(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056818
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】非代替性トークンを利用したコンテンツ出力システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20230413BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230413BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166254
(22)【出願日】2021-10-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】猪子 寿之
(72)【発明者】
【氏名】金澤 真
(72)【発明者】
【氏名】中野 皓太
(72)【発明者】
【氏名】前川 知紀
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB26
5L049CC11
5L049CC16
(57)【要約】
【課題】NFTを利用しつつもインタラクティブな表現が可能なデジタルコンテンツの管理技術を提供する。
【解決手段】コンテンツ出力システム100は、デジタルコンテンツを出力可能な利用者端末10と、デジタルコンテンツに関連付けられた非代替性トークン(NFT)を保持したブロックチェーン20とを備える。NFT又はこれに関連付けられたスマートコントラクトは、デジタルコンテンツの所有者によって書き換え可能なテキストデータを含む。利用者端末10は、ブロックチェーン20上のテキストデータを参照し、デジタルコンテンツを構成するデータを更新して、このデータが更新されたデジタルコンテンツを出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルコンテンツを出力可能な利用者端末と、前記デジタルコンテンツに関連付けられた非代替性トークン(以下「NFT」という)を保持したブロックチェーンとを備えるコンテンツ出力システムであって、
前記NFT又はこれに関連付けられたスマートコントラクトは、前記デジタルコンテンツの所有者によって書き換え可能なテキストデータを含み、
前記利用者端末は、前記ブロックチェーン上の前記テキストデータを参照し、前記デジタルコンテンツを更新して、前記デジタルコンテンツを出力する
コンテンツ出力システム。
【請求項2】
前記ブロックチェーンは、前記NFTと、これに関連付けられたスマートコントラクトを保持するものであり、
前記NFTは、前記デジタルコンテンツの所有者に関する情報を含み、
前記スマートコントラクトは、前記デジタルコンテンツの所有者によって書き換え可能な前記テキストデータを含む
請求項1に記載のコンテンツ出力システム。
【請求項3】
ネットワークを介して前記デジタルコンテンツを前記利用者端末に配信するコンテンツ管理サーバをさらに備える
請求項1又は請求項2に記載のコンテンツ出力システム。
【請求項4】
前記利用者端末を複数備え、
複数の前記利用者端末には、前記デジタルコンテンツの所有者が保有する第1の利用者端末と、その他の者が保有する第2の利用者端末が含まれ、
前記第1の利用者端末を介して前記ブロックチェーン上の前記テキストデータが書き換えられた場合、前記第2の利用者端末は、前記ブロックチェーン上の前記テキストデータを参照して、前記デジタルコンテンツを更新する
請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンテンツ出力システム。
【請求項5】
前記ブロックチェーンは、前記デジタルコンテンツの著作者のアカウントに関する情報と、前記デジタルコンテンツの所有者のアカウントに関する情報を保持するものであり、
前記第1の利用者端末を介して前記ブロックチェーン上の前記テキストデータが書き換えられた場合に、前記所有者のアカウントから前記著作者のアカウントに所定の代替性トークン(FT)を移動するためのトランザクションデータが発行されて、前記ブロックチェーン上に記録される
請求項4に記載のコンテンツ出力システム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から請求項5のいずれかに記載のコンテンツ出力システムにおける前記利用者端末として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
デジタルコンテンツを出力可能な利用者端末と、前記デジタルコンテンツに関連付けられた非代替性トークン(以下「NFT」という)を保持したブロックチェーンとを備えるシステムによって実行されるコンテンツ出力方法であって、
前記NFT又はこれに関連付けられたスマートコントラクトは、前記デジタルコンテンツの所有者によって書き換え可能なテキストデータを含み、
前記利用者端末が、前記ブロックチェーン上の前記テキストデータを参照することによって、前記デジタルコンテンツを更新し、更新された前記デジタルコンテンツを出力する工程を含む
コンテンツ出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非代替性トークン(以下「NFT」という)を利用したコンテンツ出力システム、コンテンツ出力方法、及びアプリケーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コピーが容易なデジタルコンテンツに対して、ブロックチェーン上で発行されたNFTを利用して代替不能な資産価値を付与する技術が注目を集めている。NFTによればデジタルコンテンツの所有者を証明することができ、またNFTの偽証は現実的には不可能である。このため、NFT付きのデジタルコンテンツは、インターネットのプラットフォーム上で売買することが可能となる。
【0003】
デジタルコンテンツの代表例はデジタルアートである。このようなデジタルアートは、従来、コピーや改竄が容易であることから、現物の絵画のように資産価値を持つものとはみなされていなかったが、デジタルアートの識別情報を含むNFTを偽証が極めて困難なブロックチェーン上で管理することで、唯一無二の存在として扱うことが可能となった。
【0004】
暗号資産のような代替性トークン(FT)は、固有の識別情報を有しない反面、代替性を持つものとなり、その結果他の暗号資産や現金と交換することができるという特徴がある。一方で、NFTは、デジタルコンテンツ固有の識別情報を含むことから、他のコンテンツとの交換ができない反面、非代替性を持ち、その結果デジタルコンテンツに対してそれが本物であるという真正性を付与できるという特徴がある。
【0005】
ブロックチェーン上で発行したNFTを利用してデジタルアートの資産権利を関する技術としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1のシステムでは、予めブロックチェーンネットワーク上で資産に対応する資産スマートコントラクトを発布し、資産スマートコントラクトを実行して資産の所有権を示す均質化した所有権トークン(すなわち代替性トークン:FT)を生成する。その後、この均質化した所有権トークン(FT)に基づいて、これに対応する均質化していない資産の使用権を示す使用権トークン(すなわち非代替性トークン:NFT)を生成する。例えば、資産スマートコントラクトが使用権トークンの取引により獲得した収益金額を受領すると、使用権トークンを移譲すると共に利益分配金額を計算して所有権者に発送する。
【0006】
また、NFTを取り引きするためのプラットフォームとしては、イーサリアムが代表的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、デジタルアートを含むあらゆる著作物は、その創作の完成とともに著作権が発生することになる。この著作権には、第三者に譲渡可能な著作財産権(単に著作権ともいう)と、著作者の一身に専属し第三者に譲渡することのできない著作人格権が含まれる。また、著作人格権の一種には同一性保持権があり、デジタルアート等を最初に創作した著作者は、その意に反して著作物の改変がされないように法律上の保障が与えられる。ここで、一般的には、著作財産権を有する者を「著作権者」といい、著作人格権を有する者を「著作者」という。さらに、著作財産権や著作人格権を留保したまま、著作物の原作品又は複製物を第三者に譲渡することもできる。この著作物の所有権を有する者を「所有者」という。本願明細書で用いる用語においても、これらの定義に従う。
【0009】
ここで、前述したとおり、現在のNFT技術では、デジタルアートに付与されたNFTをブロックチェーン上で管理することで、第三者による偽造や改竄を受けずにそのデジタルアートの所有権の帰属を管理することができる。このため、デジタルアートの真正性とともに、その現行の所有者又はそのアカウントを一意に特定することが可能となる。
【0010】
一方で、デジタルアートには、ディスプレイやプロジェクタ、あるいはスピーカを通じて出力される映像や音楽を、観客との相互作用によって変化させることができるものもある。このようなインタラクティブ性(双方向的な性質)を持つことがデジタルアートの特徴の一つである。これまでに、本願出願人(チームラボ株式会社)は、このようなインタラクティブ性を持つデジタルアートを多数発表してきた。
【0011】
このように、デジタルアートには、同一性保持権を有する著作者が意図する範囲内で、変化することが許容されているものも多く存在する。しかし、現在のNFT技術では、著作者以外の者がデジタルアートに介入する余地が厳しく制限されており、所有権の帰属やアートの同一性を担保することの方がより重要視されているといえる。このため、従来のNFTプラットフォームを利用してデジタルアートを管理した場合、このデジタルアートの芸術表現が制約を受けることとなり、表現の幅が狭められてしまうという懸念がある。特に本願出願人は、デジタルアートは固定された表現物ではなく、時代やその所有者の心情の変化に伴って移り変わるものであり、その移り変わりもデジタルアートを構成する芸術表現の一部であると捉えている。
【0012】
そこで、本発明は、NFTを利用しつつもインタラクティブな表現が可能なデジタルコンテンツの管理技術を提供することを、主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者らは、上記課題を解決する手段について鋭意検討した結果、NFT又はこれに関連付けられたスマートコントラクト(SC)の中に書き換え可能なテキストデータを加え、このテキストデータはNFTの所有者が自由に書き換えできるようにするとともに、このテキストデータをデジタルコンテンツの一部として利用することで、所有者がある程度自由にデジタルコンテンツを改変できるようにするという仕組みを発案した。そして、本発明者は、この仕組みによれば従来技術の課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成又は工程を有する。
【0014】
本発明の第1の側面は、コンテンツ出力システムに関する。本発明に係るシステムは、利用者端末とブロックチェーンを含む。利用者端末は、デジタルコンテンツを出力可能な端末装置である。デジタルコンテンツとは、デジタルデータで表現可能な著作物を意味する。デジタルコンテンツの例は、静止画、動画、音楽、文章、ゲーム、キャラクタ(いわゆるボーカロイド含む)であるが、これらに制限されない。ブロックチェーンは、デジタルコンテンツに関連付けられたNFT(非代替性トークン)を保持する。また、ブロックチェーンはスマートコントラクトを保持していてもよい。ブロックチェーン(分散型台帳とも呼ばれる)は、ネットワーク上の多数のノード間で同一の記録を同期させる仕組みであり、既存の記録に新しい記録を追加する際に、記録単位となるブロックが直前のブロックの内容(ハッシュ)を引き継ぎながらチェーン状に次々と追加されることとなる。NFTは、所有者の識別情報を含むデジタルデータであり、ブロックチェーン上で保持されることで偽造が不可能な所有証明が付与される。スマートコントラクト(SC)は、所定のルールに従って、ブロックチェーン上のトランザクション(取引)又はブロックチェーン外から取り込まれた情報をトリガーにして自動的に実行されるプログラムである。本発明に係るシステムにおいて、NFT又はこれに関連付けられたSCは、デジタルコンテンツの所有者によって書き換え可能なテキストデータをさらに含む。そして、利用者端末は、ブロックチェーン上のテキストデータを参照し、デジタルコンテンツを構成するデータを更新して、デジタルコンテンツを出力する。例えば、利用者端末は、ブロックチェーン上のテキストデータを参照して、デジタルコンテンツのテキストデータを更新する。これにより、ブロックチェーン上のテキストデータに応じて、例えば静止画内の文字や、動画内の文字、音楽の歌詞、文章、ゲーム内のセリフ若しくはシナリオ、キャラクタが発するセリフなどが変化する。
【0015】
NFTには一般的に所有者に関する情報が明記されているが、本発明では、これに加えてその所有者が変更可能なテキストデータをNFT又はSCに加えることとしている。そして、このNFT又はSC内のテキストデータの変更に伴って、NFTに関連付けられたデジタルコンテンツも変化させることとした。これにより、デジタルコンテンツの所有者であれば、ある程度自由にデジタルコンテンツを改変することができるようになる。つまり、著作権者から所有者に対してデジタルコンテンツを一部改変するための権原を付与することができる。これにより、NFTを利用してデジタルコンテンツの表現の幅を拡張することが可能となる。
【0016】
本発明に係るシステムにおいて、ブロックチェーンは、NFTとこれに関連付けられたSCを保持するものであることが好ましい。この場合、NFTは、デジタルコンテンツの所有者に関する情報を含む。また、SCは、デジタルコンテンツの所有者によって書き換え可能なテキストデータを含む。このように、テキストデータの保持機能をSCに持たせることで、NFTの売買等のマーケットとデジタルコンテンツの機能を分離して別々に管理することが可能となる。
【0017】
本発明に係るシステムは、ネットワークを介してデジタルコンテンツを利用者端末に配信するコンテンツ管理サーバをさらに備えることが好ましい。このようにコンテンツ管理サーバが利用者端末に対してデジタルコンテンツを配信することで、複数の閲覧者が同時にデジタルコンテンツを閲覧できるようになる。
【0018】
本発明に係るシステムにおいて、利用者端末は複数存在することが好ましい。この場合に、複数の利用者端末には、デジタルコンテンツの所有者が保有する第1の利用者端末(所有者端末)と、その他の者が保有する第2の利用者端末(閲覧者端末)が含まれる。ここで、デジタルコンテンツの所有者は、第1の利用者端末を介して、ブロックチェーン上のテキストデータを書き換えることができる。このようにしてブロックチェーン上のテキストデータが書き換えられた場合、第2の利用者端末は、そのテキストデータを参照して、デジタルコンテンツを構成するデータを更新する。これにより、第2の利用者端末から出力されるデジタルコンテンツは、第1の利用者端末によるブロックチェーン上のテキストデータの書き換えに応じて、随時更新されることとなる。
【0019】
本発明に係るシステムにおいて、ブロックチェーンは、デジタルコンテンツの著作者のアカウントに関する情報と、デジタルコンテンツの所有者のアカウントに関する情報をさらに保持するものであることが好ましい。そして、第1の利用者端末を介してブロックチェーン上のテキストデータが書き換えられた場合に、所有者のアカウントから著作者のアカウントに所定の代替性トークン(FT)を移動するためのトランザクションデータが発行されて、ブロックチェーン上に記録されることが好ましい。このように、デジタルコンテンツの著作者は、ブロックチェーン上のNFTのテキストデータが所有者によって書き換えられた際に、その所有者からFT(例えばETH)を対価として受け取ることができる。このため、デジタルコンテンツの所有権が著作者から離れた後も、著作者はそのデジタルコンテンツを通じて対価を得ることが可能となる。なお、通常のNFT取引と同様に、デジタルコンテンツの所有権が移転する際に、所定の対価が著作者に支払われるようにすることも可能である。
【0020】
本発明の第2の側面は、コンピュータプログラムに関する。本発明に係るプログラムは、コンピュータを、前述した第1の側面に係るコンテンツ出力システムにおける利用者端末として機能させる。本発明に係るプログラムは、インターネットを介してコンピュータ(利用者端末)にダウンロード可能なものであってもよいし、CD-ROMやUSBメモリ等の記録媒体に記録されたものであってもよい。
【0021】
本発明の第3の側面は、コンテンツ出力方法に関する。本発明に係るコンテンツ出力方法は、基本的には、前述した第1の側面に係るコンテンツ出力システムによって実行される。すなわち、コンテンツ出力システムは、前述したとおり、デジタルコンテンツを出力可能な利用者端末と、デジタルコンテンツに関連付けられたNFTを保持したブロックチェーンとを備える。また、NFT又はこれに関連付けられたSCは、デジタルコンテンツの所有者によって書き換え可能なテキストデータを含む。この場合に、本発明に係るコンテンツ出力方法は、利用者端末が、ブロックチェーン上のテキストデータを参照することによって、デジタルコンテンツを構成するデータを更新し、このデータが更新されたデジタルコンテンツを出力する工程を含む。また、本発明に係るコンテンツ出力方法は、利用者端末(所有者端末)がブロックチェーン上のテキストデータを書き換える工程を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、NFTを利用したデジタルコンテンツの管理技術において、インタラクティブなアート表現を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシステムの全体構成を模式的に示している。
【
図2】
図2は、NFTのテキストデータを書き換えるためのトランザクションの一例を示している。
【
図3】
図3は、本発明のシステムに含まれる各装置の機能構成を示したブロック図である。
【
図4】
図4は、ブロックチェーンを構成するブロックに含まれるデータの一例を示している。
【
図5】
図5は、利用者端末(閲覧者端末)によりデジタルコンテンツを出力する方法の一例を示したフロー図である。
【
図6】
図6は、NFT内のテキストデータを書き換える方法の一例を示したフロー図である。
【
図7】
図7は、NFTを売却するためのトランザクションの一例を示している。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態の変形例に係るシステムの全体構成を模式的に示している。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るシステムの全体構成を模式的に示している。
【
図10】
図10は、スマートコントラクトのテキストデータを書き換えるためのトランザクションの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシステム100の全体構成を示している。第1の実施形態では、コンテンツデータに影響を与えるテキストデータがNFTに記録されている。
図1に示されるように、本実施形態のシステム100は、複数の利用者端末10と、ブロックチェーン20と、コンテンツ管理サーバ30と、アカウント管理サーバ40を含む。これらの装置10,20,30,40は、インターネット等のネットワークを通じて接続されている。複数の利用者端末10は、それを使用する利用者の性質に応じて、著作者端末10(a)と、所有者端末10(b)と、閲覧者端末10(c)に分けられる。著作者端末10(a)は、デジタルコンテンツを創作した著作者によって使用される端末である。所有者端末10(b)は、デジタルコンテンツの所有権を現に有する所有者によって使用される端末である。閲覧者端末10(c)は、デジタルコンテンツの閲覧を希望する閲覧者によって使用される端末である。なお、著作者端末10(a)及び所有者端末10(b)においても、デジタルコンテンツの閲覧は可能である。本願明細書では、著作者端末10(a)、所有者端末10(b)、及び閲覧者端末10(c)をまとめて利用者端末10とも称する。また、同様の理由で、著作者、所有者、及び閲覧者をまとめて利用者とも称する。
【0026】
図1を参照して、まずシステム100の概要について説明する。著作者は、デジタルコンテンツを創作すると、著作者端末10(a)を介して、そのデジタルコンテンツをコンテンツ管理サーバ30に投稿(アップロード)する。また、著作者は、著作者端末10(a)を介して、そのデジタルコンテンツを関連付けられたNFT(非代替性トークン)を発行するようにアカウント管理サーバ40に要求する。管理サーバ40は、著作者から要求を受けたデジタルコンテンツに対応するNFTについて、アカウント番号(公開鍵)と秘密鍵を含むウォレットを作成する。また、管理サーバ40は、ブロックチェーン20に対して、デジタルコンテンツに関するNFTの発行を要求する。このNFTには、詳しくは後述するとおり、デジタルコンテンツのアカウント番号、作品名、及び所有者に関する情報に加えて、デジタルコンテンツに影響を与えるテキストデータが含まれる。このテキストデータは、最初は、著作者によって設定されるか空欄とされる。
【0027】
閲覧者は、閲覧者端末10(c)を使用して、コンテンツ管理サーバ30に記録されているデジタルコンテンツを閲覧できる。その際に、閲覧者端末10(c)は、ブロックチェーン20にアクセスし、閲覧対象のデジタルコンテンツに付与されたNFTからテキストデータを読み込む。閲覧対象端末10(c)は、このテキストデータに基づいてデジタルコンテンツを構成するデータを更新し、そのデータを更新したデジタルコンテンツを出力する。例えば、デジタルコンテンツが静止画又は動画内に文字を含むものである場合、この文字部分に、ブロックチェーン上のNFTに記録されているテキストデータが反映される。
【0028】
また、デジタルコンテンツの所有権を最初に有する者は著作者となることが一般的であるが、このデジタルコンテンツは、NFTを書き換えることで所有権を別の者に譲渡できる。
図1の例では、すでにデジタルコンテンツが売却されて、その所有権が著作者から別者に移転した後の状態を示している。デジタルコンテンツの所有権を現に有する所有者は、そのデジタルコンテンツに付与されているNFTのテキストデータを自由に書き換えることができる。具体的には、所有者は、所有者端末10(b)を使用して、アカウント管理サーバ40にテキストデータの書換要求を行う。書換要求には、新たなテキストデータが含まれる。アカウント管理サーバ40は、書換要求を受信すると、所有者名義にてブロックチェーン20に対してNFTの書換トランザクションを発行する。書換トランザクションは、一般的な公開鍵暗号方式によって署名され、ブロックチェーン20側において、所有者名義によって正当に発行されたものであることが検証される。
【0029】
このようにして、ブロックチェーン20によって保持されているNFTのテキストデータが書き換わると、閲覧者端末10(c)により出力されるデジタルコンテンツの内容も変更されることとなる。例えば、デジタルコンテンツが静止画又は動画内に文字を含むものである場合、この文字部分はブロックチェーン上のNFTに新たに記録されたテキストデータに置き換わる。このように、本システムによれば、著作者によって作成されたデジタルコンテンツは、所有者が任意に設定したテキストデータに応じて変容することとなる。このようにデジタルコンテンツの所有者によってその内容が変容することも、著作者によるアート表現の一部となる。これにより、NFTを利用した斬新なアート表現を実現できる。
【0030】
図2は、NFTの書換トランザクションの一例を示している。ビットコイン等のブロックチェーンでは、トランザクションデータが各ブロックに蓄積されることになる。一方、イーサリアム等のスマートコントラクト機能を持つブロックチェーンでは、トランザクションデータの蓄積に加えて、すべてのNFTアカウントの最新のステートデータも各ブロックに記録されることとなる。本発明では、このようなスマートコントラクト機能を持つブロックチェーンを利用する。
【0031】
図2に示されるように、デジタルコンテンツに付与されたNFTは、例えば、固有のアカウント番号(公開鍵)、作品名、所有者のアカウント番号、残高、及びテキストに関する情報を含む。
図2の例では、書換前のNFTに「MATTER IS VOID」とのテキストデータが記録されている。このため、閲覧者端末10(c)に表示されるデジタルコンテンツにも、同じ文字が含まれることとなる。
【0032】
図2に示した例において、デジタルコンテンツのNFTのアカウント番号はAAAであり、このデジタルコンテンツの所有者のアカウント番号はBBBである。この所有者(BBB)は、NFTのテキストデータを書き換える権原を持つ。すなわち、所有者は、NFTのテキストデータを書き換えるためのトランザクションを発行できる。具体的には、図示した例では、所有者のアカウントBBBからデジタルコンテンツのNFTのアカウントAAAに対して、書換トランザクションが発行される。この書換トランザクションは、手数料10ETHを支払うと共に、NFTのテキストデータ(関数“Text”)を、新しいテキストデータ「LEAVE CHAOS AS IS BUT CAUSE IT TO EVOLVE」(引数)に変更することが表されている。その後、ブロックチェーン20にてこの書換トランザクションの検証が行われ、真正なものであるとの認証が得られると、NFTのテキストデータは、書換トランザクションに記載された新しいものに置き換えられる。このように、書き換えられたNFTの最新のステートデータは、ブロックチェーン20上に保持されることとなる。これにより、閲覧者端末10(c)に表示されるデジタルコンテンツも、書き換え後の新しい文字に変更される。
【0033】
また、NFTに設定されたプログラム(付加機能)により、書換トランザクションで所有者アカウントからNFTアカウントに振り込まれた代替性トークン(FT)(例えば10ETH)は、全部又は一部が、デジタルコンテンツの著作者のアカウントに自動的に振り込まれることとしてもよい。これにより、著作者は、NFTのテキストデータが書き換えられる度に報酬を得ることができる。なお、FTの全部又は一部は、本システムの運営者のアカウントに振り込まれることとしてもよい。
【0034】
図3は、本発明に係るシステム100を構成する各装置の機能ブロックを示している。なお、
図3では、便宜的に、著作者用の利用者端末10(a)と、所有者又は閲覧者の利用者端末10(b),10(c)とを分けて描画している。ただし、これらの利用者端末10(a)~(b)は、いずれも一般的なPC等により実現できるものであり、機能的な構成としては実質的に同じものを採用できる。このため、ここでは、著作者、所有者、及び閲覧者が使用する利用者端末10をまとめて説明する。
【0035】
利用者端末10は、前述したように一般的なPCにより実現可能であり、その他にスマートフォンやタブレット型端末であってもよい。利用者端末10は、制御部11、通信部12、記憶部13、入力部14、出力部15を有する。
図3には、利用者端末10の一般的な構成を示しているが、利用者端末10には、その他に一般的なスマートフォンが有する構成(例えばカメラや各種センサ機器)を搭載することも可能である。
【0036】
利用者端末10の制御部11は、利用者端末10を構成する要素12~15を制御する。制御部11は、CPUやGPUなどのプロセッサにより構成される。制御部11は、記憶部13に記憶されたプログラムに従って各要素12~15の制御処理を行う。例えば、制御部11は、通信部12を介して受信したデジタルコンテンツを一時的に記憶部13に記憶するとともに、出力部15を介して画像や音を出力する。また、制御部11は、通信部12を介してブロックチェーン20と通信し、NFTの最新のステートデータや、デジタルコンテンツの改変に利用するテキストデータを閲覧又は取得する。また、制御部11は、入力部14を介して入力された所定の情報を、通信部12を介してアカウント管理サーバ40などに送信する。また、利用者端末10が著作者により使用されるものである場合、制御部11は、著作者が創作したデジタルコンテンツを、通信部12を介してコンテンツ管理サーバ30にアップロードする。このような利用者端末10の全体的な制御を、制御部11にて行う。
【0037】
利用者端末10の通信部12は、ブロックチェーン20、コンテンツ管理サーバ30、及びコンテンツ管理サーバ40と無線又は有線にて通信するための要素である。例えば、通信部12は、インターネットを介した通信のために、例えば3G(W-CDMA)、4G(LTE/LTE-Advanced)、5Gといった公知の移動通信規格や、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN方式で無線通信するための通信モジュールを含む。また、通信部12は、公知の近距離無線通信規格に則った通信モジュールを含んでいてもよい。近距離無線通信規格の例は、Bluetooth(登録商標)である。その他、利用者端末10は、有線にて光回線や電話回線を通じてインターネットに接続可能なものであってもよい。
【0038】
利用者端末10の記憶部13は、制御部11での演算処理等に用いられる情報やその演算結果を記憶するための要素である。具体的に説明すると、記憶部13は、利用者端末10に、本発明特有の機能を発揮させるアプリケーションプログラム13aを記憶している。特に、利用者端末10を、所有者用の所有者端末10(b)及び閲覧者用の閲覧者端末(c)として機能させるには、このアプリケーションプログラム13aが必要となる。利用者端末10は、利用者からの指示によりこのプログラムが起動されると、制御部11によってプログラムに従った処理を実行する。記憶部13のストレージ機能は、例えばHDD及びSSDといった不揮発性メモリによって実現できる。また、記憶部13は、制御部11による演算処理の途中経過などを書き込む又は読み出すためのメモリとしての機能を有していてもよい。記憶部13のメモリ機能は、RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。また、記憶部13には、それを所持する利用者固有のID情報(ユーザID)が記憶されていてもよい。また、記憶部13には、利用者端末10のネットワーク上の識別情報であるIPアドレスが記憶されていてもよい。
【0039】
利用者端末10の入力部14は、利用者端末10(特に制御部11)に対して所定の情報を入力するための要素である。入力部14には、主に利用者による操作情報を入力するための入力機器が含まれる。入力機器としては、タッチパネル、マウス、キーボード、トラックパッド、スタイラスペン、ペンタブレッドなどの公知のものを利用できる。また、入力部14には、マイクや、カメラ(CMOSセンサ等)、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPSセンサなどの各種センサが含まれていてもよい。
【0040】
利用者端末10の出力部、利用者端末10から所定の情報を出力するための要素である。出力部10の例は、ディスプレイ、プロジェクタといった表示装置と、スピーカ、ヘッドホン、イヤホンといった音出力装置である。ディスプレイとしては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった公知のものを用いることができる。また、ディスプレイの前面にタッチパネルを配置することで、タッチパネルディスプレイが構成されていてもよい。
【0041】
ブロックチェーン20としては、公知のパブリック型のブロックチェーンを利用すればよい。特に、本発明では、イーサリアム等のスマートコントラクト機能を持つブロックチェーンを好適に利用することができる。ブロックチェーン20では、ネットワーク上の多数のノード間で同一の記録が同期される。
図1に示した実施形態では、アカウント管理サーバ40が、ブロックチェーン20に含まれる一つのノードとして機能することを想定している。ブロックチェーン20では、既存の記録に新しい記録を追加する際に、記録単位となるブロックが直前のブロックの内容をハッシュ化したデータを引き継ぎながらチェーン状に次々と追加されることとなる。このようなブロックチェーン20の仕組みは公知である。
【0042】
また、ブロックチェーン20では、デジタルコンテンツに関連付けられたNFT21が保持される。このNFT21は、デジタルコンテンツごとに発行されたものであり、そのデジタルコンテンツの所有者の名義が記録されている。このNFT21を、記録の改竄が実質的に不可能なブロックチェーン20で保持することで、NFT21の所有者の名義が真正なものであると証明できる。このNFT21には、前述したように、デジタルコンテンツに影響を与えるテキストデータが含まれることとなる。
【0043】
図4には、本発明において、ブロックチェーン20を構成するブロック内に含まれるデータの概要を示している。あるブロック内には、主に、直前のブロックのハッシュ値、トランザクションデータ、ステートデータ、及びナンス値が含まれる。トランザクションデータは、このブロックの期間中に行われた取引の全ての記録を示している。ステートデータは、ブロックチェーン内で管理されている全アカウントの最新の状態を示している。ナンス値は、次のブロックを追加する際に、このブロックから所定条件を満たすハッシュ値を生成するための値である。ナンス値が決定するとこのブロックはハッシュ化されて、そのハッシュ値が直後のブロックに引き継がれる。なお、最新のブロックでは、まだナンス値は決まっておらず、トランザクションデータが所定のデータ容量となるまで蓄積されていき、さらにステートデータも常に最新の状態に更新されている。本発明のように、スマートコントラクト機能を持つブロックチェーンでは、ブロック内にトランザクションデータだけでなく、ステートデータが含まれる。ステートデータには、一般的には、全アカウントの残高や、全NFTアカウントのプログラムコードが含まれる。本発明のシステムでは、さらに、このステートデータに、全NFTのテキストデータが含まれることが特徴である。このNFTのテキストデータは、前述したように、デジタルコンテンツに影響を与えるものである。すなわち、利用者端末10は、デジタルコンテンツを出力する際に、そのデジタルコンテンツに付与されたNFTの最新のテキストデータを参照する。そして、利用者端末10は、最新のテキストデータに基づいてデジタルコンテンツを構成するデータを更新し、そのデータが更新されたデジタルコンテンツを出力することとなる。
【0044】
コンテンツ管理サーバ30は、著作者が作成したデジタルコンテンツを管理するためのクラウド上のサーバ装置である。コンテンツ管理サーバ30は、制御部31、通信部32、及びコンテンツデータベース33を含む。制御部31は、CPUなどからなるプロセッサであり、コンテンツ管理サーバ30全体を制御する。通信部32は、公知の規格により有線又は無線にてインターネットに接続可能な通信装置とインターフェースを含む。コンテンツデータベース33は、著作者により作成されたデジタルコンテンツを関連情報とともに記憶するためのデータベースである。例えば、コンテンツデータベース33では、デジタルコンテンツを、そのコンテンツのID情報や、著作者のID情報、著作者名、作品名などのメタデータと関連付けて記憶している。また、デジタルコンテンツとNFTとを関連付けるために、コンテンツデータベース33では、デジタルコンテンツのID情報と、NFTのアカウント番号(公開鍵)とを関連付けて記憶しておくことが好ましい。その他、コンテンツデータベース33には、デジタルコンテンツやNFTの管理のために必要な情報を適宜記憶しておくことができる。
【0045】
アカウント管理サーバ40は、ブロックチェーン20での取り引きに利用されるアカウントを発行及び管理するためのクラウド上でのサーバ装置である。アカウント管理サーバ40は、ブロックチェーン20を構成するノードの一つとしても機能する。なお、本実施形態において、著作者と所有者は、ブロックチェーン20上にアカウントを有していることが必要となるが、閲覧者は、アカウントを有していなくてもデジタルコンテンツの閲覧が可能である。また、本実施形態において、アカウント管理サーバ40は、著作者用、所有者用、NFT用のアカウントの発行や管理を代行するものである。なお、著作者端末10(a)や所有者端末10(b)にてアカウントの発行及び管理を行う場合には、アカウント管理サーバ40を利用することは不要である。
【0046】
アカウント管理サーバ40は、制御部41、通信部42、アカウントデータベース43、及びストレージ44を含む。制御部41は、CPUなどからなるプロセッサであり、アカウント管理サーバ40全体を制御する。通信部42は、公知の規格により有線又は無線にてインターネットに接続可能な通信装置とインターフェースを含む。アカウントデータベース43は、ブロックチェーン20上での取り引きに利用されるアカウントに関する情報を記憶している。アカウントは、例えば、NFTのアカウント、著作者のアカウント、所有者のアカウントなどがある。NFTの所有権を持つには、基本的にこのアカウントが必要となる。ストレージ44は、アカウント管理サーバ40をブロックチェーン20のノードとして機能させるために、ブロックチェーン20で管理されるデータの記憶領域を提供するための記憶装置である。ストレージ44は、HDD及びSSDにより実現できる。
【0047】
図3に示されるように、アカウントデータベースでは、各利用者やNFTのアカウント情報43bと秘密鍵43cとを関連付けて記憶している。このアカウント情報43bと秘密鍵43cを含むデータを、本願明細書ではウォレット43aと称する。各利用者のウォレット43aは、流出や盗用があると、各利用者のNFの残高が自由に移動されてしまうことになる。このため、アカウント管理サーバ40は、このウォレット43a(特に秘密鍵43c)を機密性の高い情報として厳重に管理する。少なくとも、このウォレットには、固有のログインIDとパスワードが設定されており、それを知る者のみがアクセスできるようになっている。また、アカウント情報43bには、アカウント番号と残高等の情報が含まれる。このアカウント番号は、公開鍵暗号方式における公開鍵としても利用される。また、ウォレット43aには、秘密鍵43cが含まれている。この秘密鍵43cは、一般的には公開鍵(アカウント番号)から作成されたものであり、この公開鍵とペアをなす。つまり、秘密鍵は、トランザクションデータを発行した者が、そのトランザクションデータを暗号化(デジタル署名)するのに用いられる。公開鍵は、ブロックチェーン20全体に公開されており、秘密鍵によって暗号化(デジタル署名)されたデータの復号(デジタル署名の真正性の検証)の際に用いられる。
【0048】
続いて、
図5を参照して、利用者端末10により、デジタルコンテンツを出力する方法について説明する。なお、デジタルコンテンツの閲覧は、著作者端末10(a)、所有者端末10(b)、及び閲覧者端末10(c)のどの端末からも可能である。このため、ここでは、これらの端末を区別せずに、利用者端末10における処理を説明する。
【0049】
図5に示されるように、利用者端末10の制御部11は、デジタルコンテンツの配信要求を生成し、これを通信部12を介してコンテンツ管理サーバ30に送信する(ステップS1)。デジタルコンテンツの配信要求には、デジタルコンテンツを指定するためのID情報などが含まれる。また、コンテンツ管理サーバ30は、コンテンツ閲覧用のウェブサイト等を利用者端末10に提供し、このウェブサイトを通じて利用者に閲覧を希望するデジタルコンテンツを指定させることとしてもよい。
【0050】
コンテンツ管理サーバ30の制御部31は、通信部32を介して利用者端末10からデジタルコンテンツの配信要求を受け取ると、その要求にて指定されたデジタルコンテンツとそのメタデータをコンテンツデータベース33から読み出す。デジタルコンテンツのメタデータには、例えばそのデジタルコンテンツに付与された固有のNFTのアカウント番号などが含まれる。そして、制御部31は、読み出したデジタルコンテンツとメタデータを、通信部32を介して配信要求を行った利用者端末10へと配信する(ステップS2)。
【0051】
また、利用者端末10の制御部11は、コンテンツ管理サーバ30からデジタルコンテンツとメタデータを受けとると、これらのデータを記憶部13に一時的に記憶する。その後、利用者端末10の制御部11は、通信部32を介して、ブロックチェーン20に対し、そのデジタルコンテンツに付与されたNFTの最新のステートデータの参照を要求する(ステップS3)。例えば、利用者端末10は、ブロックチェーン20に対して、デジタルコンテンツのNFTのアカウント番号を指定する。ブロックチェーン20は、利用者端末10によって指定されたアカウント番号のNFTについて、最新のステートデータを開示する(ステップS4)。ブロックチェーン20上で保持されているNFTのステートデータには、前述したとおり、デジタルコンテンツの所有者が任意に設定したテキストデータが記録されている。利用者端末10は、特にこのテキストデータをブロックチェーン20から取得する。
【0052】
このようにして、利用者端末10は、デジタルコンテンツと、そのNFTに記録されているテキストデータを取得する。そして、利用者端末10の制御部11は、NFTのテキストデータに基づいて、デジタルコンテンツを構成するデータを更新する(ステップS5)。なお、データを更新したデジタルコンテンツは、記憶部13に一時的に記憶されてもよい。また、利用者端末10の制御部11は、データを更新したデジタルコンテンツを出力部15から出力する(ステップS6)。例えば、デジタルコンテンツが静止画又は動画であって、その画像の中に文字情報が含まれる場合、利用者端末10の制御部11は、その静止画等の文字情報を、NFTから取得したテキストデータに置き換える。そして、利用者端末10の出力部15(ディスプレイ)は、文字情報がNFTのテキストデータに置き換えられた静止画を表示することとなる。また、例えば、デジタルコンテンツが所定のセリフを発話するキャラクタのデータ(例えばボーカロイド)である場合、利用者端末10は、そのキャラクタに、NFTから取得したテキストデータに応じたセリフを発話させる。その他、例えばデジタルコンテンツがRPGゲームである場合、ゲーム内のキャラクタが、NFTから取得したテキストデータを発話することとしてもよい。このように、本発明において、デジタルコンテンツはNFTから取得したテキストデータにおいて改変されるものとなる。デジタルコンテンツとその改変の方法は、ここに説明したものに限定されず、著作者が、様々なコンテンツや改変の方法を考案して実際に作り出すことができる。このため、本発明によれば、非常に自由度の高いアート表現が可能となる。
【0053】
続いて、
図6を参照して、デジタルコンテンツの所有者が、そのデジタルコンテンツのNFTのテキストデータを書き換える方法について説明する。まず、所有者は、所有者端末10(b)を使用して、アカウント管理サーバ40が管理しているウォレットにアクセスするためのログイン要求を行う(ステップS7)。このログイン処理は公知の方法で行えばよい。具体的には、所有者は、所有者端末10(b)にログインIDとパスワードを入力する。所有者端末10(b)は、このログインIDとパスワードをアカウント管理サーバ40に送信する。アカウント管理サーバ40では、所有者のログインIDとパスワードが、ウォレットへのアクセスをするためのものとして登録されている情報と一致するかどうかを判断する認証処理を行う(ステップS8)。認証に成功した場合、アカウント管理サーバ40は、所有者端末10(b)にウォレットへのアクセスを許可する。
【0054】
ログインが完了すると、所有者は、デジタルコンテンツに付与されたNFTのテキストデータを書き換えるための要求を、所有者端末10(b)に入力する。この書換要求には、書換を行うNFTのアカウント番号と、新しいテキストデータが含まれる。すなわち、所有者は、所有者端末10(b)の入力部14を介して、書換を希望するNFTのアカウント番号と、そのNFTに新しく記録するテキストを入力する。所有者端末10(b)の制御部11は、NFTのアカウント番号と新しいテキストデータを含む書換要求を、通信部12を介してアカウント管理サーバ40に送信する(ステップS9)。
【0055】
アカウント管理サーバ40の制御部41は、通信部42を介して、所有者端末10(b)から書換要求を受け取る。そして、アカウント管理サーバ40の制御部41は、書換要求により指定されたNFTについて、テキストデータを書き換えるための書換トランザクションデータを発行する(ステップS10)。この書換トランザクションデータの例は、前述したように、
図2に示されている。例えば
図2を参照して説明すると、アカウント管理サーバ40は、所有者のアカウント(アカウント番号:AAA)から、その所有者が所有するNFTのアカウント(アカウント番号:BBB)に対して、テキストデータ(関数“Text”)を、新しいテキストデータ(引数“LEAVE CHAOS AS IS BUT CAUSE IT TO EVOLVE”)に書き換えるためのトランザクションデータを発行する。また、そのトランザクションデータには、書き換えのための手数料(10ETH)が組み込まれていてもよい。
【0056】
ここで、アカウント管理サーバ40の制御部41は、書換トランザクションデータを、所有者のウォレット内に含まれる秘密鍵にて暗号化(デジタル署名)する。より具体的には、アカウント管理サーバ40は、まず、書換トランザクションデータのハッシュ値(第1のダイジェスト)を生成し、そのハッシュ値を秘密鍵により暗号化する。ここでは、便宜的に、書換トランザクションデータのハッシュ値を秘密鍵によって暗号化したデータを、デジタル署名データという。そして、アカウント管理サーバ40は、書換トランザクションデータとデジタル署名データをセットにして、ブロックチェーン20へと送信する。
【0057】
ブロックチェーン20は、アカウント管理サーバ40から、書換トランザクションデータとデジタル署名データのセットを受信すると、そのデジタル署名データの真正性を検証する処理を行う(ステップS11)。この検証処理は、ブロックチェーン20を構成する一又は複数のノードによって実行されればよい。具体的には、ブロックチェーン20は、まず、書換トランザクションデータのハッシュ値(第1のダイジェスト)を生成する。また、ブロックチェーン20は、所有者の公開鍵(アカウント番号)によって、デジタル署名データを復号した値(第2のダイジェスト)を得る。そして、ブロックチェーン20は、この書換トランザクションデータのハッシュ値(第1のダイジェスト)と、所有者の公開鍵によってデジタル署名データを復号した値(第2のダイジェスト)とが、等しくなるかどうかを検証する。検証の結果、第1及び第2のダイジェストが等しいことがわかれば、この書換トランザクションデータは、確かに所有者によって発行された真正なものであると判断できる。
【0058】
その後、上記検証処理により書換トランザクションデータの真正性が確認できた場合、ブロックチェーン20は、書換トランザクションデータを最新のブロックに記録する(ステップS12)。なお、このブロック内のトランザクションデータは、ブロックチェーン20を構成する全てのノードに同期して保存されることとなる。
【0059】
また、ブロックチェーン20は、書換トランザクションにより変更されたNFTのステートデータを更新する(ステップS13)。具体的には、今回のトランザクションでは、NFTのテキストデータが書き換えられた。このため、NFTの最新のステートデータには、書き換え後のテキストデータが記録されていることとなる。なお、書き換えの前後におけるステートデータの例は、
図2に示されている。利用者端末10がデジタルコンテンツを出力する際には、常に、そのデジタルコンテンツに付与されたNFTの最新のテキストデータを参照することとなる。
【0060】
また、NFTのステートデータを更新する際に、そのNFTに設定されたプログラムを実行することも可能である。例えば、テキストデータの書換トランザクションにより、所有者のアカウントからNFTのアカウントにNF(代替性トークン)が振り込まれた場合、そのNFの一部又は全部がデジタルコンテンツの著作者のアカウントに自動的に転送される。
図2に示した例では、所有者のアカウント(BBB)からNFTのアカウント(AAA)に10ETHが振り込まれているが、その一部又は全部がNFTのアカウントから著作者のアカウントに転送される。なお、その転送時にも、NFTのアカウントから著作者のアカウントに所定のFTを移動させるためのトランザクションデータが発行される。スマートコントラクト機能を持つブロックチェーンにおいては、このようにNFTに所定のプログラムコードを設定することが可能である。
【0061】
また、NFTには、デジタルコンテンツを創作した著作者により、テキストデータとして使用できないNGワードが設定されていてもよい。例えば、ブロックチェーン20は、書換トランザクションを参照してNFTのステートデータを更新する際に、NFTに設定されたNGワードを確認する。そして、書換トランザクションに記録されているテキストデータにNGワードが含まれている場合、ブロックチェーン20は、そのNGワードを削除したり、別の文字に置き換えたりした上で、NFTのステートデータを更新する。あるいは、書換トランザクションに記録されているテキストデータにNGワードが含まれている場合、ブロックチェーン20は、その書換トランザクションを承認しないようにしてもよい。また、書換トランザクションが発行された際に、著作者が書き換え後のテキストデータをチェックできるようにするためのフローを追加することとしてもよい。これにより、デジタルコンテンツに反映されるテキストデータを、著作者によってある程度コントロールすることもできる。
【0062】
続いて、
図7を参照して、NFTの売却トランザクションについて簡単に説明する。なお、NFTの売却処理は公知であるため、本発明においても公知の処理と同様に行うことができる。例えば、
図7に示した例では、あるデジタルコンテンツのNFT(アカウント番号:AAA)の所有者が、ある利用者(アカウント番号:BBB)から別の利用者(アカウント番号:CCC)に変更される。例えば、現在の所有者(BBB)は、NFTの所有者の販売価格(例えば100ETH)を自由に設定できる。また、この販売価格は、NFTが付与されたデジタルコンテンツの市場価値に応じて自動的に設定されてもよい。NFTの購入希望者(CCC)は、NFTを購入するために、NFTのアカウント(AAA)に対して、手数料(10ETH)を支払うと共に、その販売価格(100ETH)を支払うためのトランザクションデータを発行する。ブロックチェーン20にてこの売却トランザクションの検証が行われ、真正なものであるとの認証が得られると、NFTの所有者は購入希望者(CCC)に変更される。新しいNFTの所有者(CCC)は、前述したフローにより、テキストデータを自由に書き換える権原を持つこととなる。なお、NFTのアカウントに振り込まれた手数料と販売料金は、それぞれシステムの運営者と、元のNFTの所有者(BBB)のアカウントに自動的に分配される。
【0063】
図8は、本発明の第1の実施形態に係るシステム100の変形例を示している。この
図8に示した変形例では、
図1に示した実施形態と異なり、アカウント管理サーバ40が省略されている。このため、著作者と所有者は、それぞれ著作者端末10(a)と所有者端末10(b)にて、自己のウォレット(公開鍵と秘密鍵)を管理することとなる。また、著作者は、自分の著作者端末10(a)によりデジタルコンテンツのNFTを発行して、ブロックチェーン20に保持させる。また、所有者は、デジタルコンテンツのNFTに記録されているテキストデータを書き換える場合、自分の所有者端末10(b)により書換トランザクションを発行して、ブロックチェーン20に対してテキストデータの書き換えを要求する。このように著作者端末10(a)や所有者端末10(b)がブロックチェーン20に直接NFTやトランザクションデータを直接記録する処理を実行することで、アカウント管理サーバ40を省略することも可能である。また、著作者端末10(a)や所有者端末10(b)を、ブロックチェーン20を構成するノードの一つとして機能させることとしてもよい。
【0064】
続いて、
図9及び
図10を参照して、本発明の第2の実施形態に係るシステムについて説明する。第2の実施形態に関しては、前述した第1の実施形態と同じ構成についての説明は割愛し、第1の実施形態と異なる構成を中心に説明を行う。
【0065】
図9及び
図10に示されるように、第2の実施形態では、ブロックチェーン20上において、NFTとは別に、スマートコントラクト(SC)を発行し、このSCに、デジタルコンテンツに影響を与えるテキストデータを記録しておくこととしている。SCは、ブロックチェーン上で所定の規則に従った処理を自動的に実行するプログラムであり、例えば契約の自動履行などに利用される。SCの仕組みは、例えば自動販売機のように、利用者が硬貨を投入して商品の選択ボタンを押すと、売買契約が成立して商品が自動的に払い出されることに似ている。本実施形態では、NFTの所有者が、所定の手数料を所定のアカウントに支払うとともに、書き換え後のテキストデータを指定するトランザクションを発行すると、SCの機能により、自動的にテキストデータの書き換えが行われる。
【0066】
具体的に説明すると、
図9に示されるように、著作者は、デジタルコンテンツを創作すると、著作者端末10(a)を介して、そのデジタルコンテンツをコンテンツ管理サーバ30に投稿(アップロード)する。また、著作者は、著作者端末10(a)を介して、そのデジタルコンテンツを関連付けられたNFT(非代替性トークン)とSC(スマートコントラクト)を発行するようにアカウント管理サーバ40に要求する。管理サーバ40は、著作者から要求を受けたデジタルコンテンツに対応するNFTについて、アカウント番号(公開鍵)と秘密鍵を含むウォレットを作成する。また、管理サーバ40は、ブロックチェーン20に対して、デジタルコンテンツに関するNFTと、これに関連付けられたSCの発行を要求する。このNFTには、例えば
図10に示すように、デジタルコンテンツのアカウント番号、作品名、及び所有者に関する情報が含まれる。また、SCには、NFTのアカウント番号とともに、デジタルコンテンツに影響を与えるテキストデータが含まれる。このように、SCにNFTのアカウント番号を含めることで、SCとNFTの関連付けが行われる。また、SCの実行条件は、その発行者(具体的には著作者)がある程度自由に設定することが可能である。
【0067】
閲覧者は、閲覧者端末10(c)を使用して、コンテンツ管理サーバ30に記録されているデジタルコンテンツを閲覧できる。その際に、閲覧者端末10(c)は、ブロックチェーン20にアクセスし、閲覧対象のデジタルコンテンツに付与されたNFTに関連付けられているSCからテキストデータを読み込む。閲覧対象端末10(c)は、このSCに記録されている最新のテキストデータに基づいてデジタルコンテンツを構成するデータを更新し、そのデータを更新したデジタルコンテンツを出力する。
【0068】
また、前述した第1の実施形態と同様に、第2の実施形態では、デジタルコンテンツの所有権を現に有する所有者は、そのデジタルコンテンツに付与されているNFTに関連付けられたSCのテキストデータを自由に書き換えることができる。具体的には、所有者は、所有者端末10(b)を使用して、アカウント管理サーバ40にSCのテキストデータの書換要求を行う。書換要求には、新たなテキストデータが含まれる。アカウント管理サーバ40は、書換要求を受信すると、所有者名義にてブロックチェーン20に対してテキストデータの書換トランザクションを発行する。書換トランザクションは、一般的な公開鍵暗号方式によって署名され、ブロックチェーン20側において、所有者名義によって正当に発行されたものであることが検証される。この書換トランザクションをトリガーとして、SCが実行され、SCに記録されているテキストデータが書き換えられる。
【0069】
このようにして、ブロックチェーン20上のSCによって保持されているNFTのテキストデータが書き換わると、閲覧者端末10(c)により出力されるデジタルコンテンツの内容も変更されることとなる。例えば、デジタルコンテンツが静止画又は動画内に文字を含むものである場合、この文字部分はブロックチェーン上のNFTに新たに記録されたテキストデータに置き換わる。
【0070】
図10は、SCの書換トランザクションの一例を示している。
図10に示されるように、デジタルコンテンツに付与されたNFTは、例えば、固有のアカウント番号(公開鍵)、作品名、所有者のアカウント番号、及び残高に関する情報を含む。また、SCは、NFTのアカウント番号及びテキストデータを含む。
図10の例では、書換前のSCに「MATTER IS VOID」とのテキストデータが記録されている。このため、閲覧者端末10(c)に表示されるデジタルコンテンツにも、同じ文字が含まれることとなる。
【0071】
図2に示した例において、デジタルコンテンツのNFTのアカウント番号はAAAであり、このデジタルコンテンツの所有者のアカウント番号はBBBである。この所有者(BBB)は、NFTに関連付けられたSCのテキストデータを書き換える権原を持つ。すなわち、所有者は、SCのテキストデータを書き換えるためのトランザクションを発行できる。具体的には、図示した例では、所有者のアカウントBBBからデジタルコンテンツのNFTのアカウントAAAに対して、書換トランザクションが発行される。この書換トランザクションは、手数料10ETHを支払うと共に、SCのテキストデータ(関数“Text”)を、新しいテキストデータ「LEAVE CHAOS AS IS BUT CAUSE IT TO EVOLVE」(引数)に変更することが表されている。つまり、SCは、書換トランザクションに記載されているNFTのアカウント番号(AAA)に基づいて、当該アカウント番号(AAA)を持つNFTを参照し、そのNFTの所有者のアカウント番号(BBB)と書換トランザクションの発行元のアカウント番号(BBB)とが一致するかを確認する。これが一致する場合、この書換トランザクションは、NFTの所有者(BBB)により発行されたものであると特定することができる。このように、ブロックチェーン20にてこの書換トランザクションの検証が行われ、真正なものであるとの認証が得られると、SCのテキストデータは、書換トランザクションに記載された新しいものに置き換えられる。このように、書き換えられたSCの最新のステートデータは、ブロックチェーン20上に保持されることとなる。これにより、閲覧者端末10(c)に表示されるデジタルコンテンツも、書き換え後の新しい文字に変更される。
【0072】
また、SCに設定されたプログラム(付加機能)により、書換トランザクションで所有者アカウントからNFTアカウントに振り込まれた代替性トークン(FT)(例えば10ETH)は、全部又は一部が、デジタルコンテンツの著作者のアカウントに自動的に振り込まれることとしてもよい。これにより、著作者は、SCのテキストデータが書き換えられる度に報酬を得ることができる。なお、FTの全部又は一部は、本システムの運営者のアカウントに振り込まれることとしてもよい。
【0073】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0074】
10…利用者端末 10(a)…著作者端末
10(b)…所有者端末 10(c)…閲覧者端末
20…ブロックチェーン 30…コンテンツ管理サーバ
40…アカウント管理サーバ 100…システム