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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056697
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230413BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230413BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230413BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230413BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301D
H01L29/78 652H
H01L29/78 652N
H01L29/78 652J
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166063
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 順
(57)【要約】
【課題】閾値電圧がばらつくことを抑制する。
【解決手段】ゲート電極27のうちのトレンチ25の底部側に位置する端部を下端部とすると共に開口部側に位置する端部を上端部とし、ドリフト層とベース層21との積層方向に沿った方向を深さ方向とすると、ベース層21は、深さ方向に沿った不純物濃度の濃度プロファイルにおいて、下端部と同じ深さに位置する部分と上端部と同じ深さに位置する部分との間に不純物濃度が極小となる低濃度ピークを有する濃度プロファイルとされ、下端部と同じ深さの部分と低濃度ピークとなる位置との間における不純物濃度が最大となる位置を第1ピーク位置P1とすると共に、低濃度ピークとなる位置と上端部と同じ深さの部分との間における不純物濃度が最大となる位置を第2ピーク位置P2とすると、不純物領域は、深さ方向においてベース層21との境界となる位置が第1ピーク位置と第2ピーク位置との間とされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造を有する半導体素子が形成された半導体装置であって、
前記半導体素子は、
第1導電型のドリフト層(19)と、
前記ドリフト層の表層部に形成された第2導電型のベース層(21)と、
前記ベース層の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の不純物領域(22)と、
前記ベース層および前記不純物領域を貫通して前記ドリフト層に達するトレンチ(25)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(26)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(27)とを有する前記トレンチゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース層と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の高濃度層(11)と、
前記ベース層および前記不純物領域と電気的に接続される第1電極(29)と、
前記高濃度層と電気的に接続される第2電極(32)と、を備え、
前記ゲート電極のうちの前記トレンチの底部側に位置する端部を下端部とすると共に前記ゲート電極のうちの前記トレンチの開口部側に位置する端部を上端部とし、前記ドリフト層と前記ベース層との積層方向に沿った方向を深さ方向とすると、
前記ベース層は、前記深さ方向に沿った不純物濃度の濃度プロファイルにおいて、前記下端部と同じ深さに位置する部分と前記上端部と同じ深さに位置する部分との間に前記不純物濃度が極小となる低濃度ピークを有する濃度プロファイルとされ、
前記下端部と同じ深さに位置する部分と前記低濃度ピークとなる位置との間における前記不純物濃度が最大となる位置を第1ピーク位置(P1)とすると共に、前記低濃度ピークとなる位置と前記上端部と同じ深さに位置する部分との間における前記不純物濃度が最大となる位置を第2ピーク位置(P2)とすると、
前記不純物領域は、前記深さ方向において前記ベース層との境界となる位置が前記第1ピーク位置と第2ピーク位置との間とされている半導体装置。
【請求項2】
セル領域(1)と前記セル領域を囲む外周領域(2)とを有し、
前記セル領域には、前記半導体素子が形成され、
前記外周領域には、前記セル領域を囲む枠状とされ、前記ドリフト層の表層部に前記ベース層と同じ不純物濃度の濃度プロファイルとされた第2導電型のFLR部(24)が形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記外周領域には、前記ドリフト層の内部に、前記FLR部と対向する部分を有する第2導電型のFLR部(16)が形成されている請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1ピーク位置の不純物濃度は、前記第2ピーク位置の不純物濃度より不純物濃度が高くされている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2ピーク位置の不純物濃度は、前記第1ピーク位置の不純物濃度より不純物濃度が高くされている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記不純物領域は、前記深さ方向において前記ベース層との境界となる位置が前記低濃度ピークとなる位置と一致するように形成されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
第1導電型のドリフト層(19)と、
前記ドリフト層の表層部に形成された第2導電型のベース層(21)と、
前記ベース層の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の不純物領域(22)と、
前記ベース層および前記不純物領域を貫通して前記ドリフト層に達するトレンチ(25)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(26)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(27)とを有するトレンチゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース層と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の高濃度層(11)と、
前記ベース層および前記不純物領域と電気的に接続される第1電極(29)と、
前記高濃度層と電気的に接続される第2電極(32)と、を備える半導体素子が形成され、
前記ゲート電極のうちの前記トレンチの底部側に位置する端部を下端部とすると共に前記ゲート電極のうちの前記トレンチの開口部側に位置する端部を上端部とし、前記ドリフト層と前記ベース層との積層方向に沿った方向を深さ方向とすると、
前記ベース層は、前記深さ方向に沿った不純物濃度の濃度プロファイルにおいて、前記下端部と同じ深さに位置する部分と前記上端部と同じ深さに位置する部分との間に前記不純物濃度が極小となる低濃度ピークを有する濃度プロファイルとされ、
前記下端部と同じ深さに位置する部分と前記低濃度ピークとなる位置との間における前記不純物濃度が最大となる位置を第1ピーク位置(P1)とすると共に、前記低濃度ピークとなる位置と前記上端部と同じ深さに位置する部分との間における前記不純物濃度が最大となる位置を第2ピーク位置(P2)とすると、
前記不純物領域は、前記深さ方向において前記ベース層との境界となる位置が前記第1ピーク位置と第2ピーク位置との間とされている半導体装置の製造方法であって、
前記ドリフト層の表層部に前記ベース層を形成することと、
前記ベース層の表層部に前記不純物領域を形成することと、を行い、
前記ベース層を形成することでは、加速エネルギを変化させながら複数回のイオン注入を行うことにより、前記濃度プロファイルとなる前記ベース層を形成し、
前記不純物領域を形成することでは、前記深さ方向において、前記第1ピーク位置と前記第2ピーク位置との間に前記ベース層との境界が構成されるように、イオン注入を行って前記不純物領域を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記不純物領域を形成することでは、前記境界が前記低濃度ピークとなる位置と一致するように、前記不純物領域を形成する請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ドリフト層の表層部に、前記ベース層を囲む枠状とされ、前記ベース層と同じ不純物濃度の濃度プロファイルとされたFLR部(24)を形成することを行い、
前記FLR部を形成することは、前記ベース層を形成することと同じイオン注入を行って前記ベース層と同時に前記FLR部を形成する請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistorの略)等の半導体素子が形成された半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この半導体装置は、ドリフト層を有する半導体基板を備え、半導体基板の一面側にベース層が形成されていると共に、ベース層の表層部にソース領域が形成されている。また、半導体基板には、ソース領域およびベース層を貫通するようにトレンチが形成されている。そして、トレンチにゲート絶縁膜およびゲート電極が配置されることでトレンチゲート構造が構成されている。
【0003】
半導体基板の他面側には、ドレイン領域が配置されている。そして、半導体基板の一面側には、ソース領域およびベース層と電気的に接続されるように上部電極が配置されている。半導体基板の他面側には、ドレイン領域と電気的に接続されるように下部電極が配置されている。
【0004】
このような半導体装置では、ゲート電極に絶縁ゲート構造における閾値電圧以上の電圧が印加されることにより、ベース層のうちのトレンチと接する部分に反転層(すなわち、チャネル)が形成される。そして、半導体装置には、反転層を介して上部電極と下部電極との間に電流が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-65238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような半導体装置では、ベース層は、一面側から所定の深さの位置まで不純物濃度が略一定となるように形成される。このため、ソース領域の深さがばらついた場合は、閾値電圧の変化が大きくなる可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、閾値電圧がばらつくことを抑制できる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1は、トレンチゲート構造を有する半導体素子が形成された半導体装置であって、半導体素子は、第1導電型のドリフト層(19)と、ドリフト層の表層部に形成された第2導電型のベース層(21)と、ベース層の表層部に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の不純物領域(22)と、ベース層および不純物領域を貫通してドリフト層に達するトレンチ(25)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(26)と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(27)とを有するトレンチゲート構造と、ドリフト層を挟んでベース層と反対側に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の高濃度層(11)と、ベース層および不純物領域と電気的に接続される第1電極(29)と、高濃度層と電気的に接続される第2電極(32)と、を備えている。そして、ゲート電極のうちのトレンチの底部側に位置する端部を下端部とすると共にゲート電極のうちのトレンチの開口部側に位置する端部を上端部とし、ドリフト層とベース層との積層方向に沿った方向を深さ方向とすると、ベース層は、深さ方向に沿った不純物濃度の濃度プロファイルにおいて、下端部と同じ深さに位置する部分と上端部と同じ深さに位置する部分との間に不純物濃度が極小となる低濃度ピークを有する濃度プロファイルとされ、下端部と同じ深さに位置する部分と低濃度ピークとなる位置との間における不純物濃度が最大となる位置を第1ピーク位置(P1)とすると共に、低濃度ピークとなる位置と上端部と同じ深さに位置する部分との間における不純物濃度が最大となる位置を第2ピーク位置(P2)とすると、不純物領域は、深さ方向においてベース層との境界となる位置が第1ピーク位置と第2ピーク位置との間とされている。
【0009】
これによれば、不純物領域は、深さ方向においてベース層との境界となる位置がベース層の第1ピーク位置と第2ピーク位置との間とされている。このため、不純物領域の深さがばらついたとしても、不純物領域のベース層との境界となる位置がベース層の不純物濃度が高くなる部分と交差し難くなる。したがって、不純物領域の深さがばらついたとしても実効濃度の変化が小さくなり易く、閾値電圧が変動することを抑制できる。
【0010】
また、請求項6は、請求項1に関する半導体装置の製造方法であり、ドリフト層の表層部にベース層を形成することと、ベース層の表層部に不純物領域を形成することと、を行い、ベース層を形成することでは、加速エネルギを変化させながら複数回のイオン注入を行うことにより、濃度プロファイルとなるベース層を形成し、不純物領域を形成することでは、深さ方向において、第1ピーク位置と第2ピーク位置との間にベース層との境界が構成されるように、イオン注入を行って不純物領域を形成する。
【0011】
これによれば、不純物領域は、深さ方向においてベース層との境界となる位置がベース層の第1ピーク位置と第2ピーク位置との間に形成される。このため、不純物領域の深さがばらついたとしても、不純物領域のベース層との境界となる位置がベース層の不純物濃度が高くなる部分と交差し難くなる。したがって、不純物領域の深さがばらついたとしても実効濃度の変化が小さくなり易く、閾値電圧が変動することを抑制した半導体装置を製造できる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
図2図1中のセル領域を示す斜視断面図である。
図3】半導体基板の深さと不純物濃度との関係を示す図である。
図4】閾値電圧に関係する実効濃度を説明するための図である。
図5A図1に示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5B図5Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5C図5Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5D図5Cに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5E図5Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5F図5Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5G図5Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6】第2実施形態における半導体基板の深さと不純物濃度との関係を示す図である。
図7】第3実施形態における半導体基板の深さと不純物濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されると好適である。また、本実施形態では、半導体素子として、トレンチゲート構造の反転型のMOSFETが形成されているSiC半導体装置について説明する。
【0016】
本実施形態のSiC半導体装置は、トレンチゲート構造のMOSFETが形成されるセル領域1と、このセル領域1を囲む外周領域2とを有する構成とされている。外周領域2は、FLR領域2aと、FLR領域2aよりも内側に配置される繋ぎ領域2bとを有する構成とされている。言い換えると、外周領域2は、FLR領域2aと、セル領域1とFLR領域2aとの間に配置される繋ぎ領域2bとを有する構成とされている。
【0017】
以下では、後述する基板11の面方向における一方向をX軸方向とし、基板の面方向における一方向と交差する方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向として説明する。なお、本実施形態では、X軸方向とY軸方向とは直交している。そして、図1では、紙面左右方向がX軸方向に相当し、紙面奥行き方向がY軸方向に相当し、紙面上下方向がZ軸方向に相当している。但し、本実施形態におけるZ軸方向とは、後述する半導体基板10の深さ方向に相当しており、後述するドリフト層19とベース層21との積層方向にも相当している。
【0018】
SiC半導体装置は、図1および図2に示されるように、半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、SiC半導体装置は、SiCからなるn型の基板11を備えている。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cmとされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。なお、基板11は、本実施形態ではドレイン領域を構成するものであり、高濃度層に相当している。
【0019】
基板11の表面上には、SiCからなるn型のバッファ層12が形成されている。バッファ層12は、基板11の表面にエピタキシャル成長を行うことによって構成される。そして、バッファ層12は、n型不純物濃度が、基板11と、後述する低濃度層13との間の不純物濃度とされ、厚さが1μm程度とされている。
【0020】
バッファ層12の表面上には、例えば、n型不純物濃度が5.0~10.0×1015/cmとされ、厚さが10~15μm程度とされたSiCからなるn型の低濃度層13が形成されている。この低濃度層13は、不純物濃度がZ軸方向において一定とされていてもよいが、濃度分布に傾斜が付けられ、低濃度層13のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにされると好ましい。例えば、低濃度層13は、基板11の表面から3~5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×1015/cm程度他の部分よりも高くされるのが好ましい。このような構成にすることにより、低濃度層13の内部抵抗を低減でき、オン抵抗を低減することができる。
【0021】
低濃度層13の表層部には、セル領域1および外周領域2の繋ぎ領域2bにおいて、JFET部14および第1ディープ層15が形成されている。本実施形態では、JFET部14および第1ディープ層15は、それぞれX軸方向に沿って延設されると共に、Y軸方向において交互に繰り返し並べて配置された線状部分を有している。つまり、JFET部14および第1ディープ層15は、基板11の表面に対する法線方向(以下では、単に法線方向ともいう)において、それぞれX軸方向に沿って延設されたストライプ状とされ、それらがY軸方向に沿って交互に並べられたレイアウトとなる構成とされている。なお、基板11の表面に対する法線方向においてとは、言い換えると、基板11の表面に対する法線方向から視たときということもできる。
【0022】
JFET部14は、低濃度層13よりも高不純物濃度とされたn型とされており、深さが0.3~1.5μmとされている。本実施形態では、JFET部14は、n型不純物濃度が7.0×1016~5.0×1017/cmとされている。
【0023】
第1ディープ層15は、例えば、ボロン等のp型不純物濃度が2.0×1017~2.0×1018/cmとされている。なお、本実施形態の第1ディープ層15は、JFET部14よりもFLR領域2a側まで延設されている。
【0024】
そして、本実施形態の第1ディープ層15は、JFET部14より浅く形成されている。つまり、第1ディープ層15は、底部がJFET部14内に位置するように形成されている。言い換えると、第1ディープ層15は、低濃度層13との間にJFET部14が位置するように形成されている。
【0025】
また、低濃度層13の表層部には、外周領域2のFLR領域2aにおいて、セル領域1を囲むように、複数本のp型の第1FLR部16が形成されている。本実施形態では、各第1FLR部16は、例えば、四隅が丸められた四角枠状とされて同心状に形成されている。但し、各第1FLR部16は、四角枠状ではなく、円形枠状等の他の枠状とされて同心状に形成されていてもよい。また、この第1FLR部16は、基板11側の下面が第1ディープ層15の下面と同じ深さとされていると共に第1ディープ層15と同じ厚さとされ、p型不純物濃度が第1ディープ層15と同じとされている。
【0026】
セル領域1におけるJFET部14および第1ディープ層15上には、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22等が形成されている。外周領域2のFLR領域2aにおける低濃度層13および第1FLR部16上には、電流分散層17および第2FLR部24が形成されている。外周領域2の繋ぎ領域2bにおけるJFET部14および第1ディープ層15上には、リサーフ層20やベース層21等が形成されている。
【0027】
電流分散層17は、n型不純物層で構成され、セル領域1ではJFET部14と繋がっている。このため、本実施形態では、低濃度層13、JFET部14、および電流分散層17が繋がり、これらによってドリフト層19が構成されている。
【0028】
第2ディープ層18は、厚さが電流分散層17と等しくされている。また、第2ディープ層18は、第1ディープ層15と接続されるように形成されている。
【0029】
そして、電流分散層17および第2ディープ層18は、セル領域1においては、JFET部14のうちのストライプ状とされた部分や、第1ディープ層15の長手方向に対して交差する方向に延設されている。本実施形態では、電流分散層17および第2ディープ層18は、Y軸方向を長手方向として延設されると共に、X軸方向において交互に複数本並べたレイアウトとされている。なお、電流分散層17および第2ディープ層18の形成ピッチは、後述するトレンチゲート構造の形成ピッチに合わせてあり、第2ディープ層18は、後述するトレンチ25を挟むように形成されている。
【0030】
リサーフ層20は、繋ぎ領域2bに形成されており、厚さが電流分散層17や第2ディープ層18と等しくされている。そして、このリサーフ層20は、p型とされており、繋ぎ領域2bにて第1ディープ層15と接続されている。
【0031】
ベース層21は、p型とされており、セル領域1において、電流分散層17および第2ディープ層18上に形成されている。また、ベース層21は、繋ぎ領域2bにおいて、リサーフ層20上に形成されている。そして、ベース層21の表層部には、セル領域1においては、n型のソース領域22が形成されている。具体的には、ソース領域22は、後述するトレンチ25の側面に接するように形成されている。なお、本実施形態では、ソース領域22が不純物領域に相当している。
【0032】
本実施形態のベース層21は、具体的には後述するが、低濃度ピークを有する所定の濃度プロファイルとなるように形成されている。また、ソース領域22は、具体的には後述するが、基板11側の下面(すなわち、Z軸方向におけるベース層21との境界)が所定位置となるように形成されている。
【0033】
FLR領域2aでは、電流分散層17が半導体基板10の一面10aを構成するように配置されている。そして、FLR領域2aの電流分散層17には、表層部に複数本のp型の第2FLR部24が形成されている。本実施形態の第2FLR部24は、第1FLR部16と対向する部分を有するように形成されている。また、この第2FLR部24は、基板11側の下面がベース層21の下面と同じ深さとされ、ベース層21と同じ厚さとされている。さらに、第2FLR部24は、Z軸方向に沿った濃度プロファイルがベース層21と同じとされている。
【0034】
なお、各第2FLR部24は、例えば、四隅が丸められた四角枠状とされて同心状に形成されている。但し、第2FLR部24は、四角枠状ではなく、円形枠状等の他の枠状とされて同心状に形成されていてもよい。
【0035】
さらに、本実施形態の第1FLR部16および第2FLR部24は、Z軸方向において、隣合う第1FLR部16の間に位置する部分と、隣合う第2FLR部24の間に位置する部分とが異なる位置となるように形成されている。つまり、第1FLR部16と第2FLR部24とは、Z軸方向において、隣合う第1FLR部16の間に位置する部分と、隣合う第2FLR部24の間に位置する部分とが重ならないように形成されている。
【0036】
本実施形態では、以上のように、基板11、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、第1FLR部16、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22、第2FLR部24等を含んで半導体基板10が構成されている。そして、半導体基板10の一面10aがソース領域22や電流分散層17等で構成され、半導体基板10の他面10bが基板11で構成されている。
【0037】
半導体基板10には、セル領域1において、ソース領域22やベース層21等を貫通して電流分散層17に達すると共に、底面が電流分散層17内に位置するように、例えば、幅が1.4~2.0μmとされたトレンチ25が形成されている。なお、トレンチ25は、JFET部14および第1ディープ層15に達しないように形成されている。つまり、トレンチ25は、底面よりも下方にJFET部14および第1ディープ層15が位置するように形成されている。
【0038】
また、トレンチ25は、Y軸方向に沿って延びるように複数本が延設されていると共に、X軸方向に等間隔で並べられてストライプ状に形成されている。つまり、本実施形態では、トレンチ25は、長手方向が第1ディープ層15の長手方向と直交するように形成されている。また、トレンチ25は、法線方向において、第2ディープ層18に挟まれるように形成されている。
【0039】
トレンチ25には、内壁面にゲート絶縁膜26が形成され、ゲート絶縁膜26上には、ドープトPoly-Si等によって構成されるゲート電極27が形成されている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜26は、トレンチ25の内壁面を熱酸化する、またはCVD(chemical vapor depositionの略)法を行うことで形成される。そして、ゲート絶縁膜26は、厚さがトレンチ25の側面側および底面側で共に100nm程度とされている。
【0040】
なお、ゲート絶縁膜26は、トレンチ25の内壁面以外の表面にも形成されている。具体的には、ゲート絶縁膜26は、セル領域1においては、半導体基板10の一面10aの一部も覆うように形成されている。より詳しくは、ゲート絶縁膜26は、ソース領域22の表面の一部も覆うように形成されている。言い換えると、ゲート絶縁膜26には、ゲート電極27が配置される部分と異なる部分において、ベース層21およびソース領域22を露出させるコンタクトホール26aが形成されている。
【0041】
また、ゲート絶縁膜26は、繋ぎ領域2bにおけるベース層21の表面や、FLR領域2aにおける電流分散層17や第2FLR部24の表面にも形成されている。そして、ゲート電極27は、繋ぎ領域2bにおけるゲート絶縁膜26の表面上まで延設されている。以上のようにして、本実施形態のトレンチゲート構造が構成されている。
【0042】
半導体基板10の一面10a上には、ゲート電極27やゲート絶縁膜26等を覆うように、層間絶縁膜28が形成されている。層間絶縁膜28は、BPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成されている。
【0043】
層間絶縁膜28には、コンタクトホール26aと連通してソース領域22およびベース層21を露出させるコンタクトホール28aが形成されている。また、層間絶縁膜28には、ゲート電極27のうちの繋ぎ領域2bまで延設された部分を露出させるコンタクトホール28bが形成されている。つまり、層間絶縁膜28には、セル領域1にコンタクトホール28aが形成され、外周領域2にコンタクトホール28bが形成されている。
【0044】
なお、層間絶縁膜28に形成されたコンタクトホール28aは、ゲート絶縁膜26に形成されたコンタクトホール26aと連通するように形成されており、当該コンタクトホール26aと共に1つのコンタクトホールとして機能する。このため、以下では、コンタクトホール26aおよびコンタクトホール28aを纏めてコンタクトホール26bともいう。そして、コンタクトホール26bのパターンは、任意であり、例えば複数の正方形のものを配列させたパターン、長方形のライン状のものを配列させたパターン、または、ライン状のものを並べたパターン等が挙げられる。本実施形態では、コンタクトホール26bは、トレンチ25の長手方向に沿ったライン状とされている。
【0045】
層間絶縁膜28上には、コンタクトホール26bを通じてソース領域22およびベース層21と電気的に接続されるソース電極29が形成されている。なお、本実施形態では、ソース電極29が第1電極に相当している。また、本実施形態のソース電極29は、外周領域2のベース層21とも接続されている。そして、層間絶縁膜28上には、コンタクトホール28bを通じてゲート電極27と電気的に接続されるゲート配線30も形成されている。
【0046】
本実施形態のソース電極29は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域22)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、ベース層21)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、ゲート配線30は、ソース電極と同様の構成とされていてもよいし、Al-Si等で構成されていてもよい。
【0047】
さらに、繋ぎ領域2bおよびFLR領域2aを覆うように、ポリイミド等によって構成される保護膜31が形成されている。本実施形態では、保護膜31は、ソース電極29と後述するドレイン電極32との間で沿面放電が発生することを抑制するため、外周領域2からセル領域1の外縁部上まで形成されている。具体的には、保護膜31は、セル領域1において、ソース電極29のうちの外周領域2側の部分を覆いつつ、ソース電極29のうちの内縁側の部分を露出させるように形成されている。
【0048】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続されるドレイン電極32が形成されている。なお、本実施形態では、ドレイン電極32が第2電極に相当している。
【0049】
本実施形態のSiC半導体装置では、このような構造により、セル領域1にnチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。なお、本実施形態では、n型、n型、n型が第1導電型に相当しており、p型、p型、p型が第2導電型に相当している。
【0050】
次に、本実施形態におけるベース層21およびソース領域22のZ軸方向(すなわち、半導体基板10の深さ方向)に沿った濃度プロファイルについて説明する。なお、以下では、ゲート電極27のうちのトレンチ25の底部側に位置する端部を下端部ともいい、ゲート電極27のうちのトレンチ25の開口部側に位置する端部を上端部ともいう。また、以下では、半導体基板10のうちのゲート電極27の下端部に位置する部分と同じ深さに位置する部分を第1深さ位置dLとし、半導体基板10のうちのゲート電極27の上端部に位置する部分と同じ深さに位置する部分を第2深さ位置dUとする。
【0051】
図3に示されるように、本実施形態のベース層21は、Z軸方向において、第1深さ位置dLと第2深さ位置dUとの間に、不純物濃度が極小となる低濃度ピークを有する濃度プロファイルとなるように形成されている。つまり、ベース層21は、深さ方向において、低濃度ピークの前後で不純物濃度の増減が変化する濃度プロファイルとされている。以下、ベース層21の低濃度ピークとなる位置を低濃度ピーク位置P0とする。また、ベース層21において、第1深さ位置dUと低濃度ピーク位置P0との間における不純物濃度が最大となる位置を第1ピーク位置P1とする。ベース層21において、低濃度ピーク位置P0と第2深さ位置dUとの間における不純物濃度が最大となる位置を第2ピーク位置P2とする。つまり、ベース層21は、第1ピーク位置P1の不純物濃度を第1高濃度ピークとし、第2ピーク位置P2の不純物濃度を第2高濃度ピークとすると、低濃度ピーク、第1高濃度ピーク、第2高濃度ピークを有する濃度プロファイルとなるように形成されている。
【0052】
そして、本実施形態のベース層21は、第2ピーク位置P2が第2深さ位置dUと一致するように形成されている。また、ベース層21は、第1ピーク位置P1の不純物濃度(すなわち、第1高濃度ピーク)が、第2ピーク位置P2の不純物濃度(すなわち、第2高濃度ピーク)よりも高くなるように形成されている。なお、このようなベース層21は、具体的には後述するが、加速エネルギを変化させて複数回のイオン注入を行うことで形成される。また、上記のように、第2FLR部24は、濃度プロファイルがベース層21と同じとされている。
【0053】
ソース領域22は、Z軸方向において不純物濃度が徐々に低くなる濃度プロファイルとされている。但し、ソース領域22は、下面(すなわち、Z軸方向におけるベース層21との境界となる位置)がベース層21の第1ピーク位置P1と第2ピーク位置P2との間に位置するように形成されている。言い換えると、ソース領域22の濃度プロファイルは、ベース層21の濃度プロファイルに対し、第1ピーク位置P1と第2ピーク位置P2との間で交差する部分を有する濃度プロファイルとされている。この場合、ソース領域22は、下面が低濃度ピーク位置P0と一致する濃度プロファイルとなるように形成されることが好ましい。なお、本実施形態におけるソース領域22の下面と低濃度ピーク位置P0とが一致するとは、完全に一致する場合に加え、製造上の誤差等によって僅かにずれる場合も含むものである。例えば、ソース領域22の下面と低濃度ピーク位置P0とが一致するとは、ソース領域22の下面が、低濃度ピーク位置P0から第1ピーク位置P1側に、低濃度ピーク位置P0と第1ピーク位置P1との間の長さの10%程度離れた位置と交差する場合も含んでいる。また、例えば、ソース領域22の下面と低濃度ピーク位置P0とが一致するとは、ソース領域22の下面が、低濃度ピーク位置P0から第2ピーク位置P2側に、低濃度ピーク位置P0と第2ピーク位置P2との間の長さの10%程度離れた位置と交差する場合も含んでいる。
【0054】
以上が本実施形態におけるSiS半導体装置の構成である。次に、上記SiC半導体装置の作動および効果について説明する。
【0055】
まず、SiC半導体装置では、ゲート電極27にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース層21に反転層が形成されない。このため、ドレイン電極32に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、ソース領域22からベース層21内に電子が流れず、SiC半導体装置は、ソース電極29とドレイン電極32との間に電流が流れないオフ状態となる。
【0056】
また、SiC半導体装置がオフ状態である場合には、ドレイン-ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜26の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置では、トレンチ25よりも深い位置に、第1ディープ層15およびJFET部14が備えられている。このため、第1ディープ層15およびJFET部14との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線のせり上がりが抑制され、高電界がゲート絶縁膜26に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜26が破壊されることを抑制できる。
【0057】
また、FLR領域2aには、第1FLR部16と第2FLR部24とが形成されている。このため、第1FLR部16および第2FLR部24とドリフト層19との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線が集中することを抑制できる。したがって、FLR領域2aの耐圧の向上を図ることができる。
【0058】
この場合、本実施形態では、第1FLR部16と第2FLR部24とは、Z軸方向において、隣合う第1FLR部16の間に位置する部分と、隣合う第2FLR部24の間に位置する部分とが異なる位置となるように形成されている。このため、さらにドレイン電圧の影響による等電位線が集中することを抑制できる。
【0059】
そして、ゲート電極27に、絶縁ゲート構造における閾値電圧以上の電圧、例えば20Vが印加されると、ベース層21のうちのトレンチ25に接している表面に反転層が形成される。これにより、ソース電極29とドレイン電極32との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。なお、本実施形態では、反転層を通過した電子が電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を通過して基板11へ流れるため、電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を有するドリフト層19が構成されているといえる。
【0060】
ここで、絶縁ゲート構造における閾値電圧は、ベース層21を構成する不純物の実効濃度(以下では、単に実効濃度ともいう)に依存する。そして、図4に示されるように、実効濃度は、濃度プロファイルにおいて、ドリフト層19、ソース領域22、ベース層21で囲まれる領域となる。このため、ソース領域22の深さがばらつくと、実効濃度が変化し、閾値電圧が変化する。例えば、図4に示されるように、ソース領域22の深さがばらついて深くなると、実効濃度が減少するため、閾値電圧が低くなる。この場合、実効濃度は、ベース層21の不純物濃度が高い部分でソース領域22の深さがばらつくと、減少する実効濃度が多くなる。なお、図4は、ベース層21の不純物濃度が半導体基板10の一面10aから所定深さまで一定であるとした場合の図である。
【0061】
したがって、本実施形態では、上記のように、ベース層21は、Z軸方向において、低濃度ピーク、第1高濃度ピーク、第2高濃度ピークを有する濃度プロファイルとされている。そして、ソース領域22は、下面がベース層21の第1ピーク位置P1と第2ピーク位置P2との間に位置する部分と交差する濃度プロファイルとされている。これにより、ソース領域22の深さがばらついたとしても、ソース領域22の下面がベース層21の不純物濃度が高くなる部分と交差する濃度プロファイルとなり難い。したがって、ソース領域22の深さがばらついたとしても実効濃度の変化が小さくなり易く、閾値電圧が変動することを抑制できる。
【0062】
続いて、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について図5A図5Gを参照して説明する。
【0063】
まず、図5Aに示されるように、基板11の表面上に、SiCからなる、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14が形成されたものを用意する。
【0064】
そして、図5Bに示されるように、図示しないマスクを用いてイオン注入を行うことにより、第1ディープ層15および第1FLR部16を形成する。本実施形態では、イオン注入を行うことにより、第1ディープ層15および第1FLR部16を同時に形成する。これにより、第1ディープ層15および第1FLR部16は、下面が同じ深さとされ、厚さが同じとされ、不純物濃度が同じとされる。
【0065】
続いて、図5Cに示されるように、低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、第1FLR部16上に、電流分散層17をエピタキシャル成長させて半導体基板10を構成する。
【0066】
次に、図5Dに示されるように、電流分散層17上に図示しないマスクを用いてp型不純物をイオン注入することにより、第2ディープ層18およびリサーフ層20を形成する。
【0067】
続いて、図5Eに示されるように、電流分散層17上に図示しないマスクを用いてp型不純物をイオン注入することにより、ベース層21および第2FLR部24を同時に形成する。本実施形態では、ベース層21および第2FLR部24を形成する際には、上記のように、低濃度ピーク、第1高濃度ピーク、第2高濃度ピークを有する濃度プロファイルとなるように、ベース層21および第2FLR部24を形成する。具体的には、加速エネルギを変更しながら複数回のイオン注入を行うことにより、このような濃度プロファイルを有するベース層21および第2FLR部24を形成する。
【0068】
次に、図5Fに示されるように、電流分散層17上に図示しないマスクを用いてn型不純物をイオン注入することにより、ソース領域22を形成する。この際、上記のように、下面がベース層21の第1ピーク位置P1と第2ピーク位置P2との間に位置するようにソース領域22を形成する。より好ましくは、下面が低濃度ピーク位置P0と交差するようにソース領域22を形成する。これにより、ソース領域22の深さがばらついたとしても実効濃度の変化が小さくなり易く、閾値電圧が変動することを抑制できる。
【0069】
その後、図5Gに示されるように、詳細な工程については省略するが、所定の半導体製造プロセスを行い、トレンチゲート構造等を形成する。これにより、本実施形態のSiC半導体装置が製造される。
【0070】
以上説明した本実施形態によれば、ベース層21は、深さ方向において、低濃度ピーク、第1高濃度ピーク、第2高濃度ピークを有する濃度プロファイルとされている。そして、ソース領域22は、下面がベース層21の第1ピーク位置P1と第2ピーク位置P2との間に位置する部分と交差する濃度プロファイルとされている。これにより、ソース領域22の深さがばらついたとしても、ソース領域22の下面がベース層21の不純物濃度が高くなる部分と交差する濃度プロファイルとなり難い。したがって、ソース領域22の深さがばらついたとしても実効濃度の変化が小さくなり易く、閾値電圧が変動することを抑制できる。この場合、ソース領域22は、下面がベース層21の低濃度ピーク位置P0と交差するように形成されることにより、さらに閾値電圧が変動することを抑制できる。
【0071】
(1)本実施形態では、第2FLR部24は、ベース層21と同じ濃度プロファイルとされている。このため、第2FLR部24とベース層21とを同じ工程で形成でき、製造工程が増加することを抑制できる。
【0072】
(2)本実施形態では、ドリフト層19の内部に、第2FLR部24と対向する部分を有する第1FLR部16が形成されている。このため、第1FLR部16が形成されていない場合と比較して、ドレイン電圧の影響による等電位線が集中することをさらに抑制でき、FLR領域2aの耐圧の向上を図ることができる。
【0073】
(3)本実施形態では、第1ピーク位置P1の不純物濃度(すなわち、第1高濃度ピーク)が第2ピーク位置P2の不純物濃度(すなわち、第2高濃度ピーク)より高くされている。このため、ベース層21や第2FLR部24における電界集中が発生し易い位置を半導体基板10の一面10aから離れた位置とできる。したがって、特に、FLR領域2aに形成されたゲート絶縁膜26にホットエレクトロンが注入されることを抑制し易くなり、耐圧が変動することを抑制できる。
【0074】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第2ピーク位置P2の場所を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0075】
本実施形態の半導体装置では、図6に示されるように、ベース層21は、第2ピーク位置P2が第2深さ位置dUよりも低濃度ピーク位置P0側となる濃度プロファイルとなるように形成されている。なお、このようなSiC半導体装置は、ベース層21を形成する際に行うイオン注入の加速エネルギを適宜変更することによって形成される。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、ソース領域22は、下面がベース層21の第1ピーク位置P1と第2ピーク位置P2との間に位置する部分と交差する濃度プロファイルとされているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
(1)本実施形態のように、ベース層21は、第2ピーク位置P2が第2深さ位置dUよりも低濃度ピーク位置P0側となる濃度プロファイルとされていてもよい。これによれば、第2ピーク位置P2を詳細に制御しなくてもよくなり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0078】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1高濃度ピーク濃度と第2高濃度ピークの大きさを変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0079】
本実施形態の半導体装置では、図7に示されるように、ベース層21は、第2ピーク位置P2の不純物濃度(すなわち、第2高濃度ピーク)が第1ピーク位置P1の不純物濃度(すなわち、第1高濃度ピーク)よりも高くされている。なお、このようなSiC半導体装置は、ベース層21を形成する際に行うイオン注入の加速エネルギを適宜変更することによって形成される。
【0080】
以上説明した本実施形態によれば、ソース領域22は、下面がベース層21の第1ピーク位置P1と第2ピーク位置P2との間に位置する部分と交差する濃度プロファイルとされているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
(1)本実施形態では、第2ピーク位置P2の不純物濃度(すなわち、第2高濃度ピーク)が第1ピーク位置P1の不純物濃度(第1高濃度ピーク)よりも高くされている。そして、第2FLR部24は、ベース層21と同じ濃度プロファイルとされている。このため、FLR領域2aの耐圧は、第2ピーク位置P2の不純物濃度が支配的となる。したがって、閾値電圧を調整するために第1ピーク位置P1の不純物濃度を変化させたとしても、FLR領域2aの耐圧が変動し難くなるため、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0082】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0083】
例えば、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETを半導体スイッチング素子の一例として説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、他の構造の半導体スイッチング素子、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETとしてもよい。さらに、半導体装置は、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTが形成された構成とされていてもよい。IGBTの場合、上記第1実施形態におけるn型の基板11をP型のコレクタ層に変更する以外は、上記第1実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。
【0084】
また、上記各実施形態では、半導体基板10をSiCで構成した例について説明した。しかしながら、半導体基板10は、シリコン基板や他の化合物半導体基板等を用いて構成されていてもよい。
【0085】
そして、上記各実施形態では、ベース層21の表層部のうちのソース領域22を挟んでトレンチ25と反対側に位置する部分に、ベース層21の一部として、一面10aから露出する部分の表面濃度が高くされたコンタクト領域が形成されていてもよい。
【0086】
また、上記各実施形態では、第1ディープ層15がX軸方向に沿って延設されている例について説明したが、第1ディープ層15がY軸方向に延設されていてもよい。
【0087】
さらに、上記各実施形態では、JFET部14、第1ディープ層15、および第2ディープ層18等を備えない構成としてもよい。また、上記各実施形態では、第1FLR部16や第2FLR部24を備えない構成としてもよい。
【0088】
そして、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよい。例えば、上記第2実施形態を上記第3実施形態に組み合わせ、第2ピーク位置P2を第2深さ位置dUより低濃度ピーク位置P0側としつつ、第2ピーク位置P2の不純物濃度が第1ピーク位置P1の不純物濃度より高くなるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
11 基板(高濃度層)
19 ドリフト層
21 ベース層
22 ソース領域(不純物領域)
25 トレンチ
26 ゲート絶縁膜
27 ゲート電極
29 上部電極(第1電極)
32 下部電極(第2電極)
P0 低濃度ピーク位置
P1 第1ピーク位置
P2 第2ピーク位置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7