(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056653
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】汚れの除去方法及び汚れ除去装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/08 20060101AFI20230413BHJP
A47L 13/26 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B08B3/08 Z
A47L13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165993
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 純
(72)【発明者】
【氏名】志賀 郁也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】川上 勝
(72)【発明者】
【氏名】古川 英光
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB52
3B201BB21
3B201BB62
3B201BC01
3B201BC07
(57)【要約】
【課題】様々な汚れの種類に応じて、物の表面などが汚れないよう清浄に保ち、あるいは該表面などに付着した汚れを除去することが、選択的に可能であって、かつ除去した汚れを容易に回収することのできる、汚れの除去方法及び汚れ除去装置を提供する。
【解決手段】容器に収容されたゲル溶液を用意する工程、前記ゲル溶液を前記容器から導管により搬送する工程、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液にエネルギーを印加して、繊維状のゲル材料を生成する工程、前記繊維状のゲル材料を、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液から分離する工程、前記繊維状のゲル材料を、前記導管から吐出させる工程、前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程、及び、前記汚れが付着した前記繊維状のゲル材料を回収する工程、を含む、汚れの除去方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚れの除去方法であって、
容器に収容されたゲル溶液を用意する工程、
前記ゲル溶液を前記容器から導管により搬送する工程、
搬送された前記導管内の前記ゲル溶液にエネルギーを印加して、繊維状のゲル材料を生成する工程、
前記繊維状のゲル材料を、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液から分離する工程、
前記繊維状のゲル材料を、前記導管から吐出させる工程、
前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程、及び、
前記汚れが付着した前記繊維状のゲル材料を回収する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
搬送された前記導管内の前記ゲル溶液にエネルギーを印加する前記工程が、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液に紫外線を照射する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維状のゲル材料を、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液から分離する前記工程が、前記導管内に気体を送り込む工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維状のゲル材料を、前記導管から吐出させる前記工程が、表面から裏面へ通じる孔を有する基板であって、前記孔の前記裏面側に前記導管が接続された前記基板の、前記孔の前記表面側から前記繊維状のゲル材料を吐出させる工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程が、前記繊維状のゲル材料によって前記基板の前記表面を覆うことにより、前記表面に付着する汚れを捕捉する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程が、前記繊維状のゲル材料に、前記基板の前記表面に付着した汚れを付着させる工程を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程が、前記繊維状のゲル材料によって前記基板の前記表面に対向する他の表面を覆うことにより、前記他の表面に付着する汚れを捕捉する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程が、前記繊維状のゲル材料に、前記基板の前記表面に対向する他の表面に付着した汚れを付着させる工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
汚れ除去装置であって、
ゲル溶液を収容する容器、
前記ゲル溶液を前記容器から搬送することができるよう、一端が前記容器に接続された、導管、
前記ゲル溶液を前記導管により搬送するための、ポンプ、
搬送された前記導管内の前記ゲル溶液にエネルギーを印加して繊維状のゲル材料を生成するための、エネルギー印加手段、
前記繊維状のゲル材料を搬送された前記導管内の前記ゲル溶液から分離するための、分離手段、及び
前記繊維状のゲル材料を前記導管から吐出させるための、吐出手段、
を含む、前記装置。
【請求項10】
さらに、汚れが付着した前記繊維状のゲル材料を回収するための、回収手段を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記エネルギー印加手段が、紫外線を照射するための光源を含む、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記分離手段が、前記導管内に気体を送り込むための手段を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
さらに、表面から裏面へ通じる孔を有する基板を含み、前記孔の前記裏面側に前記導管が接続され、前記孔を前記吐出手段として、前記孔の前記表面側から前記繊維状のゲル材料を吐出させる、請求項9~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記繊維状のゲル材料によって前記基板の前記表面を覆うことにより、前記表面に付着する汚れを捕捉する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記繊維状のゲル材料に、前記基板の前記表面に付着した汚れを付着させる、請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
前記繊維状のゲル材料によって前記基板の前記表面に対向する他の表面を覆うことにより、前記他の表面に付着する汚れを捕捉する、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記繊維状のゲル材料に、前記基板の前記表面に対向する他の表面に付着した汚れを付着させる、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚れの除去方法及び汚れ除去装置に関する。特に、本発明は、汚れの種類に応じて適切に、物の表面などが汚れないよう清浄に保ち、あるいは該表面などに付着した汚れを除去し、しかも除去した汚れを容易に回収することのできる、汚れの除去方法及び汚れ除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物の表面などを常に清浄に保つための自己洗浄技術として、酸化チタン等の光触媒作用や不活性ポリイミドを用いたコーティング技術が紹介され、利用されるようになっている。この技術では、コーティングを施した表面に紫外線を照射することなどにより、表面に付着した有機汚染物質、細菌・ウィルス・カビ、悪臭物質、汚れ物質を無害化することができる。しかしながら、埃などの巨視的な汚れ、あるいは分解が進みづらい外因的汚れは、このような技術では有効に除去することが困難であるため、人手による大規模な洗浄や、コーティングのやり直しが必要とされる。
【0003】
物の表面などに付着した汚れを除去する技術の例としては、定期的に水が流される場所に付着する汚れを、洗浄剤で除去する方法がある。例えば、特開2020-111699号公報は、液状の態様で容器に収納されているゲル状化洗浄剤を所望する箇所に付着させた後に水を掛けてゲル化させることにより、その付着された箇所に固着させるか、または水が掛けられて湿潤している状態の所望する箇所に付着させてゲル化させて、その付着された箇所に固着させことを特徴とする技術を開示している。
【0004】
また、構造物等の表面を保護し、汚れを除去する技術の例としては、可剥離性の被膜形成用組成物を利用するものがある。例えば、特開2006-160867号公報は、乳酸系ポリマーの水分散体及び可塑剤を、所定の割合で含有する可剥離性被膜形成用組成物を被塗物面に塗布し、可剥離性被膜を形成した後、該被膜上になされた汚れ及び/又は落書きを可剥離性被膜と共に除去することを特徴とする可剥離性被膜形成用組成物の使用方法を開示している。
【0005】
さらに、フラットな表面を有する物品の表面に付着する汚れを除去する技術の例としては、粘着クリーナーを利用するものがある。例えば、特開2014-144023号公報は、フラットな表面を有する物品の表面に付着した有機質汚れを取り除くために使用される粘着クリーナーであって、フラットな表面に接触することによって有機質汚れを捕捉する汚れ捕捉部を備えており、汚れ捕捉部は、表面と接触する部分が、粘着剤によって構成されており所定の粘着力を示す、有機質汚れ除去用粘着クリーナーを開示している。
【0006】
また、凹凸部や湾曲部を払拭して清掃する技術の例としては、清掃用モップを利用するものがある。例えば、特開2004-298650号公報は、多数の熱融着可能な繊維若しくは熱融着可能な短冊状フィルムが密集して刷毛が形成され、繊維若しくは短冊状フィルムが基材シートに熱融着されており、刷毛の外層から内層にかけて繊維または短冊状のフィルムの太さが異なっていることを特徴とする清掃用モップを開示している。
【0007】
しかしながら、これら従来の技術はいずれも、特定の種類の汚れを除去することはできるものの、様々な種類の汚れを、汚れの種類に応じて効率よく除去することは困難なものであった。また、一つの技術で、物の表面などが汚れないよう清浄に保ち、あるいは該表面などに付着した汚れを除去することを、選択的に可能にしている例は、見当たらない。さらに、例えば前述のゲル状化洗浄剤を用いる技術では、定期的に水が流される場所であることが、また被膜形成用組成物を用いる技術では、形成された被膜を剥離することが、汚れを除去するために必要とされ、除去した汚れを回収することが容易であるとは必ずしも言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-111699号公報
【特許文献2】特開2006-160867号公報
【特許文献3】特開2014-144023号公報
【特許文献4】特開2004-298650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、様々な汚れの種類に応じて、物の表面などが汚れないよう清浄に保ち、あるいは該表面などに付着した汚れを除去することが、選択的に可能であって、かつ除去した汚れを容易に回収することのできる、汚れの除去方法及び汚れ除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、長期間に渡って物の表面などを清浄な状態に保つことを目的とする従来のコーティング技術とは異なり、外因的汚れに対する防汚性をもつような繊維状のゲル材料を、所望のタイミングで生成し除去することを繰り返す機構(「ターンオーバー機構」)を採用することにより、半永久的な自己洗浄機能を実現することが可能である、との知見に基づき、本発明に到ったものである。
本発明によれば、ゲル材料を変更することにより、様々な種類の汚れに対応することが可能である。例えば、繊維状のゲル材料が、水溶性汚れを吸収し、あるいは親油性の汚れを弾くことで汚れの侵入を防ぎ、さらにはほこりのような巨視的な物質汚れを(ゲルに含まれるモノマーをアニオン性やカチオン性に変更することで得られる)電気的性質などで吸着するようなものとして、このような繊維状のゲル材料で物の表面を覆うようにしておけば、物の表面などが汚れないよう清浄に保つことが可能となる。同様に、この繊維状のゲル材料を、汚れの付着したものの表面に適用することにより、汚れをゲル材料に吸収・吸着等させて除去することも可能である。しかも、吸収・吸着等された汚れは、繊維状のゲル材料を回収することで容易に回収することができる。このように、本発明によれば、上記従来技術の課題を解決することができる。
【0011】
すなわち、本発明は、汚れの除去方法であって、容器に収容されたゲル溶液を用意する工程、前記ゲル溶液を前記容器から導管により搬送する工程、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液にエネルギーを印加して、繊維状のゲル材料を生成する工程、前記繊維状のゲル材料を、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液から分離する工程、前記繊維状のゲル材料を、前記導管から吐出させる工程、前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程、及び、前記汚れが付着した前記繊維状のゲル材料を回収する工程、を含む、前記方法である。
【0012】
本発明の方法において、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液にエネルギーを印加する前記工程が、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液に紫外線を照射する工程を含むこととすることができる。
また、前記繊維状のゲル材料を、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液から分離する前記工程が、前記導管内に気体を送り込む工程を含むこととすることができる。
【0013】
さらに、本発明の方法は、前記繊維状のゲル材料を、前記導管から吐出させる前記工程が、表面から裏面へ通じる孔を有する基板であって、前記孔の前記裏面側に前記導管が接続された前記基板の、前記孔の前記表面側から前記繊維状のゲル材料を吐出させる工程を含むこととすることができる。
この場合において、前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程が、前記繊維状のゲル材料によって前記基板の前記表面を覆うことにより、前記表面に付着する汚れを捕捉する工程を含むこととしてもよい。
また、前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程が、前記繊維状のゲル材料に、前記基板の前記表面に付着した汚れを付着させる工程を含むこととしてもよい。
あるいは、前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程が、前記繊維状のゲル材料によって前記基板の前記表面に対向する他の表面を覆うことにより、前記他の表面に付着する汚れを捕捉する工程を含むこととしてもよい。
さらには、前記繊維状のゲル材料に、汚れを付着させる工程が、前記繊維状のゲル材料に、前記基板の前記表面に対向する他の表面に付着した汚れを付着させる工程を含むこととしてもよい。
【0014】
本発明はまた、汚れ除去装置であって、ゲル溶液を収容する容器、前記ゲル溶液を前記容器から搬送することができるよう、一端が前記容器に接続された、導管、前記ゲル溶液を前記導管により搬送するための、ポンプ、搬送された前記導管内の前記ゲル溶液にエネルギーを印加して繊維状のゲル材料を生成するための、エネルギー印加手段、前記繊維状のゲル材料を搬送された前記導管内の前記ゲル溶液から分離するための、分離手段、及び前記繊維状のゲル材料を前記導管から吐出させるための、吐出手段、を含む、前記装置である。
【0015】
本発明の装置は、さらに、汚れが付着した前記繊維状のゲル材料を回収するための、回収手段を含むものとすることができる。
また、前記エネルギー印加手段が、紫外線を照射するための光源を含むものとすることができる。
さらに、前記分離手段が、前記導管内に気体を送り込むための手段を含むものとすることができる。
【0016】
さらに、本発明の装置は、表面から裏面へ通じる孔を有する基板を含み、前記孔の前記裏面側に前記導管が接続され、前記孔を前記吐出手段として、前記孔の前記表面側から前記繊維状のゲル材料を吐出させるものとすることができる。
この場合において、本発明の装置を、前記繊維状のゲル材料によって前記基板の前記表面を覆うことにより、前記表面に付着する汚れを捕捉するものとしてもよい。
また、前記繊維状のゲル材料に、前記基板の前記表面に付着した汚れを付着させるものとしてもよい。
あるいは、前記繊維状のゲル材料によって前記基板の前記表面に対向する他の表面を覆うことにより、前記他の表面に付着する汚れを捕捉するものとしてもよい。
さらには、前記繊維状のゲル材料に、前記基板の前記表面に対向する他の表面に付着した汚れを付着させるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゲル溶液から生成される繊維状のゲル材料を変更することにより、水溶性汚れ、油汚れ、ほこりなど、様々な種類の汚れに対応することが可能である。また、繊維状のゲル材料で物の表面を覆って、物の表面などが汚れないよう清浄に保ち、あるいは、繊維状のゲル材料を汚れの付着した表面に適用して汚れを除去することも可能である。しかも、繊維状のゲル材料に付着した汚れは、繊維状のゲル材料を回収することで容易に回収することができる。除去後の汚れを吸着したゲル材料は、時間経過によりゲル材料から水分などが揮発することで体積収縮し硬化するため、汚れを付着させたゲルを回収する際においても、汚れがゲル材料の外部へ散乱することによる二次的な汚れ被害を防ぐことができる。
【0018】
また、従来の汚れ除去技術との対比における本発明の効果としては、次のようなものが挙げられる。
まず、従来のコーティング技術との対比では、本発明は、巨視的な汚れの除去が容易であって、繊維状のゲル材料の生成・除去を繰り返すことで、常に清浄な表面を維持することができ、ゲル溶液を交換することで多種の汚れに対応可能である点で、優れているということができる。また、本発明は、新たに外部から表面に付着する汚れだけでなく、表面上に既に存在する汚れを回収することもできる点でも優れている。
また、ゲル自体のタック性や柔軟性を利用し、キーボードなどのすき間に付着したゴミを回収する技術(キーボードクリーナー)が知られているが、この技術との対比では、本発明は、ゴミのような固形汚れだけでなく、液体汚れや油汚れをも除去することができ、また必要に応じて新たな繊維状のゲル材料を生成することができるため、汚れを除去する性能を劣化させることなく維持することが可能である点で、優れているということができる。
さらに、繊維状の高分子を使用して様々な汚れを回収する技術として、化学雑巾知られているが、この技術との対比では、本発明は、汚れを付着させた繊維状のゲル材料が乾燥により収縮することで汚れをゲル材料に閉じ込めるような効果が期待でき、汚れが付着した材料を回収する際に汚れが散乱してしまう懸念が無い点で、優れているということができる。
【0019】
さらに、近年開発されているソフトロボットのボディには、シリコンやウレタンなどの軟質素材が多く使われているところ、これらの素材は、柔らかさや防水性に優れているという利点があるものの、表面に粘着性があるため、固体のほこりや親油性の汚れが付着しやすい、という問題があった。この問題を解決するために、ソフトロボットのボディ表面にコーティングを施すことも考えられるが、そのようにしてしまうと、軟質素材の質感が損なわれてしまう。
本発明によれば、繊維状のゲル材料によってソフトロボットのボディの表面を、動物の体毛のように覆うようにすることで、表面に付着する汚れを捕捉する一方、汚れが付着した繊維状のゲル材料はボディから離脱させ、新しい繊維状のゲル材料を生成して、あたかも体毛が生え変わるようなメカニズムとすることで、表面の質感を更新可能なソフトロボットを設計することが可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の汚れ除去装置の一態様の模式図である。
【
図2】本発明が採用する「ターンオーバー機構」について説明する概念図である。
【
図3】本発明の汚れ除去装置の別の一態様の模式図である。
【
図4】本発明の一態様に関する実施例による、水溶性汚れの除去についての結果を示す図である。
【
図5】本発明の一態様に関する実施例による、油汚れの除去についての結果を示す図である。
【
図6】本発明の一態様に関する実施例による、ほこり汚れの除去についての結果を示す図である。
【
図7】本発明の他の一態様に関する実施例による、水溶性汚れの除去についての結果を示す図である。
【
図8】本発明の他の一態様に関する実施例による、油汚れの除去についての結果を示す図である。
【
図9】本発明の他の一態様に関する実施例による、ほこり汚れの除去についての結果を示す図である。
【
図10】本発明の他の一態様に関する実施例による、油汚れの除去についての別の評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の汚れの除去方法では、まず、容器に収容されたゲル溶液を用意する。容器は、ゲル溶液を収容できるものであれば、材質、寸法、形状等は任意のものを使用することができる。
本発明で使用し得るゲル溶液は、導管内を搬送することができ、導管内のゲル溶液にエネルギーを印加して繊維状のゲル材料を生成することができるものである必要がある。そのようなゲル溶液は、以下のような重合開始剤、モノマー、架橋剤、及び溶媒を含むものとすることができ、必要に応じてその他の成分を含むものとすることができる。
【0022】
[重合開始剤]
本発明で使用し得る重合開始剤は、印加されるエネルギーを受けてモノマーの重合を開始させることができるものであればよく、例えば、光重合開始剤とすることができる。
光重合開始剤は、繊維状のゲル材料を生成するために導管内のゲル溶液に光を照射して照射する光の波長付近に吸収波長を有するものであって、ゲル溶液に含まれるモノマーを重合して、繊維状のゲル材料を構成するポリマーを形成するものである。
本発明で使用する重合開始剤が光重合開始剤である場合、紫外線、可視光などの光によってモノマーの重合を開始させるものであればよく、例えば、α-ケトグルタル酸、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチル-1-[4-(メチル)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、4,4-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾ-ル、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フォスフィンオキシド(TPO)等であってよい。
光重合開始剤は、紫外線重合開始剤を特に好適に使用することができる。
【0023】
[モノマー]
本発明で使用し得るモノマーは、重合開始剤を用いて重合することができるものであり、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPs)、N、N-ジメチルアクリルアミド(DMAAm)、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、ラウリルアクリル酸(LA)、ステアリルアクリル酸(SA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、又はそれらの塩、例えば2-アクリルアミド-2ーメチルプロパンスルホン酸ナトリウム(NaAMPs)、アクリル酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム等である。
これらのモノマーは、除去すべき汚れの種類に応じて選択することができ、複数のモノマーを組み合わせて使用することもできる。
例えば、DMAAmは、相溶性に優れており、各種溶媒に溶解するものであって(n-ヘキサンには不溶)、非イオン性のモノマーであることから、強い吸湿性や帯電防止性を示す。また、NaAMPSは、DMAAmと併用することにより、吸水性能を向上させることが期待される。さらに、SAは、溶油性であって、ゲルに加えることでタック性を向上させることが期待される。
【0024】
[架橋剤]
本発明では、繊維状のゲル材料を構成するポリマーを架橋するための架橋剤を使用することができる。架橋剤としては、ラジカル重合性の不飽和基を2個以上有する多官能ビニル系モノマーなどを使用することができる。N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)やエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、N,N’-ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)などのジビニル化合物を好適に使用することができる。
【0025】
[溶媒]
本発明で使用するゲル溶液は、溶媒を含むものとすることができる。溶媒は、ポリマーによって構成される繊維状のゲル材料の内部に保持されて、ゲルを構成する。
溶媒としては、精製水などの水、ポリエチレングリコールやオレイン酸などの有機溶剤、または水と有機溶剤との混合物を使用することができる。溶媒が水を主成分として含む場合、形成されるゲルはハイドロゲルとなり、溶媒が有機溶剤を主成分として含む場合、形成されるゲルはオルガノゲルとなる。
【0026】
[その他の成分]
本発明で使用するゲル溶液は、その他の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、光吸収剤や分散剤などを含むものとすることができる。
【0027】
本発明で使用するゲル溶液は、上記の成分を所望の割合で混合して、導管により搬送することができ、エネルギーを印加して繊維状のゲル材料を生成することができ、その繊維状のゲル材料を導管から吐出させて汚れを付着させ、回収することができるような性質を持つものとして、調製する。
本発明で使用する導管は、ゲル溶液を搬送できるものであれば、材質、寸法、形状等は任意のものを使用することができる。材質に関しては合成中(反応中)のゲルとの接着が弱い物(シリコンやブチルゴム)の方が好ましい。PLAやガラスを使用すると形成後のゲルが壁面に張り付く恐れがある。
本発明の方法では、搬送された導管内のゲル溶液にエネルギーを印加して、繊維状のゲル材料を生成する。これは例えば、搬送された導管内のゲル溶液に、紫外線を照射することにより、行うことができる。
【0028】
[繊維状のゲル材料]
本発明における繊維状のゲル材料は、使用するゲル溶液の成分等を選択することなどにより、水溶性汚れ、油汚れ、ほこりなど、様々な種類の汚れに対応し得るものとすることができる。
表1に、異なる種類の汚れに対応して使用し得るゲル材料の例として、「DMAAmゲル」「NaAMPSゲル」及び「オクタデシルゲル」の3種類のゲル材料について、その組成の例を示す。
【0029】
【0030】
DMAAmゲルの構造は、DMAAmモノマーを重合したポリマーが、架橋剤MBAAで架橋されており、溶媒(精製水)が架橋により構成されたネットワーク内に保持されているようなものである。DMAAmは相溶性であるため、DMAAmゲルもこの性質を備えるものであると考えられる。
NaAMPSゲルの構造は、DMAAmモノマーとNaAMPSモノマーとを共重合したポリマーが、架橋剤PEGDMAで架橋されており、溶媒(精製水とPEG)が架橋により構成されたネットワーク内に保持されているようなものである。NaAMPSには電解質が含まれており、これが溶媒中で電離し、ポリマー間で反発力が発生することで、より大きなネットワークが形成され、吸水性能が向上するものと考えられる。また、架橋剤であるPEGDMA、溶媒であるPEGは、いずれも親水性高分子であることから、これらがゲルの内部に水を通すパスを形成するように働き、外部の溶媒の吸収性をより向上させることができるものと考えられる。
オクタデシルゲルの構造は、DMAAmモノマーを重合したポリマーが架橋剤MBAAで架橋され、これにSA(Stearyl Acrylate)が導入されており、溶媒(オレイン酸)が保持されているようなものである。親油性高分子であるSAを入れることで、油汚れを吸収する性能が向上することが期待できる。
なお、ゲル材料中に溶媒が含まれることにより、繊維状のゲル材料を導管から吐出させるのが容易になる。
本発明で使用する繊維状のゲル材料は、搬送された導管内のゲル溶液にエネルギーを印加することにより生成されるため、導管の内径と同程度の外径を有する繊維形状を有するものとなる。また、繊維状のゲル材料の長さは、導管内を搬送され、導管のエネルギーを印加する部分を連続的に通過するゲル溶液の流量とエネルギーの印加時間を調整することにより、所望の長さとすることができる。
【0031】
本発明では、生成された繊維状のゲル材料を、搬送された導管内のゲル溶液から分離する。これは例えば、導管内のゲル溶液へのエネルギーの印加を停止または低減し、あるいは、導管のエネルギーを印加する部分を通過するゲル溶液の流量を増大させることなどにより、未反応のゲル溶液が導管のエネルギーを印加する部分を通過するようにしてやることで、可能となる。
この分離工程を、導管内に気体を送り込むことによって実現することもできる。このようにすることにより、未反応のゲル溶液が繊維状のゲル材料に続いて導管から吐出してしまうことを有効に防ぐことができる。
【0032】
本発明において、繊維状のゲル材料を導管から吐出させる場合、オリフィスなどから吐出させることも可能であるが、表面から裏面へ通じる孔を有する基板であって、孔の裏面側に導管が接続された基板の孔を、オリフィスのようなものとして使用することもできる。
この場合、繊維状のゲル材料によってこの基板の表面を覆うこととすれば、この表面に付着する汚れを捕捉させて、繊維状のゲル材料に汚れを付着させることができる。このようにすれば、表面が汚れるのを未然に防止することができる。
また、繊維状のゲル材料に、基板の表面に付着した汚れを付着させることとしてもよい。このようにすれば、自己洗浄機能を有する表面を実現することができることになる。
あるいは、繊維状のゲル材料によって基板の表面に対向する他の表面を覆うこととすれば、この他の表面に付着する汚れを捕捉させて、繊維状のゲル材料に汚れを付着させることができる。このようにすれば、この他の表面が汚れるのを未然に防止することができる。
さらには、繊維状のゲル材料に、この他の表面に付着した汚れを付着させることとしてもよい。
【0033】
本発明において、汚れが付着した繊維状のゲル材料を回収する工程は、任意の手段で行うことができる。例えば、従来の掃除機のような物を使用してもよく、あるいは単にゲル材料を表面から振り落とすような方法で行ってもよい。
【0034】
次に、本発明の汚れ除去装置について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の汚れ除去装置の一態様の模式図である。
本発明の装置1は、ゲル溶液Lを収容する容器2と、この容器2からゲル溶液を搬送することができるよう、一端が容器に接続された導管3と、導管3によりゲル溶液を搬送するためのポンプ4と、搬送された導管内のゲル溶液にエネルギーを印加して繊維状のゲル材料Fを生成するためのエネルギー印加手段5と、繊維状のゲル材料を搬送された導管内のゲル溶液から分離するための分離手段6と、繊維状のゲル材料を導管から吐出させるための吐出手段7とを含む装置である。
本発明の装置はさらに、汚れDが付着した前記繊維状のゲル材料を回収するための、回収手段(図示せず)を含むものとすることができる。回収手段は、従来の掃除機のような物であってよい。
エネルギー印加手段5は、紫外線を照射するための光源を含むものであってよく、UVテープなどを使用することもできる。
分離手段6は、
図1に示すように、導管3内に空気などの気体を送り込むための手段、具体的には、気体Aを送り込むための導管及びポンプを含むものとすることができる。
【0035】
本発明の装置は、
図1に示すように、表面から裏面へ通じる孔を有する基板8を含み、孔の裏面側に導管3が接続され、この孔を吐出手段7として、孔の表面側から繊維状のゲル材料を吐出させるものとすることができる。
この場合において、本発明の装置を、繊維状のゲル材料によって基板8の表面を覆うことにより、表面に付着する汚れを捕捉するものとしてもよい。このようにすれば、表面が汚れるのを未然に防止することができる。
また、繊維状のゲル材料に、基板8の表面に付着した汚れを付着させるものとしてもよい。このようにすれば、自己洗浄機能を有する表面を実現することができることになる。
【0036】
本発明が採用する「ターンオーバー機構」によって実現される自己洗浄機能を有する表面について、
図2に示す概念図を参照して説明する。
本発明によれば、ポンプ4を使って容器2から導管3により搬送されたゲル溶液にエネルギー印加手段5でエネルギーを印加して生成した繊維状のゲル材料を吐出手段7で突出させる(
図2(a))。所定時間経過するまで、あるいは繊維状のゲル材料による汚れ捕捉能力が低下するまで、繊維状のゲル材料で基板8の表面を覆うことにより、表面に付着する汚れを捕捉する(
図2(b))。所定時間経過後、あるいは繊維状のゲル材料による汚れ捕捉能力が低下した場合には、分離手段6によって繊維状のゲル材料を分離し、汚れが付着した前記繊維状のゲル材料を回収する(
図2(c))。新たに繊維状のゲル材料を生成し吐出させ(
図2(a))、このサイクルを繰り返す。
【0037】
本発明の汚れ除去装置の別の態様としては、
図3に示すようなものがある。
この態様では、繊維状のゲル材料によって基板の表面に対向する他の表面9を覆うことにより、この他の表面9に付着する汚れを捕捉するものとすることができる。
さらには、繊維状のゲル材料に、基板の表面に対向する他の表面9に付着した汚れを付着させるものとしてもよい。
【実施例0038】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[ゲル溶液の調製]
次の表2、表3及び表4に示す組成で、「DMAAmゲル」「NaAMPSゲル」及び「オクタデシルゲル」の3種類のゲル材料のゲル溶液を調製した。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
始めに、モノマー(液体)、架橋剤、重合開始剤をビーカーに計り取り、マグネチックスターラーで攪拌した。オクタデシルゲルについては40~50℃に加温をしながら攪拌したが、その他は室温で撹拌した。10分以上攪拌し、固形物が全て溶解していることを確認した。
次に、攪拌中のビーカーに溶媒を計り取って加えた。10分以上攪拌し、固形物が全て溶解していることを確認した。調製したそれぞれのゲル溶液を、褐色瓶中に収容し、常温で保存した。
【0043】
[汚れ除去装置の構成]
上で調製したゲル溶液を収容した容器に、導管としてシリコーンチューブ(内径2mm)を接続し、ワンボードマイコン(Arduino)でモータ(INTLLAB 12V 5W)の回転を制御して、ゲル溶液が導管により搬送されるようにした。UV光源(品名:UV-SVGNC405-01 ブラックライト 405nm ナイトライド社製チップ型LED 1W)を使用して、搬送された導管内のゲル溶液に吐出口付近で紫外線を照射して、繊維状のゲル材料を生成した。
生成した繊維状のゲル材料は、基板として用意したシリコーン板(30mm×30mm)に設けた孔から、紫外線の照射時間が20秒間確保できるようにステップ状に(一回に約25mmの繊維状のゲル材料を)吐出させた。吐出したゲルの直径は、2mmであった。約70回の吐出で、基板表面の98%を繊維状のゲル材料で覆うことができた。
【0044】
[汚れ除去の評価]
各種汚れをシミュレートするものとして、水溶性汚れについては精製水にメチレンブルーを添加したものを、油汚れについてはオレイン酸にメチルレッドを添加したものを、ほこり汚れについてはフライアッシュとコットンリンタを重量割合で27.5:56.2で混合したものを使用し、これらを所定の量だけ基板に適用したものについて、汚れの除去の評価を行った。
【0045】
[評価1:汚れの防止]
繊維状のゲル材料で表面の98%を覆った基板表面に、所定量の各種汚れを適用し、汚れの除去率を評価した。汚れの量が増加しても除去率が低下しない場合には、汚れが有効に防止されたと評価できる。結果を
図4(水溶性汚れ)、
図5(油汚れ)及び
図6(ほこり汚れ)に示す。
水溶性汚れの除去にはNaAMPSゲルの繊維状のゲル材料が優れ(
図4)、油汚れにはオクタデシルゲルの繊維状のゲル材料が優れている(
図5)ことがわかる。
【0046】
[評価2:新規汚れの除去]
所定量の各種汚れを適用した基板表面に、繊維状のゲル材料を所定回数吐出して、その状態で20分保持した後に繊維状のゲル材料を基板表面から回収して、表面からどれだけの汚れが除去されたかを評価した。少ない吐出回数で高い汚れの除去率が得られた場合には、新規な汚れが有効に除去されたと評価できる。結果を
図7(水溶性汚れ)、
図8(油汚れ)及び
図9(ほこり汚れ)に示す。
水溶性汚れの除去にはNaAMPSゲルの繊維状のゲル材料が優れ(
図7)、油汚れ及びほこり汚れにはオクタデシルゲルの繊維状のゲル材料が優れている(
図8、
図9)ことがわかる。
【0047】
[評価3:新規油汚れの除去-従来技術との対比]
油汚れの除去に優れた本発明のオクタデシルゲルの繊維状のゲル材料の油汚れの除去性能が、従来技術である紙製のウエス(日本製紙クレシア株式会社製の商品名キムワイプ)を使用した油汚れの拭き取りと比較して、どの程度優れているのかを評価した。
30mm×30mmのシリコーン板の表面全体に油汚れを付着させたサンプルを2つ用意し、一方は本発明のオクタデシルゲルの繊維状のゲル材料で、吐出回数を100回にしたことを除き評価2と同様に油を除去し、もう一方は比較のためキムワイプでシリコーン板表面の油汚れを拭き取った。
油汚れの除去の程度は、サンプル表面の摩擦係数を測定することにより行った。測定は、トリニティーラボ社製トライボマスターμv1000速度変動摩擦測定機を使用して、測定範囲を15mmとしてサンプル表面を縦方向に4等分に分割した4カ所それぞれについて、速度毎秒1mm、加重100gの条件で行った。基準として、油汚れを付着させる前のシリコーン板の表面と、油汚れを付着させた直後(汚れの除去前)の表面についても、測定を行った。
結果を
図10に示す。本発明による繊維状のオクタデシルによる油汚れの除去により、キムワイプで拭き取りを行った場合よりもシリコーン板表面の摩擦係数が高くなっており、本発明による油汚れの除去の方がより多くの油を除去できていることが分かる。