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  • 特開-血漿分離器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056672
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】血漿分離器
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
G01N33/48 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166025
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】521078975
【氏名又は名称】株式会社ユニバーサル・バイオサンプリング
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】島垣 昌明
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045BA08
2G045BB06
2G045CA25
2G045HA01
2G045HA14
2G045JA07
(57)【要約】
【課題】製作性に優れ、血液分析の品質を高めることが可能な血漿分離器を提供する。
【解決手段】血液を収納したシリンジ12の筒先12aに結合して使用する血漿分離器11であって、円筒状のケース部13と、該円筒状のケース部に収納されるU字状に折曲げた複数本の中空糸膜14と、ケース部の一端側にて、中空糸膜の両端を固定する接着部15と、ケース部の他端側にシリンジの筒先に対応したアダプター16とを備え、シリンジ内から押し出された血液を、中空糸膜によって血漿成分のみに分離し、接着部で保持されている中空糸膜の両端の開口部から流出するように形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を収納したシリンジの筒先に結合して使用する血漿分離器であって、
円筒状のケース部と、
該円筒状のケース部に収納されるU字状に折曲げた複数本の中空糸膜と、
前記ケース部の一端側にて、前記中空糸膜の両端を固定する接着部と、
前記ケース部の他端側に前記シリンジの筒先に対応したアダプターとを備え、
前記シリンジ内から押し出された血液を、前記中空糸膜によって血漿成分のみに分離し、前記接着部で保持されている前記中空糸膜の両端の開口部から流出するように形成されていることを特徴とする血漿分離器。
【請求項2】
前記中空糸膜のU字状に折曲げてなる曲げ部は、前記ケース部を長手方向に二等分した領域うちの前記他端側の領域に配置されていることを特徴とする請求項1記載の血漿分離器。
【請求項3】
前記接着部は、前記中空糸膜の開口端と前記ケース部の開口端とを同一平面に揃えて固定する接着端部を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の血漿分離器。
【請求項4】
血液を収納したシリンジの筒先に結合して使用する血漿分離器であって、
円筒状のケース部と、
該円筒状のケース部に緩挿されるU字状に折曲げた複数本の中空糸膜と、
前記ケース部の一端側にて、前記中空糸膜の両端を固定する接着部と、
前記シリンジの筒先に対応し、前記接着部に連接するアダプターとを備え、
前記ケース部は、前記中空糸膜のU字状に折曲げてなる曲げ部を他端側にて露出させる長さを有し、
前記シリンジ内から押し出された血液を、前記中空糸膜によって血漿成分のみに分離し、前記中空糸膜の表面から流出するように形成されていることを特徴とする血漿分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血漿分離器に関し、詳しくは、採取した血液試料から血漿成分を分離・回収する血漿分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、採血後の注射器に組み付けて使用される血清・血漿分離器具として、繊維状の血球分離層を分離器の内部に嵌合固定したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-196620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された分離器具は、注射器から血液を吐出させると、分離器内の血球分離層を透過し、分離された血清・血漿成分を取り出すことができる。しかしながら、分離精度を求めようとすれば、高密度に繊維を詰め込む必要があることから、成形に手間を要し、また、使用においては、繊維くずや不純物などの混入、濾過中の目詰まりなどの品質上の問題が生じるおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、製作性に優れ、血液分析の品質を高めることが可能な血漿分離器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の血漿分離器は、血液を収納したシリンジの筒先に結合して使用する血漿分離器であって、円筒状のケース部と、該円筒状のケース部に収納されるU字状に折曲げた複数本の中空糸膜と、前記ケース部の一端側にて、前記中空糸膜の両端を固定する接着部と、前記ケース部の他端側に前記シリンジの筒先に対応したアダプターとを備え、前記シリンジ内から押し出された血液を、前記中空糸膜によって血漿成分のみに分離し、前記接着部で保持されている前記中空糸膜の両端の開口部から流出するように形成されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記中空糸膜のU字状に折曲げてなる曲げ部は、前記ケース部を長手方向に二等分した領域うちの前記他端側の領域に配置されていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記接着部は、前記中空糸膜の開口端と前記ケース部の開口端とを同一平面に揃えて固定する接着端部を有していることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の第2の血漿分離器は、血液を収納したシリンジの筒先に結合して使用する血漿分離器であって、円筒状のケース部と、該円筒状のケース部に緩挿されるU字状に折曲げた複数本の中空糸膜と、前記ケース部の一端側にて、前記中空糸膜の両端を固定する接着部と、前記シリンジの筒先に対応し、前記接着部に連接するアダプターとを備え、前記ケース部は、前記中空糸膜のU字状に折曲げてなる曲げ部を他端側にて露出させる長さを有し、前記シリンジ内から押し出された血液を、前記中空糸膜によって血漿成分のみに分離し、前記中空糸膜の表面から流出するように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の血漿分離器によれば、ケース部に流入した血液から血漿成分のみを分離して流出させる複数の中空糸膜を備え、U字状に折曲げた中空糸膜の両端をアダプターと反対側に位置する接着部で固定しているので、従来技術よりも分離膜として利用できる表面積を容易に広く取ることができ、濾過中に目詰まりの危険も少なく、繊維くずや不純物などの混入の心配もなくすことができる。
【0011】
また、U字状の折曲げ部をアダプターのある他端側の領域に配置しているので、流入した血液に対して中空糸膜に沿う流れを作り出すことが可能となり、表面積の拡大と相俟って、ケース部内における血液の流れに広がりをもたせた円滑な血漿分離を実現することができる。とりわけ、こうした無拘束部分を設けることで、注射器から注入される血液の圧力が作用しても悪影響を及ぼすことはなく、実用性に優れた血漿分離器の構成を得ることができる。
【0012】
さらに、接着部が中空糸膜の開口端とケース部の開口端とを同一平面に揃えて固定する接着端部を有しているので、製作時には、中空糸膜をケース部に適宜な長さで挿入した状態とし、接着材を充填して硬化させれば、その後はケース部の開口端に合わせて、もしくはケース部とともにカットするだけの簡単な作業で接着端部を形成することができる。しかも、中空糸膜の本数、長さを変えるだけで、濾過する血液量に対応した血漿分離器を作ることが容易になることから、安価で製作性に優れたものである。
【0013】
また、本発明の第2の血漿分離器によれば、第1の血漿分離器と同様に血液から血漿成分のみを分離して流出させることができる。とりわけ、シリンジ内から押し出された血液を中空糸膜の両端(束ねた側)から中空内部に直接流入させ、ケース部の外に露出している中空糸膜の表面から流出させる構成であるため、必要な血液量の調整が良好に行え、主に微量の血漿を得るのに適している(数μL程度にも対応可能)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1形態例を示す血漿分離器の正面図である。
図2】同じく側面図である。
図3】血漿分離器の使用状態を示す正面図である。
図4】本発明の第2形態例を示す血漿分離器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至図3は、本発明の第1形態例における血漿分離器を示す図である。血漿分離器11は、図3に示すように、予め採血された血液を収納したシリンジ12の筒先12aに結合して使用される樹脂製の器具であって、長手方向に延びる円筒状の透明なケース部13と、該ケース部13にU字状に折曲げた状態で収納される複数本の中空糸膜14と、ケース部13の一端側(流出側)の開口部に設けられ、中空糸膜14の両端が固定される接着部15と、ケース部13の他端側(流入側)の開口部に設けられ、シリンジ12の筒先12aに対応したアダプター16とを備えている。
【0016】
ケース部13は、シリンジ12と同程度もしくは更に短い長さを有し、例えば、長さが60mm、内径が7mm、外径が9mmの細径管である。ケース部13の部材は、透明なものが好適に使われ、塩ビチューブやシリコンチューブのような柔らかいものでも、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレンなどのような硬い樹脂製のものでもかまわない。アダプター16は、針基部(図示せず)と取付互換性のある中空状のもので、図示は省略するが、内部流路が若干絞られ、先端側をケース部13に嵌入した状態で、露出した基端側がシリンジ12の筒先12aにねじ込まれて結合される継手部材である。アダプター16については、シリンダとの接続部の規格として現状ISO80369基準があり、これら国際基準に準拠したものを用いるのが汎用性を持たせる上で好ましい。
【0017】
中空糸膜14は、血液の濾過部材として機能し、ケース部13内に血液を供給することで、外層側の表面から中空部に向けて血漿成分を透過させることが可能に形成されている。使用する中空糸膜は全血から血漿を分離できる孔径の孔が開いたものを使用すればよく、公知技術を用いることができる。ただし、乾燥状態のまま使用できる表面親水化した中空糸膜が好適に使われる。また、中空糸膜14は、例えば、15本(有効長40mm)が使用されており、図1にも示すように、ケース部13を長手方向に二等分した領域うちのアダプター16側の領域にU字状の折曲げ部Rが配置されている。これにより、中空糸膜14は、ケース部13に嵌入されたアダプター16の近傍において、その折曲げ部Rが位置することになり、束になった状態でも、ある程度のゆとりのある状態でケース部13に収納されている。
【0018】
接着部15は、ケース部13の内周面の間に接着材を充填して硬化させることにより、形成されている。接着材は、中空糸膜14との接着性や、ケース部13との接着性を考慮して選定されており、材質は、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好適に用いられている。材質としては、その他生体適合性を有するものが好適に使われる。
【0019】
接着材を充填する際には、例えば、ケース部13内に中空糸膜14の束を挿入し、折曲げ部Rを奥側に配置するとともに、中空糸膜14の両端部をケース部13の外側に出した状態とする。この挿入状態で、ケース部13内に接着材を充填して硬化させると、長さ方向に5~10mm程度の厚みが得られ、ケース部13の開口部において中空糸膜14が固定される。そして、ケース部13の開口端の位置に合わせて接着材の余分に盛った部分を中空糸膜14と一体でカットすると、図2に示すように、中空糸膜14の開口端とケース部13の開口端とを同一平面に揃えて固定する平滑な接着端部15aが得られる。こうした接着端部15aからは、中空糸膜14の本数の2倍の数、すなわち、15本に対応する30個の開孔14aを覗かせている。その他、接着材の充填について、遠心力を使った方法や静置して重量区を使った方法などを利用することも可能である。
【0020】
このように形成された血漿分離器11を使用して血漿分離を行う場合について説明する。まず、採血用の針を筒先12aに取り付けたシリンジ12によって、血液を採取する。次いで、採血用の針を取り外し、アダプター16を介して血漿分離器11を筒先12aに取りつける。採取したシリンジ12内の血液を押し子12bによって押し出すと、アダプター16を経由して血液がケース部13内に注入され、まず先に中空糸膜14の折曲げ部Rを押圧し、そのままケース部13の径方向に広がって拡散する。このとき、血液は中空糸膜14同士の隙間を通過しながら接着部15のある底部へと移動して均一に充填される。これにより、中空糸膜14によって分離された血漿成分のみが、接着部15で保持されている中空糸膜14の両端の開孔(開口部)14aから流出される。こうして、血漿分離器11によって分離された血漿は検体検査の目的として利用される。
【0021】
このように、本発明の第1の血漿分離器11によれば、ケース部13に流入した血液から血漿成分のみを分離して流出させる複数の中空糸膜14を備え、U字状に折曲げた中空糸膜14の両端をアダプター16と反対側に位置する接着部15で固定しているので、従来技術よりも分離膜として利用できる表面積を容易に広く取ることができ、濾過中に目詰まりの危険も少なく、繊維くずや不純物などの混入の心配もなくすことができる。
【0022】
また、U字状の折曲げ部Rをアダプター16のある他端側の領域に配置しているので、流入した血液に対して中空糸膜14に沿う流れを作り出すことが可能となり、表面積の拡大と相俟って、ケース部13内における血液の流れに広がりをもたせた円滑な血漿分離を実現することができる。とりわけ、こうした無拘束部分を設けることで、注射器から注入される血液の圧力が作用しても悪影響を及ぼすことはなく、実用性に優れた血漿分離器11の構成を得ることができる。
【0023】
さらに、接着部15が中空糸膜14の開口端とケース部13の開口端とを同一平面に揃えて固定する接着端部15aを有しているので、製作時には、中空糸膜14をケース部13に適宜な長さで挿入した状態とし、接着材を充填して硬化させれば、その後はケース部13の開口端に合わせてカットするだけの簡単な作業で接着端部15aを形成することができる。なお、ケース部13の開口端に合わせてカットするのではなく、ケース部13とともに接着部15と中空糸膜14をカットすることでも、接着端部15aを形成することができる。しかも、中空糸膜14の本数、長さを変えるだけで、濾過する血液量に対応した血漿分離器11を作ることが容易になることから、安価で製作性に優れたものである。
【0024】
図4は、本発明の血漿分離器の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した血漿分離器11の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
第2形態例に示す血漿分離器21は、長手方向に延びる円筒状の透明なケース部22と、該ケース部22に緩挿されるU字状に折曲げた複数本の中空糸膜14と、ケース部22の一端側(流入側)にて、中空糸膜14の両端を固定する接着部15と、シリンジ12の筒先12aに対応し、接着部15に連接するアダプター16とを備えている。接着部15とアダプター16とは、チューブ状の連結部23を用いて互いに突き合わされた状態で固定されている。これにより、中空糸膜14の中空部とアダプター16の内部とが連通される。
【0026】
中空糸膜14は、第1の構成と同数(15本)あるいは、大幅に少なくして、例えば、3~4本で使用することができる。ケース部22は、中空糸膜14のU字状に折曲げてなる曲げ部Rを他端側(流出側)にて露出させる長さを有し、例えば、中空糸膜14の長さの1/4程度の長さである。
【0027】
血漿分離器21を使用して血漿分離を行う場合、アダプター16を介して血漿分離器21をシリンジ12の筒先12aに取りつける。採取したシリンジ12内の血液を押し子12bによって押し出すと、アダプター16を経由して血液が接着端部15aの開孔14aから中空糸膜14に注入される。その後、血液は中空糸膜14の中空部内を通り、中空糸膜14の表面に分離された血漿成分のみが流出するようになる。中空糸膜14の曲げ部R部分を、ブラシのようにして検査シートに擦ることによって、分離された血漿を検体検査の目的として利用することが可能となる。
【0028】
こうした第2の血漿分離器21においても、第1の血漿分離器11と同様に血液から血漿成分のみを分離して流出させることができる。とりわけ、シリンジ12内から押し出された血液を中空糸膜14の両端(束ねた側)から中空部に直接流入させ、ケース部22の外に露出している中空糸膜14の表面から流出させる構成であるため、必要な血液量の調整が良好に行え、主に微量の血漿を得るのに適している(数μL程度にも対応可能)。
【0029】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、注射器に組み付けて使用する血漿分離器において、分離精度が格段に良い中空糸膜を備えた種々の構成が考えられる。また、その他の使用態様として、生理食塩水等を更に流して濾過洗浄した後、出口側から生理食塩水を入れることで、赤血球、血小板、白血球を回収することも可能である。加えて、赤血球混入防止にレクチンの使用は不要である。
【符号の説明】
【0030】
11…血漿分離器、12…シリンジ、12a…筒先、12b…押し子、13…ケース部、14…中空糸膜、14a…開孔、15…接着部、15a…接着端部、16…アダプター、21…血漿分離器、22…ケース部、23…連結部
図1
図2
図3
図4