを有していてもよい。この構成によれば、貫通孔12aに加えて溝12bをガイドとして用いることで、より適切かつ容易にインプラント窩を形成することができる。
【0075】
更に上述した実施形態のように、溝12bは、患者の口腔の外側かつ近心に向かう方向に設けられていてもよい。このように、溝12bは、患者の口腔の頬側又は唇側から貫通孔12aに向かって延びていてもよい。また、溝12bの幅は、貫通孔12aの径よりも小さくてもよい。これらの構成によれば、上述したようにより適切に溝12bをドリルのガイドとして用いることができる。但し、溝12bは上記の構成を取る必要はなく、インプラント窩の形成の際のガイドとなるものであればよい。また、必ずしも、溝12bをハウジング12に設ける必要はない。
【0076】
また、上述した実施形態のように、ハウジング12には、当該貫通孔12aと共にインプラント窩の形成の際のガイドになる複数の突起14が設けられていてもよい。この構成によれば、貫通孔12aに加えて突起14をガイドとして用いることで、より適切かつ容易にインプラント窩を形成することができる。
【0077】
また、上述した実施形態のように、義歯床フレーム10のベース部11は、少なくともハウジング12以外の箇所で患者の口腔100に接触し、ハウジング12の箇所では当該患者の口腔100に接触せずに当該患者の口腔100に装着できるように形成されているようにしてもよい。この構成によれば、義歯床フレーム10のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所をレジンで覆う等してより適切な義歯床1を作成することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る義歯床1は、本実施形態に係る義歯床フレーム10を含んで構成されてもよい。上述したように義歯床1の歯部20は、
図8(d)に示すようにハウジング12の直上に配されていてもよい。即ち、ハウジング12の位置、換言すると、インプラント窩の位置を、義歯床1の歯部20に対応する位置にすることとしてもよい。この構成によれば、噛む力をインプラントだけなく、金属製のハウジング12でも支えることとなる。これによって、義歯床1の摩耗及び欠け等の破損が生じることを低減することができる。即ち、丈夫な義歯床1を作成することができる。その結果、インプラントの本数を増やすことなく、患者の身体的及び経済的負担が少ないインプラント治療を行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
1…義歯床、10…義歯床フレーム、11…ベース部、12…ハウジング、12a…貫通孔、12b…溝、13…支持部、14…突起、30…アタッチメント、120…筒状部、122…貫通孔形成部。