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特開2023-56782発達支援システム、その制御方法、プログラム及び促育遊び実施デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056782
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】発達支援システム、その制御方法、プログラム及び促育遊び実施デバイス
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20180101AFI20230413BHJP
   G06Q 50/20 20120101ALI20230413BHJP
【FI】
G06Q50/22
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166202
(22)【出願日】2021-10-08
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業、研究開発項目「人と共に進化するAIシステムの基盤技術開発」、研究開発テーマ名「「説明できる自律化インタラクションAIの研究開発と育児・発達支援への応用」に係る産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】520428959
【氏名又は名称】株式会社ChiCaRo
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】阿部 香澄
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】山内 直子
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049CC34
5L099AA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】子供の発達支援に関わる者の負担を軽減する発達支援システム、その制御方法、プログラム及び促育遊び実施デバイスを提供する。
【解決手段】発達支援システム10は、対象者と促育遊びを行う保育ロボット12と、サーバ11と、操作端末13と、を備える。サーバ11は、対象者の促育遊びにおける振舞を振舞データとして収集する振舞データ収集部と、対象者の発達状態に関するレポートを作成する発達レポート作成部と、を有する。発達レポート作成部は、収集された振舞データに基づいて発達の専門家向けの発達レポートを作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
子供と促育遊びを行う促育遊び実施デバイスと、
前記子供の促育遊びにおける振舞を振舞データとして収集する振舞データ収集ユニットと、
前記子供の発達状態に関するレポートを作成する発達レポート作成ユニットと、を備え、
前記発達レポート作成ユニットは、前記収集された振舞データに基づいて前記レポートを作成することを特徴とする発達支援システム。
【請求項2】
前記発達レポート作成ユニットは、前記促育遊びにおける達成度を含む前記レポートを作成することを特徴とする請求項1に記載の発達支援システム。
【請求項3】
前記発達レポート作成ユニットは、発達の専門家に向けた第1の発達レポートと、日常保育者に向けた第2の発達レポートと、を作成し、前記第1の発達レポートと前記第2の発達レポートは内容が異なることを特徴とする請求項2に記載の発達支援システム。
【請求項4】
前記収集された振舞データに基づいて実施される促育遊びを決定する促育遊び決定ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発達支援システム。
【請求項5】
前記促育遊び決定ユニットは、前記促育遊びにおいて、発達の最近接領域(ZPD)に属する遊びを繰り返し行うことを特徴とする請求項4に記載の発達支援システム。
【請求項6】
前記促育遊び決定ユニットは、同じZPDに属する複数の前記促育遊びを準備し、前記子供の好みの違いを考慮して実施する前記促育遊びを決定することを特徴とする請求項4に記載の発達支援システム。
【請求項7】
前記促育遊び決定ユニットは前記収集された振舞データを所定の学習済みモデルに入力し、前記所定の学習済みモデルは前記実施する促育遊びの内容を決定し、
前記所定の学習済みモデルは、前記振舞データに関連付けられた促育遊びの内容を学習データとする機械学習によって生成されることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の発達支援システム。
【請求項8】
前記収集された振舞データに基づいて前記促育遊び実施デバイスに所定の行動を行わせる飽き解消ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発達支援システム。
【請求項9】
前記飽き解消ユニットは、前記収集された振舞データにおける、前記子供が前記促育遊び実施デバイスから視線を外す回数及び前記促育遊び実施デバイスから前記子供までの距離の少なくとも1つに基づいて前記子供が前記促育遊びに飽きているかを判定することを特徴とする請求項8に記載の発達支援システム。
【請求項10】
前記所定の行動は、前記促育遊び実施デバイスによる前記子供の追跡であることを特徴とする請求項8又は9に記載の発達支援システム。
【請求項11】
前記所定の行動は、前記促育遊び実施デバイスが実施している前記促育遊びを他の促育遊びへ変更することであることを特徴とする請求項8又は9に記載の発達支援システム。
【請求項12】
前記所定の行動は、前記促育遊び実施デバイスによる前記子供への声かけであることを特徴とする請求項8又は9に記載の発達支援システム。
【請求項13】
前記飽き解消ユニットは、前記促育遊びの内容として、前記子供へイラストを提示し、該提示されたイラストに対応する単語を回答させる言語クイズの出題を決定する際、前記子供が好むカテゴリーに属するイラストを前記提示するイラストとして決定することを特徴とする請求項8又は9に記載の発達支援システム。
【請求項14】
前記飽き解消ユニットは、前記言語クイズにおいて前記子供が正解となる単語を回答した場合、前記子供が気付く程度のリアクションを行うことを特徴とする請求項13に記載の発達支援システム。
【請求項15】
促育遊び制御デバイスをさらに備え、
遠隔サポーターが前記促育遊び制御デバイスを操作して前記促育遊び実施デバイスに前記促育遊びを実施させることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の発達支援システム。
【請求項16】
前記促育遊び制御デバイスは、前記促育遊び決定ユニットが決定する実施される促育遊びを遠隔サポーターに示す表示部を有することを特徴とする請求項4に記載の発達支援システム。
【請求項17】
前記促育遊び制御デバイスは、前記子供が前記促育遊びに飽きていると判定される場合、前記促育遊び決定ユニットが決定する実施される促育遊び以外の促育遊びを前記遠隔サポーターが選択できる選択肢を前記表示部に表示することを特徴とする請求項16に記載の発達支援システム。
【請求項18】
前記促育遊びは、前記子供へイラストを提示し、該提示されたイラストに対応する単語を回答させる言語クイズであることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の発達支援システム。
【請求項19】
前記子供はToddler層の子供であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の発達支援システム。
【請求項20】
前記促育遊び実施デバイスは保育ロボットであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の発達支援システム。
【請求項21】
子供と促育遊びを行う促育遊び実施デバイスと、前記子供の促育遊びにおける振舞を振舞データとして収集する振舞データ収集ユニットと、前記子供の発達状態に関するレポートを作成する発達レポート作成ユニットと、を備える発達支援システムの制御方法であって、
前記収集された振舞データに基づいて前記レポートを作成することを特徴とする発達支援システムの制御方法。
【請求項22】
子供と促育遊びを行う促育遊び実施デバイスと、前記子供の促育遊びにおける振舞を振舞データとして収集する振舞データ収集ユニットと、前記子供の発達状態に関するレポートを作成する発達レポート作成ユニットと、を備える発達支援システムの制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記制御方法は、前記収集された振舞データに基づいて前記レポートを作成することを特徴とするプログラム。
【請求項23】
子供と促育遊びを行う促育遊び実施デバイスであって、
前記子供の促育遊びにおける振舞を振舞データとして収集する振舞データ収集ユニットと、
前記収集された振舞データに基づいて実施される促育遊びを決定する促育遊び決定ユニットと、を備えることを特徴とする促育遊び実施デバイス。
【請求項24】
前記促育遊び実施デバイスは外部の発達レポート作成ユニットと接続され、
前記振舞データ収集ユニットは、前記収集した振舞データを前記発達レポート作成ユニットへ送付することを特徴とする請求項23に記載の促育遊び実施デバイス。
【請求項25】
前記促育遊び決定ユニットは、前記収集された振舞データに基づいて、前記子供の飽きを解消する行動を行うことを決定することを特徴とする請求項23又は24に記載の促育遊び実施デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Toddler層(0歳~3歳)の子供に対して促育遊びを実施する発達支援システム、その制御方法、プログラム及び促育遊び実施デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発達に支援が必要な子供の数が増加しているが、対象となる子供がToddler層(0歳~3歳)であるうちに発達支援を開始すると、その後の子供の発達のキャッチアップが容易となるため、発達支援が必要か否かは早期に判断する必要がある。そして、発達障害を持つと診断されていないが、発達の遅れの可能性がある、いわゆるグレーゾーンの子供の発達支援には、通常、言語聴覚士等の発達の専門家と、保育士や親等の日常保育者との両者が関わる。
【0003】
発達の専門家は、グレーゾーンの子供が通う保育施設を訪問し、グレーゾーンの子供の直接観察や保育士へのヒアリングを行った上で、日常的にグレーゾーンの子供に関わりを持つ日常保育者へ関わり方に関するアドバイスを行う。また、発達の専門家は、発達支援の施設を訪れたグレーゾーンの子供の状況を把握し、その子供に適した言語訓練の具体的なメニューを策定する。言語訓練の具体的なメニューとしては、例えば、特許文献1に記載された「子供の言語発達を支援する言語学習教材」を用いる訓練や、所定の認知・言語促進プログラム(非特許文献1参照)を用いる訓練が該当する。また、アドバイスとしては、例えば、散歩中に色や名の声かけ(問いかけ)を積極的にする等の宿題が該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-64411号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】津田望、東敦子、“認知・言語促進プログラム(略称 NC-プログラム)”、[online]、社会福祉法人のゆりの会 のぞみ発達クリニック、[令和3年9月23日検索]、インターネット<URL: https://www.nozomic.org/nozomic0011.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発達の専門家の人数は限られており、例えば、1人の発達の専門家が保育園を訪問する頻度は半年に一度程度である。さらに、発達の専門家が保育園に留まる時間も限られる。したがって、訪問当日、子供の気になる行動が観察されたとき、その行動が普段から行われているのか、当日たまたま行われたのかの区別を限られた情報から行った上で、日常保育者へアドバイスを行う必要があるため、発達の専門家の心理的負担は大きい。
【0007】
また、子供は日々成長するため、成長に応じて言語訓練の内容を変更していくことが好ましいが、アドバイスの内容の実行は保育士にとって必須事項でなく、また、保育士は他に行うべきことも多々抱えているため、アドバイスの内容を実行できていないとの思いを持つ等、日常保育者の心理的負担も大きい。
【0008】
さらに、発達の専門家が言語訓練のメニューを策定する際、日常保育者によって子供の発達状態、例えば、アドバイスされた言語訓練の達成度を発達の専門家に知らせることが好ましいが、忙しい日常保育者にとって言語訓練の達成度をレポートにまとめることは、技術的にも時間的にも厳しく、やはり、日常保育者の負担が大きくなる。
【0009】
本発明は、子供の発達支援に関わる者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の発達支援システムは、子供と促育遊びを行う促育遊び実施デバイスと、前記子供の促育遊びにおける振舞を振舞データとして収集する振舞データ収集ユニットと、前記子供の発達状態に関するレポートを作成する発達レポート作成ユニットと、を備え、前記発達レポート作成ユニットは、前記収集された振舞データに基づいて前記レポートを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、子供の促育遊びにおける振舞である振舞データが収集され、該収集された振舞データに基づいてレポートが作成されるため、日常保育者が自分で言語訓練の達成度をレポートにまとめる必要が無くなる。これにより、日常保育者の負担を軽減することができる。また、発達の専門家はレポートによって子供の発達状態に関する情報を十分に得ることができるため、言語訓練のメニューを策定する際の発達の専門家の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る発達支援システムの構成を概略的に示す図である。
図2図1の発達支援システムにおける保育ロボットを説明するための図である。
図3】本実施の形態における保育ロボットのソフトウエアの構成を説明するための図である。
図4】本実施の形態におけるサーバのソフトウエアの構成を説明するための図である。
図5】本実施の形態における操作端末のソフトウエアの構成を説明するための図である。
図6】本実施の形態において実施される言語クイズを説明するための図である。
図7】言語クイズが実施される際に保育ロボットのディスプレイに表示される遊び向け画面の一例を示す図である。
図8】言語クイズが実施される際に操作端末のディスプレイに表示される操作画面の一例を示す図である。
図9】実施される言語クイズを決定するための学習済みモデルを説明するための図である。
図10】言語クイズの結果から作成される発達の専門家向けの発達レポートの一例を示す図である。
図11】視覚認知、描画、言語理解及び言語表出のそれぞれにおける対象者の発達度合いを示す発達レポートの一例を示す図である。
図12】言語クイズの結果から作成される日常保育者向けの発達レポートの一例を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係る発達支援システムの構成を概略的に示す図である。
図14】本実施の形態におけるサーバのソフトウエアの構成を説明するための図である。
図15】本発明の第3の実施の形態における保育ロボットのソフトウエアの構成を説明するための図である。
図16】本実施の形態におけるサーバのソフトウエアの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発達支援システムの構成を概略的に示す図である。図1において、発達支援システム10は、サーバ11と、保育ロボット12(促育遊び実施デバイス)と、操作端末13(促育遊び制御デバイス)と、を備える。サーバ11、保育ロボット12及び操作端末13は、インターネット等の相互に通信可能な通信ネットワーク14によって互いに接続される。通常、サーバ11、保育ロボット12及び操作端末13は互いに異なる場所に配置される。但し、サーバ11と操作端末13は同じ場所、例えば、同じ保育園に配置されていてもよい。
【0015】
発達支援システム10では、後述するように、促育遊びと、Toddler層の子供(以下、「対象者」という。)の発達状態に関するレポート(以下、「発達レポート」という。)の作成と、を実施する。
【0016】
サーバ11は、発達支援システム10の全体を管理、制御するコンピュータであり、発達レポートを表示するディスプレイ15や発達レポートを紙等で出力するプリンタ16に接続される。なお、発達レポートは発達の専門家のPCやタブレットに送信され、当該PCのディスプレイやタブレットの画面に表示されてもよい。
【0017】
操作端末13は、主に遠隔サポーターが操作するパソコンやタブレット等の通信機器である。遠隔サポーターとは、忙しい日常保育者に代わり、発達支援システム10において対象者と促育遊びを行う者であり、例えば、体力面等の理由によって保育園を離職した保育士、自身の育児と仕事の両立を図りたいパートタイム勤務のベビーシッターや日常保育者の肉親である祖父母が該当する。
【0018】
操作端末13は、遠隔サポーターの操作を受け付けるキーボードやタッチパネル等の操作部17と、ディスプレイ18(表示部)と、カメラ(不図示)と、マイク(不図示)と、スピーカー(不図示)と、を有する。なお、操作端末13は、マイクとスピーカーが一体化されたヘッドセットと接続されてもよい。ディスプレイ18は、後述する保育ロボット12のカメラ20が撮影した対象者19の画像、例えば、動画を表示する。また、ディスプレイ18は、促育遊びを実施するための操作画面36を表示する。操作画面36の詳細については後述する。カメラは操作端末13を操作する遠隔サポーターを撮影し、マイクは遠隔サポーターの音声を集音する。スピーカーは、保育ロボット12のマイク23が集音した対象者19の音声を発音する。遠隔サポーターは、操作部17等を用いて保育ロボット12を遠隔操作し、保育ロボット12によって対象者19と促育遊びを行う。
【0019】
保育ロボット12は、図2(A)に示すように、対象者19の側に配置され、対象者19と促育遊びを行う。また、保育ロボット12は、図2(B)に示すように、全体として人に似た形状を呈し、人の顔を模した頭部と胴体を模した胴部を有する。なお、保育ロボット12は、人に限らず、犬、鳥、魚等の動物やアニメのキャラクター、人形、ぬいぐるみ等、対象者の日常生活におけるコミュニケーションの対象に似た形状を呈するのが好ましい。また、保育ロボット12は、対象者19が保育ロボット12を触れたり、叩いたりしても、対象者19が負傷しないように、全体として丸みを帯びた形状を呈する。
【0020】
保育ロボット12は、カメラ20と、ディスプレイ21と、スピーカー22と、マイク23と、ハンド24と、を有する。カメラ20は対象者19が存在する空間を撮影する。なお、カメラ20のレンズは魚眼レンズで構成され、保育ロボット12の周辺を広範囲で撮影することができる。なお、カメラ20のレンズが魚眼レンズで構成されない場合、一般的なレンズを有する2台のカメラを配置し、保育ロボット12の周辺を広範囲で撮影するようにしてもよい。ディスプレイ21は促育遊びで使用される遊び向け画面37を表示する。遊び向け画面37の詳細については後述する。また、ディスプレイ21は操作端末13のカメラが撮影した遠隔サポーターの画像、例えば、動画を表示する。さらに、ディスプレイ21はタッチパネルを内蔵し、対象者19がタッチした箇所を認識する。マイク23は対象者19の音声を集音する。スピーカー22は、操作端末13のマイクが集音した遠隔サポーターの音声を発音する。
【0021】
操作端末13と保育ロボット12の間では、通信ネットワーク14を介した通信によって画像や音声のデータが交換される。遠隔サポーターと対象者19は、操作端末13のディスプレイ18、カメラ、マイクやスピーカー、並びに、保育ロボット12のカメラ20、ディスプレイ21、スピーカー22やマイク23により、互いの画像と音声を交換するビデオチャットを行うことができる。
【0022】
保育ロボット12のハンド24は、保育ロボット12の胴部に設けられたポケット状の容器であり、底部を支点として回動することにより、開口部を対象者19へ対向させ、又は開口部を対象者19から隠す。ハンド24の開口部が対象者19へ対向したとき、対象者19は、ハンド24へおもちゃ等の小物を格納させ、又はハンド24から小物を取り出すことができる。保育ロボット12は、ハンド24を回動させて開口部を対象者19へ対向させ、又は開口部を対象者19から隠すことにより、小物の受け渡しを伴う促育遊びを実行することができる。なお、上述したように、カメラ20のレンズは魚眼レンズで構成されるため、カメラ20は、図2(B)に示すようにカメラ20の下方に配置されるハンド24の中身を撮影することができる。なお、促育遊びを行うためにはハンド24は必須ではなく、例えば、発達支援システム10において、保育ロボット12の代わりに、ハンドを備えない保育ロボットを用いてもよい。
【0023】
また、保育ロボット12は底部に移動機構(不図示)、例えば、コロや車輪を有し、任意の方向へ移動可能に構成される。保育ロボット12の移動は、操作端末13の操作部17への操作の入力によって制御可能である。
【0024】
図3は、保育ロボット12のソフトウエアの構成を説明するための図である。図3において、保育ロボット12は、ソフトウエアのモジュールとして、移動機構制御部25と、ビデオチャット制御部26と、画像制御部27と、ハンド制御部28と、を有する。各モジュールは、保育ロボット12のCPUがROMやRAMに格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0025】
移動機構制御部25は、例えば、遠隔サポーターの操作に応じて保育ロボット12の移動機構を制御し、遠隔サポーターが欲する位置への移動や動作を保育ロボット12に実行させる。ビデオチャット制御部26は、カメラ20、ディスプレイ21、スピーカー22やマイク23を制御して操作端末13とのビデオチャットを実行する。ビデオチャットを実行する際、ビデオチャット制御部26は、操作端末13のビデオチャット制御部34との間で音声や画像のデータを通信によって交換する。画像制御部27は、ディスプレイ21を制御して遠隔サポーターの画像や遊び向け画面37を表示する。ハンド制御部28は、ハンド24を制御して対象者19への小物の受け渡しを行う。
【0026】
保育ロボット12が促育遊びを実施する際、画像制御部27は、促育遊びの進行に伴って表示する遊び向け画面を変更し、ビデオチャット制御部26は、ビデオチャットを通じて遠隔サポーターによる対象者19への問いかけと、対象者19の遠隔サポーターへの回答とを繰り返し実現させる。さらに、移動機構制御部25は、保育ロボット12が促育遊びを実施する際、保育ロボット12によって対象者19を追跡させ、又は、対象者19の注意を引く動作を保育ロボット12に行わせることにより、促育遊び中の対象者19の飽きを解消して対象者19を促育遊びに集中させ、促育遊びの進行を補助する。
【0027】
また、保育ロボット12が促育遊びを実施する際、画像制御部27は、対象者19がタッチした箇所をタッチパネルによって認識し、ビデオチャット制御部26は、カメラ20によって対象者19の視線の向きや位置を認識し、マイク23によって対象者19の発話内容を収集し、さらに、遠隔サポーターの問いかけに対する対象者19の回答までの時間を認識する。そして、保育ロボット12は、対象者19がタッチした箇所、対象者19の視線の向きや位置、対象者19の発話内容や対象者19の回答までの時間を対象者19の振舞データとして、通信ネットワーク14を介してサーバ11へ送信する。
【0028】
なお、ビデオチャット制御部26が上述した認識等を行わず、単に対象者19の発話内容や画像の収集のみを行い、保育ロボット12が発話内容や画像をサーバ11へ送信してもよい。この場合、例えば、サーバ11の振舞データ収集部29が、受信した発話内容や画像から、対象者19の視線の向きや位置、さらには対象者19の回答までの時間を認識し、これらの認識の結果を振舞データへ変換する。特に、振舞データ収集部29が上述した認識を行う場合、保育ロボット12の処理負荷を軽減できるため、保育ロボット12の構成を簡略化し、保育ロボット12のコストを抑制することができる。これにより、ユーザへの保育ロボット12の貸与等を安価に行うことができ、発達支援システム10の展開を促進することができる。また、より複雑な促育遊びやそれに伴う高度な認識を行うためにはサーバ11側の処理リソースだけを強化すれば済むため、保育ロボット12側で処理リソースを補強する必要を無くし、発達支援システム10の発展も容易に行うことができる。
【0029】
また、ビデオチャット制御部26が、遠隔サポーターの問いかけに対して対象者19が正解を回答したか否かを判定できる場合、保育ロボット12は、対象者19が正解を回答したか否かの事実も対象者19の振舞データに含めてサーバ11へ送信する。
【0030】
なお、振舞データとなる対象者19の行動は、保育ロボット12のカメラ20やマイク23だけでなく、保育ロボット12の周辺に設置されたセンサやカメラによって収集され、サーバ11へ送信されてもよい。
【0031】
図4は、サーバ11のソフトウエアの構成を説明するための図である。図4において、サーバ11は、ソフトウエアのモジュールとして、振舞データ収集部29(振舞データ収集ユニット)と、促育遊び実行部30(促育遊び決定ユニット)と、発達データ格納部31と、発達レポート作成部32(発達レポート作成ユニット)と、を有する。各モジュールは、サーバ11のCPUがROMやRAMに格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0032】
振舞データ収集部29は、保育ロボット12が送信する対象者19の振舞データを受信し、発達データ格納部31へ格納する。振舞データ収集部29は、操作端末13から送信される遠隔サポーターによる対象者19の観察結果としての振舞データも受信し、保育ロボット12から受信した振舞データと合わせて発達データ格納部31へ格納する。
【0033】
促育遊び実行部30は、発達データ格納部31へ格納された振舞データに基づいて実施される促育遊びを決定する。実施される促育遊びの決定方法の詳細については後述する。また、促育遊び実行部30は、振舞データに基づいて保育ロボット12へ対象者19の飽きを解消させる動作を行わせるか否かを判定する飽き解消ユニットとしても機能する。発達レポート作成部32は、発達データ格納部31へ格納された振舞データに基づいて発達レポートを作成する。発達レポートの詳細については後述する。
【0034】
図5は、操作端末13のソフトウエアの構成を説明するための図である。図5において、操作端末13は、ソフトウエアのモジュールとして、操作受付部33と、ビデオチャット制御部34と、画像制御部35と、を有する。各モジュールは、操作端末13のCPUがROMやRAMに格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0035】
操作受付部33は、操作部17によって遠隔サポーターの操作を受け付け、保育ロボット12へ当該操作に対応する動作を実行させるための制御信号を送信する。また、操作受付部33は、促育遊びが実施される際、促育遊びを進行させるための遠隔サポーターによる操作を受け付ける。
【0036】
ビデオチャット制御部34は、カメラ、ディスプレイ18、スピーカーやマイクを制御して保育ロボット12とのビデオチャットを実行する。ビデオチャットを実行する際、ビデオチャット制御部34は、保育ロボット12のビデオチャット制御部26との間で音声や画像のデータを通信によって交換する。画像制御部35は、ディスプレイ18を制御して対象者19の画像や操作画面36を表示する。
【0037】
促育遊びが実施される際、画像制御部35は、サーバ11の促育遊び実行部30が決定した実施される促育遊びに対応する操作画面36をディスプレイ18に表示し、ビデオチャット制御部34は、ビデオチャットを通じて遠隔サポーターによる対象者19への問いかけと、対象者19の遠隔サポーターへの回答とを繰り返し実現させる。また、促育遊びが実施される際、操作受付部33は、対象者19を観察した遠隔サポーターによる対象者19の観察結果である対象者19の回答の状況、例えば、遠隔サポーターによる問いかけに対して正解を回答したか否か、若しくは、正解を回答したものの対象者19が正解に到るまでヒントを必要とした等の事実の操作部17への入力を受け付け、これらの事実を対象者19の振舞データとしてサーバ11へ送信する。
【0038】
促育遊びが実施される際、画像制御部35は、対象者19の画像だけでなく遠隔サポーターの画像もディスプレイ18へ表示し、特願2020-129153号の明細書に記載されているように、対象者19がタッチ操作可能な範囲の中央、例えば、対象者19の利き腕の付け根の位置が遠隔サポーターの画像の中心線と一致するように対象者19の画像の表示位置を制御してもよい。これにより、対象者19が保育ロボット12のディスプレイ21の右側をタッチしたのか、若しくは、左側をタッチしたのかを、遠隔サポーターは両画像から容易に判断することができる。
【0039】
次に、本発明の実施の形態において実施される促育遊びとしての言語クイズについて説明する。本発明の実施の形態において実施される言語クイズは、対象者19へイラストを提示した上で問いかけを行い、提示されたイラストが表す物の名称(イラストに対応する単語)を回答させるクイズである。なお、言語クイズは発達支援システム10において実施可能な促育遊びの一例に過ぎず、発達支援システム10では、その他の多様な促育遊びを実施することができる。
【0040】
また、本実施の形態における言語クイズとして、国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査(小寺富子,倉井成子,佐竹恒夫、国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査(改訂第4版)、株式会社エスコアール)を基本とする言語クイズについて説明するが、言語クイズの形態はこれに限られず、上述したように、基本として、イラストを提示した上で問いかけを行い、イラストに対応する単語を回答させるものであれば、国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査以外の検査方式に基づくものであってもよい。
【0041】
国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査は、小児の言語理解能力を幾つかの段階に則して臨床的に評価し、評価された能力に対する適齢の観点から言語発達段階を確認する検査である。国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査は、検査中の手続きが言語訓練に直結するという特徴を有するため、発達の専門家は検査目的だけでなく日々の療育の中に取り入れ活用している。
【0042】
図6は、本実施の形態において実施される言語クイズを説明するための図である。本実施の形態では、遠隔サポーターが操作端末13を通じて当該言語クイズを実施する。例えば、本実施の形態では、「単独理解」の言語クイズ、「音声による理解」の言語クイズ及び「視覚的記号による理解」の言語クイズが実施される。いずれの言語クイズを実施するかは、例えば、言語クイズ以外の促育遊びにおいて対象者19がどの言語発達段階に達しているかを確認し、この確認結果に応じて決定される。
【0043】
最も困難な言語発達段階の「単独理解」の言語クイズでは、イラストのみを対象者19へ提示し(図中の具体例では「りんご」のイラストのみを提示し)、遠隔サポーターが「これはなあに?」とだけ対象者19に問いかけ、対象者19に回答させることにより、療育が行われる。次に困難な言語発達段階の「音声による理解」の言語クイズでは、イラストの提示だけでなく音声による複数の選択肢をヒントとして遠隔サポーターが対象者19へ与え(図中の具体例では「これはおうまさん?」、「これはりんご?」、「これはくるま?」との3つの選択肢を音声によって対象者19へ問いかけ)、対象者19に回答させることにより、療育が行われる。最も容易な言語発達段階の「視覚的記号による理解」の言語クイズでは、遠隔サポーターが複数の選択肢を音声だけでなくイラストでも対象者19へ示し(図中の具体例では「これはおうまさん?」、「これはりんご?」、「これはくるま?」との3つの選択肢を音声によって対象者19へ問いかけるとともに、「りんご」、「馬」、「車」の3つのサブイラストを対象者19へ提示し)、対象者19に回答させることにより、療育が行われる。
【0044】
発達支援システム10では、上述した言語クイズを実施する際、サーバ11の促育遊び実行部30が、操作端末13のディスプレイ18に表示される操作画面36の内容や保育ロボット12のディスプレイ21に表示される遊び向け画面37の内容を決定し、決定された内容の操作画面36や遊び向け画面37をそれぞれ、操作端末13と保育ロボット12へ送信する。操作画面36を受信した操作端末13では、画像制御部35がディスプレイ18へ操作画面36を表示させ、遊び向け画面37を受信した保育ロボット12では、画像制御部27がディスプレイ21へ遊び向け画面37を表示させる。
【0045】
図7は、言語クイズが実施される際に保育ロボット12のディスプレイ21に表示される遊び向け画面37の一例を示す図である。図7では、「視覚的記号による理解」の言語クイズが実施されるときの遊び向け画面37が示され、当該遊び向け画面37は、問いかけの対象となるメインイラスト38と、ヒントとなる3つの選択肢を表すサブイラスト39a~39cと、遠隔サポーターの画像40と、を有する。対象者19の注意を惹き付けやすいように、メインイラスト38は遊び向け画面37の中央に大きく表示される。なお、遊び向け画面37において、メインイラスト38やサブイラスト39a~39cの表示は必須ではなく、例えば、身体の部分の言語理解の言語クイズでは、画像40のみが遊び向け画面37の中央に大きく表示され、遠隔サポーターが、例えば、「〇〇ちゃんの頭はどこ?触って?」と声かけを行う。
【0046】
画像40は、操作端末13のカメラが撮影した遠隔サポーターのリアルタイムの動画であり、対象者19は、画像40を見ながらスピーカー22から発音される遠隔サポーターの音声を聞くことにより、言語クイズが実施される間、遠隔サポーターとビデオチャットを行うことができる。なお、対象者19によっては人が苦手な場合もあるため、画像40に遠隔サポーターの画像の代わりにアバター、仮想の人物の画像や人物以外のキャラクターの画像を表示してもよい。
【0047】
図8は、言語クイズが実施される際に操作端末13のディスプレイ18に表示される操作画面36の一例を示す図である。図8では、、「視覚的記号による理解」の言語クイズが実施されるときの操作画面36が示され、当該操作画面36は、対象者19の画像41と、保育ロボット12のディスプレイ21に表示されている遊び向け画面37を示す画像42と、対象者19のプロフィールを示すプロフィール欄43と、実施中の言語クイズの内容を示す実施クイズ欄44と、次の言語クイズへ移行するための移行ボタン45と、言語クイズを終了させるための終了ボタン46と、保育ロボット12を遠隔操作するための操作アイコン47と、を有する。
【0048】
画像41は、保育ロボット12のカメラ20が撮影した対象者19のリアルタイムの動画であり、遠隔サポーターは、画像41を見ながら、スピーカーから発音される対象者19の音声を聞くことにより、言語クイズが実施される間、対象者19とビデオチャットを行うことができる。
【0049】
また、遠隔サポーターは、画像42を確認することにより、対象者19が何を見てそのような振る舞いを行っているかを理解することができ、対象者19の振舞の意図を或る程度の確からしさを持って判断することができる。さらに、画像42には保育ロボット12のディスプレイ21において対象者19がタッチした箇所が示される。したがって、ディスプレイ21に複数の選択肢が表示されている場合、対象者19がどの選択肢を選んだのかを遠隔サポーターは知ることができる。プロフィール欄43は、対象者19の氏名であるユーザ名と、対象者19の年齢と、対象者19言語クイズを開始してからの経過時間と、を示す。
【0050】
実施クイズ欄44は、実施すべき言語クイズの質問内容と質問に対する正解を示す。実施すべき言語クイズは、サーバ11の促育遊び実行部30が決定するか、若しくは、促育遊び実行部30が選択した複数の言語クイズの中から遠隔サポーターが任意で選ぶ。また、実施クイズ欄44は、対象者19の回答状況を入力するためのチェックボタン44aを有する。チェックボタン44aは、例えば、「○」,「×」,「△」の3つの選択肢から構成される。
【0051】
遠隔サポーターの問いかけに対して対象者19が正解(メインイラスト38が表す物の正しい名称)を回答した場合、遠隔サポーターは「○」をマウスのポインタ等で選択し、対象者19が正解を回答した旨を操作端末13の格納部(不図示)へ格納させる。遠隔サポーターの問いかけに対して対象者19が正解を回答できなかった場合、遠隔サポーターは「×」をポインタ等で選択し、対象者19が正解を回答できなかった旨を格納部へ格納させる。遠隔サポーターの問いかけに対して対象者19がヒントを与えられた上で正解を回答した場合、遠隔サポーターは「△」をポインタ等で選択し、対象者19がヒントを与えられた上で正解を回答した旨を格納部へ格納させる。そして、格納された対象者19の回答状況は、例えば、言語クイズが終了した後、振舞データとしてサーバ11へ送信される。
【0052】
なお、遠隔サポーターがチェックボタン44aの選択肢を選択したとき、対象者19の回答状況が操作端末13の格納部へ格納されず、直ちに振舞データとしてサーバ11へ送信されてもよい。また、操作端末13のビデオチャット制御部34が、対象者19が正解を回答したか否かを判定できる場合、ビデオチャット制御部34は対象者19の回答状況を操作端末13の格納部へ格納してもよく、若しくは、直ちに振舞データとしてサーバ11へ送信してもよい。
【0053】
遠隔サポーターが移行ボタン45を選択すると、サーバ11の促育遊び実行部30から次の言語クイズの操作画面36が送信され、ディスプレイ18の操作画面36が更新される。このとき、操作画面36の更新に合わせて保育ロボット12のディスプレイ21の遊び向け画面37も次の言語クイズの遊び向け画面37へ更新される。また、遠隔サポーターが終了ボタン46を選択すると言語クイズが終了される。
【0054】
操作アイコン47は、保育ロボット12の移動方向を示すアイコン群で構成され、遠隔サポーターが所望の移動方向のアイコンを選択すると、保育ロボット12が選択されたアイコンに対応する移動方向へ移動する。したがって、遠隔サポーターは、言語クイズを実施しながら、保育ロボット12を希望するように移動させることができる。特に、遠隔サポーターは、対象者19が現在実施している言語クイズに飽きたような振舞を示す場合、保育ロボット12を対象者19が興味を示すように動作させることにより、対象者19の注意を再度、言語クイズへ引き戻すことができる。また、遠隔サポーターは保育ロボット12を移動させて、促育遊びを安心して実施できる場所、例えば、親の側や対象者19のお気に入りの部屋の隅まで対象者19を誘導することができ、若しくは、対象者19が促育遊びを安心して実施できる場所へ移動するまで、対象者19に付いていくこともできる。さらに、操作アイコン47は、保育ロボット12のハンド24の開閉を行うためのアイコンやスピーカー22から所望の音、例えば、猫の鳴き声を発生させるためのアイコンも含む。
【0055】
操作画面36では、実施すべき言語クイズの質問内容と質問に対する正解が実施クイズ欄44に表示される。また、操作画面36では、対象者19の回答状況を入力するためのチェックボタン44aが実施クイズ欄44に表示される。したがって、遠隔サポーターは、実施クイズ欄44に表示された内容を確認しながら、ボイスチャットを対象者19と行うだけで言語クイズを実施することができるため、遠隔サポーターが自発的に実施すべき言語クイズを決定する必要がなく、言語クイズに精通する必要もない。また、遠隔サポーターは、チェックボタン44aの選択肢を選択するだけで振舞データを収集することができる。これにより、言語クイズの実施における遠隔サポーターの負担を軽減することができる。
【0056】
ところで、操作画面36では、実施クイズ欄44に表示される実施すべき言語クイズの内容がサーバ11の促育遊び実行部30によって決定されるが、促育遊び実行部30は、保育ロボット12や操作端末13がサーバ11へ送信する振舞データ(特に、対象者19の回答状況)に基づいて実施される言語クイズを決定する。具体的に、促育遊び実行部30は、以下の複数のルールの少なくとも1つに従って実施される言語クイズを決定する。
・発達の最近接領域(ZPD)に属する遊び(言語クイズ)を繰り返し行う。
・同じZPDに属する複数の遊び(言語クイズ)、例えば、人に関した言語クイズや乗り物に関した言語クイズを準備し、対象者19の好みの違いを考慮して実施する言語クイズを決定する。
【0057】
ZPDとは、対象者19にとって難しすぎず、且つ簡単すぎない、対象者19が今当に属する成長段階である。ZPDに属する促育遊びでは、現時点の対象者19の発達水準ではやり遂げられない作業を周囲の援助によって達成させてあげることにより、次第にその作業が対象者19に内在化し、結果として対象者19が自らの能力でその作業が実行可能となるという効果が得られる。
【0058】
ZPDは対象者19の回答状況から見つけ出されるが、具体的には、多く正解できる促進遊びを含む発達項目(又はステップ月齢単位)と、多くを正解できない促進遊びを含む発達項目(又はステップ月齢単位)との境目を回答状況から見つけ出し、多くを正解できない発達項目をZPDとして決定する。
【0059】
なお、振舞データは各対象者19に固有のものなので、振舞データに基づいて決定される実施される言語クイズは各対象者19に固有のものとなる。
【0060】
さらに、促育遊び実行部30は、図9に示すように、いわゆる学習済みモデルを利用して実施される言語クイズを決定してもよい。促育遊び実行部30は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)として構成される学習済みモデル49(所定の学習済みモデル)へ振舞データを入力し、学習済みモデル49から実施される言語クイズに含めるイラストを出力させてもよい。学習済みモデル49は、学習データ50を用いた機械学習によって生成され、振舞データが入力されると、実施される言語クイズに含めるイラストを出力するように構成される。ここで、学習データ50は、保育ロボット12や操作端末13によって収集された多数の振舞データを含み、これらの振舞データには、例えば、対象者19が興味を示したイラストや前回の言語クイズにおいて対象者19がヒントを与えられた上で正解を回答したイラストが関連付けられる。
【0061】
また、本実施の形態における対象者19は、Toddler層の子供であるため、一般的に集中力を持続させるのが困難であり、言語クイズの実施中に対象者19の飽きを解消することは重要である。
【0062】
これに対応して、本実施の形態では、保育ロボット12によって対象者19の飽きを解消させる。具体的に、促育遊び実行部30が振舞データに基づいて対象者19が言語クイズに飽きているか否かを判定し、保育ロボット12へ所定の行動を行わせることを遠隔サポーターへリコメンドする。
【0063】
促育遊び実行部30は、特許第6781460号の明細書に例示されているような特徴量、例えば、振舞データに含まれる対象者19の視線の向き、対象者19の位置、対象者19の発話内容、対象者19の回答までの時間、対象者19の動きの量(対象者19位置の変動量、例えば、対象者19の上半身がユラユラしている動き等)及び対象者19の表情の変化(対象者19から笑顔が消えた等)の少なくとも1つに基づいて、対象者19が言語クイズに飽きているか否か、若しくは、対象者19が言語クイズに関心があるか否かを判定する。例えば、促育遊び実行部30は、対象者19が保育ロボット12から視線を外す回数が所定の回数よりも多くなったとき、対象者19が言語クイズに飽きていると判定する。また、促育遊び実行部30は、対象者19が保育ロボット12から離れ、保育ロボット12から対象者19までの距離が所定の距離よりも大きくなったとき、対象者19が言語クイズに飽きていると判定する。さらに、促育遊び実行部30は、イラストの表す物の名称をはっきりと答えなくなったとき、対象者19が言語クイズに飽きていると判定する。また、促育遊び実行部30は、問いかけから対象者19が回答するまでの時間が所定の時間よりも長くなったとき、対象者19が言語クイズに飽きていると判定する。
【0064】
促育遊び実行部30は、対象者19が言語クイズに飽きていると判定すると、操作画面36を通じて遠隔サポーターへ、所定の行動として、保育ロボット12へ以下に示す複数の動作の少なくとも1つを行わせることをリコメンドする。
【0065】
・保育ロボット12から離れた対象者19を保育ロボット12に追跡させる。
・保育ロボット12が実施している促育遊びを一旦、他の遊び(追いかけっこ等の自由な遊び)へ変更し、その後、促育遊びを再開する。
・保育ロボット12のマイク23から、「あ!!これ知ってる?」等の定型句や対象者19の名前を発音させる等、保育ロボット12に対象者19への声かけを行わせる。
・言語クイズにおいて対象者19が正解となる単語を複数回に亘って回答できなかった場合、保育ロボット12のディスプレイ21に表示される遊び向け画面37を、不正解となったイラストが属するカテゴリーとは別のカテゴリーに属するイラストを出題する遊び向け画面37に更新する。
・保育ロボット12のディスプレイ21に表示される遊び向け画面37を、対象者19が好むカテゴリーに属するイラストを出題する遊び向け画面37に更新する。
・言語クイズにおいて対象者19が正解となる単語を回答した場合、保育ロボット12に、対象者19が気付く程度のリアクション、例えば、その場での回転、所定の音の発音やディスプレイ21の明暗切り換えを行わせる。
【0066】
次に、発達支援システム10において作成される発達レポートについて説明する。発達支援システム10では、対象者19の振舞データが或る程度、発達データ格納部31へ格納された場合に発達レポートが作成される。具体的には、数日分の言語クイズの発達レポートが発達データ格納部31へ格納された場合に発達レポートが作成される。なお、上述したように、発達支援システム10では、サーバ11の発達レポート作成部32が発達レポートを作成する。
【0067】
ところで、発達支援では、発達の専門家が対象者19の発達度合いを知るために、発達に関する指標の時系列データが有効である。一方、発達支援システム10では、対象者19と日々を過ごす家庭や保育園等で遠隔サポーターが促育遊びを実施するため、促育遊び(言語クイズ)を数日間に亘って実施することができる。そこで、本実施の形態では、数日間に亘って実施された言語クイズの結果を時系列データとしてまとめる。
【0068】
図10は、言語クイズの結果から作成される発達の専門家向けの発達レポート51の一例を示す図である。言語クイズでは、対象者19の言語理解の程度が得られるため、発達レポート51(第1の発達レポート)は言語理解における対象者19の発達度合いを示す。また、発達レポート51は、数日間に亘って実施された言語クイズにおいて収集された振舞データ、特に、対象者19が正解を回答したイラストの数に基づいて作成される。発達レポート51は、横軸が促育遊びとしての言語クイズを実施した日付で示され、縦軸が言語クイズの正解率である達成度で示される。すなわち、発達レポート51からは言語理解における対象者19の達成度の変遷を知ることができ、発達の専門家が数日間に亘って言語クイズを実施しなくても、発達の専門家は対象者19が言語理解においてゆっくりと発達しているのか、それとも殆ど発達していないのかを知ることができる。これにより、発達の専門家は十分な情報に基づいて言語訓練のメニューを策定することができるため、発達の専門家の心理的負担を軽減することができる。
【0069】
なお、発達レポートは、実施される促育遊びに応じて内容が変更されるが、原則として、ケアすべき発達分野、例えば、言語理解だけでなく、視覚認知、描画や言語表出のそれぞれにおける対象者19の発達度合いを示す。
【0070】
図11は、視覚認知、描画、言語理解及び言語表出のそれぞれにおける対象者19の発達度合いを示す発達レポート52の一例を示す図である。発達レポート52では、視覚認知、描画、言語理解及び言語表出のそれぞれにおいて、対象者19がどのステップ月齢(1~7)に該当するかを示す。例えば、言語表出に関する促育遊びでは、事物の名称の表出において、遠隔サポーターが対象者19の発語を、表現方法(成人語、幼児語、身振り又は指さし)と、発音(明瞭又は不明瞭)の2つの側面において直感的に評価し、これらの評価に基づいて、発達レポート作成部32がステップ月齢を判定した上で発達レポートを作成する。また、事物の名称の表出において、例えば、事物の名称に関する問題を12問ほど出題したときに、1問毎に対象者19がその名称を表出できた(言えた)かどうかを遠隔サポーターが「○」や「×」で評価し、発達レポート作成部32は、遠隔サポーターによる評価の結果に基づいて対応するステップ月齢の事物の名称の表出の段階へ対象者19が到達しているかどうかを判定した上で発達レポートを作成してもよい。
【0071】
また、発達レポート作成部32は、畳み込みニューラルネットワーク等として構成される学習済みモデルへ言語表出における評価を入力し、当該学習済みモデルからステップ月齢を出力させてもよい。学習済みモデルは、所定の学習データを用いた機械学習によって生成され、言語表出における評価が入力されると、ステップ月齢を出力するように構成される。ここで、所定の学習データは、遠隔サポーターによる多数の言語表出における評価を含み、これらの言語表出における評価にはステップ月齢が関連付けられる。
【0072】
さらに、言語理解に関しては、言語クイズにおいて正解を回答したか否かだけでなく、言語クイズの実施中に、対象者19の視線がどの程度、保育ロボット12へ向けられているか、対象者19がどの程度まで保育ロボット12へ近付いてくるか、若しくは、対象者19が言語クイズに興味を示さなかった頻度に基づいて、対象者19のステップ月齢を判定してもよい。
【0073】
図12は、言語クイズの結果から作成される日常保育者向けの発達レポート53の一例を示す図である。発達レポート53(第2の発達レポート)も、発達データ格納部31へ格納された対象者19の振舞データに基づき、発達レポート作成部32によって作成される。しかしながら、発達レポート53は、発達の専門家向けの発達レポート51と異なり、発達の軸(視覚認知、言語表出等)毎に発達の様子が分かるグラフを含む。これらのグラフでは、横軸が月日で示され、各発達項目が達成可能となった月日が分かるように表示される。また、発達レポート53は、次に取り組むべき発達項目やその具体的内容、さらには促育遊び(言語クイズ)を実施しているときの対象者19の様子を示す写真も含む。なお、次に取り組むべき発達項目としては、対象者19の達成度が低い発達項目が選択される。
【0074】
発達レポート53により、日常保育者は言語クイズの発達支援の効果や次に行うべきことを容易且つ具体的に理解することができ、発達支援に対して意欲を持ち続けることができる。なお、発達レポート53は日常保育者に対して定期的に提供されるのが好ましく、例えば、1週間に1回提供されるのが好ましい。
【0075】
上述した発達支援システム10によれば、発達の専門家向けの発達レポート51が、遠隔サポーターによって数日間に亘って実施された言語クイズにおいて収集された振舞データに基づいて作成される。これにより、発達の専門家は、言語理解における対象者19の発達過程の情報を定量的な情報として詳細に得ることができるため、対象者19の発達度合いに最適な発達支援のアドバイスを日常保育者へ行うことができる。また、対象者19の発達度合いが定量化されて、例えば、発達レポート53として提供されるため、日常保育者は発達支援の効果を理解し易い。さらに、発達の専門家向けの発達レポート51により、発達の専門家が対象者19を観察しなくても、言語訓練のメニューを策定することができるため、発達レポート51を発達の専門家へ送付することにより、発達の専門家の訪問を待つことなく、日常保育者は発達の専門家からのアドバイスを得ることができる。
【0076】
さらに、発達支援システム10によれば、促育遊び実行部30が実施される促育遊びを決定し、操作端末13のディスプレイ18に表示される操作画面36の実施クイズ欄44において、実施すべき言語クイズの質問内容と質問に対する正解が示されるため、遠隔サポーターが言語クイズに精通する必要を無くすことができ、これにより、遠隔サポーターの負担を軽減することができる。また、発達の専門知識を持っていない遠隔サポーターでも言語クイズを実施することができ、さらに、操作端末13から遠隔操作可能な保育ロボット12によって対象者19へ言語クイズを実施することにより、結果として、多くの子供へ発達を促す働きかけ(発達の専門家が策定する訓練メニューの簡易版に相当する促育遊び)が遠隔サポーターによって日常的に実施されることになるため、対象者19の障害の程度が曖昧な段階であっても早期に対象者19に発達支援を施す機会を増やすことができる。その結果、日常保育者が日常保育の合間に発達に関する訓練(アドバイスに基づく“宿題”)を実施する必要性を低下させて日常保育者の負担を軽減する(若しくは、多忙のために “宿題”が実施できないという状況を回避する)ことができる。また、発達の専門家不足により、障害の程度の比較的重い子にしか支援が届いていない現状を改善することができ、早期支援の実施により、多くの子供に対する発達進度のキャッチアップを通じた障害の程度の低下を図ることができる。 さらに、促育遊び実行部30は、対象者19の振舞データに基づいて実施される促育遊びを決定するため、対象者19が発育して振舞データの内容が変化したとき、対象者19の発育に応じた促育遊びを提供することができ、この面からも、対象者19の発達支援の効率を向上させることができる。
【0077】
また、発達支援システム10によれば、日常保育者向けの発達レポート53において、言語クイズにおける各段階の達成度が定量的に示されるため、日常保育者に向けた発達の専門家による対象者19の発達状態の説明に具体的な根拠を付与することができ、対象者19の発達支援に対する日常保育者の理解を容易に得ることができ、発達の専門家と日常保育者の円滑な連携体制を構築することができる。
【0078】
さらに、発達支援システム10によれば、遠隔操作で移動可能な保育ロボット12を用いて促育遊びを実施するため、対象者19が言語クイズに飽きたような振舞を示す場合、保育ロボット12を対象者19が興味を示すように動作させることにより、対象者19の注意を再度、言語クイズへ引き戻すことができる。これにより、言語クイズを通じた対象者19の発達支援を効率良く行うことができる。
【0079】
また、発達支援システム10では、対象者19にとってのZPDに相当する促育遊びが優先されて実施されることにより、対象者19の発達を促進することができる。
【0080】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、発達支援システムが操作端末を含まない点で第1の実施の形態と異なる。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0081】
図13は、本発明の第2の実施の形態に係る発達支援システムの構成を概略的に示す図である。図13において、発達支援システム54は、サーバ55と、保育ロボット12と、を備える。通常、サーバ55と保育ロボット12は互いに異なる場所に配置されるが、通信ネットワーク14によって互いに接続される。
【0082】
発達支援システム54でも、第1の実施の形態に係る発達支援システム10と同様に、促育遊びと、対象者19の発達レポートの作成を実施する。サーバ55は、発達支援システム54の全体を管理、制御するコンピュータであり、サーバ11と同様に、ディスプレイ15やプリンタ16に接続される。
【0083】
図14は、サーバ55のソフトウエアの構成を説明するための図である。図14において、サーバ55は、ソフトウエアのモジュールとして、振舞データ収集部29、促育遊び実行部30、発達データ格納部31や発達レポート作成部32だけでなく、ビデオチャット制御部56をさらに有する。
【0084】
ビデオチャット制御部56は、アバターや仮想の人物の画像を作成するとともに、アバター等の音声を作成し、これらを保育ロボット12のビデオチャット制御部26へ送信することにより、保育ロボット12とのビデオチャットを実行する。このとき、保育ロボット12のディスプレイ21にはアバター等の画像が表示され、スピーカー22はアバター等の音声を発音する。
【0085】
促育遊びが実施される際、ビデオチャット制御部56は、ビデオチャットを通じてアバター等による対象者19への問いかけと、対象者19のアバター等への回答とを繰り返し実現させる。特に、促育遊びとして上述した言語クイズが実施される際、ビデオチャット制御部56は対象者19の回答状況を振舞データとして収集し、振舞データ収集部29は、ビデオチャット制御部56が収集した振舞データを発達データ格納部31へ格納する。
【0086】
なお、実施すべき言語クイズの内容が、上述した複数のルールの少なくとも1つに従って促育遊び実行部30によって決定されることや、学習済みモデルを利用して決定されてもよいことは、第1の実施の形態と変わらない。さらに、促育遊び実行部30が振舞データに基づいて対象者19が言語クイズに飽きているか否かを判定し、保育ロボット12へ所定の行動を行わせることや、対象者19の振舞データが或る程度、発達データ格納部31へ格納された場合に発達レポートが作成されることも、第1の実施の形態と変わらない。
【0087】
発達支援システム54によれば、サーバ55がビデオチャット制御部56を有し、ビデオチャット制御部56が保育ロボット12とのビデオチャットを実行することにより、促育遊びが実施されるため、操作端末13が不要となる。これにより、遠隔サポーターや日常保育者が操作端末13を操作して促育遊びを実施する必要を無くすことができ、遠隔サポーターや日常保育者の負担を軽減することができる。
【0088】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、その構成、作用が上述した第2の実施の形態と基本的に同じであり、促育遊びの内容がサーバ11で決定されず、保育ロボットが自律的に促育遊びを決定して実行する点で第2の実施の形態と異なる。したがって、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0089】
本実施の形態に係る発達支援システムは、保育ロボット57と、サーバ58と、を備える。通常、サーバ58と保育ロボット57は互いに異なる場所に配置されるが、通信ネットワーク14によって互いに接続される。
【0090】
本実施の形態に係る発達支援システムでも、第1の実施の形態に係る発達支援システム10と同様に、促育遊びと、対象者19の発達レポートの作成を実施する。保育ロボット57は、対象者19の側に配置され、対象者19と促育遊びを行う。なお、保育ロボット57は、保育ロボット12と同様の構成を有し、ソフトウエアの構成が保育ロボット12と異なる。サーバ58は、本実施の形態に係る発達支援システムの全体を管理、制御するコンピュータであり、サーバ11と同様に、ディスプレイ15やプリンタ16に接続される。
【0091】
図15は、保育ロボット57のソフトウエアの構成を説明するための図である。図15において、保育ロボット57は、ソフトウエアのモジュールとして、移動機構制御部25と、画像制御部27と、ハンド制御部28と、ビデオチャット制御部59(振舞データ収集ユニット)と、促育遊び実行部60(促育遊び決定ユニット)と、を有する。
【0092】
ビデオチャット制御部59は、カメラ20、ディスプレイ21、スピーカー22やマイク23を制御して対象者19と対話を行う。また、ビデオチャット制御部59は、アバターや仮想の人物の画像を作成するとともに、アバター等の音声を作成する。画像制御部27は、ディスプレイ21を制御してアバター等の画像や遊び向け画面37を表示する。
【0093】
保育ロボット57が促育遊びを実施する際、ビデオチャット制御部59は、アバター等と対象者19の対話を実現させる。特に、促育遊びとして上述した言語クイズが実施される際、ビデオチャット制御部59は対象者19の回答状況を振舞データとして収集する。また、ビデオチャット制御部59は収集した振舞データをサーバ58へ送信する。促育遊び実行部60は、ビデオチャット制御部59が収集した対象者19の振舞データに基づいて実施される促育遊びを決定する。このとき、促育遊び実行部60は、促育遊び実行部30と同様に、上述した複数のルールの少なくとも1つに従って実施すべき言語クイズの内容を決定する。なお、促育遊び実行部60は、学習済みモデルを利用して実施すべき言語クイズの内容を決定してもよい。また、促育遊び実行部60は遊び向け画面37の内容を決定する。さらに、促育遊び実行部60は、振舞データに基づいて対象者19が言語クイズに飽きているか否かを判定して保育ロボット57へ上述した所定の行動を行わせる。
【0094】
図16は、サーバ58のソフトウエアの構成を説明するための図である。図16において、サーバ58は、ソフトウエアのモジュールとして、振舞データ収集部29、発達データ格納部31や発達レポート作成部32を有する。なお、本実施の形態では、サーバ58と保育ロボット57の間でビデオチャットは行われない。
【0095】
振舞データ収集部29は、ビデオチャット制御部59が送信する対象者19の振舞データを受信し、発達データ格納部31へ格納する。発達レポート作成部32は対象者19の振舞データが或る程度、発達データ格納部31へ格納された場合に発達レポートを作成する。
【0096】
本実施の形態に係る発達支援システムによれば、保育ロボット57がビデオチャット制御部59と促育遊び実行部60を有し、ビデオチャット制御部59は対象者19の回答状況を振舞データとして収集し、促育遊び実行部60が振舞データに基づいて実施すべき言語クイズの内容を決定する。したがって、保育ロボット57は自律的に促育遊びを決定して実行することができ、操作端末13が不要となる。これにより、遠隔サポーターや日常保育者が操作端末13を操作して促育遊びを実施する必要を無くすことができ、遠隔サポーターや日常保育者の負担を軽減することができる。
【0097】
以上、本発明の好ましい各実施の形態について説明したが、本発明は上述した各実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0098】
例えば、各実施の形態では、保育ロボットが対象者19の側に配置され、対象者19と促育遊びを行うが、ボイスチャット機能や飽き解消機能を有し、促育遊びを行うことが可能なデバイスであれば、保育ロボットの代わりに用いることができる。
【0099】
また、保育ロボット57が、振舞データ収集部29、発達データ格納部31や発達レポート作成部32を備えていてもよく、この場合、操作端末13だけでなくサーバ58も不要となる。
【0100】
さらに、促育遊び実行部30は、対象者19が言語クイズに飽きていると判定すると、遠隔サポーターへ保育ロボット12に行わせる所定の行動をリコメンドしたが、遠隔サポーターへ所定の行動をリコメンドすることなく、促育遊び実行部30が直接、保育ロボット12に所定の行動を行わせてもよい。
【0101】
また、上述した各実施の形態では、促育遊びとして言語クイズが実施されたが、各実施の形態に係る発達支援システムで実行される促育遊びは言語クイズに限られず、例えば、視覚認知、描画又は言語表出に関する促育遊びであってもよい。
【0102】
本発明は、上述した各実施の形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークや記憶媒体を介してシステムや装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータの1つ以上のプロセッサーがプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能である。また、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0103】
10 発達支援システム
11,55,58 サーバ
12,57 保育ロボット
13 操作端末
19 対象者
29 振舞データ収集部
30,60 促育遊び実行部
32 発達レポート作成部
51,53 発達レポート
図1
図2
図3
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図10
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図16