(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056656
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】X線検査装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/087 20180101AFI20230413BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20230413BHJP
【FI】
G01N23/087
G01N23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166000
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】598105802
【氏名又は名称】株式会社 システムスクエア
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 幸寛
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001EA03
2G001FA03
2G001FA05
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA05
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】デュアルエナジー検査とシングルエナジー検査が両方可能なX線検査装置を提供する。
【解決手段】被検査物を搬送する手段と、被検査物にX線を照射する手段と、搬送中の被検査物を透過したX線の光子のエネルギーを検出する手段と、一定周期毎の複数のエネルギー領域毎の検出光子数を計数する手段と、エネルギー領域毎に検出光子数に基づくシングルエナジー検出データを生成する手段と、検査対象の検出データの設定を受け付ける設定手段と、デュアルエナジー検出データが設定された場合にいずれか2個のシングルエナジー検出データからデュアルエナジー検出データを生成する手段と、設定された検出データを用いて検査を実現する検査実現手段と、を備え、設定手段は1個以上のシングルエナジー検出データ、デュアルエナジー検出データ及びデュアルエナジー検出データと1個以上のシングルエナジー検出データとの組のうちいずれかを設定可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を搬送する搬送手段と、
前記被検査物にX線を照射するX線照射手段と、
搬送中の前記被検査物を透過したX線の光子のエネルギーを検出するX線検出手段と、
前記X線検出手段における、一定時間ごとの、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数を計数する計数手段と、
前記エネルギー領域ごとに、前記被検査物からの前記検出光子数に基づくシングルエナジーの検出データを生成するシングルエナジー検出データ生成手段と、
検査対象の検出データの選択設定を受け付ける設定手段と、
前記設定手段において、デュアルエナジーの検出データが選択設定された場合に、いずれか2個の前記シングルエナジーの検出データからデュアルエナジーの検出データを生成するデュアルエナジー検出データ生成手段と、
前記設定手段において選択設定された前記検出データを用いて検査を実現する検査実現手段と、
を備え、
前記設定手段は、1個以上の前記シングルエナジーの検出データ、前記デュアルエナジーの検出データ、及び前記デュアルエナジーの検出データと1個以上の前記シングルエナジーの検出データとの組のうち2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能であるX線検査装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記1個以上の前記シングルエナジーの検出データを、前記シングルエナジー検出データ生成手段で生成された全ての前記シングルエナジーの検出データの中から選択設定可能である請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記デュアルエナジーの検出データの生成に用いるいずれか2個の前記シングルエナジーの検出データを、前記シングルエナジー検出データ生成手段で生成された全ての前記シングルエナジーの検出データの中から選択設定可能である請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記選択肢のいずれを選択設定するかが予め定められた複数の異なる被検査物の中から、検査対象とする被検査物の選択を受け付けることにより、選択された被検査物に対応する選択設定を受け付ける請求項1から3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
コンピュータを請求項1から4のいずれか1項に記載のX線検査装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物にX線を照射して異物の検査等を行うX線検査装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製品の製造から梱包、出荷に至るまでの各工程では、検査対象の被検査物や、被検査物に含まれ得る異物の種類(材料、大きさなど)に適した検査方法によって、製品や梱包内への異物の混入の有無等の検査が行われる。このうち、被検査物を非破壊で検査可能なX線検査装置では、被検査物にX線を照射し、透過したX線を検出することで、外側からは見えない内部の異物の有無等を検査することができる。
【0003】
X線検査装置において画像情報を電気信号として検出する方式には、一旦X線をシンチレータにより可視光に変換した上でフォトダイオードにより電気信号に変換する間接変換方式と、X線をCdTeなどの半導体素子により電気信号に直接変換する直接変換方式がある。間接変換方式では原理上、シンチレータの発光効率やフォトダイオードの電荷変換効率による損失が生じるが、直接変換方式ではX線が直接電荷に変換されるため変換効率が良い。
【0004】
特許文献1には直接変換方式のエネルギー弁別型フォトンカウンティングセンサを用いたX線検査装置が開示されている。この装置では、被検査物に向けて照射されたX線が被測定物と当該被検査物を搬送するベルトコンベアを透過した後のX線の光子のエネルギーを画素ごとに検出し、それぞれの画素について、一定時間におけるエネルギー領域ごとの検出光子数を計数する。そして、エネルギー領域ごとに、X線の透過状況が検出光子数の大小の分布で表現されたX線透過画像を生成した上で、異なるエネルギー領域の画像相互について、合成や差分を取るなどの画像処理を施して得られたデュアルエナジー画像により検査を行う。
【0005】
また、特許文献2には、特許文献1の装置では固定値とされているエネルギー領域を画する閾値を被検査物ごとに変更可能とし、被検査物に適したデュアルエナジー画像による検査を可能とするX線検査装置が開示されている。
【0006】
デュアルエナジー画像を適切に生成することで、被検査物と異物とのコントラストが明確な画像が得られるため、例えば、被検査物に重なりがある場合や凹凸がある場合に異物を精度よく検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-091483号公報
【特許文献2】特許6569070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被検査物は様々なものが想定されるが、例えば鶏肉の場合、解体時に硬い骨と平らな骨の両方が異物として付着する可能性があり、このような場合、デュアルエナジーの検出データでは平らな骨は検出しやすいが、硬い骨は検出しづらい。硬い骨はシングルエナジーの検出データ(ひとつのエネルギー領域における検出データ)では検出しやすいが、現状、デュアルエナジーの検出データによる検査が可能なX線検査装置は、デュアルエナジーの検出データによる検査しかできない。
【0009】
本発明の目的は、デュアルエナジーの検出データの検査とシングルエナジーの検出データの検査が両方可能なX線検査装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のX線検査装置は、被検査物を搬送する搬送手段と、被検査物にX線を照射するX線照射手段と、搬送中の被検査物を透過したX線の光子のエネルギーを検出するX線検出手段と、X線検出手段における、一定時間ごとの、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数を計数する計数手段と、エネルギー領域ごとに、被検査物からの検出光子数に基づくシングルエナジーの検出データを生成するシングルエナジー検出データ生成手段と、検査対象の検出データの選択設定を受け付ける設定手段と、設定手段において、デュアルエナジーの検出データが選択設定された場合に、いずれか2個のシングルエナジーの検出データからデュアルエナジーの検出データを生成するデュアルエナジー検出データ生成手段と、設定手段において選択設定された検出データを用いて検査を実現する検査実現手段と、を備え、設定手段は、1個以上のシングルエナジーの検出データ、デュアルエナジーの検出データ、及びデュアルエナジーの検出データと1個以上のシングルエナジーの検出データとの組のうち2以上からなる選択肢からいずれかを選択設定可能である。
【0011】
設定手段は、1個以上のシングルエナジーの検出データを、シングルエナジー検出データ生成手段で生成された全てのシングルエナジーの検出データの中から選択設定可能としてもよい。
【0012】
設定手段は、デュアルエナジーの検出データの生成に用いるいずれか2個のシングルエナジーの検出データを、シングルエナジー検出データ生成手段で生成された全てのシングルエナジーの検出データの中から選択設定可能としてもよい。
【0013】
設定手段は、選択肢のいずれを選択設定するかが予め定められた複数の異なる被検査物の中から、検査対象とする被検査物の選択を受け付けることにより、選択された被検査物に対応する選択設定を受け付けてもよい。
【0014】
本発明のX線検査装置は、本発明のX線検査装置の機能が記述されたプログラムをコンピュータで実行することにより実現してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のX線検査装置及びプログラムによれば、デュアルエナジーの検出データの検査とシングルエナジーの検出データの検査が両方可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のX線検査装置100の機能ブロック図である。
【
図2】エネルギー領域の設定及び各エネルギー領域の光子数計数の具体例を示す図である。
【
図3】1個以上のシングルエナジーの検出データが選択設定された場合の実際の設定パターンを示す図である。
【
図4】デュアルエナジーの検出データが選択設定された場合の実際の設定パターンを示す図である。
【
図5】複数の被検査物について予め選択設定内容を定めておく例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0018】
図1に本発明のX線検査装置100の機能ブロック図を示す。X線検査装置100は、搬送手段110、X線照射手段120、X線検出手段130、計数手段140、シングルエナジー検出データ生成手段150、設定手段160、デュアルエナジー検出データ生成手段170、及び検査実現手段180を備える。
【0019】
搬送手段110は、載置された被検査物WをY軸方向に一定速度で搬送する任意の方式のコンベヤである。搬送手段110は、正面から見て搬送方向であるY軸方向に直交するX軸方向に奥行きを持つ。すなわち、被検査物WはXY平面をY軸方向に搬送される。
【0020】
X線照射手段120は、搬送手段110により搬送される被検査物Wに向けX線を照射する。
【0021】
X線検出手段130は、X線照射手段120から照射され、搬送手段110により一定速度で搬送中の被検査物Wを透過したX線を検出可能な位置に配置され、被検査物Wを透過したX線の光子のエネルギーを検出する。
【0022】
X線検出手段130は、X軸方向にライン状に整列して配設された複数の検出素子からなるラインセンサであり、それぞれの検出素子が被検査物Wを透過したX線の光子のエネルギーを検出する。ラインセンサを構成する検出素子としては、入射した光子をそのエネルギーに応じた強度の電荷パルスに直接変換できるCdTeなどの半導体素子が、エネルギーの変換効率や分解能などの観点から好適である。
【0023】
計数手段140は、X線検出手段130のそれぞれの検出素子について、一定時間ごとの、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数を計数する。
【0024】
一定時間とは、例えば被検査物WがX線検出手段130のY軸方向の幅を移動する時間である。X線検出手段130の各検出素子についてそれぞれ計数されたエネルギー領域ごとの検出光子数は、被検査物WのX線透過画像を構成するX軸方向の1ラインの各画素の情報に反映される。一定時間をこのように設定し、搬送手段110に対する位置が固定されたX線照射手段120とX線検出手段130との間を被検査物WがY軸方向に通過中に、透過した光子の計数を繰り返すことで、X軸方向の1ラインの各画素の情報がY軸方向に隙間なく次々に収集される。そのため、被検査物WのY軸方向の全幅がX線検出手段130を通過するまで、一定時間ごとの検出光子数の計数を繰り返すことで、被検査物WをXY平面で見たX線透過画像を構成する全ての画素の情報を収集することができる。
【0025】
X線検出手段130の検出素子に入射した光子のエネルギーは、検出素子が出力する電荷パルス高に比例する。そのため、一定時間に検出素子に入射した光子の計数については、単なるパルス数の計数により光子のエネルギーを問わない全エネルギー領域トータルの検出光子数の計数が可能なほか、光子の入射の都度、検出素子が出力する電荷パルス高に対応するエネルギーと1以上のエネルギー閾値との高低関係を判定して、いずれのエネルギー領域に属する光子であるかを特定することにより、複数の異なるエネルギー領域ごとの検出光子数の計数が可能である。なお、エネルギー領域ごとの検出光子数の計数は、エネルギー領域ごとの検出光子数を直接計数してもよいし、より広いエネルギー領域の計数値と計数したいエネルギー領域以外のエネルギー領域の計数値との差をとることにより行ってもよい。
【0026】
エネルギー領域を画すエネルギー閾値の個数、及び検出光子数を計数するエネルギー領域の個数は、被検査物Wの材質や異物の材質などに応じて適宜設定してよい。例えば、1個のエネルギー閾値である閾値Vthを設定する場合、閾値Vthを挟んで、低エネルギー側にエネルギー領域A1を、高エネルギー側にエネルギー領域A2をそれぞれ設定することが可能である。2個のエネルギー閾値である閾値Vth1及び閾値Vth1よりエネルギーが高い閾値Vth2を設定する場合、閾値Vth1を挟んで低エネルギー側にエネルギー領域A3を、閾値Vth1を挟んで高エネルギー側かつ閾値Vth2を挟んで低エネルギー側にエネルギー領域A4を、閾値Vth2を挟んで高エネルギー側にエネルギー領域A5をそれぞれ設定することが可能である。また、閾値Vth1より高エネルギー側の全領域を1個のエネルギー領域A6として設定することが可能である。また、閾値Vth2より低エネルギー側の全領域を1個のエネルギー領域A7として設定することが可能である。閾値を3個以上設定する場合も同様な考え方で複数のエネルギー領域を設定することが可能である。更に、閾値の設定個数を問わず、全エネルギー範囲を1個のエネルギー領域A8として設定することも可能である。
【0027】
エネルギー領域の設定及び各エネルギー領域における検出光子数の計数方法の一例を、
図2を参照しつつ説明する。この例では、2つの閾値Vth1、Vth2を設定し、
図2(a)に示すように閾値Vth1を挟んで高エネルギー側かつ閾値Vth2を挟んで低エネルギー側をエネルギー領域A4、閾値Vth2を挟んで高エネルギー側をエネルギー領域A5、閾値Vth1を挟んで高エネルギー側全域をエネルギー領域A6として、3つのエネルギー領域を設定している。なお、閾値Vth1を挟んで低エネルギー側については、検出データにノイズが混入しやすいことからノイズ領域とみなし、検査領域から除外する。
【0028】
このように設定した3つのエネルギー領域A4~A6についての、一定時間に検出素子に入射した光子の計数を、エネルギーがエネルギー領域A5、A6にあるものの個数については直接計数し、エネルギー領域A4にあるものの個数についてはエネルギー領域A6の計数値とエネルギー領域A5の計数値との差をとることにより計数する。
【0029】
閾値Vth1の値が5、閾値Vth2の値が40の場合、例えば
図2(b)に示すように、一定時間における光子の検出周期T1~T10のそれぞれにおいて検出された10個の光子のエネルギーが、50、65、45、60、57、69、61、58、24、28であるとき、2つの閾値の値に照らし、エネルギー領域A6にある光子が10個、エネルギー領域A5にある光子が8個とそれぞれ直接計数することができる。そして、エネルギー領域A4にある光子を、エネルギー領域A6にある10個とエネルギー領域A5にある8個との差をとることにより、2個と計数することができる。
【0030】
また、次の一定時間における光子の検出周期T11~T20のそれぞれにおいて検出された10個の光子のエネルギーが、30、34、38、46、49、53、61、67、59、2であるとき、同様に、エネルギー領域A6にある光子が9個、エネルギー領域A5にある光子が6個であるとそれぞれ直接計数した上、エネルギー領域A6にある9個とエネルギー領域A5にある6個との差をとることにより、エネルギー領域A4にある光子を3個と計数することができる。
【0031】
シングルエナジー検出データ生成手段150は、エネルギー領域ごとに、被検査物Wからの検出光子数に基づく検出データ(シングルエナジーの検出データ)を生成する。ここでいうエネルギー領域とは、計数手段140において検出光子数の計数対象としたエネルギー領域である。また、ここでいう検出データとは、典型的には被検査物WをXY平面で見たX線透過画像であるが、X線透過画像に相当するデジタルデータであっても構わない。X線透過画像の各画素の情報に対応する検出光子数は、計数手段140において計数済みであるため、これを用いてX線透過画像を生成することができる。
【0032】
設定手段160は、検査実現手段180で用いる検出データの選択設定を受け付ける。具体的には、1個以上のシングルエナジーの検出データ、デュアルエナジーの検出データ、及びデュアルエナジーの検出データと1個以上のシングルエナジーの検出データとの組のうち2以上からなる選択肢から、いずれかの選択設定を受け付ける。選択設定の受け付け方法は任意であり、例えば、選択肢をディスプレイなどの表示手段に表示させ、オペレータがポインティングデバイスなどから選択入力する構成にしてもよい。
【0033】
シングルエナジーの検出データは、厚みの均一な製品や、硬い又は密度が高い異物の検出に有効である。特に、複数の異なるエネルギー領域のシングルエナジーの検出データを用いることで、X線の透過特性が異なる複数種の骨や異物の検出が可能となる。
【0034】
デュアルエナジーの検出データは、重なりがある製品や凹凸がある製品、薄い又はやわらかい異物の検出に有効である。
【0035】
デュアルエナジーの検出データと1個以上のシングルエナジーの検出データとの組は、薄い骨と硬い骨の両方の検出や、薄い骨と硬い骨の両方が異物となる被検査物の検査に有効である。
【0036】
様々なバリエーションの検査を可能とする観点からは、シングルエナジーの検出データによる検査、デュアルエナジーの検出データによる検査、及びシングルエナジーの検出データとデュアルエナジーの検出データの両方による検査の全てを選択設定の選択肢に含めるのが望ましいが、必要に応じいずれかの検査を選択肢から除外してもよい。
【0037】
受け付ける選択設定の内容について、
図3に示すように、3個のエネルギー領域A4~A6を設定した場合を例にとって、より具体的に説明する。設定個数が3個以外の場合も同様な考え方で構成することができる。
【0038】
選択肢の中から、1個以上のシングルエナジーの検出データが選択設定された場合、実際に設定される内容として、
図4に示すように、エネルギー領域A4の検出データのみ(パターン1)、エネルギー領域A5の検出データのみ(パターン2)、エネルギー領域A6の検出データのみ(パターン3)、エネルギー領域A4の検出データとエネルギー領域A5の検出データ(パターン4)、エネルギー領域A4の検出データとエネルギー領域A6の検出データ(パターン5)、エネルギー領域A5の検出データとエネルギー領域A6の検出データ(パターン6)、及びエネルギー領域A4の検出データとエネルギー領域A5の検出データとエネルギー領域A6の検出データ(パターン7)の7通りが想定される。
【0039】
設定手段160は、パターン1~7のいずれかが固定的に設定されるように構成してもよい。または、パターン1~7の全て若しくは複数のパターンの中からいずれかのパターンの選択設定を更に受け付けるように構成してもよいし、選択肢の中から1個以上のシングルエナジーの検出データを選択設定可能とする代わりに、パターン1~7の全て若しくは複数のパターンの中からいずれかのパターンの選択設定を直接受け付けるように構成してもよい。
【0040】
選択肢の中から、デュアルエナジーの検出データが選択設定された場合、実際に設定される内容として、
図5に示すように、エネルギー領域A4の検出データとエネルギー領域A5の検出データとから生成されるデュアルエナジーの検出データ(パターン11)、エネルギー領域A4の検出データとエネルギー領域A6の検出データとから生成されるデュアルエナジーの検出データ(パターン12)、及びエネルギー領域A5の検出データとエネルギー領域A6の検出データとから生成されるデュアルエナジーの検出データ(パターン13)の3通りが想定される。
【0041】
設定手段160は、パターン11~13のいずれかが固定的に設定されるように構成してもよい。または、パターン11~13の全て若しくは複数のパターンの中からいずれかのパターンの選択設定を更に受け付けるように構成してもよいし、選択肢の中からデュアルエナジーの検出データを選択設定可能とする代わりに、パターン11~13の全て若しくは複数のパターンの中からいずれかのパターンの選択設定を直接受け付けるように構成してもよい。
【0042】
選択肢の中から、デュアルエナジーの検出データと1個以上のシングルエナジーの検出データとの組が選択設定された場合、設定手段160は、デュアルエナジーの検出データに関しては、パターン11~13のいずれかが固定的に設定されるように構成してもよいし、パターン11~13の全て若しくは複数のパターンの中からいずれかのパターンの選択設定を更に受け付けるように構成してもよい。1個以上のシングルエナジーの検出データに関しては、パターン1~7のいずれかが固定的に設定されるように構成してもよいし、パターン1~7の全て若しくは複数のパターンの中からいずれかのパターンの選択設定を更に受け付けるように構成してもよい。また、デュアルエナジーの検出データと1個以上のシングルエナジーの検出データとの組を選択設定可能とする代わりに、パターン1~7の全て若しくは複数のパターンの中からいずれかのパターンの選択設定とパターン11~13の全て若しくは複数のパターンの中からいずれかのパターンの選択設定を直接受け付けるように構成してもよい。
【0043】
また、設定手段160は、上記選択肢のいずれを選択設定するかが予め特定された複数の異なる被検査物の中から、検査対象とする被検査物の選択を受け付けることにより、選択された被検査物に対応する選択設定を受け付け可能に構成してもよい。このように構成することで、被検査物を選択するだけで設定を完了することができる。なお、選択設定内容と対応付ける単位は、種別や材質などのように被検査物より広い単位であってもよいし、製造ロットなどのように被検査物より狭い単位であってもよい。
【0044】
被検査物である商品a~eのそれぞれについて予め選択設定内容を特定しておく例を
図5に示す。設定1は、検査対象の検出データの設定パターンであり、Sが1個以上のシングルエナジーの検出データ、Dがデュアルエナジーの検出データ、DSがデュアルエナジーの検出データと1個以上のシングルエナジーの検出データを表している。設定2は、1個以上のシングルエナジーの検出データの内訳であり、例えばエネルギー領域A4~A6のうち1個以上が設定される。設定3は、デュアルエナジーの検出データの生成に用いる2個のシングルエナジーの検出データの内訳であり、例えばエネルギー領域A4~A6のうち2個が設定される。
図5に示すような情報を予め固定的に又は書き換え可能に任意の記憶手段に記憶しておくことで、被検査物の選択の受け付けを契機に設定手段160が記憶手段を参照し、選択設定を行うことができる。
【0045】
デュアルエナジー検出データ生成手段170は、いずれか2個のシングルエナジーの検出データに対し、合成・差分等の処理を施すことにより、デュアルエナジーの検出データを生成する。いずれの2個のシングルエナジーの検出データを用いるかは、上記のとおり、予め決定されていてもよいし設定手段160において選択設定可能としてもよい。
【0046】
検査実現手段180は、設定手段160において選択設定された検出データを用いて検査を実現する。検出データを用いて実現する検査として、例えば自動検査と目視検査が挙げられる。自動検査の場合、検査実現手段180は例えば、検出データを画像化し画像処理を施すことにより検査を実現してもよいし、画像化せずに数値処理を施すことにより検査を実現してもよい。また、検出データを学習済みモデルに入力することにより検査を実現してもよい。目視検査の場合、検査実現手段180は例えば、検出データを画像化し、ディスプレイなどの表示手段に表示することにより検査を実現してもよい。
【0047】
本発明のX線検査装置は、本発明のX線検査装置の機能が記述されたプログラムをコンピュータに実行させることにより実現してもよい。すなわち、コンピュータにおいて、任意の記憶手段に記憶させたプログラムをCPUが読み出して実行することにより本発明のX線検査装置の機能を実現してもよい。
【0048】
被検査物にX線を照射し、透過後のX線をエネルギー分解して行う、シングルエナジーの検出データを用いたシングルエナジー検査、デュアルエナジーの検出データを用いたデュアルエナジー検査、及びシングルエナジー検査とデュアルエナジー検査の同時検査の各手法には一長一短があり、いずれか1つの手法に特化した検査装置では様々な被検査物に対応できない。
【0049】
1つのエネルギー帯から透過率を比較し、製品と異物との差を明確にするシングルエナジー検査は、厚みが均一な製品や、硬い又は密度が高い異物の検出に向いている。一方、高/低2種類のエネルギー帯で得られた透過画像の差分等をとり、変化のない箇所を差し引くことで異物だけを明確にするデュアルエナジー検査は、重なりがある製品や凹凸がある製品、薄い又はやわらかい異物の検出に向いている。シングルエナジー検査とデュアルエナジー検査の同時検査は、シングルエナジー検査とデュアルエナジー検査の双方の利点を合わせ持ち、例えば、解体の際に硬い骨と平べったい骨の両方が異物として付着する可能性がある鶏肉の検査などに有効である。
【0050】
本発明のX線検査装置及びプログラムによれば、シングルエナジー検査とデュアルエナジー検査の同時検査が可能であるのに加え、それぞれの検査手法を柔軟に組み合わせて検査を行うことが可能であるため、本装置のみで様々な被検査物を検査することができる。
【0051】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。各実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。すなわち、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更や改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0052】
100…X線検査装置
110…搬送手段
120…X線照射手段
130…X線検出手段
140…計数手段
150…シングルエナジー検出データ生成手段
160…入力手段
170…デュアルエナジー検出データ生成手段
180…検査実現手段
A1~A8…エネルギー領域
Vth、Vth1、Vth2…閾値
W…被測定物