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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056759
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】表面計測装置及び表面計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/47 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
G01N21/47 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166162
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄貴
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB10
2G059EE02
2G059FF01
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】計測対象表面の反射分布特性の違いを簡易かつ短時間に計測することができる表面計測装置及び表面計測方法を提供すること。
【解決手段】計測対象表面Sから所定距離h離隔した位置にレンズ12aを固定配置して計測対象表面Sを撮像する撮像部12と、計測対象表面から所定距離h離隔した位置であって撮像部12に隣接した位置に固定配置されて計測対象表面Sに光を照射する点光源11と、点光源11から計測対象表面Sに光を照射し、撮像部12を計測対象表面Sに合焦させて計測対象表面Sからの反射光を受光して計測対象表面Sの表面画像を取得する画像取得処理部24aと、計測対象表面Sから反射する異なる方向からの反射光を、点光源11及び撮像部12を計測対象表面Sに対して平行移動した場合における計測対象表面S上の1点からの反射光として反射分布特性を求める反射分布特性算出部24bとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象表面の反射分布特性を計測する表面計測装置であって、
前記計測対象表面から所定距離離隔した位置にレンズを固定配置して前記計測対象表面を撮像する撮像部と、
前記計測対象表面から前記所定距離離隔した位置に固定配置されて前記計測対象表面に光を照射する点光源と、
前記点光源から前記計測対象表面に光を照射し、前記撮像部を前記計測対象表面に合焦させて前記計測対象表面からの反射光を受光して前記計測対象表面の表面画像を取得する画像取得処理部と、
前記計測対象表面から反射する異なる方向からの反射光を、前記点光源及び前記撮像部を前記計測対象表面に対して平行移動した場合における前記計測対象表面上の1点からの反射光として前記反射分布特性を求める反射分布特性算出部と
を備えたことを特徴とする表面計測装置。
【請求項2】
前記点光源は、前記計測対象表面から前記所定距離離隔した位置であって前記撮像部に隣接した位置に固定配置されて前記計測対象表面に光を照射することを特徴とする請求項1に記載の表面計測装置。
【請求項3】
前記計測対象表面から前記撮像部及び前記点光源を前記所定距離離隔した位置に保持して前記計測対象表面上の計測空間を覆う保持部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面計測装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記計測空間の外部からの光入射を遮断する機能を有することを特徴とする請求項3に記載の表面計測装置。
【請求項5】
前記計測対象表面上に形成される計測空間の表面のうち、前記計測対象表面、前記点光源の光照射口、及び、前記撮像部の撮像口以外の領域に、前記計測空間内の光の反射を防止する反射防止膜が設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の表面計測装置。
【請求項6】
前記反射分布特性算出部によって求められた反射分布特性を表示部に3次元グラフ表示する表示処理部を備えたことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の表面計測装置。
【請求項7】
計測対象表面の反射分布特性を計測する表面計測方法であって、
前記計測対象表面から所定距離離隔した位置にレンズを固定配置して前記計測対象表面を撮像する撮像部と、前記計測対象表面から前記所定距離離隔した位置に固定配置されて前記計測対象表面に光を照射する点光源とを配置し、前記点光源から前記計測対象表面に光を照射し、前記撮像部を前記計測対象表面に合焦させて前記計測対象表面からの反射光を受光して前記計測対象表面の表面画像を取得する画像取得処理ステップと、
前記計測対象表面から反射する異なる方向からの反射光を、前記点光源及び前記撮像部を前記計測対象表面に対して平行移動した場合における前記計測対象表面上の1点からの反射光として前記反射分布特性を求める反射分布特性算出ステップと
を含むことを特徴とする表面計測方法。
【請求項8】
画像取得処理ステップは、前記点光源を、前記計測対象表面から前記所定距離離隔した位置であって前記撮像部に隣接した位置に固定配置し、前記点光源から前記計測対象表面に光を照射し、前記撮像部を前記計測対象表面に合焦させて前記計測対象表面からの反射光を受光して前記計測対象表面の表面画像を取得することを特徴とする請求項7に記載の表面計測装置。
【請求項9】
前記反射分布特性算出ステップによって求められた反射分布特性を3次元グラフ表示する表示処理ステップを含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の表面計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象表面の反射分布特性の違いを簡易かつ短時間に計測することができる表面計測装置及び表面計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック部品などの部品の表面や塗装面は、光学的異方性があると、明るさや色味が同じであっても、見栄えが悪くなる。この光学的異方性の評価は、一般に、複数もしくは可動するレーザや光センサを用いて部品表面や塗装面からの反射光の拡散方向や光量(反射特性)を計測することによって行っている。計測結果は、双方向反射率分布関数(BRDF:Bidirectional Reflectance Distribution Function)と呼ばれ、物体から周囲への反射光の放射分布特性として求める手法があり、コンピュータグラフィックス(CG)などの各種用途にも用いられる。
【0003】
評価対象物体のBRDFを計測する手法としては、光源や光センサを相互に動かしながら行う手法(特許文献1参照)、多数の光ファイバを用いる手法(特許文献2参照)、球頂点に魚眼カメラと球殻上に複数のスポット光源を設置して可動部を排する手法(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平08-501880号公報
【特許文献2】特開2000-187000号公報
【特許文献3】特開2013-032951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のBRDFの計測手法は装置構成が複雑であるとともに、反射光の放射分布特性の取得に多大な時間を要するという課題があった。一方、表面評価の内容によっては、詳細な反射分布特性まで必要とせず、表面の反射分布特性が異なるか否かの情報のみで有効な評価を行うことができる場合がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、計測対象表面の反射分布特性の違いを簡易かつ短時間に計測することができる表面計測装置及び表面計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、計測対象表面の反射分布特性を計測する表面計測装置であって、前記計測対象表面から所定距離離隔した位置にレンズを固定配置して前記計測対象表面を撮像する撮像部と、前記計測対象表面から前記所定距離離隔した位置に固定配置されて前記計測対象表面に光を照射する点光源と、前記点光源から前記計測対象表面に光を照射し、前記撮像部を前記計測対象表面に合焦させて前記計測対象表面からの反射光を受光して前記計測対象表面の表面画像を取得する画像取得処理部と、前記計測対象表面から反射する異なる方向からの反射光を、前記点光源及び前記撮像部を前記計測対象表面に対して平行移動した場合における前記計測対象表面上の1点からの反射光として前記反射分布特性を求める反射分布特性算出部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の発明において、前記点光源は、前記計測対象表面から前記所定距離離隔した位置であって前記撮像部に隣接した位置に固定配置されて前記計測対象表面に光を照射することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記計測対象表面から前記撮像部及び前記点光源を前記所定距離離隔した位置に保持して前記計測対象表面上の計測空間を覆う保持部を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記保持部は、前記計測空間の外部からの光入射を遮断する機能を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記計測対象表面上に形成される計測空間の表面のうち、前記計測対象表面、前記点光源の光照射口、及び、前記撮像部の撮像口以外の領域に、前記計測空間内の光の反射を防止する反射防止膜が設けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記反射分布特性算出部によって求められた反射分布特性を表示部に3次元グラフ表示する表示処理部を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、計測対象表面の反射分布特性を計測する表面計測方法であって、前記計測対象表面から所定距離離隔した位置にレンズを固定配置して前記計測対象表面を撮像する撮像部と、前記計測対象表面から前記所定距離離隔した位置に固定配置されて前記計測対象表面に光を照射する点光源とを配置し、前記点光源から前記計測対象表面に光を照射し、前記撮像部を前記計測対象表面に合焦させて前記計測対象表面からの反射光を受光して前記計測対象表面の表面画像を取得する画像取得処理ステップと、前記計測対象表面から反射する異なる方向からの反射光を、前記点光源及び前記撮像部を前記計測対象表面に対して平行移動した場合における前記計測対象表面上の1点からの反射光として前記反射分布特性を求める反射分布特性算出ステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、画像取得処理ステップは、前記点光源を、前記計測対象表面から前記所定距離離隔した位置であって前記撮像部に隣接した位置に固定配置し、前記点光源から前記計測対象表面に光を照射し、前記撮像部を前記計測対象表面に合焦させて前記計測対象表面からの反射光を受光して前記計測対象表面の表面画像を取得することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記反射分布特性算出ステップによって求められた反射分布特性を3次元グラフ表示する表示処理ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、計測対象表面の反射分布特性の違いを簡易かつ短時間に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施の形態に係る表面計測装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、反射分布特性計測の原理を説明する説明図である。
図3図3は、計測対象表面を1つの測定点とした場合における入射角と反射角との反射分布特性のマトリックスを示す図である。
図4図4は、入反射角θと入反射角φとの関係を示す図である。
図5図5は、表面画像上の入反射角θと入反射角φとの位置関係を示す図である。
図6図6は、入反射角φが120°のときの入反射角θの入反射特性のマトリックスの一例を示す図である。
図7図7は、入反射角φを変化させたときの入反射角θの反射分布特性の一例を示す図である。
図8図8は、制御部による反射分布特性計測処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る表面計測装置及び表面計測方法について説明する。
【0019】
<概要構成>
図1は、本実施の形態に係る表面計測装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、表面計測装置1は、部品などの物体100の計測対象表面Sの反射分布特性の違いを簡易かつ短時間に計測するものであり、計測部10及び計測処理装置20を有する。なお、物体100は、樹脂射出成型された部品であるが、これに限らない。
【0020】
計測部10は、物体100の計測対象表面S上に配置されるものであり、計測対象表面Sから所定距離h離隔した位置にレンズ12aを固定配置して計測対象表面Sを撮像する撮像部12と、計測対象表面Sから所定距離h離隔した位置であって撮像部12に隣接した位置に固定配置されて計測対象表面Sに光を照射する点光源11とを有する。撮像部12は、広角カメラであり、実質的に同一の反射分布特性を有するとみなせる狭いエリアの計測対象表面Sを近距離で撮像する。点光源11は、計測対象表面Sに対して同一強度の光を照射する。
【0021】
点光源11及び撮像部12は、保持部13に取り付けられる。保持部13は、有底筒状体をなし、開口部側が物体100に向けられ、開口部に計測対象表面Sが内側に向けて露出する。この状態で、点光源11及び撮像部12のレンズ12aは、計測対象表面Sから所定距離hの高さ位置となり、点光源11と撮像部12とが隣接配置されるように配置される。なお、点光源11は、撮像部12に対して隣接配置されず、レンズ12aを通り計測対象表面Sに平行な平面上においてレンズ12aから一定距離離れた位置に配置してもよい。
【0022】
保持部13内の点光源11及びレンズ12aと、計測対象表面Sとの間には、計測空間Eが形成される。点光源11は、この計測空間Eに光を照射し、撮像部12は、計測対象表面Sから反射された光を受光して計測対象表面Sの表面画像を撮像する。
【0023】
保持部13は、計測空間Eの外部からの光入射を遮断する機能を有する。また、計測空間Eの上面及び側面には、反射防止膜14が配置される。反射防止膜14は、点光源11の光照射口及び撮像部12の撮像口には設けられない。また、反射防止膜14は、計測対象表面Sにも設けられない。これにより、計測空間Eには、ノイズとなる外来光は入射されない。また、撮像部12は、計測対象表面Sで反射した反射光、例えば正反射光L10,L11の再反射光を受光することがなく、計測対象表面Sからの直接反射光、例えば反射光LA,LB,LCを受光することができる。なお、反射防止膜14に限らず、反射防止壁や反射シートなどの反射防止機能を有する反射防止手段であってもよい。また、保持部13を設けず、所定距離hを計測するレーザ測距機などの測距部を設け、隣接配置された点光源11及び撮像部12によって反射分布特性を計測してもよい。これは、反射分布特性を得るための表面画像の取得が1回の撮像のみで瞬時に終わるからである。
【0024】
計測処理装置20は、入力部21、表示部22、記憶部23及び制御部24を有する。入力部21は、マウスやキーボードなどの入力インタフェースである。表示部22は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示インタフェースである。記憶部23は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスである。
【0025】
制御部24は、計測処理装置20の全体を制御する制御部であり、画像取得処理部24a、反射分布特性算出部24b及び表示処理部24cを有する。制御部24は、これらの機能部に対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0026】
画像取得処理部24aは、点光源11及び撮像部12を制御して、点光源11から計測対象表面Sに光を照射し、撮像部12を計測対象表面Sに合焦させて計測対象表面Sからの反射光を受光して計測対象表面Sの表面画像を取得する。なお、撮像部12の合焦時は、レンズ12aと撮像素子12bとの間の距離が焦点距離となる。
【0027】
反射分布特性算出部24bは、計測対象表面Sから反射する異なる方向からの反射光を、点光源11及び撮像部12を計測対象表面Sに対して平行移動した場合における計測対象表面S上の1点からの反射光として反射分布特性を求める。これは、前提として、計測対象表面S上のどの位置であっても反射分布特性が同じであるからであり、詳細については後述する。
【0028】
表示処理部24cは、反射分布特性算出部24bによって算出された反射分布特性を表示部22に3次元グラフ表示する。なお、3次元グラフ表示に限らず、2次元グラフ表示であってもよい。
【0029】
<反射分布特性計測の原理>
図2は、反射分布特性計測の原理を説明する説明図である。図2(a)に示すように点光源11から照射された拡散光は、例えば計測対象表面S上の測定点PA,PB,PCに入射される。そして例えば、測定点PAに入射した光は、大部分が正反射光L10として反射し、一部は、拡散光として測定点PAから様々な方向に拡散する。
【0030】
ここで、撮像部12は、計測対象表面Sに合焦すると、測定点PAから撮像部12に向かう反射光LAは、撮像素子12b上の1画素として結像する。同様に測定点PB,PCから撮像部12に向かう反射光LB,LCも、それぞれ撮像素子12b上の1画素として結像する。そして、撮像素子12b上における反射光LA,LB、LCの結像位置は、測定点PA,PB,PCの位置にそれぞれ一意に対応する。なお、各画素の画素値は、反射光の光量を示し、この画素値を用いて一定光量の入射光に対する反射率を算出することができる。
【0031】
測定点PAから撮像部12に向かう反射光LAは、測定点PAに入射角θiで入射し、反射角θrで反射した光であり、反射角θrは、レンズ12aと撮像素子12bとの間の焦点距離と、撮像素子12b上における光軸から、反射光LAの結像位置までの距離とをもとに求めることができる。反射光LB,LCの反射角も同様にして求めることができる。ここで、点光源11及び撮像部12が隣接配置されているため、入射角θiと反射角θrとは実質的に同一となる。すなわち、測定点PA,PB,PCの入反射光対L1,L2,L3の入射角θiは、それぞれ反射光LA,LB,LCの反射角θrと実質的に同じとなる。
【0032】
ここで、図2(b)に示すように、入反射光対L1,L2,L3は、計測対象表面Sの1つの測定点Pに対し、点光源11及び撮像部12を計測対象表面Sに対して平行移動して計測対象表面S上の1つの測定点に対するものと同じ入射角θi及び反射角θrとなる。本実施の形態では、測定点PA,PB,PCが計測対象表面S上の異なる位置であるが、計測対象表面S全体の反射分布特性は、計測対象表面Sの位置(X,Y)に依らず、一様であることを前提としている。これは、計測対象表面Sのエリアをきわめて小さくすると、計測対象表面Sの反射分布特性は一様に近似していると言えるからである。したがって、本実施の形態では、点光源11及び撮像部12を平行移動せずとも、点光源11及び撮像部12を平行移動して得られる反射分布特性を計測することができる。
【0033】
図3は、計測対象表面Sを1つの測定点とした場合における入射角θiと反射角θrとの反射分布特性のマトリックスを示す図である。図3に示すように、測定点PAは、入射角θi及び反射角θrが30°であり、反射率DAとしてマトリックス上に記録される。同様に測定点PBは、入射角θi及び反射角θrが0°であり、反射率DBとしてマトリックス上に記録される。同様に測定点PCは、入射角θi及び反射角θrが-30°であり、反射率DCとしてマトリックス上に記録される。なお、反射角θrは、マイナスで示しているが、入射角と反射角とは同じ角度である。したがって、本実施の形態では、マトリックスの入射角θiと反射角θrと同じ対角線上の反射率が得られる粗の反射分布特性が得られる。
【0034】
図4に示すように、実際の入射角と反射角は、3次元角であり、図2におけるYZ平面に限るものではなく、Z軸回りの角度成分を有し、BRDFでは、入射角θiと反射角θr、及び、入射角φiと反射角φrの4つの平面角を用いて定義される。そして、入射角φi及び反射角φrは、入射角θi及び反射角θrと同様に求めることができる。本実施の形態では、入射角と反射角とが同一という制限があるものの、入射角θi、反射角θr、入射角φi、反射角φrのすべてを求めることができる。なお、点光源11が撮像部12に対して隣接配置されず、レンズ12aを通り計測対象表面Sに平行な平面(XY平面)上においてレンズ12aから一定距離離れた位置に配置した場合、図3のマトリクス上において入射角と反射角とが異なる領域の値を求めることができる。
【0035】
図5に示すように、表面画像Dにおける反射角φrの反射光の画素位置は、光軸を中心にφ(φr)回転した位置に、反射率DA,DB,DCと同様に反射率DA´,DB´,DC´が求められる。すなわち、入反射角φが変化した入反射角θの反射率を求めることができる。
【0036】
一般に、BRDFは、6次元(位置X、位置Y,入射角θi,入射角φi,反射角θr,反射角φr)のパラメータをもつが、本実施の形態では、位置X,Yが位置に依らず一定であり、入射角と反射角とが等しいため、入反射角θと入反射角φの2次元のパラメータとなり、簡易かつ短時間で反射分布特性を得ることができる。そして、この反射分布特性を用いて、計測対象表面の反射分布特性の違いを簡易かつ短時間に計測することができる。
【0037】
<反射分布特性の一例>
図6は、入反射角φが120°のときの入反射角θの入反射特性を示すマトリックスの一例である。本実施の形態では、対角線上の反射率が求められる。図7は、入反射角φを変化させたときの入反射角θの反射分布特性の一例を示す図である。なお、入反射角θ、入反射角φ、反射率の円筒座標系でグラフ化してもよい。図7に示すように、本実施の形態では、複雑な多次元の反射分布特性を、1つの3次元グラフとしてまとめることができるので、反射分布特性の違いを容易に判定することができる。
【0038】
<反射分布特性計測処理>
図8は、制御部24による反射分布特性計測処理手順を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、制御部24は、計測対象表面Sへの計測部10の配置を確認し(ステップS110)、点光源11を点灯する(ステップS120)。その後、撮像部12が計測対象表面Sに合焦し(ステップS130)、表面画像Dを取得する(ステップS140)。その後、点光源11を消灯し(ステップS150)、表面画像Dの各画素の平面角である入反射角θ及び入反射角φ、及び、反射率を算出して(ステップS160)、反射分布特性を得る。そして、この反射分布特性を3次元グラフ表示して(ステップS170)、本処理を終了する。
【0039】
なお、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の表面計測装置及び表面計測方法は、計測対象表面の反射分布特性の違いを簡易かつ短時間に計測する場合に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 表面計測装置
10 計測部
11 点光源
12 撮像部
12a レンズ
12b 撮像素子
13 保持部
14 反射防止膜
20 計測処理装置
21 入力部
22 表示部
23 記憶部
24 制御部
24a 画像取得処理部
24b 反射分布特性算出部
24c 表示処理部
100 物体
D 表面画像
DA,DB,DC,DA´,DB´,DC´ 反射率
E 計測空間
h 所定距離
L1,L2,L3 入反射光対
L10,L11 正反射光
LA,LB,LC 反射光
P,PA,PB,PC 測定点
S 計測対象表面
X,Y 位置
θ,φ 入反射角
θi,φr 入射角
θr,φr 反射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8