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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056690
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230413BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230413BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166052
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】足立 周一
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043BA02
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA17
2B043EA32
2B043EA33
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB16
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC16
2B043ED02
2B043ED12
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG14
(57)【要約】
【課題】機体周辺の障害物を検出する障害物センサの検出信号を利用してタイヤ沈下量を推定することで、センサの追加を不要にしてコストの削減を可能にする。
【解決手段】複数のタイヤ10、11で支持される走行機体1と、走行機体1に設けられ、機体周辺の障害物を検出する障害物センサ24と、障害物センサ24の検出信号を入力可能な制御部18と、を備えるトラクタTであって、障害物センサ24は、地面に向けて配置され、地面までの距離を計測可能であり、制御部18は、障害物センサ24から地面までの距離Lに基づいてタイヤ10、11の沈下量Dを推定するタイヤ沈下量推定手段を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイヤで支持される走行機体と、
前記走行機体に設けられ、機体周辺の障害物を検出する障害物センサと、
前記障害物センサの検出信号を入力可能な制御部と、を備える作業車両であって、
前記障害物センサは、地面に向けて配置され、地面までの距離を計測可能であり、
前記制御部は、前記障害物センサから地面までの距離に基づいて前記タイヤの沈下量を推定するタイヤ沈下量推定手段を備えることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記走行機体の後部に連結され、土壌を耕耘する作業機をさらに備え、
前記障害物センサは、前記作業機後方の地面までの距離を計測可能であり、
前記タイヤ沈下量推定手段は、前記作業機による耕耘作業中に、前記障害物センサから地面までの距離に基づいて前記タイヤの沈下量を推定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行機体の姿勢を検出する機体姿勢検出手段をさらに備え、
前記タイヤ沈下量推定手段は、前記走行機体の姿勢に基づいて前記タイヤの沈下量を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得システムと、
アクチュエータの駆動により前記走行機体の前輪を操舵する自動操舵ユニットと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記位置情報取得システムが取得した前記走行機体の位置情報に基づいて、前記自動操舵ユニットを制御する自動操舵制御手段と、
前記自動操舵制御手段のゲインを前記タイヤの沈下量に基づいて補正するゲイン補正手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御部は、
前記障害物センサの検出信号に基づいて、所定の判定高さ以上の検出物体を障害物と判定する障害物判定手段と、
前記所定の判定高さを前記タイヤの沈下量に基づいて変更する障害物判定高さ変更手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得システムをさらに備え、
前記制御部は、前記走行機体の位置情報と前記タイヤの沈下量に基づいて圃場の耕盤位置を検出する耕盤位置検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
位置情報取得システムが取得した走行機体の位置情報に基づいて、前輪を自動的に制御する自動操舵制御を実行可能な作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の作業車両では、通常、機体周辺の障害物を検出する障害物センサが設けられ、障害物センサの検出信号に応じて機体走行を自動停止させたり警報を出力する機能を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-23649号公報
【特許文献2】特開2006-345805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の作業車両では、タイヤ沈下量の影響により、自動操舵制御、障害物判定制御などの制御精度が低下する虞がある。なお、特許文献2には、機体の底部に設けられる超音波センサの検出信号に基づいてタイヤ沈下量を演算する技術が開示されているが、超音波センサを追加する必要があるため、コストが上昇するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、複数のタイヤで支持される走行機体と、前記走行機体に設けられ、機体周辺の障害物を検出する障害物センサと、前記障害物センサの検出信号を入力可能な制御部と、を備える作業車両であって、前記障害物センサは、地面に向けて配置され、地面までの距離を計測可能であり、前記制御部は、前記障害物センサから地面までの距離に基づいて前記タイヤの沈下量を推定するタイヤ沈下量推定手段を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の作業車両であって、前記走行機体の後部に連結され、土壌を耕耘する作業機をさらに備え、前記障害物センサは、前記作業機後方の地面までの距離を計測可能であり、前記タイヤ沈下量推定手段は、前記作業機による耕耘作業中に、前記障害物センサから地面までの距離に基づいて前記タイヤの沈下量を推定することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の作業車両であって、前記走行機体の姿勢を検出する機体姿勢検出手段をさらに備え、前記タイヤ沈下量推定手段は、前記走行機体の姿勢に基づいて前記タイヤの沈下量を補正することを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1~3のいずれかに記載の作業車両であって、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得システムと、アクチュエータの駆動により前記走行機体の前輪を操舵する自動操舵ユニットと、をさらに備え、前記制御部は、前記位置情報取得システムが取得した前記走行機体の位置情報に基づいて、前記自動操舵ユニットを制御する自動操舵制御手段と、前記自動操舵制御手段のゲインを前記タイヤの沈下量に基づいて補正するゲイン補正手段と、をさらに備えることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載の作業車両であって、前記制御部は、前記障害物センサの検出信号に基づいて、所定の判定高さ以上の検出物体を障害物と判定する障害物判定手段と、前記所定の判定高さを前記タイヤの沈下量に基づいて変更する障害物判定高さ変更手段と、をさらに備えることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載の作業車両であって、前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得システムをさらに備え、前記制御部は、前記走行機体の位置情報と前記タイヤの沈下量に基づいて圃場の耕盤位置を検出する耕盤位置検出手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、機体周辺の障害物を検出する障害物センサの検出信号を利用してタイヤ沈下量を推定するので、センサの追加を不要にしてコストを削減できる。
また、請求項2の発明によれば、障害物センサは、耕耘された地面までの距離を計測するので、地面の凹凸などによる測定誤差を抑制し、タイヤ沈下量の推定精度を高めることができる。
また、請求項3の発明によれば、走行機体の姿勢に基づいてタイヤ沈下量を補正するので、タイヤ沈下量の推定精度をさらに高めることができる。
また、請求項4の発明によれば、自動操舵制御のゲインをタイヤ沈下量に基づいて補正するので、自動操舵制御のゲインを適正化し、自動操舵制御の制御精度を向上させることができる。
また、請求項5の発明によれば、障害物の判定高さをタイヤ沈下量に基づいて変更するので、障害物の判定精度を向上させることができる。
また、請求項6の発明によれば、走行機体の位置情報とタイヤ沈下量に基づいて圃場の耕盤位置を検出するので、耕盤位置に応じた作業を可能とし、作業精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図である。
図2】トラクタの平面図である。
図3】走行機体の後部を左後上方から視た斜視図である。
図4】トラクタの制御構成を示すブロック図である。
図5】タイヤ沈下量の推定原理を示す説明図である。
図6】(a)は機体姿勢に応じたタイヤ沈下量の補正原理を示す説明図、(b)は障害物判定高さの補正原理を示す説明図である。
図7】タイヤ沈下量推定制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1図3において、Tはトラクタ(作業車両)であって、該トラクタTは、走行機体1と、走行機体1の後部に昇降リンク機構2を介して連結される作業機3とを備える。
【0009】
昇降リンク機構2は、例えば3点リンク機構であって、トップリンク4と、左右一対のロワリンク5と、左右一対のリフトロッド6を介してロワリンク5を吊持する左右一対のリフトアーム(図示せず)と、左右一対のリフトアームを昇降動作させるリフトシリンダ(図示せず)とを備える。
【0010】
本実施形態の作業機3は、走行機体1の後部に連結され、土壌を耕耘するロータリ耕耘作業機であって、走行機体1から供給される作業動力で回転駆動される耕耘爪7と、耕耘爪7の上方を覆うロータリカバー8と、ロータリカバー8の後端部に上下揺動可能に連結され、耕耘爪7が耕耘した耕耘土を均平するリヤカバー9とを備える。
【0011】
走行機体1は、複数のタイヤ10、11で支持される。複数のタイヤ10、11には、ステアリングハンドル12で操舵され、且つエンジン動力で回転駆動される左右一対の前輪タイヤ10と、エンジン動力で回転駆動される左右一対の後輪タイヤ11とが含まれる。
【0012】
本実施形態の走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部Eと、エンジン動力を変速して前輪タイヤ10、後輪タイヤ11及び作業機3に供給するトランスミッションケース13と、作業者が乗車可能な操縦部14と、操縦部14を覆うキャビン15とを備える。
【0013】
また、走行機体1は、走行機体1を自動的に走行させる自動操舵制御を実行可能であって、図1図4に示すように、自動操舵制御を行うための構成として、走行機体1の位置情報を取得する位置情報取得システム16と、アクチュエータの駆動により走行機体1の前輪タイヤ10を操舵する自動操舵ユニット17と、位置情報取得システム16が取得した走行機体1の位置情報に基づいて、自動操舵ユニット17を制御する制御部18とを備える。
【0014】
位置情報取得システム16としては、例えば、数cmの誤差で高精度な測位が可能なRTK-GNSS測位システムが採用される。RTK-GNSS測位システムは、固定設置された基地局と、移動する移動局とのそれぞれで、GPSなどのGNSS測位を行い、基地局から移動局に送信される補正信号でリアルタイムに測位データを補正することで、誤差数cmの高精度な測位を実現するものである。また、移動局に所定の間隔をあけて2つのGNSSアンテナを設置すれば、移動局の絶対位置だけでなく、2つの測位結果に基づいて、移動局の進行方向(方位)も高精度に検出することが可能になる。
【0015】
具体的に説明すると、本実施形態の位置情報取得システム16は、キャビン15の屋根後端部に車幅方向に沿って設けられる測位用フレーム19と、測位用フレーム19に車幅方向に所定の間隔をあけて取付けられる基準用GNSSアンテナ20及び方位用GNSSアンテナ21と、固定設置されるRTK基地局(図示せず)から補正信号を受信する補正信号受信装置22と、RTK-GNSS測位を実行する制御ユニットであるGNSSユニット23とを備える。GNSSユニット23は、RTK-GNSS測位による測位データ(絶対位置データ及び進行方向データ)を、CANなどの有線通信手段を介して制御部18に送信する。
【0016】
さらに、走行機体1は、機体周辺の障害物を検出する障害物センサ24を備える。制御部18は、障害物センサ24の検出信号を入力し、自動操舵制御時の緊急停止処理、障害物報知処理、障害物警報処理などを行う。
【0017】
本実施形態の走行機体1には、機体前方の障害物を検出する機体前方用の障害物センサ(図示せず)と、機体側方の障害物を検出する機体側方用の障害物センサ(図示せず)と、機体後方の障害物を検出する機体後方用の障害物センサ24とを備える。以下、機体後方用の障害物センサ24について説明するが、本発明の障害物センサ24は、機体後方用の障害物センサ24に限定されず、機体前方用の障害物センサや機体側方用の障害物センサであってもよい。
【0018】
障害物センサ24は、地面に向けて配置され、地面までの距離を計測可能に構成される。例えば、地面に向けてレーザ光を出射し、その反射光に基づいて地面又は障害物までの距離を計測可能なレーザ測距センサを用いて構成される。制御部18は、障害物センサ24の計測距離に基づいて、地面までの距離、又は障害物の高さを検出し、障害物の高さが予め設定された判定高さ以上の場合、障害物センサ24の検出範囲内に障害物が存在すると判定する。
【0019】
機体後方用の障害物センサ24は、測位用フレーム19の車幅方向中間部に後方下方を向いて設けられており、作業機3後方の地面までの距離を計測する。つまり、作業機3による耕耘作業中においては、作業機3によって耕耘され、且つ均平された地面までの距離を計測するので、地面の凹凸による計測誤差が抑制される。
【0020】
図4に示すように、制御部18の入力側には、前述した障害物センサ24及びGNSSユニット23に加え、走行機体1の車速を検出する車速センサ25と、走行機体1の姿勢(前後傾斜、左右傾斜など)を検出するIMU26(慣性計測ユニット、機体姿勢検出手段)と、作業機3の昇降高さを検出するリフトアームセンサ27とが接続される一方、制御部18の出力側には、前述した自動操舵ユニット17に加え、リフトアームの油圧動作を切り換えるリフトアームバルブ28と、エンジンECU(図示せず)に対してエンジン回転数指示を出力するエンジン回転出力29と、走行変速装置(図示せず)に対して車速変更指示を出力する車速変更出力30とが接続されている。
【0021】
制御部18は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能的な構成として、タイヤ沈下量推定手段、自動操舵制御手段、ゲイン補正手段、障害物判定手段、障害物判定高さ変更手段、及び耕盤位置検出手段を備える。
【0022】
図5に示すように、タイヤ沈下量推定手段は、障害物センサ24が計測した障害物センサ24から地面までの距離Lに基づいてタイヤ10、11の沈下量Dを推定する。例えば、障害物センサ24の取付角度(例えば、レーザ光出射角度)が、機体高さ方向を基準とした場合にθ1、機体長さ方向を基準とした場合にθ2(θ2=90°-θ1)とし、タイヤ10、11の沈下量Dが0のときの障害物センサ24の取付高さをHとすると、タイヤ10、11の沈下量Dは、下記の式で求められる。
D=H-(L×cosθ1)
D=H-(L×sinθ2)
【0023】
また、タイヤ沈下量推定手段は、IMU26が検出した走行機体1の姿勢に基づいて、タイヤ10、11の沈下量Dを補正する。例えば、図6の(a)に示すように、走行機体1が前傾すると、後輪タイヤ11のタイヤ沈下量Dが変わらなくても、障害物センサ24の計測距離L´が機体水平時の計測距離Lよりも長くなるため、推定沈下量Dが実際の沈下量よりも小さくなる可能性がある。
【0024】
タイヤ沈下量推定手段は、例えば、後輪タイヤ11の沈下量を基準とする場合、走行機体1の前傾角度に応じて沈下量Dを増加させ、走行機体1の後傾角度に応じて沈下量Dを減少させる補正を行う。
【0025】
自動操舵制御手段は、位置情報取得システム16が取得した走行機体1の位置情報に基づいて自動操舵ユニット17を制御する。また、ゲイン補正手段は、自動操舵制御手段のゲインGをタイヤ10、11の沈下量Dに基づいて補正する。例えば、タイヤ10、11の沈下量Dが大きい場合、前輪タイヤ10の操舵荷重が大きくなるため、下記のような式を用い、沈下量Dに応じて自動操舵制御手段のゲインGを補正する。ただし、kは予め設定された係数である。
G=k×D
【0026】
障害物判定手段は、障害物センサ24の検出信号に基づいて、所定の判定高さh以上の検出物体を障害物Sと判定する。また、障害物判定高さ変更手段は、所定の判定高さhをタイヤ10、11の沈下量Dに基づいて変更する。例えば、図6の(b)に示すように、タイヤ10、11の沈下量Dが小さいの場合と、沈下量Dが大きい場合とでは、同じ障害物Sであっても障害物センサ24による障害物Sの検出高さが変化するため、下記のような式を用い、沈下量Dに応じて障害物Sの判定高さhを補正する。ただし、Hは初期の判定高さ(沈下量D=0で設定)である。
h=H+D
【0027】
耕盤位置検出手段は、走行機体1の位置情報とタイヤ10、11の沈下量Dに基づいて圃場の耕盤位置を検出する。例えば、タイヤ10、11の沈下量Dが耕盤深さ(耕耘深さ)と略一致すると想定し、走行機体1の位置情報に紐付けて沈下量Dを記憶する。
【0028】
つぎに、上記したタイヤ沈下量推定手段(タイヤ沈下量推定制御)の具体的な処理手順について図7を参照して説明する。
【0029】
図7に示すように、制御部18は、リフトアームセンサ27の検出値に基づいて耕耘作業中(作業機3が下げ位置)であるか否かを判断し(S1)、この判断結果がNOの場合は、作業距離及び計測フラグに0をセット(S2、S3)して上位ルーチンに復帰する一方、判断結果がYESの場合は、計測フラグがセット状態(=1)であるか否かを判断する(S4)。制御部18は、計測フラグがセット状態ではないと判断した場合、作業距離カウントを開始した後(S5)、計測フラグに1をセットし(S6)、計測フラグがセット状態であると判断した場合は、作業距離カウントの加算を行う(S7)。つぎに、制御部18は、カウントした作業距離が所定距離A1を超えたか否かを判断し(S8)、この判断結果がYESになったら地面計測(障害物センサ値による沈下量Dの推定処理)を実行する(S9)。このようなタイヤ沈下量推定制御によれば、作業距離が所定距離A1を超えてから、タイヤ10、11の沈下量Dを推定するので、耕耘された地面までの距離Lに基づいた沈下量Dの推定が可能になり、地面の凹凸などによる測定誤差を抑制することができる。
【0030】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、複数のタイヤ10、11で支持される走行機体1と、走行機体1に設けられ、機体周辺の障害物を検出する障害物センサ24と、障害物センサ24の検出信号を入力可能な制御部18と、を備えるトラクタTであって、障害物センサ24は、地面に向けて配置され、地面までの距離を計測可能であり、制御部18は、障害物センサ24から地面までの距離Lに基づいてタイヤ10、11の沈下量Dを推定するタイヤ沈下量推定手段を備えるので、センサの追加を不要にしてコストを削減できる。
【0031】
また、トラクタTは、走行機体1の後部に連結され、土壌を耕耘する作業機3をさらに備え、障害物センサ24は、作業機後方の地面までの距離Lを計測可能であり、タイヤ沈下量推定手段は、作業機3による耕耘作業中に、障害物センサ24から地面までの距離Lに基づいてタイヤ10、11の沈下量Dを推定するので、地面の凹凸などによる測定誤差を抑制し、タイヤ沈下量の推定精度を高めることができる。
【0032】
また、トラクタTは、走行機体1の姿勢を検出するIMU26をさらに備え、タイヤ沈下量推定手段は、走行機体1の姿勢に基づいてタイヤ10、11の沈下量Dを補正するので、タイヤ沈下量Dの推定精度をさらに高めることができる。
【0033】
また、トラクタTは、走行機体1の位置情報を取得する位置情報取得システム16と、アクチュエータの駆動により走行機体1の前輪タイヤ10を操舵する自動操舵ユニット17と、をさらに備え、制御部18は、位置情報取得システム16が取得した走行機体1の位置情報に基づいて、自動操舵ユニット17を制御する自動操舵制御手段と、自動操舵制御手段のゲインをタイヤ10、11の沈下量Dに基づいて補正するゲイン補正手段と、をさらに備えるので、自動操舵制御のゲインを適正化し、自動操舵制御の制御精度を向上させることができる。
【0034】
また、制御部18は、障害物センサ24の検出信号に基づいて、所定の判定高さh以上の検出物体を障害物Sと判定する障害物判定手段と、所定の判定高さhをタイヤ10、11の沈下量Dに基づいて変更する障害物判定高さ変更手段と、をさらに備えるので、障害物Sの判定精度を向上させることができる。
【0035】
また、制御部18は、走行機体1の位置情報とタイヤ10、11の沈下量Dに基づいて圃場の耕盤位置を検出する耕盤位置検出手段をさらに備えるので、耕盤位置のマップ情報により土の移動や耕盤破壊等を行うことで、土壌改良や収量改善が行え、作業性が向上できる。
【符号の説明】
【0036】
T トラクタ
1 走行機体
3 作業機
10 前輪タイヤ
11 後輪タイヤ
16 位置情報取得システム
17 自動操舵ユニット
18 制御部
24 障害物センサ
26 IMU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7