(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056833
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/22 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
H02K9/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166273
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】高橋 瞬
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP11
5H609QQ23
5H609RR58
5H609RR69
5H609RR71
5H609RR73
5H609RR74
(57)【要約】
【課題】部材への熱の影響を抑制することができる回転電機を提供する。
【解決手段】実施形態の回転電機1は、固定子4および回転子5を収容するフレーム2と、フレーム2の開口を塞ぐブラケット3と、回転子5に固定されて共に回転するシャフト6と、シャフト6を回転可能に支持する軸受け7と、軸方向において回転子5と軸受け7との間でシャフト6に取り付けられていて、ブラケット3の内面に対向する放熱面8aを有する放熱器8とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子および回転子を収容するフレームと、
前記フレームの開口を塞ぐブラケットと、
前記回転子に固定されて共に回転するシャフトと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受けと、
軸方向において前記回転子と前記軸受けとの間で前記シャフトに取り付けられていて、前記ブラケットの内面に対向する放熱面を有する放熱器と、を備える回転電機。
【請求項2】
前記固定子には、軸方向の端部にコイルエンドが形成されており、
前記放熱器は、軸方向から見た状態において、前記放熱面の外縁が前記コイルエンドの内縁に掛かる大きさに形成されている請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
前記固定子には、軸方向の端部にコイルエンドが形成されており、
前記放熱器の前記コイルエンド側に取り付けられ、前記コイルエンドから前記放熱器への直接的な熱輻射の少なくとも一部を遮る遮蔽部材を備える請求項1または2記載の回転電機。
【請求項4】
前記固定子には、軸方向の端部にコイルエンドが形成されており、
前記フレームに取り付けられ、前記放熱器と前記コイルエンドとの間に位置して前記コイルエンドから前記放熱器への直接的な熱輻射の少なくとも一部を遮るとともに、コイルエンドから受けた熱を前記フレームに伝える遮蔽伝熱部材を備える請求項1から3のいずれか一項記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定子と回転子をフレーム内に配置した回転電機において、ファンを設けて冷却することがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、熱が伝わった部材を冷却するという技術的思想に基づいて冷却が行われていたことから、部材への熱の影響そのものを抑制することは困難であった。
そこで、部材への熱の影響を抑制することができる回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の回転電機は、固定子および回転子を収容するフレームと、フレームの開口を塞ぐブラケットと、回転子に固定されて共に回転するシャフトと、シャフトを回転可能に支持する軸受けと、軸方向において回転子と軸受けとの間でシャフトに取り付けられていて、ブラケットの内面に対向する放熱面を有する放熱器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態による回転電機の構成例を模式的に示す図
【
図6】遮蔽部材の他の構成例および取り付け態様例を模式的に示す図
【
図7】第2実施形態による回転電機の構成例を模式的に示す図
【
図10】遮蔽伝熱部材の他の配置態様例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。また、各実施形態において実質的に共通する部位には同一符号を付している。
【0008】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。
図1に示すように、回転電機1は、両端が開口した筒状に形成されているフレーム2と、フレーム2の両端側の開口を塞ぐブラケット3Aおよびブラケット3Bと、フレーム2の内面に固定されている固定子4と、固定子4の内周側に所定のギャップを設けて配置されている回転子5と、回転子5に取り付けられているシャフト6と、それぞれのブラケット3に設けられていてシャフト6を回転可能に支持する軸受け7と、シャフト6に固定されている放熱器8とを備えている。以下、シャフト6の回転軸(J1)に沿った向きを軸方向と称し、軸方向に垂直な向きを径方向と称し、軸方向周りの向きを周方向と称する。
【0009】
フレーム2は、本実施形態では内周面が円形の円筒状に形成されており、その内周面に固定子4を固定するための図示しない固定構造が設けられている。ブラケット3は、軸受け7を収容しているとともに、軸受け7側から径方向外側に広がった概ね円盤状に形成されており、その内面において周方向の少なくとも一部に、平坦な平坦面3aが形成されている。
【0010】
固定子4は、周知のように電磁鋼板を円環状に打ち抜いた鉄心片を積層することにより中空に形成されているとともに、内周面にコイルを装着する複数のスロットが形成されている。そのスロットに挿入されたコイルは、軸方向の両端に突出する部位が固定子4の端面に沿って成形されてコイルエンド4aを形成している。このコイルエンド4aは、軸方向および径方向において所定の形状に収まるように形成されている。
【0011】
回転子5は、周知のように電磁鋼板を円環状に打ち抜いた鉄心片を積層することにより形成されており、その中心にシャフト6を挿入する孔部5aが形成されている。本実施形態の場合、誘導式の回転電機1を想定しており、回転子5は、内部に形成されている複数のスロットにアルミニウムや銅などの導体が挿入されているとともに、軸方向の両端に各導体を繋ぐ短絡環5bがフィンを有する形状に形成されている。ただし、回転電機1の構成は一例でありこれに限定されない。
【0012】
シャフト6は、金属材料で形成されており、回転子5の孔部5aに圧入されていて回転子5とともに回転する回転軸周りに回転する。また、シャフト6は、回転子5の両側に対応する位置に、軸方向における回転子5と逆側が相対的に径小となる段差が形成されており、この段差によって放熱器8を取り付ける位置が規定される。
【0013】
放熱器8は、例えばステンレス鋼などの金属材料で形成されており、軸方向において回転子5と軸受け7との間となる位置でシャフト6に固定されている。また、放熱器8は、シャフト6側から径方向外側に広がる形状に形成されていて、ブラケット3の内面ここでは平坦面3aに対向する平坦な放熱面8aを有している。以下、放熱面8aが形成されている部位を、便宜的に放熱部8bとも称する。
【0014】
具体的には、放熱器8は、
図2に示すように、軸方向から見た正面視においてその外形が円形に形成されているとともに、その中心にシャフト6が挿入される挿入孔8cが形成されている。この挿入孔8cには、周方向の一部にシャフト6のキーが挿入されるキー溝8dが形成されており、シャフト6との相対的な位置ずれが防止されている。また、本実施形態では、放熱器8には径方向外側から挿入孔8cの内面まで連通している固定孔6eが設けられており、例えばボルトによってシャフト6に固定される。ただし、圧入のみ、あるいは、ボルトのみで固定する構成とすることもできる。
【0015】
また、放熱器8は、径方向から視た側面視として示すように、固定子4や回転子5側となる図示右方側が、短絡環5bやコイルエンド4aと干渉しない形状に形成されている。本実施形態では、放熱器8は、短絡環5bやコイルエンド4aを避けるために段差状に形成されている。また、放熱器8は、軸受け7側となる図示右方側の表面に、軸受け7と干渉しないように所定の直径で表面から窪んだ逃げ部8eが形成されている。そして、逃げ部8eの外周側に形成される平坦な面が本実施形態における放熱面8aとなる。
【0016】
この放熱器8は、例えば短い円柱状の金属材料を削り出すことにより形成されており、図示左方側の表面が挿入孔8c側から放熱面8aの外縁まで連続している。また、放熱器8は、シャフト6に取り付けられた際には挿入孔8cがシャフト6で塞がれる。そのため、放熱器8は、シャフト6に取り付けられた状態においては、図示左方側の端部にフランジ状の放熱部8bが形成されていて、その表面が放熱面8aとなる有底円筒状の構造となっている。
【0017】
そして、放熱器8は、
図1に示すように、軸方向から見た状態において、放熱部8bの一点鎖線(DL1)にて示す外縁が、固定子4の軸方向の端部に形成されているコイルエンド4aの一点鎖線(DL2)にて示す内縁に径方向において掛かる大きさに形成されている。そのため、放熱器8の放熱面8aは、ブラケット3の平坦面3aと所定の間隔を介して平行な状態、つまりは、平坦面3aに対向した状態となる。また、シャフト6が回転して放熱器8が回転した場合も、放熱面8aと平坦な平坦面3aとが所定の間隔を介して対向した状態になる。
【0018】
この放熱器8の挿入孔8cの直径(R1)はシャフト6の直径に基づいて設定することができる。また、放熱器8の図示右方から1つ目の段差部の直径(R2)および2つ目の段落の直径(R3)は、短絡環5bやコイルエンド4aに接触しない状態であって且つ所定の絶縁距離を確保できる大きさに設定することができる。ただし、1つ目の段差部の直径(R2)は、シャフト6と接触することでシャフト6からの熱が伝わる部位となることから、可能な範囲で大きくすることが望ましい。
【0019】
また、放熱器8の全体の直径(R4)は、フレーム2の大きさやフレーム2の内部構造などに応じて適宜設定することができる。また、逃げ部8eの直径(R5)は、軸受け7と干渉しない範囲であって、後述するようにブラケット3に熱を放出する部位となる放熱面8aの幅(W1)を可能な範囲で大きくできるように設定することが望ましい。
【0020】
また、放熱器8の全体の厚み(T1)は、回転子5と軸受け7との距離などに応じて設定することができるが、放熱面8aと平坦面3aとの距離が可能な範囲で短くなるように設定することが望ましい。また、放熱部8bの厚み(T2)は、コイルエンド4aとの間に所定の絶縁距離を確保できる状態で、蓄熱量を多くするために可能な範囲で厚くすることが望ましい。また、挿入孔8cの厚み(T3)つまりは挿入孔8cの軸方向の長さは、シャフト6と接触してシャフト6からの熱が伝わる部位であることから可能な範囲で厚くすることが望ましい。
【0021】
この放熱部8bには、
図1に示すように、コイルエンド4a側の面に遮蔽部材9が設けられている。この遮蔽部材9は、コイルエンド4aから放熱器8への直接的な熱輻射の少なくとも一部を遮るものであり、耐熱性を有するとともに放熱器8に比べて相対的に熱伝導性が低い材料で形成されている。本実施形態では、遮蔽部材9は、耐熱性のゴム材料で形成し、そのコイルエンド4a側の面に例えばアルミニウム箔のような反射率の高い部材を張り付けて形成されている。
【0022】
この遮蔽部材9は、例えば耐熱性の接着剤によって放熱部8bのコイルエンド4a側の面に張り付けられている。ただし、遮蔽部材9は、ゴム材料に限らず耐熱性の樹脂材料などで形成することができるし、接着に限らず例えば遮蔽部材9側あるいは放熱面8a側からねじ止めすることで放熱器8に取り付けたり、接着およびねじ止めにより放熱器8に取り付けたりすることができる。
【0023】
この遮蔽部材9は、
図3に示すようにその外径(R10)が概ね放熱器8の直径(R1)と同じか若干小さく、その内径(R7)が放熱器8の2つ目の段落の直径(R3)よりも若干大きく、その厚み(T10)が概ね放熱部8bの厚み(T2)と同じ程度に設定されている。そのため、遮蔽部材9は、放熱部8bに取り付けられた状態において、放熱部8bの径方向および周方向のほぼ全域をコイルエンド4a側から遮蔽している。
【0024】
つまり、遮蔽部材9は、コイルエンド4aから放熱器8への直接的な熱輻射の少なくとも一部を遮るものであり、本実施形態の場合であれば、放熱器8の放熱部8bへの直接的な熱輻射を遮っている。なお、遮蔽部材9は、
図3に示したような円環状のものに限らず、例えば周方向に複数個に分割されたものを組み合わせる構成とすることができる。
【0025】
次に上記した構成の作用について説明する。
前述のように、従来の冷却手法は熱が伝わった部材を冷却するという技術的思想に基づいてなされていたことから、部材への熱の影響そのものを抑制することは困難であった。例えば、運転時にコイルが発熱した場合、その熱はシャフト6に伝わり、シャフト6を経由して軸受け7にも伝わることになる。そして、軸受け7は、熱が過剰に伝わると、熱膨張による寸法のずれや潤滑油の劣化などにより損傷するおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態では、放熱器8を回転電機1に設けている。例えば、
図4に比較例として示すように、放熱器8を設けていない従来型回転電機101の場合には、白矢印(V1)にて模式的に示す熱がシャフト6に伝わった場合には、その熱は概ねそのまま軸受け7側まで伝わることになる。その結果、シャフト6を物理的に支持いている軸受け7に熱が伝わり、軸受け7の温度が上昇して上記したような損傷を招くおそれがある。
【0027】
これに対して、実施例として示す本実施形態により回転電機1の場合には、白矢印(V1)にて示す熱がシャフト6に伝わったとしても、その熱は、一部が白矢印(V2)にて示すように放熱器8に伝わるとともに、残りが白矢印(V3)にて示すように軸受け7側に伝わることになる。そして、放熱器8に伝わった熱は白矢印(V4)にて示すように放熱面8aから輻射によってブラケット3に伝えられ、ブランケットの外表面から外部に放出されることになる。
【0028】
これにより、本実施形態の回転電機1は、従来型回転電機101と比較して軸受け7に伝わる熱を削減すること、つまりは、軸受け7への熱の影響そのものを抑制することができる。そして、軸受け7への熱の影響が抑制されれば、軸受け7の温度の上昇も抑制されることから、上記したような損傷を招くおそれを低減することができる。
【0029】
ところで、コイルエンド4aは、回転電機1内で比較的高温になる部位であり、そのコイルエンド4aからは、黒矢印(R1)にて示すように輻射熱が放出される。その場合、輻射熱によって放熱部8bの温度が上昇すると、放熱面8aからの放熱性能が低下するおそれがあるとともに、シャフト6から奪う熱量も低下するおそれがある。そのため、回転電機1は、軸方向においてコイルエンド4aの側方に位置している放熱部8bのコイルエンド4a側に遮蔽部材9を設けている。これにより、コイルエンド4aからの熱輻射によって放熱部8bからの放熱が低下することを抑制できる。
【0030】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
回転電機1は、固定子4および回転子5を収容するフレーム2と、フレーム2の開口を塞ぐブラケット3と、回転子5に固定されて共に回転するシャフト6と、シャフト6を回転可能に支持する軸受け7と、軸方向において回転子5と軸受け7との間でシャフト6に取り付けられていて、ブラケット3の内面に対向する放熱面8aを有する放熱器8とを備えている。これにより、シャフト6に伝わった熱を、回転電機1を構成する例えば軸受け7のような部材に伝わる前に放出することができ、部材への熱の影響そのものを抑制することができる。
【0031】
また、回転電機1は、放熱器8が、軸方向から見た状態において放熱面8aの外縁がコイルエンド4aの内縁に掛かる大きさに形成されている。つまり、放熱面8aは、径方向にある程度広がった大きさに形成されている。これにより、放熱面8aとブランケットとが対向する面積を大きく設定することができ、放熱面8aからブランケットへの放熱量を増加させることができ、放熱器8の放熱性能を向上させることができる。なお、シャフト6および放熱器8に例えばねじ加工を施すことなどにより、回転子5の軸方向の両側に放熱器8を取り付けることができる。
【0032】
また、回転電機1は、放熱器8のコイルエンド4a側に取り付けられ、コイルエンド4aから放熱器8への直接的な熱輻射の少なくとも一部を遮る遮蔽部材9を備えている。これにより、運転中に比較的高温になるコイルエンド4aからの熱が放熱器8に伝わることを抑制でき、放熱器8の放熱性能が低下することを抑制できる。
【0033】
さて、実施形態では外周側に複数の段差を有する放熱器8を例示したが、例えば
図5に形状例その1として示す放熱器8Aのように、外縁に段差を設けない構成とすることができる。これにより、コイルエンド4aとの絶縁距離を確保し易くなる。また、回転子5がフィン形状部分を備えていない場合には、コイルエンド4aとの絶縁距離を確保した上で、シャフト6と接する部位の断面視での幅(W10)を可能な範囲で大きくすることにより、シャフト6から伝わる熱量を増加させることができる。つまり、シャフト6からの熱を効率的に放熱面8aから放出させることができる。
【0034】
また、形状例その2として示す放熱器8Bのように、コイルエンド4a側の外縁や軸受け7側に内縁を傾斜状に形成する構成とすることができる。この場合、外縁または内縁の一方を傾斜状に形成することもできる。また、形状例その3として示す放熱器8Cのように、例えば軸受け7がブランケットの内面よりも外側に配置される構造の場合には、概ね円筒状の本体にフランジ状の放熱部8bを設けたようなシンプルな構成とすることもできる。これらのような構成によっても、コイルエンド4aとの絶縁距離を確保しつつ放熱面8a積も確保することができるとともに、容易に製造することもできる。
【0035】
また、実施形態では放熱部8bのコイルエンド4a側の面に遮蔽部材9を設ける構成を例示したが、
図6に取り付け例その1として示すように、放熱器8の段差の部位にそれぞれ大きさが異なる遮蔽部材9Aや遮蔽部材9Bを取り付ける構成とすることができる。また、取り付け例その2として示すように、放熱器8の段差を径方向外側から覆う態様の遮蔽部材9Cや遮蔽部材9Dを設け、軸方向および径方向外側の少なくとも一方においてコイルエンド4aからの熱輻射を遮る構成とすることもできる。
【0036】
また、取り付け例その3として示すように、例えば放熱器8Aのような他の構造においても、例えば軸方向および径方向外側の少なくとも一方においてコイルエンド4aからの熱輻射を遮る構成とすることができる。また、遮蔽部材9を逃げ部8eに設けることもできる。これにより、放熱器8から軸受け7への直接的な熱輻射が遮られ、軸受け7の温度上昇を抑制することができる。
【0037】
このように、遮蔽部材9をコイルエンド4aと対向する部位に設ける構成とすることにより、コイルエンド4aから放熱器8への直接的な熱輻射を遮ることができるとともに、放熱器8においては、遮蔽部材9を設けた位置からの放熱が抑制されることによって相対的に放熱面8aからの放熱量が増加し、ブラケット3への熱の移動効率、つまりは、ブラケット3を介した放熱効率を向上させることができる。
【0038】
実施形態では軸受け7への熱の影響が抑えられることを説明したが、回転電機1の外部でシャフト6に取り付けられる部材への熱の影響を抑制することもできる。すなわち、放熱器8は、回転電機1を構成する部材、および、シャフト6に取り付けられる部材への熱の影響を抑制することができる。また、実施形態では回転子5を挟んだ両側に放熱器8を設ける構成を例示したが、いずれか一方に放熱器8を設ける構成とすることができる。
【0039】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の回転電機1の主たる構成は第1実施形態と共通するため、実質的に共通する部位には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施形態の回転電機10は、
図7に示すように、フレーム2、ブラケット3Aおよびブラケット3B、固定子4、回転子5、シャフト6、軸受け7、放熱器8、および、フレーム2の内面に取り付けられている遮蔽伝熱部材11を備えている。この遮蔽伝熱部材11は、
図8に示すように、中空の円環状に形成されている遮蔽板11aと、遮蔽板11aの外縁から立ち上がって軸方向に延びている壁部11bとを有しており、その断面が概ねL字状に形成されている。この遮蔽伝熱部材11は、伝熱性を有する例えば金属材料などにより形成されている。
【0041】
このとき、遮蔽伝熱部材11の全体の直径は、フレーム2の内面に取り付け可能な大きさに設定されている。また、壁部11bの軸方向の幅(W20)は、フレーム2の内面に取り付け可能な範囲で適宜設定することができる。この壁部11bには、フレーム2の内面に固定するためのねじ穴11cが複数個所に形成されている。また、遮蔽板11aの径方向の幅(W21)は、フレーム2に取り付けた際に放熱器8に接触しない範囲に設定されている。
【0042】
そして、遮蔽伝熱部材11は、
図7に示すように、軸方向において遮蔽板11aがコイルエンド4aと放熱器8との間に位置する状態で壁部11bがフレーム2に固定されることで取り付けられる。ただし、遮蔽伝熱部材11とコイルエンド4aとの間は、所定の絶縁距離が確保された状態となっている。これにより、黒矢印(R1)にて示すコイルエンド4aからの輻射熱は、放熱器8ここでは放熱部8bへの放射が遮蔽伝熱部材11によって遮られることになる。
【0043】
このように、フレーム2に取り付けられ、放熱器8とコイルエンド4aとの間に位置してコイルエンド4aから放熱器8への直接的な熱輻射の少なくとも一部を遮るとともに、コイルエンド4aから受けた熱をフレーム2に伝える遮蔽伝熱部材11を設けることによっても、放熱部8bの温度上昇を抑制することができ、シャフト6から伝わった熱をブラケット3に放出し易くなることから、部材への熱の影響そのものを抑制することができる。
【0044】
ところで、遮蔽伝熱部材11は、上記した円環状に限らず、複数個を組み合わせることによって全体として概ね円環状に熱輻射を遮ることができる構成とすることができる。例えば、
図9に形状例その1として示すように、
図8に示した遮蔽伝熱部材11を周方向に分割した態様のパーツ12Aを組み合わせる構成とすることができる。なお、
図9では、説明のために遮蔽板11aと壁部11bに対応する位置に符号を付している。このとき、パーツ12Aの中心角(α)は適宜設定できるが、必ずしも同一形状のものを配置する必要は無く、例えば中心角が30度、45度、60度のものを組み合わせて遮蔽伝熱部材11とすることができる。
【0045】
あるいは、遮蔽伝熱部材11は、形状例その2として示すように、壁部11bを直線状に形成し、その壁部11bと繋がっている遮蔽板11aの図示下端側つまりは放熱器8側となる形状のパーツ12Bを、放熱器8を避ける円弧状に形成することができる。また、遮蔽伝熱部材11は、形状例その3として示すように、形状例その2に示したものを図示左右方向において例えば2分割した形状のパーツ12Cを用いて構成することもできる。
【0046】
また、遮蔽伝熱部材11は、形状例その4として示すように、壁部11b側と遮蔽板11a側とを別部材としたパーツ12Dを用い、両者をねじ止めしてフレーム2の内面に取り付けたり、壁部11bを予めフレーム2の内面に取り付けておき、必要な作業が完了した後に遮蔽板11aを取り付けたりする構成とすることができる。
【0047】
これらのように遮蔽伝熱部材11を複数のパーツ12で構成することにより、また、壁部11bや遮蔽板11aの形状を異ならせたものを組み合わせ可能とすることにより、例えば
図10に示す回転電機20のように、フレーム2Aの内面が完全な円形ではない場合や、例えば端子を引き出す部位のように構造上避けることが難しい構造物21がある場合などにおいても、パーツ12を複数あるいは異なる形状のものを組み合わせることで、コイルエンド4aと図示しない放熱器8との間を全体として概ね環状に遮蔽する遮蔽伝熱部材11を配置することができる。
【0048】
このとき、各パーツ12を周方向に隙間なく配置することもできるが、
図10に示したように、パーツ12間に隙間が存在していてもよい。これは、放熱器8は回転することから、放熱器8の同じ部位が隙間からの熱輻射によって加熱され続けるおそれが少ないと考えられるためである。
【0049】
また、第1実施形態の回転電機1と組み合わせて、遮蔽部材9と遮蔽伝熱部材11とを設ける構成とすることができる。この場合、
図1に示す回転電機1の例えば図示左方側のようにコイルエンド4aと放熱器8との距離が比較的短い場合には遮蔽部材9を設け、図示右方側のようにコイルエンド4aと放熱器8との距離が比較的長い場合には遮蔽部材9と遮蔽伝熱部材11とを設ける構成とすることができる。例えば、フレーム2に固定した固定子4の内周側に回転子5およびシャフト6を挿入する組み立て順の場合には、挿入方向における先端側には放熱器8を設けず、挿入方向における後端側に予め放熱器8を取り付けた状態で挿入することで、回転子5の軸方向の一方の側に放熱器8を容易に配置することができる。
【0050】
また、軸方向の両側のうち一方の側に放熱器8が設けられ、他方の側に放熱器8が設けられていない場合において、放熱器8が設けられていない側に遮蔽伝熱部材11を設ける構成とすることができる。これにより、コイルエンド4aから遮蔽伝熱部材11を経由してフレーム2の外表面という経路での放熱が促され、シャフト6側に伝わる熱を相対的に低減することが可能となり、シャフト6を伝わる熱が部材に影響を与えることを抑制できる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
図面中、1、10は回転電機、2、2Aはフレーム、3、3A、3Bはブラケット、3aは平坦面、4は固定子、4aはコイルエンド、5は回転子、6はシャフト、7は軸受け、8、8A、8B、8Cは放熱器、8aは放熱面、9、9A、9B、9C、9D、9E、9Fは遮蔽部材、11は遮蔽伝熱部材、12A、12B、12C、12Dはパーツ(遮蔽伝熱部材)を示す。