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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056768
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20230413BHJP
   G01L 5/1627 20200101ALI20230413BHJP
【FI】
G01L3/10 311
G01L5/1627
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166174
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】日本電産コパル電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 ありさ
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB09
2F051DA03
2F051DB03
(57)【要約】
【課題】 二重化された検出回路のそれぞれの検出精度の差を低減するセンサを提供することにある。
【解決手段】 センサ10は、環状に形成される第1構造体11と、第1構造体11の内周側に環状に形成される第2構造体12と、第1構造体11と第2構造体12との間に設けられた起歪体20と、第1系検出回路を構成し、起歪体20の上面に配置された歪みを検出する複数の第1センサ素子21a~21dと、第1系検出回路と二重化される第2系検出回路を構成し、複数の第1センサ素子21a~21dの配置と起歪体20を介して一致するように、起歪体20の下面に配置された歪みを検出する複数の第2センサ素子22a~22dとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成される第1構造体と、
前記第1構造体の内周側に環状に形成される第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられた起歪体と、
第1系検出回路を構成し、前記起歪体の上面に配置された歪みを検出する複数の第1センサ素子と、
前記第1系検出回路と二重化される第2系検出回路を構成し、前記複数の第1センサ素子の配置と前記起歪体を介して一致するように、前記起歪体の下面に配置された歪みを検出する複数の第2センサ素子と
を備えることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記複数の第1センサ素子は、線対称に配置され、
前記複数の第2センサ素子は、線対称に配置されたこと
を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記複数の第1センサ素子は、それぞれ他の第1センサ素子に近接して配置され、
前記複数の第2センサ素子は、それぞれ他の第2センサ素子に近接して配置されたこと
を特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1系検出回路及び前記第2系検出回路により検出された歪みを示すデータを処理するデータ処理回路と、
フレキシブル基板を用いて、前記データ処理回路と前記第1系検出回路及び前記第2系検出回路とを接続する接続手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記接続手段は、前記フレキシブル基板により、前記起歪体の上面で前記第1系検出回路と接続され、前記起歪体の下面で前記第2系検出回路と接続されること
を特徴とする請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記フレキシブル基板は、前記第2系検出回路と接続する部分が前記起歪体の上面から下面に配置されるように折り曲げられたこと
を特徴とする請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記接続手段は、1つの前記フレキシブル基板で、前記第1系検出回路及び前記第2系検出回路にそれぞれ接続すること
を特徴とする請求項5又は請求項6に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、力を検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の歪センサを含むブリッジ回路が、第1構造体と第2構造体との間に伝達される力を検出するトルクセンサが知られている。例えば、複数の歪センサを含む2つのブリッジ回路の出力電圧の差に基づいて、異常を検出するトルクセンサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-132313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、歪センサを用いた検出回路(ブリッジ回路等)を二重化する場合、2つの歪センサを同一箇所に配置することは物理的にできない。このため、二重化された検出回路の歪センサの配置が異なることにより、それぞれの検出回路の検出精度に差が生じる。このように、二重化された検出回路のそれぞれの検出精度が異なることは、センサとして望ましくない。
本実施形態は、二重化された検出回路のそれぞれの検出精度の差を低減するセンサを提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
実施形態によれば、二重化された検出回路のそれぞれの検出精度の差を低減するセンサを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態のセンサは、環状に形成される第1構造体と、前記第1構造体の内周側に環状に形成される第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられた起歪体と、第1系検出回路を構成し、前記起歪体の上面に配置された歪みを検出する複数の第1センサ素子と、前記第1系検出回路と二重化される第2系検出回路を構成し、前記複数の第1センサ素子の配置と前記起歪体を介して一致するように、前記起歪体の下面に配置された歪みを検出する複数の第2センサ素子とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るトルクセンサのセンサ部付近を拡大した斜視図。
図2】第1実施形態に係るトルクセンサの構成を示す上面図。
図3】第1実施形態に係るセンサ部の構成を示す上面図。
図4】第1実施形態に係るセンサ部の構成を示す下面図。
図5】第1実施形態に係るセンサ部の構成を示す側面図。
図6】第1実施形態に係るトルクセンサの取り付け状態を示す正面図。
図7図6に示すトルクセンサ取付板をA-A線で切断した断面図。
図8】第1実施形態に係るトルクセンサ取付板に外部負荷が生じている時のトルクセンサの状態を示す簡易図。
図9】第1実施形態に係る第1のフレキシブル基板の上面を示す上面図。
図10】第1実施形態に係るセンサ部に第1のフレキシブル基板を取り付けた状態を第1構造体側から見た側面図。
図11】第1実施形態に係るセンサ部に第2及び第3のフレキシブル基板を取り付けた状態の上面を示す上面図。
図12】第1実施形態に係るセンサ部に第2及び第3のフレキシブル基板を取り付けた状態の下面を示す下面図。
図13】第1実施形態に係るセンサ部に第2及び第3のフレキシブル基板を取り付けた状態の側面を示す側面図。
図14】第1実施形態に係る第4のフレキシブル基板の外形を示す外形図。
図15】第1実施形態に係る第4のフレキシブル基板の第1の状態を示す状態図。
図16】第1実施形態に係る第4のフレキシブル基板の第2の状態を示す状態図。
図17】第1実施形態に係る第4のフレキシブル基板の第3の状態を示す状態図。
図18】第1実施形態に係る第5のフレキシブル基板の外形を示す外形図。
図19】第1実施形態に係る第5のフレキシブル基板の折り曲げた状態を示す状態図。
図20】第1実施形態に係る第5のフレキシブル基板の外形を変形した例を示す外形図。
図21】本発明の第2実施形態に係るセンサ部の構成を示す上面図。
図22】第2実施形態に係るセンサ部の構成を示す下面図。
図23】第2実施形態に係るセンサ部の構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るトルクセンサ10のセンサ部14付近を拡大した斜視図である。図2は、本実施形態に係るトルクセンサ10の構成を示す上面図である。図面において、同一部分には、同一符号を付している。
【0009】
なお、トルクセンサ10は、ここで説明するものに限らず、様々な形状又は構成に変更してもよい。また、トルクセンサ10は、少なくともトルク(z軸モーメントMz)を検出するセンサであれば、力覚センサなどの他の名称のセンサでもよい。例えば、力覚センサは、図2に示す直交する3軸(x軸、y軸、z軸)のそれぞれの並進力Fx,Fy,Fz及びモーメントMx,My,Mzを検出する。
【0010】
トルクセンサ10は、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、複数のセンサ部14、ケース15、及び、ケーブル16を備える。
【0011】
第1構造体11、第2構造体12及び第3構造体13は、1つの弾性体として一体形成される。第1構造体11、第2構造体12及び第3構造体13は、ステンレス鋼等の金属により構成されるが、印加されるトルク等の力に対して機械的に十分な強度があれば、金属以外の材料(樹脂等)を使用してもよい。
【0012】
第1構造体11及び第2構造体12は、環状に形成される。第2構造体12の径は、第1構造体11の径より小さい。第2構造体12は、第1構造体11と同心円上で内周側に配置される。複数の第3構造体13は、放射状に配置され、第1構造体11と第2構造体12を接続する梁として設けられる。なお、第3構造体13は、いくつ設けられてもよい。
【0013】
第3構造体13の厚さ(z軸方向の長さ)は、第1構造体11及び第2構造体12の厚さよりも薄い。具体的には、第3構造体13の厚さは、第1構造体11又は第2構造体12に接続される両端部から中央に向けて薄くなるように傾斜し、中央部分は均一の厚さ(平面)である。第3構造体13は、厚さ(z軸方向の長さ)を幅(周方向の長さ)より長くすることで、トルクを検出し易くしているが、これに限らず、第3構造体13の厚さ及び幅は、任意に決定してよい。
【0014】
ケース15は、第2構造体12の中心部分に設けられた中空部を覆うように設けられる。中空部には、各センサ部14により検出されたデータを処理するためのデータ処理回路が設けられる。データ処理回路は、各センサ部14とフレキシブル基板(flexible printed circuit board)で電気的に接続される。データ処理回路は、ケーブル16を介して、電源が供給され、データ処理したセンサ信号を外部に出力する。
【0015】
センサ部14は、第1構造体11と第2構造体12が相対的に動くことで生じる歪みを検出する。センサ部14により検出された歪みを示すデータは、電気信号としてデータ処理回路に送信される。データ処理回路は、センサ部14で検出された歪みに基づいて、トルク等の印加された力を検出する。ここでは、センサ部14は、円周方向に等間隔(90度間隔)で4つ設けた構成を示したが、センサ部14は、いくつ設けてもよい。
【0016】
センサ部14は、起歪体20、4つのA系センサ素子21a,21b,21c,21d、4つのB系センサ素子22a,22b,22c,22d、及び、2つの端子部Ta,Tbを備える。
【0017】
センサ部14は、第1構造体11と第2構造体12の間を跨ぐように設けられる。センサ部14の両端は、それぞれ第1構造体11及び第2構造体12に固定される。第1構造体11及び第2構造体12には、センサ部14の両端を固定するために、他の部分よりも厚さが薄い凹部11a,12aが形成される。例えば、防水及び防塵などの外部因子からセンサ部14を保護するためのカバーがセンサ部14の上面の凹部11a,12aに嵌め込まれる。センサ部14の下面も同様にカバーが設けられてもよい。
【0018】
起歪体20の両端を第1構造体11及び第2構造体12に固定することで、センサ部14が取り付けられる。具体的には、起歪体20の両端をそれぞれ上面から抑えるように固定プレート31を配置し、固定プレート31と共に起歪体20の両端をそれぞれ第1構造体11及び第2構造体12にネジ32で固定する。なお、センサ部14は、どのように取り付けられてもよい。
【0019】
A系センサ素子21a~21d及びB系センサ素子22a~22dは、起歪体20の第1構造体11と第2構造体12の間に配置される。A系センサ素子21a~21dは、起歪体20の上面(表面)に配置される。B系センサ素子22a~22dは、起歪体20の下面(裏面)に配置される。A系センサ素子21a~21d及びB系センサ素子22a~22dは、A系検出回路及びB系検出回路をそれぞれ形成するように配線される。2つの検出回路は、トルク等を検出するための二重化された検出回路であり、それぞれ独立してトルク等を検出する。トルクセンサ10は、2つの検出回路による検出データに基づいて、検出結果としてトルク等を出力する。なお、トルクセンサ10は、2つの検出回路の内1つの検出データに基づいて、検出結果としてのトルク等を決定してもよい。
【0020】
ここでは、A系センサ素子21a~21d及びB系センサ素子22a~22dは、歪ゲージとし、検出回路は、フルブリッジ回路とするが、これに限らない。例えば、各系の検出回路は、起歪体20に設けられた2つの歪ゲージ、及び、トルク等の印加で実質的に変形しない箇所(例えば、第2構造体12に設けられたデータ処理回路)に設けられた参照抵抗により構成されたブリッジ回路でもよい。具体的には、各系の4つのセンサ素子21a~21d,22a~22dの内任意に選択された2つのセンサ素子とデータ処理回路に設けられた2つの参照抵抗によりブリッジ回路を構成してもよい。以降の実施形態についても、フルブリッジ回路に限らず、同様のブリッジ回路を構成してもよい。
【0021】
図3は、本実施形態に係るセンサ部14の構成を示す上面図である。図4は、本実施形態に係るセンサ部14の構成を示す下面図である。図5は、本実施形態に係るセンサ部14の構成を示す側面図である。なお、各センサ素子21a~21d,22a~22dの配線は、ここで説明する構成に限らず、どのように配線してもよい。
【0022】
起歪体20は、上面Pt及び下面Puが長方形の板形状である。センサ素子21a~21d,22a~22dは、上面及び下面が長方形の板形状である。起歪体20の上面PtにおけるA系センサ素子21a~21dの配置は、起歪体20の下面PuにおけるB系センサ素子22a~22dの配置と一致する。具体的には、第1から第4のA系センサ素子21a~21dのそれぞれの位置には、起歪体20を介して、それぞれに対応する第1から第4のB系センサ素子22a~22dが位置する。
【0023】
ここで、第1から第4のA系センサ素子21a~21dと第1から第4のB系センサ素子22a~22dは、それぞれ対応する。A系センサ素子21a~21dとB系センサ素子22a~22dが対応するとは、例えば、A系の検出回路(例えば、ブリッジ回路)におけるA系センサ素子21a~21dが設けられた電気回路上の位置と、B系の検出回路(例えば、ブリッジ回路)におけるB系センサ素子22a~22dが設けられた電気回路上の位置が同じであることを意味する。
【0024】
第1のA系センサ素子21a及び第2のA系センサ素子21bは、起歪体20の第1構造体11側の2つの隅にそれぞれ配置される。第1及び第2のA系センサ素子21a,21bは、第1構造体11側の端部が外側に向くように、起歪体20の長手方向に対して傾けて配置される。第1のA系センサ素子21aは、起歪体20を長手方向に半分にする中心線に対して、第2のA系センサ素子21bと線対称になるように配置される。
【0025】
第3のA系センサ素子21c及び第4のA系センサ素子21dは、起歪体20の第2構造体12側の2つの隅にそれぞれ配置される。第3及び第4のA系センサ素子21c,21dは、第2構造体12側の端部が外側に向くように、起歪体20の長手方向に対して傾けて配置される。第3のA系センサ素子21cは、起歪体20を長手方向に半分にする中心線に対して、第4のA系センサ素子21dと線対称になるように配置される。第3及び第4のA系センサ素子21c,21dは、起歪体20を短手方向(長手方向と垂直の方向)に半分にする中心線に対して、第1及び第2のA系センサ素子21a,21bと線対称になるように配置される。
【0026】
A系端子部Taは、起歪体20の上面の長手方向の中央に配置され、各端子が短手方向に隣接して並べられた構成である。A系センサ素子21a~21dの各端子は、A系端子部Taの中央に位置する端子と2つの配線Waで電気的に接続される。なお、A系センサ素子21a~21dの各端子は、A系端子部Taのどの端子に接続してもよい。
【0027】
第1から第4のB系センサ素子22a~22d及びB系端子部Tbは、起歪体20の下面Puに、第1から第4のA系センサ素子21a~21d及びA系端子部Taと同様に配置される。これにより、第1から第4のB系センサ素子22a~22dは、起歪体20を介して、それぞれ第1から第4のA系センサ素子21a~21dが位置する。B系端子部Tbは、起歪体20を介して、A系端子部Taが位置する。即ち、起歪体20の下面PuにおけるB系センサ素子22a~22dのそれぞれの位置は、起歪体20の上面PtにおけるA系センサ素子21a~21dのそれぞれの位置を、長手方向を上下方向として左右反転させたものである。
【0028】
図6及び図7を参照して、トルクセンサ10を取り付けた状態について説明する。図6は、トルクセンサ10の取り付け状態を示す正面図である。図7は、図6に示すトルクセンサ取付板41をA-A線で切断した断面図である。なお、図7では、アダプタ42、減速機43及びモータ44を簡易的に示している。
【0029】
トルクセンサ10は、トルクセンサ取付板41に取り付けられる。これにより、トルクセンサ10の第1構造体11は、トルクセンサ取付板41に固定される。トルクセンサ取付板41は、トルク等が印加される構造体に取り付けられる部材である。
【0030】
トルクセンサ10の第2構造体12は、アダプタ42を介して、モータ44に連結された減速機43に固定される。モータ44が駆動することで、モータ44から出力されるトルクが、減速機43、アダプタ42及びトルクセンサ10を介して、トルクセンサ取付板41に印加される。これにより、トルクセンサ取付板41及びこれが取り付けられた構造体が、モータ44から出力されるトルクにより動作する。
【0031】
なお、トルクセンサ10の第2構造体12がトルク等を印加される側(トルクセンサ取付板41等)に取り付けられ、トルクセンサ10の第1構造体11がトルク等を印加する側(モータ44等)に取り付けられてもよい。
【0032】
図6及び図8を参照して、トルクセンサ取付板41に外部負荷(荷重等)Fwが生じた場合について説明する。図8は、トルクセンサ取付板41に外部負荷が生じている時のトルクセンサ10の状態を示す簡易図である。図6及び図8では、4つのセンサ部14の2つの配置パターンP1,P2が示されており、センサ部14は、2つの配置パターンP1,P2のうちいずれか一方の配置パターンで取り付けられる。なお、センサ部14は、これらの2つの配置パターンP1,P2に限らず、その他の配置パターンを採用してもよい。
【0033】
図8に示すように、トルクセンサ取付板41に矢印のような下向きの外部負荷Fwが生じると、トルクセンサ取付板41の上辺側には、引張応力が生じ、トルクセンサ取付板41の下辺側には、圧縮応力が生じる。
【0034】
トルクセンサ取付板41の変形により、トルクセンサ10の弾性体(第1構造体11、第2構造体12及び第3構造体13)は、点線で示す円形から実線で示す楕円のような形状に変形する。変形後の弾性体を楕円形とすると、弾性体は、長軸方向に引っ張られ、短軸方向に圧縮される。
【0035】
弾性体の変形により、いずれの配置パターンP1,P2の各センサ部14も、点線で示す長方形から実線で示す四角形に変形する。このように、外部負荷Fwが生じている場合、いずれの配置パターンP1,P2でも、センサ部14は、配置された位置毎に外部負荷Fwにより受ける応力は異なる。
【0036】
トルクセンサ10では、各センサ部14に、二重化されたA系検出回路及びB系検出回路をそれぞれ構成するA系センサ素子21a~21d及びB系センサ素子22a~22dが設けられている。このため、各センサ部14で受ける応力が異なる場合でも、各系の検出回路のそれぞれの検出精度は、ほぼ同じになる。
【0037】
これに対して、本実施形態のトルクセンサ10とは異なり、配置パターンP1にA系検出回路のみが設けられたセンサ部14を配置し、配置パターンP2にB系検出回路のみが設けられたセンサ部14を配置して、二重化された検出回路を設けた場合を考える。
【0038】
外部負荷Fwが全く生じずに、トルクセンサ10に理想的なトルクが印加されれば、各配置パターンP1,P2の各センサ部14で受ける応力は、ほぼ同じである。即ち、各センサ部14の起歪体20は、ほぼ同じように変形する。したがって、各系で検出される歪みはほぼ同じになるため、二重化された2つの検出回路の検出精度に差はあまり生じない。
【0039】
一方、外部負荷Fwが生じた場合、トルクセンサ10に理想的なトルクが印加されても、上述したように、センサ部14の配置された位置に起因して、センサ部14が受ける応力は異なる。即ち、各センサ部14の起歪体20は、それぞれ異なる変形をする。したがって、2つの系で検出される歪みは異なるため、二重化された2つの検出回路の検出精度に大きな差が生じる可能性がある。例えば、二重化された2つの検出回路の差で、異常を検出する機能を設けた場合、正常なトルク等の力が印加されても、意図しない異常を検出する可能性がある。
【0040】
次に、データ処理回路と接続するためのフレキシブル基板をセンサ部14の2つの端子部Ta,Tbに取り付ける方法について説明する。なお、端子部Ta,Tbは、データ処理回路とどのように電気的に接続されてもよく、ここで説明するフレキシブル基板以外のフレキシブル基板を用いてもよいし、フレキシブル基板を全く用いずに配線してもよい。
【0041】
図9及び図10を参照して、第1のフレキシブル基板FP1による第1の取り付け方法について説明する。図9は、第1のフレキシブル基板FP1の上面を示す上面図である。図10は、センサ部14に第1のフレキシブル基板FP1を取り付けた状態を第1構造体11側から見た側面図である。
【0042】
第1のフレキシブル基板FP1は、センサ部14とデータ処理回路を接続する方向を長手方向とし、長手方向のセンサ部14側の端部が幅広に延びたT字形状である。第1のフレキシブル基板FP1は、4つのコネクタCNa,CNb1,CNb2,CNdを備える。
【0043】
コネクタCNaは、第1のフレキシブル基板FP1の幅広に延びる部分の中央に位置する。コネクタCNb1,CNb2は、幅広に延びる部分のそれぞれ両端に位置する。コネクタCNdは、第1のフレキシブル基板FP1の長手方向のデータ処理回路側の端部に位置する。
【0044】
コネクタCNaは、起歪体20の上面Ptに設けられたA系端子部Taに接続される。コネクタCNb1,CNb2は、第1のフレキシブル基板FP1の幅広に延びる部分を起歪体20の側面を覆うようにして、起歪体20の下面Puに設けられたB系端子部Tbに接続される。コネクタCNdは、データ処理回路と接続される。
【0045】
図11~13を参照して、第2のフレキシブル基板FP21及び第3のフレキシブル基板FP22による第2の取り付け方法について説明する。図11は、センサ部14に2つのフレキシブル基板FP21,FP22を取り付けた状態の上面を示す上面図である。図12は、センサ部14に2つのフレキシブル基板FP21,FP22を取り付けた状態の下面を示す下面図である。図13は、センサ部14に2つのフレキシブル基板FP21,FP22を取り付けた状態の側面を示す側面図である。
【0046】
第2のフレキシブル基板FP21及び第3のフレキシブル基板FP22は、センサ部14とデータ処理回路を接続する方向を長手方向とした直方形状である。第3のフレキシブル基板FP22の長手方向の長さは、第2のフレキシブル基板FP21の長手方向の長さよりも長いものが望ましいが、同じ長さでもよいし、短くてもよい。
【0047】
第2のフレキシブル基板FP21の長手方向の一方の端部には、コネクタCNaが設けられ、もう一方の端部には、コネクタCNdが設けられる。第3のフレキシブル基板FP22の長手方向の一方の端部には、コネクタCNbが設けられ、もう一方の端部には、コネクタCNdが設けられる。
【0048】
第2のフレキシブル基板FP21は、コネクタCNaを起歪体20の上面Ptに設けられたA系端子部Taに接続し、コネクタCNdをデータ処理回路に接続する。第3のフレキシブル基板FP22は、第2のフレキシブル基板FP21の上に重ねるように配置される。第3のフレキシブル基板FP22のコネクタCNb側部分を起歪体20の側面に巻き付けるようにして、コネクタCNbを起歪体20の下面Pu側に回す。このようにして、コネクタCNbをB系端子部Tbに接続する。第3のフレキシブル基板FP22のコネクタCNdは、データ処理回路に接続される。
【0049】
図14~17を参照して、第4のフレキシブル基板FP4による第3の取り付け方法について説明する。図14は、第4のフレキシブル基板FP4の外形を示す外形図である。図15~17は、第4のフレキシブル基板FP4の第1から第3の状態を示す状態図である。
【0050】
第4のフレキシブル基板FP4は、第1形状部分P41及び第2形状部分P42を含む形状である。第1形状部分P41は、センサ部14とデータ処理回路を接続する方向を長手方向とした直方形状である。第1形状部分P41の長手方向のセンサ部14側の端部には、コネクタCNbが設けられる。
【0051】
第2形状部分P42は、センサ部14とデータ処理回路を接続する方向を長手方向とし、長手方向のセンサ部14側の端部が、短手方向で第1形状部分P41と反対側に突き出たL字形状である。第2形状部分P42の突き出た部分の端部には、コネクタCNaが設けられる。第2形状部分P42の長手方向のデータ処理回路側の端部には、コネクタCNdが設けられる。
【0052】
第1形状部分P41と第2形状部分P42は、長手方向が隣接して並ぶように接続される。第1形状部分P41と第2形状部分P42の接続部分は、長手方向のセンサ部14側が切り離されるように切り込みが入れられる。第4のフレキシブル基板FP4は、図14に示す折り曲げ線L1,L2,L3で折り曲げられ、センサ部14の2つの端子部Ta,Tbに接続される。折り曲げ線L1,L3は、一点鎖線で示され、谷折りにされる。折り曲げ線L2は、点線で示され、山折りにされる。
【0053】
図15に示すように、第4のフレキシブル基板FP4は、折り曲げ線L1で谷折りにされる。次に、図16に示すように、第4のフレキシブル基板FP4は、折り曲げ線L2で山折りにされる。次に、図17に示すように、第4のフレキシブル基板FP4は、折り曲げ線L3で谷折りにされる。このように折り曲げられた状態では、センサ部14は、第1形状部分P41と第2形状部分P42のそれぞれの端部で挟まれた状態になる。この状態で、コネクタCNaは、センサ部14のA系端子部Taに接続され、コネクタCNbは、センサ部14のB系端子部Tbに接続され、コネクタCNdは、データ処理回路に接続される。
【0054】
図18,19を参照して、第5のフレキシブル基板FP5による第4の取り付け方法について説明する。図18は、第5のフレキシブル基板FP5の外形を示す外形図である。図19は、第5のフレキシブル基板FP5の折り曲げた状態を示す状態図である。
【0055】
第5のフレキシブル基板FP5は、第1形状部分P51、第2形状部分P52及び第3形状部分P53を含む形状である。第1形状部分P51は、センサ部14とデータ処理回路を接続する方向を長手方向とした直方形状である。第1形状部分P51の長手方向のデータ処理回路側の端部には、コネクタCNdが設けられる。
【0056】
第2形状部分P52及び第3形状部分P53は、第1形状部分P51からセンサ部14側にそれぞれ突き出たような形状である。第2形状部分P52のセンサ部14側の端部には、コネクタCNbが設けられる。第3形状部分P53のセンサ部14側の端部には、コネクタCNaが設けられる。
【0057】
第5のフレキシブル基板FP5は、図18に示す折り曲げ線L4で折り曲げられ、図19に示す状態になる。折り曲げ線L4は、一点鎖線で示され、谷折りにされる。このように折り曲げられた状態では、センサ部14は、第2形状部分P52と第3形状部分P53のそれぞれの端部で挟まれた状態になる。この状態で、コネクタCNaは、センサ部14のA系端子部Taに接続され、コネクタCNbは、センサ部14のB系端子部Tbに接続され、コネクタCNdは、データ処理回路に接続される。
【0058】
なお、第5のフレキシブル基板FP5は、図18に示す形状に限らず、様々な形状に変形してもよい。例えば、第5のフレキシブル基板FP5aは、図20に示す形状に変形してもよい。図20に示す第5のフレキシブル基板FP5aは、図18に示す第5のフレキシブル基板FP5と比較して、第1形状部分P51aがより細い直方形状である。また、第1形状部分P51aと第2形状部分P52aのそれぞれの長手方向の一辺が1つの直線になるように接続される。第1形状部分P51aと第2形状部分P52aの間に形成される切り込み形状の空間は、任意に変形してよい。例えば、この切り込み形状の空間を小さくし、第1形状部分P51aと第2形状部分P52aの接続部分を増やしてもよい。
【0059】
本実施形態によれば、二重化された2つの検出回路の各系のセンサ素子21a~21d,22a~22dを同じセンサ部14に設けることで、外部負荷Fwが生じた場合でも、二重化された2つの検出回路の検出精度の差を抑制することができる。
【0060】
また、A系センサ素子21a~21dとB系センサ素子22a~22dが起歪体20を介して同じ配置になるように、1つの起歪体20の別々の面にそれぞれA系検出回路とB系検出回路を設けることで、A系検出回路とB系検出回路のそれぞれで検出される歪みを示すデータが同じになるように近付けることができる。
【0061】
(第2実施形態)
図21は、本発明の第2実施形態に係るセンサ部14Aの構成を示す上面図である。図22は、本実施形態に係るセンサ部14Aの構成を示す下面図である。図23は、本実施形態に係るセンサ部14Aの構成を示す側面図である。
【0062】
本実施形態に係るトルクセンサ10は、第1実施形態に係るトルクセンサ10において、センサ部14の起歪体20におけるセンサ素子21a~21d,22a~22dの配置を変更した点以外は、第1の実施形態と同様である。
【0063】
次に、センサ部14Aの起歪体20におけるセンサ素子21a~21d,22a~22dの配置について説明する。ここでは、第1実施形態に係るセンサ部14と異なる点について主に説明する。
【0064】
A系センサ素子21a~21dは、起歪体20の上面Ptの第2構造体12側の2つの隅に分けて配置される。第1のA系センサ素子21a及び第2のA系センサ素子21bは、電気絶縁距離を保つように接触しない範囲で近接して、ほぼ同一方向の向きで設けられる。第3のA系センサ素子21c及び第4のA系センサ素子21dは、電気絶縁距離を保つように接触しない範囲で近接して、ほぼ同一方向の向きで設けられる。
【0065】
第1のA系センサ素子21aは、第2構造体12側の端部が外側に向くように、起歪体20の長手方向に対して傾けて配置される。第2のA系センサ素子21bは、第1のA系センサ素子21aよりも内側に配置される。
【0066】
第4のA系センサ素子21dは、起歪体20を長手方向に半分にする中心線に対して、第1のA系センサ素子21aと線対称になるように配置される。第3のA系センサ素子21cは、第4のA系センサ素子21dよりも内側に配置される。即ち、第3のA系センサ素子21cは、起歪体20を長手方向に半分にする中心線に対して、第2のA系センサ素子21bと線対称になるように配置される。
【0067】
第1から第4のB系センサ素子22a~22dは、第1の実施形態と同様に、起歪体20の下面Puに、第1から第4のA系センサ素子21a~21dと同様に配置される。これにより、第1から第4のB系センサ素子22a~22dは、起歪体20を介して、それぞれ第1から第4のA系センサ素子21a~21dが位置する。
【0068】
ここでは、全てのセンサ素子21a~21d,22a~22dを起歪体20の第2構造体12側に配置する構成について説明したが、起歪体20の第1構造体11側に配置してもよい。例えば、図21~23に示すセンサ素子21a~21d,22a~22dの配置を、起歪体20を短手方向に半分にする中心線に対して、線対称になるように配置を変更してもよい。
【0069】
本実施形態によれば、二重化された2つの検出回路のセンサ素子21a~21d,22a~22dを起歪体20の両面の第2構造体12側(又は、第1構造体11側)に配置した構成で、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…トルクセンサ、11…第1構造体、12…第2構造体、13…第3構造体、14…センサ部、15…ケース、16…ケーブル、20…起歪体、21a,21b,21c,21d…A系センサ素子、22a,22b,22c,22d…B系センサ素子。
図1
図2
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