(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056710
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230413BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230413BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230413BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230413BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/205
H01L21/31 C
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166081
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004BD04
5F045AA08
5F045BB08
5F045EF05
5F045EH14
5F045EJ03
5F045EK07
5F045EM02
5F045EM05
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5F131AA02
5F131BA04
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5F131CA02
5F131CA09
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5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB17
5F131EB18
5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
5F131JA33
(57)【要約】
【課題】抜熱能力が高く破損が生じにくいウエハ載置台の製造コストを低減する。
【解決手段】ウエハ載置台10は、上面にウエハ載置面22aを有し、電極26を内蔵するセラミック基材20と、内部に冷媒流路38が形成された冷却基材30と、セラミック基材20の下面と冷却基材30の上面とを接合する金属接合層40と、を備える。冷却基材30は、冷媒流路38の天井を構成する金属マトリックス複合材料製又は低熱膨張金属材料製の天井基材81と、冷媒流路38との底及び側壁を構成する流路溝88が上面に設けられセラミック基材20と主成分が同じセラミック材料製の溝付き基材83と、天井基材81の下面と溝付き基材83の上面とを接合する金属製の天井接合層82と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
内部に冷媒流路が形成された冷却基材と、
前記セラミック基材の下面と前記冷却基材の上面とを接合する金属接合層と、
を備え、
前記冷却基材は、前記冷媒流路の天井を構成する金属マトリックス複合材料製又は低熱膨張金属材料製の天井基材と、前記冷媒流路の底及び側壁を構成する流路溝が上面に設けられ前記セラミック基材と主成分が同じセラミック材料製の溝付き基材と、前記天井基材の下面と前記溝付き基材の上面とを接合する金属製の天井接合層と、を有する、
ウエハ載置台。
【請求項2】
前記天井基材を構成する金属マトリックス複合材料又は低熱膨張金属材料及び前記溝付き基材を構成するセラミック材料は、前記セラミック基材を構成するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下である、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記セラミック基材を構成するセラミック材料はアルミナであり、前記溝付き基材を構成するセラミック材料は前記セラミック基材を構成するアルミナよりも純度の低いアルミナである、請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
内部に冷媒流路が形成された冷却基材と、
前記セラミック基材の下面と前記冷却基材の上面とを接合する金属接合層と、
を備え、
前記冷却基材は、前記冷媒流路の天井を構成する金属マトリックス複合材料製又は低熱膨張金属材料製の天井基材と、前記冷媒流路の側壁を構成する流路穴が上下方向に貫通し前記セラミック基材と主成分が同じセラミック材料製の穴あき基材と、前記冷媒流路の底を構成する底基材と、前記天井基材の下面と前記穴あき基材の上面とを接合する金属製の天井接合層と、前記穴あき基材の下面と前記底基材の上面とを接合する底接合層と、を有する、
ウエハ載置台。
【請求項5】
前記底基材は金属マトリックス複合材料製又は低熱膨張金属材料製であり、前記底接合層は金属製である、請求項4に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記天井基材を構成する金属マトリックス複合材料又は低熱膨張金属材料及び前記穴あき基材を構成するセラミック材料は、前記セラミック基材を構成するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下である、
請求項4又は5に記載のウエハ載置台。
【請求項7】
前記セラミック基材を構成するセラミック材料はアルミナであり、前記穴あき基材を構成するセラミック材料は前記セラミック基材を構成するアルミナよりも純度の低いアルミナである、請求項4~6のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電吸着用電極を埋設したアルミナなどのセラミック基材と、アルミニウムなどの金属からなる冷却基材とを、樹脂層を介して接合したウエハ載置台が知られている(例えば特許文献1参照)。こうしたウエハ載置台によれば、樹脂層によってセラミック基材と冷却基材との熱膨張差の影響を緩和することができる。樹脂層の代わりに金属接合層を用いてセラミック基材と冷媒流路を備えた冷却基材とを接合したウエハ載置台も知られている(例えば特許文献2,3)。金属接合層は、樹脂層に比べて熱伝導率が高いため、ハイパワープラズマでウエハを処理する場合に要求される抜熱能力を実現することができる。その一方、金属接合層は、樹脂層に比べてヤング率が大きく応力緩和性が低いため、セラミック基材と冷却基材との熱膨張差の影響を緩和することがほとんどできない。特許文献2,3では、熱膨張差による破損を生じにくくするため、冷却基材の材料として、セラミック基材と熱膨張係数差の小さい金属マトリックス複合材料(MMC)を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-287344号公報
【特許文献2】特許第5666748号公報
【特許文献3】特許第5666749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、MMCはアルミニウムなどの金属よりも、高価であり、難加工性で冷媒流路の形成コストも高いため、ウエハ載置台の製造コストが高くなることがあった。また、MMCに代えて、セラミック基材と熱膨張係数差の小さい低熱膨張金属材料を用いることも考えられるが、低熱膨張金属材料も高価であり、難加工性で冷媒流路の形成コストも高いため、ウエハ載置台の製造コストが高くなることがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、抜熱能力が高く破損が生じにくいウエハ載置台の製造コストを低減することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
内部に冷媒流路が形成された冷却基材と、
前記セラミック基材の下面と前記冷却基材の上面とを接合する金属接合層と、
を備え、
前記冷却基材は、前記冷媒流路の天井を構成する金属マトリックス複合材料製又は低熱膨張金属材料製の天井基材と、前記冷媒流路の底及び側壁を構成する流路溝が上面に設けられ前記セラミック基材と主成分が同じセラミック材料製の溝付き基材と、前記天井基材の下面と前記溝付き基材の上面とを接合する金属製の天井接合層と、を有するものである。
【0007】
本発明の第1のウエハ載置台では、冷却基材のうち、天井基材にはMMC又は低熱膨張金属材料を用いる一方、溝付き基材には比較的安価で、ニアネットシェイプ技術などにより比較的低コストで流路溝を形成可能なセラミック材料を用いている。このため、ウエハ載置台の製造コストを低減できる。また、セラミック基材-天井基材間及び天井基材-溝付き基材間の接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属製の接合層を用いている。このため、ウエハから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。さらに、溝付き基材を構成するセラミック材料の主成分がセラミック基材を構成するセラミック材料の主成分と同じであるため、溝付き基材は、セラミック基材との線熱膨張係数差の絶対値が小さい。このため、セラミック基材、天井基材及び溝付き基材は、相互の線熱膨張係数差の絶対値が小さく、接合層の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0008】
なお、本明細書では、低熱膨張金属材料とは、40~400℃の線熱膨張係数が10×10-6/K以下の金属材料をいい、9.0×10-6/K以下が好ましく、8.0×10-6/K以下がより好ましい。また、本明細書では、40℃と400℃の長さを測定して求めた線熱膨張係数を、40~400℃の線熱膨張係数と称する。また、本明細書では、主成分とは、含まれる成分全体のうち50質量%以上を占める成分をいい、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。また、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、ウエハ載置台の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
本発明の第1のウエハ載置台において、前記天井基材を構成する金属マトリックス複合材料又は低熱膨張金属材料及び前記溝付き基材を構成するセラミック材料は、前記セラミック基材を構成するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であるものとしてもよい。こうすれば、接合層の応力緩和性が低くても、支障がより生じにくい。
【0010】
本発明の第1のウエハ載置台において、前記セラミック基材を構成するセラミック材料はアルミナであり、前記溝付き基材を構成するセラミック材料は前記セラミック基材を構成するアルミナよりも純度の低いアルミナであるものとしてもよい。こうすれば、溝付き基材をより低コストで製造できる。
【0011】
本発明の第2のウエハ載置台は、
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
内部に冷媒流路が形成された冷却基材と、
前記セラミック基材の下面と前記冷却基材の上面とを接合する金属接合層と、
を備え、
前記冷却基材は、前記冷媒流路の天井を構成する金属マトリックス複合材料製又は低熱膨張金属材料製の天井基材と、前記冷媒流路の側壁を構成する流路穴が上下方向に貫通し前記セラミック基材と主成分が同じセラミック材料製の穴あき基材と、前記冷媒流路の底を構成する底基材と、前記天井基材の下面と前記穴あき基材の上面とを接合する金属製の天井接合層と、前記穴あき基材の下面と前記底基材の上面とを接合する底接合層と、を有するものである。
【0012】
本発明の第2のウエハ載置台では、冷却基材のうち、天井基材にはMMC又は低熱膨張金属材料を用いる一方、穴あき基材には比較的安価で、ニアネットシェイプ技術などにより比較的低コストで流路穴を形成可能なセラミック材料を用いている。このため、ウエハ載置台の製造コストを低減できる。また、セラミック基材-天井基材間及び天井基材-穴あき基材間の接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属製の接合層を用いている。このため、ウエハから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。さらに、穴あき基材を構成するセラミック材料の主成分がセラミック基材を構成するセラミック材料の主成分と同じであるため、穴あき基材は、セラミック基材との線熱膨張係数差の絶対値が小さい。このため、セラミック基材、天井基材及び穴あき基材は、相互の線熱膨張係数差の絶対値が小さく、接合層の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0013】
本発明の第2のウエハ載置台において、前記底基材は金属マトリックス複合材料製又は低熱膨張金属材料製であり、前記底接合層は金属製であるものとしてもよい。こうすれば、セラミック基材を構成する材料と底基材を構成する材料との線熱膨張係数差の絶対値が小さいため、セラミック基材と天井基材や穴あき基材との線熱膨張係数差の影響や、天井基材や穴あき基材と底基材との線熱膨張係数差の影響がキャンセルされ、ウエハ載置台10の反りや破損を抑制できる。そのため、天井基材や穴あき基材を構成する材料の自由度が高まる。また、穴あき基材と底基材とを金属製の接合層で接合するため、セラミック基材と天井基材との接合や、天井基材と穴あき基材との接合と同時に穴あき基材と底基材との接合を行うことができ、ウエハ載置台を効率よく製造できる。
【0014】
本発明の第2のウエハ載置台において、前記天井基材を構成する金属マトリックス複合材料又は低熱膨張金属材料及び前記穴あき基材を構成するセラミック材料を構成する金属マトリックス複合材料は、前記セラミック基材を構成するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であるものとしてもよい。こうすれば、接合層の応力緩和性が低くても、支障がより生じにくい。
【0015】
本発明の第2のウエハ載置台において、前記セラミック基材を構成するセラミック材料はアルミナであり、前記穴あき基材を構成するセラミック材料は前記セラミック基材を構成するアルミナよりも純度の低いアルミナであるものとしてもよい。こうすれば、穴あき基材をより低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
【
図3】ウエハ載置台10を溝付き基材83の上面で切断した断面を上からみたときの断面図。
【
図6】ウエハ載置台10の別の実施形態の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態のウエハ載置台10を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、
図2はウエハ載置台10の平面図、
図3はウエハ載置台10を溝付き基材83の上面で切断した断面を上からみたときの断面図である。本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0018】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、冷却基材30と、金属接合層40とを備えている。
【0019】
セラミック基材20は、円形のウエハ載置面22aを有する中央部22の外周に、環状のフォーカスリング載置面24aを有する外周部24を備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。ウエハ載置面22aには、ウエハWが載置され、FR載置面24aには、フォーカスリング78が載置される。セラミック基材20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。FR載置面24aは、ウエハ載置面22aに対して一段低くなっている。
【0020】
セラミック基材20の中央部22は、ウエハ載置面22aに近い側に、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。ウエハ吸着用電極26は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極26は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電電極である。セラミック基材20のうちウエハ吸着用電極26よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極26には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54を介して接続されている。給電端子54は、冷却基材30及び金属接合層40を上下方向に貫通する貫通穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミック基材20の下面からウエハ吸着用電極26に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極26との間には、ローパスフィルタ(LPF)53が設けられている。
【0021】
冷却基材30は、セラミック基材20よりも大径の円板部材であり、セラミック基材20が配置された内周部32と、セラミック基材20の外周からはみ出した外周部34とを有している。冷却基材30は、天井基材81と、溝付き基材83と、天井接合層82と、を備えている。冷却基材30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路38を備えている。冷媒流路38は、セラミック基材20が配置された全域に行き渡るように、入口38aから出口38bまで渦巻状に設けられている(
図3)。冷媒流路38の入口38a及び出口38bは、溝付き基材83を上下方向に貫通して冷媒流路38の底面に開口している。冷媒流路38の入口38a及び出口38bは、図示しない冷媒冷却装置に接続されており、出口38bから排出された冷媒は、冷媒冷却装置で温度調整されたあと再び入口38aに戻されて冷媒流路38内に供給される。
【0022】
天井基材81は、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC)ともいう)製の円板部材である。天井基材81は、冷媒流路38の天井を構成する。天井基材81に使用するMMCは、セラミック基材20に使用するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であることが好ましく、1.0×10-6/K以下であることがより好ましく、0.5×10-6/K以下であることが更に好ましい。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。セラミック基材20がアルミナ基材の場合、天井基材81に用いるMMCとしてはAlSiCやSiSiCTiなどが好ましい。40~400℃の線熱膨張係数は、アルミナが7.2×10-6/Kであり、AlSiC(SiC75%)が7.8×10-6/Kであり、SiSiCTiが7.3×10-6/Kである。セラミック基材20が窒化アルミニウム基材の場合、天井基材81に用いるMMCとしてはAlSiCやSiSiCなどが好ましい。40~400℃の線熱膨張係数は、窒化アルミニウムが4.6×10-6/Kであり、AlSiC(SiC85%)が5.6×10-6/Kである。天井基材81は、金属接合層40及び金属製の天井接合層82と共にプラズマ発生用の高周波(RF)電極としても機能する。給電端子64は、溝付き基材83及び天井接合層82を上下方向に貫通する貫通穴66を通過して、天井基材81の下面に至るように設けられている。天井基材81とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。
【0023】
溝付き基材83は、セラミック材料製の円板部材である。
図3に示すように、溝付き基材83の上面には、冷媒流路38の底及び側壁を構成する流路溝88が設けられている。溝付き基材83に使用するセラミック材料は、セラミック基材20に使用するセラミック材料と主成分が同じである。主成分とは、含まれる成分全体のうち50質量%以上を占める成分をいい、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。主成分が同じセラミック材料同士では線熱膨張係数差の絶対値が小さい。溝付き基材83を構成するセラミック材料は、セラミック基材20を構成するセラミック材料と主成分が同じで、純度が低い材料としてもよい。例えば、セラミック基材20には、誘電体層としての電気的特性向上の観点から純度の高いアルミナ(例えばアルミナ99%以上)を用い、溝付き基材83には、靱性などの機械的特性向上やコスト低減の観点から純度の低いアルミナ(例えばアルミナ95%)を用いてもよい。純度が低い材料は、純度が高い材料よりも、SiO
2などのガラス質を多く含むものとしてもよい。溝付き基材83に使用するセラミック材料は、セラミック基材20に使用するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10
-6/K以下であることが好ましく、1.0×10
-6/K以下であることがより好ましく、0.5×10
-6/K以下であることが更に好ましい。溝付き基材83に使用するセラミック材料は、天井基材81に使用するMMCとの40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10
-6/K以下であることが好ましく、1.0×10
-6/K以下であることがより好ましく、0.5×10
-6/K以下であることが更に好ましい。
【0024】
天井接合層82は、天井基材81の下面と溝付き基材83の上面とを接合する金属製の接合層である。天井接合層82は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。天井接合層82は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。天井接合層82の材質は、金属接合層40の材質と同じとしてもよい。
【0025】
金属接合層40は、セラミック基材20の下面と冷却基材30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCBにより形成される。
【0026】
セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の外周及び冷却基材30の側面は、絶縁膜42で被覆されている。絶縁膜42としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。
【0027】
こうしたウエハ載置台10は、チャンバ94の内部に設けられた設置板96にクランプ部材70を用いて取り付けられる。クランプ部材70は、断面が略逆L字状の環状部材であり、内周段差面70aを有する。ウエハ載置台10と設置板96とは、クランプ部材70によって一体化されている。ウエハ載置台10の冷却基材30の外周部34に、クランプ部材70の内周段差面70aを載置した状態で、クランプ部材70の上面からボルト72が差し込まれて設置板96の上面に設けられたネジ穴に螺合されている。ボルト72は、クランプ部材70の円周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所(例えば8箇所とか12箇所)に取り付けられる。クランプ部材70やボルト72は、絶縁材料で作製されていてもよいし、導電材料(金属など)で作製されていてもよい。
【0028】
次に、ウエハ載置台10の製造例を
図4を用いて説明する。
図4はウエハ載置台10の製造工程図である。まず、セラミック基材20の元となる円板状のセラミック焼結体120を、セラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(
図4A)。セラミック焼結体120は、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。次に、セラミック焼結体120の下面からウエハ吸着用電極26まで穴27をあけ(
図4B)、その穴27に給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極26とを接合する(
図4C)。
【0029】
これと並行して、MMC円板部材181と、上面に流路溝88が形成されたセラミック材料製の溝付き円板部材183とを作製する(
図4D)。続いて、MMC円板部材181に上下方向に貫通する貫通穴131を形成し、溝付き円板部材183に上下方向に貫通する貫通穴132,66及び上下方向に貫通し流路溝88の底面に開口する入口38a,出口38bを形成し、MMC円板部材181の下面のうち貫通穴66に対向する位置に給電端子64を接合する(
図4E)。セラミック焼結体120がアルミナ製の場合、MMC円板部材181はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。アルミナの熱膨張係数とSiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数とは、概ね同じだからである。また、セラミック焼結体120がアルミナ製の場合、溝付き円板部材183はセラミック焼結体120よりも純度の低いアルミナ製であることが好ましい。溝付き円板部材183は、例えばニアネットシェイプ技術で作製することができる。
【0030】
SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0031】
ニアネットシェイプ技術を用いて溝付き円板部材183を作製する場合、例えば以下のように作製することができる。すなわち、焼成後に溝付き基材83の形状となるような所定形状の成形体を複数枚のセラミックグリーンシートを積層して作製し、その成形体を常圧焼成することによって、溝付き基材83を得ることができる。なお、成形体は、モールドキャストによって作製してもよいし、光造形などを利用した3Dプリンタによって作製してもよい。また、成形体は、溝なしの円板成形体を作製したあと流路溝88に対応する溝を切削などで形成することによって作製してもよい。
【0032】
次に、MMC円板部材181の上面及び溝付き円板部材183の上面にそれぞれ金属接合材を配置する。各金属接合材には、必要な貫通穴を設けておく。そして、MMC円板部材181の給電端子64を溝付き円板部材183の貫通穴66に挿入し、MMC円板部材181を溝付き円板部材183の上面に配置された金属接合材の上に載せる。さらに、セラミック焼結体120の給電端子54をMMC円板部材181の貫通穴131及び溝付き円板部材183の貫通穴132に挿入し、セラミック焼結体120をMMC円板部材181の上面に配置された金属接合材の上に載せる。これにより、溝付き円板部材183と金属接合材とMMC円板部材181と金属接合材とセラミック焼結体120とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、接合体110を得る(
図4F)。接合体110は、冷却基材30の元となるMMC/セラミックブロック130の上面に、金属接合層140を介してセラミック焼結体120が接合されたものである。MMC/セラミックブロック130は、MMC円板部材181と溝付き円板部材183とが金属製の天井接合層182を介して接合されたものである。MMC/セラミックブロック130は、内部に冷媒流路38を有する。
【0033】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0034】
続いて、セラミック焼結体120の外周を切削して段差を形成することにより、中央部22と外周部24とを備えたセラミック基材20とする。また、金属接合層140及びMMC/セラミックブロック130の外周を必要に応じて切削することにより、金属接合層40及び冷却基材30とする。このとき、冷却基材30の外周部34がセラミック基材20の外周からはみ出るようにする。また、貫通穴131,132、金属接合層40の穴及び天井接合層82の穴に、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する。更に、セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の周囲及び冷却基材30の側面を、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜42を形成する(
図4G)。これにより、ウエハ載置台10を得る。
【0035】
次に、ウエハ載置台10の使用例について
図1を用いて説明する。チャンバ94の設置板96には、上述したようにウエハ載置台10がクランプ部材70によって固定されている。チャンバ94の天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバ94の内部へ放出するシャワーヘッド98が配置されている。
【0036】
ウエハ載置台10のFR載置面24aには、フォーカスリング78が載置され、ウエハ載置面22aには、円盤状のウエハWが載置される。フォーカスリング78は、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。この状態で、ウエハ吸着用電極26にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面22aに吸着させる。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド98からプロセスガスを供給しながら、天井基材81にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド98との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリング78も消耗するが、フォーカスリング78はウエハWに比べて厚いため、フォーカスリング78の交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0037】
以上説明した第1実施形態のウエハ載置台10では、冷却基材30のうち、天井基材81にはMMCを用いる一方、溝付き基材83には比較的安価で、ニアネットシェイプ技術などにより比較的低コストで流路溝88を形成可能なセラミック材料を用いている。このため、ウエハ載置台の製造コストを低減できる。また、セラミック基材20-天井基材81間及び天井基材81-溝付き基材83間の接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属製の接合層を用いている。このため、抜熱能力が高い。さらに、溝付き基材83を構成するセラミック材料の主成分がセラミック基材20を構成するセラミック材料の主成分と同じであるため、溝付き基材83は、セラミック基材20との線熱膨張係数差の絶対値が小さい。このため、セラミック基材20、天井基材81及び溝付き基材83は、相互の線熱膨張係数差の絶対値が小さく、接合層の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0038】
また、冷却基材30のうち、ハイパワープラズマでウエハWを処理する際に熱応力が発生しやすい部分(冷媒流路38よりも上側の部分)に配置される天井基材81に、セラミック材料よりも靭性の高いMMCを用いているため、熱応力が発生してもウエハ載置台10が破損しにくい。
【0039】
さらに、MMCは導電性を有するため、天井基材81をRF電極としても使用でき、別途RF電極を準備する必要がない。また、金属接合層40や天井接合層82は、金属製であるため、これらをRF電極として用いることもできる。
【0040】
このウエハ載置台10において、セラミック基材20を構成するセラミック材料、天井基材81を構成するMMC及び溝付き基材83を構成するセラミック材料は、相互の線熱膨張係数差の絶対値が全て1.5×10-6/K以下であるものとすれば、接合層の応力緩和性が低くても、支障がより生じにくい。
【0041】
また、セラミック基材20を構成するセラミック材料と溝付き基材83を構成するセラミック材料との線熱膨張係数差の絶対値が小さければ、セラミック基材20と天井基材81との線熱膨張係数差の影響や、天井基材81と溝付き基材83との線熱膨張係数差の影響がキャンセルされ、ウエハ載置台10の反りや破損を抑制できる。そのため、天井基材81を構成する材料の自由度が高まる。
【0042】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態のウエハ載置台210を、図面を参照しながら以下に説明する。
図5は、ウエハ載置台210の縦断面図である。
図5では、上述した第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0043】
ウエハ載置台210は、ウエハ載置台10と同様に用いられるものである。ウエハ載置台210は、セラミック基材20と、冷却基材230と、金属接合層40とを備えている。
【0044】
冷却基材230は、セラミック基材20よりも大径の円板部材である。冷却基材230は、天井基材81と、穴あき基材283と、底基材285と、天井接合層82と、底接合層284と、を備えている。冷却基材230は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路38を備えている。冷媒流路38の入口38a及び出口38bは、底基材285を上下方向に貫通して冷媒流路38の底面に開口している。
【0045】
穴あき基材283は、セラミック材料製の円板部材である。穴あき基材283には、冷媒流路38の側壁を構成する流路穴288が上下方向に貫通している。穴あき基材283に使用するセラミック材料の詳細は、溝付き基材83に使用するセラミック材料と同様である。穴あき基材283は、ニアネットシェイプ技術を用いて作製してもよい。
【0046】
底基材285は、MMC製の円板部材である。底基材285は、冷媒流路38の底を構成する。底基材285に使用するMMCの詳細は、天井基材81に使用するMMCと同様である。底基材285に使用するMMCは、天井基材81に使用するMMCと主成分が同じであることが好ましいが、主成分が異なってもよい。底基材285に使用するMMCは天井基材81に使用するMMCと同じ材質のものとしてもよい。底基材285に使用するMMCは、セラミック基材20に使用するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であることが好ましく、1.0×10-6/K以下であることがより好ましく、0.5×10-6/K以下であることが更に好ましい。
【0047】
底接合層284は、穴あき基材283の下面と底基材285の上面とを接合する金属製の接合層である。底接合層284は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。底接合層284は、例えばTCBにより形成される。底接合層284の材質は、金属接合層40及び天井接合層82のうちの少なくとも一方の材質と同じとしてもよい。
【0048】
こうしたウエハ載置台210は、例えば、以下に示すように、
図4のウエハ載置台10の製造例に準じて作製することができる。
図4A~
図4Cの工程は、ウエハ載置台10の製造例と同じとする。
図4Dの工程では、MMC円板部材181と溝付き円板部材183とを作製する代わりに、天井用MMC円板部材と、セラミック材料製の穴あき円板部材と、底用MMC円板部材と、を作製する。2つのMMC円板部材は、MMC円板部材181に準じて作製し、穴あき円板部材は、溝付き円板部材183に準じて作製する。その後、
図4Eの工程に準じて、2つのMMC円板部材及び穴あき円板部材の各々に貫通穴を形成する。次に、
図4Fの工程に準じて、底用MMC円板部材、金属接合材、穴あき円板部材、金属接合材、天井用MMC円板部材、金属接合材、セラミック焼結体が、下からこの順に積層した積層体を作製し、この積層体をTCBにより接合して、接合体を作製する。最後に、
図4Gの工程に準じて、切削加工を行い、絶縁管55を配置し、絶縁膜42を形成する。これによりウエハ載置台210を得る。
【0049】
以上説明した第2実施形態のウエハ載置台210では、冷却基材230のうち、天井基材81にはMMCを用いる一方、穴あき基材283には比較的安価で、ニアネットシェイプ技術などにより比較的低コストで流路穴288を形成可能なセラミック材料を用いている。このため、ウエハ載置台の製造コストを低減できる。また、セラミック基材20-天井基材81間及び天井基材81-穴あき基材283間の接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属製の接合層を用いている。このため、抜熱能力が高い。さらに、穴あき基材283を構成するセラミック材料の主成分がセラミック基材20を構成するセラミック材料の主成分と同じであるため、穴あき基材283は、セラミック基材20との線熱膨張係数差の絶対値が小さい。このため、セラミック基材20、天井基材81及び穴あき基材283は、相互の線熱膨張係数差の絶対値が小さく、接合層の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0050】
また、冷却基材230のうち、ハイパワープラズマでウエハWを処理する際に熱応力が発生しやすい部分に配置される天井基材81に、セラミック材料よりも靭性の高いMMCを用いているため、熱応力が発生してもウエハ載置台210が破損しにくい。
【0051】
さらに、MMCは導電性を有するため、天井基材81をRF電極としても使用でき、別途RF電極を準備する必要がない。また、金属接合層40や天井接合層82、底接合層84は、金属製であるため、これらをRF電極として用いることもできる。なお、MMC製の底基材285をRF電極として用いることもできる。
【0052】
さらにまた、底基材285はMMC製であり、セラミック基材20を構成するセラミック材料との線熱膨張係数差の絶対値が小さいため、セラミック基材20と天井基材81や穴あき基材283との線熱膨張係数差の影響や、天井基材81や穴あき基材283と底基材285との線熱膨張係数差の影響がキャンセルされ、ウエハ載置台210の反りや破損を抑制できる。そのため、天井基材81や穴あき基材283を構成する材料の自由度が高まる。
【0053】
そして、穴あき基材283と底基材285とを金属製の底接合層284で接合するため、セラミック基材20と天井基材81との接合や、天井基材81と穴あき基材283との接合と同時に穴あき基材283と底基材285との接合を行うことができ、ウエハ載置台210を効率よく製造できる。
【0054】
なお、底基材285は、抜熱能力への影響が小さいため、樹脂層などで接合されていてもよい。そのため、底基材285は、MMC製でなくてもよく、例えば線熱膨張係数が比較的大きい高熱膨張金属製(例えばアルミニウム製)としてもよいし、セラミック製としてもよいし、樹脂製としてもよい。また、底接合層284は、金属製でなくてもよく、例えば樹脂製としてもよい。
【0055】
このウエハ載置台210において、セラミック基材20を構成するセラミック材料、天井基材81を構成するMMC及び穴あき基材283を構成するセラミック材料は、相互の線熱膨張係数差の絶対値が全て1.5×10-6/K以下であるものとすれば、接合層の応力緩和性が低くても、支障がより生じにくい。さらに、底基材285を構成するMMCを、これらの各々との相互の線熱膨張係数差の絶対値が全て1.5×10-6/K以下であるものとすれば、接合層の応力緩和性が低くても、支障がさらに生じにくい。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0057】
例えば、第1実施形態のウエハ載置台10において、冷却基材30の下面からウエハ載置面22aに至るようにウエハ載置台10を貫通する穴を設けてもよい。こうした穴としては、ウエハWの裏面に熱伝導ガス(例えばHeガス)を供給するためのガス供給穴や、ウエハ載置面22aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴などが挙げられる。熱伝導ガスは、ウエハ載置面22aに設けられた図示しない多数の小突起(ウエハWを支持する)とウエハWとによって形成される空間に供給される。リフトピン穴は、ウエハWを例えば3本のリフトピンで支持する場合には3箇所に設けられる。第2実施形態のウエハ載置台210も同様に、ガス供給穴やリフトピン穴などを設けてもよい。
【0058】
上述した第1実施形態のウエハ載置台10では、冷却基材30は、段差のない円板部材としたが、
図6に示すように、外周部34の上面を内周部32の上面に対して一段低くし、段差を有する円板部材としてもよい。なお、
図6では、溝付き基材83の外周に段差を設けたが、段差の位置は特に限定されず天井基材81の外周に段差を設けてもよい。第2実施形態のウエハ載置台210も同様であり、天井基材81、穴あき基材283及び底基材285のうちの1つ以上の外周に段差を設けてもよい。
【0059】
上述した第1実施形態のウエハ載置台10では、天井基材81は、MMC製としたが、低熱膨張金属材料製としてもよい。この場合、低熱膨張金属材料は、MMCと同様、靭性が高く、導電性のものが好ましい。また、低熱膨張金属材料は、セラミック基材20に用いられるセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であることが好ましい。低熱膨張金属材料としては、モリブデンやタングステンなどが挙げられる。低熱膨張金属材料製の天井基材は、例えば、セラミック基材20が窒化アルミニウム基材の場合、モリブデン基材としてもよい。40~400℃の線熱膨張係数は、窒化アルミニウムが4.6×10-6/Kであり、モリブデンが5.6×10-6/Kである。第2実施形態のウエハ載置台210も同様であり、天井基材81を低熱膨張金属材料製としてもよい。その場合、底基材285も低熱膨張金属材料製としてもよい。また、第2実施形態のウエハ載置台210において、天井基材81及び底基材285のうちの一方をMMC製とし、他方を低熱膨張金属材料製としてもよい。
【0060】
上述した第1及び第2実施形態では、セラミック基材20の中央部22にウエハ吸着用電極26を内蔵したが、これに代えて又は加えて、プラズマ発生用のRF電極を内蔵してもよい。この場合、天井基材81ではなくRF電極に高周波電源を接続する。また、セラミック基材20の外周部24にフォーカスリング(FR)吸着用電極を内蔵してもよい。この場合、FR吸着用電極に直流電源を接続する。また、セラミック基材20は、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。この場合、ヒータ電極にヒータ電源を接続する。このように、セラミック基材20は、電極を1層内蔵していてもよいし、2層以上内蔵していてもよい。
【0061】
上述した第1及び第2実施形態では、冷媒流路38は入口38aから出口38bまで渦巻状に設けられているものとしたが、冷媒流路38の平面形状は特に限定されない。また、複数の冷媒流路38を設けてもよい。また、冷媒流路38の断面は矩形としたが、冷媒流路38の断面形状は特に限定されない。例えば、冷媒流路38の断面のうち上側の角部は、R面になっていてもよい。こうすれば、冷媒流路の断面のうち上側の角部を起点としてクラックが発生するのを防止することができる。その場合、R面は天井基材81に設けられていてもよい。
【0062】
上述した第1実施形態では、
図4Aのセラミック焼結体120はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。第2実施形態でも同様である。
【0063】
上述した第1実施形態では、流路溝88が形成された溝付き円板部材183を作製した後、貫通穴132,66及び入口38a,出口38bを形成したが、貫通穴132,66や入口38a,出口38bを有する溝付き円板部材183をニアネットシェイプ技術を用いて作製してもよい。第2実施形態でも同様である。
【符号の説明】
【0064】
10 ウエハ載置台、20 セラミック基材、22 中央部、22a ウエハ載置面、24 外周部、24a フォーカスリング載置面、26 ウエハ吸着用電極、27 穴、30 冷却基材、32 内周部、34 外周部、38 冷媒流路、38a 入口、38b 出口、40 金属接合層、42 絶縁膜、52 ウエハ吸着用直流電源、53 ローパスフィルタ、54 給電端子、55 絶縁管、62 RF電源、63 ハイパスフィルタ、64 給電端子、66 貫通穴、70 クランプ部材、70a 内周段差面、72 ボルト、78 フォーカスリング、81 天井基材、82 天井接合層、83 溝付き基材、88 流路溝、94 チャンバ、96 設置板、98 シャワーヘッド、110 接合体、120 セラミック焼結体、130 MMC/セラミックブロック、131,132 貫通穴、140 金属接合層、181 MMC円板部材、182 天井接合層、183 溝付き円板部材、210 ウエハ載置台、230 冷却基材、283 穴あき基材、284 底接合層、285 底基材、288 流路穴。