(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056718
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】緩衝材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/03 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
B65D81/03 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166095
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】302057926
【氏名又は名称】エフピコ商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000208226
【氏名又は名称】大和グラビヤ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514192756
【氏名又は名称】株式会社ネオックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】関 謙司
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】島 圭吾
【テーマコード(参考)】
3E066
【Fターム(参考)】
3E066AA33
3E066CA09
3E066CB02
3E066HA01
3E066HA03
3E066JA23
3E066KA08
3E066KA20
3E066LA30
3E066NA47
3E066NA53
3E066NA54
3E066NA60
(57)【要約】
【課題】環境負荷を低減でき、柔らかく傷つきやすい被包装物に対しても不測に落下させるようなことなく使用できるようにする。
【解決手段】相対向して互いに重なり合う表シート部12と裏シート部13を有し、一辺の開口部14を除く他の辺が閉じられて袋状をなす緩衝材11において、表シート部12と裏シート部13を不織布で構成する。表シート部と裏シート部には、一方向に延びる複数のスリットを千鳥状に配設し、表シート部12と裏シート部13における閉じられるべき辺のうち、スリット15が延びる方向と交差する方向に延びる辺に、表シート部12と裏シート部13を互いに接合するポイントシール部17を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる複数のスリットが千鳥状に配設されたシート材で、相対向して互いに重なり合う表シート部と裏シート部が形成され、前記表シート部と前記裏シート部との間に被包装物が収納される緩衝材であって、
前記シート材が不織布で構成されるとともに、
前記表シート部と前記裏シート部が重なり合う形態が、前記シート材の内面同士を互いに接合するポイントシール部で保持された
緩衝材。
【請求項2】
前記ポイントシール部が複数形成されるとともに、
前記ポイントシール部が、前記スリットの延びる方向と交差する方向に配設された
請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記表シート部と前記裏シート部の内側面に、合成樹脂層がラミネート形成された
請求項1または請求項2に記載の緩衝材。
【請求項4】
前記表シート部と前記裏シート部が別々のシート材で構成され、
前記表シート部と前記裏シート部における前記スリットの延びる方向に沿った相対向する辺が互いに接合されている
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の緩衝材。
【請求項5】
前記表シート部と前記裏シート部が同一の一枚のシート材で構成され、
前記シート材の両側縁同士が合掌状に接合されている
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の緩衝材。
【請求項6】
前記ポイントシール部が前記スリットを跨いで形成された
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の緩衝材。
【請求項7】
当該緩衝材が一部を折り返して内外反転可能な大きさに形成され、
折り返し位置に前記ポイントシール部が形成された
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の緩衝材。
【請求項8】
前記シート材に印刷が施された
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の緩衝材。
【請求項9】
前記折り返し位置に印刷が施された
請求項7に記載の緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば青果物や食品、ワインのようなガラス瓶飲料など各種商品の陳列や包装に用いられるような緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
前述のような緩衝材として、下記特許文献1に開示されたフルーツキャップが古くから知られている。フルーツキャップは、多数の発泡ポリエチレン製線状体を厚み方向の内側と外側において一定角度で交差させて重ね合わせ、重ね合わせ部分を互いに融着してなる網目状の筒体である。
【0003】
このフルーツキャップは、被包装物である果物等に被せて使用され、果物等に被せると発泡ポリエチレン製線状体は柔軟に変形し編目を拡げる。線状体はある程度の太さを有するのでそれ自体でも緩衝性が高い。また被包装物に対して装着したときに網目が拡がるので、通気性もある。
【0004】
被包装物が例えば桃などのような柔らかく傷つきやすい果物である場合には特に、主に緩衝性を高めるために、筒状体の長手方向の中間で折り返すことで二重にしたものが使用される。
【0005】
しかし、そもそも発泡ポリエチレン製線状体は一定の太さを有しているうえに、網状に形成されているので、二重に折り返すとフルーツキャップの厚さはかなりのものとなる。
【0006】
このため、保管や運搬に際して場所を取り、軽量であるものの、輸送効率がきわめて悪い。このため、CO2負担も大きく、環境に配慮したものとは言いにくくなっている。
【0007】
この点、下記非特許文献1に開示されているようなフルーツキャップが提案されている。このフルーツキャップは、環境に配慮してクラフト紙で構成されており、内外二重の偏平な筒状に形成されている。つまり、二つ折りして重ね合わされたクラフト紙の二つ折りの折り線の両端部に相当する辺同士を接合して筒状に形成されており、全体には、一方向に延びる複数のスリットが千鳥状に配置されている。スリットの延びる方向は二つ折りの折り線と直交する方向であり、筒の径方向を広げる方向に引っ張ることで、スリットが開いてメッシュ生地のように伸びる構成である。
【0008】
このクラフト紙製のフルーツキャップでは、発泡ポリエチレン製線状体からなるフルーツキャップに比べて厚みが薄いので、省スペース化をはかることができ、輸送効率を向上できる。
【0009】
しかし、クラフト紙は発泡ポリエチレン製線状体に比べて硬く、スリットが開いたときにスリットを形成していた縁を被包装物に対して立てる態様になる。このため、ミカンやリンゴのような果物の場合には問題ないものの、例えば桃のような柔らかい被包装物の場合には、使いにくい。そのうえ材料が硬いため、被包装物に対して装着する際には、フルーツキャップを予め引き伸ばしてスリットを開く必要がある。
【0010】
しかも、クラフト紙製のフルーツキャップは、発泡ポリエチレン製線状体からなるフルーツキャップと同様に筒状であるので、被包装物を支える底がない。
【0011】
このため、被包装物に対するフルーツキャップの被着状態が緩い場合には、例えば箱からの取り出すときなどの取り扱い時に被包装物が不測にフルーツキャップから落下して傷ついてしまうおそれがある。また、装着する際には被包装物が落下しないように注意が必要である。
【0012】
下記特許文献2には、底を有する包装用クッションネット袋が開示されている。
【0013】
この包装用クッションネット袋は、片面と他面を合成樹脂フィルムもしくは合成繊維不織布で構成するとともに、底縁と両側縁を熱融着し袋体を成したものであって、袋体両面の略全面に編目状に展開できる切り目が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】登録実用新案第3170893号公報
【特許文献2】実開平7-9771号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】株式会社パックスタイル、“フルーツキャップ未晒紙”、インターネット<https://www.packstyle.co.jp/product/2703/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献2の包装用クッションネット袋では、切り目が開くと立体的な網目様の帯網目状ネット袋となって、被包装物を柔軟に包み込むとともに支えることもできる。また使用前の状態おけるクッションネット袋の厚みを薄くすることもできる。さらに材料が柔らかいので被包装物に対して装着する際に予めフルーツキャップを予め引き伸ばしてスリットを開く必要はない。
【0017】
しかし、底縁は両側縁と同様に熱融着されている。つまり、切り目(スリット)に直交する辺も熱融着されており、縁に接するスリット間には線状の熱融着部が存在することになる。
【0018】
このように辺全体がシールされていると変形の自由度が低い。つまり、編目状に展開できるスリットは開くことでその周囲を起伏させて立体化するが、その変形が多少なりとも制限を受ける。
【0019】
スリットを有する辺が変形の自由を阻害されると、硬い部分ができて柔軟な素材を用いた意味が減殺されてしまう。また、熱融着された辺の両端部分が三角形になりやすいので、この部分が陳列時に露出すると外観が悪くなるおそれがあり、この場合、被包装物の形によっては座りが悪くなってしまうこともある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで、この発明は、環境負荷を低減でき、柔らかく傷つきやすい被包装物に対しても不測に落下させるようなことなく使用できるようにすることを主な目的とする。
【0021】
そのための手段は、一方向に延びる複数のスリットが千鳥状に配設されたシート材で、相対向して互いに重なり合う表シート部と裏シート部が形成され、前記表シート部と前記裏シート部との間に被包装物が収納される緩衝材であって、前記シート材が不織布で構成されるとともに、前記表シート部と前記裏シート部が重なり合う形態が、前記シート材の内面同士を互いに接合するポイントシール部で保持された緩衝材である。
【0022】
この構成では、不織布で構成されたシート材からなる表シート部と裏シート部は、その柔軟性ゆえ、被包装物を収納したときにスリットが開き、全体が柔軟に変形する。このときポイントシール部は、変形の自由度を保ちながらも、表シート部と裏シート部が重なり合った所期の形態を維持し、広げられた表シート部と裏シート部の間に収納された被包装物の被覆状態を保つ。特にポイントシール部が緩衝材の底に相当する部位に設けられていると、被包装物の落下や脱落を防ぐ。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、不織布製であるので軽く薄く形成できるので、環境負荷を低減できるとともに、不織布製ゆえに、柔らかくて傷つきやすい被包装物に対しても安心して使用できる。そのうえ、ポイントシール部で留めているので、スリットに基づく変形の自由度を保ちながらも被包装物が不測に外れないように保持することもできる。被包装物の損傷等を防げるうえに被包装物に対する着脱などの作業性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図14】
図13の緩衝材をワインボトルに装着した状態の正面図。
【
図16】
図15の緩衝材をワインボトルに装着した状態の正面図。
【
図19】他の例に係る緩衝材の部分正面図と使用状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0026】
図1に緩衝材のうち、いわゆるフルーツキャップとして使用し得る緩衝材11の斜視図を示している。
【0027】
緩衝材11は、シート材で形成されており、相対向して互いに重なり合う表シート部12と裏シート部13を有し、表シート部12と裏シート部13との間に被包装物が収納される形態である。
図1に例示した緩衝材11は、一辺の開口部14を除く他の辺が閉じられて袋状をなしている。表シート部12と裏シート部13を構成するシート材には複数のスリット15が形成されている。スリット15は、緩衝材11の内部に被包装物21を入れたときに押し広げられて開き、表シート部12と裏シート部13を網目状に立体化するための構成であり、直線状で一方向に延び、千鳥状に配設されている。
【0028】
ここで、前述した「閉じる」とは、その辺全体を完全に閉鎖することのみを指すのではなく、緩衝材11が袋の形態であるがゆえに、開口部14から内部に入れた被包装物21が通過しない程度の隙間を有して閉じることも含んだ意味である。辺が有する隙間の大きさは、緩衝材11の使用目的、言い換えれば被包装物21の大きさや形態に応じて設定されるともいえる。なお、緩衝材11は被包装物21の全部又は一部を覆う大きさに形成される。
【0029】
緩衝材11の表シート部12と裏シート部13は、いずれも不織布で構成されている。不織布の材料は、適宜のものを使用し得るが、比重が軽く、吸湿性・吸水性が低く、ヒートシール性に優れたものがよい。例えばポリプロピレン製の不織布が好適に使用できる。
【0030】
これら表シート部12と裏シート部13は、別々のシート材で構成されるほか、同一の一枚のシート材で構成されてもよい。緩衝材11の形状は、同形の表シート部12と裏シート部13が互いに重なり合った偏平な形であり、表シート部12と裏シート部13の正面視形状は、フルーツキャップとして一つの果物に被せて使用するものであるため、
図2に示したように略正方形である。たての長さは、被包装物21である果物、
図1の例では桃22の高さよりも若干短く、よこの長さは、その直径と同等かそれよりも短い。
【0031】
緩衝材11の正面視形状は、被包装物21に合わせて、例えば円形や半円形、長方形、三角形などその他の適宜形状とすることもできる。
【0032】
表シート部12と裏シート部13が重なり合う形態(構造と外見)は、シート材の内面同士を互いに接合するポイントシール部17で保持される。つまり、前述のように表シート部12と裏シート部13は別々のシート材で構成することも同一のシート材で構成することもできる。このため、表シート部12と裏シート部13を重ね合わせた袋状にする形態は一様ではないが、シート材を袋状にするための接合の少なくとも一つとしてポイントシール部17が利用される。
【0033】
なお、内面とは、表シート部12や裏シート部13を構成するシート材における収納される被包装物21が接触する面と、この面に連なる面である。
【0034】
正面視略正方形袋状の緩衝材11は、上端の辺11aを開口部14とし、左右両側の辺11bと下端の辺11cを閉じて、表シート部12と裏シート部13が重なり合う形態を得ている。
図1、
図2に示した緩衝材11は表シート部12と裏シート部13を別々のシート材で構成した例を示しており、
図2のA-A断面図である
図3に示したように左右両側の辺11bは表シート部12と裏シート部13を互いに接合する溶着によって閉じられている。下端の辺11cも同様に溶着によって閉じられる。
【0035】
これら溶着の態様は、立体化のために形成されるスリット15の方向性によって、線状のシールとするか、前述した点状のポイントシールとするかに分かれる。
【0036】
線状のシール16は、表シート部12と裏シート部13におけるスリット15の延びる方向に沿った辺である左右両側の辺11bに形成される。
【0037】
ポイントシール部17は、閉じられるべき辺のうち、スリット15が延びる方向と交差する方向に延びる辺に形成される。つまり、表シート部12と裏シート部13には、一方向に延びる複数のスリット15が千鳥状に配設されるが、
図1、
図2の例では、スリット15は上端と下端を結ぶ縦方向に延びている。このため、ポイントシール部17は、下端の辺11cに形成される。
【0038】
このようなスリット15の態様は、緩衝材11にとっては縦スリットの形態である。
【0039】
スリット15の長さは一定で、一定の間隔を隔てて一直線上に配設される。一直線に並ぶスリット15からなるスリット列と、このスリット列の隣に並設されるスリット列は縦方向において位置がずれている。すなわち、一つのスリット列を構成するスリット15の長手方向の中間位置と、これに隣接する他のスリット列を構成するスリット15同士の間の中間位置が並設方向において一直線上に並べられて、前述した千鳥状の配置とされている。
【0040】
スリット15の長さとスリット列におけるスリット15同士間隔、スリット列同士の間隔は、立体化の態様に影響するので、被包装物21に応じて設定される。
【0041】
ここで、スリット15の作用について簡単に説明すると、
図4に示したように、スリット15が延びる方向と直交する方向に表シート部12と裏シート部13を引っ張るとスリット15が開き、これに伴ってスリット15の周囲が厚み方向で起伏し、網目状に立体化する。これによって厚み方向の嵩が増し、通気を可能とする空間が大きく開く。
【0042】
ポイントシール部17は、スリット15が延びる方向と交差する方向である方向のうち左右方向に複数配設されている。
【0043】
具体的には、緩衝材11が一つの果物に被せるものであるため、果物が落下しないように、果物の通過を阻止する間隔を隔てて配設される。図示例では、左右方向の中間位置と、中間位置を挟む左右両側の2点の合計3点にポイントシール部17を形成している。
【0044】
ポイントシール部17は、例えば左右方向の中間位置のみの1点とすることもできるが、緩衝材11がある程度の大きさであり被包装物21の重量もある程度ある場合には、強度の観点から複数備えるのが好ましい。
【0045】
ポイントシール部17の形状は適宜設定され、例えば図示例のような平面視円形のほか、三角形や四角形、長円形などであってもよい。また、
図2に示したポイントシール部17は、スリット15間に収まる大きさにして、スリット15にかからないように設けた例を示したが、例えば
図5に示したように、スリット15にかかる態様で形成してもよい。
図5(a)のポイントシール部17は、一本のスリット15上に形成した例である。
図5(b)のポイントシール部17は、スリット15の延びる方向と直交する方向(左右方向)に並ぶ複数のスリット15に跨る態様で形成した例である。
【0046】
このようにポイントシール部17がスリット15にかかる態様で形成されると、荷重を分散して局所的にかかる荷重を低減し、シール部分の強度を高められるので良い。
【0047】
図2に例示した複数のポイントシール部17は直線状に配設したが、直線状でなくてもよい。例えば
図6に示したように中央部を下げたV字状に配設してもよく、U字状等の他の配置形態を採用することもできる。ポイントシール部17の配設形状は収納される被包装物21の形態に応じて設定される。
【0048】
表シート部12と裏シート部13を構成する不織布は、不織布単体であってもよいが、溶着する場合のヒートシール性と被包装物21との防滑性の観点から、
図7に示したように不織布31の内側面に合成樹脂層32がラミネート形成されたものを用いるのが好ましい。
【0049】
合成樹脂層32は、柔軟で比重が軽い、例えばポリエチレンで構成され、押し出しラミネートで不織布31に積層される。
【0050】
表シート部12と裏シート部13を不織布のみで構成する場合には、超音波溶着が利用される。
【0051】
このような構成の緩衝材11は、次のように製造される。
【0052】
まず、不織布31の片面に押し出しラミネートによって合成樹脂層32を形成し、原反を得る。
【0053】
次に、
図8に示したように、2つの原反41をそれぞれ、内側面の合成樹脂層32が対向するように配置して搬送し、スリット加工機42によって原反41に対して複数のスリット15を形成する。スリット15は原反の搬送方向に延びる態様で形成される。
【0054】
つづいて、製袋工程に移行する。製袋工程では、スリット15が形成された2枚のスリットシート43を、互いの合成樹脂層32が接触するように重ね合わせて、左右両側の辺11bに相当する部分をヒートシール機44によって線状に熱溶着し、ポイントシール機45によって一定間隔にポイントシールを行う。このあと、図示を省略するが定尺で裁断を行い、緩衝材11を得る。
【0055】
なお、緩衝材11は、印刷により着色されたり、模様等が付されたりするとよい。印刷は、例えばグラビア印刷で行うと、明瞭な模様等ではなく、まだら状になって独特の外観が得られる。しかも、連続して印刷できるので作業性もよい。着色や模様付けに際しては、被包装物21の色や種類に応じて、店頭で目を引く色合いや高級感を出せるように考慮される。印刷は、スリット15を開いて立体化させたときに印刷柄と網目形状の組み合わせにより一つのデザイン的価値を生み出せるようにすることも可能である。
【0056】
以上のような構成の袋状の緩衝材11は、
図1に示したように開口部14を開いて被包装物21である果物を入れる。表シート部12と裏シート部13の内側面の合成樹脂層32に対する接触抵抗が高い果物の場合には、仮想線で示したように開口部14の縁(上端の辺11a)を外側下方に広げて緩衝材11を椀状に変形してから入れると、作業性が良い。下端の辺11cに形成されたポイントシール部17は、果物が緩衝材11から抜け落ちるのを防止する。
【0057】
果物が入ると緩衝材11は左右方向に押し広げられて、
図9に示したように柔軟に変形しながらスリット15が開き、果物の形に沿って立体的な網目状の形態となって収縮力を発揮しながら果物にフィットする。緩衝材11の表シート部12と裏シート部13はその材質と形態とにより緩衝機能を果たし、果物を衝撃から保護する。スリット15が開いてできた空間は、通気性を確保する。
【0058】
このほか表シート部12と裏シート部13の不織布31は、外観上柔らかな印象を有し、果物を装飾する。一方、内側面の合成樹脂層32は、不織布31を補強するとともに、果物との間で防滑性を発揮し、緩衝材11と果物が不測にずれたり、緩衝材11が果物から脱落したりすることを抑制する。
【0059】
また、下端の辺11cは、ポイントシール部17で閉じられているので、変形の自由度は高く、素材の柔軟さと相まって果物の下面に負荷をかけずに済む。そのうえ、下端の辺11cとその近傍は果物の下に隠れて外観上にあらわれることはなく、素材の柔軟さと変形の自由度ゆえに外にあらわれる部分の形状に影響を与えることもない。このため、美麗な陳列状態や包装状態を得ることができる。
【0060】
緩衝材11は、薄く、軽くて柔らかい。このため、保管や輸送が効率よく行え、ひいてはCO2負担を大幅に削減することに貢献できる。
【0061】
緩衝材11の柔軟さはクラフト紙よりも高いので、クラフト紙からなるフルーツキャップでは使用しにくかった桃22のような傷つきやすい果物に対しても安心して使用できるようになる。桃22のような傷つきやすい果物に対して使用する緩衝材11とするには、坪量が30gsm~100gsmの不織布を用いるのが、効果的な柔軟性を得られるのでよい。
【0062】
しかも、下端の辺11cはポイントシール部17で閉じており、前述したように取り扱い時に果物が落下したりすることを防ぐことができるので、この点からも傷つきやすい果物に対する使用に有効である。
【0063】
表シート部12と裏シート部13の内側面には合成樹脂層32がラミネート形成されているので、熱シールで製袋が行える。このため、生産性がよい。
【0064】
以下、その他の例について説明する。この説明において、前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0065】
図10は他の例に係る袋状の緩衝材11の背面図であり、
図11は
図10のB-B断面図である。この図に示したように、表シート部12と裏シート部13は同一の一枚のシート材で構成されており、シート材の両側縁同士が合掌状に接合されて袋状に形成されている。つまり、裏シート部13の左右方向の中間位置に1本の線状のシール16が形成されている。下端の辺11cにはポイントシール部17が形成される。この緩衝材11は、スリット加工されたスリットシートを半折りして製袋される。
【0066】
このような構成の緩衝材11は、前述と同様の作用を有するが、特に、合掌状にシールして袋状に形成するので、使用時に線状のシール16を背面側に隠すことができるという利点を有する。
【0067】
図12は他の例に係る緩衝材11の正面図であり、この緩衝材11は緩衝材11の一部を折り返して内外反転して、二重に重ねて使用するものである。すなわち、この緩衝材11は正面視形状が縦長の長方形であり、上下両端の辺11a,11cを開口部14とし、左右両側の辺11bを閉じるとともに、折り返し位置にポイントシール部17を形成して、表シート部12と裏シート部13が重なり合う形態を得ている。緩衝材11は、収納する被包装物21の大きさに応じて、一部を折り返して内外反転可能な大きさに形成されている。また
図13は、表シート部12と裏シート部13を別々のシート材で構成した例を示している。前述例と同様、緩衝材11は1枚のシート材で構成することも可能である。
【0068】
この緩衝材11の折り返し位置は、長手方向の中間位置であり、複数のポイントシール部17がスリット15の延びる方向と直交する方向に配設されている。この配列についても、直線状でなくてもよい。また、ポイントシール部17の数は1個であってもよい。
【0069】
また、一点鎖線で示したように、折り返し位置に適宜の印刷を施して、印刷部11eを形成するとよい。
【0070】
このように構成された緩衝材11は、ポイントシール部17が形成された長手方向の中間位置で、それより下側の部分を表裏反転して、全体を二重構造にして使用する。ポイントシール部17は、被包装物21の落下防止のほかに、折返し時の目印機能を果たし、作業性が高まる。また、印刷部11eを形成すると、視覚の面でも目印となって、ポイントシール部17の機能を補う。そのうえ印刷部11eは、被包装物21との関係で装飾性の高いものにできれば、訴求効果も発揮できる。
【0071】
図13は他の例に係る袋状の緩衝材11の正面図であり、この緩衝材11は
図14に示したように被包装物21としてのワインボトル23に対して使用するのに適したように縦長の長方形に形成されている。
【0072】
ワインボトル23などに使用される緩衝材も、従来、筒状に形成されていた。緩衝材がクラフト紙からなるものである場合には特に、取り扱い時に他の物との接触によって緩衝材が脱落してしまうことがあった。
【0073】
図13に示した緩衝材11は、底辺に相当する下端の辺11cがポイントシール部17で閉じられているので、緩衝材11が少なくとも上に脱落することは回避できる。しかも、下端の辺11cを閉じているのはポイントシール部17であるので、ボルトの底に当たる部分の変形の自由度が高く、ボトルの形にフィットした美麗な装着状態が得られる。
【0074】
図15は、
図13と同様にワインボトル23に対して使用するのに適した緩衝材11の正面図である。この緩衝材11は、下端の辺11cのポイントシール部17について、
図13の緩衝材11とは異なり、左右方向の中間部に、ボトルの首部23aが通過する挿通部18を形成している。換言すれば、挿通部18を形成する間隔を隔ててポイントシール部17を形成している。
【0075】
すなわち、この緩衝材11は、
図16に示したように開口部14を下に向けてボトルに被せ、ボトルの首部23aを挿通部18に通す。
【0076】
この構成の緩衝材11では、少なくとも緩衝材11がボトルの下に脱落することは回避できる。
【0077】
図17、
図18は、緩衝材にとっては横スリットとなる形態の緩衝材11を示している。
【0078】
つまり、この緩衝材11は、スリット15が延びる方向と交差する方向に延びる辺である左右両側の辺11bがポイントシール部17で閉じられている。
【0079】
図17の緩衝材11は、表シート部12と裏シート部13を別々のシート材で構成した例であり、上端の辺11aに開口部14を有し、他の三辺が閉じられている。底に相当する下端の辺11cは線状のシール16で閉じられている。
【0080】
図18に示した緩衝材11は、表シート部12と裏シート部13が同一の一枚のシート材で構成された例である。上端の辺11aに開口部14を有し、他の三辺が閉じられていることは、
図17の緩衝材11と同じであるが、
図18の緩衝材11では、底に相当する下端の辺11cは折り返しで構成されている。このため閉じられるべき辺はポイントシール部17のみで閉じられることになる。
【0081】
製造に際しては、
図17の緩衝材11の場合には、両側縁を除く部分にスリット15が形成された2枚のスリットシートを、スリット15の延びる方向に搬送しながら重ね合わせて製袋工程に移行する。製袋工程では、下端の辺11cに相当する一方の側部にシールを行って線状のシール16を形成するとともに、左右両側の辺11bに相当する位置に間欠的にポイントシール部17を形成する。
【0082】
これに対して
図18の緩衝材11の場合には、スリットシートをスリット15の延びる方向に搬送しながら半折りして製袋工程に移行する。製袋工程では、ポイントシール部17の形成のみで袋形状に形成されることになる。
【0083】
これらのような構成の緩衝材11は、縦方向に延びるので、長さの長い被包装物21に使用するのに好適である。ポイントシール部17はスリット15の開きに伴う全体の変形を大きく阻害しないので、所望の緩衝等の効果が十分に得られる。しかも、被包装物21の脱落を防止できる。
【0084】
図19(a)に示した緩衝材11は、
図17、
図18に示した緩衝材11の表シート部12と裏シート部13の開口部14に、スリットの無い部分を広めに形成し、この部位に貫通穴19を形成したものである。
【0085】
この緩衝材11は、前述したようなワインボトル23に対して使用するに好適である。使用に際しては、開口部14からワインボトル23を入れると、緩衝材11は縦に延びる。この状態で開口部近傍の2つの貫通穴19を、
図19(b)に示したようにボトルの首部23aに交互にかける。このようにすると、緩衝材11は上にも下にも脱落しない装着状態となる。
【0086】
また、
図1の例では、桃22のような1個の果物に対して使用し得る緩衝材11を説明したが、他の果物や青物の販売に使用するものとしてもよい。
【0087】
例えば、バナナである。バナナは通常、袋詰めされた状態か袋詰めされない裸の状態で陳列されている。顧客はそのバナナを手に取り、全体を確認してから買い物かごに入れる。しかし、袋に入ったバナナは、店内の照明の加減もあって見にくいこともある。この点、裸のバナナは良、不良の判定がしやすいが、そのまま買い物かごに入れるには、他の商品と接触して傷ついたりすることが懸念される。
【0088】
そこで、この発明の緩衝材11を顧客が好みによって自由に使用できるように用意しておくことで、無包装のバナナであっても、緩衝材11に収容することで、せっかく選定したバナナを傷つけたりしないようにすることができる。
【0089】
同様のことは、キャベツやレタス、キュウリ、大根などの販売でもいえる。
【0090】
また、肉や魚などを載せたトレーをラップで包んだ商品についても、ラップ同士がくっついて扱いにくいことがあったり、汁が漏れて他の商品に移ったりすることがあった。しかし、この発明の緩衝材11で包むことによって、それらの不都合を回避又は軽減することもできる。
【0091】
緩衝材11は、前述のように販売に際して販売者側が提供するものとするのではなく、顧客側がいわゆる買い物袋やマイバッグ等のように利用するものとしてもよい。
【0092】
以上のようにこの発明の緩衝材11は、これまでのフルーツキャップのような緩衝材に比べて環境負荷を低減できる。しかも、被包装物21を不測に落下させたりすることを防止できて取り扱い性が良く、不織布ゆえの柔和な外観も得られるうえに、新たな用途を拓くこともできる。このため、業者側にも顧客側にも便益を与え、産業の発達に寄与することができる。
【符号の説明】
【0093】
11…緩衝材
11e…印刷部
12…表シート部
13…裏シート部
14…開口部
15…スリット
17…ポイントシール部
21…被包装物
31…不織布
32…合成樹脂層