(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056746
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】熱伝達抑制シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20230413BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230413BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230413BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20230413BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/653
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166138
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 浩司
(72)【発明者】
【氏名】島田 将平
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031BB03
5H031CC01
5H031EE01
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH00
5H031HH06
5H031HH08
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】電池セルの通常使用時において発生した熱を効率的に外部に拡散することができるとともに、電池セルの異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制し、熱暴走の連鎖を防止することができ、粒子等の脱落を防止することができる、熱伝達抑制シートを提供する。
【解決手段】複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用される熱伝達抑制シート10は、一対の断熱材2と、一対の断熱材2の間に配設された中間層3と、これらの断熱材2と中間層3とを外側から包み込むように配置された第1の樹脂フィルムと、を有する。中間層3は、断熱材2よりも熱伝導率が高い熱拡散シート5と、この熱拡散シート5の厚さ方向に直交する両面に積層された第2の樹脂フィルム6と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用される熱伝達抑制シートであって、
厚さ方向に積層された一対の断熱材と、
前記一対の断熱材の間に配設された中間層と、
少なくとも前記断熱材を内包して封止する第1の樹脂フィルムと、を有し、
前記中間層は、前記断熱材よりも熱伝導率が高い熱拡散シートと、
前記熱拡散シートの厚さ方向に直交する両面に積層された第2の樹脂フィルムと、を有することを特徴とする熱伝達抑制シート。
【請求項2】
前記中間層の厚さ方向に平行な端面のうち、少なくとも一端面において、前記中間層が前記一対の断熱材よりも突出しており、前記第1の樹脂フィルムとともに突出部を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項3】
前記中間層の厚さ方向に平行な全ての端面において、前記中間層が前記一対の断熱材よりも突出しており、前記第1の樹脂フィルムとともに突出部を形成していることを特徴とする、請求項2に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項4】
前記突出部における前記熱拡散シートの端面は露出していることを特徴とする、請求項2又は3に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項5】
前記中間層は、前記熱拡散シートの前記両面に前記第2の樹脂フィルムが積層され一体化されたフィルムであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項6】
前記中間層は、ラミネートフィルムであることを特徴とする、請求項5に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項7】
前記断熱材は、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとが熱融着により接着されることにより、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムに内包されて封止されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項8】
前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムは、同一の材料又は互いに異なる材料により構成されており、それぞれ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニルスルフィド、ポリカーボネート及びアラミドから選択された少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項9】
前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムは、同一の材料により構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項10】
前記第1の樹脂フィルムの厚さは、1mm以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項11】
前記第2の樹脂フィルムの厚さは、5μm以上100μm以下であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項12】
前記第1の樹脂フィルムの厚さは、前記第2の樹脂フィルムの厚さよりも厚いことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項13】
前記熱拡散シートは、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金、錫又は錫合金、ニッケル又はニッケル合金、ステンレス鋼、鉛又は鉛合金、青銅、イリジウム、燐青銅、銀又は銀合金、チタン又はチタン合金、セラミック、グラファイト及びダイヤモンドライクカーボンから選択された少なくとも1種を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項14】
前記セラミックは、AlN、SiC、BN及びTiNから選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項13に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項15】
前記断熱材の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項16】
前記断熱材は、無機繊維、有機繊維、無機粒子及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項17】
前記断熱材は、無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする、請求項16に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項18】
前記断熱材は、シリカナノ粒子、チタニア、アルミナファイバ、カーボンファイバ、マイカ、バサルトファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、グラスファイバ、エアロゲル複合材、マイクロポーラス粒子、中空シリカ粒子、熱膨張性無機材料、エアロゲル、シリカ、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄、水酸化マンガン、水酸化ジルコニウム、水酸化ガリウム、SiO2を含む繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミックス系繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ジルコニア繊維、及び鉱物系繊維から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項16又は17に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項19】
前記複数の電池セル間に介在されることを特徴とする、請求項1~18のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項20】
電池ケースと、
前記電池ケースの内部に格納され、直列又は並列に接続された複数の電池セルと、
前記複数の電池セル間に介在される請求項1~18のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートと、を有することを特徴とする組電池。
【請求項21】
電池ケースと、
前記電池ケースの内部に格納され、直列又は並列に接続された複数の電池セルと、
前記複数の電池セル間に介在される請求項4に記載の熱伝達抑制シートと、
前記複数の電池セルと前記電池ケースとの間に設けられた熱伝達部材と、
を有し、
前記突出部における前記熱拡散シートの端面と前記熱伝達部材とが接触していることを特徴とする組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車又はハイブリッド車などを駆動する電動モータの電源となる組電池に好適に用いられる、熱伝達抑制シート及び該熱伝達抑制シートを用いた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車などの開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車などには、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0003】
この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられているが、電池の内部短絡や過充電などが原因で1つの電池セルに熱暴走が生じた場合(すなわち「電池セルの異常時」の場合)、隣接する他の電池セルへ熱の伝播が起こることで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0004】
また、電池セルは、充放電時や繰り返しの使用により膨張することがある。したがって、電池セルの間に、例えば仕切り部材が配置される場合に、この仕切り部材には耐圧性が要求される。
【0005】
例えば、特許文献1には、液体を保持可能な内包体と、内包体及び液体を収容する外装体とを含み、平面視における内包体の隙間の面積、及び液体の体積と内包体の体積との比が規定された仕切り部材が提案されている。
上記特許文献1によると、耐圧性及び熱伝導特性に優れた仕切り部材を得ることができることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、第1の断熱層及び第2の断熱層を有し、第1の断熱層と第2の断熱層との間に金属層が挟設されている熱伝達抑制シートが開示されている。
上記熱伝達抑制シートによると、優れた熱伝達抑制効果と、優れた機械的強度を得ることができる。
【0007】
さらに、特許文献3には、複数のバッテリセルと、このバッテリセルを格納するモジュール筐体と、このモジュール筐体の内部に入る間隙材とを備えたバッテリーモジュールが提案されている。バッテリセル間の間隙材は、バッテリセルの全体を覆うようには充てんされておらず、上側は空隙となっている。また、バッテリセルは、板状の正極板と負極板を、仕切り板の間に挟んで交互に複数枚重ねた電池要素を、電解液とともに可撓性の外装フィルム内にラミネートして封入したものである。
上記特許文献3に記載のバッテリーモジュールによれば、複数のバッテリセルを内部に安定的に保持し、バッテリセルからの発熱の優れた放熱性を得ることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2019/107562号
【特許文献2】特開2020-165483号公報
【特許文献3】特開2020-9774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、組電池化した電池セルに対し充放電サイクルを行う場合(すなわち「電池セルの通常使用時」の場合)において、電池セルの充放電性能を十分に発揮させるためには、電池セル表面の温度を所定値以下(例えば、150℃以下)に維持する必要がある。
また、電池セルが、例えば200℃以上の温度となるような異常事態が発生した場合に、電池セルを効果的に冷却するとともに、隣接する電池セルへの熱の伝播を抑制し、熱暴走を阻止する必要がある。
【0010】
また、組電池化した複数の電池セルの間に配置される断熱材としては、種々の材料からなるものがあり、近年、無機粒子や有機粒子を含む断熱材についても、開発が進められている。このような断熱材を使用する場合に、断熱材に圧力が加えられたり、車両走行時に振動が与えられると、粉体及び粒子の脱落の原因となることがある。
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載の仕切り部材、及び特許文献3に記載の間隙材は、粉体及び粒子の脱落の発生を防止することはできるものの、充放電サイクル時に発生した熱を効率的に外部に拡散することができない。また、1つの電池セルに熱暴走が生じた場合に、上記構造のみでは、熱暴走の連鎖を効果的に抑制することが困難である。
また、上記特許文献2に記載の熱伝達抑制シートは、粒子等の脱落について十分な検討がなされておらず、使用する断熱層の材料によっては、粉体及び粒子の脱落が発生するおそれがある。
さらに、近年の車両等の多様化に伴い、駆動用電動モータの電源用組電池において使用される断熱材としては、製造コスト低減などの観点から、電池セル間のみならず、電池セルと電池ケースとの間等にも使用することができる、高い汎用性を有するものであることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電池セルの通常使用時において発生した熱を効率的に外部に拡散することができるとともに、電池セルの異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制し、熱暴走の連鎖を防止することができ、汎用性が高く、さらに粒子等の脱落を防止することが可能である、熱伝達抑制シート及び組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、熱伝達抑制シートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0014】
[1] 複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用される熱伝達抑制シートであって、
厚さ方向に積層された一対の断熱材と、
前記一対の断熱材の間に配設された中間層と、
少なくとも前記断熱材を内包して封止する第1の樹脂フィルムと、を有し、
前記中間層は、前記断熱材よりも熱伝導率が高い熱拡散シートと、
前記熱拡散シートの厚さ方向に直交する両面に積層された第2の樹脂フィルムと、を有することを特徴とする熱伝達抑制シート。
【0015】
また、熱伝達抑制シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[19]に関する。
【0016】
[2] 前記中間層の厚さ方向に平行な端面のうち、少なくとも一端面において、前記中間層が前記一対の断熱材よりも突出しており、前記第1の樹脂フィルムとともに突出部を形成していることを特徴とする、[1]に記載の熱伝達抑制シート。
【0017】
[3] 前記中間層の厚さ方向に平行な全ての端面において、前記中間層が前記一対の断熱材よりも突出しており、前記第1の樹脂フィルムとともに突出部を形成していることを特徴とする、[2]に記載の熱伝達抑制シート。
【0018】
[4] 前記突出部における前記熱拡散シートの端面は露出していることを特徴とする、[2]又は[3]に記載の熱伝達抑制シート。
【0019】
[5] 前記中間層は、前記熱拡散シートの前記両面に前記第2の樹脂フィルムが積層され一体化されたフィルムであることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0020】
[6] 前記中間層は、ラミネートフィルムであることを特徴とする、[5]に記載の熱伝達抑制シート。
【0021】
[7] 前記断熱材は、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとが熱融着により接着されることにより、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムに内包されて封止されていることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0022】
[8] 前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムは、同一の材料又は互いに異なる材料により構成されており、それぞれ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニルスルフィド、ポリカーボネート及びアラミドから選択された少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0023】
[9] 前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムは、同一の材料により構成されていることを特徴とする、[8]に記載の熱伝達抑制シート。
【0024】
[10] 前記第1の樹脂フィルムの厚さは、1mm以下であることを特徴とする、[1]~[9]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
【0025】
[11] 前記第2の樹脂フィルムの厚さは、5μm以上100μm以下であることを特徴とする、[1]~[10]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
【0026】
[12] 前記第1の樹脂フィルムの厚さは、前記第2の樹脂フィルムの厚さよりも厚いことを特徴とする、[1]~[11]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
【0027】
[13] 前記熱拡散シートは、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金、錫又は錫合金、ニッケル又はニッケル合金、ステンレス鋼、鉛又は鉛合金、青銅、イリジウム、燐青銅、銀又は銀合金、チタン又はチタン合金、セラミック、グラファイト及びダイヤモンドライクカーボンから選択された少なくとも1種を含む、[1]~[12]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0028】
[14] 前記セラミックは、AlN、SiC、BN及びTiNから選択された少なくとも1種であることを特徴とする、[13]に記載の熱伝達抑制シート。
【0029】
[15] 前記断熱材の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることを特徴とする、[1]~[14]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0030】
[16] 前記断熱材は、無機繊維、有機繊維、無機粒子及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする、[1]~[15]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0031】
[17] 前記断熱材は、無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする、[16]に記載の熱伝達抑制シート。
【0032】
[18] 前記断熱材は、シリカナノ粒子、チタニア、アルミナファイバ、カーボンファイバ、マイカ、バサルトファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、グラスファイバ、エアロゲル複合材、マイクロポーラス粒子、中空シリカ粒子、熱膨張性無機材料、エアロゲル、シリカ、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄、水酸化マンガン、水酸化ジルコニウム、水酸化ガリウム、SiO2を含む繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミックス系繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ジルコニア繊維、及び鉱物系繊維から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする、[16]又は[17]に記載の熱伝達抑制シート。
【0033】
[19] 前記複数の電池セル間に介在されることを特徴とする、[1]~[18]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0034】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[20]、[21]の構成により達成される。
【0035】
[20] 電池ケースと、
前記電池ケースの内部に格納され、直列又は並列に接続された複数の電池セルと、
前記複数の電池セル間に介在される[1]~[18]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シートと、を有することを特徴とする組電池。
【0036】
[21] 電池ケースと、
前記電池ケースの内部に格納され、直列又は並列に接続された複数の電池セルと、
前記複数の電池セル間に介在される[4]に記載の熱伝達抑制シートと、
前記複数の電池セルと前記電池ケースとの間に設けられた熱伝達部材と、
を有し、
前記突出部における前記熱拡散シートの端面と前記熱伝達部材とが接触していることを特徴とする組電池。
【発明の効果】
【0037】
本発明の熱伝達抑制シートは、一対の断熱材が第1の樹脂フィルムにより封止されているため、断熱材を構成する粒子等の脱落を防止することができる。
また、本発明の熱伝達抑制シートは、熱拡散シートを備えることより、熱を熱拡散シートの面方向に拡散し、放出することができるため、電池セルの通常使用時において発生した熱を効率的に外部に拡散することができる。
さらに、本発明の熱伝達抑制シートは、断熱材を備えることにより、熱伝達抑制シートの厚さ方向への熱の伝播を抑制することができるため、電池セルの異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制し、熱暴走の連鎖を防止することができる。
【0038】
本発明の組電池は、複数の電池セル間に介在させた上記熱伝達抑制シートを有するため、電池セルの通常使用時及び異常時において、効率的に熱拡散することができるとともに、電池セル間の熱の伝播を抑制することができ、熱暴走の連鎖を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る熱伝達抑制シートを適用した組電池を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明者は、電池セルの異常時において熱の伝播を抑制しつつ、電池セルの通常使用時において熱を効率的に外部に拡散することができ、粒子等の脱落を防止することができる熱伝達抑制シートを提供するため、鋭意検討を行った。
【0041】
その結果、本発明者は、一対の断熱材の間に、熱拡散シートと樹脂フィルムとを有する中間層を配設した熱伝達抑制シートを使用し、これを電池セル間に配置すると、電池セルから発生した熱を熱拡散シートの面方向に拡散し、放出することができることを見出した。
すなわち、ある電池セルの温度が上昇した場合に、電池セルから発生した熱は、断熱材を介することにより低減される。その後、一対の断熱材の間に配設されている熱拡散シートに到達した熱は、伝導伝熱により熱拡散シートの面方向に拡散される。
このようにして、ある電池セルが高温になった場合に、隣接する電池セルに到達するまでに熱伝達が抑制されて、熱を外部に拡散することができるため、熱暴走の連鎖を抑制することができる。
【0042】
また、本発明者は、樹脂フィルムにより断熱材を内包して封止することにより、断熱材の粒子等の脱落を防止することができることを見出した。
【0043】
以下、本発明の第1及び第2の実施形態に係る熱伝達抑制シート、及び組電池について、図面を参照しつつ詳細に説明する。また、本実施形態に係る熱伝達抑制シートを構成する断熱材、熱拡散シート及び樹脂フィルム等について説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0044】
[1.熱伝達抑制シート]
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す模式図である。
第1の実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、後述する組電池に使用され、電池セル間に配置されるものである。熱伝達抑制シート10は、一対の断熱材2と、一対の断熱材2の間に配設された中間層3と、これらの断熱材2と中間層3とを外側から包み込むように配置された第1の樹脂フィルム4と、を有する。
また、中間層3は、断熱材2よりも熱伝導率が高い熱拡散シート5と、熱拡散シート5の厚さ方向に直交する両面に積層された第2の樹脂フィルム6と、を有する。中間層3としては、熱拡散シート5と2枚の第2の樹脂フィルム6とを、接着剤等により貼り合わせたものや、これらをラミネート加工したラミネートフィルムを使用することができる。また、第2の樹脂フィルム6の表面に熱拡散シート5の材料となるアルミニウム等の金属を蒸着した蒸着フィルムを準備し、さらにその表面に第2の樹脂フィルム6を積層してラミネート加工することにより作製した中間層3を使用することもできる。
【0045】
中間層3及び第1の樹脂フィルム4において、これらの厚さ方向に直交する面における4辺は、断熱材2よりも大きく設計されている。そして、中間層3と第1の樹脂フィルム4との間に断熱材2が配置され、中間層3と第1の樹脂フィルム4とが、これらの周縁部で接着されることにより、各断熱材2は、中間層3と第1の樹脂フィルム4に内包されて封止されている。
【0046】
なお、中間層3は、厚さ方向に積層された断熱材2の間に配設され、中間層3の4端面まで平面状に延びている。一方、第1の樹脂フィルム4は、断熱材2の厚さ方向に平行な端面に沿って折れ曲がり、さらに中間層3の延出方向に沿って折れ曲がった構成となっている。
したがって、中間層3及び第1の樹脂フィルム4は、断熱材2の厚さ方向に平行な端面よりも突出しており、突出部1aを形成している。また、突出部1aにおいて、熱拡散シート5の4端面は露出している。
【0047】
第1の実施形態において、中間層3を構成する熱拡散シート5は、断熱材2よりも熱伝導率が高い材料からなるものであり、例えばアルミニウムフィルムである。また、第1の樹脂フィルム4及び第2の樹脂フィルム6は、例えばポリエチレンフィルムである。
【0048】
図2は、本実施形態に係る熱伝達抑制シートを適用した組電池を模式的に示す断面図である。
組電池100は、電池ケース30と、電池ケース30の内部に格納された複数の電池セル20a、20b、20cと、電池セル20aと電池セル20bとの間、及び電池セル20bと電池セル20cとの間に介在された熱伝達抑制シート10と、を有する。複数の電池セル20a、20b、20cは、不図示のバスバー等により、直列又は並列に接続されている。また、電池ケース30の底面と複数の電池セル20a、20b、20cとの間には、板状の熱伝達部材21が配置されており、突出部1aは熱伝達部材21に接触している。
【0049】
熱伝達部材21とは、電池セル20a、20b、20cや、熱伝達抑制シート10の熱を熱伝達部材21に伝達させて放熱を促進する部材であり、例えば、ヒートシンクや蓄熱材の他に、ヒートシンク又は蓄熱材と電池セル20a、20b、20cとの間に配置された放熱材料(TIM:Thermal Interface Material)も含む。
【0050】
なお、電池セル20a、20b、20cは、例えば、リチウムイオン二次電池が好適に用いられるが、特にこれに限定されず、その他の二次電池にも適用され得る。
【0051】
このように構成された第1の実施形態においては、中間層3を挟設する一対の断熱材2の外表面に第1の樹脂フィルム4が配設されているため、第1の樹脂フィルム4は、少なくとも断熱材2を内包して封止している。したがって、断熱材2を構成する材料である粒子等の脱落を防止することができる。
【0052】
また、例えば、電池セル20aの温度が上昇した場合に、電池セル20aから発生した熱は、断熱材2を介することにより低減された後、中間層3に到達する。本実施形態においては、中間層3は、第2の樹脂フィルム6と、アルミニウムフィルムからなる熱拡散シート5により構成されており、電池セル20aから発生した熱は第2の樹脂フィルム6を介して、熱拡散シート5に到達する。熱拡散シート5は断熱材2よりも熱伝導率が高いため、熱は熱拡散シート5の面方向に拡散され、突出部1aにおける熱拡散シート5の端面から放出される。また、熱伝達抑制シート10の一端面における突出部1aは、熱伝達部材21に接触しているため、熱伝達部材21を介して効率的に熱を放出させることができる。
なお、熱拡散シート5の面方向とは、熱拡散シート5の厚さ方向に直交する面の方向をいう。
【0053】
その後、熱拡散シート5によって低減された熱は、電池セル20b側に配置された断熱材2を介することによりさらに低減される。
このようにして、電池セル20aと電池セル20bとが、熱伝達抑制シート10を介して配置されることにより、電池セル20aから熱が発生した場合に、効率的に熱を拡散することができるとともに、電池セル間の熱の伝播を抑制することができ、熱暴走の連鎖を阻止することができる。
【0054】
さらに、本実施形態においては、断熱材2の一方の面に、熱拡散シート5を有する中間層3が配置されているため、電池セル20aの温度の上昇が停止した場合であっても、断熱材2に蓄えられた熱は、中間層3側に移動する。したがって、断熱材に蓄えられた熱が電池セル20aに戻ったり、電池セル20bに伝達されることを抑制し、熱拡散シート5を介して熱を外方に放出することができる。
【0055】
上述の熱伝達抑制シート10において、その厚さ方向に平行な端面のうち、少なくとも一端面において、突出部1aが形成されていれば、上記作用効果を得ることができるが、より高い作用効果を得るためには、熱伝達抑制シート10の厚さ方向に平行な全ての端面において、突出部1aが形成されていることが好ましい。
【0056】
なお、中間層3を構成する熱拡散シート5と第2の樹脂フィルム6は、必ずしも一体化されている必要はないが、上述のとおり、第2の樹脂フィルム6と熱拡散シート5とが、ラミネート加工等により一体化されたものであることが好ましい。
このように、中間層3が一体化されていると、熱伝達抑制シート10の製造時に第2の樹脂フィルム6と熱拡散シート5との間で積層ずれが発生することを防止することができる。
【0057】
また、例えば、熱伝達抑制シート10を組電池100に適用した際に、熱拡散シート5が固定されているため、組電池100が受ける振動などの影響によって生じ得る積層ずれを原因とする熱伝達抑制効果の低減も抑制できる。
さらに、熱拡散シート5と第2の樹脂フィルム6とが密着されて一体化された構造であると、熱拡散シート5が例えば、アルミニウムフィルム等の金属からなる場合に、熱拡散シート5の表面に酸化膜等が形成されることを抑制することができる。その結果、酸化膜の形成による熱拡散シート5の伝導伝熱の低下を抑制することができ、熱の面方向への拡散効果を維持することができる。
さらにまた、第1の樹脂フィルム4と、中間層3の第2の樹脂フィルム6とを、熱融着等の簡便な接着方法で接着するのみで、熱伝達抑制シート10を容易に製造することができる。
【0058】
また、本実施形態において、熱拡散シート5の放射率が低い場合には、放射伝熱を抑制することもできるため、熱伝達抑制シート10の中央に配置されている熱拡散シート5により、熱の伝達をより一層抑制することができる。
【0059】
なお、熱伝達抑制シート10は、熱拡散シート5を中心として厚み方向に対称に構成されている。したがって、電池セル20bから熱が発生した場合であっても、この熱は電池セル20a側に向かって、断熱材2、中間層3(熱拡散シート5)、断熱材2をこの順に介することにより段階的に低減され、電池セル20aへの熱の伝播を抑制することができる。
同様に、電池セル20bから発生した熱は電池セル20c側に向かって、断熱材2、中間層3(熱拡散シート5)、断熱材2をこの順に介することにより段階的に低減されるため、電池セル20cへの熱の伝播を抑制することができる。
【0060】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す模式図である。
図3に示す第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
また、第2の実施形態は、
図2に示す組電池100に記載の熱伝達抑制シート10に代えて使用することができるため、第2の実施形態に係る熱伝達抑制シートを組電池100に適用したものとして、その効果等を説明する。
【0061】
図3に示すように、第2の実施形態に係る熱伝達抑制シート12は、一対の熱伝達抑制部材11により構成される。
熱伝達抑制部材11は、断熱材2と、断熱材2の厚さ方向に直交する一方の面に積層された機能性フィルム13と、断熱材2の厚さ方向に直交する他方の面に積層された第1の樹脂フィルム4と、を有する。機能性フィルム13は、アルミニウムフィルム等からなる熱拡散シート5と第2の樹脂フィルム6とを有し、第2の樹脂フィルム6が断熱材2側となるように配置されている。機能性フィルム13としては、熱拡散シート5と第2の樹脂フィルム6とを、接着剤等により貼り合わせたもの及びラミネート加工したラミネートフィルムや、第2の樹脂フィルム6の表面に熱拡散シート5の材料となるアルミニウム等の金属を蒸着した蒸着フィルムを使用することができる。
【0062】
また、機能性フィルム13及び第1の樹脂フィルム4において、これらの厚さ方向に直交する面における4辺が、断熱材2よりも大きく設計されている。そして、機能性フィルム13と第1の樹脂フィルム4との間に断熱材2が配置され、機能性フィルム13と第1の樹脂フィルム4とが、これらの周縁部で接着されることにより、断熱材2は、機能性フィルム13と第1の樹脂フィルム4に内包されて封止されている。
【0063】
なお、機能性フィルム13は、断熱材2の一方の面に沿って、端部まで平面状に延びている。一方、第1の樹脂フィルム4は、断熱材2の厚さ方向に平行な端面に沿って折れ曲がり、さらに機能性フィルム13の延出方向に沿って折れ曲がった構成となっている。
したがって、機能性フィルム13及び第1の樹脂フィルム4は、断熱材2の厚さ方向に平行な端面よりも突出している。
【0064】
そして、一対の熱伝達抑制部材11は、熱拡散シート5同士が対向して接触するように配置されることにより、熱伝達抑制シート12が構成される。また、一対の熱伝達抑制部材11を組み合わせた状態において、機能性フィルム13及び第1の樹脂フィルム4が突出した部分が合体されて、突出部11aが形成される。
なお、一対の熱伝達抑制部材同士は、単に重ね合わせるのみでもよいし、接着剤や係止材により両者を固定してもよい。
【0065】
このように構成された第2の実施形態においても、熱伝達抑制シート12の一対の断熱材2は、実質的に第1の樹脂フィルム4に内包された構成となっているため、断熱材2を構成する材料である粒子等の脱落を防止することができる。
また、第2の実施形態は、第1の実施形態と異なり、一対の積層された熱拡散シート5と、これらの両面に積層された一対の第2の樹脂フィルム6とにより、中間層3が構成されているが、熱拡散シート5の機能は第1の実施形態と同様である。すなわち、電池セル20aから発生した熱は、熱拡散シート5に到達した後、その面方向に拡散され、突出部11aから拡散されるため、電池セル20aと電池セル20bとの間において、優れた断熱効果を得ることができる。
【0066】
なお、第1の実施形態と、第2の実施形態において、同様の厚さの熱拡散シート5を使用した場合に、第2の実施形態では一対の熱拡散シート5が積層された構成となるため、熱伝達抑制シート12の厚さが厚くなる。ただし、熱拡散シート5は厚くなるほど面方向への熱の拡散を促進するため、要求されるサイズに応じて、熱拡散シート5の厚さを調整すればよい。
また、一対の熱伝達抑制部材11を電池セル間に配置する際に、対向するように配置された熱拡散シート5の間に、さらに任意の厚さのアルミニウムフィルムを挟設することにより、熱伝達抑制シート12を任意の厚さに設計することができるとともに、熱を面方向に伝達し、放出する効果をより一層高めることができる。
【0067】
さらに、本実施形態においては、一方の熱伝達抑制部材11のみを、電池ケース30と電池セル20a、20b、20cとの間に配置することもできる。これにより、電池セル20a、20b、20cから外部に熱が伝達されることを防止することができ、例えば、電池ケース30周辺に配置された熱影響に弱い他の部品を保護することもできる。
したがって、第2の実施形態に示すように、熱伝達抑制シート12が一対の熱伝達抑制部材11により構成されるものであると、使用する場所及び電池セル間の間隔等に応じて種々の形態をとることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0068】
上記第1及び第2の実施形態において、中間層3と第1の樹脂フィルム4が、断熱材2の厚さ方向に平行な端面よりも外方に突出しており、突出部1a、11aを形成しているが、本発明はこのような形態に限定されない。
例えば、中間層3を挟設した一対の断熱材を、第1の樹脂フィルム4により完全に包み込むような形態でもよい。また、第2の実施形態のように、熱伝達抑制シート12が一対の熱伝達抑制部材11に分割される形態の場合には、中間層3と第1の樹脂フィルム4とにより、断熱材2を包み込むような形態であってもよい。
ただし、上述のとおり、突出部1a、11aを有する第1及び第2の実施形態の方が、中間層3における熱拡散シート5の端面を露出させることができるため、中間層3に到達した熱が外部に放出されやすくなる。
【0069】
さらにまた、熱伝達抑制シート12が一対の熱伝達抑制部材1に分割される形態の場合には、突出部11aにおける熱拡散シート5が重なっている領域を開いて離隔させ、熱拡散シート5の縁部を面状に露出させることができる。したがって、面上に露出した領域を熱伝達部材21に接触させると、より一層熱を放出する効果を得ることができる。
【0070】
次に、本実施形態に係る熱伝達抑制シートを構成する断熱材、中間層等について、詳細に説明する。
【0071】
<1-1.断熱材>
本実施形態に係る熱伝達抑制シートに用いられる断熱材としては、断熱効果を有するものであれば、特に限定されない。断熱効果を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、断熱材の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、断熱材の熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。
なお、断熱材の熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
【0072】
このような断熱材として、例えば、無機繊維、有機繊維、無機粒子及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有するものを用いることができる。
無機繊維としては、アルミナファイバ、カーボンファイバ、バサルトファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、グラスファイバ、エアロゲル複合材等を使用することができる。
有機繊維としては、セルロースファイバ等を使用することができる。
なお、これらの繊維については、単一の繊維を使用してもよいし、2種以上の繊維を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
無機粒子としては、マイカ、マイクロポーラス粒子、中空シリカ粒子、熱膨張性無機材料及びエアロゲルを使用することができる。
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
有機粒子としては、中空ポリスチレン粒子等を使用することができる。
【0074】
これらの断熱材としての材料のうち、アルミナファイバ、グラスファイバ、エアロゲル複合材等を、好適に使用することができる。
【0075】
また、断熱材の他の例として、具体的には、無機粒子と、第1の無機繊維と、第2の無機繊維とを含み、第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維は、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなるものを挙げることができる。
無機粒子、第1の無機繊維及び第2の無機繊維は、いずれも耐熱性の材料であり、更には、粒子間、粒子と繊維との間、繊維間に微小な空間が無数に形成され、空気による断熱効果も発揮されるため、熱伝達抑制性能に優れる。
以下、断熱材に含有されていてもよい無機粒子、第1の無機繊維、第2の無機繊維について、以下に詳細に説明する。
【0076】
<1-1-1.無機粒子>
無機粒子の材質は特に限定されないが、熱伝達抑制効果の観点から、無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなることが好ましく、酸化物粒子を含むことがより好ましい。
また、無機粒子の形状及び大きさについても特に限定されないが、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ナノ粒子を含むことがより好ましい。
【0077】
なお、無機粒子として、単一の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。
また、無機粒子は、大径粒子と小径粒子とを混合使用することも好ましい。大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むと、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。
【0078】
無機粒子の平均二次粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の断熱効果を得ることができる。したがって、無機粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0079】
続いて、無機粒子として使用することができる粒子の材質又は形状の一例について、以下で詳細に説明する。
【0080】
(1-1-1-1.酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において放射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用することができる。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ放射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0081】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の粒子径は、放射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において断熱材内における熱の放射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。
一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0082】
2種以上の酸化物粒子を使用する場合に、大径粒子と小径粒子(ナノ粒子)とを混合使用することも好ましく、この場合の大径粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0083】
(1-1-1-2.ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、無機粒子としてナノ粒子を使用すると、更に空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
【0084】
また、本発明において、無機粒子として選択される酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子のうち、少なくとも1種がナノ粒子であることが好ましい。
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって熱伝達抑制シートが圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、断熱材の伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0085】
なお、本発明において、無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1g/cm3程度であるため、例えば、熱伝達抑制シートの両側に配置された電池セルが熱膨張し、熱伝達抑制シートに対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
【0086】
上述のとおり、チタニアは放射熱を遮る効果が高く、シリカナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、断熱材に圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができるため、無機粒子として、チタニア及びシリカナノ粒子の両方を使用することが最も好ましい。
【0087】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、断熱材の断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0088】
(1-1-1-3.無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化鉄(Fe(OH)2)、水酸化マンガン(Mn(OH)2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)2)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)等が挙げられる。
【0089】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al2O3)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)3→Al2O3+3H2O
【0090】
なお、後述するように本発明の組電池では、電池セル間に介在された熱伝達抑制シート10を有するが、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、無機粒子は熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0091】
また、無機粒子として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、断熱材の中心付近にある無機粒子(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、断熱材の中心付近の無機粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0092】
<1-1-2.第1の無機繊維>
第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維は、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である。なお、結晶質の無機繊維の融点は通常非晶質の無機繊維のガラス転移点より高い。そのため、第1の無機繊維は、高温にさらされると、その表面が第2の無機繊維より先に軟化して、無機粒子や第2の無機繊維を結着するため、断熱材の機械的強度を向上させることができる。
第1の無機繊維としては、具体的には、融点が700℃未満である無機繊維が好ましく、多くの非晶質の無機繊維を用いることができる。中でも、SiO2を含む繊維であることが好ましく、安価で、入手も容易で、取扱い性等に優れることから、ガラス繊維であることがより好ましい。
【0093】
<1-1-3.第2の無機繊維>
第2の無機繊維は、上述のとおり、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である。第2の無機繊維としては、多くの結晶性の無機繊維を用いることができる。
第2の無機繊維が結晶質の繊維からなるものであるか、又は第1の無機繊維よりもガラス転移点が高いものであると、高温にさらされたときに、第1の無機繊維が軟化しても、第2の無機繊維は溶融又は軟化しない。したがって、電池セルの熱暴走時においても形状を維持し、電池セル間に存在し続けることができる。
また、第2の無機繊維が溶融又は軟化しないと、無機粒子間、無機粒子と第1の無機繊維と第2の無機繊維との間、第1の無機繊維と第2の無機繊維との間における微小な空間が維持されるため、空気による断熱効果が発揮され、優れた熱伝達抑制性能を保持することができる。
【0094】
第2の無機繊維が結晶質である場合に、第2の無機繊維としては、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維及びジルコニア繊維等のセラミックス系繊維、並びに、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維及びウォラストナイト等の鉱物系繊維等が挙げられる。
第2の無機繊維として挙げられた繊維のうち、融点が1000℃を超えるものであると、電池セルの熱暴走が発生しても、第2の無機繊維は溶融又は軟化せず、その形状を維持することができるため、好適に使用することができる。
なお、上記第2の無機繊維として挙げられた繊維のうち、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維及びアルミナシリケート繊維等のセラミックス系繊維、並びに鉱物系繊維を使用することがより好ましく、この中でも融点が1000℃を超えるものを使用することが更に好ましい。
また、第2の無機繊維が非晶質である場合であっても、第1の無機繊維よりもガラス転移点が高い繊維であれば、使用することができる。例えば、第1の無機繊維よりガラス転移点が高いガラス繊維を第2の無機繊維として用いてもよい。
なお、第2の無機繊維としては、例示した種々の無機繊維を単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
【0095】
なお、上記のとおり、第1の無機繊維は第2の無機繊維よりもガラス転移点が低く、高温にさらされたときに、第1の無機繊維が先に軟化するため、第1の無機繊維で無機粒子及び第2の無機繊維を結着することができる。しかし、例えば、第2の無機繊維が非晶質であって、その繊維径が第1の無機繊維の繊維径よりも細い場合に、第1の無機繊維と第2の無機繊維とのガラス転移点が接近していると、第2の無機繊維が先に軟化するおそれがある。
したがって、第2の無機繊維が非晶質の繊維である場合に、第2の無機繊維のガラス転移点は、第1の無機繊維のガラス転移点よりも100℃以上高いことが好ましく、300℃以上高いことがより好ましい。
【0096】
(無機繊維の平均繊維径)
本発明において、平均繊維径が太い(太径の)無機繊維は、断熱材の機械的強度や保形性を向上させる効果を有する。第1の無機繊維及び第2の無機繊維のいずれか一方を太径にすることにより、上記効果を得ることができる。熱伝達抑制シートには、外部からの衝撃が作用することがあるため、太径の無機繊維が含まれることにより耐衝撃性が高まる。外部からの衝撃としては、例えば電池セルの膨張による押圧力や、電池セルの発火による風圧などである。
また、断熱材の機械的強度や保形性を向上させるためには、太径の無機繊維は線状又は針状であることが特に好ましい。なお、線状又は針状の繊維とは、後述の捲縮度が例えば10%未満、好ましくは5%以下である繊維をいう。
【0097】
より具体的には、断熱材の機械的強度や保形性を向上させるためには、太径の無機繊維の平均繊維径は1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。ただし、太径の無機繊維が太すぎると、断熱材への成形性、加工性が低下するおそれがあるため、平均繊維径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
なお、太径の無機繊維は長すぎても成形性や加工性が低下するおそれがあるため、繊維長を100mm以下とすることが好ましい。さらに、太径の無機繊維は短すぎても保形性や機械的強度が低下するため、繊維長を0.1mm以上とすることが好ましい。
【0098】
一方、平均繊維径が細い(細径の)無機繊維は、無機粒子の保持性を向上させるとともに、断熱材の柔軟性を高める効果を有する。したがって、第1の無機繊維及び第2の無機繊維のうち、他方を細径にすることにより、上記効果を得ることができる。
【0099】
より具体的に、無機粒子の保持性を向上させるためには、細径の無機繊維は変形が容易で、柔軟性を有することが好ましい。したがって、細径の無機繊維は、平均繊維径が1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。ただし、細径の無機繊維が細すぎると破断しやすく、無機粒子の保持能力が低下する。また、無機粒子を保持せずに繊維が絡み合ったままで断熱材中に存在する割合が多くなり、無機粒子の保持能力の低下に加えて、成形性や保形性にも劣るようになる。そのため、細径の無機繊維の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
なお、細径の無機繊維は、長くなりすぎると成形性や保形性が低下するため、繊維長は0.1mm以下であることが好ましい。
【0100】
また、細径の無機繊維は、樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。細径の無機繊維がこのような形状であると、断熱材において、太径の無機繊維や無機粒子と絡み合う。そのため、無機粒子の保持能力が向上する。また、断熱材が押圧力や風圧を受けた際に、細径の無機繊維が滑って移動することが抑制され、このことにより、特に外部からの押圧力や衝撃に抗する機械的強度が向上する。
【0101】
なお、樹枝状とは、2次元的または3次元的に枝分かれした構造であり、例えば羽毛状、テトラポット形状、放射線状、立体網目状である。
細径の無機繊維が樹枝状である場合に、その平均繊維径は、SEMによって幹部及び枝部の径を数点測定し、これらの平均値を算出することにより得ることができる。
【0102】
また、縮れ状とは、繊維が様々な方向に屈曲した構造である。縮れ形態を定量化する方法の一つとして、電子顕微鏡写真からその捲縮度を算出することが知られており、例えば下記式から算出することができる。
捲縮度(%)=(繊維長さ-繊維末端間距離)/(繊維長さ)×100
ここで、繊維長さ、繊維末端間距離ともに電子顕微鏡写真上での測定値である。すなわち、2次元平面上へ投影された繊維長、繊維末端間距離であり、現実の値よりも短くなっている。この式に基づき、細径の無機繊維の捲縮度は10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。捲縮度が小さいと、無機粒子の保持能力や、太径の無機繊維同士、太径の無機繊維との絡み合い(ネットワーク)が形成されにくくなる。
【0103】
上述のとおり、第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維のいずれか一方の平均繊維径が、他方の平均繊維径よりも大きいことが好ましいが、本発明においては、第1の無機繊維の平均繊維径が、第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことがより好ましい。第1の無機繊維の平均繊維径が太径であると、第1の無機繊維のガラス転移点が低く、早く軟化するため、温度の上昇に伴って膜状となって硬くなる。一方、第2の無機繊維の平均繊維径が細径であると、温度が上昇しても細径の第2の無機繊維が繊維の形状で残存するため、断熱材の構造を保持し、粉落ちを防止することができる。
【0104】
なお、第1の無機繊維として、太径であって線状又は針状の無機繊維と、細径であって樹枝状又は縮れ状の無機繊維との両方が使用されており、第2の無機繊維として、太径であって線状又は針状の無機繊維と、細径であって樹枝状又は縮れ状の無機繊維との両方が使用されていると、無機粒子の保持効果、機械的強度及び保形性をより一層高めることができるため、最も好ましい。
【0105】
(無機粒子、第1の無機繊維及び第2の無機繊維の各含有量)
上記の無機粒子の含有量は、断熱材の全質量に対して30質量%以上94質量%以下であることが好ましく、第1の無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、第2の無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0106】
また、より好ましくは、断熱材の全質量に対して、無機粒子の含有量が60質量%以上90質量%以下であり、第1の無機繊維の含有量が5質量%以上15質量%以下であり、第2の無機繊維の含有量が5質量%以上15質量%以下である。このような含有量にすることにより、無機粒子による吸熱・断熱効果、第1の無機繊維による保形性や押圧力耐性、抗風圧性、及び第2の無機繊維による無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。
【0107】
<1-1-4.他の配合材料>
断熱材には、必要に応じて、有機繊維や有機バインダ等を配合することができる。これらはいずれも断熱材の補強や成形性の向上を目的とする上で有用であり、断熱材の全質量に対して合計量で、10質量%以下とすることが好ましい。
【0108】
<1-2.第1の樹脂フィルム>
第1の樹脂フィルムは、少なくとも上記断熱材を内包して封止するものであり、断熱材を構成する材料である粒子等の脱落を防止することができる。
第1の樹脂フィルムを構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニルスルフィド、ポリカーボネート及びアラミドから選択された少なくとも1種の樹脂を選択することができる。
【0109】
上述のとおり、第1の樹脂フィルムは、断熱材の外表面を覆い、粒子等の脱落を防止する効果を有するため、適切な厚さを有することが好ましい。また、
図1及び
図3に示すように、断熱材の厚さ方向に積層された第1の樹脂フィルムが、断熱材の形状に沿って折れ曲がった構成となる場合には、第1の樹脂フィルムは適切な可撓性を有することが好ましい。
第1の樹脂フィルムの厚さが1mmを超えると、断熱材の形状に追従させることが困難となり、ひびや割れが発生するおそれがある。したがって、第1の樹脂フィルムの厚さは、1mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましく、0.05mm以下であることがさらに好ましい。
一方、第1の樹脂フィルムの厚さの下限は特に限定されないが、電池セル等との摩擦により破れが発生することを防止するために、0.005mm以上であることが好ましく、0.01mm以上であることがより好ましい。
【0110】
また、第1の樹脂フィルムは、電池セルに接するため、難燃性を有することが好ましく、具体的には、無機物又は難燃材を含むことが好ましい。第1の樹脂フィルムを構成する材料として、第1の樹脂フィルムに含有させる無機物としては、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、バーミキュライト、ゼオライト、合成シリカ、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナが挙げられ、難燃材としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、ホウ系難燃剤、シリコーン系難燃剤及び、窒素含有化合物が挙げられる。
【0111】
<1-3.中間層>
本実施形態に係る熱伝達抑制シートに用いられる中間層3は、上記断熱材よりも熱伝導率が高い熱拡散シート5と、熱拡散シート5の両面に積層された第2の樹脂フィルム6と、を含み、熱拡散シート5は、熱を面方向に拡散させる効果を有する。
【0112】
(1-3-1.熱拡散シート)
熱拡散シート5として、具体的には、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金、錫又は錫合金、ニッケル又はニッケル合金、ステンレス鋼、鉛又は鉛合金、青銅、イリジウム、燐青銅、銀又は銀合金、チタン又はチタン合金、セラミック、グラファイト及びダイヤモンドライクカーボンから選択された少なくとも1種を含むものを使用することができる。
また、熱拡散シートとしてセラミックを使用する場合に、セラミックとしては、AlN、SiC、BN及びTiNから選択された少なくとも1種を使用することができる。
【0113】
(1-3-2.第2の樹脂フィルム)
上述のとおり、第2の樹脂フィルム6により、酸化しやすい金属からなる熱拡散シート5の表面を保護し、酸化膜が形成されることを抑制して、熱を面方向に拡散させる効果を維持することができる。また、第2の樹脂フィルム6と熱拡散シート5とが一体化されている場合には、第1の樹脂フィルム4と第2の樹脂フィルム6とを熱融着等の簡便な接着方法を利用することができるため、上記第1及び第2の実施形態に示す形態の熱伝達抑制シート10、12を容易に製造することができる。
【0114】
第2の樹脂フィルムを構成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニルスルフィド、ポリカーボネート及びアラミドから選択された少なくとも1種の樹脂を選択することができる。第2の樹脂フィルムは、上記第1の樹脂フィルムと同一の材料からなるものであっても、異なる材料からなるものであってもよい。
【0115】
第2の樹脂フィルムは上記熱拡散シート(例えば、金属フィルム)と積層されて、中間層又は機能性フィルムを構成するため、第2の樹脂フィルムの厚さが薄すぎると、第2の樹脂フィルムが破れたり、熱拡散シートや断熱材2から剥がれることにより、断熱材2と機能性フィルム間に空間が出来てしまい、機能性フィルムへの熱伝導が阻害されるおそれがある。したがって、第2の樹脂フィルムの厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがより好ましい。
一方、第2の樹脂フィルムの厚さが厚すぎると、第2の樹脂フィルム中の有機物量が増加するため、難燃性が低下する。したがって、第2の樹脂フィルムの厚さは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。
【0116】
また、第2の樹脂フィルムは電池セルに接することはないが、電池セルの熱暴走により高温に晒されるおそれがあるため、難燃性を有することが好ましく、具体的には、第1の樹脂フィルムと同様に、無機物又は難燃材を含むことが好ましい。無機物としては、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、バーミキュライト、ゼオライト、合成シリカ、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナが挙げられ、難燃材としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、ホウ系難燃剤、シリコーン系難燃剤及び、窒素含有化合物が挙げられる。
【0117】
さらに、第2の樹脂フィルムは、絶縁系の導電性フィラーを材料として含有していることが好ましい。高熱伝導材料には導電系フィラーと絶縁系フィラーが考えられ、このどちらを使用しても問題ないが、バッテリセル間の用途としては、絶縁系フィラーを使用する方がより好ましい。高熱伝導材料フィラーとは、高熱伝導率な無機(絶縁系)フィラーを樹脂フィルム中に分散させた材料であり、高熱伝導率な無機フィラーとしては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素が挙げられる。
第2の樹脂フィルムが高熱伝導材料フィラーを含有している場合に、第2の樹脂フィルムの熱伝導率が、熱拡散シート5よりも高すぎると、伝熱が所望の方向に進まず、第2フィルムに熱が篭る可能性がある。したがって、第2の樹脂フィルムの熱伝導率は、熱拡散シート5の熱伝導率よりも低いことが好ましい。
一方、第2の樹脂フィルムの熱伝導率が低すぎると、電池セルから発生した熱が熱拡散シートまで到達しにくくなるため、第2の樹脂フィルムの熱伝導率は、0.2(W/m・K)以上であることが好ましく、0.5(W/m・K)以上であることがより好ましく、1.0(W/m・K)以上であることがさらに好ましい。
【0118】
なお、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムの厚さは同じであってもよいが、熱伝達抑制部材が
図4に示すような形状である場合に、上述のとおり、第1の樹脂フィルムは断熱材の表面に追従する形状となるため、第1の樹脂フィルムの厚さが、第2の樹脂フィルムの厚さよりも薄い方が好ましい。
また、電池セルから発生した熱は、第1の樹脂フィルムを介して断熱材に到達するため、第1の樹脂フィルムは断熱材と同様に断熱性を有していてもよく、例えば、断熱材の熱伝導率と同程度であってもよい。しかし、第2の樹脂フィルムの熱伝導率が低いと、熱が熱拡散シートに到達せず、熱を熱拡散シートの面方向に放出させることが困難になる。したがって、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムの熱伝導率は同じであってもよいが、第1の樹脂フィルムの熱伝導率が、第2の樹脂フィルムの熱伝導率よりも低い方が好ましい。
【0119】
続いて、本実施形態に係る熱伝達抑制シートの製造方法について説明する。
【0120】
[2.熱伝達抑制シートの製造方法]
本実施形態に係る熱伝達抑制シートは、例えば以下の方法により製造することができる。
まず、一対の断熱材と、断熱材の厚さ方向に直交する面よりも大きいサイズの一対の第1の樹脂フィルムと、中間層とを準備する。次に、第1の樹脂フィルム/断熱材/中間層/断熱材/第1の樹脂フィルムの順にこれらを積層して配置する。その後、断熱材から延出した周縁部で、第1の樹脂フィルムと中間層とを接着することにより、熱伝達抑制シートを得ることができる。
【0121】
なお、第2の実施形態に示すように、一対の熱伝達抑制部材により熱伝達抑制シートを構成する場合には、一対の断熱材と、断熱材の厚さ方向に直交する面よりも大きいサイズの一対の第1の樹脂フィルムと機能性フィルムと準備する。機能性フィルムとして、熱拡散シートと第2の樹脂フィルムとを積層したものを準備する。次に、機能性フィルムと第1の樹脂フィルムとを、機能性フィルムにおける第2の樹脂フィルムが第1の樹脂フィルムに対向するように配置し、これらの間に一方の断熱材を配置する。その後、断熱材から延出した周縁部で、第1の樹脂フィルムと機能性フィルムとを接着することにより、熱伝達抑制部材を作製する。その後、同様にして作製した他方の熱伝達抑制部材とともに、機能性フィルムにおける熱拡散シート同士を接触させるように組み合わせることにより、熱伝達抑制シートを得ることができる。
【0122】
また、第1の樹脂フィルム及び中間層の周縁部、又は第1の樹脂フィルム及び機能性フィルムの周縁部を、一部だけ残した状態で熱融着等により接着して袋状に形成し、その内部に断熱材の材料を挿入した後に、接着されていない箇所を接着することにより、熱伝達抑制シートを製造することもできる。このような方法によると、シート状又は板状に加工された断熱材の他、粉末状、粒子状、繊維状等のままの断熱材を封入することができる。その結果、種々の要求に応じて、断熱材を構成する材料を容易に調整することができ、断熱材の構成の自由度を向上させることができる。
【0123】
(熱伝達抑制シートの厚さ)
本実施形態において、熱伝達抑制シートの厚さは特に限定されないが、0.05~6mmの範囲にあることが好ましい。熱伝達抑制シートの厚さが0.05mm以上であると、充分な機械的強度を熱伝達抑制シートに付与することができる。一方、熱伝達抑制シートの厚さが6mm以下であると、良好な組付け性を得ることができる。
【0124】
[3.組電池]
本発明の実施形態に係る組電池は、電池ケースと、電池ケースの内部に格納され、直列又は並列に接続された複数の電池セルと、複数の電池セル間に介在される上記[1.熱伝達抑制シート]に記載の熱伝達抑制シートと、を有する。
また、本発明の他の実施形態に係る組電池は、電池ケースと、電池ケースの内部に格納され、直列又は並列に接続された複数の電池セルと、複数の電池セル間に介在される熱伝達抑制シートと、複数の電池セルと電池ケースとの間に設けられた熱伝達部材と、を有する。そして、
図2に示すように、突出部1aにおける熱拡散シート5の端面と熱伝達部材21とが接触している。
【0125】
このように構成された本実施形態に係る組電池においては、複数の電池セルの間に上記[1.熱伝達抑制シート]に記載の熱伝達抑制シートを介在させているため、1つの電池セルから熱が発生した場合に、断熱材により熱の伝達が低減されるとともに、熱拡散シートにより面方向へ熱が拡散されて放出される。したがって、電池セル間の熱の伝播を抑制することができ、熱暴走の連鎖を阻止することができる。
また、突出部における熱拡散シートの端面と熱伝達部材とが接触していると、熱伝達部材21を介して、より一層効率的に熱を放出させることができる。
【0126】
なお、図示は省略するが、上記[1.熱伝達抑制シート]に記載の熱伝達抑制シートは、複数の電池セル間のみでなく、電池セルと電池ケースとの間等に配設することができる。したがって、高い汎用性が得られるとともに、隣接する電池セル間で熱が伝播することによる熱暴走の連鎖を防止する効果を有するのみでなく、ある電池セルが発火した場合に、電池ケースの外側に炎が広がることを抑制することができる。
【0127】
例えば、本実施形態に係る組電池は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
また、この場合に、各電池セル間に介在させる熱伝達抑制シート等を、電池セルと電池ケースとの間にも配置することができるため、新たに防炎材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な組電池を構成することができる。
【符号の説明】
【0128】
1a,11a 突出部
2 断熱材
3 中間層
4 第1の樹脂フィルム
5 熱拡散シート
6 第2の樹脂フィルム
10,12 熱伝達抑制シート
11 熱伝達抑制部材
13 機能性フィルム
20a,20b,20c 電池セル
21 熱伝達部材
30 電池ケース
100 組電池