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特開2023-56638形鋼システム及び形鋼システムの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056638
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】形鋼システム及び形鋼システムの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20230413BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
E04G21/14
E04B1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165962
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】江川 遼平
(72)【発明者】
【氏名】中村 直志
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA08
2E174DA13
2E174DA56
2E174DA67
(57)【要約】
【課題】互いに干渉せずに折り畳むことができ、折り畳みを解除する時には形鋼の位置を合わせることができる形鋼システム及び形鋼システムの施工方法を提供する。
【解決手段】ヒンジ部10と、第1形鋼20と、ヒンジ部10の側面であって長手方向D1に沿う側面に取り付けられ、且つ、ヒンジ部10を挟んで第1形鋼20とは反対側に取り付けられる部材30と、を備えた形鋼システム100であって、ヒンジ部10は、ヒンジ部10の回転軸を回転中心とする回転であって第1形鋼20と部材30との相対的な回転に応じ、第1形鋼20の第1フランジ21であって長手方向D1と直交する方向に延びる第1フランジ21の厚さに対応する距離だけ、第1形鋼20を長手方向D1に沿って移動させ、第1形鋼20と部材30とは、回転の前及び後の一方では、長手方向D1に沿って見て重なっており、他方では、長手方向D1に沿って見て重ならない、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ部と、
前記ヒンジ部の側面であって前記ヒンジ部の長手方向に沿う側面に取り付けられる第1形鋼と、
前記ヒンジ部の側面であって前記長手方向に沿う側面に取り付けられ、且つ、前記ヒンジ部を挟んで前記第1形鋼とは反対側に取り付けられる部材と、
を備えた形鋼システムであって、
前記ヒンジ部は、前記ヒンジ部の回転軸を回転中心とする回転であって前記第1形鋼と前記部材との相対的な回転に応じ、前記第1形鋼の第1フランジであって前記長手方向と直交する方向に延びる第1フランジの厚さに対応する距離だけ、前記第1形鋼を前記長手方向に沿って移動させ、
前記第1形鋼と前記部材とは、前記回転の前及び後の一方では、前記長手方向に沿って見て重なっており、他方では、前記長手方向に沿って見て重ならない、
ことを特徴とする形鋼システム。
【請求項2】
前記第1フランジの前記長手方向の位置と前記部材のフランジであって前記長手方向と直交する方向に延びるフランジの前記長手方向の位置とは、前記一方では、互いに異なり、前記他方では、同じである、
ことを特徴とする請求項1に記載の形鋼システム。
【請求項3】
前記ヒンジ部は、前記他方では、前記第1形鋼と前記部材とを固定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の形鋼システム。
【請求項4】
前記ヒンジ部は、第1ヒンジ部と第2ヒンジ部とを含み、
前記第1ヒンジ部と前記第2ヒンジ部とは、前記他方では、嵌合する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の形鋼システム。
【請求項5】
前記第1ヒンジ部は、前記第2ヒンジ部と対向する端部に第1凸部が設けられており、
前記第2ヒンジ部は、前記第1ヒンジ部と対向する端部に第2凸部が設けられており、
前記第1凸部の前記長手方向の高さ、又は、前記第2凸部の前記長手方向の高さは、前記距離に対応する、
ことを特徴とする請求項4に記載の形鋼システム。
【請求項6】
前記第1凸部は、前記一方では、前記第2凸部と当接する、
ことを特徴とする請求項5に記載の形鋼システム。
【請求項7】
締結手段を更に備え、
前記ヒンジ部は、棒状且つ中空状であり、
前記締結手段は、前記ヒンジ部に挿入されることにより、前記第1ヒンジ部と前記第2ヒンジ部と締結する、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の形鋼システム。
【請求項8】
前記締結手段はボルトであって、前記ボルトは、前記ヒンジ部に形成された雌ネジ部、又は前記ヒンジ部において前記ボルトを挿入する側の端部の反対側の端部に配置されたナットと締結される、
ことを特徴とする請求項7に記載の形鋼システム。
【請求項9】
前記第1形鋼、前記部材、前記ヒンジ部、及び前記締結手段は、荷重を伝達する強度部材として機能する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の形鋼システム。
【請求項10】
前記第1形鋼は、添接板である補強プレートを取り付けるための第1取り付け部を含み、
前記部材は、前記補強プレートを取り付けるための第2取り付け部を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の形鋼システム。
【請求項11】
前記第1取り付け部の位置は、前記他方では、前記第1形鋼の長手方向に沿って見て、前記第2取り付け部の位置と対応する、
ことを特徴とする請求項10に記載の形鋼システム。
【請求項12】
ヒンジ部と、
前記ヒンジ部の側面であって前記ヒンジ部の長手方向に沿う側面に取り付けられる第1形鋼と、
前記ヒンジ部の側面であって前記長手方向に沿う側面に取り付けられ、且つ、前記ヒンジ部を挟んで前記第1形鋼とは反対側に取り付けられる部材と、
を備えた形鋼システムであって、
前記第1形鋼は、前記第1形鋼及び前記部材が前記ヒンジ部により折り畳まれている場合には、前記長手方向に沿って見て、前記部材と重なり、前記第1形鋼及び前記部材が前記ヒンジ部により折り畳まれていない場合には、前記長手方向に沿って見て、前記部材と重ならない、
ことを特徴とする形鋼システム。
【請求項13】
前記第1形鋼は、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の形鋼システム。
【請求項14】
前記部材は、構造物である、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の形鋼システム。
【請求項15】
前記部材は、第2形鋼であり、
前記第2形鋼は、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の形鋼システム。
【請求項16】
ヒンジ部と、
前記ヒンジ部の側面であって前記ヒンジ部の長手方向に沿う側面に取り付けられる第1形鋼と、
前記ヒンジ部の側面であって前記長手方向に沿う側面に取り付けられ、且つ、前記ヒンジ部を挟んで前記第1形鋼とは反対側に取り付けられる部材と、
を備えた形鋼の施工方法であって、
前記第1形鋼及び前記部材を前記ヒンジ部により折り畳まれた折り畳み状態にする折り畳み工程と、
前記第1形鋼及び前記部材の前記折り畳み状態を解除する解除工程と、
を備え、
前記折り畳み工程では、前記第1形鋼及び前記部材が、前記長手方向に沿って見て、重なっており、
前記解除工程では、前記第1形鋼及び前記部材が、前記長手方向に沿って見て、重ならない、
ことを特徴とする形鋼システムの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形鋼システム及び形鋼システムの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の建築において、H形鋼やI形鋼など、ウェブとフランジとを含む鋼材が用いられることがある。このような鋼材は、建築現場まで効率よく運搬できることが求められる。例えば、特許文献1に示すように、多数のラック体を整列させて搭載収納した状態で一体的に搬送取扱いすると共に、安定した相互積重を可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-56232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、これらの鋼材を用いた建築の現場において、形鋼の運搬性及び施工作業性を向上するために、形鋼を折り畳み可能とする旨のニーズを見出した。
蝶番でつながれた二つのものを折り畳む際、蝶番の回転軸と直交する面内に出っ張りのある物は、互いに干渉してうまく折れない。したがって、ウェブと、ウェブに直交するフランジと、を含む形鋼に、例えば、ウェブを折り曲げるように蝶番を設けても、形鋼同士が干渉して折り畳みができない。また、折り畳む際の干渉を防ぐために形鋼同士の位置をずらした状態とすると、折り畳んだ形鋼を展開した時に形鋼同士の位置がずれた状態となる。更に、蝶番は、事前に決めておいた角度で固定することができない。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、互いに干渉せずに折り畳むことができ、折り畳みを解除する時には形鋼の位置を合わせることができる形鋼システム及び形鋼システムの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る形鋼システムは、ヒンジ部と、前記ヒンジ部の側面であって前記ヒンジ部の長手方向に沿う側面に取り付けられる第1形鋼と、前記ヒンジ部の側面であって前記長手方向に沿う側面に取り付けられ、且つ、前記ヒンジ部を挟んで前記第1形鋼とは反対側に取り付けられる部材と、を備えた形鋼システムであって、前記ヒンジ部は、前記ヒンジ部の回転軸を回転中心とする回転であって前記第1形鋼と前記部材との相対的な回転に応じ、前記第1形鋼の第1フランジであって前記長手方向と直交する方向に延びる第1フランジの厚さに対応する距離だけ、前記第1形鋼を前記長手方向に沿って移動させ、前記第1形鋼と前記部材とは、前記回転の前及び後の一方では、前記長手方向に沿って見て重なっており、他方では、前記長手方向に沿って見て重ならない、ことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ヒンジ部は、ヒンジ部の回転軸を回転中心とする回転であって第1形鋼と部材との相対的な回転に応じ、第1形鋼の第1フランジであって長手方向と直交する方向に延びる第1フランジの厚さに対応する距離だけ、第1形鋼を長手方向に沿って移動させる。第1形鋼と部材とは、回転の前及び後の一方では、長手方向に沿って見て重なっており、他方では、長手方向に沿って見て重ならない。
【0008】
回転の前及び後の一方では第1形鋼と部材とが重なることで、形鋼の全体の大きさを小さくすることができる。回転の前及び後の他方では、第1形鋼と部材とは重ならない。これに加えて、ヒンジ部は第1形鋼を第1フランジの厚さに対応する距離だけヒンジ部の長手方向に移動させる。これにより、回転の前及び後の他方における第1形鋼と部材とのヒンジ部の長手方向の位置を調整することができる。
【0009】
したがって、本発明に係る形鋼について、第1形鋼と部材とがヒンジ部によって予め接合された状態で運搬し、施工時にヒンジ部を回転することで形鋼の形状を変化させることができる。よって、施工現場において第1形鋼と部材を接合する場合と比較して、作業性を向上することができる。このような効果を有する形鋼は、例えば、複雑な作業がしにくい海上等において、海洋構造物を施工する際に特に好適に用いることができる。
【0010】
また、前記第1フランジの前記長手方向の位置と前記部材のフランジであって前記長手方向と直交する方向に延びるフランジの前記長手方向の位置とは、前記一方では、互いに異なり、前記他方では、同じである、ことを特徴としてもよい。
【0011】
この発明によれば、ヒンジ部の長手方向における第1フランジの位置と部材のフランジフランジの位置とは、一方では、互いに異なり、他方では、同じである。ヒンジ部の回転の前及び後の一方において第1形鋼の第1フランジと部材のフランジとの位置が異なることで、第1フランジとフランジとを重ねることができる。ヒンジ部の回転の前及び後の他方に第1フランジとフランジとのヒンジ部の長手方向における位置を同じにすることで、第1フランジとフランジとの間の段差をなくすことができる。よって、ヒンジ部の回転の前及び後の他方における、第1形鋼と部材との一体性を向上することができる。
【0012】
また、前記ヒンジ部は、前記他方では、前記第1形鋼と前記部材とを固定する、ことを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、ヒンジ部は、他方では、第1形鋼と部材とを固定する。つまり、ヒンジ部の回転の前及び後の他方の状態から、ヒンジ部が意図せず逆方向に回転して一方の状態に戻ることを防ぐことができる。よって、より形鋼の施工作業性を向上することができる。
【0014】
また、前記ヒンジ部は、第1ヒンジ部と第2ヒンジ部とを含み、前記第1ヒンジ部と前記第2ヒンジ部とは、前記他方では、嵌合する、ことを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、ヒンジ部が含む第1ヒンジ部と第2ヒンジ部とは、他方では、嵌合する。つまり、他方では第1ヒンジ部と第2ヒンジ部とが嵌合することでヒンジ部の回転が抑えられる。したがって、ヒンジ部の回転の前及び後の他方において、接着や溶接等によって第1ヒンジ部と第2ヒンジ部とを固定するといった作業をせずに、ヒンジ部が必要以上に回転したり、逆回転したりすることを抑えることができる。これにより、より形鋼の施工作業性を向上することができる。
【0016】
また、前記第1ヒンジ部は、前記第2ヒンジ部と対向する端部に第1凸部が設けられており、前記第2ヒンジ部は、前記第1ヒンジ部と対向する端部に第2凸部が設けられており、前記第1凸部の前記長手方向の高さ、又は、前記第2凸部の前記長手方向の高さは、前記距離に対応する、ことを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、ヒンジ部の長手方向において、第1ヒンジ部に設けられた第1凸部の高さ、又は第2ヒンジ部に設けられた第2凸部の高さは、第1フランジの厚さに対応した距離に対応する。つまり、第1形鋼をヒンジ部の長手方向において第1フランジの厚さに対応して距離だけ移動させるとき、第1凸部の高さ又は第2凸部の高さを目安とすることができる。
【0018】
また、前記第1凸部は、前記一方では、前記第2凸部と当接する、ことを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、第1凸部は、一方では、第2凸部と当接する。ここで、上述のように第1凸部又は第2凸部の高さは、第1フランジの厚さに対応する。よって、第1凸部と第2凸部とが当接することによって、第1フランジの厚さの分だけヒンジ部の長手方向に第1形鋼と部材との位置を移動させることができる。したがって、第1フランジとフランジの位置の調整を容易に行うことができる。よって、より施工作業性を向上することができる。
【0020】
また、締結手段を更に備え、前記ヒンジ部は、棒状且つ中空状であり、前記締結手段は、前記ヒンジ部に挿入されることにより、前記第1ヒンジ部と前記第2ヒンジ部と締結する、ことを特徴としてもよい。
【0021】
この発明によれば、ヒンジ部は棒状且つ中空状であり、締結手段がヒンジ部に挿入されることにより、第1ヒンジ部と第2ヒンジ部と締結する。これにより、他方において第1ヒンジ部と第2ヒンジ部が嵌合してヒンジ部の逆回転を防ぐことに加えて、締結手段によってもヒンジ部を固定することができる。必要に応じて敢えてヒンジ部を逆回転させる場合は、締結手段によるヒンジ部の固定を解除すればよい。したがって、他方における形鋼の固定をより確実にすることができる。
【0022】
また、前記締結手段はボルトであって、前記ボルトは、前記ヒンジ部に形成された雌ネジ部、又は前記ヒンジ部において前記ボルトを挿入する側の端部の反対側の端部に配置されたナットと締結される、ことを特徴としてもよい。
【0023】
この発明によれば、締結手段はボルトであって、ボルトは、ヒンジ部に形成された雌ネジ部、又はヒンジ部においてボルトを挿入する側の端部の反対側の端部に配置されたナットと締結される。これにより、ヒンジ部の回転の前及び後の一方においてはヒンジ部のボルトを緩めた状態とすることで、ヒンジ部を回転可能とすることができる。ヒンジ部の回転の前及び後の他方においてボルトを締め込むことで、ヒンジ部を固定することができる。このように、形鋼の固定をボルト締結により行うことができる。よって、形鋼の固定の作業を容易に行うことができる。
【0024】
また、前記第1形鋼、前記部材、前記ヒンジ部、及び前記締結手段は、荷重を伝達する強度部材として機能する、ことを特徴としてもよい。
【0025】
この発明によれば、第1形鋼、部材、ヒンジ部、及び締結手段は、荷重を伝達する強度部材として機能する。つまり、形鋼を、荷重を伝達する強度部材として用いることができる。よって、強度部材を必要とする現場に対して、上述のように高い施工作業性を備えた形鋼を提供することができる。例えば、複雑な作業がしにくい海上等において、海洋構造物を施工する際に特に好適に用いることができる。
【0026】
また、前記第1形鋼は、添接板である補強プレートを取り付けるための第1取り付け部を含み、前記部材は、前記補強プレートを取り付けるための第2取り付け部を含む、ことを特徴としてもよい。
【0027】
この発明によれば、第1形鋼及び部材は、それぞれが添接板である補強プレートを取り付けるための第1取り付け部及び第2取り付け部を含む。これにより、ヒンジ部の回転の前及び後の他方において形鋼に補強プレートを取り付けることで、より形鋼の強度を確保することができる。
【0028】
また、前記第1取り付け部の位置は、前記他方では、前記第1形鋼の長手方向に沿って見て、前記第2取り付け部の位置と対応する、ことを特徴としてもよい。
【0029】
この発明によれば、第1取り付け部の位置は、他方では、第1形鋼の長手方向に沿って見て、第2取り付け部の位置と対応する。よって、他方において第1形鋼と部材とに補強プレートを取り付けて補強する作業をし易くすることができる。
【0030】
また、本発明に係る形鋼は、ヒンジ部と、前記ヒンジ部の側面であって前記ヒンジ部の長手方向に沿う側面に取り付けられる第1形鋼と、前記ヒンジ部の側面であって前記長手方向に沿う側面に取り付けられ、且つ、前記ヒンジ部を挟んで前記第1形鋼とは反対側に取り付けられる部材と、を備えた形鋼システムであって、前記第1形鋼は、前記第1形鋼及び前記部材が前記ヒンジ部により折り畳まれている場合には、前記長手方向に沿って見て、前記部材と重なり、前記第1形鋼及び前記部材が前記ヒンジ部により折り畳まれていない場合には、前記長手方向に沿って見て、前記部材と重ならない、ことを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、第1形鋼は、第1形鋼及び部材がヒンジ部により折り畳まれている場合には、長手方向に沿って見て、部材と重なり、第1形鋼及び部材がヒンジ部により折り畳まれていない場合には、長手方向に沿って見て、部材と重ならない。
第1形鋼及び部材がヒンジ部により折り畳まれている場合において第1形鋼と部材とが重なることで、形鋼の全体の大きさを小さくすることができる。
第1形鋼及び部材がヒンジ部により折り畳まれていない場合において第1形鋼と部材とが重ならないことで、形鋼の全体の大きさを大きくすることができる。
【0032】
したがって、第1形鋼と部材とがヒンジ部によって折り畳まれ、全体の大きさが小さくなった状態で運搬し、施工時に第1形鋼と部材とがヒンジ部によって折り畳まれていない状態とすることができる。よって、形鋼の運搬及び施工を容易且つ効率的に行うことができる。このような効果を有する形鋼は、例えば、複雑な作業がしにくい海上等において、海洋構造物を施工する際に特に好適に用いることができる。
【0033】
また、前記第1形鋼は、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである、ことを特徴としてもよい。
【0034】
この発明によれば、第1形鋼は、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである。つまり、第1形鋼は汎用の形鋼を用いることができる。よって、第1形鋼は特殊な材料を用いずに形成することができる。
【0035】
また、前記部材は、構造物である、ことを特徴としてもよい。
【0036】
この発明によれば、部材は構造物である。つまり、本発明に係る型鋼を構造物の一部とすることができる。よって、構造物の施工作業を効率的に行うことができる。
【0037】
また、前記部材は、第2形鋼であり、前記第2形鋼は、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである、ことを特徴としてもよい。
【0038】
この発明によれば、第2形鋼は、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである。つまり、部材は汎用の形鋼を用いることができる。よって、部材は特殊な材料を用いずに形成することができる。
【0039】
また、本発明に係る形鋼システムの施工方法は、ヒンジ部と、前記ヒンジ部の側面であって前記ヒンジ部の長手方向に沿う側面に取り付けられる第1形鋼と、前記ヒンジ部の側面であって前記長手方向に沿う側面に取り付けられ、且つ、前記ヒンジ部を挟んで前記第1形鋼とは反対側に取り付けられる部材と、を備えた形鋼の施工方法であって、前記第1形鋼及び前記部材を前記ヒンジ部により折り畳まれた折り畳み状態にする折り畳み工程と、前記第1形鋼及び前記部材の前記折り畳み状態を解除する解除工程と、を備え、前記折り畳み工程では、前記第1形鋼及び前記部材が、前記長手方向に沿って見て、重なっており、前記解除工程では、前記第1形鋼及び前記部材が、前記長手方向に沿って見て、重ならない、ことを特徴とする。
【0040】
この発明によれば、形鋼システムの施工を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、互いに干渉せずに折り畳むことができ、折り畳みを解除する時には形鋼の位置を合わせることができる形鋼システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係る形鋼の斜視図である。
図2】第1形鋼と部材とがヒンジ部で接続された部位の拡大図である。
図3図1に示す形鋼の第1形鋼と部材とが折り畳まれた状態である。
図4】第1形鋼と部材とが折り畳まれた状態の拡大図である。
図5】第1形鋼と部材とがヒンジ部で接続される部位の分解図である。
図6】第1形鋼と部材とがヒンジ部の長手方向に相対移動した状態である。
図7】ヒンジ部において、第1ヒンジ部の第1凸部と第2ヒンジ部の第2凸部とが当接した状態である。
図8】ヒンジ部において、第1ヒンジ部と第2ヒンジ部とが嵌合した状態である。
図9】第1ヒンジ部と第2ヒンジ部とが嵌合する部位の拡大図である。
図10】締結手段と第2ヒンジ部の螺合の概念である。
図11】第1ヒンジ部の第1凸部及び第2ヒンジ部の第2凸部の第1変形例である。
図12】第1ヒンジ部の第1凸部及び第2ヒンジ部の第2凸部の第2変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る形鋼システム100を説明する。
図1又は図2に示すように、形鋼システム100は、ヒンジ部10と、第1形鋼20と、部材30と、補強プレート40と、締結手段50と、を含む。本実施形態に係る形鋼システム100は、図2に示すように第1形鋼20と部材30とがヒンジ部10によって接続されて形成される。第1形鋼20と部材30との接続部には、添接板である補強プレート40が設けられる。上述の構成により、形鋼システム100は、荷重を伝達する強度部材として機能する。形鋼システム100は、例えば、海洋構造物のジャケット構造に好適に用いられる。
【0044】
ヒンジ部10は、第1形鋼20と部材30とを回転可能に接続する。ヒンジ部10は、それぞれ管状の第1ヒンジ部11と、第2ヒンジ部12とを含む。管状とは、棒状且つ中空状であるこという。管状における前記棒状の外形は、円柱状であってもよいし、角柱状であってもよい。ヒンジ部10の具体的な構造については後述する。
第1形鋼20は、ヒンジ部10の側面であってヒンジ部10の長手方向D1に沿う側面に取り付けられる。第1形鋼20は、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである。これらに共通する点は、第1フランジ21と第1ウェブ22とを含む点である。第1ウェブ22は平板状である。ヒンジ部10は、長手方向D1が第1ウェブ22の平板状の端部に沿うように取り付けられる。第1フランジ21は、第1ウェブ22の平板状に直交するように延びる平板状の部位である。つまり、第1フランジ21は、ヒンジ部10の長手方向D1と直交する方向に延びる。
【0045】
本実施形態における第1形鋼20はH形鋼である。このため、第1ウェブ22の平板状の両側面に第1フランジ21が形成されているが、第1フランジ21は片方の側面のみに設けられていてもよい。また、図2に示すように、第1フランジ21は、第1形鋼20の長手方向D1の端部において、添接板である補強プレート40を取り付けるための第1取り付け部41hを含む。図2に示すように、第1取り付け部41hは、複数設けられたボルト穴である。
【0046】
部材30は、ヒンジ部10の側面であって長手方向D1に沿う側面に取り付けられ、且つ、ヒンジ部10を挟んで第1形鋼20とは反対側に取り付けられる。
部材30は、レグ30Lと、第2形鋼30Hと、を備える構造物である。レグ30Lは、形鋼システム100において設置場所である海底あるいは地表に打設された杭に結合される部位である。図1に示すように、部材30におけるレグ30Lとレグ30Lとの間は、梁Bによって接続されている。
【0047】
第2形鋼30Hは、第1形鋼20と接続する部位である。第2形鋼30Hは、第2フランジ31と第2ウェブ32とを含む点で、第1形鋼20と共通である。第2ウェブ32は平板状である。ヒンジ部10は、長手方向D1が第2ウェブ32の平板状の長手方向D1の端部に沿うように取り付けられる。第2フランジ31は、第2ウェブ32の平板状に直交するように延びる平板状の部位である。つまり、第2フランジ31は、ヒンジ部10の長手方向D1と直交する方向に延びる。第2形鋼30Hは、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかであってもよい。
【0048】
また、図2に示すように、ヒンジ部10を介して対向する第1形鋼20と第2形鋼30Hとの断面は同じ形状かつ同じ大きさである。また、第2形鋼30Hは、第1形鋼20と対向する部位の端部において、補強プレート40を取り付けるための第2取り付け部42hを有する。図2に示すように、第2取り付け部42hは、複数設けられたボルト穴である。
また、部材30はレグ30Lを備えず、第2形鋼30Hのみを備えるものであってもよい。あるいは、部材30は、第2形鋼30Hと、その他の構造とを備えるものであってもよい。
【0049】
補強プレート40は、構造物におけるいわゆる添接板である。図2に示すように、補強プレート40は第1形鋼20と部材30との端部同士を接続し、ボルト等によって固定する。このため、補強プレート40には、第1取り付け部41h及び第2取り付け部42hに対応した複数のボルト穴である取付部40hを有する。
【0050】
締結手段50は、ヒンジ部10における管状の第1ヒンジ部11及び第2ヒンジ部12に挿入されることにより、第1ヒンジ部11及び第2ヒンジ部12と締結する。本実施形態において、締結手段50はボルトである。ボルトである締結手段50は、ヒンジ部10に形成された雌ネジ部、又はヒンジ部10においてボルトである締結手段50を挿入する側の端部の反対側の端部に配置されたナットと締結される。本実施形態において、締結手段50は、図10に示すように第1ヒンジ部11の側からヒンジ部10に挿入され、第2ヒンジ部12に設けられた不図示の雌ネジ部と締結される。なお、第2ヒンジ部12に雌ネジ部を設ける場合は、ヒンジ部10における管状は円筒状であるとする。ヒンジ部10における管状が円筒状でない場合は、締結部材は別途設けられるナットと締結されるものとする。
【0051】
上述のように、ヒンジ部10は、第1形鋼20と部材30とを接続する。第1形鋼20と部材30とは、ヒンジ部10の長手方向D1(回転軸)を回転中心として回転が可能である。ヒンジ部10回りに第1形鋼20と部材30とを相対回転させると、第1形鋼20と部材30との相対位置が変化する。第1形鋼20と部材30とが、第1の位置関係にある状態から相対回転して第2の位置関係に変化したとき、例えば、第1の位置関係に位置する状態を回転前の状態といい、第2の位置関係に位置する状態を回転後の状態という。
この回転によって、形鋼システム100は、図1及び図2に示す状態と、図3及び図4に示す状態と、に変化する。
【0052】
具体的には、ヒンジ部10の回転の前及び後の一方では、図3及び図4に示すように、第1形鋼20と部材30とは長手方向D1に沿って見て重なる。具体的には、第1形鋼20の第1フランジ21と、部材30の第2フランジ31との端部同士が部分的に重なる。
このとき、第1形鋼20が第1ウェブ22の両側に第1フランジ21を備える場合(例えば、H形鋼、I形鋼の場合)、すなわち上フランジと下フランジとを備える場合は、上フランジと下フランジの両方の端部同士が重なる。このとき、本実施形態に係る形鋼システム100においては、図3に示すように、梁Bと第1形鋼20とが平行になる。また、第1フランジ21と第2フランジ31とが重なった場合、第1ウェブ22と第2ウェブ32とは直交する。第1ウェブ22と第2ウェブ32とが直交する状態となると、図4に示すように、第1ウェブ22と第2フランジ31とが接触するから、それ以上に第1形鋼20が梁Bの側に近づくように回転することはない。
また、回転の前及び後の他方では、図1及び図2に示すように、第1形鋼20と部材30とは長手方向D1に沿って見て重ならない。
【0053】
つまり、第1フランジ21の長手方向D1の位置と、第2フランジ31の長手方向D1の位置とは、ヒンジ部10の回転の前及び後の一方では、互いに異なり、他方では、同じである。よって、第1取り付け部41hの位置は、他方では、第1形鋼20の長手方向に沿って見て、第2取り付け部42hの位置と対応する。
【0054】
言い換えれば、図3及び図4に示すように、第1形鋼20は、第1形鋼20及び部材30がヒンジ部10により折り畳まれている場合には、長手方向D1に沿って見て、部材30と重なる。また、図1及び図2に示すように、第1形鋼20は、第1形鋼20及び部材30がヒンジ部10により折り畳まれていない場合には、長手方向D1に沿って見て、部材30と重ならない。
【0055】
以下、図1及び図2に示すように、ヒンジ部10によって第1形鋼20と部材30とが折り畳まれていない状態を、形鋼システム100が展開した状態と呼称することがある。これに対して、図3及び図4に示すように、ヒンジ部10によって第1形鋼20と部材30とが折り畳まれている状態を、形鋼システム100が格納した状態、または折り畳み状態と呼称することがある。
【0056】
上述のように、ヒンジ部10は第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とを含む。図5に示すように、第1ヒンジ部11は第1形鋼20に取り付けられる。第2ヒンジ部12は部材30に取り付けられる。また、第1ヒンジ部11が部材30に取り付けられ、第2ヒンジ部12が第1形鋼20に取り付けられても良い。上述の取付けは、例えば、接着によりされていてもよいし、溶接によりされていてもよい。このように、第1形鋼20に取り付けられた第1ヒンジ部11と部材30に取り付けられた第2ヒンジ部12とを締結手段50により締結することで、第1形鋼20と部材30とを接続する。
【0057】
上述の構成を備えることで、ヒンジ部10は、第1形鋼20と部材30とを回転可能に接続する。このとき、締結手段50によってヒンジ部10を締め付ければ第1形鋼20と部材30とが意図せず回転移動することを防ぐことができる。また、締結手段50によるヒンジ部10の締付を緩めれば、第1形鋼20と部材30とを回転移動させることができる。
【0058】
ここで、形鋼システム100が展開した状態では、図2に示すように、第1形鋼20の第1フランジ21と部材30の第2フランジ31とは面一の状態である。このため、このままヒンジ部10によって第1形鋼20と部材30とを折り畳もうとしても、第1フランジ21と第2フランジ31とが干渉する。よって折り畳むことが出来ない。
【0059】
これに対し、図6に示すように、ヒンジ部10は、ヒンジ部10の回転軸を回転中心とする回転であって第1形鋼20と部材30との相対的な回転に応じ、第1フランジ21の厚さに対応する距離だけ、第1形鋼20を長手方向D1に沿って移動させる。これにより、第1フランジ21と第2フランジ31の干渉を回避し、第1形鋼20と部材30との折り畳みを可能とする。
【0060】
以下、ヒンジ部10の構造による前記相対移動の詳細について説明する。
図7に示すように、第1ヒンジ部11は、第2ヒンジ部12と対向する端部に第1凸部11pが設けられている。また、第2ヒンジ部12は、第1ヒンジ部11と対向する端部に第2凸部12pが設けられている。第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とは外見上同一の形状であるが、図10に示すように、第2ヒンジ部12には締結手段50の備える雄ネジ部FBと螺合するための雌ネジ部(不図示)を備える点で相違する。締結手段50が、ヒンジ部10においてボルトである締結手段50を挿入する側の端部の反対側の端部に配置されたナットと締結される場合には、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とは、同一の形状であってもよい。
【0061】
第1凸部11pの長手方向D1の高さ、又は、第2凸部12pの長手方向D1の高さは、第1フランジ21の厚さに対応する。また、第1凸部11pと第2凸部12pとは、互いに対応した形状を備える。これにより、ヒンジ部10の第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とは、次の二通りの状態となり得る。
【0062】
すなわち、まず、図7に示すように、第1凸部11pと第2凸部12pとの先端同士が当接した状態である。以下、この状態を当接状態と呼称する。又は、図8に示すように、第1凸部11pと第2凸部12pの側面同士が接触し、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とが嵌合した状態である。以下、この状態を嵌合状態と呼称する。
【0063】
当接状態から嵌合状態への変化、又は嵌合状態から当接状態への変化は、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とを軸方向に相対的に回転させることで行われる。つまり、第1凸部11pは、ヒンジ部10の回転の前及び後の一方では、第2凸部12pと当接する。また、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とは、ヒンジ部10の回転の前及び後の他方では、嵌合する。
【0064】
図9に示すように、第1凸部11pは第1ヒンジ部11の管状の周方向に2箇所設けられている。同様に、第2凸部12pは第2ヒンジ部12の管状の周方向に2箇所設けられている。このため、嵌合状態においては、第1凸部11pと第2凸部12pとが噛み合った状態になる。よって、嵌合状態においては、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12の軸方向の回転が規制される。
このため、嵌合状態から当接状態への変化の際は、例えば、形鋼を引き上げるなどし、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とを回転する前に、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とを軸方向に移動させ、第1凸部11pと第2凸部12pとの嵌合を解除することが好ましい。
【0065】
ここで、上述のように、第1凸部11pの長手方向D1の高さ、又は、第2凸部12pの長手方向D1の高さは、第1フランジ21の厚さに対応する。これにより、ヒンジ部10を当接状態から嵌合状態に変化させると、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とが、第1凸部11p又は第2凸部12pの高さの分だけ相対移動することとなる。具体的には、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とからなるヒンジ部10の全体の長さが縮むように変化する。
【0066】
したがって、図2に示すように形鋼システム100が展開した状態の時にヒンジ部10を嵌合状態とすれば、第1フランジ21と第2フランジ31とを面一とすることができる。更に、上述のようにヒンジ部10が嵌合状態の時は、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12の軸方向の回転が規制される。つまり、ヒンジ部10は、ヒンジ部10の回転の前及び後の他方では、第1形鋼20と部材30とを固定する。よって、形鋼システム100が展開した状態においてヒンジ部10が嵌合状態であることによって、第1形鋼20と部材30とが意図せず折れ曲がることを防ぐことができる。
【0067】
これに対して、図4に示すように形鋼システム100が格納した状態の時に、ヒンジ部10を当接状態とすれば、第1凸部11p又は第2凸部12pの高さ、すなわち第1フランジ部の厚さの分だけ第1形鋼20を部材30に対して相対移動させることができる。よって、第1フランジ21と第2フランジ31との干渉を回避し、形鋼システム100を格納することができる。
【0068】
ここで、上述のように当接状態と嵌合状態との状態変化は、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とを軸方向に相対的に回転させることで行われる。つまり、第1形鋼20と部材30とをヒンジ部10を回転軸として回転させることに伴い、ヒンジ部10の状態を変化させることができる。
【0069】
図9に示す第1凸部11p及び第2凸部12pは、側面が傾斜状であるが、これに限らない。例えば、図11に示すように、第1凸部11p及び第2凸部12pの側面が、ヒンジ部10の軸方向に平行であってもよい。この形状の場合は、嵌合状態における第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12との遊びを少なくすることができる。あるいは、図12に示すように、ヒンジ部10の管状の周方向において、第1凸部11p及び第2凸部12pの側面が、一方の側が傾斜状で、反対の側が軸方向に平行であってもよい。この形状の場合は、第1形鋼20と部材30とを折り畳んだり、広げたりする方向にのみ遊びを持たせ、反対の側に対して遊びを少なくすることができる。
【0070】
(形鋼システム100の施工方法)
次に、本実施形態に係る形鋼システム100の施工方法について説明する。形鋼システム100の施工方法は、折り畳み工程と、解除工程と、を備える。
折り畳み工程は、第1形鋼20及び部材30をヒンジ部10により折り畳まれた折り畳み状態にする工程である。つまり、折り畳み工程では、図3及び図4に示すように、第1形鋼20の第1フランジ21及び部材30の第2フランジ31が、長手方向D1に沿って見て、重なっている。この状態で、形鋼システム100を施工現場まで輸送する。例えば、形鋼システム100が海洋構造物である場合、形鋼システム100を図3に示すような状態として、輸送船に積載する。
折り畳み状態において、第1フランジ21と第2フランジ31の長手方向D1の位置がずれて重なっているから、ヒンジ部10は当接状態である。折り畳み状態を保ち、形鋼システム100の輸送を安全に行うためには、締結手段50を締め付けることで当接状態のヒンジ部10を固定することが好ましい。あるいは、第1形鋼20をロープ等によって固縛することによって固定してもよい。
【0071】
解除工程は、第1形鋼20及び部材30の折り畳み状態を解除する工程である。すなわち、折り畳み工程において図3に示す状態であった形鋼システム100を展開して、図1に示す状態とする工程である。つまり、解除工程では、第1形鋼20の第1フランジ21及び部材30の第2フランジ31が、長手方向D1に沿って見て、重ならない。
この工程は、施工現場まで輸送された型鋼における部材30を施工場所に固定してから行う。例えば、形鋼システム100が海洋構造物である場合、部材30を杭を介して海底等に固定してから行う。
【0072】
折り畳み工程においてヒンジ部10が締結手段50によって固定されている場合、この固定を緩める。次に、第1形鋼20を部材30に対してヒンジ部10を回転軸として回転させる。すると、第1フランジ21と第2フランジ31との重なりが解除され、図6に示すような状態となる。この後、第1形鋼20を長手方向D1に沿って移動させ、図2に示すように、第1フランジ21と第2フランジ31とが面一となるようにする。この時、ヒンジ部10は嵌合状態となる。この状態となった後、締結手段50を締め付けることで第1凸部11pと第2凸部12pとを密着させ、ヒンジ部10を固定する。その後、第1形鋼20と部材30とを補強プレート40によって固定し、形鋼システム100を施工完了とする。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る形鋼システム100によれば、ヒンジ部10は、ヒンジ部10の回転軸を回転中心とする回転であって第1形鋼20と部材30との相対的な回転に応じ、第1形鋼20の第1フランジ21であって長手方向D1と直交する方向に延びる第1フランジ21の厚さに対応する距離だけ、第1形鋼20を長手方向D1に沿って移動させる。第1形鋼20と部材30とは、回転の前及び後の一方では、長手方向D1に沿って見て重なっており、他方では、長手方向D1に沿って見て重ならない。
【0074】
回転の前及び後の一方では第1形鋼20と部材30とが重なることで、形鋼の全体の大きさを小さくすることができる。回転の前及び後の他方では、第1形鋼20と部材30とは重ならない。これに加えて、ヒンジ部10は第1形鋼20を第1フランジ21の厚さに対応する距離だけヒンジ部10の長手方向D1に移動させる。これにより、回転の前及び後の他方における第1形鋼20と部材30とのヒンジ部10の長手方向D1の位置を調整することができる。
【0075】
したがって、本発明に係る形鋼について、第1形鋼20と部材30とがヒンジ部10によって予め接合された状態で運搬し、施工時にヒンジ部10を回転することで形鋼の形状を変化させることができる。よって、施工現場において第1形鋼20と部材30を接合する場合と比較して、作業性を向上することができる。このような効果を有する形鋼は、例えば、複雑な作業がしにくい海上等において、海洋構造物を施工する際に特に好適に用いることができる。
【0076】
また、ヒンジ部10の長手方向D1における第1フランジ21の位置と部材30のフランジの位置とは、一方では、互いに異なり、他方では、同じである。ヒンジ部10の回転の前及び後の一方において第1形鋼20の第1フランジ21と部材30のフランジとの位置が異なることで、第1フランジ21とフランジとを重ねることができる。ヒンジ部10の回転の前及び後の他方に第1フランジ21とフランジとのヒンジ部10の長手方向D1における位置を同じにすることで、第1フランジ21とフランジとの間の段差をなくすことができる。よって、ヒンジ部10の回転の前及び後の他方における、第1形鋼20と部材30との一体性を向上することができる。
【0077】
また、ヒンジ部10は、他方では、第1形鋼20と部材30とを固定する。つまり、ヒンジ部10の回転の前及び後の他方の状態から、ヒンジ部10が意図せず逆方向に回転して一方の状態に戻ることを防ぐことができる。よって、より形鋼の施工作業性を向上することができる。
【0078】
また、ヒンジ部10が含む第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とは、他方では、嵌合する。つまり、他方では第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とが嵌合することでヒンジ部10の回転が抑えられる。したがって、ヒンジ部10の回転の前及び後の他方において、接着や溶接等によって第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12とを固定するといった作業をせずに、ヒンジ部10が必要以上に回転したり、逆回転したりすることを抑えることができる。これにより、より形鋼の施工作業性を向上することができる。
【0079】
また、ヒンジ部10の長手方向D1において、第1ヒンジ部11に設けられた第1凸部11pの高さ、又は第2ヒンジ部12に設けられた第2凸部12pの高さは、第1フランジ21の厚さに対応した距離に対応する。つまり、第1形鋼20をヒンジ部10の長手方向D1において第1フランジ21の厚さに対応して距離だけ移動させるとき、第1凸部11pの高さ又は第2凸部12pの高さを目安とすることができる。
【0080】
また、第1凸部11pは、一方では、第2凸部12pと当接する。ここで、上述のように第1凸部11p又は第2凸部12pの高さは、第1フランジ21の厚さに対応する。よって、第1凸部11pと第2凸部12pとが当接することによって、第1フランジ21の厚さの分だけヒンジ部10の長手方向D1に第1形鋼20と部材30との位置を移動させることができる。したがって、第1フランジ21とフランジの位置の調整を容易に行うことができる。よって、より施工作業性を向上することができる。
【0081】
また、ヒンジ部10は管状であり、締結手段50がヒンジ部10に挿入されることにより、第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12と締結する。これにより、他方において第1ヒンジ部11と第2ヒンジ部12が嵌合してヒンジ部10の逆回転を防ぐことに加えて、締結手段50によってもヒンジ部10を固定することができる。必要に応じて敢えてヒンジ部10を逆回転させる場合は、締結手段50によるヒンジ部10の固定を解除すればよい。したがって、他方における形鋼の固定をより確実にすることができる。
【0082】
また、締結手段50はボルトであって、ボルトは、ヒンジ部10に形成された雌ネジ部、又はヒンジ部10においてボルトを挿入する側の端部の反対側の端部に配置されたナットと締結される。これにより、ヒンジ部10の回転の前及び後の一方においてはヒンジ部10のボルトを緩めた状態とすることで、ヒンジ部10を回転可能とすることができる。ヒンジ部10の回転の前及び後の他方においてボルトを締め込むことで、ヒンジ部10を固定することができる。このように、形鋼の固定をボルト締結により行うことができる。よって、形鋼の固定の作業を容易に行うことができる。
【0083】
また、第1形鋼20、部材30、ヒンジ部10、及び締結手段50は、荷重を伝達する強度部材として機能する。つまり、形鋼を、荷重を伝達する強度部材として用いることができる。よって、強度部材を必要とする現場に対して、上述のように高い施工作業性を備えた形鋼を提供することができる。例えば、複雑な作業がしにくい海上等において、海洋構造物を施工する際に特に好適に用いることができる。
【0084】
また、第1形鋼20及び部材30は、それぞれが添接板である補強プレート40を取り付けるための第1取り付け部41h及び第2取り付け部42hを含む。これにより、ヒンジ部10の回転の前及び後の他方において形鋼に補強プレート40を取り付けることで、より形鋼の強度を確保することができる。
【0085】
また、第1取り付け部41hの位置は、他方では、第1形鋼20の長手方向D1に沿って見て、第2取り付け部42hの位置と対応する。よって、他方において第1形鋼20と部材30とに補強プレート40を取り付けて補強する作業をし易くすることができる。
【0086】
また、第1形鋼20は、第1形鋼20及び部材30がヒンジ部10により折り畳まれている場合には、長手方向D1に沿って見て、部材30と重なり、第1形鋼20及び部材30がヒンジ部10により折り畳まれていない場合には、長手方向D1に沿って見て、部材30と重ならない。
第1形鋼20及び部材30がヒンジ部10により折り畳まれている場合において第1形鋼20と部材30とが重なることで、形鋼の全体の大きさを小さくすることができる。
第1形鋼20及び部材30がヒンジ部10により折り畳まれていない場合において第1形鋼20と部材30とが重ならないことで、形鋼の全体の大きさを大きくすることができる。
【0087】
したがって、第1形鋼20と部材30とがヒンジ部10によって折り畳まれ、全体の大きさが小さくなった状態で運搬し、施工時に第1形鋼20と部材30とがヒンジ部10によって折り畳まれていない状態とすることができる。よって、形鋼の運搬及び施工を容易且つ効率的に行うことができる。このような効果を有する形鋼は、例えば、複雑な作業がしにくい海上等において、海洋構造物を施工する際に特に好適に用いることができる。
【0088】
また、第1形鋼20は、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである。つまり、第1形鋼20は汎用の形鋼を用いることができる。よって、第1形鋼20は特殊な材料を用いずに形成することができる。
【0089】
また、部材30は構造物である。つまり、本発明に係る型鋼を構造物の一部とすることができる。よって、構造物の施工作業を効率的に行うことができる。
【0090】
また、第2形鋼30Hは、H形鋼、L形鋼、C形鋼、I形鋼、Z形鋼、溝形鋼及びT形鋼のいずれかである。つまり、部材30は汎用の形鋼を用いることができる。よって、部材30は特殊な材料を用いずに形成することができる。
【0091】
また、形鋼システム100の施工を容易に行うことができる。
【0092】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1形鋼20と部材30の接続部の断面は、同じでなくてもよい、例えば、第1形鋼20がH形鋼であるのに対し、部材30が他の鋼材の断面形状であってもよい。
また、形鋼システム100は、本実施形態のような海洋構造物に限らず、一般的な建築物に用いられてもよい。
【0093】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 ヒンジ部
11 第1ヒンジ部
11p 第1凸部
12 第2ヒンジ部
12p 第2凸部
20 第1形鋼
21 第1フランジ
30 部材
40 補強プレート
41h 第1取り付け部
42h 第2取り付け部
50 締結手段
100 形鋼システム
D1 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12