(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056642
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】回転式圧縮機および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/04 20060101AFI20230413BHJP
F25B 1/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F04C29/04 M
F25B1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165968
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】四至本 知秀
(72)【発明者】
【氏名】川島 裕瑞希
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA13
3H129AB03
3H129BB12
3H129BB42
3H129CC04
3H129CC22
3H129CC64
(57)【要約】
【課題】圧縮性能を向上させることができる回転式圧縮機および冷凍サイクル装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の回転式圧縮機は、シャフトおよび圧縮機構部を内部に収容するケースを持つ。圧縮機構部は、偏心部と、シリンダと、ローラと、ブレードと、閉塞部材と、注入口と、を有する。シリンダは、偏心部が配置されるシリンダ室を有する。ローラは、筒状であり、偏心部に嵌められ、シリンダ室内で偏心回転する。ブレードは、ローラの偏心回転に伴って進退移動し、シリンダ室を気体冷媒の吸込室と圧縮室とに区分する。閉塞部材は、シャフトの軸方向においてシリンダ室の端部を閉塞する。注入口は、閉塞部材に形成され、シリンダ室に開口し、ケースの外部から導入した冷却用冷媒をシリンダ室に注入する。注入口は、ローラおよびブレードの閉塞部材側の端面により開閉される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトおよび圧縮機構部を内部に収容するケースを有し、
前記圧縮機構部は、
前記シャフトに設けられた偏心部と、
前記偏心部が配置されるシリンダ室を有するシリンダと、
筒状であり、前記偏心部に嵌められ、前記シリンダ室内で偏心回転するローラと、
前記ローラの偏心回転に伴って進退移動し、前記シリンダ室を第1状態の冷媒の吸込室と圧縮室とに区分するブレードと、
前記シャフトの軸方向において前記シリンダ室の端部を閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材に形成され、前記シリンダ室に開口し、前記ケースの外部から導入した第2状態の冷媒を前記シリンダ室に注入する注入口と、を有し、
前記注入口は、前記ローラおよび前記ブレードの前記閉塞部材側の端面により開閉される、
回転式圧縮機。
【請求項2】
前記ブレードは、前記ローラと一体である、
請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項3】
前記注入口は、閉塞された状態から開口面積が最大となる状態への移行が、前記ローラの前記閉塞部材側の端面のみによって行われる、
請求項1または2に記載の回転式圧縮機。
【請求項4】
前記ブレードは、前記ローラと別体であり、前記シリンダに形成されたブレード溝に沿って第1方向に移動可能であり、前記第1方向の前記シリンダ室側の先端が前記ローラの外周面に当接し、
前記注入口は、前記閉塞部材の前記ブレードと摺動する領域において、前記軸方向および前記第1方向に直交する第2方向の中央より、前記圧縮室の近くに形成され、
前記注入口は、前記ブレードの前記シリンダ室側の先端と前記ローラの外周面との間において、前記シリンダ室に開口する、
請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項5】
前記注入口は、前記第1方向の長さが、前記第2方向の長さより長い、
請求項4に記載の回転式圧縮機。
【請求項6】
前記注入口は、前記閉塞部材に形成された第1凹部の開口であり、
前記ブレードは、前記閉塞部材側の端面に、前記第1凹部と連通可能な第2凹部を有する、
請求項4または5に記載の回転式圧縮機。
【請求項7】
前記ブレードは、前記ローラの偏心回転に伴って、前記シリンダに形成されたブレード収容孔から前記シリンダ室に出入り移動し、
前記シリンダは、前記シリンダ室に前記第1状態の冷媒を吸い込む吸込孔を有し、
前記ローラの偏心回転方向において、前記ブレード収容孔の中心から、前記ローラの偏心回転方向の下流側における前記吸込孔の端部までの角度をθ1とし、
前記ローラの偏心回転方向において、前記ブレード収容孔の中心から、前記注入口の開口面積が最大となる前記ローラの偏心方向の先端までの角度をθmaxとしたとき、
θ1<θmax<140°が成立する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の回転式圧縮機と、
前記回転式圧縮機に接続された放熱器と、
前記放熱器に接続された膨張装置と、
前記膨張装置と前記回転式圧縮機との間に接続された吸熱器と、を有する、
冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転式圧縮機および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置において、気体冷媒を圧縮する回転式圧縮機が利用されている。回転式圧縮機のシリンダ室に冷却用冷媒を注入するインジェクション回路が提案されている。回転式圧縮機には、圧縮性能を向上させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、圧縮性能を向上させることができる回転式圧縮機および冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の回転式圧縮機は、シャフトおよび圧縮機構部を内部に収容するケースを持つ。圧縮機構部は、偏心部と、シリンダと、ローラと、ブレードと、閉塞部材と、注入口と、を有する。偏心部は、シャフトに設けられる。シリンダは、偏心部が配置されるシリンダ室を有する。ローラは、筒状であり、偏心部に嵌められ、シリンダ室内で偏心回転する。ブレードは、ローラの偏心回転に伴って進退移動し、シリンダ室を気体冷媒の吸込室と圧縮室とに区分する。閉塞部材は、シャフトの軸方向においてシリンダ室の端部を閉塞する。注入口は、閉塞部材に形成され、シリンダ室に開口し、ケースの外部から導入した冷却用冷媒をシリンダ室に注入する。注入口は、ローラおよびブレードの閉塞部材側の端面により開閉される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態の回転式圧縮機の断面図を含む冷凍サイクル装置の概略構成図。
【
図2】第1の実施形態のインジェクション回路の作用の説明図。
【
図3】ローラの偏心回転角と注入口の開口面積比との関係を示すグラフ。
【
図4】インジェクション回路の冷却用冷媒の圧力と圧縮室の圧力との関係を示すグラフ。
【
図5】第2の実施形態のインジェクション回路の作用の説明図。
【
図6】第3の実施形態の回転式圧縮機の部分断面図。
【
図7】第3の実施形態のインジェクション回路の作用の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の回転式圧縮機および冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の回転式圧縮機の断面図を含む冷凍サイクル装置の概略構成図である。
【0008】
冷凍サイクル装置1について簡単に説明する。
冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機2と、回転式圧縮機2に接続された放熱器(例えば凝縮器)3と、放熱器3に接続された膨張装置(例えば膨張弁)4と、膨張装置4と回転式圧縮機2との間に接続された吸熱器(例えば蒸発器)5と、を有する。冷凍サイクル装置1は、二酸化炭素(CO2)等の冷媒を含む。冷媒は、相変化しながら冷凍サイクル装置1の冷媒流路8を循環する。
【0009】
回転式圧縮機2は、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒(流体)を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。回転式圧縮機2の具体的な構成は後述される。
【0010】
放熱器3は、回転式圧縮機2から供給される高温・高圧の気体冷媒から放熱して、高温・高圧の気体冷媒を高圧の液体冷媒にする。
膨張装置4は、放熱器3から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、高圧の液体冷媒を低温・低圧の液体冷媒にする。
吸熱器5は、膨張装置4から送り込まれる低温・低圧の液体冷媒を気化させ、低圧の気体冷媒にする。吸熱器5において、低圧の液体冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪うことで周囲が冷却される。吸熱器5を通過した低圧の気体冷媒は、上述した回転式圧縮機2の内部に取り込まれる。
【0011】
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒との間で相変化しながら冷媒流路8を循環する。冷媒は、気体冷媒から液体冷媒に相変化する過程で放熱し、液体冷媒から気体冷媒に相変化する過程で吸熱する。これらの放熱や吸熱を利用して暖房や冷房などが行われる。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の回転式圧縮機2について説明する。第1の実施形態の回転式圧縮機2は、ブレード40とローラ22とが一体の、いわゆるスイング式の回転式圧縮機2である。
【0013】
本願において、Z方向(軸方向)は、シャフト13の中心軸の軸方向である。+Z方向は圧縮機構部20から電動機部15に向かう方向であり、-Z方向は+Z方向の反対側である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は鉛直上方である。
【0014】
回転式圧縮機2は、アキュムレータ6と、圧縮機本体10と、を有する。アキュムレータ6は、吸熱器5から送り込まれる冷媒を、気体冷媒と液体冷媒とに分離する。気体冷媒は、吸入管を通って圧縮機本体10に取り込まれる。
【0015】
圧縮機本体10は、ケース11と、シャフト13と、電動機部15と、潤滑油貯留部14と、複数の圧縮機構部20と、インジェクション回路30と、を有する。
ケース11は、両端部が閉塞された円筒状に形成される。ケース11は、シャフト13、電動機部15、潤滑油貯留部14および複数の圧縮機構部20を収容する。ケース11は、上端部に供給部12を有する。供給部12は、ケース11の内部の気体冷媒を放熱器3に供給する。
【0016】
シャフト13は、圧縮機本体10の中心軸に沿って配置される。シャフト13は、複数の偏心部21を有する。
電動機部15は、シャフト13の+Z方向に配置される。電動機部15は、固定子15aと、回転子15bと、を有する。固定子15aは、ケース11の内周面に固定される。回転子15bは、シャフト13の外周面に固定される。電動機部15は、シャフト13を回転駆動する。
【0017】
潤滑油貯留部14は、ケース11の内側であって、複数の圧縮機構部20の外側の領域である。潤滑油貯留部14は、圧縮機本体10の摺動部を潤滑する潤滑油を貯留する。シャフト13の下端部から中心軸に沿って、潤滑油流路(不図示)が形成される。潤滑油貯留部14の潤滑油は、シャフト13の回転に伴って潤滑油流路を通り、圧縮機本体10の摺動部に供給される。
【0018】
複数の圧縮機構部20は、シャフト13の回転によって気体冷媒を圧縮する。複数の圧縮機構部20は、シャフト13の-Z方向に配置される。複数の圧縮機構部20は、フレーム11aに固定される。フレーム11aの外周面は、ケース11の内周面に固定される。複数の圧縮機構部20は、第1圧縮機構部20Aおよび第2圧縮機構部20Bの、2個の圧縮機構部20を有する。第1圧縮機構部20Aおよび第2圧縮機構部20Bは、この順番で+Z方向から-Z方向に並んで配置される。以下には、代表として第1圧縮機構部20Aの構成が説明される。第2圧縮機構部20Bの構成は、偏心部21の偏心方向を除いて、第1圧縮機構部20Aと同様である。
【0019】
第1圧縮機構部20Aは、偏心部21と、ローラ22と、ブレード40と、シリンダ24と、を有する。
偏心部21は、円柱状で、シャフト13と一体に形成される。+Z方向から見て、偏心部21の中心は、シャフト13の中心軸から偏心している。
ローラ22は、円筒状に形成され、偏心部21の外周に嵌められる。ローラ22は、シリンダ室25の内部で偏心部21と共に偏心回転する。
【0020】
図2は、
図1のII-II線における断面図である。
ブレード40は、
図2(a)に示されるように、ローラ22と一体に形成される。ブレード40は、平板形状である。ブレード40は、ローラ22の外周面から、ローラ22の径方向の外側に伸びる。シリンダ24には、ブレード収容孔41を有する。一対のブレード収容孔41は、シャフト13の径方向に並んで、相互に連結した状態で形成される背圧空間42aおよびブッシュ溝42bを有し、背圧空間42aとブッシュ溝42bとの間に、喉部43が形成される。ブッシュ溝42bには、略半円形の一対のブッシュ42cが嵌め込まれている。一対のブッシュ42cは、ブッシュ溝42bの軸心を中心として揺動運動するように構成されている。背圧空間42aは、略円形に形成される。ブレード40は、ローラ22の回転に伴って、一対のブッシュ42cの間に進退可能に収容される。
【0021】
本願において、X方向(第1方向)およびY方向(第2方向)が以下のように定義される。Z方向に垂直な平面内で、シャフト13の中心と喉部43(またはブレード収容孔41)の中心とを結ぶ線を基準線44とする。X方向は、基準線44と平行な方向である。+X方向は、喉部43の中心から、シャフト13の中心に向かう方向である。Y方向は、Z方向およびX方向に垂直な方向である。
【0022】
シリンダ24は、シリンダ室25の内部で圧縮された気体冷媒を、ケース11の内部に吐出する。シリンダ24は、シリンダ室25と、吸込孔28と、吐出孔29(
図1参照)と、を有する。
【0023】
シリンダ室25は、シリンダ24の径方向の中央をZ方向に貫通して形成される。シリンダ室25は、内部に偏心部21、ローラ22およびブレード40を収容する。
図2(d)に示されるように、ブレード40は、ローラ22とともに、シリンダ室25の内部を吸込室25sと圧縮室25pとに仕切る。吸込孔28は、吸込室25sと、
図1に示されるアキュムレータ6とを連通する。吐出孔29は、軸受17(第1軸受17Aまたは第2軸受17B)に形成される。吐出孔29は、弁体29vを介して、圧縮室25pとマフラ室19(第1マフラ室19Aまたは第2マフラ室19B)とを連通する。
【0024】
ローラ22の偏心回転により、吸込室25sの体積が増加する。アキュムレータ6から吸込孔28を通って吸込室25sに、気体冷媒(第1状態の冷媒)が吸い込まれる。ローラ22の偏心回転により、圧縮室25pの体積が減少し、気体冷媒が圧縮される。気体冷媒が吐出圧力を超えると、弁体29vが押し開かれる。気体冷媒が、圧縮室25pから吐出孔29を通ってマフラ室19に吐出される。
【0025】
図1に示されるように、回転式圧縮機2は、仕切部材(閉塞部材)16と、第1軸受17Aと、第2軸受17Bと、第1マフラ18Aと、第2マフラ18Bと、を有する。
仕切部材16は、第1圧縮機構部20Aと第2圧縮機構部20Bとの間に配置される。仕切部材16は、第1圧縮機構部20Aのシリンダ室25の-Z方向の端部を閉塞する。仕切部材16は、第2圧縮機構部20Bのシリンダ室25の+Z方向の端部を閉塞する。
【0026】
第1軸受(主軸受)17Aは、複数の圧縮機構部20の+Z方向に配置され、シャフト13を支持する。第1軸受17Aは、第1圧縮機構部20Aのシリンダ室25の+Z方向の端部を閉塞する。
第2軸受(副軸受)17Bは、複数の圧縮機構部20の-Z方向に配置され、シャフト13を支持する。第2軸受17Bは、第2圧縮機構部20Bのシリンダ室25の-Z方向の端部を閉塞する。
【0027】
第1マフラ18Aは、第1軸受17Aとの間に第1マフラ室19Aを形成する。第1圧縮機構部20Aで圧縮された気体冷媒は、吐出孔29から第1マフラ室19Aに吐出される。第1マフラ室19Aに吐出された気体冷媒は、マフラ孔19eからケース11の内部に吐出される。
第2マフラ18Bは、第2軸受17Bとの間に第2マフラ室19Bを形成する。第2圧縮機構部20Bで圧縮された気体冷媒は、吐出孔(不図示)から第2マフラ室19Bに吐出される。第2マフラ室19Bは、マフラ室間通路(不図示)を介して、第1マフラ室19Aに連通している。
【0028】
インジェクション回路30について詳細に説明する。
インジェクション回路30は、ケース11の外部から導入した冷却用冷媒(第2状態の冷媒、中間圧冷媒、液体冷媒)を、シリンダ室25に間欠的に注入する。インジェクション回路30は、配管32と、閉止弁33と、分岐流路34と、注入口35と、を有する。
【0029】
配管32は、ケース11の外部から冷却用冷媒を導入する。配管32は、冷凍サイクル装置1の放熱器3と膨張装置4との間の冷媒流路8から分岐される。膨張装置4が高圧側膨張装置および低圧側膨張装置を有する場合に、配管32は高圧側膨張装置と低圧側膨張装置との間の冷媒流路8から分岐されてもよい。配管32は、気液分離器を介して冷媒流路8から分岐されてもよい。配管32は、ケース11および潤滑油貯留部14を通って、仕切部材16の内部に伸びる。放熱器3と膨張装置4との間の冷媒流路8には、圧縮機構部20で圧縮される気体冷媒よりも低温の気液二相冷媒が流通する。配管32は、この気液二相冷媒を冷却用冷媒として、ケース11の内部に導入する。
【0030】
閉止弁33は、ケース11の外部の配管32に設置される。閉止弁33は、ケース11の内部への冷却用冷媒の導入を閉止可能である。
分岐流路34は、仕切部材16に形成される。分岐流路34は、仕切部材16の内部の配管32の先端から、複数の圧縮機構部20に向かって伸びる。分岐流路34は、複数の圧縮機構部20の注入口35と、共通の配管32とを連通させる。
【0031】
注入口35は、分岐流路34のシリンダ室25への開口部である。注入口35は、円形状である。注入口35は、仕切部材16に形成される。注入口35は、ケース11の外部から導入された冷却用冷媒を、シリンダ室25の内部に注入する。
図2(d)に示されるように、注入口35は、Y方向において基準線44より圧縮室25pの近くに配置される。注入口35は、X方向に沿って配置されたブレード40の、Y方向の幅の範囲内に配置される。ローラ22が最も+X方向に偏心回転したとき、注入口35は、X方向においてローラ22の外周とシリンダ室25の外周との間に配置される。
図2(a)に示されるように、ローラ22が最も-X方向に偏心回転したとき、注入口35は、X方向においてローラ22の内周と外周との間に配置される。注入口35は、ローラ22の内周の内側に露出しない。
【0032】
インジェクション回路30の作用について、従来技術と比較して説明する。
図2は、インジェクション回路30の作用の説明図であり、
図1のII-II線における断面図である。
図2には、第1の実施形態の注入口35と共に、比較のため従来技術の注入口35cが記入されている。
【0033】
シリンダ室25での気体冷媒の圧縮過程の前半(
図2(c)参照)では、インジェクション回路30の冷却用冷媒の圧力が、シリンダ室25の圧力より大きい。冷却用冷媒は、注入口からシリンダ室25に注入される。注入された冷却用冷媒に含まれる液体冷媒が、シリンダ室25で吸熱して蒸発する。これにより、圧縮中の気体冷媒および圧縮機構部20が冷却される。圧縮される冷媒量が増加するので、回転式圧縮機2の圧縮性能が向上する。
【0034】
シリンダ室25に注入された冷却用冷媒が、吸込孔28に流入すると、吸込孔28からシリンダ室25への気体冷媒の吸込み量が減少する。これにより、回転式圧縮機2の圧縮性能が低下する。
図2(b)の時点では、ローラ22の偏心方向の先端が、ローラ22の偏心回転方向の下流側における吸込孔28の端部28eにある。
図2(b)の時点より前に、注入口がシリンダ室25に開口すると、注入された冷却用冷媒が、吸込孔28に流入する可能性がある。少なくとも
図2(b)の時点まで、注入口が閉塞されることが要求される(以下、第1の要求と言う。)。
【0035】
図1に示されるように、シリンダ室25で吐出圧力まで圧縮された気体冷媒が、ケース11の内部に吐出される。ケース11の内部に収容される潤滑油貯留部14の圧力は、吐出圧力と同等である。前述されたように、潤滑油貯留部14の潤滑油は、シャフト13の中心軸に沿って形成された潤滑油流路を通り、圧縮機本体10の摺動部に供給される。ローラ22の内周の内側には、吐出圧力の潤滑油が存在する。注入口がローラ22の内周の内側に開口すると、潤滑油が注入口からインジェクション回路30に流入する可能性がある。注入口がローラ22の内周の内側に開口しないことが要求される(以下、第2の要求と言う。)。
【0036】
図4は、インジェクション回路30の冷却用冷媒の圧力と圧縮室25pの圧力との関係を示すグラフである。
図4の横軸は、基準線44からのローラ22の偏心回転角(単に回転角と言う場合がある。)θである。回転角θは、ローラ22の偏心回転方向において、喉部43の中心から、ローラ22の偏心方向の先端までの角度である。
図4において、実線は高負荷時における圧縮室25pの圧力であり、破線は低負荷時における圧縮室25pの圧力である。一点鎖線は高負荷時におけるインジェクション回路30の冷却用冷媒の圧力であり、二点鎖線は低負荷時におけるインジェクション回路30の冷却用冷媒の圧力である。高負荷時とは回転式圧縮機2が高回転数で運転されている状態であり、低負荷時とは低回転数で運転されている状態である。高負荷時には、冷凍サイクル装置1を流通する冷媒の圧力が高くなる。これに伴って、インジェクション回路30の冷却用冷媒の圧力が高くなる。また、ケース11の内部の圧力が高くなり、圧縮室25pからの気体冷媒の吐出圧力が高くなる。
【0037】
回転角θの増加に伴って、圧縮室25pの圧力が増加する。高負荷時には、θ=180°の時点で、圧縮室25pの圧力が、インジェクション回路30の冷却用冷媒の圧力を上回る。θ=180°の時点より後に、注入口が圧縮室25pに開口すると、圧縮された気体冷媒が、注入口からインジェクション回路30に流入する可能性がある。少なくともθ=180°の時点より後は、注入口が閉塞されることが要求される(以下、第3の要求と言う。)。
【0038】
従来技術の注入口35cは、ローラ22のZ方向の端面のみにより開閉される。そのため、注入口35cの位置および開口面積に関する設計自由度は小さい。
図2(a)に示されるように、注入口35cは、回転角θが約315°の位置にある。注入口35cは、ちょうど
図2(b)の時点で、シリンダ室25に開口する。注入口35cは、
図2(f)の時点でローラ22の内周に最接近するが、ぎりぎり内周の内側に開口しない。注入口35cは、設計自由度が小さいので、第1および第2の要求をかろうじて満たすように設計されるのが限度である。
【0039】
図3は、ローラの偏心回転角と注入口の開口面積比との関係を示すグラフである。
図3のグラフにおいて、実線は実施形態の注入口35であり、破線は従来技術の注入口35cである。縦軸の注入口の開口面積比は、従来技術の注入口35cの最大開口面積を1として正規化したものである。
【0040】
従来技術の注入口35cの設計自由度は小さい。注入口35cが最大開口面積で開口する回転角θの範囲が大きくなる。注入口35cは、
図2(d)のθ=180°の時点で、圧縮室25pに開口している。
図3に示されるように、回転角θが約225°になるまで、注入口35cは閉塞されない。注入口35cは、第3の要求を満たすことができない。
従来技術の注入口35cの設計自由度は小さい。注入口35cの開口面積を大きくすることが難しい。シリンダ室25に注入される冷却用冷媒が不足する。回転式圧縮機2の冷却性能および圧縮性能の向上に限界がある。
【0041】
実施形態の注入口35は、ローラ22およびブレード40のZ方向の端面により開閉される。そのため、注入口35の位置および開口面積に関する設計自由度は大きい。スイング式のブレード40が注入口35を開閉するので、注入口35の設計自由度は極めて大きい。
図2(a)に示されるように、注入口35は、回転角θが360°の直前の位置にある。
【0042】
図2(a)は、θ=0°の時点である。注入口35は、ローラ22のZ方向の端面により閉塞されている。注入口35は、ローラ22の内周に最接近するが、内周の内側に開口しない。注入口35は、第2の要求を満たす。ローラ22の内周の内側の潤滑油が、注入口35に流入しにくい。回転式圧縮機2における潤滑油の不足が抑制される。
【0043】
図2(b)では、ローラ22の偏心方向の先端が、ローラ22の偏心回転方向の下流側における吸込孔28の端部28eにある。
図2(b)の回転角θをθ1とする。注入口35は、ローラ22のZ方向の端面により閉塞されている。注入口35は、第1の要求を満たす。
【0044】
図2(c)は、θ=90°の時点である。注入口35の全体が、シリンダ室25に開口する。注入口35の開放は、ローラ22のZ方向の端面のみにより行われる。注入口35は、ローラ22の径方向に相対移動して、全体が閉塞された全閉状態から、開口面積が最大となる全開状態に移行する。
図3に示されるように、注入口35の開放が、狭い回転角θの範囲で、短時間に行われる。
【0045】
図2(d)は、θ=180°の時点である。注入口35の全体が、ブレード40のZ方向の端面により閉塞される。180°<θである
図2(e)および
図2(f)においても、注入口35が、ブレード40またはローラ22のZ方向の端面により閉塞されている。注入口35は、第3の要求を満たす。高負荷時において、シリンダ室25で圧縮された気体冷媒が、注入口35からインジェクション回路30に流入しにくい。
【0046】
図4に示されるように、低負荷時には、回転角θが140°の時点で、圧縮室25pの圧力が、インジェクション回路30の冷却用冷媒の圧力を上回る。
図3に示されるように、θ=140°では、実施形態の注入口35の開口面積比が、従来技術の注入口35cと同等である。140°<θでは、実施形態の注入口35の開口面積比が、従来技術の注入口35cより小さい。低負荷時においても、シリンダ室25で圧縮された気体冷媒が、注入口35からインジェクション回路30に流入しにくい。
【0047】
実施形態の注入口35の設計自由度は大きい。注入口35の開口面積を大きくすることが可能である。
図3に示されるように、実施形態の注入口35の開口面積は、従来技術の注入口35cの2倍である。注入口35における冷却用冷媒の圧力損失が抑制される。十分な量の冷却用冷媒がシリンダ室25に注入される。回転式圧縮機2の冷却性能および圧縮性能が向上する。
【0048】
図2(b)に示されるように、ローラ22の偏心回転方向において、喉部43(またはブレード収容孔41)の中心から、吸込孔28の端部28eまでの角度をθ1とする。
図2(c)に示されるように、喉部43(またはブレード収容孔41)の中心から、注入口35の開口面積が最大となるローラ22の偏心方向の先端までの角度をθmaxとする。このとき、以下の数式1が成立する。
θ1<θmax<140° ・・・ (1)
図3に示されるように、θ1は約30°である。θmaxは、概ね90°<θmax<110°である。θmaxは、数式1を満たす。
【0049】
θ1<θmaxにより、注入口35の開口面積が最大になるのは、ローラ22の偏心方向の先端が吸込孔28の端部28eを通過した後である。その前には注入口35の開口面積が最大にならないので、吸込孔28への冷却用冷媒の流入が抑制される。
θmax<140°により、注入口35の開口面積が最大になるのは、低負荷時において圧縮室25pの圧力がインジェクション回路30の冷却用冷媒の圧力を上回る前である。その後には注入口35の開口面積が最大にならないので、圧縮された気体冷媒の注入口35への流入が抑制される。
【0050】
以上に詳述されたように、第1の実施形態の回転式圧縮機2において、冷却用冷媒の注入口35は、ローラ22およびブレード40の仕切部材16側の端面により開閉される。
注入口35の設計自由度が大きい。シリンダ室25の気体冷媒の圧力が冷却用冷媒の圧力を上回った後は、注入口35がシリンダ室25に開口しない。気体冷媒が注入口35に流入しにくい。回転式圧縮機2の圧縮性能が向上する。
【0051】
ブレード40は、ローラ22と一体である。
スイング式のブレード40が注入口35を開閉するので、注入口35の設計自由度が極めて大きい。回転式圧縮機2の圧縮性能が向上する。
ブレード40とローラ22の外周面との間に隙間が生じないので、注入口35を隙間なく閉塞できる。
【0052】
注入口35は、閉塞された状態から開口面積が最大となる状態への移行が、ローラ22の仕切部材16側の端面のみによって行われる。
注入口35の開放時には、冷却用冷媒の圧力が、シリンダ室25の圧力より大幅に高い。注入口35の開放が、ローラ22の仕切部材16側の端面のみにより、短時間に行われる。冷却用冷媒の圧力損失が抑制され、十分な量の冷却用冷媒がシリンダ室25に注入される。回転式圧縮機2の冷却性能および圧縮性能が向上する。
【0053】
ローラ22の偏心回転方向において、喉部43(またはブレード収容孔41)の中心から、ローラ22の偏心回転方向の下流側における吸込孔28の端部28eまでの角度をθ1とする。ローラ22の偏心回転方向において、喉部43(またはブレード収容孔41)の中心から、注入口35の開口面積が最大となるローラ22の偏心方向の先端までの角度をθmaxとする。このとき、θ1<θmax<140°が成立する。
θ1<θmaxにより、吸込孔28への冷却用冷媒の流入が抑制される。θmax<140°により、圧縮された気体冷媒の注入口35への流入が抑制される。回転式圧縮機2の圧縮性能が向上する。
【0054】
第1の実施形態の冷凍サイクル装置1は、前述された回転式圧縮機2と、放熱器3と、膨張装置4と、吸熱器5と、を持つ。放熱器3は、回転式圧縮機2に接続される。膨張装置4は、放熱器3に接続される。吸熱器5は、膨張装置4と回転式圧縮機2との間に接続される。
前述された回転式圧縮機2を有するので、冷凍サイクル装置1の性能を向上させることができる。
【0055】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の回転式圧縮機について説明する。
図5は、
図1のII-II線に相当する部分における断面図である。第2の実施形態の回転式圧縮機は、ロータリ式である点で、スイング式の第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同様の構成となる部分における第2の実施形態の説明は省略される。
第2の実施形態の回転式圧縮機は、ブレード50とローラ22とが別体の、いわゆるロータリ式の回転式圧縮機である。
【0056】
ブレード50は、
図5(c)に示されるように、平板形状である。シリンダ24は、ブレード収容孔として、ブレード溝51を有し、ブレード50をシリンダ室25に進退可能に支持する。ブレード50は、ブレード溝51の内側に配置される。ブレード50は、ブレード溝51に沿ってX方向に移動可能である。ブレード溝51の-X方向の端部には、潤滑油孔52が形成される。潤滑油貯留部14の潤滑油が、潤滑油孔52に導入される。前述されたように、潤滑油は吐出圧力である。ブレード50は、潤滑油孔52の潤滑油により+X方向に付勢される。ブレード50の+X方向の先端が、ローラ22の外周面に当接する。ブレード50は、ローラ22の偏心回転に伴って、ブレード溝51からシリンダ室25に出入り移動する。
【0057】
インジェクション回路は、注入口37を有する。
注入口37は、長円形状または楕円形状である。注入口37のX方向の長さは、Y方向の長さより長い。注入口37は、仕切部材16のブレード50との摺動領域に形成される。注入口37は、その摺動領域のY方向の中央より、シリンダ室25の圧縮室25pの近くに配置される。注入口37は、Y方向において基準線44の圧縮室25p側に配置される。
【0058】
図5(a)に示されるように、ローラ22が最も-X方向に偏心回転したとき、注入口37は、X方向においてローラ22の内周と外周との間に配置される。
図5(c)に示されるように、ローラ22が最も+X方向に偏心回転したとき、注入口37は、X方向においてローラ22の外周とシリンダ室25の外周との間に配置される。次述されるように、注入口37は、ブレード50の先端とローラ22の外周面との間において、シリンダ室25に開口する。
【0059】
インジェクション回路の作用について説明する。
図5は、インジェクション回路の作用の説明図であり、
図1のII-II線に相当する部分における断面図である。注入口37は、ローラ22およびブレード50のZ方向の端面により開閉される。そのため、注入口37の設計自由度は大きい。
【0060】
図5(a)は、θ=0°の時点である。注入口37は、ローラ22のZ方向の端面により閉塞される。注入口37は、ローラ22の内周に最接近するが、内周の内側に開口しない。注入口37は、第2の要求を満たす。ローラ22の内周の内側の潤滑油が、注入口37に流入しにくい。回転式圧縮機における潤滑油の不足が抑制される。
【0061】
図5(a)と
図5(b)との間の時点で、ローラ22の偏心方向の先端が、吸込孔28の端部28eを通過する。この時点まで、注入口37は、ローラ22のZ方向の端面により閉塞される。注入口37は、第1の要求を満たす。
【0062】
図5(b)は、θ=90°の時点であり、シリンダ室25における圧縮過程の前半である。注入口37は、ブレード50の先端とローラ22の外周面との間において、シリンダ室25に開口する。ローラ22は、基準線44の吸込室25s側に偏心回転している。ブレード50の先端とローラ22の外周面との隙間は、基準線44の吸込室25s側より圧縮室25p側の方が大きい。注入口37は、Y方向において基準線44の圧縮室25p側に配置される。注入口37のシリンダ室25への開口面積が大きくなる。注入口37から十分な量の冷却用冷媒がシリンダ室25に注入される。
【0063】
図5(c)は、θ=180°の時点であり、シリンダ室25における圧縮過程の後半である。注入口37の全体が、ブレード50のZ方向の端面により閉塞される。
【0064】
図5(d)は、θ=270°の時点である。ローラ22は、基準線44の圧縮室25p側に偏心回転している。ブレード50の先端とローラ22の外周面との隙間は、基準線44の吸込室25s側より圧縮室25p側の方が小さい。注入口37は、Y方向において基準線44の圧縮室25p側に配置される。ブレード50の先端とローラ22の外周面との間において、注入口37のシリンダ室25への開口面積が小さくなる。シリンダ室25の内部で圧縮された気体冷媒の注入口17からインジェクション回路への流入が少なくなる。180°<θの範囲で、注入口37はほとんど閉じている。注入口37は、第3の要求を満たす。高負荷時において、シリンダ室25で圧縮された気体冷媒が、注入口37からインジェクション回路に流入しにくい。
【0065】
第1の実施形態と同様に、ローラ22の偏心回転方向において、ブレード溝51の中心から、吸込孔28の端部28eまでの角度をθ1とする。ブレード溝51の中心から、注入口37の開口面積が最大となるローラ22の偏心方向の先端までの角度をθmaxとする。このとき、θ1<θmax<140°が成立する。
【0066】
以上に詳述されたように、
図5(c)に示される第2の実施形態の回転式圧縮機において、ブレード50は、ローラ22と別体である。注入口37は、仕切部材16のブレード50と摺動する領域において、Y方向の中央より圧縮室25pの近くに形成される。注入口37は、ブレード50のシリンダ室25側の先端とローラ22の外周面との間においてシリンダ室25に開口する。
注入口37の設計自由度が大きい。圧縮過程の前半では、注入口37の開口面積が大きくなり、十分な量の冷却用冷媒がシリンダ室25に注入される。圧縮過程の後半では、注入口37の開口面積が小さくなり、圧縮された気体冷媒が注入口37からインジェクション回路30に流入しにくい。回転式圧縮機の圧縮性能が向上する。
【0067】
注入口37は、X方向の長さが、Y方向の長さより長い。
注入口37のX方向の長さを調整することにより、注入口37がシリンダ室25に開口する回転角θの範囲を調整することができる。十分な量の冷却用冷媒がシリンダ室25に注入される。
【0068】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の回転式圧縮機について説明する。
図6は、第3の実施形態の回転式圧縮機の部分断面図である。
図7は、
図6のVII-VII線における断面図である。
図6の第1圧縮機構部20Aは
図7(b)の状態であり、第2圧縮機構部20Bは
図7(d)の状態である。
【0069】
図7に示されるように、第3の実施形態の回転式圧縮機は、第2の実施形態と同じロータリ式である。
図6に示されるように、第3の実施形態は、注入口37が第1凹部61の開口である点で、注入口37が分岐流路の開口である第2の実施形態とは異なる。第2の実施形態と同様の構成となる部分における第3の実施形態の説明は省略される。
【0070】
インジェクション回路は、注入口37と、第1凹部61と、第2凹部62と、第3凹部63と、分配流路64と、配管32と、を有する。以下には、第1圧縮機構部20A側に形成される注入口37、第1凹部61、第2凹部62および第3凹部63について説明するが、第2圧縮機構部20B側にもこれらが同様に形成される。
注入口37は、第1凹部61の開口である。
第1凹部61は、仕切部材16の第1圧縮機構部20A側の端面に形成される。
【0071】
第2凹部62は、ブレード50の仕切部材16側の端面に形成される。第2凹部62の開口は、仕切部材16により閉塞される。第2凹部62は、ブレード50のX方向の中央部から、+X方向の端部にかけて、X方向に伸びる。第2凹部62の+X方向の端部は、第1凹部61と連通可能である。
【0072】
第3凹部63は、仕切部材16の第1圧縮機構部20A側の端面に形成される。第3凹部63の開口は、第1圧縮機構部20Aのシリンダ24により閉塞される。
図7(b)に示されるように、第3凹部63は、Y方向に伸びる。第3凹部63の端部は、シリンダ24に形成されたブレード溝51に開口する。
【0073】
配管32は、ケース11の外部から内部に伸びる。配管32は、第1圧縮機構部20Aのシリンダ24に配置される。
分配流路64は、
図6に示されるように、配管32の先端から-Z方向に伸びる。分配流路64は、仕切部材16の第1圧縮機構部20A側に形成された第3凹部63に連通する。分配流路64は、仕切部材16をZ方向に貫通する。分配流路64は、仕切部材16の第2圧縮機構部20B側に形成された第3凹部63に連通する。
【0074】
インジェクション回路の作用について説明する。
図7は、インジェクション回路の作用の説明図であり、
図6のVII-VII線における断面図である。
【0075】
図7(a)は、θ=0°の時点である。ブレード50は最も-X方向に移動する。第2凹部62の+X方向の端部は、第1凹部61に連通しない。注入口37は、ローラ22のZ方向の端面により閉塞される。注入口37からシリンダ室25に冷却用冷媒が注入されない。
【0076】
図7(b)は、θ=90°の時点である。ブレード50は+X方向に移動する。第2凹部62の-X方向の端部は第3凹部63に連通し、+X方向の端部は第1凹部61に連通する。配管32、分配流路64、第3凹部63、第2凹部62、第1凹部61および注入口37が順に連通する。ブレード50の先端とローラ22の外周面との間において、注入口37がシリンダ室25に開口する。注入口37からシリンダ室25に冷却用冷媒が注入される。
【0077】
図7(c)は、θ=180°の時点である。ブレード50は最も+X方向に移動する。第2凹部62の-X方向の端部は、第3凹部63に連通しない。注入口37は、ブレード50のZ方向の端面により閉塞される。注入口37からシリンダ室25に冷却用冷媒が注入されない。
【0078】
図7(d)は、θ=270°の時点である。ブレード50は-X方向に移動する。第2凹部62の-X方向の端部は第3凹部63に連通し、+X方向の端部は第1凹部61に連通する。第2の実施形態と同様に、ブレード50の先端とローラ22の外周面との間において、注入口37のシリンダ室25への開口面積が小さい。圧縮された気体冷媒の注入口17からインジェクション回路への流入が少なくなる。
第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様に、注入口37からシリンダ室25に冷却用冷媒が間欠的に注入される。
【0079】
以上に詳述されたように、
図6に示される第3の実施形態の回転式圧縮機において、注入口37は、仕切部材16に形成された第1凹部61の開口である。ブレード50は、仕切部材16側の端面に、第1凹部61と連通可能な第2凹部62を有する。
インジェクション回路の冷却用冷媒の配管32を、仕切部材16ではなく、シリンダ24に配置することができる。シリンダ室25の吐出孔29を、軸受17に加えて、仕切部材16にも形成することができる。回転式圧縮機の圧縮性能が向上する。
【0080】
前述された実施形態において、回転式圧縮機2は、2個の圧縮機構部20(第1圧縮機構部20Aおよび第2圧縮機構部20B)を有する。これに対して、回転式圧縮機2は、1個の圧縮機構部20のみを有してもよく、3個以上の圧縮機構部20を有してもよい。
なお、上述の実施形態においては、液冷媒をインジェクションすることで圧縮機構部を冷却する回転式圧縮機について説明したが、中間圧のガス冷媒をインジェクションする回転式圧縮機としても良い。これにより、信頼性の低下を抑制しつつ、省エネルギー性の向上および冷暖房能力を増大した回転式圧縮機とすることができる。
【0081】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ローラ22およびブレード40,50の仕切部材16側の端面により開閉される注入口35,37を持つ。これにより、回転式圧縮機の圧縮性能を向上させることができる。
本実施形態の回転式圧縮機2を用いた冷凍サイクル装置1に限定されるものではない。前述された実施形態の回転式圧縮機2では、2つのシリンダを用いる構成を説明したが、これに限定されない。シリンダは1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
また、第1軸受け17Aまたは第2軸受17Bを閉塞部材とし、注入口35,37を第1軸受17Aまたは第2軸受17Bに設けてもよい。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1…冷凍サイクル装置、2…回転式圧縮機、3…放熱器、4…膨張装置、5…吸熱器、11…ケース、13…シャフト、14…潤滑油貯留部、16…仕切部材(閉塞部材)、20…圧縮機構部、21…偏心部、22…ローラ、24…シリンダ、25…シリンダ室、25p…圧縮室、25s…吸込室、28…吸込孔、28e…端部、35,37…注入口、40…ブレード、41…ブレード収容孔、50…ブレード、51…ブレード溝(ブレード収容孔)、61…第1凹部、62…第2凹部。