(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056639
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】リフト装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
B25J15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165963
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優
(72)【発明者】
【氏名】坂 洋明
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707FS04
3C707FT06
(57)【要約】
【解決手段】リフト装置10は、円柱状のボデイ12と環状の弾性体54とを備える。ボデイは、ワークを保持する平坦面16を軸方向端部に備える。弾性体は、ボデイの平坦面の外周に配置され、ボデイの平坦面よりもボデイの軸方向に突出する環状突出部分58を備える。環状突出部分は円弧状の断面を有する。ボデイに供給されるエアは、ボデイの平坦面および弾性体の環状突出部分に沿って流れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のボデイと環状の弾性体とを備えたリフト装置であって、
前記ボデイは、ワークを保持する平坦面を軸方向端部に備え、
前記弾性体は、前記ボデイの前記平坦面の外周に配置され、前記ボデイの前記平坦面よりも前記ボデイの軸方向に突出する環状突出部分を備え、前記環状突出部分は円弧状の断面を有し、
前記ボデイに供給されるエアは、前記ボデイの前記平坦面および前記弾性体の前記環状突出部分に沿って流れるリフト装置。
【請求項2】
請求項1記載のリフト装置において、
前記弾性体は、径方向内方に突出する環状の凸部を備え、前記凸部が前記ボデイに備えられた環状の取付溝に嵌合するリフト装置。
【請求項3】
請求項1記載のリフト装置において、
前記弾性体は円形の断面を有し、前記ボデイは、入口に近いほど幅が狭い環状の取付溝を備え、前記弾性体は前記取付溝内に保持されるリフト装置。
【請求項4】
請求項1記載のリフト装置において、
前記弾性体は、前記環状突出部分を備える本体部と、前記ボデイに取り付けられる固定部と、前記本体部を前記固定部に接続する蛇腹状の接続部とを備えるリフト装置。
【請求項5】
請求項1記載のリフト装置において、
前記弾性体を保持する保持具を備え、前記保持具が前記ボデイに取り付けられるリフト装置。
【請求項6】
請求項5記載のリフト装置において、
前記弾性体は、径方向外方に突出する環状の凸部を備え、前記凸部が前記保持具に備えられた環状の取付溝に嵌合するリフト装置。
【請求項7】
請求項5記載のリフト装置において、
前記弾性体は円形の断面を有し、前記保持具は、半円状の断面を有する取付溝を備え、前記弾性体は、前記取付溝の内面と前記ボデイの側面とで挟まれるリフト装置。
【請求項8】
請求項1記載のリフト装置において、
排出されるエアを案内する筒状のカバー体を備えるリフト装置。
【請求項9】
請求項1記載のリフト装置において、
環状のリング部と、前記リング部の外周から放射状に延びる複数の架橋部と、前記架橋部の外端に接続される円筒状のカバー壁とから構成されるアタッチメント部材を備えるリフト装置。
【請求項10】
請求項9記載のリフト装置において、
前記弾性体は、前記アタッチメント部材に取り付けられるリフト装置。
【請求項11】
請求項10記載のリフト装置において、
前記弾性体は、径方向内方に突出する複数の凸部を備え、前記凸部が前記カバー壁の係合孔に係合するリフト装置。
【請求項12】
請求項1記載のリフト装置において、
複数のスポーク部および外周リング部を含むアタッチメント部材を備えるリフト装置。
【請求項13】
請求項12記載のリフト装置において、
前記弾性体は、前記外周リング部と密着するようにインサート成形されるリフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルヌーイ効果により発生する負圧でワークを吸引保持するリフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアを高速で流すことによって生じるベルヌーイ効果を利用し、ワークを非接触状態で保持して搬送する非接触型搬送装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガラス等の平板状物体(ワーク)を持ち上げる非接触型サクショングリッピング装置が記載されている。このサクショングリッピング装置は、ハウジング部とノズル部とで構成され、ベルヌーイ効果を利用している。同文献には、薄い平板状物体の震え現象を防止するため、ハウジング部に曲面部を形成した実施形態も記載されている。注入された空気の流れは、コアンダ効果により、この曲面部によって平板状物体から離れる方向に変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベルヌーイ効果を利用する非接触型搬送装置では、ワークを安定した状態で保持する前段階でワークをリフトする際に、ワークが装置本体に衝突して衝突音が発生することがある。また、衝突による傷痕がワークに残ることがある。
【0006】
特許文献1のサクショングリッピング装置のハウジング部は、ワークと向き合う平坦部を有し、平坦部の外周端から延びる曲面部は、ワークから離れる方向に曲げられている。このため、上方に湾曲したワークを保持することは難しい。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るリフト装置は、円柱状のボデイと環状の弾性体とを備える。ボデイは、ワークを保持する平坦面を軸方向端部に備える。弾性体は、ボデイの平坦面の外周に配置され、ボデイの平坦面よりもボデイの軸方向に突出する環状突出部分を備える。環状突出部分は円弧状の断面を有する。ボデイに供給されるエアは、ボデイの平坦面および弾性体の環状突出部分に沿って流れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るリフト装置によれば、ワークのリフト時にワークが弾性体に衝突しても、弾性体の弾性力によって、衝突音が小さく抑えられ、かつ、ワークに傷痕が残ることがない。また、弾性体の環状突出部分がボデイの第1平坦面よりも下方に突出しているので、弾性体の内周側に広い負圧空間が存在し、湾曲形状を有するワークであっても容易に吸引保持することができる。
【0010】
また、弾性体の環状突出部分に沿って流れたエアは、コアンダ効果によりワークと反対方向に排出されるので、当該ワークに近接して置かれた他のワークを吹き飛ばすおそれがない。また、ワークは、リフト時のみ弾性体と接触し、吸引保持された状態では弾性体に接触しないので、弾性体の接触による吸着痕を可及的に少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るリフト装置の断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のリフト装置によって所定形状のワークを保持した様子を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係るリフト装置の要部断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係るリフト装置の要部断面図である。
【
図7】
図7は、弾性体が変位したときの
図6のリフト装置の要部断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施形態に係るリフト装置の要部断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第5実施形態に係るリフト装置の要部断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第6実施形態に係るリフト装置の要部断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第7実施形態に係るリフト装置の要部断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第8実施形態に係るリフト装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るリフト装置10について、
図1~
図4を参照しながら説明する。リフト装置10は、ボデイ12とディフレクタ38と弾性体54とで構成される。
【0014】
図1に示されるように、円柱状のボデイ12は、上下方向の軸線Xを有する。ボデイ12は、ディフレクタ38を取り付けるための孔部14を中央に有し、孔部14はボデイ12の下面に開口する。孔部14の軸線はボデイ12の軸線Xと一致する。ボデイ12の下面は、その外周寄りの領域に環状の第1平坦面16を備える。第1平坦面16は、ボデイ12の軸線Xと垂直であり、微小な隙間を隔ててワークと向き合うワーク保持面を構成する。
【0015】
孔部14の開口縁は、第2平坦面18と第1湾曲面20と第2湾曲面22とを経て、第1平坦面16に連なる。第2平坦面18は、ボデイ12の軸線Xと垂直である。第1湾曲面20は上方に凹む湾曲面であり、第2湾曲面22は下方に膨らむ湾曲面である。第1湾曲面20と第2湾曲面22との境界は、断面形状で見て変曲点となっている。
【0016】
ボデイ12は、第1ポート24、第2ポート26および第3ポート28を備える。第1ポート24および第3ポート28はボデイ12の側面に開口し、第2ポート26はボデイ12の上面に開口する。第1ポート24は、ボデイ12の下面と接する空間に負圧を発生させるためのポートであり、図示しないエア供給源からのエアが第1ポート24を通じてボデイ12内に導入される。第1ポート24は、エア供給源からのエアをボデイ12の側面から供給したい場合に使用される。
【0017】
第2ポート26は、第1ポート24と同じく、ボデイ12の下面と接する空間に負圧を発生させるためのポートである。第2ポート26は、エア供給源からのエアをボデイ12の上面から供給したい場合に使用される。
図1には、エア供給源からのエアをボデイ12の側面から供給する使用形態が示されており、第2ポート26は、第1プラグ30によって閉塞されている。
【0018】
第3ポート28は、ボデイ12の下方の空間の圧力を測定し、ワークの存在を確認するために使用される。また、第3ポート28は、ボデイ12の下方の空間に正圧を発生させ、負圧(真空圧)を破壊するために使用される。第3ポート28は、ボデイ12の軸線Xを間に挟んで、第1ポート24と反対側に位置する。
図1に示される使用形態では、第3ポート28は使用されないため、第3ポート28は、第2プラグ32によって閉塞されている。第3ポート28が使用される場合、第3ポート28に接続される配管に図示しない圧力センサが取り付けられる。また、エア供給源からのエアが第3ポート28を通じてボデイ12内に導入される。
【0019】
円柱状のディフレクタ38は、ボデイ12の孔部14に嵌合される本体部40と、本体部40の下部から径方向外方に延びるフランジ部42とを備える。ディフレクタ38は、ボデイ12の上面から挿通される図示しないボルトが本体部40に螺合されることにより、ボデイ12に固定される。フランジ部42の上面および下面は、ボデイ12の軸線Xと垂直であり、フランジ部42の下面は、ボデイ12の第1平坦面16よりも僅かに上方に位置する。
【0020】
ディフレクタ38の本体部40の側面は、フランジ部42の上面と連なる環状溝44を有する。ディフレクタ38の環状溝44は、周方向の所定の箇所で第1ポート24および第2ポート26と連通する。ディフレクタ38の環状溝44は、ボデイ12の孔部14の壁面と協働して、第1ポート24または第2ポート26から供給されるエアの流路を構成する。
【0021】
フランジ部42の上面は、ボデイ12の第2平坦面18に当接し、放射状に延びる複数のノズル溝46を有する。複数のノズル溝46は、環状溝44に連通し、第1ポート24または第2ポート26から供給されるエアの流路を構成する。複数のノズル溝46の合計流路面積は、環状溝44の流路面積よりも小さく、ノズル溝46は、エアの流速を高める作用を奏する。第1ポート24または第2ポート26から供給されるエアは、本体部40の環状溝44およびフランジ部42のノズル溝46を通って、流速を高めながら、放射状に噴射される。ノズル溝46から噴射されたエアは、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。
【0022】
ディフレクタ38は、上下方向に貫通する縦通路48を有し、ボデイ12は、横通路36を有する。ボデイ12の横通路36の一端は、第3ポート28に連通し、ボデイ12の横通路36の他端は、ディフレクタ38の縦通路48に連通する。第3ポート28から供給されるエアは、ボデイ12の横通路36およびディフレクタ38の縦通路48を通って、ディフレクタ38から下方に流れる。ディフレクタ38の本体部40には、環状溝44と縦通路48との間をシールする第1シール50および第2シール52が装着されている。
【0023】
図2および
図3に示されるように、環状の弾性体54は、ボデイ12の第1平坦面16の外周に配置され、ボデイ12の下端部外周に取り付けられる。弾性体54は、ゴムあるいはポリウレタン樹脂等のエラストマーから構成される。弾性体54の上部は、径方向内方に突出する環状の凸部56を備える。弾性体54の凸部56がボデイ12の下端部外周に備えられた環状の取付溝34に嵌合することにより、弾性体54がボデイ12に取り付けられる。
【0024】
弾性体54の下部は、ボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出する環状突出部分58を備える。環状突出部分58は、半円状(円弧状)の断面を有し、弾性体54の全周に亘ってボデイ12の第1平坦面16から所定高さH1だけ下方に突出する。前述したように、第1ポート24または第2ポート26から供給されるエアは、ディフレクタ38の環状溝44およびノズル溝46を通って放射状に噴射され、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、さらに、弾性体54の環状突出部分58の表面形状に沿って流れる。弾性体54の環状突出部分58に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、上方または斜め上方に向けて外部に排出される。
図2において、エアの流れが点線矢印で示されている。
【0025】
次に、リフト装置10によりワークWを吸引保持する際の動作について説明する。リフト装置10は、例えば、搬送装置のアームに取り付けられる。ワークWは、床面等の所定の場所に置かれている。ここでは、ワークWの形状として、上方に膨らんだ湾曲形状を想定する(
図4参照)。
【0026】
搬送装置が駆動され、リフト装置10がワークWの上方からワークWに接近する。これと同時に、エア供給源からのエアがリフト装置10の第1ポート24に供給される。第1ポート24に供給されたエアは、ディフレクタ38の環状溝44およびノズル溝46を通過した後、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、弾性体54の環状突出部分58に沿って流れる。
【0027】
リフト装置10とワークWとの距離が所定以内になると、エアの流速が極めて高くなる。このため、ベルヌーイ効果により、弾性体54の環状突出部分58よりも内周側の空間Sに負圧が発生して、ワークWがリフトし、リフト装置10に吸引される。リフトしたワークWは、その勢いで弾性体54の環状突出部分58に当接した後、反動により弾性体54から離れる。その後、ワークWは、弾性体54の環状突出部分58よりも内周側の空間Sに存在する負圧により、再びリフト装置10に吸引される。
【0028】
仮に、ワークWが弾性体54の全周で当接したとすると、エアの流れが阻害されてベルヌーイ効果が消失し、ワークWの吸引保持力がゼロになる。したがって、ワークWは、弾性体54の環状突出部分58との間にワークWの重量に見合った微小な隙間を確保した状態に落ち着き、リフト装置10に吸引保持される。このとき、
図4に示されるように、ワークWの一部は、弾性体54の環状突出部分58よりも内周側の空間Sに入り込んでいる。その後、搬送装置が駆動され、ワークWは、安定した姿勢で保持されつつ、所定場所まで搬送される。ここでは、湾曲形状のワークWを吸引保持する場合を想定したが、湾曲形状でないワークWについても、同様に吸引保持できる。
【0029】
リフト装置10によれば、次の作用効果を奏する。第1に、弾性体54の環状突出部分58に沿って流れたエアは、コアンダ効果により上方または斜め上方に向けて外部に排出されるので、床面等に置かれた他のワークWを吹き飛ばすおそれがない。第2に、ワークWのリフト時にワークWが弾性体54に衝突しても、弾性体54の弾性力によって、衝突音が小さく抑えられ、また、ワークWに傷痕が残ることがない。
【0030】
第3に、弾性体54の環状突出部分58がボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出しているので、弾性体54の内周側に広い負圧空間が存在し、上方に膨らんだ湾曲形状を有するワークWも吸引保持することができる。第4に、ワークWは、リフト時のみ弾性体54と接触し、吸引保持された状態では弾性体54に接触しないので、弾性体54の接触による吸着痕を可及的に少なくすることができる。第5に、ワークWが薄板状である場合、エアの排出に伴うワークWの振動が弾性体54によって抑制される。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るリフト装置について、
図5を参照しながら説明する。第2実施形態に係るリフト装置は、弾性体70の形状および弾性体70を取り付ける構成において、第1実施形態に係るリフト装置10と相違する。以下、この相違に関わる事項を中心に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一の参照符号を用いたときは、当該部材等が第1実施形態の部材等と同等であることを意味する。第3~第8実施形態についても同様である。
【0032】
環状の弾性体70は、ボデイ12の第1平坦面16の外周に配置され、ボデイ12の下端部外周に取り付けられる。弾性体70は、円形の断面を有し、ゴムあるいはポリウレタン樹脂等のエラストマーから構成される。ボデイ12の下端部外周は、入口に近いほど幅が狭い環状の取付溝74を備えている。弾性体70を変形させながらボデイ12の取付溝74内に押し込むと、弾性体70は、その復元力によって取付溝74内に保持される。これにより、弾性体70はボデイ12に取り付けられる。
【0033】
弾性体70は、その全周に亘って、ボデイ12の第1平坦面16から所定高さH2だけ下方に突出する。換言すれば、弾性体70は、ボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出する環状突出部分72を備え、環状突出部分72は円弧状の断面を有する。ディフレクタ38のノズル溝46から放射状に噴射されたエアは、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、弾性体70の環状突出部分72の表面形状に沿って流れ、外部に排出される。
【0034】
第2実施形態に係るリフト装置によれば、円形の断面を有する弾性体70が使用されるので、弾性体70の製造もしくは入手が容易である。
【0035】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るリフト装置について、
図6および
図7を参照しながら説明する。第3実施形態に係るリフト装置は、弾性体80の構成において、第1実施形態に係るリフト装置10と相違する。以下、この相違に関わる事項を中心に説明する。
【0036】
環状の弾性体80は、ボデイ12の第1平坦面16の外周に配置され、ボデイ12の下端部外周に取り付けられる。弾性体80は、ゴムあるいはポリウレタン樹脂等のエラストマーから構成される。弾性体80は、ワークと向き合う本体部82と、ボデイ12に取り付けられる固定部86と、本体部82を固定部86に接続する蛇腹状の接続部90とを備える。
【0037】
弾性体80の固定部86は、径方向内方に突出する環状の凸部88を備える。固定部86の凸部88がボデイ12の下端部外周に備えられた環状の取付溝92に嵌合することにより、弾性体80がボデイ12に取り付けられる。弾性体80の接続部90は、屈曲自在であり、本体部82の上下方向への変位を許容する。
図7には、本体部82が上方に変位した様子が示されている。
【0038】
弾性体80の本体部82は、ボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出する環状突出部分84を備える。環状突出部分84は、半円状(円弧状)の断面を有する。
図6に示されるように、接続部90に上下方向の力が加わらないとき、環状突出部分84は、弾性体80の全周に亘って、ボデイ12の第1平坦面16から所定高さH3だけ下方に突出する。ディフレクタ38のノズル溝46から放射状に噴射されたエアは、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、弾性体80の環状突出部分84の表面形状に沿って流れ、外部に排出される。
【0039】
第3実施形態に係るリフト装置によれば、弾性体80が蛇腹状の接続部90を備えるので、ワークが弾性体80に衝突したときの衝突音が一層小さく抑えられ、また、ワークに傷痕が残ることを確実に防止できる。
【0040】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るリフト装置100について、
図8および
図9を参照しながら説明する。リフト装置100は、弾性体102を取り付ける構成において、第1実施形態に係るリフト装置10と相違する。以下、この相違に関わる事項を中心に説明する。
【0041】
リフト装置100は、弾性体102を保持する筒状の保持具108を備える。環状の弾性体102は、ボデイ12の第1平坦面16の外周に配置され、保持具108を介してボデイ12に取り付けられる。弾性体102は、ゴムあるいはポリウレタン樹脂等のエラストマーから構成される。弾性体102の上部は、径方向外方に突出する環状の凸部104を備える。弾性体102の凸部104が保持具108の下端部内周に備えられた環状の取付溝110に嵌合することにより、弾性体102が保持具108に取り付けられる。
【0042】
保持具108は、径方向に貫通する複数のボルト挿通孔112を有する。ボデイ12の外周部は、保持具108のボルト挿通孔112に対応する位置にねじ孔114を有する。保持具108のボルト挿通孔112に挿通されたボルト116がボデイ12のねじ孔114に螺合することによって、保持具108がボデイ12に取り付けられる。
【0043】
弾性体102の下部は、ボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出する環状突出部分106を備える。環状突出部分106は、半円状(円弧状)の断面を有し、弾性体102の全周に亘ってボデイ12の第1平坦面16から所定高さH4だけ下方に突出する。ディフレクタ38のノズル溝46から放射状に噴射されたエアは、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、弾性体102の環状突出部分106の表面形状に沿って流れ、外部に排出される。
【0044】
リフト装置100によれば、弾性体102が保持具108を介してボデイ12に取り付けられるので、弾性体102の取付けが容易である。なお、参照符号192で示されるのは、後述するように、第7実施形態において使用される係合孔である。ねじ孔114および係合孔192を有するボデイ12は、第5~第8実施形態においても共通して使用できる。
【0045】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係るリフト装置120について、
図10および
図11を参照しながら説明する。リフト装置120は、弾性体122の形状および弾性体122を取り付ける構成において、第1実施形態に係るリフト装置10と相違する。以下、この相違に関わる事項を中心に説明する。
【0046】
リフト装置120は、弾性体122を保持する筒状の保持具126を備える。環状の弾性体122は、ボデイ12の第1平坦面16の外周に配置され、保持具126を介してボデイ12に取り付けられる。弾性体122は、円形の断面を有し、ゴムあるいはポリウレタン樹脂等のエラストマーから構成される。保持具126は、半円状の断面を有する取付溝128を備えている。弾性体122は、取付溝128の内面とボデイ12の側面132とで挟まれることによって、ボデイ12に取り付けられる。
【0047】
保持具126は、径方向に貫通する複数のボルト挿通孔130を有する。ボデイ12の外周部は、保持具126のボルト挿通孔130に対応する位置にねじ孔114を有する。保持具126のボルト挿通孔130に挿通されたボルト116がボデイ12のねじ孔114に螺合することによって、保持具126がボデイ12に取り付けられる。
【0048】
弾性体122は、その全周に亘って、ボデイ12の第1平坦面16から所定高さH5だけ下方に突出する。換言すれば、弾性体122は、ボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出する環状突出部分124を備え、環状突出部分124は円弧状の断面を有する。ディフレクタ38のノズル溝46から放射状に噴射されたエアは、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、弾性体122の環状突出部分124の表面形状に沿って流れ、外部に排出される。
【0049】
リフト装置120によれば、弾性体122が保持具126を用いてボデイ12に取り付けられるので、弾性体122の取付けが容易である。また、円形の断面を有する弾性体122が使用されるので、弾性体122の製造もしくは入手が容易である。
【0050】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係るリフト装置140について、
図12および
図13を参照しながら説明する。リフト装置140は、弾性体142を取り付ける構成において、第1実施形態に係るリフト装置10と相違する。また、リフト装置140は、排出されるエアを案内する構成において、リフト装置10と相違する。以下、これらの相違に関わる事項を中心に説明する。
【0051】
リフト装置140は、弾性体142を保持する筒状の保持具148を備える。環状の弾性体142は、ボデイ12の第1平坦面16の外周に配置され、保持具148を介してボデイ12に取り付けられる。弾性体142は、ゴムあるいはポリウレタン樹脂等のエラストマーから構成される。弾性体142の上部は、径方向外方に突出する環状の凸部144を備える。弾性体142の凸部144が保持具148の下端部内周に備えられた環状の取付溝150に嵌合することにより、弾性体142が保持具148に取り付けられる。
【0052】
保持具148は、径方向に貫通する複数のボルト挿通孔152を有する。ボデイ12の外周部は、保持具148のボルト挿通孔152に対応する位置にねじ孔114を有する。保持具148のボルト挿通孔152に挿通されたボルト116がボデイ12のねじ孔114に螺合することによって、保持具148がボデイ12に取り付けられる。
【0053】
また、リフト装置140は、排出されるエアをリフト装置140の上方へと案内する筒状のカバー体158を備える。カバー体158は、薄肉の円筒部160と薄肉の円板部162とから構成される。円板部162は、その外周から延びる複数の接続片164を介して円筒部160の上端に接続される。保持具148の外周面と円筒部160の内周面との間には、エアの流路となる第1隙間166が形成されている。また、隣接する接続片164の間には、エアの流路となる第2隙間168が形成されている。カバー体158は、図示しないボルトを用いて保持具148に取り付けられる。参照符号156で示されるのは、該ボルトが挿通される孔である。
【0054】
弾性体142の下部は、ボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出する環状突出部分146を備える。環状突出部分146は、半円状(円弧状)の断面を有し、弾性体142の全周に亘ってボデイ12の第1平坦面16から所定高さH6だけ下方に突出する。ディフレクタ38のノズル溝46から放射状に噴射されたエアは、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、弾性体142の環状突出部分146の表面形状に沿って流れる。
【0055】
弾性体142の環状突出部分146に沿って流れたエアは、コアンダ効果により上方または斜め上方に向けて流れた後、保持具148の外周面と円筒部160の内周面との間の第1隙間166に導かれ、さらに、隣接する接続片164の間の第2隙間168を通って外部に排出される。
図12において、エアの流れが点線矢印で示されている。第2隙間168の出口に図示しない排気管を接続することができる。
【0056】
リフト装置140によれば、弾性体142が保持具148を介してボデイ12に取り付けられるので、弾性体142の取付けが容易である。また、排出されるエアをリフト装置140の上方へと案内するカバー体158を備えるので、エアを1箇所に集約して排出することが可能になる。
【0057】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係るリフト装置170について、
図14および
図15を参照しながら説明する。リフト装置170は、柔軟性を有するシート状のワークを吸引するのに適したアタッチメント部材172を備える点で、第1実施形態に係るリフト装置10と相違する。また、リフト装置170は、弾性体186を取り付ける構成において、リフト装置10と相違する。以下、これらの相違に関わる事項を中心に説明する。
【0058】
アタッチメント部材172は、ディフレクタ38の下面と向き合う環状のリング部174と、リング部174の外周から放射状に延びる複数の架橋部176と、複数の架橋部176の外端に接続される円筒状のカバー壁178とから構成される。複数の架橋部176は、円周方向に等角度おきに配置される。柔軟性を有する例えばシート状のワークを吸引する場合、複数の架橋部176によってワークのボデイ12への侵入が抑制され、ワークの振動あるいはバタつきが防止される。
【0059】
アタッチメント部材172のカバー壁178は、上下方向に切り欠かれることによって形成された複数の爪部180を備える。各爪部180は、弾性を有し、先端部において径方向内方に突出する凸部182を備える。ボデイ12の外周部は、各爪部180の凸部182に対応する位置に係合孔192を有する。爪部180の凸部182がボデイ12の係合孔192に係合することによって、アタッチメント部材172がボデイ12に取り付けられる。アタッチメント部材172の架橋部176は、ボデイ12の第1平坦面16に当接するが、第1平坦面16に沿うエアの流れが架橋部176によって邪魔されることはない。
【0060】
環状の弾性体186は、ボデイ12の第1平坦面16の外周に配置され、アタッチメント部材172を介してボデイ12に取り付けられる。弾性体186は、ゴムあるいはポリウレタン樹脂等のエラストマーから構成される。弾性体186の上部は、径方向内方に突出する複数の細長い凸部188を備える。アタッチメント部材172のカバー壁178は、弾性体186の凸部188に対応する位置に細長い係合孔184を有する。弾性体186の凸部188がカバー壁178の係合孔184に係合することによって、弾性体186がアタッチメント部材172に取り付けられる。
【0061】
弾性体186の下部は、ボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出する環状突出部分190を備える。環状突出部分190は、半円状(円弧状)の断面を有し、弾性体186の全周に亘ってボデイ12の第1平坦面16から所定高さH7だけ下方に突出する。ディフレクタ38のノズル溝46から放射状に噴射されたエアは、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、弾性体186の環状突出部分190の表面形状に沿って流れ、外部に排出される。
【0062】
リフト装置170によれば、架橋部176を備えたアタッチメント部材172が取り付けられるので、柔軟性を有するワークの振動を防止することができる。また、アタッチメント部材172を利用して弾性体186が取り付けられるので、弾性体186の取付けが容易である。
【0063】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態に係るリフト装置200について、
図16および
図17を参照しながら説明する。リフト装置200は、柔軟性を有するシート状のワークを吸引するのに適したアタッチメント部材202を備える点で、第1実施形態に係るリフト装置10と相違する。また、リフト装置200は、弾性体220を取り付ける構成において、リフト装置10と相違する。以下、これらの相違に関わる事項を中心に説明する。
【0064】
アタッチメント部材202は、複数のスポーク部204と、第1外周リング部210と、第2外周リング部212と、内周リング部214とから構成される。スポーク部204は、径方向に延びるV字部分206と、V字部分206の両端から垂直に折り曲げられた垂直部分208とを有する。複数のスポーク部204は、周方向に等間隔に配置される。第1外周リング部210は、各スポーク部204の折り曲げ箇所に接続される。第2外周リング部212は、各スポーク部204の垂直部分208に接続される。内周リング部214は、各スポーク部204のV字部分206の先端近傍に接続される。柔軟性を有する例えばシート状のワークを吸引する場合、スポーク部204のV字部分206によってワークのボデイ12への侵入が抑制され、ワークの振動あるいはバタつきが防止される。
【0065】
複数のスポーク部204の垂直部分208、第1外周リング部210および第2外周リング部212は、周方向に並ぶ格子状の開口部216を構成している。開口部216にガタツキなく嵌る大きさの頭部を備えた複数のボルト218が、それぞれ所定の開口部216に挿通され、ボデイ12に備えられたねじ孔114に螺合する。これにより、アタッチメント部材202がボデイ12に取り付けられる。アタッチメント部材202のスポーク部204は、V字部分206においてボデイ12の第1平坦面16に当接するが、第1平坦面16に沿うエアの流れがスポーク部204によって邪魔されることはない。
【0066】
環状の弾性体220は、ボデイ12の第1平坦面16の外周に配置される。弾性体220は、ゴムあるいはポリウレタン樹脂等のエラストマーから構成される。弾性体220は、アタッチメント部材202の第1外周リング部210と密着するようにインサート成形される。すなわち、弾性体220は、アタッチメント部材202と一体に成形される。
【0067】
弾性体220の下部は、ボデイ12の第1平坦面16よりも下方に突出する環状突出部分222を備える。環状突出部分222は、半円状(円弧状)の断面を有し、弾性体220の全周に亘ってボデイ12の第1平坦面16から所定高さH8だけ下方に突出する。ディフレクタ38のノズル溝46から放射状に噴射されたエアは、ボデイ12の第1湾曲面20、第2湾曲面22および第1平坦面16に沿って流れる。第1平坦面16に沿って流れたエアは、コアンダ効果により、弾性体220の環状突出部分222の表面形状に沿って流れ、外部に排出される。
【0068】
リフト装置200によれば、スポーク部204を備えたアタッチメント部材202が取り付けられるので、柔軟性を有するワークの振動を防止することができる。また、インサート成形により弾性体220がアタッチメント部材202と一体に成形されるので、弾性体220の取付工程が不要である。
【0069】
本発明に係るリフト装置は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。例えば、第6実施形態では、保持具148およびカバー体158を備え、カバー体158が保持具148に取り付けられるが、保持具は備えずカバー体を備える実施形態も考えられる。その場合、カバー体はボデイに取り付けられる。
【符号の説明】
【0070】
10、100、120、140、170、200…リフト装置
12…ボデイ 16…第1平坦面(平坦面)
34、74、92、110、128、150…取付溝
54、70、80、102、122、142、186、220…弾性体
56、88、104、144、182…凸部
58、72、84、106、124、146、190、222…環状突出部分
82…本体部 86…固定部
90…接続部 108、126、148…保持具
158…カバー体 172、202…アタッチメント部材
174…リング部 176…架橋部
178…カバー壁 184…係合孔
204…スポーク部
210…第1外周リング部(外周リング部)
W…ワーク