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特開2023-56766空調システムの改修方法及び空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056766
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】空調システムの改修方法及び空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20230413BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20230413BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F24F13/02 D
F24F3/00 Z
F24F3/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166172
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
【テーマコード(参考)】
3L053
3L080
【Fターム(参考)】
3L053BB10
3L080AA04
(57)【要約】
【課題】複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システムにおいて、冗長性を向上させて一部の空調装置の異常停止に伴う空調空気の供給停止を回避できるようにする。
【解決手段】複数の空調装置1A,1Bの夫々の前記空調空気吹出部1b同士を連通させる連通ダクト50と、当該連通ダクト50を開閉可能な連通ダンパ51と、を設ける。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システムの改修方法であって、
前記複数の空調装置の夫々の前記空調空気吹出部同士を連通させる連通ダクトと、当該連通ダクトを開閉可能な連通ダンパと、を設ける空調システムの改修方法。
【請求項2】
前記空調装置が、取り込んだ外気を温調して空調空気を生成する外調機である請求項1に記載の空調システムの改修方法。
【請求項3】
前記複数の空調装置の夫々について正常運転中か異常停止中かを判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段の判定結果に基づいて前記連通ダンパの作動を制御する異常制御手段と、を設け、
前記異常制御手段が、前記複数の空調装置の夫々が正常運転中である全正常運転時には前記連通ダンパを閉鎖させ、前記複数の空調装置の一部が異常停止中である一部異常停止時には前記連通ダンパを開放する連通ダンパ切替制御を実行するものとして構成されている請求項1又は2に記載の空調システムの改修方法。
【請求項4】
夫々の前記給気ダクトに対し、前記空調空気吹出部からの空調空気の流入部に開度調整可能な給気調整ダンパを設け、
前記異常制御手段が、前記一部異常停止時において正常運転中の前記空調装置側の前記給気ダクトに設けられた前記給気調整ダンパの開度を前記全正常運転時よりも絞る給気バランス調整制御を実行するものとして構成されている請求項3に記載の空調システムの改修方法。
【請求項5】
複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システムであって、
前記複数の空調装置の夫々の前記空調空気吹出部同士を連通させる連通ダクトと、当該連通ダクトを開閉可能な連通ダンパと、を備え、
前記空調装置が、取り込んだ外気を温調して空調空気を生成する外調機であり、
前記複数の空調装置の夫々について正常運転中か異常停止中かを判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段の判定結果に基づいて前記連通ダンパの作動を制御する異常制御手段と、を備えると共に、
前記異常制御手段が、前記複数の空調装置の夫々が正常運転中である全正常運転時には前記連通ダンパを閉鎖させ、前記複数の空調装置の一部が異常停止中である一部異常停止時には前記連通ダンパを開放する連通ダンパ切替制御を実行するものとして構成されており、
夫々の前記給気ダクトに対し、前記空調空気吹出部からの空調空気の流入部に開度調整可能な給気調整ダンパを備えると共に、
前記異常制御手段が、前記一部異常停止時において正常運転中の前記空調装置側の前記給気ダクトに設けられた前記給気調整ダンパの開度を前記全正常運転時よりも絞る給気バランス調整制御を実行するものとして構成されている空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システム及びその改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システムが知られている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-241163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように複数の空調装置の夫々から各別の給気ダクトを通じて各空調対象エリアへ空調空気を供給する空調システムでは、複数の空調装置のうちの一部が異常停止した場合に、その異常停止中の空調装置に対して設けられた給気ダクト及びそれに通じる各空調対象エリアへの空調空気の供給は停止されることになる。
また、このような空調システムを改修して、一部の空調装置の異常停止に伴う空調空気の供給停止を回避するためには、施設内の各空調対象エリア側において通常時とは別の給気ダクトから空調空気の供給可能なようにダクトを増設したり、各空調装置に対してバックアップ用の別の空調装置を増設したりする方法が考えられる。しかしながら、施設内の各空調対象エリア側にダクトを増設する場合には、施設内の各空調対象エリア側でのダクトの増設による躯体スリーブの施工や天井納まりの調整等の煩雑化が問題となる。また、各空調装置に対してバックアップ用の別の空調装置を増設する場合には、設置場所の確保やコスト面で問題となる。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システムに対し、簡単且つ合理的な改修を施すだけで、冗長性を向上させて一部の空調装置の異常停止に伴う空調空気の供給停止を回避できるようにする技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システムの改修方法であって、
前記複数の空調装置の夫々の前記空調空気吹出部同士を連通させる連通ダクトと、当該連通ダクトを開閉可能な連通ダンパと、を設ける点にある。
【0006】
本構成によれば、夫々の空調空気吹出部同士を連通させる少なくとも一つの上記連通ダクトと上記連通ダンパを複数の空調装置の設置場所付近等に追加するという簡単且つ合理的な改修を行うものとなる。そして、このような改修を行うことにより、複数の空調装置の一部が異常停止中である場合でも、通常時は閉鎖されている連通ダクトを開放する形態で、その異常停止中の空調装置に対して設けられた給気ダクト及びそれに通じる各空調対象エリアに対して、正常運転中の空調装置から連通ダクトを通じて空調空気の供給を継続させることができるようになる。
従って、本発明により、複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システムに対し、簡単且つ合理的な改修を施すだけで、冗長性を向上させて一部の空調装置の異常停止に伴う空調空気の供給停止を回避できるようにする技術を提供できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記空調装置が、取り込んだ外気を温調して空調空気を生成する外調機である点にある。
【0008】
本構成によれば、複数の外調機が空調装置として施設の屋上や屋外等に設置されている場合であっても、その複数の外調機が設置された屋上や屋外等に上記連通ダクトや上記連通ダンパを追加する形態で改修を行って、例えば施設内での工事を回避しながら、空調システムの冗長性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記複数の空調装置の夫々について正常運転中か異常停止中かを判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段の判定結果に基づいて前記連通ダンパの作動を制御する異常制御手段と、を設け、
前記異常制御手段が、前記複数の空調装置の夫々が正常運転中である全正常運転時には前記連通ダンパを閉鎖させ、前記複数の空調装置の一部が異常停止中である一部異常停止時には前記連通ダンパを開放する連通ダンパ切替制御を実行するものとして構成されている点にある。
【0010】
本構成によれば、上記異常判定手段と上記異常制御手段とを設けて、当該異常制御手段により連通ダンパ切替制御を実行させることができる。このことにより、上記全正常運転時に閉鎖されている連通ダンパを、上記一部異常停止時に自動的に開放させることができる。このように上記一部異常停止時に連通ダンパを自動的に開放させることで、異常停止中の空調装置に対して設けられた給気ダクト及びそれに通じる各空調対象エリアに対して自動的に、正常運転中の空調装置から連通ダクトを通じて空調空気の供給を継続させることができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、夫々の前記給気ダクトに対し、前記空調空気吹出部からの空調空気の流入部に開度調整可能な給気調整ダンパを設け、
前記異常制御手段が、前記一部異常停止時において正常運転中の前記空調装置側の前記給気ダクトに設けられた前記給気調整ダンパの開度を前記全正常運転時よりも絞る給気バランス調整制御を実行するものとして構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、上記給気調整ダンパを設けて、上記異常制御手段により前述の連通ダンパ切替制御に加えて上記給気バランス調整制御を実行させることができる。このことにより、上記全正常運転時には比較的大きな開度に設定されている正常運転中の空調装置側の給気調整ダンパの開度を、上記一部異常停止時に自動的に絞ることができる。このように上記一部異常停止時に正常運転中の空調装置側の給気調整ダンパの開度を絞ることで、当該正常運転中の空調装置から空調空気吹出部に吹き出された空調空気を、その空調空気吹出部に接続された給気ダクトと連通ダクトとに良好に分配させることができ、その連通ダクトを通じて異常停止中の空調装置に対して設けられた給気ダクト及びそれに通じる各空調対象エリアへの空調空気の供給量を確保することができる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、複数の空調装置が設置され、当該空調装置の空調空気吹出部から各空調対象エリアに通じる給気ダクトが前記複数の空調装置の夫々に対して各別に設けられた空調システムであって、
前記複数の空調装置の夫々の前記空調空気吹出部同士を連通させる連通ダクトと、当該連通ダクトを開閉可能な連通ダンパと、を備え、
前記空調装置が、取り込んだ外気を温調して空調空気を生成する外調機であり、
前記複数の空調装置の夫々について正常運転中か異常停止中かを判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段の判定結果に基づいて前記連通ダンパの作動を制御する異常制御手段と、を備えると共に、
前記異常制御手段が、前記複数の空調装置の夫々が正常運転中である全正常運転時には前記連通ダンパを閉鎖させ、前記複数の空調装置の一部が異常停止中である一部異常停止時には前記連通ダンパを開放する連通ダンパ切替制御を実行するものとして構成されており、
夫々の前記給気ダクトに対し、前記空調空気吹出部からの空調空気の流入部に開度調整可能な給気調整ダンパを備えると共に、
前記異常制御手段が、前記一部異常停止時において正常運転中の前記空調装置側の前記給気ダクトに設けられた前記給気調整ダンパの開度を前記全正常運転時よりも絞る給気バランス調整制御を実行するものとして構成されている点にある。
【0014】
本構成によれば、複数の空調装置の一部が異常停止中である場合でも、通常時は閉鎖されている連通ダクトを開放する形態で、その異常停止中の空調装置に対して設けられた給気ダクト及びそれに通じる各空調対象エリアに対して、正常運転中の空調装置から連通ダクトを通じて空調空気の供給を継続させることができるようになる。また、複数の外調機が空調装置として施設の屋上や屋外等に設置する場合であっても、その複数の外調機が設置された屋上や屋外等に上記連通ダクトや上記連通ダンパを追加することができる。
そして、上記異常制御手段により連通ダンパ切替制御を実行させることにより、上記全正常運転時に閉鎖されている連通ダンパを、上記一部異常停止時に自動的に開放させることができる。このように上記一部異常停止時に連通ダンパを自動的に開放させることで、異常停止中の空調装置に対して設けられた給気ダクト及びそれに通じる各空調対象エリアに対して自動的に、正常運転中の空調装置から連通ダクトを通じて空調空気の供給を継続させることができる。
更に、上記異常制御手段により前述の連通ダンパ切替制御に加えて上記給気バランス調整制御を実行させることにより、上記全正常運転時には比較的大きな開度に設定されている正常運転中の空調装置側の給気調整ダンパの開度を、上記一部異常停止時に自動的に絞ることができる。このように上記一部異常停止時に正常運転中の空調装置側の給気調整ダンパの開度を絞ることで、当該正常運転中の空調装置から空調空気吹出部に吹き出された空調空気を、その空調空気吹出部に接続された給気ダクトと連通ダクトとに良好に分配させることができ、その連通ダクトを通じて異常停止中の空調装置に対して設けられた給気ダクト及びそれに通じる各空調対象エリアへの空調空気の供給量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】改修後の空調システムの概略構成及び全正常運転時の状態を示す図
図2】改修後の空調システムの概略構成及び一部異常停止時の状態を示す図
図3】改修前の空調システムの概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
本実施形態の空調システム(以下、「本空調システム」と呼ぶ。)100は、図1及び図2に示すように、各階に複数の空調対象エリア80A,80Bを有する施設80に設置され、複数の空調装置1A,1Bを有すると共に、当該複数の空調装置1A,1Bの空調空気吹出部1bから各空調対象エリア80A,80Bに通じる給気ダクト10A,10Bが複数の空調装置1A,1Bの夫々に対して各別に設けられたものとして構成されている。
また、本空調システム100は、図3に示す改修前の空調システム90に対して、本実施形態の改修方法を施して構築されている。
尚、図1図2,及び図3では、開放されたダンパを白抜きで表示し、閉鎖されたダンパを黒塗りで表示している。また、空気の通流があるダクトを実線で表示し、空気の通流がないダクトを破線で表示している。
以下、本空調システム100の構成並びに改修前の空調システム90に対して施される改修方法の詳細について説明する。
【0017】
空調システム90,100が設置される施設80には、複数の第1空調対象エリア80Aと複数の第2空調対象エリア80Bとが設けられている。そして、空調システム90,100には、主に複数の第1空調対象エリア80Aに対して空調を行うための第1空調装置1Aと、主に複数の第2空調対象エリア80Bに対して空調を行うための第2空調装置1Bとが設けられている。
【0018】
空調装置1A,1Bは、例えば施設80の屋上や屋外等に設置されており、一般的な外調機として構成されている。即ち、外調機として構成された空調装置1A,1Bは、屋外から外気取込部1aを通じて外気OAを取り込み、当該取り込んだ外気OAを温調して空調空気SAを生成し、当該生成した空調空気SAを給気ダクト10A,10Bが接続された空調空気吹出部1bから吹き出すものとして構成されている。そして、空調装置1A,1Bの空調空気吹出部1bから吹き出された空調空気SAが、当該空調空気吹出部1bに接続された給気ダクト10A,10Bの竪管11並びに分岐管12を通じて各空調対象エリア80A,80Bに供給される。一方、外調機として構成された空調装置1A,1Bは、還気ダクト20A,20Bが接続された還気取込部1cを通じて還気RAを取り込み、当該還気RAが保有する熱を上記外気OAとの熱交換により回収し、当該熱回収後の排気EAを排気吹出部1dから屋外へ吹き出すものとして構成されている。そして、各空調対象エリア80A,80Bの室内空気が、還気RAとして、還気ダクト20A,20Bの分岐管22及び竪管21を通じて空調装置1A,1Bの還気取込部1cに取り込まれることになる。
【0019】
図3に示すように、改修前の空調システム90では、複数の空調装置1A,1Bのうちの一部が異常停止した場合に、その異常停止中の空調装置1A,1Bに対して設けられた給気ダクト10A,10B及びそれに通じる各空調対象エリア80A,80Bへの空調空気SAの供給は停止されることになる。
また、このような空調システム90を改修して、一部の空調装置1A,1Bの異常停止に伴う空調空気SAの供給停止を回避するために、図3の破線で示すように、給気ダクト10A,10B同士を接続するループダクト70を各階に設置し、複数の空調装置1A,1Bのうちの一部が異常停止した場合に、当該ループダクト70に設けられたループダンパ71を開放して、異常停止中の空調装置1A,1Bからの空調空気SAの供給が停止された各空調対象エリア80A,80Bに対して、正常運転中の空調装置1A,1Bから供給された空調空気SAを、ループダクト70を通じて融通することが考えられる。
しかし、この設計計画では、施設80内の各空調対象エリア80A,80B側でのループダクト70の増設による躯体スリーブの施工や天井納まりの調整等の煩雑化が問題となる。
【0020】
そこで、図1及び図2に示す本空調システム100は、冗長性を向上させて一部の空調装置1A,1Bの異常停止に伴う空調空気SAの供給停止を回避できるようにするために、図3に示す改修前の空調システム90に対して簡単且つ合理的な改修を施して構築される。
以下、本実施形態の改修方法で構築された改修後の本空調システム100の詳細構成として、主に改修前の空調システム90に対して追加された構成の詳細について説明を加える。
【0021】
本空調システム100には、複数の空調装置1A,1Bの夫々の空調空気吹出部1b同士を連通させる連通ダクト50と、当該連通ダクト50を開閉可能な連通ダンパ51とが設けられている。尚、複数の空調装置1A,1Bは外調機として構成されて施設80の屋上や屋外等に設置されていることから、上記連通ダクト50や上記連通ダンパ51は、施設80内での工事を回避しながら屋上や屋外等に設置される。
【0022】
更に、夫々の給気ダクト10A,10Bにおいて、空調空気吹出部1bからの空調空気SAの流入部10Aa,10Baには、開度調整可能な給気調整ダンパ53A,53Bが設けられている。
また、夫々の空調装置1A,1Bの外気取込部1aには、当該外気取込部1aを開閉可能な外気取込ダンパ55A,55Bが設けられている。
【0023】
本空調システム100において、夫々の空調装置1A,1Bの運転を制御する空調制御装置60は、当該夫々の空調装置1A,1Bについて正常運転中か異常停止中かを判定する異常判定手段61として機能すると共に、その異常判定手段61の判定結果に基づいて上記のように追加されたダンパ51,53A,53B,55A,55Bの作動を制御する形態で、後述する連通ダンパ切替制御や給気バランス調整制御を実行する異常制御手段62として機能するように構成されている。
【0024】
上記異常制御手段62により連通ダンパ切替制御が実行されることで、複数の空調装置1A,1Bの夫々が正常運転中である全正常運転時の状態(図1参照)と、複数の空調装置1A,1Bの一部が異常停止中である一部異常停止時の状態(図2参照)とで、本空調システム100の状態が切り替えられる。
尚、説明を簡単にするために、図2に示す一部異常停止時の状態では、第1空調装置1Aが正常運転中であり、第2空調装置1Bが異常停止中であるものとする。
【0025】
図1に示すような全正常運転時には、上記連通ダンパ切替制御によって、連通ダンパ51が自動的に閉鎖される。同時に、給気調整ダンパ53A,53B及び外気取込ダンパ55A,55Bは全開状態とされる。
【0026】
すると、全正常運転時において、正常運転中の第1空調装置1Aの空調空気吹出部1bから吹き出された空調空気SAの全部が、当該空調空気吹出部1bに接続された第1給気ダクト10Aを通じて各第1空調対象エリア80Aに供給される。一方、全正常運転時において、正常運転中の第2空調装置1Bの空調空気吹出部1bから吹き出された空調空気SAの全部が、当該空調空気吹出部1bに接続された第2給気ダクト10Bを通じて各第2空調対象エリア80Bに供給されることになる。
また、全正常運転時において、各空調対象エリア80A,80Bの室内空気は、還気RAとして各還気ダクト20A,20Bを通じて各空調装置1A,1Bの還気取込部1cに取り込まれ、排気EAとして排気吹出部1dから屋外へ排出される。
【0027】
図2に示すような一部異常停止時には、上記連通ダンパ切替制御によって、連通ダンパ51が自動的に開放される。同時に、正常運転中の第1空調装置1Aの排気吹出部1dに設けられた第1外気取込ダンパ55Aは開放状態に維持されるが、異常停止中の第2空調装置1Bの排気吹出部1dに設けられた第2外気取込ダンパ55Bは閉鎖される。また、一部異常停止時には、異常停止中の第2空調装置1B側の第2給気ダクト10Bの流入部10Baに設けられた第2給気調整ダンパ53Bの開度は全開状態に維持されるが、正常運転中の第1空調装置1A側の第1給気ダクト10Aの流入部10Aaに設けられた第1給気調整ダンパ53Aの開度が、上記給気バランス制御によって、上記全正常運転時よりも絞られる。
【0028】
すると、一部異常停止時において、正常運転中の第1空調装置1Aの空調空気吹出部1bから吹き出された空調空気SAは、一部が当該空調空気吹出部1bに接続された第1給気ダクト10Aを通じて各第1空調対象エリア80Aに供給され、残部が連通ダクト50を通じて第2給気ダクト10Bに流入して当該第2給気ダクト10Bを通じて各第2空調対象エリア80Bに供給されることになる。即ち、異常停止中の第2空調装置1Bに対して設けられた第2給気ダクト10B及びそれに通じる各第2空調対象エリア80Bに対して自動的に、正常運転中の第1空調装置1Aから連通ダクト50を通じて空調空気SAの供給が継続されることになる。
【0029】
また、上記給気バランス制御によって、正常運転中の第1空調装置1A側の第1給気調整ダンパ53Aの開度が上記全正常運転時(図1参照)よりも絞られることで、正常運転中の第1空調装置1Aから空調空気吹出部1bに吹き出された空調空気SAは、開度が絞られた第1給気調整ダンパ53Aで生じる背圧によって、その空調空気吹出部1bに接続された第1給気ダクト10Aと連通ダクト50とに例えば等分に分配されることになる。そして、その連通ダクト50を通じて異常停止中の空調装置1Bに対して設けられた第2給気ダクト10B及びそれに通じる各第2空調対象エリア80Bへの空調空気SAの供給量が確保されることになる。
即ち、正常運転中の空調装置1Aで生成された空調空気SAが、第1空調対象エリア80Aと第2空調対象エリア80Bとに分配される。よって、正常運転中の空調装置1Aにおける空調空気SAの吹出量が、上述の全正常運転時と同じである場合には、この一部異常停止時における各空調対象エリア80A,80Bへの空調空気SAの吹出量は例えば半分に減少されるが、一部異常停止時における空調装置1Aにおける空調空気SAの吹出量を全正常運転時よりも増加させて、各空調対象エリア80A,80Bへの空調空気SAの吹出量の減少を抑制することもできる。
【0030】
一部異常停止時において、各第1空調対象エリア80Aの室内空気は、還気RAとして第1還気ダクト20Aを通じて第1空調装置1Aの還気取込部1cに取り込まれ、排気EAとして排気吹出部1dから屋外へ排出される。一方、各第2空調対象エリア80Bの室内空気についても、第2空調装置1Bが異常停止中ではあるが、当該各第2空調対象エリア80Bに対する空調空気SAの押し込み力によって成り行きで、還気RAとして第2還気ダクト20B及び第2空調装置1Bを通じて排気EAとして屋外へ排出されることになる。
【0031】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0032】
(1)上記実施形態では、図3に示す空調システム90を改修して図1及び図2に示す本実施形態の空調システム100を構築したが、空調システムを新設する場合においても、本実施形態の空調システム100の構成を採用しても構わない。
【0033】
(2)上記実施形態では、空調装置1A,1Bを外調機として構成したが、別の形態の空調装置として構成しても構わない。
【0034】
(3)上記実施形態では、本空調システム100に、異常判定手段61及び異常制御手段62を設けて、全正常運転時(図1参照)に閉鎖されている連通ダンパ51を一部異常停止時(図2参照)に自動的に開放させるように構成したが、複数の空調装置1A,1Bの一部が異常停止した際に手動で連通ダクト50を開放するように構成しても構わない。
【0035】
(4)上記実施形態では、給気ダクト10A,10Bの空調空気SAの流入部10Aa,10Baに給気調整ダンパ53A,53Bを設けて、一部異常停止時(図2参照)において正常運転中の空調装置1A側の給気調整ダンパ53Aの開度を絞る給気バランス調整制御を実行することにより、正常運転中の第1空調装置1Aから吹き出された空調空気SAを第1給気ダクト10Aと連通ダクト50を通じた第2給気ダクト10Bとに略当分に分配させるように構成したが、このような給気調整ダンパ53A,53Bを省略し、一部異常停止時(図2参照)において正常運転中の第1空調装置1Aから吹き出された空調空気SAを成り行きで分配させるように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1A,1B 空調装置(外調機)
1b 空調空気吹出部
10A,10B 給気ダクト
10Aa,10Ba 流入部
50 連通ダクト
51 連通ダンパ
53A,53B 給気調整ダンパ
61 異常判定手段
62 異常制御手段
80A,80B 空調対象エリア
90 改修前の空調システム
100 空調システム
図1
図2
図3