(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005684
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】半導体装置の検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230111BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01R31/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107757
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 安則
【テーマコード(参考)】
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G132AE27
2G132AF14
2G132AL12
4M106AA01
4M106AA07
4M106AB01
4M106AD06
4M106BA05
4M106CA17
4M106CA42
4M106DB18
4M106DH08
4M106DJ02
(57)【要約】
【課題】不良箇所の位置を高精度に検出することが可能な半導体装置の検査装置および検査方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の検査装置であって、試料30に光を照射することにより試料30に照射痕を形成する光源6と、試料30に電圧を印加することにより照射痕を発光させ、検査対象に電圧を印加することにより検査対象の不良箇所を発光させる電圧印加部7と、検査対象を移動させる第1移動部7と、照射痕からの発光を検出する光検出部9と、光検出部9を移動させる第2移動部10と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の検査装置であって、
試料(30)に光を照射することにより前記試料に照射痕を形成する光源(6)と、
前記試料に電圧を印加することにより前記照射痕を発光させ、検査対象(20)に電圧を印加することにより前記検査対象の不良箇所を発光させる電圧印加部(7)と、
前記検査対象を移動させる第1移動部(7)と、
前記照射痕からの発光を検出する光検出部(9)と、
前記光検出部を移動させる第2移動部(10)と、を備える半導体装置の検査装置。
【請求項2】
前記光源、前記電圧印加部、前記第1移動部、前記第2移動部を制御する制御部(11)を備え、
前記制御部は、
前記光源を制御して前記試料に光を照射することにより前記試料に照射痕を形成し、
前記電圧印加部を制御して前記試料に電圧を印加することにより前記照射痕を発光させ、
前記第2移動部を制御して前記光検出部を移動させることにより、該発光した部分に前記光検出部の光軸を合わせ、
前記電圧印加部を制御して前記検査対象に電圧を印加することにより不良箇所を発光させ、
前記第1移動部を制御して前記検査対象を移動させることにより、該発光した部分を前記光検出部の光軸に合わせる請求項1に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項3】
半導体装置の検査方法であって、
試料(30)に光を照射することにより前記試料に照射痕を形成することと、
前記試料に電圧を印加することにより前記照射痕を発光させることと、
光検出部(9)を移動させることにより、該発光した部分に前記光検出部の光軸を合わせることと、
検査対象(20)に電圧を印加することにより不良箇所を発光させることと、
前記検査対象を移動させることにより、該発光した部分を前記光検出部の光軸に合わせることと、を備える半導体装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の検査装置および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の不良解析は、例えば以下の方法で行われる。まず、電圧の印加によって半導体基板上の不良箇所を発光させ、基板の裏面側からエミッション顕微鏡で観察することにより、発光点を検出する。つぎに、基板の表面側から集束イオンビームによるエッチングを行い、発光点を大まかにマーキングする。
【0003】
そして、半導体装置を再度エミッション顕微鏡で裏面側から観察し、発光点とマーキングとの位置関係を確認する。その後、この位置関係に基づいて集束イオンビームによるエッチングを行い、より発光点に近い位置にマーキングする。このマーキングに基づいて不良箇所が切り出され、断面の観察等が行われる。
【0004】
このような従来の方法では、エミッション顕微鏡による観察と、集束イオンビームによるエッチングとが、別々の装置で行われる。そのため、発光点の位置とマーキングにずれが生じやすく、不良箇所を高精度に切り出すことが困難である。
【0005】
これについて、例えば特許文献1では、外周部に特徴的なパターンが存在するパワーデバイス等の半導体装置について、以下の検査方法が提案されている。まず、サンプルの表面、裏面に電子ビーム、レーザビームを照射して、これらの光軸と上記のパターンとのずれ量をモニタによって確認する。
【0006】
つぎに、このずれ量に基づいて、レーザビームの光軸と電子ビームの光軸とのずれを補正する。具体的には、偏向器によって電子ビームの偏向を補正し、電子ビームの光軸をレーザビームの光軸に合わせる。そして、不良箇所の検出を行い、検出された不良箇所のレーザビームの光軸からのシフト量を計算する。その後、このシフト量に応じて電子ビームを走査し、不良箇所付近にマーキングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法では、電子ビームの光軸とレーザビームの光軸とのずれを電子ビームの偏向で補正している。しかしながら、レーザビームの光軸と電子ビームの光軸は、電子ビームの偏向のみでは補正しきれないほど大きくずれる場合があり、この場合には、不良箇所の位置を高精度に検出することが困難である。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、不良箇所の位置を高精度に検出することが可能な半導体装置の検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体装置の検査装置であって、試料(30)に光を照射することにより試料に照射痕を形成する光源(6)と、試料に電圧を印加することにより照射痕を発光させ、検査対象(20)に電圧を印加することにより検査対象の不良箇所を発光させる電圧印加部(7)と、検査対象を移動させる第1移動部(7)と、照射痕からの発光を検出する光検出部(9)と、光検出部を移動させる第2移動部(10)と、を備える。
【0011】
これによれば、光検出部を移動させて試料の照射痕に光検出部の光軸を合わせ、検査対象を移動させて発光している部分を光検出部の光軸に合わせることにより、光源の光軸に対して、不良箇所を高精度に位置合わせすることができる。したがって、不良箇所の位置を高精度に検出することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、半導体装置の検査方法であって、試料(30)に光を照射することにより試料に照射痕を形成することと、試料に電圧を印加することにより照射痕を発光させることと、光検出部(9)を移動させることにより、該発光した部分に光検出部の光軸を合わせることと、検査対象(20)に電圧を印加することにより不良箇所を発光させることと、検査対象を移動させることにより、該発光した部分を光検出部の光軸に合わせることと、を備える。
【0013】
これによれば、光検出部を移動させて試料の照射痕に光検出部の光軸を合わせ、検査対象を移動させて発光している部分を光検出部の光軸に合わせることにより、光源の光軸に対して、不良箇所を高精度に位置合わせすることができる。したがって、不良箇所の位置を高精度に検出することができる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態にかかる検査装置の構成を示す図である。
【
図4】試料に照射痕を形成する様子を示す図である。
【
図5】照射痕に光検出部の光軸を合わせる様子を示す図である。
【
図6】半導体装置の不良箇所からの光が光検出部に入射する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。
図1に示す検査装置1は、パワーデバイス等が形成された半導体装置の検査装置であって、半導体装置の不良解析に用いられる。
図1に示すように、検査装置1は、チャンバー2を備えている。チャンバー2は、内部の空間が隔壁3によって2つに分けられている。チャンバー2の内部に形成された2つの空間を、それぞれ第1室4、第2室5とする。
【0018】
第1室4は真空室とされており、第2室5の圧力は例えば大気圧程度とされている。すなわち、第1室4は、真空引きにより、第2室5に比べて減圧されている。第1室4には、光源6と、ステージ7とが備えられている。
【0019】
光源6は、後述する試料30に光を照射することにより、試料30に照射痕を形成するものである。光源6は、Gaイオンビームを発生させるイオン源や、アパーチャ、集束レンズ、対物レンズ等を備えており、試料30に集束イオンビームをスポット照射するように構成されている。
【0020】
ステージ7は、試料30と、検査対象である半導体装置とを保持するものである。なお、
図1では、ステージ7に試料30が載置された様子を示している。
【0021】
ステージ7は、保持した試料30および検査対象に電圧を印加する機能を備えている。ステージ7は、試料30に電圧を印加することにより、光源6からの光の照射によって形成された照射痕を発光させる。また、ステージ7は、検査対象に電圧を印加することにより、検査対象の不良箇所を発光させる。ステージ7は、電圧印加部に相当する。
【0022】
また、ステージ7は、保持した検査対象を移動させる機能を備えている。具体的には、光源6の光軸に垂直な一方向をx方向とし、光源6の光軸とx方向の両方に垂直な方向をy方向として、ステージ7は、保持した検査対象を、x方向およびy方向に移動させる。ステージ7は、第1移動部に相当する。
【0023】
ステージ7は、電圧の印加によって試料30および検査対象から発生した光を第2室5側に透過させるように構成されている。隔壁3には開口部が形成されており、この開口部には真空窓8がはめ込まれている。試料30および検査対象から発生した光は、真空窓8を透過して第2室5に入射する。
【0024】
第2室5には、光検出部9が備えられている。光検出部9は、試料30に形成された照射痕からの発光や、検査対象の不良箇所からの発光を検出するものである。光検出部9は、例えばエミッション顕微鏡で構成される。
【0025】
第2室5には、光検出部9を移動させる移動部10が備えられている。移動部10は、光検出部9をx方向およびy方向に微動させるように構成されている。移動部10は、第2移動部に相当する。
【0026】
検査装置1は、制御部11を備えている。制御部11は、光源6、ステージ7、光検出部9、移動部10等を制御するものである。制御部11は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備え、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、所定の処理を実行する。
【0027】
検査装置1の検査対象について説明する。ここでは、トレンチ電極を備える縦型MOSトランジスタ等のパワーデバイスを検査対象とし、トレンチ電極の変形等を検出する場合について説明する。
【0028】
図2に示すように、検査対象である半導体装置20は、Si等で構成された基板21と、基板21の表面に形成された表面電極22と、基板21の裏面に形成された裏面電極23とを備えている。
【0029】
また、半導体装置20は、基板21の表層部に形成されたトレンチ電極24と、トレンチ電極24の上部に形成された絶縁膜25等を備えている。半導体装置20は、トレンチ電極24に電圧を印加することでチャネルが形成され、表面電極22と裏面電極23との間に電流が流れる構成とされている。なお、半導体装置20は、半導体ウェハに複数形成された状態のものであってもよいし、チップ単位に分割されたものであってもよい。
【0030】
光検出部9の光軸を光源6の光軸に合わせるために用いられる試料について説明する。
図3に示すように、試料30は、Si等で構成された基板31と、基板31の表面に形成された表面電極32と、基板31の裏面に形成された裏面電極33とを備えている。
【0031】
基板31、表面電極32、裏面電極33は、半導体装置20の基板21、表面電極22、裏面電極23と同様の構成とされている。ただし、試料30では、光源6からの光の照射によって基板31に照射痕を形成するとともに、照射痕からの発光を光検出部9に入射させるために、表面電極32および裏面電極33は一部を残して除去されており、基板31の表面および裏面が露出している。例えば、表面電極32および裏面電極33は、内周部が除去され、外周部が除去されずに残されており、この外周部にステージ7から電圧が印加される。
【0032】
検査装置1による半導体装置20の検査方法について
図4~
図6を用いて説明する。なお、
図4~6では、ステージ7および制御部11の図示を省略している。
【0033】
まず、
図4に示すように、ステージ7上に試料30を載置する。そして、制御部11は、光源6を制御して、矢印A1で示すように試料30に集束イオンビームを照射することにより、試料30に照射痕を形成する。照射痕の直径は、例えば0.1μm未満とされる。多くの場合、この時点では、矢印A2で示す光検出部9の光軸は、光源6の光軸とずれている。
【0034】
続いて、
図5に示すように、制御部11は、ステージ7を制御して試料30に電圧を印加することにより、試料30に形成された照射痕を発光させ、該発光を光検出部9によって検出する。そして、制御部11は、移動部10を制御して、矢印A3で示すように光検出部9を移動させることにより、該発光した部分に光検出部9の光軸を合わせる。具体的には、制御部11は、該発光した部分が光検出部9の画角の中心で検出されるように、移動部10によって光検出部9を微動させ、該発光した部分と光検出部9の光軸とのずれを±0.1μm程度まで低減する。
【0035】
続いて、
図6に示すように、ステージ7上に半導体装置20を載置する。そして、制御部11は、ステージ7を制御して半導体装置20に電圧を印加することにより、半導体装置20の不良箇所を発光させる。なお、発光を検出するために、裏面電極23の一部は除去されており、基板21の裏面の一部が露出している。
【0036】
その後、制御部11は、ステージ7を制御して半導体装置20を移動させることにより、該発光した部分を光検出部9の光軸に合わせる。具体的には、制御部11は、該発光した部分が光検出部9の画角の中心で検出されるように、ステージ7によって半導体装置20を微動させ、該発光した部分と光検出部9の光軸とのずれを±0.1μm程度まで低減する。
【0037】
このように半導体装置20の発光した部分を光検出部9の光軸に合わせることで、半導体装置20の不良箇所が光源6の光軸に合わせられる。そして、半導体装置20のうち光源6の光軸に対応する箇所を切り出し、検査装置1の内部または外部に備えられた図示しない観察装置によって、切り出した箇所の断面を観察する。なお、光検出部9は熱的な振動、膨張などによって微動するため、試料30を用いた光検出部9の光軸の調整は、検査の度に行われる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、光検出部9を移動させて試料30の照射痕に光検出部9の光軸を合わせ、半導体装置20を移動させて発光している部分を光検出部9の光軸に合わせる。これにより、光源6の光軸に対して、不良箇所を高精度に位置合わせすることができ、不良箇所の位置を高精度に検出することができる。これにより、不良箇所を精度よく切り出して観察することが可能となる。
【0039】
また、検査対象である半導体装置20には集束イオンビームによる照射痕の形成を行わないので、照射痕の形成による特性変化を抑制することができる。また、半導体装置20に特徴的なパターンがない場合にも、不良箇所を検出することができる。
【0040】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0041】
第1室4に走査型透過電子顕微鏡を配置し、この電子顕微鏡によって不良箇所を観察してもよい。
【0042】
光検出部9をレーザ顕微鏡で構成してもよい。半導体装置20の撮像画像において、変形したトレンチ等の不良箇所は光が散乱して黒く写るため、不良の種類に応じた色パターンを作成しておき、この色パターンと撮像画像とを照合することにより不良の種類を推定してもよい。
【符号の説明】
【0043】
6 光源
7 ステージ
9 光検出部
10 移動部
20 半導体装置
30 試料