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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056641
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】装置の製造方法、および装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20230413BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230413BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
B60R11/02 S
H05K5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165967
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 渉
【テーマコード(参考)】
3D020
4E360
5D017
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BC01
3D020BD02
3D020BD05
4E360AB02
4E360AB13
4E360AB33
4E360AB34
4E360BA02
4E360BB22
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA10
4E360EA03
4E360EA25
4E360ED07
4E360GA60
4E360GB15
5D017AE11
5D017AG13
(57)【要約】
【課題】溝70内に発音体20の突起部23を挿入した際に、突起部23によって溝70内の接着剤90が押し出されて溝70から接着剤90が溢れ出ることを抑える。
【解決手段】準備工程では、筒部11と発音体20とを準備する。次の塗布工程は、筒部11の溝形成部70aに対して凹部72で接着剤の塗布を開始してから溝形成部70aに対して溝70に沿って接着剤を一周分塗布して凹部72で接着剤の塗布を終えるように接着剤を溝形成部70aに塗布する。さらに、発音体固定工程は、溝70内に発音体20の突起部23を挿入して、一周分の接着剤の開始端部91と終了端部92とが凹部72が入った状態で、筒部11の溝形成部70aと突起部23とを接着剤によって接着する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成されている溝(70)が設けられ、かつ前記溝の底部(71)には、凹部(72)が設けられている筐体(11)と、突起部(23)が環状に形成されている機器(20)とを準備することと、
前記筐体のうち前記溝を形成する溝形成部(70a)に対して前記凹部で接着剤の塗布を開始してから前記溝形成部に対して前記溝に沿って前記接着剤を一周分塗布して前記凹部で前記接着剤の塗布を終えるように前記接着剤を前記溝形成部に塗布することと、
前記溝内に前記突起部を挿入して前記接着剤を前記凹部に入れた状態で、前記筐体の前記溝形成部と前記突起部とを前記接着剤によって接着することと、
を含む装置の製造方法。
【請求項2】
前記筐体は、内部空間(11a)を形成する内壁(13a)を備え、
前記溝および前記凹部は、前記内壁に設けられており、
前記溝形成部に対して前記接着剤を塗布した後で、前記筐体の前記内部空間内に前記機器を収納してから、前記溝形成部と前記突起部とを前記接着剤によって接着することを含む請求項1に記載の装置の製造方法。
【請求項3】
前記溝は、前記筐体において、周方向に延びる円環状に形成され、かつ前記周方向に交差する所定方向(Ta)の一方側に凹むように形成され、
前記凹部は、前記底部から前記所定方向の一方側に凹むように形成されており、
前記凹部の底部(73)は、所定部位(74)から前記周方向の一方側に進むほど前記所定方向の他方側に進みように形成され、さらに前記凹部の前記底部は、前記所定部位から前記周方向の他方側に進むほど前記所定方向の他方側に進むように形成されている請求項1または2に記載の装置の製造方法。
【請求項4】
前記溝は、前記筐体において、周方向に延びる円環状に形成され、かつ前記周方向に交差する所定方向(Ta)の一方側に凹むように形成され、
前記凹部は、前記周方向に亘って前記底部から前記所定方向の一方側に凹むように形成されており、
前記凹部の底部は、前記周方向に亘って前記所定方向の位置が同一になっている請求項1または2に記載の装置の製造方法。
【請求項5】
前記機器は、音を発生する発音体(20)である請求項1ないし4のいずれか1つに記載の装置の製造方法。
【請求項6】
装置であって、
環状に形成されている溝(70)が設けられ、かつ前記溝の底部(71)には、凹部(72)が設けられている筐体(11)と、
突起部(23)が環状に形成されている機器(20)と、を備え、
前記溝内に前記機器の前記突起部が配置され、かつ前記凹部に接着剤が入った状態で、前記筐体のうち前記溝を形成する溝形成部(70a)と前記突起部とが前記接着剤によって接着された状態になっている装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の製造方法、および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スピーカユニットとしては、第1の筐体と第2の筐体の間に発音体を挟み込んだ構造となっているものがある(例えば、特許文献1参照)。このものにおいて、第1の筐体と発音体の振動板は接着剤により接着され、第2の筐体の縁部と発音体ユニットの振動板とは、接着剤により接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-48346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上述の特許文献1のスピーカユニットを参考にして、環状の溝を有する筐体と突起部が環状に形成されている発音体とを接着剤によって接着すること検討した。
【0005】
具体的には、本発明者は、筐体のうち溝を形成する溝形成部に対して接着剤を溝に沿って一周分塗布したのち、筐体の溝内に発音体の突起部を挿入して筐体の溝形成部と発音体の突起部とを接着剤によって接着することについて検討した。ここで、溝形成部とは、筐体のうち溝を形成する側壁、および底部を含む部位である。
【0006】
ここで、溝形成部のうち接着剤の塗布が開始された始点と接着剤の塗布が終了した終点とが同一の位置に配置された場合には、溝形成部のうち始点、終点への接着剤の塗布量が始点、終点以外の他の領域に比べて、多くなる。
【0007】
このため、接着剤の粘度が高い場合には、筐体の溝内に発音体の突起部を挿入したときに、溝のうち始点、終点では、多くの接着剤が溝の外側にはみ出ることになる。
【0008】
このような多くの接着剤が溝の外側にはみ出る不具合は、発音体を筐体に接着する場合に限らず、各種の機器を筐体に接着する場合にも生じる虞があると考えられる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、溝の外側に接着剤がはみ出ることを抑えるようにした装置の製造方法、およびこの製造方法に適した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、装置の製造方法において、環状に形成されている溝(70)が設けられ、かつ溝の底部(71)には、凹部(72)が設けられている筐体(11)と、突起部(23)が環状に形成されている機器(20)とを準備することと、
筐体のうち溝を形成する溝形成部(70a)に対して凹部で接着剤の塗布を開始してから溝形成部に対して溝に沿って接着剤を一周分塗布して凹部で接着剤の塗布を終えるように接着剤を溝形成部に塗布することと、
溝内に突起部を挿入して接着剤を凹部に入れた状態で、筐体の溝形成部と突起部とを接着剤によって接着することと、を含む。
【0011】
したがって、溝内に突起部を挿入した状態で接着剤が凹部に入った状態になるため、溝内に突起部を挿入した状態で溝の外側に接着剤がはみ出ることを抑えることができる。よって、溝の外側に接着剤がはみ出ることを抑えるようにした装置の製造方法を提供することができる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、装置であって、環状に形成されている溝(70)が設けられ、かつ溝の底部(71)には、凹部(72)が設けられている筐体(11)と、
突起部(23)が環状に形成されている機器(20)と、を備え、
溝内に機器の突起部が配置され、かつ凹部に接着剤が入った状態で、筐体のうち溝を形成する溝形成部(70a)と突起部とが接着剤によって接着された状態になっている。
【0013】
したがって、溝の外側に接着剤がはみ出ることを抑えるようにした装置の製造方法に適した装置を提供することができる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における車両用発音体ユニットにおいて、ケーシング、発音体、シール材、およびカバー部を分解した分解図であり、ケーシングの筒部の内部の溝の説明を補助するための図である。
図2図1の一実施形態における車両用発音体ユニットを軸線を含む平面で切断した断面の構成を示す断面図であり、車両用発音体ユニットの全体の構成を示す断面図である。
図3図2中のIII部分を拡大した部分拡大図であり、ケーシングの外形環状部の溝、および発音体の突起部の説明を補助するための図である。
図4図2の車両用発音体ユニットのケーシングの蓋部を軸線方向他方側から視た図であり、外形環状部の溝の説明を補助するための図である。
図5図4中IV-IV断面図であり、外形環状部の溝の形状の説明を補助するための断面である。
図6図1の一実施形態における車両用発音体ユニットにおいて発音体をケーシングの蓋部に接着する工程の詳細を示すフローチャートである。
図7】一実施形態の対比例において、ケーシングの外形環状部の溝の底部に凹部を設けない場合において、溝の底部に接着剤を塗布した状態を示す断面図であり、図5に相当する図である。
図8】一実施形態の対比例において、ケーシングの外形環状部の溝の底部に凹部を設けない場合において、溝に発音体の凸部を入れて溝から接着剤が溢れ出た状態を示す図である。
図9】一実施形態の第1変形例において、ケーシングの蓋部の外形環状部の溝の形状の説明を補助するための断面である。
図10】一実施形態の第2変形例において、ケーシングの蓋部の外形環状部の溝の形状の説明を補助するための断面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発音体ユニットの一実施形態について図1図8に基づいて説明する。図2図3において、矢印Taは、発音体ユニットの軸線Saが延びる軸線方向Taを示し、矢印Kaは、発音体ユニットの軸線Saを中心とする径方向Kaを示している。
【0017】
発音体ユニットは、例えば、車両に搭載される車載発音体ユニットであって、図1および図2に示すように、ケーシング10、発音体20、シール材30、40、およびカバー部50、60を備える。ケーシング10は、筒部11、コネクタケース12、および蓋部13を備える。
【0018】
筒部11は、軸線Saを中心として角筒状に形成されて内部空間11aを形成する筐体を構成する。筒部11のうち軸線方向の一方側には、内部空間11aから軸線方向一方側に開口する開口部11cが形成されている。筒部11のうち軸線方向Taの他方側には、内部空間11aから軸線方向Ta他方側に開口する開口部11bが形成されている。
【0019】
コネクタケース12は、筒部11の外側に設けられている。コネクタケース12は、筒部11から軸線Saを中心とする径方向外側に突起するように形成されている。コネクタケース12は、筒状に形成されている。コネクタケース12内には、2本のターミナル12aが配置されている。2本のターミナル12aは、図示しない車載電子制御装置に対してコネクタ、電線等を介して接続されている。
【0020】
蓋部13は、筒部11に対して軸線方向Taの一方側に配置されている。蓋部13は、内部空間11aを軸線方向Taの一方側から覆うように形成されている。具体的には、蓋部13は、外形環状部13a、閉塞部13b、および複数の支持部13cを備える。
【0021】
外形環状部13aは、軸線Saを中心とする環状に形成されている。外形環状部13aのうち軸線Saを中心とする径方向外側が、筒部11に対して連結されている。外形環状部13aは、筒部11の内部空間11aを構成する内壁を形成する。
【0022】
外形環状部13aのうち軸線Saを中心とする径方向内側で、かつ軸線方向Taの他方側には、図2図3、および図4に示すように、軸線方向Ta(すなわち、所定方向)の一方側に凹む溝70が形成されている。溝70は、図4に示すように、軸線Saを中心とする円環状に形成されている。本実施形態の溝70の底部71には、図5に示すように、軸線方向Taの一方側へV字状に凹む凹部72が設けられている。図5において、矢印Eaは、軸線方向Taを中心とする円周方向Eaを示している。
【0023】
具体的には、凹部72の底部73は、最深部(すなわち、所定部位)74から円周方向Eaの一方側に進むほど軸線方向Taの他方側に徐々に進みように形成されている。凹部72の底部73は、最深部74から円周方向Eaの他方側に進むほど徐々に軸線方向Taの他方側に進むように形成されている。
【0024】
すなわち、溝70は、底部73の最深部74から円周方向Eaの一方側に徐々に進むほど浅くなり、最深部74から円周方向Eaの他方側に進むほど徐々に浅くなるように形成されている。
【0025】
閉塞部13bは、外形環状部13aの外形環状部13aに対して軸線Saを中心とする径方向内側に配置されている。閉塞部13bのうち軸線Saを中心とする径方向内側には、図1に示すように、軸線方向Taの一方側に突起する筒部13eが設けられている。筒部13eは、軸線Saを中心とする円筒状に形成されて、軸線方向Taの一方側に開口されている。
【0026】
複数の支持部13cは、外形環状部13aおよび閉塞部13bの間に配置されている。閉塞部13bは、複数の支持部13cによって支持されている。複数の支持部13cは、外形環状部13aによって支持されている。複数の支持部13cは、軸線Saを中心として周方向に分散して配置されている。本実施形態の複数の支持部13cとして3つの支持部13cが設けられている。
【0027】
ここで、閉塞部13bおよび外形環状部13aの間において、複数の支持部13cのうち隣り合う2つの支持部11fの間には、空所80が形成されている。このため、閉塞部13bおよび外形環状部13aの間には、複数の空所80が形成されている。複数の空所80は、発音体20から発生される音をケーシング10の外側に伝える伝搬経路を構成する。
【0028】
外形環状部13aのうち軸線Saを中心とする径方向内側には、軸線方向Taの他方側に突起する環状突起部13dが設けられている。
【0029】
発音体20としては、例えば、ボイスコイルやダイアフラム等の振動体を有して車載電子制御装置から出力される出力信号によって振動して音を発生させる内部スピーカを用いられている。発音体20は、軸線Saを中心とする略円盤状に形成されて、振動体21が軸線方向Taの一方側に向けて配置されている。発音体20には、2本のターミナル22が設けられている。2本のターミナル22は、それぞれ、2本のターミナル12aのうち対応するターミナル12aに連結されている。
【0030】
本実施形態では、図2に示すように、発音体20のうち軸線Saを中心とする径方向外側には、軸線方向Taの一方側に突起する突起部23が軸線Saを中心とする円環状に形成されている。
【0031】
ここで、発音体20の突起部23は、ケーシング10における筒部11の外形環状部13aの溝70内に入った状態で、外形環状部13aのうち溝70を形成する溝形成部70aに対して接着剤90によって接着された状態になっている。溝形成部70aは、溝70の底部、および側部を構成する部位である。
【0032】
カバー部50は、筒部11に対して軸線方向Taの他方側に配置されている。カバー部50は、内部空間11aを軸線方向Taの他方側から覆うように形成されている。
【0033】
本実施形態のカバー部50のうち軸線方向Taの一方側には、図2に示すように、軸線方向Taの他方側に凹む凹部51が設けられている。凹部51は、軸線Saを中心とする円環状に形成されている。凹部51内には、筒部11のうち軸線方向Taの他方側端部11gが入っている。他方側端部11gは、軸線Saを中心とする円環状に形成されている。
【0034】
シール材30は、ゴム等の弾性部材によって環状に形成されている。シール材30は、カバー部50のうち凹部51と筒部11の一方側端部11dとの間において、弾性変形した状態で配置されている。シール材30は、蓋部13の凹部51と筒部11の一方側端部11dとの間を密閉する。
【0035】
本実施形態のカバー部50には、筒部11に対して係合する複数のスナップフット52が設けられている。カバー部50は、複数のスナップフット52によって筒部11に係合された状態で筒部11に固定されている。
【0036】
カバー部60は、筒部11に対して軸線方向Taの一方側に配置されている。カバー部60は、内部空間11aを軸線方向Taの一方側から覆うように形成されている。
【0037】
本実施形態のカバー部60のうち軸線方向Taの他方側には、図2に示すように、軸線方向Taの一方側に凹む凹部61が設けられている。凹部61は、軸線Saを中心とする円環状に形成されている。凹部61内には、筒部11のうち軸線方向Taの一方側端部11hが入っている。一方側端部11hは、軸線Saを中心とする円環状に形成されている。
【0038】
シール材40は、ゴム等の弾性部材によって環状に形成されている。シール材40は、カバー部60のうち凹部61と筒部11の一方側端部11hとの間において、弾性変形した状態で配置されている。シール材40は、カバー部60の凹部61と筒部11の一方側端部11hとの間を密閉する。
【0039】
本実施形態のカバー部60には、筒部11に対して係合する複数のスナップフット62が設けられている。カバー部60は、複数のスナップフット62によって筒部11に係合された状態で筒部11に固定されている。カバー部60は、軸線方向Taに開口する開口部63が設けられている。
【0040】
カバー部60の開口部63内には、軸線Saを中心とするリング状に形成されているリング部64が設けられている。リング部64は、カバー部60のうち開口部63を形成する開口形成部63aに対して複数の支持部65を介して接続されている。複数の支持部65は、軸線Saを中心とする円周方向Eaに並べられている。複数の支持部65のうち隣り合う2つの支持部65の間には、空所66が形成されている。
【0041】
リング部64のうち軸線Saを中心とする径方向内側には、図1および図2に示すように、閉塞部67が配置されている。閉塞部67は、図2に示すように、筒部13e内に凹む凹状に形成されている。
【0042】
閉塞部67は、リング部64に対して複数の支持部68を介して接続されている。複数の支持部68は、軸線Saを中心とする円周方向Eaに並べられている。複数の支持部68のうち隣り合う2つの支持部68の間には、空所69が形成されている。
【0043】
本実施形態では、閉塞部67、リング部64、閉塞部13b、および外形環状部13aは、発音体20を軸線方向Taの一方側から覆うように形成されている。空所80、69、66は、発音体20から発生される音をカバー部60の開口部63を通して軸線方向Ta一方側に伝搬させる伝搬経路を構成する。
【0044】
次に、本実施形態の発音体ユニットの作動について説明する。
【0045】
発音体20には、車載電子制御装置からの出力信号が2本のターミナル22および2本のターミナル12aを通して入力される。すると、発音体20は、出力信号に基づいて音を発生する。この音は、空所80、69、66、およびカバー部60の開口部63を通して軸線方向Ta一方側に伝搬される。
【0046】
次に、本実施形態の発音体ユニットを組み立てる工程について図6等を参照して説明する。図6は、発音体ユニットの組み立て工程の詳細を示すフローチャートである。
【0047】
まず、ステップS100の準備工程において、ケーシング10、発音体20、シール材30、40、カバー部50、60、接着剤用のノズルを別々に準備する。ノズルは、その出口から接着剤を流出させて接着剤の塗布に用いる工具である。
【0048】
次のステップS110の接着剤塗布工程において、ケーシング10の蓋部13の外形環状部13aの溝形成部70aにノズルによって接着剤を塗布する。
【0049】
具体的には、溝形成部70aに対してノズルによって凹部72で接着剤の塗布を開始する。その後、図4中矢印90Aの如く溝70に沿って円周方向Eaの一方側にノズルを変位させつつ、溝形成部70aに対して接着剤を一周分塗布して凹部72で接着剤の塗布を終えるように接着剤を溝形成部70aに塗布する。
【0050】
このため、一周分の接着剤のうち円周方向Eaの一方側端部91と一周分の接着剤のうち円周方向Eaの他方側端部92とが凹部72が最深部74付近で軸線方向Taに重なるようになる。或いは、一周分の接着剤のうち円周方向Eaの一方側端部91と他方側端部92とが凹部72の最深部74付近で円周方向Eaにて隣り合うようになる。図5中の鎖線は、説明の便宜上、接着剤における一方側端部91と他方側端部92とを模式的に表したものである。
【0051】
次に、ステップS120の発音体固定工程において、ケーシング10の筒部11の内部空間11aに発音体20を収納して、ケーシング10の蓋部13の外形環状部13aの溝70に発音体20の突起部23を入れる。このため、ケーシング10の蓋部13の外形環状部13aの溝形成部70aに対して発音体20の突起部23が接着剤によって固定される。
【0052】
次に、ステップS130のカバー部組み付け工程において、ケーシング10の筒部11に対してシール材30を介してカバー部50を組み付けるとともに、ケーシング10の筒部11に対してシール材40を介してカバー部60を組み付ける。
【0053】
以上により、ケーシング10、発音体20、シール材30、40、およびカバー部50、60が組み付けられて発音体ユニットの組み立てが完成する。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、発音体ユニットの製造方法において、ステップS100の準備工程では、環状に形成されている溝70の底部71に凹部72が設けられている筒部11と、突起部23が環状に形成されている発音体20とを準備する。
【0055】
ステップS110の塗布工程は、筒部11の溝形成部70aに対して凹部72で接着剤の塗布を開始してから溝形成部70aに対して溝70に沿って接着剤を一周分塗布して凹部72で接着剤の塗布を終えるように接着剤を溝形成部70aに塗布する。
【0056】
ステップS120の発音体固定工程は、溝70内に発音体20の突起部23を挿入して、一周分の接着剤のうち円周方向Eaの一方側端部91と他方側端部92とが凹部72が入った状態で、筒部11の溝形成部70aと突起部23とを接着剤によって接着する。
【0057】
一方側端部91は、一周分の接着剤のうち塗布が開始される端部であり、他方側端部92は、接着剤のうち塗布が終了される端部である。
【0058】
溝70の底部71に凹部72が設けられていない場合に、筒部11の溝形成部77に対して所定位置74aで接着剤の塗布を開始してから溝形成部70aに対して接着剤を一周分塗布して所定位置74aで接着剤の塗布を終える場合には、図7のようになる。
【0059】
すなわち、図7に示すように、溝形成部77のうち最深部74に塗布される接着剤の塗布量は、溝形成部77のうち最深部74以外の他の部位に塗布される接着剤の塗布量に比べて、多くなる。これは、溝70の底部71に凹部72が設けられていない場合に、溝70の底部71の軸線方向Taの位置が円周方向Eaに亘って均一になるからである。
【0060】
このため、接着剤の粘度が高い場合には、溝70内に発音体20の突起部23を挿入すると、図8の部分VIIIに示すように、突起部23によって溝70内の接着剤90が押し出されて、溝70から大量の接着剤90が溝70の外側に溢れ出る。このため、外観や音の出方に悪影響を与える虞がある場合がある。
【0061】
図8は、外形環状部13aの溝70に発音体20の突起部23が入った状態を軸線方向Taの他方側から視た図の一部を拡大した図である。図8中部分VIII中の符号95は、溝70から溢れ出た接着剤を示している。図8中の鎖線70bは、溝70と発音体20との間の境界線を示している。
【0062】
これに対して、本実施形態では、溝70内において一周分の接着剤のうち一方側端部91と他方側端部92とが凹部72が入っている。このため、凹部72において接着剤90のうち最も軸線方向Taに位置する部位96は、図7の部位96aに比べて、軸線方向Taの一方側に位置する。図7の部位96aは、溝70の底部71のうち接着剤の塗布の開始と塗布の終了とを実施した部位である。
【0063】
したがって、溝70内に発音体20の突起部23を挿入した際に、突起部23によって溝70内の接着剤90が押し出されて溝70から接着剤90がはみ出ることを抑えることができる。
【0064】
或いは、溝70内に発音体20の突起部23を挿入した際に、突起部23によって溝70内の接着剤90が押し出されて溝70から接着剤90がはみ出る量を円周方向Eaに亘って平準化することができる。
【0065】
本実施形態では、発音体ユニットは、環状に形成されている溝70が設けられ、かつ溝70の底部71には、凹部72が設けられている筒部11と、突起部23が環状に形成されている発音体20とを備える。
【0066】
溝70内に発音体20の突起部23が配置され、かつ凹部72に接着剤が入った状態で、筒部11のうち溝70を形成する溝形成部70aと突起部23とが接着剤によって接着された状態になっている。
【0067】
以上により、溝70の外側に接着剤がはみ出ることを抑えるようにした発音体ユニットの製造方法(すなわち、装置の製造方法)、および発音体ユニット(すなわち、装置)を提供することができる。したがって、外観や音の出方に悪影響を与えることを未然に防ぐことができる。
【0068】
本実施形態では、ステップS120の発音体固定工程は、外形環状部13aの溝形成部70aに接着剤を塗布した後で、溝形成部70aと発音体20の突起部23とを接着剤によって接着する前に筒部11の内部空間11a内に発音体20を収納する。
【0069】
これにより、筒部11の外形環状部13aの溝70に発音体20を容易に固定することができる。
【0070】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、溝70の底部71の凹部72を軸線方向Taの他方側へV字状に凹むように形成した例について説明した。しかし、これに代えて、(a)(b)に示すように、凹部72を溝70の底部71に形成してもよい。
【0071】
(a)溝70の底部71には、図9に示すように、軸線方向Taの一方側へU字状に凹む凹部72が設けられている。図9において、矢印Eaは、軸線方向Taを中心とする円周方向Eaを示している。
【0072】
具体的には、凹部72の底部73は、最深部(すなわち、所定位置)74から円周方向Eaの一方側に進むほど軸線方向Taの一方側に進みように形成されている。凹部72の底部73は、最深部74から円周方向Eaの他方側に進むほど軸線方向Taの一方側に進むように形成されている。
【0073】
(b)溝70の底部71には、図10に示すように、円周方向Eaに亘って底部71から軸線方向Taの一方側に凹む凹部72が形成されている。凹部72の底部73は、円周方向Eaに亘って軸線方向Taの位置が同一になっている。
【0074】
(2)上記実施形態では、内部空間11aを有する筒部11を筐体とした例について説明した。しかし、これに代えて、内部空間11aを有していない筐体の外壁に溝を設け、この溝に発音体20を接着してもよい。
【0075】
(3)上記実施形態では、発音体20として、ボイスコイルやダイアフラム等の振動体を有するスピーカを用いる例について説明した。しかし、これに限らず、発音体20として、圧電素子を備え車載電子制御装置から出力される出力信号によって圧電素子を振動させて音を発生させるピエゾスピーカを用いてもよい。
【0076】
(4)上記実施形態では、機器として発音体20を用いた例について説明したが、これに代えて、発音体20以外の各種のものを機器としてもよい。
(5)上記実施形態では、溝70を円環状に形成した例について説明したが、これに限らず、環状であるならば、円環状以外の環状形状に溝70を形成してもよい。
【0077】
(6)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
11 筒部
20 発音体
23 突起部
70 溝
70a 溝形成部
71 底部
72 凹部
91 開始端部
92 終了端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10