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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056631
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/04 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
F04B45/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165954
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】青 良治
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA11
3H077BB10
3H077CC09
3H077CC13
3H077CC17
3H077DD02
3H077EE04
3H077FF02
3H077FF13
3H077FF54
(57)【要約】
【課題】 ガス流の脈動を低減させることが可能であり、かつ、動作時の振動が抑制されたガス検知器用のダイヤフラムポンプ装置の提供。
【解決手段】 ダイヤフラムポンプ装置10は、ポンプ室を備えたポンプ筐体11と、ポンプ室を形成するダイヤフラム31とを有し、ポンプ室に吸入弁機構および排出弁機構を備えたガス検知器用のものであって、ポンプ筐体には、吸気口から吸入弁機構に向かう流路に複数のバッファ室21~24が設けられ、2つのポンプ室が最下流のバッファ室を挟んだ両側に対向配置され、ポンプ室を形成するそれぞれのダイヤフラムは、駆動機構の1つの駆動源によって同時に駆動されるように配置されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口および排気口と連通するポンプ室を備えたポンプ筐体と、周縁部が前記ポンプ筐体に固定されて前記ポンプ室を形成するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムを駆動させる駆動機構とを有し、前記ポンプ室の前記ポンプ筐体側に吸入弁機構および排出弁機構を備えたガス検知器用のダイヤフラムポンプ装置であって、
前記ポンプ筐体には、前記吸気口から前記吸入弁機構に向かう流路に複数のバッファ室からなるチャンバ室が設けられ、
前記ポンプ室が2つ備えられ、2つの前記ポンプ室は最下流の前記バッファ室を挟んだ両側に対向配置され、
前記ポンプ室を形成するそれぞれの前記ダイヤフラムは、前記駆動機構の1つの駆動源によって同時に駆動されるように配置されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ装置。
【請求項2】
前記チャンバ室が、4つのバッファ室からなり、
前記ポンプ室に隣接する最下流のバッファ室が、最も大きな容量を有することを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラムポンプ装置。
【請求項3】
前記吸入弁機構および排出弁機構は、前記ポンプ筐体の前記チャンバ室とポンプ室間の隔壁と、前記隔壁のポンプ室側に配置された弁体と、前記弁体のポンプ室側に設けられた弁座を有し、
前記吸入弁機構は、前記弁体に設けられた1つの吸入弁体孔と、前記隔壁の前記吸入弁体孔の外周の位置に設けられた複数の吸入隔壁孔とを有し、
前記排出弁機構は、前記弁体に設けられた1つの排出弁体孔と、前記弁座の前記排出弁体孔の外周の位置に設けられた複数の排出弁座孔とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイヤフラムポンプ装置。
【請求項4】
前記隔壁は、前記複数の吸入隔壁孔の内周側における前記吸入弁体孔に対応する位置に吸入側凸部を有することを特徴とする請求項3に記載のダイヤフラムポンプ装置。
【請求項5】
前記弁座は、前記複数の排出弁座孔の内周側における前記排出弁体孔に対応する位置に排出側凸部を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のダイヤフラムポンプ装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知器に被検ガスを供給するダイヤフラムポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス検知器のある種のものにおいては、ガスセンサに被検ガスを導入するための手段として、例えばモータによって駆動されるダイヤフラムポンプ装置が利用されている(例えば特許文献1参照)。
このようなダイヤフラムポンプ装置においては、例えば、駆動用モータによりダイヤフラムの中央部が往復動され、ダイヤフラムによって区画形成されたポンプ室内の圧力が減圧または加圧されることにより、被検ガスなどの流体の吸気または排気が行われる。このため、ダイヤフラムポンプの拍動によってガス検知器に供給される被検ガスのガス流は脈動を伴ういわゆる脈動流となるが、脈動による流量変動ないしは圧力変動の程度が大きい場合には、センサ出力に与える影響が大きくなって安定したガス検知を行うことができないことから、ガス流の脈動を低減させるための対策を講じることが必要とされている。また、上記のようにダイヤフラムの中央部が往復動される構成上、ダイヤフラムポンプ装置においては動作時の振動が大きく生じ、ダイヤフラムポンプ装置自体およびガス検知器に大きな振動音が発生してしまう、という問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-134331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、ガス流の脈動を低減させることが可能であり、かつ、動作時の振動が抑制されたガス検知器用のダイヤフラムポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のダイヤフラムポンプ装置は、吸気口および排気口と連通するポンプ室を備えたポンプ筐体と、周縁部が前記ポンプ筐体に固定されて前記ポンプ室を形成するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムを駆動させる駆動機構とを有し、前記ポンプ室の前記ポンプ筐体側に吸入弁機構および排出弁機構を備えたガス検知器用のダイヤフラムポンプ装置であって、
前記ポンプ筐体には、前記吸気口から前記吸入弁機構に向かう流路に複数のバッファ室からなるチャンバ室が設けられ、
前記ポンプ室が2つ備えられ、2つの前記ポンプ室は最下流の前記バッファ室を挟んだ両側に対向配置され、
前記ポンプ室を形成するそれぞれの前記ダイヤフラムは、前記駆動機構の1つの駆動源によって同時に駆動されるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のダイヤフラムポンプ装置によれば、バッファ室の緩衝作用によって吸気口から吸気する気体を平準化することができるので、ダイヤフラムポンプによる吸気の際に構成上不可避的に生じていたガス流の脈動を低減させることができ、その結果、ガス検知器に被検ガスを安定した流量特性で流通させることができるとともにセンサ出力に対する影響を低減することができる。また、ダイヤフラムポンプ装置自体にバッファ室が設けられていることにより、このダイヤフラムポンプ装置を適用するガス検知器に、別途にバッファ室を設ける必要がなくなるので、適用するガス検知器の設計の自由度が高くなる。
また、複数のバッファ室が設けられていることにより、所期の脈動低減効果の得られる十分な大きさの容量を有するバッファ用空間を確保しながら、ダイヤフラムポンプ装置の小型化を図ることができる。さらに、バッファ室が2つのポンプ室の間に形成された空間を利用して配置されていることにより、ポンプ筐体内のスペースが有効に利用されてバッファ室が合理的に配置されるので、より一層ダイヤフラムポンプ装置の小型化を図ることができる。
【0007】
また、本発明のダイヤフラムポンプ装置によれば、対称配置された2つのダイヤフラムが1つの駆動源によって同時に駆動される構成とされていることにより、各ダイヤフラムの駆動による振動を相殺することができるので、ダイヤフラムポンプ装置それ自体の動作時の機械的な振動を抑制することができるとともに適用するガス検知器に対する振動の影響を軽減することができる。また、このダイヤフラムポンプ装置を適用するガス検知器に、別途に振動抑制機構を設ける必要がなくなるので、適用するガス検知器の設計の自由度が高くなる。
【0008】
また、本発明のダイヤフラムポンプ装置によれば、ダイヤフラムポンプが2つ備えられていることにより、一方のダイヤフラムポンプが破損等により機能が低下あるいは完全に損なわれても、他方のダイヤフラムポンプの出力を上げること等により全体のポンプ機能を維持することができる。
【0009】
また、本発明のダイヤフラムポンプ装置によれば、吸入弁機構において弁体が1つの吸入弁体孔を有するとともに隔壁がその周囲に配置される複数の吸入隔壁孔を有することにより、あるいは、排出弁機構において弁体が1つの排出弁体孔を有するとともに弁座がその周囲に配置される複数の排出弁座孔を有することにより、逆止弁の効果が得られながらも静音効果が得られる。さらに、吸入弁機構において隔壁が吸入側凸部を有するとともにその周囲に複数の吸入隔壁孔を有する構成、あるいは、排出弁機構において弁座が排出側凸部を有するとともにその周囲に複数の排出弁座孔を有する構成によれば、弁体の吸入弁体孔と隔壁との接触面積あるいは弁体の排出弁体孔と弁座との接触面積を最小限に抑えることができるので、ダイヤフラムポンプの拍動に伴う弁体の接触音を抑制することができ、より一層の静音効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のダイヤフラムポンプ装置の一例における外観を示す斜視図である。
図2図1のダイヤフラムポンプ装置の上部の横断面を示す斜視図である。
図3図1のダイヤフラムポンプ装置の縦断面を示す斜視図である。
図4図1のダイヤフラムポンプ装置の下部の横断面を示す斜視図である。
図5図1のダイヤフラムポンプ装置の中部の横断面を示す斜視図である。
図6図1のダイヤフラムポンプ装置の隔壁、弁体および弁座を示す分解斜視図である。
図7図1のダイヤフラムポンプ装置の吸入弁機構および排出弁機構の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係るダイヤフラムポンプ装置について、図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態に係るダイヤフラムポンプ装置10は、ガス検知器のガスセンサに被検ガスを供給するためのものである。このダイヤフラムポンプ装置10がガスセンサよりもガス流路の下流側に介装されることにより、吸気によりガスセンサに被検ガスを供給することができる。このダイヤフラムポンプ装置10は、図1および図2に示すように、2つのダイヤフラムポンプ30,30が配設されたポンプ筐体11と、ダイヤフラムポンプ30,30のポンプ室32,32に吸入する気体によるガス流を緩衝するバッファ用空間と、ダイヤフラムポンプ30,30を駆動させる例えばモータなどの駆動機構19A,19Bを有する駆動源とにより構成されている。
【0012】
ポンプ筐体11は、図3にも示すように、片側面が開口された略箱形状2つの筐体形成部13A,13Bからなり、互いの開口縁を対向して密着させて固定することにより、吸気側チャンバ室20および排気側チャンバ室25となる空間が気密に画成される構成とされている。筐体形成部13A(筐体形成部13B)は、一体の樹脂成形品よりなり、その下部は上下に薄い平らな略四角形状を有し、その上部は、前方に振動板を有する駆動機構19A(駆動機構19B)が収容される、前方に開口する駆動機構用凹所14および右方(左方)にダイヤフラムポンプ30を形成する部材が装着される右方(左方)に開口するポンプ用凹所15が形成された左右に薄い略四角形状を有している。筐体形成部13A(筐体形成部13B)におけるポンプ用凹所15を形成する右方(左方)の前後方向に伸びる側壁が、ダイヤフラムポンプ30を形成する部材を装着するための隔壁12となる。以上のように、ポンプ筐体11には、ガス流が流通される吸気側チャンバ室20および排気側チャンバ室25、並びに、ダイヤフラムポンプ30および駆動機構19A(駆動機構19B)などの駆動源の装着部のすべてが形成されている。
一方の筐体形成部13Aは左側の一面が開口され、他方の筐体形成部13Bは右側の一面が開口され、開口縁同士を合わせたときの密着面に対してほぼ対称な形状を有している。
なお、図2図5において、左右方向をx方向、前後方向をy方向として示した。
【0013】
筐体形成部13A,13Bの開口縁が互いに対向して密着されたポンプ筐体11においては、図4に示すように、その下部後方に吸気側チャンバ室20が配置されるとともに下部前方に排気側チャンバ室25が配置されており、右前方に吸気側チャンバ室20に連通する吸気口16が開口されるとともに、左前方に排気側チャンバ室25に連通する排気口17が開口されている。
吸気側チャンバ室20は、吸気口16から吸入弁機構を介してダイヤフラムポンプ30,30のポンプ室32,32内に向かう、2つのダイヤフラムポンプ30,30に共通する吸気流路であり、吸気側チャンバ室20には、吸気流路に沿って順に4つのバッファ室21~24が互いに連通するよう連続して設けられている。具体的には、第1のバッファ室21が、ポンプ筐体11の下部の中央領域に、ポンプ筐体11の下部の右前方において吸気通路16Hを介して吸気口16と前後方向に連通するよう配置され、第2のバッファ室22が、ポンプ筐体11の下部における第1のバッファ室21の後方領域に、区画隔壁21Wによって区画されるとともに小さな面積の開口部21Hを介して第1のバッファ室21と前後方向に連通するよう配置され、第3のバッファ室23が、ポンプ筐体11の下部における第2のバッファ室22の後方領域に、図5に示すように、区画隔壁22Wによって区画されるとともに小さな面積の開口部22Hを介して第2のバッファ室22と前後方向に連通するよう配置され、第4のバッファ室24が、ポンプ筐体11の上部における2つのダイヤフラムポンプ30,30の間の空間の後方領域に、区画隔壁23Wによって区画されるとともに小さな面積の開口部(図示せず)を介して第3のバッファ室23と上下方向に連通するよう配置されている。そして、最下流のバッファ室である第4のバッファ室24は、吸入弁機構の吸入隔壁孔12Sを介してポンプ室32と連通している。
【0014】
隣接するバッファ室間を連通させる開口部の面積は、例えば1.0~5.0mm2 とされる。
吸気側チャンバ室20においては、脈動を発生させる箇所(ダイヤフラムポンプ30)に最も近接して配置されるバッファ室において脈動を大きく低減させる必要があるという理由から、ポンプ室32に隣接する最下流の第4のバッファ室24が最も大きな容量を有することが好ましい。バッファ室21~24のそれぞれの容量は、所期の脈動低減効果が得られる大きさであれば、特に限定されるものではなく、例えば上流側から下流側に向かって第1のバッファ室21が3500mm3 、第2のバッファ室22が4300mm3 、第3のバッファ室23が300mm3 、最下流の第4のバッファ室24が10000mm3 とされる。
【0015】
排気側チャンバ室25は、排出弁機構を介してポンプ室32,32内から排気口17に向かう、2つのダイヤフラムポンプ30,30に共通する排気流路であり、区画隔壁28a~28cによって吸気側チャンバ室20と気密に区画されている。排気側チャンバ室25には、具体的には、排気流路に沿って、第1の排気流路室26が、ポンプ筐体11の上部における2つのダイヤフラムポンプ30,30の間の空間における第4のバッファ室24の前方領域に、区画隔壁28a,28bによって吸気側チャンバ室20の第4のバッファ室24および第1のバッファ室21と区画されるとともに排出弁機構の排出隔壁孔12Vを介してポンプ室32と連通するよう配置され、第2の排気流路室27が、第1の排気流路室26の斜め下方であってポンプ筐体11の下部における第1のバッファ室21の前方領域に、区画隔壁28cによって第1のバッファ室21と区画されるとともに小さな面積の開口部(図示せず)を介して第1の排気流路室26と上下方向に連通され、さらに、ポンプ筐体11の下部の左前方において排気通路17Hを介して排気口17と前後方向に連通するよう配置されている。
排気側チャンバ室25が複数の排気流路室から構成されていることは必須ではなく、また、各排気流路室の容量は、特に限定されない。
【0016】
ダイヤフラムポンプ30は、例えば略円柱状または円錐台状の内部空間を形成するカップ状のダイヤフラム31と、このダイヤフラム31の開口側に設けられてポンプ室32を画成する弁座33と、ダイヤフラム31の底部側から装着されてダイヤフラム31の開口端の周縁部を保持固定する矩形枠状の固定用部材34と、弁体35を介して弁座33に対接されて配置された、ポンプ筐体11の隔壁12と、ダイヤフラム31の中央部31Aがその先端に埋設固定された、例えば樹脂材料よりなる揺動レバー38とにより構成されている。揺動レバー38は、ポンプ筐体11の後方外側に上下方向に伸びる揺動軸39に軸支され、揺動することによりダイヤフラム31の中央部31Aを左右方向に往復動させるよう配設されている。
【0017】
2つのダイヤフラムポンプ30,30は、各々、開口端の周縁部が固定用部材34と弁座33との間に挟まれた状態で、弁座33を介してポンプ筐体11のポンプ用凹所15の隔壁12に対して左右の外方側から固定用ネジ(図示せず)によって一体に固定されており、これにより、2つのダイヤフラムポンプ30,30がポンプ筐体11と一体化されてダイヤフラムポンプ装置10が構成されている。2つのダイヤフラムポンプ30,30は、ダイヤフラムポンプ装置10の中央面(2つの筐体形成部13A,13Bの密着面)を挟んで互いに面対称な構造となるように対向配置されている。また、2つのダイヤフラムポンプ30,30は、ダイヤフラム31,31がそれぞれ駆動機構19A,19Bを介して1つの駆動源によって同時に駆動されるように配置されている。
【0018】
ダイヤフラム31は、例えばエチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴムなどのゴム材料およびその他の弾性体よりなり、硬度(ショア硬さHS)が例えば60°である(例えば0.5Nの荷重を負荷したときの歪み量(変形量)が3.2mm程度となる変形性(弾性)を有する)ものである。
【0019】
ダイヤフラムポンプ30は、吸気流路に連続する吸入弁機構および排気流路に連続する排出弁機構を有し、全体として一方向の流体流を許容しその逆方向の流体流を禁止する逆止弁構造とされている。
吸入弁機構は、図6および図7に示されるように、ポンプ筐体11の吸気側チャンバ室20の最下流の第4のバッファ室24とポンプ室32との間の隔壁12と、隔壁12のポンプ室32側に配置された弁体35と、弁体35のポンプ室32側に設けられた弁座33とから構成される。弁体35には、1つの吸入弁体孔35Sが設けられるとともに、隔壁12には、吸入弁体孔35Sの外周の位置に設けられた複数の吸入隔壁孔12Sが設けられている。また、弁座33には、弁体35の吸入弁体孔35Sに対応する位置に、1つの吸入弁座孔33Sが設けられている。
そして、隔壁12には、複数の吸入隔壁孔12Sの内周側の弁体35の吸入弁体孔35Sに対応する位置に吸入側凸部12Pが形成されている。吸入側凸部12Pは、隔壁12から弁体35側に凸となるよう、わずかに膨出して形成されている。吸入側凸部12Pの直径は、弁体35の吸入弁体孔35Sの径よりも大きく、吸入側凸部12Pの高さは、動作停止時に弁体35の吸入弁体孔35Sに接触するが吸入弁体孔35Sよりも弁座33側に突出しない高さであることが好ましく、例えば0.3mmとされる。
【0020】
また、排出弁機構は、ポンプ筐体11の排気側チャンバ室25の最上流の第1の排気流路室26とポンプ室32との間の隔壁12と、隔壁12のポンプ室32側に配置された弁体35と、弁体35のポンプ室32側に設けられた弁座33とから構成される。弁体35には、1つの排出弁体孔35Vが設けられるとともに、弁座33には、排出弁体孔35Vの外周の位置に設けられた複数の排出弁座孔33Vが設けられている。また、隔壁12には、弁体35の排出弁体孔35Vから前後方向に半分ずれた位置に、1つの排出隔壁孔12Vが設けられている。
そして、弁座33には、複数の排出弁座孔33Vの内周側の弁体35の排出弁体孔35Vに対応する位置に排出側凸部33Pが形成されている。排出側凸部33Pは、弁座33から弁体35側に凸となるよう、わずかに膨出して形成されている。排出側凸部33Pの直径は、弁体35の排出弁体孔35Vの径よりも大きく、排出側凸部33Pの高さは、動作停止時に弁体35の排出弁体孔35Vに接触するが排出弁体孔35Vよりも隔壁12側に突出しない高さであることが好ましく、例えば0.3mmとされる。
【0021】
ダイヤフラムポンプ装置10の一構成例を示すと、ダイヤフラム31のストローク(左右方向の変位量)は、例えば2mmであり、ガス吸入量は、例えば0.3~1.2L/minの流量の被検ガスをガスセンサに供給することができる大きさ、例えば0.6L/minであり、真空到達度は例えば15kPaである。
【0022】
以上のダイヤフラムポンプ装置10は、駆動源が始動されると、2つの駆動機構19A,19Bによって各々ダイヤフラムポンプ30,30の揺動レバー38,38が中央面に対して面対称な動きとなるように同期してそれぞれ揺動されることにより、ダイヤフラム31,31の中央部31A,31Aが面対称に左右方向に往復動されてダイヤフラムポンプ30,30に継続的な拍動が生じる。ダイヤフラムポンプ30,30の拍動によりポンプ室32,32内の圧力が減圧されると、ダイヤフラム31,31の容積変化(膨張)によって、吸入弁機構においては、弁体35が弁座33に密着するように弾性的に変形され、これにより、弁体35の吸入弁体孔35Sが隔壁12の吸入側凸部12Pから離間し、吸入弁体孔35Sが弁座33の吸入弁座孔33Sと連通することにより吸気流路が開放されて、ガス流が第4のバッファ室24からポンプ室32,32内に吸入される。このとき、ガス流が吸気口16から吸気流路に沿って各バッファ室21~24を順に流通して吸気されてポンプ室32,32に到達される。吸気流路が開放されたとき、排出弁機構においては、弁体35の排出弁体孔35Vが弁座33の排出側凸部33Pに密着して排気流路が閉塞された状態とされている。
一方、ダイヤフラムポンプ30,30の拍動によりポンプ室32,32内の圧力が加圧されると、ダイヤフラム31,31の容積変化(収縮)によって、排出弁機構においては、弁体35が隔壁12に密着するように弾性的に変形され、これにより、弁体35の排出弁体孔35Vが弁座33の排出側凸部33Pから離間し、排出弁体孔35Vが隔壁12の排出隔壁孔12Vと連通することにより排気流路が開放されて、ガス流がポンプ室32,32から第1の排気流路室26に排出され、排気流路に沿って排気口17を介して排気される。このとき、吸入弁機構においては、弁体35の吸入弁体孔35Sが隔壁12の吸入側凸部12Pに密着して吸気流路が閉塞された状態とされる。
【0023】
通常のダイヤフラムポンプ装置においては吸気口から吸気されるガス流は脈動流となるところ、以上のようなダイヤフラムポンプ装置によれば、ガス流が複数のバッファ室21~24を経由することにより、緩衝作用によって吸気口から吸気する気体を平準化することができるので、脈動による流量変動の程度が小さく抑制された状態で吸気口から気体が吸気される。従って、このダイヤフラムポンプ装置10を、ガス検知器に対してガス流路の上流側に接続することにより、ガス検知器のガスセンサに脈動が低減された状態のガス流を供給することができる。
【0024】
ダイヤフラムポンプ装置10においては、ガス流の流量はガス流量センサによって適時に監視されており、一定の流量に維持されるよう駆動源がフィードバック制御されている。そして、ダイヤフラムポンプ装置10の一方のダイヤフラムポンプ30に破損や機能の低下が生じ、拍動の停止や出力の低下が生じた場合には、ガス流量センサによって測定される例えばパルスの幅や高さによって駆動源の左右の駆動機構19A,19Bのそれぞれの出力を変更することにより、破損や機能の低下の生じていない方のダイヤフラムポンプ30の出力を上げることによってガス流の流量を維持する構成とされている。このような構成を有することにより、ガス流を停止させることなく、例えばダイヤフラムポンプ30の交換のメンテナンス作業までガス流の流量を維持することができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 ダイヤフラムポンプ装置
11 ポンプ筐体
12 隔壁
12P 吸入側凸部
12S 吸入隔壁孔
12V 排出隔壁孔
13A,13B 筐体形成部
14 駆動機構用凹所
15 ポンプ用凹所
16 吸気口
16H 吸気通路
17 排気口
17H 排気通路
19A,19B 駆動機構
20 吸気側チャンバ室
21 第1のバッファ室
21H 開口部
21W 区画隔壁
22 第2のバッファ室
22H 開口部
22W 区画隔壁
23 第3のバッファ室
23W 区画隔壁
24 第4のバッファ室
25 排気側チャンバ室
26 第1の排気流路室
27 第2の排気流路室
28a~28c 区画隔壁
30 ダイヤフラムポンプ
31 ダイヤフラム
31A 中央部
32 ポンプ室
33 弁座
33S 吸入弁座孔
33V 排出弁座孔
33P 排出側凸部
34 固定用部材
35 弁体
35S 吸入弁体孔
35V 排出弁体孔
38 揺動レバー
39 揺動軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7