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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056698
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】車両のドアハンドル制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20230413BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20230413BHJP
   E05B 81/76 20140101ALI20230413BHJP
【FI】
E05B85/16 D
B60J5/04 H
E05B81/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166064
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】守山 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】倉本 英介
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL01
2E250MM03
2E250PP12
2E250QQ09
2E250SS05
2E250VV02
(57)【要約】
【課題】生産コストを抑制しつつサイドドアの開閉操作性を改善することができる車両のドアハンドル制御装置を提供する。
【解決手段】ドアアウタパネル11の表面に面一になる格納位置から車幅方向外側に出没可能なレバー20と、レバー20の移動位置を検出するポジションスイッチ70aと、レバー20に連動してストライカに係合可能なラッチを有するラッチ機構14と、ラッチがフルラッチ状態か否か検出するラッチスイッチ14aと、レバー20の位置を格納位置から把持位置までの間において変更可能な駆動装置40と、この駆動装置40を制御可能なCPU80とを備え、CPU80は、ラッチがハーフラッチ状態で且つレバー20が格納位置のとき、モータ42を介してレバー20を強制的に把持位置に位置変更させる。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルの表面に面一になる格納位置から車幅方向外側に出没可能なハンドルレバーと、このハンドルレバーの移動位置を検出するハンドルレバー位置検出手段と、前記ハンドルレバーに連動して車体に設けられたストライカに係合可能なラッチを有するラッチ機構と、前記ラッチがフルラッチ状態か否か検出するラッチ状態検出手段と、前記ハンドルレバーの位置を前記格納位置から前記ストライカとラッチとの係合を解除可能な位置までの間において変更可能な位置変更手段と、この位置変更手段を制御可能な制御手段とを備えた車両のドアハンドル制御装置において、
前記制御手段は、前記フルラッチ状態ではなく且つ前記ハンドルレバーが格納位置のとき、前記位置変更手段を介して前記ハンドルレバーを前記ドアパネルの表面から突出させて乗員が把持可能な把持位置に位置変更させることを特徴とする車両のドアハンドル制御装置。
【請求項2】
前記ドアパネルに設けられ且つ乗員が閉鎖された前記ドアパネルを開作動するときに操作するリクエストスイッチを有し、
前記制御手段は、前記フルラッチ状態で且つ前記ハンドルレバーが格納位置のとき、前記リクエストスイッチの操作に基づき前記位置変更手段を介して前記ハンドルレバーを把持位置に位置変更させることを特徴とする請求項1に記載の車両のドアハンドル制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記位置変更手段を介して前記ハンドルレバーが把持位置に位置変更されて所定時間経過後、前記ハンドルレバーを格納位置に位置変更させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のドアハンドル制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ハンドルレバー位置検出手段が前記ハンドルレバーの把持位置を検出したとき、前記位置変更手段による前記ハンドルレバーの位置移動を停止することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の車両のドアハンドル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアハンドル制御装置に関し、特にドアパネルの表面に面一になる格納位置から車幅方向外側に出没可能なハンドルレバーと、このハンドルレバーの動位置を格納位置から変更可能な位置変更手段とを備えた車両のドアハンドル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用サイドドアの意匠性を向上すると共に走行時の空気抵抗を低減するため、ドアパネルの外側表面とハンドルレバーの外側表面とを面一(Flush Surface)にする技術が提案されている。このフラッシュサーフェイスドアのハンドルレバーは、ドアアウタパネルの外側表面と面一になるようにドアパネルの内側に向けて形成された凹部に収容された意匠性重視の格納位置と、この格納位置から車幅方向外側に突出して乗員が手動にて開操作可能な操作性重視の把持位置とに要求に応じて配置位置が変更される。
【0003】
通常、車両用ラッチ機構は、車体側のドア開口後部に設置されたストライカと、このストライカに係合可能なラッチとを有している。このラッチ機構におけるラッチの係合状態は、ストライカとラッチとの係合が完全に解除されたアンラッチ状態、ストライカとラッチとが僅かに係合したハーフラッチ状態、ストライカとラッチとが完全に係合されたフルラッチ状態の3つの状態に区分される。
【0004】
乗員が降車した際、サイドドアを閉操作する乗員の力加減によっては、ラッチ機構がストライカに半係合したハーフラッチ状態、所謂サイドドアが半ドア状態になる虞がある。
そして、半ドア状態である車両は、防犯上のリスクが高くなり、また、立体駐車場における車両の循環移動時、開放されたサイドドアと駐車設備との接触により破損が発生するリスクも存在している。
【0005】
特許文献1の報知装置は、照射された出射光の一部がサイドドアの窓を透過可能な車内灯と、サイドドアの開状態、閉状態、及び半ドア状態を検知する検知部と、この検知部の検知結果に基づき車内灯を制御する制御部とを備え、制御部は、検出された開状態、閉状態、及び半ドア状態に応じて車内灯の点灯様式を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-002027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の報知装置は、乗員がサイドドアを閉操作して車両から離れる際、窓から透過された出射光によりサイドドアの開閉状態(ラッチ係合状態)を乗員に報知することができ、車両降車時、乗員はサイドドアの開閉状態を出射光を介して視覚的に認識することができる。しかし、特許文献1の報知装置では、車内灯の点灯様式を変更する必要があるため、半ドア報知専用の点灯機構を準備することになり、装置全般の構造が複雑化して生産コストが高価になる虞がある。
【0008】
フラッシュサーフェイスドアには、悪戯防止を目的として、ドアの開閉操作後、ハンドルレバーが把持位置から格納位置まで自動的に戻るオートクロージャー機構が存在する。
このオートクロージャー機構が採用された場合、ハンドルレバーが格納位置であるにも拘らずラッチ機構がハーフラッチ状態(半ドア状態)になることがある。
ラッチ機構をハーフラッチ状況からストライカとラッチとが完全に係合されたフルラッチ状態にするには、乗員がサイドドアに設けられたリクエストスイッチを改めて押圧操作してハンドルレバーを格納位置から把持位置に位置変更した後、再度、手動によるドアの開閉操作が必要であり、閉め直すための処理手順が煩雑化する虞がある。
即ち、生産コストを抑制しつつサイドドアの開閉操作性を改善することは容易ではない。
【0009】
本発明の目的は、生産コストを抑制しつつサイドドアの開閉操作性を改善可能な車両のドアハンドル制御装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の車両のドアハンドル制御装置は、ドアパネルの表面に面一になる格納位置から車幅方向外側に出没可能なハンドルレバーと、このハンドルレバーの移動位置を検出するハンドルレバー位置検出手段と、前記ハンドルレバーに連動して車体に設けられたストライカに係合可能なラッチを有するラッチ機構と、前記ラッチがフルラッチ状態か否か検出するラッチ状態検出手段と、前記ハンドルレバーの位置を前記格納位置から前記ストライカとラッチとの係合を解除可能な位置までの間において変更可能な位置変更手段と、この位置変更手段を制御可能な制御手段とを備えた車両のドアハンドル制御装置において、前記制御手段は、前記フルラッチ状態ではなく且つ前記ハンドルレバーが格納位置のとき、前記位置変更手段を介して前記ハンドルレバーを前記ドアパネルの表面から突出させて乗員が把持可能な把持位置に位置変更させることを特徴としている。
【0011】
この車両のドアハンドル制御装置では、ドアパネルの表面に面一になる格納位置から車幅方向外側に出没可能なハンドルレバーを有するため、サイドドアの意匠性を向上することができる。前記制御手段は、前記フルラッチ状態ではなく且つ前記ハンドルレバーが格納位置のとき、前記位置変更手段を介して前記ハンドルレバーを前記ドアパネルの表面から突出させて乗員が把持可能な把持位置に位置変更させるため、新規に専用の報知機構を必要とすることなく、降車した乗員に対してラッチ機構のハーフラッチ状態を視覚的に認識させることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ドアパネルに設けられ且つ乗員が閉鎖された前記ドアパネルを開作動するときに操作するリクエストスイッチを有し、前記制御手段は、前記フルラッチ状態で且つ前記ハンドルレバーが格納位置のとき、前記リクエストスイッチの操作に基づき前記位置変更手段を介して前記ハンドルレバーを把持位置に位置変更させることを特徴としている。
この構成によれば、意匠性(フラッシュサーフェイス化)とサイドドアの開閉操作性とを両立させることができ、既存の機構を流用することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記制御手段は、前記位置変更手段を介して前記ハンドルレバーが把持位置に位置変更されて所定時間経過後、前記ハンドルレバーを格納位置に位置変更させることを特徴としている。
この構成によれば、所定条件下のハンドルレバーの操作を制限することができ、防犯対策を図ることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記制御手段は、前記ハンドルレバー位置検出手段が前記ハンドルレバーの把持位置を検出したとき、前記位置変更手段による前記ハンドルレバーの位置移動を停止することを特徴としている。
この構成によれば、位置変更手段に付与される過剰な負荷を抑制して、位置変更手段の損傷を回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両のドアハンドル制御装置によれば、ラッチとストライカとの係合状態が十分であるフルラッチ状態ではないとき、ハンドルレバーを強制的に把持位置に位置移動することにより、生産コストを抑制しつつサイドドアの操作性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係る車両のドアハンドル制御装置を備えた車両の側面図である。
図2】格納位置のレバーを備えたサイドドアの側面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】駆動装置の平面図である。
図5】ドアハンドル構造とラッチ機構との関係を示す斜視図である。
図6】把持位置のレバーを備えた図3相当図である。
図7】開放位置のレバーを備えた図3相当図である。
図8】ドアハンドル制御装置の制御ブロック図である。
図9】ドアハンドル制御処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【実施例0018】
以下、本発明の実施例1について図1図9に基づいて説明する。
図1に示すように、車両Vは、車室前方部において車体の上下方向に延びるヒンジピラー1と、車体下部において車体前後方向に延びるサイドシル2と、ヒンジピラー1の上端から後方且つ上方に向けて斜め方向に延びるフロントピラー3と、このフロントピラー3の後端に連続して車体後方に延びるルーフサイドレール4と、このルーフサイドレール4とサイドシル2とを車体の略上下方向に連結する後部ピラー5等を備えている。
尚、図において、矢印F方向は前方、矢印OUT方向は車幅方向外方、矢印U方向は上方を夫々示すものとして説明する。
【0019】
ヒンジピラー1、サイドシル2、フロントピラー3、ルーフサイドレール4、及び後部ピラー5で囲繞された部分は、ドア開口部6を形成している。
ヒンジピラー1に上下1対のドアヒンジ7,7を介して開閉可能に取付けられたサイドドア8は、ドア開口部6を開閉すべく構成されている。
【0020】
図1図2に示すように、サイドドア8はドア本体9と、ドアウインド部材としてのドアウインドガラス10とを有している。また、ドア本体9は、ドアアウタパネル11と、ドアインナパネル(図示略)と、ドアアウタパネル11の車幅方向内側且つ後部側に設けられたレインフォースメント12(図3参照)とを備えている。
【0021】
図3に示すように、サイドドア8を開閉するドアハンドル構造は、外側ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の開口部13から車幅方向に出没可能なドアハンドルレバー20(以下、レバーと略す)と、このレバー20を有する湾曲したスワンネック(swan-neck)構造のヒンジアーム30と、レバー20がドアアウタパネル11から突出するようにヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40とを備えている。
また、レバー20を収容しドアパネルに設けられたレインフォースメント12に固定された金属製ブラケット16を備えている。
【0022】
レバー20は、図3に示すアウタカバー21と、インナカバー22とを有し、これらアウタカバー21とインナカバー22との周縁部を凹凸嵌合及び接合固定している。
また、このレバー20及びドアアウタパネル11の開口部13は側面視にて前後方向に長い長円形状に形成されている。
【0023】
図3に示すように、インナカバー22の前側には、組付け時にヒンジアーム30を挿通させる開口23が形成されている。
ヒンジアーム30は、一端(後端)にレバー20を有し、他端(前端)にレバー20がドアアウタパネル11から車幅方向外側に突出するように回動させる回動支軸としてのヒンジピン31を備えている。このヒンジピン31はブラケット16に固定され上下方向に指向して延設されている。
【0024】
図3に示すように、ヒンジアーム30は、ヒンジピン31を枢支する枢支部32と、この枢支部32からスワンネック形状のネック部33を介して後方側に延びるレバー支持部34と、枢支部32からネック部33とは反対側の前方側に延びる延出部35とを一体的に備えている。レバー支持部34は、アウタカバー21とインナカバー22とから成るレバー20の内部に配置されている。
【0025】
図3図4に示すように、ヒンジアーム30の延出部35には、駆動装置40をアセンブリするモータベース41が取付けられている。
また、ヒンジピン31と同軸上には、クランクプレート50が設けられている。このクランクプレート50の後側且つ車幅方向外側部分には、レバー20及びヒンジアーム30が把持位置(図6参照)付近まで回動した時、ヒンジアーム30のネック部33と当接係止される縦壁51が一体形成されている。
【0026】
図3図5に示すように、クランクプレート50の車幅方向内端部には、ラッチ機構14に回動自在に設けられたラッチ(図示略)を車体に設置されたストライカ(図示略)から解除可能なレリーズワイヤ52が固定されている。
クランクプレート50は、バネ力が大きいコイルスプリング37により常時反レリーズ方向にバネ付勢されている。
【0027】
ラッチ機構14は、ドア本体9の後側内部に配置されている。
このラッチ機構14は、ラッチがフルラッチ状態か否か検出可能なラッチスイッチ14a(ラッチ状態検出手段)を備えている。ラッチスイッチ14aは、ラッチの回動位置に基づきストライカに対するラッチの係合状態を判定可能に構成されている。具体的には、ラッチスイッチ14aは、フルラッチ状態、ハーフラッチ状態、アンラッチ状態を夫々検出している。
【0028】
一方、図4に示すように、ヒンジピン31には付勢手段としてのトーションスプリング36が巻回されている。このトーションスプリング36の一端36aが、クランクプレート50に係止され、トーションスプリング36の他端(図示略)が、ヒンジアーム30の延出部35に係止されている。これにより、該トーションスプリング36によりレバー20を常時格納方向にバネ付勢している。このトーションスプリング36のバネ力は、クランクプレート50を反レリーズ方向に付勢するコイルスプリング37(図5参照)のバネ力に対して、小さく設定されている。
【0029】
次に、図4を参照してヒンジアーム30の他端側に動力を伝達する駆動装置40の構成について説明する。駆動装置40はヒンジピン31と同軸上に固定されたセクタギヤG1(扇形歯車)を備えている。このセクタギヤG1はヒンジピン31に嵌合されると共に、ブラケット16に取付けられていて、位置不変に形成されている。つまり、このセクタギヤG1は回動しないように構成されている。
【0030】
モータベース41には可逆モータであるモータ42(位置変更手段)が取付けられている。このモータ42の回転軸43には出力ギヤG2が嵌合されている。モータベース41に設けられた軸44にはピニオンギヤG3を備えたアイドルギヤG4が設けられている。また、モータベース41に設けられた別の軸45には、ピニオンギヤG5を備えた従動ギヤG6が設けられている。
【0031】
図4に示すように、出力ギヤG2はアイドルギヤG4と噛合している。ピニオンギヤG3は従動ギヤG6と噛合している。ピニオンギヤG5はセクタギヤG1と噛合している。これにより、モータ42をレバー20の突出方向に駆動(正転駆動)して、その回転軸43および出力ギヤG2を、図4の反時計方向に回転させると、各ギヤG2,G4,G3,G6をこの順に介してピニオンギヤG5が図7の反時計方向に回転する。
【0032】
ピニオンギヤG5が図4の反時計方向に回転すると、セクタギヤG1は位置不変であるから、各要素G2~G6から成る歯車列46と、モータ42と、モータベース41とは、セクタギヤG1の扇形状に沿ってレバー20を突出方向に移動し、ヒンジアーム30を介してレバー20を突出させる。
【0033】
レバー20は、そのアウタカバー21がドアアウタパネル11と面一になる格納位置(図3参照)と、駆動装置40によりレバー20の格納位置において面一になる意匠面全体がドアアウタパネル11から突出(ポップアップ)して乗員が把持可能な把持位置(ポップアップ位置)(図6参照)と、この把持位置よりもさらに車幅方向外側に突出する開放位置(図7参照)との間で回動可能に構成されている。
本実施形態では、把持位置がストライカとラッチとの係合を解除可能な位置に相当している。
【0034】
駆動装置40は、レバー20を格納位置から把持位置までに亙って回動することができる。また、ヒンジアーム30が図3に示す格納位置から図6に示す把持位置に達するまでの間においては、クランクプレート50はヒンジピン31回りに回動することなく、バネ力の強いコイルスプリング37により反レリーズ方向に付勢されている。
【0035】
図6に示す把持位置において、レバー20がドアアウタパネル11から所定量車幅方向外側に突出しているため、乗員が指先でレバー20を把持することができる。
更に、把持位置から開放位置(図7参照)までの位置移動は、乗員が手動によってレバー20を開放することで行われる。
【0036】
図6に示すように、ヒンジアーム30が把持位置に達すると、ヒンジアーム30のネック部33がクランクプレート50の縦壁51に接近する。
更に、レバー20が、コイルスプリング37のバネ力に抗して開放方向に回動操作されると、ネック部33と縦壁51が当接してクランクプレート50がレリーズ方向に回動する。最終的に、ストライカに対するラッチの係合は、レリーズワイヤ52を介して解除される。尚、ネック部33と縦壁51との当接は、把持位置のタイミングであっても良く、把持位置以降のタイミングであっても良い。
【0037】
図3に示すように、スイッチユニット60は、レバー20の後端部、具体的には、インナカバー22の後端部と対向するブラケット16の後端側の車幅方向内側部分に配置されている。このスイッチユニット60は、内部にリクエストスイッチ60aを備えている。
レバー20後端部の押圧操作時、レバー20を介してリクエストスイッチ60aがON操作され、モータ42への通電が行なわれる。
【0038】
また、スイッチユニット60の前側近傍におけるブラケット16にはキーシリンダ15が配置されている。更に、図3に示すように、レバー20の格納位置において、ヒンジアーム30のネック部33とキーシリンダ15との間のブラケット16の所定位置には、ヒンジアーム30を把持位置で仮保持する仮保持機構70が配設されている。
【0039】
仮保持機構70は、付勢手段としてのトーションスプリング36の付勢力に抗してヒンジアーム30を機械的に保持している。この仮保持機構70は、ヒンジアーム30をレバー20が把持位置になる位置に保持すると共に、乗員の手動によるレバー20の格納方向または開放方向への動きを許容している。
【0040】
レバー20はヒンジアーム30のレバー支持部34に対して揺動可能に設けられている。それ故、格納位置にあるレバー20の後端部を車幅方向外方から押圧すると、レバー20の後端部が車幅方向内側に揺動変位して、スイッチユニット60内のリクエストスイッチ60aをON操作するスイッチ押圧位置となる。
【0041】
仮保持機構70は、ヒンジアーム30の停止位置をレバー20の把持位置で仮保持するための機構である。この仮保持機構70は、把持位置においてヒンジアーム30を押圧力を用いて係止するヒンジアーム係止部としてのローラ75と、把持位置においてレバー20が当該把持位置に位置することを検出可能なポジションスイッチ70a(ハンドルレバー位置検出手段)とを備えている。このような仮保持機構70を設けることで、モータ42の駆動を電気的に継続しなくても、図6に示す把持位置で、ヒンジアーム30を機械的に仮保持可能に構成している。
【0042】
次に、図8を参照して車両のドアハンドル制御装置の構成について説明する。
図8は車両のドアハンドル制御装置の制御ブロック図である。
ポジションスイッチ70aと駆動装置40のモータ42とに接続される制御手段としてのCPU80を設けている。このCPU80の入力側にはラッチスイッチ14aとリクエストスイッチ60aとポジションスイッチ70aとが接続されており、CPU80の出力側にはモータ42が接続されている。
【0043】
CPU80は、ラッチスイッチ14a、リクエストスイッチ60a及びポジションスイッチ70aからの入力信号に基づき、ROM81に格納されたプログラムに従ってモータ42を駆動制御する。また、RAM82は、必要なデータを読出し可能に記憶する。
尚、CPU80は、レバー20が把持位置に位置移動されたとき、位置変更された時点から経過時間を測定するタイマ手段(図示略)を有している。
【0044】
CPU80は、ラッチがフルラッチ状態で且つレバー20が格納位置のとき、リクエストスイッチ60aの押圧操作に基づき駆動装置40(モータ42)を介してレバー20を把持位置に位置移動させるように構成されている。また、このCPU80は、レバー20の開放方向への移動開始後、ポジションスイッチ70aがレバー20の把持位置を検出したとき、駆動装置40によるレバー20の位置変更を停止する。
【0045】
CPU80は、駆動装置40(モータ42)を介してレバー20が把持位置に位置変更された後において所定時間(例えば、5分)経過した際、レバー20を把持位置から格納位置に位置変更させるように構成されている。また、このCPU80は、ラッチがフルラッチ状態ではなく且つレバー20が格納位置のとき、駆動装置40(モータ42)を介してレバー20をアウタパネル11の表面から突出させて乗員が指先にて把持可能な把持位置に位置移動させている。
【0046】
次に、図9のフローチャートに基づいて、ドアハンドル制御処理について説明する。
尚、Si(i=1,2…)は、各処理のためのステップを示す。
まず、図9に示すように、CPU80は、各スイッチ14a,60a,70a等の検出信号及びタイマ手段による計測値等の各種情報を読み込み(S1)、S2へ移行する。
S2では、リクエストスイッチ60aが押圧操作によりON操作されたか否か判定する。
S2の判定の結果、リクエストスイッチ60aがON操作された場合、乗員によるサイドドア8の開要求が有るため、S3に移行する。
【0047】
S3では、レバー20が格納位置か否か判定する。
S3の判定の結果、レバー20が格納位置である場合、レバー20の位置を把持位置に変更するため、モータ42に対して正転通電した後(S4)、S5へ移行する。
S3の判定の結果、レバー20が格納位置ではない場合、レバー20が、少なくとも、ドアアウタパネル11よりも車幅方向外側に突出しているため、S1にリターンする。
【0048】
S5では、レバー20が把持位置か否か判定する。
S5の判定の結果、正転方向に回動されたレバー20が把持位置である場合、乗員が指先によってレバー20を操作できるため、モータ42に対する通電を遮断した後(S6)、S7へ移行する。S5の判定の結果、正転方向に回動されたレバー20が把持位置ではない場合、乗員がレバー20を把持できないため、更にレバー20を車幅方向外側に突出させるように、S4にリターンする。
【0049】
S7では、レバー20が把持位置に位置変更されてから設定時間、例えば、5分経過したか否か判定する。
S7の判定の結果、レバー20が把持位置に位置変更されてから設定時間経過した場合、悪戯防止を狙いとしてレバー20を格納位置に戻す必要があるため、モータ42に対して逆転通電した後(S10)、S11へ移行する。S7の判定の結果、レバー20が把持位置に位置変更されてから設定時間経過していない場合、未だ乗員によるレバー20の操作が継続している可能性があるため、S1にリターンする。
【0050】
S11では、レバー20が格納位置か否か判定する。
S11の判定の結果、逆転方向に回動されたレバー20が格納位置である場合、レバー20の位置移動を停止するため、モータ42に対する通電を遮断した後(S12)、制御処理を終了する。S11の判定の結果、逆転方向に回動されたレバー20が格納位置ではない場合、レバー20の位置移動を継続するため、S10にリターンする。
【0051】
S2の判定の結果、リクエストスイッチ60aがON操作されていない場合、乗員によるサイドドア8の開要求が存在していないため、S8に移行する。
S8では、ラッチがストライカに対して完全に係合、所謂フルラッチ状態か否か判定する。S8の判定の結果、ラッチがフルラッチ状態の場合、乗員によってサイドドア8の閉操作が行われたと予想されるため、S9に移行する。
【0052】
S9では、レバー20が格納位置か否か判定する。
S9の判定の結果、レバー20が格納位置の場合、既にレバー20の位置移動が不要であるため、制御処理を終了する。S9の判定の結果、レバー20が格納位置ではない場合、レバー20がドアアウタパネル11の表面よりも車幅方向外側に突出しているため、S10に移行してレバー20を格納位置に位置変更する。
【0053】
S8の判定の結果、ラッチがフルラッチ状態ではない、所謂半ドア状態の場合、S3に移行してレバー20の位置を判定する。本実施形態のように、レバー20が把持位置から格納位置まで自動的に戻るオートクロージャー機構を搭載した車両Vの場合、レバー20が格納位置であっても、ラッチ機構がハーフラッチ状態になっていることがある。
そこで、ハーフラッチ状態で且つ格納位置である場合、モータ42に対して正転通電(S4)して、レバー20を強制的に把持位置に位置変更する。これにより、降車した乗員に対してサイドドア8のハーフラッチ状態を視覚的に認識させている。
【0054】
即ち、正常に閉鎖されたサイドドア8の開操作時は、リクエストスイッチ60aの判定(S2)→格納位置の判定(S3)→モータ42の正転通電(S4)の順に実行する。
一方、サイドドア8の半ドア状態の報知動作時は、リクエストスイッチ60aのON操作がないことを前提として、フルラッチ状態の判定(S8)→格納位置の判定(S3)→モータ42の正転通電(S4)の順に実行する。これにより、専用の報知機構を必要とすることなく、ハーフラッチ状態を乗員に認識させることができる。
【0055】
次に、車両Vのドアハンドル制御装置の作用、効果について説明する。
このドアハンドル制御装置によれば、ドアアウタパネル11の表面に面一になる格納位置から車幅方向外側に出没可能なレバー20を有するため、サイドドア8の意匠性を向上することができる。CPU80は、ラッチがハーフラッチ状態で且つレバー20が格納位置のとき、駆動装置40を介してレバー20をドアアウタパネル11の表面から突出させて乗員が把持可能な把持位置に位置変更させるため、新規に専用の報知機構を必要とすることなく、降車した乗員に対してハーフラッチ状態を視覚的に認識させることができる。
【0056】
ドアアウタパネル11に設けられ且つ乗員が閉鎖されたドアアウタパネル11を開作動するときに操作するリクエストスイッチ60aを有し、CPU80は、ラッチがフルラッチ状態で且つレバー20が格納位置のとき、リクエストスイッチ60aの操作に基づき駆動装置40を介してレバー20を把持位置に位置変更させている。これにより、サイドドア8の意匠性、特に、フラッシュサーフェイス化と、サイドドア8の開閉操作性とを両立させることができ、既存の機構を流用することができる。
【0057】
CPU80は、駆動装置40を介してレバー20が把持位置に位置変更されて所定時間経過後、レバー20を格納位置に位置変更させるため、所定条件下のレバー20の操作を制限することができ、防犯対策を図ることができる。
【0058】
CPU80は、ポジションスイッチ70aがレバー20の把持位置を検出したとき、駆動装置40によるレバー20の位置移動を停止するため、駆動装置40に付与される過剰な負荷を抑制して、位置変更手段の損傷を回避することができる。
【0059】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、ラッチスイッチ14aが、フルラッチ状態、ハーフラッチ状態、アンラッチ状態の3つの状態を検出可能な例を説明したが、ラッチスイッチ14aをフルラッチ状態とそれ以外の状態、或いはフルラッチ状態とアンラッチ状態の2つの状態を検出可能に構成しても良い。これにより、少なくとも、サイドドア8の半ドア状態を検出することが可能である。
【0060】
2〕前記実施形態においては、ストライカとラッチとの係合を解除可能な位置と把持位置とが同じ位置である例を説明したが、ストライカとラッチとの係合が解除可能な位置を把持位置よりも車幅方向外側(開放方向側)に設定しても良い。これにより、制御バリエーションを広くすることができる。
【0061】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0062】
8 サイドドア
11 ドアアウタパネル
14 ラッチ機構
14a ラッチスイッチ
20 レバー
40 駆動装置
60a リクエストスイッチ
70a ポジションスイッチ
80 CPU
V 車両
図1
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図9