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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056849
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】鉄骨柱の露出型柱脚構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20230413BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230413BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/58 511F
E04B1/58 511H
E02D27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166297
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亨
(72)【発明者】
【氏名】村田 学
(72)【発明者】
【氏名】山下 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 萌
(72)【発明者】
【氏名】萩野 毅
(72)【発明者】
【氏名】眞邉 寛人
(72)【発明者】
【氏名】小高 弘慎
【テーマコード(参考)】
2D046
2E125
【Fターム(参考)】
2D046AA17
2E125AA03
2E125AA70
2E125AB01
2E125AB15
2E125AC15
2E125AC16
2E125AF01
2E125AG03
2E125AG10
2E125AG41
2E125BA02
2E125BA42
2E125BB02
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF03
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】鉄骨柱の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体に孕み出しが生じることを抑止することが可能で、コンクリートの損傷やアンカーボルトの定着力の低下を防止することが可能な鉄骨柱の露出型柱脚構造を提供する。
【解決手段】柱型コンクリート体2上に、当該柱型コンクリート体に埋設したアンカーボルト8を介して、鉄骨柱1の柱脚部1aを設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、柱型コンクリート体は、基礎梁3との接合側面2aと、基礎梁が接合されない非接合側面2bを有し、柱型コンクリート体の角部2eに配設されるアンカーボルトを除き、接合側面側に配設される接合側アンカーボルト8cと、非接合側面側に配設される非接合側アンカーボルト8tとの間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、非接合側アンカーボルトが柱型コンクリート体の非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用板状材12を設けた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱型コンクリート体上に、該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、
上記柱型コンクリート体の角部に配設されるアンカーボルトを除き、該柱型コンクリート体を横断する方向で互いに向かい合うアンカーボルト同士の間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、該柱型コンクリート体を横断する方向で、一方側のアンカーボルトに作用する力を他方側のアンカーボルトへ伝達して支持させて、該一方側のアンカーボルトが該柱型コンクリート体の外方へ向かって変形することを防止する変形防止用板状材を設けたことを特徴とする鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項2】
柱型コンクリート体上に、該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、
上記柱型コンクリート体は、平断面四角形状であり、
上記柱型コンクリート体の平断面四角形状のいずれかの一辺に沿って配設される複数の一方側のアンカーボルトの、少なくともいずれかの該一方側のアンカーボルトと、該いずれかの一辺と向かい合う他辺に沿って配設される複数の他方側のアンカーボルトの、少なくともいずれかの該他方側のアンカーボルトとの間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、該柱型コンクリート体を横断する方向で、該一方側のアンカーボルトに作用する力を該他方側のアンカーボルトへ伝達して支持させて、該一方側のアンカーボルトが該柱型コンクリート体の外方へ向かって変形することを防止する変形防止用板状材を設けたことを特徴とする鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項3】
前記変形防止用板状材に代えて、前記一方側のアンカーボルトと前記他方側のアンカーボルトとの間に周回され、該一方側のアンカーボルトに作用する力を該他方側のアンカーボルトへ伝達して支持させて、該一方側のアンカーボルトが前記柱型コンクリート体の外方へ向かって変形することを防止する変形防止用ループ状鉄筋が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項4】
基礎梁がいずれかの方向から側面に接合される柱型コンクリート体上に、該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、
上記柱型コンクリート体は、上記基礎梁の延設方向で、該基礎梁が接合される接合側面と、該基礎梁が接合されない非接合側面とを有し、
上記柱型コンクリート体の角部に配設されるアンカーボルトを除き、上記接合側面側に配設される接合側アンカーボルトと、上記非接合側面側に配設される非接合側アンカーボルトとの間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、該非接合側アンカーボルトに作用する力を該接合側アンカーボルトへ伝達して支持させて、該非接合側アンカーボルトが該柱型コンクリート体の該非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用板状材を設けたことを特徴とする鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項5】
基礎梁がいずれかの方向から側面に接合される柱型コンクリート体上に、該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、
上記柱型コンクリート体は、上記基礎梁が接合される接合側面と、該基礎梁が接合されない非接合側面とを有し、
上記接合側面側に配設される複数の接合側アンカーボルトの、少なくともいずれかの該接合側アンカーボルトと、上記非接合側面側に配設される複数の非接合側アンカーボルトの、少なくともいずれかの該非接合側アンカーボルトとの間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、該非接合側アンカーボルトに作用する力を該接合側アンカーボルトへ伝達して支持させて、該非接合側アンカーボルトが該柱型コンクリート体の該非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用板状材を設けたことを特徴とする鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項6】
前記変形防止用板状材は、前記挿通穴に挿通された前記アンカーボルトの、前記柱型コンクリート体への定着部となる下端部分に設けられることを特徴とする請求項4または5に記載の鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項7】
前記変形防止用板状材は、前記接合側アンカーボルトと前記非接合側アンカーボルトとを連結することを特徴とする請求項4~6いずれかの項に記載の鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項8】
前記変形防止用板状材は、前記非接合側アンカーボルトから前記接合側アンカーボルトにわたる環状形態に形成されることを特徴とする請求項4~7いずれかの項に記載の鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項9】
前記変形防止用板状材には、互いに隣接する前記アンカーボルト間に周回されるループ状鉄筋が重ね合わされることを特徴とする請求項4~8いずれかの項に記載の鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項10】
前記変形防止用板状材に代えて、前記非接合側アンカーボルトと前記接合側アンカーボルトとの間に周回され、該非接合側アンカーボルトに作用する力を該接合側アンカーボルトへ伝達して支持させて、該非接合側アンカーボルトが前記柱型コンクリート体の前記非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用ループ状鉄筋が設けられることを特徴とする請求項4または5に記載の鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【請求項11】
前記変形防止用板状材に代えて、前記非接合側アンカーボルト及び前記接合側アンカーボルトのいずれか一方が挿通される挿通穴を有する板材と該非接合側アンカーボルト及び該接合側アンカーボルトのいずれか他方を係止するフック状鉄筋とを接合して形成され、該非接合側アンカーボルトに作用する力を該接合側アンカーボルトへ伝達して支持させて、該非接合側アンカーボルトが前記柱型コンクリート体の前記非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用金物が設けられることを特徴とする請求項4または5に記載の鉄骨柱の露出型柱脚構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体に孕み出しが生じることを抑止することが可能で、コンクリートの損傷やアンカーボルトの定着力の低下を防止することが可能な鉄骨柱の露出型柱脚構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱型コンクリート体上に、当該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造としては、例えば特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1の「鉄骨部を有する柱の柱脚アンカー構造およびその施工方法」は、アンカーボルトのコンクリートへの定着耐力を確保しつつ、鉄筋の使用量を削減することが可能な、鉄骨部を有する柱の柱脚アンカー構造およびその施工方法を提供することを課題とし、ベースプレートの四隅近傍には、貫通孔が設けられ、それぞれアンカーボルトが挿通されてナットによって固定される。アンカーボルトの下端近傍には定着部が設けられる。定着部の上部には、フープ状鉄筋が配置される。フープ状鉄筋は、例えば略矩形の環状の閉鎖断面形状の部材であり、アンカーボルトに対して略直交するように配置される。フープ状鉄筋は、四隅に配置されたすべてのアンカーボルトを囲むように配置される。鉄骨部を有する柱の柱脚アンカー構造のアンカーボルトの周囲には、鉛直方向および水平方向に鉄筋が配置される。鉄筋、アンカーボルト、定着部、フープ状鉄筋等がコンクリートによって埋設されて固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-53563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄骨柱の露出型柱脚構造では、地震力等により鉄骨柱に曲げ変形が発生し、その柱脚部に曲げモーメントが作用する。
【0006】
この曲げモーメントで圧縮を受ける柱圧縮側に配設されているアンカーボルトには引張力は作用せず、当該曲げモーメントで引っ張りを受ける柱引張側に配設されているアンカーボルトには引張力が作用する。
【0007】
引張力が作用するアンカーボルトには、さらに、鉄骨柱の曲げ変形によって、水平方向横向きに押し出す力が加わって変形が生じ、この変形によって、アンカーボルトを埋設している柱型コンクリート体が外方へ向けて押し出され、コンクリートが膨らむように孕み出しが生じて、柱型コンクリート体の損傷や、アンカーボルトの定着力の低下が起こる。
【0008】
このような問題に対しては、強度を高めるために、柱型コンクリート体に埋設する鉄筋量を増やしたり、アンカーボルトの変形を押さえ込めるように、柱型コンクリート体のサイズを大きくすることなどが考えられる。
【0009】
しかしながら、鉄筋量を増やすと、配筋が煩雑になり、施工性が低下してしまう。柱型コンクリート体のサイズを大きくすると、コストが嵩んでしまうと共に、また、敷地面積の関係から、鉄骨柱が内方側となり、建物面積が制限されてしまう。
【0010】
上記背景技術では、すべてのアンカーボルトを囲むように周回するフープ状鉄筋を、これらアンカーボルトの下端近傍に配置している。
【0011】
しかしながら、背景技術のフープ状鉄筋は、すべてのアンカーボルトの外回りに掛け回されているだけであり、矩形状の柱型コンクリート体の四方に対し、等方的に設けられているため、引張側のアンカーボルトに生じる変形を効果的かつ十分に抑制することはできず、引用側のアンカーボルトによる柱型コンクリート体のコンクリートの押し出しを十分に防止することはできないと考えられる。
【0012】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、鉄骨柱の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体に孕み出しが生じることを抑止することが可能で、コンクリートの損傷やアンカーボルトの定着力の低下を防止することが可能な鉄骨柱の露出型柱脚構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造は、柱型コンクリート体上に、該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、上記柱型コンクリート体の角部に配設されるアンカーボルトを除き、該柱型コンクリート体を横断する方向で互いに向かい合うアンカーボルト同士の間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、該柱型コンクリート体を横断する方向で、一方側のアンカーボルトに作用する力を他方側のアンカーボルトへ伝達して支持させて、該一方側のアンカーボルトが該柱型コンクリート体の外方へ向かって変形することを防止する変形防止用板状材を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造は、柱型コンクリート体上に、該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、上記柱型コンクリート体は、平断面四角形状であり、上記柱型コンクリート体の平断面四角形状のいずれかの一辺に沿って配設される複数の一方側のアンカーボルトの、少なくともいずれかの該一方側のアンカーボルトと、該いずれかの一辺と向かい合う他辺に沿って配設される複数の他方側のアンカーボルトの、少なくともいずれかの該他方側のアンカーボルトとの間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、該柱型コンクリート体を横断する方向で、該一方側のアンカーボルトに作用する力を該他方側のアンカーボルトへ伝達して支持させて、該一方側のアンカーボルトが該柱型コンクリート体の外方へ向かって変形することを防止する変形防止用板状材を設けたことを特徴とする。
【0015】
前記変形防止用板状材に代えて、前記一方側のアンカーボルトと前記他方側のアンカーボルトとの間に周回され、該一方側のアンカーボルトに作用する力を該他方側のアンカーボルトへ伝達して支持させて、該一方側のアンカーボルトが前記柱型コンクリート体の外方へ向かって変形することを防止する変形防止用ループ状鉄筋が設けられることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造は、基礎梁がいずれかの方向から側面に接合される柱型コンクリート体上に、該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、上記柱型コンクリート体は、上記基礎梁の延設方向で、該基礎梁が接合される接合側面と、該基礎梁が接合されない非接合側面とを有し、上記柱型コンクリート体の角部に配設されるアンカーボルトを除き、上記接合側面側に配設される接合側アンカーボルトと、上記非接合側面側に配設される非接合側アンカーボルトとの間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、該非接合側アンカーボルトに作用する力を該接合側アンカーボルトへ伝達して支持させて、該非接合側アンカーボルトが該柱型コンクリート体の該非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用板状材を設けたことを特徴とする。
【0017】
本発明にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造は、基礎梁がいずれかの方向から側面に接合される柱型コンクリート体上に、該柱型コンクリート体に埋設した複数のアンカーボルトを介して、鉄骨柱の柱脚部を設置固定するようにした鉄骨柱の露出型柱脚構造であって、上記柱型コンクリート体は、上記基礎梁が接合される接合側面と、該基礎梁が接合されない非接合側面とを有し、上記接合側面側に配設される複数の接合側アンカーボルトの、少なくともいずれかの該接合側アンカーボルトと、上記非接合側面側に配設される複数の非接合側アンカーボルトの、少なくともいずれかの該非接合側アンカーボルトとの間に、これらアンカーボルトが挿通される挿通穴を有し、該非接合側アンカーボルトに作用する力を該接合側アンカーボルトへ伝達して支持させて、該非接合側アンカーボルトが該柱型コンクリート体の該非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用板状材を設けたことを特徴とする。
【0018】
前記変形防止用板状材は、前記挿通穴に挿通された前記アンカーボルトの、前記柱型コンクリート体への定着部となる下端部分に設けられることを特徴とする。
【0019】
前記変形防止用板状材は、前記接合側アンカーボルトと前記非接合側アンカーボルトとを連結することを特徴とする。
【0020】
前記変形防止用板状材は、前記非接合側アンカーボルトから前記接合側アンカーボルトにわたる環状形態に形成されることを特徴とする。
【0021】
前記変形防止用板状材には、互いに隣接する前記アンカーボルト間に周回されるループ状鉄筋が重ね合わされることを特徴とする。
【0022】
前記変形防止用板状材に代えて、前記非接合側アンカーボルトと前記接合側アンカーボルトとの間に周回され、該非接合側アンカーボルトに作用する力を該接合側アンカーボルトへ伝達して支持させて、該非接合側アンカーボルトが前記柱型コンクリート体の前記非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用ループ状鉄筋が設けられることを特徴とする。
【0023】
前記変形防止用板状材に代えて、前記非接合側アンカーボルト及び前記接合側アンカーボルトのいずれか一方が挿通される挿通穴を有する板材と該非接合側アンカーボルト及び該接合側アンカーボルトのいずれか他方を係止するフック状鉄筋とを接合して形成され、該非接合側アンカーボルトに作用する力を該接合側アンカーボルトへ伝達して支持させて、該非接合側アンカーボルトが前記柱型コンクリート体の前記非接合側面に向かって変形することを防止する変形防止用金物が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造にあっては、鉄骨柱の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体に孕み出しが生じることを抑止することができ、コンクリートの損傷やアンカーボルトの定着力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る鉄骨柱の露出型柱脚構造の好適な一実施形態の施工手順の第1段階を説明する説明図である。
図2図1に示した施工手順の第1段階に続く第2段階を説明する説明図である。
図3図1及び図2に示した施工手順を経て構築された鉄骨柱の露出型柱脚構造を説明する説明図である。
図4】本発明に係る鉄骨柱の露出型柱脚構造が適用される柱型コンクリート体と基礎梁との接合関係の例を説明する説明図である。
図5図3に示した鉄骨柱の露出型柱脚構造で、支持支柱により変形防止用板状材を支持する様子を示す斜視図である。
図6】鉄骨柱の曲げ変形に起因する柱型コンクリート体のコンクリートの孕み出しの様子を説明する説明図である。
図7図3に示した鉄骨柱の露出型柱脚構造に備えられる変形防止用板状材の各種変形例及び変形防止用板状材に代えて適用される変形防止用ループ状鉄筋と変形防止用金物を説明する説明図である。
図8】鉄骨柱の露出型柱脚構造に適用されるアンカーボルトの各種配列例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1図3には、本実施形態に係る鉄骨柱の露出型柱脚構造が施工手順に沿って示されている。
【0027】
本実施形態では、鉄骨柱1を支持する柱型コンクリート体2が平断面四角形状であって、当該柱型コンクリート体2の4つの側面のうち、1つの側面2aに対して一方向から基礎梁3が接合される場合が示されている。
【0028】
仮想線は、コンクリートCの打設が完了した柱型コンクリート体2と基礎梁3の施工完了状態を示す。
【0029】
図1に示すように、まず、鉄骨柱1の設置位置には、四角形状に枠組みされ、コンクリート地盤面Gに設置されるベースフレーム4と、ベースフレーム4に、その4隅から立ち上げて設けられる4本の支持支柱5とからなる据え付け架台6が設けられる。
【0030】
図1(A)は、コンクリート地盤面Gに設置した据え付け架台6の側面図、図1(B)は、据え付け架台6の平面図である。
【0031】
据え付け架台6には、図2に示すように、その上方から、アンカーボルト組立体7が吊り降ろされ、このアンカーボルト組立体7は、据え付け架台6の支持支柱5上に設置される。
【0032】
アンカーボルト組立体7は、複数本のアンカーボルト8と、これらアンカーボルト8の柱型コンクリート体2内への埋設位置に対応させて貫通穴が複数形成され、これら貫通穴に貫通させたアンカーボルト8それぞれの上端部分にナット9で締結されて、複数のアンカーボルト8の埋設位置を一括して位置決めするテンプレート10と、これらアンカーボルト8の下端部分8xにナット11で締結して設けられる変形防止用板状材12とから構成される。
【0033】
図2(A)は、アンカーボルト組立体7が吊り降ろされる様子を示す側面図、図2(B)は、図2(A)中、P-P線矢視断面図である。
【0034】
アンカーボルト組立体7が据え付け架台6上に設置されると、その後、図3に示すように、アンカーボルト8の上端部分が突出するようにして、柱型コンクリート体2から基礎梁3にわたり、コンクリートCが打設され、基礎梁3と柱型コンクリート体2が一体的に構築される。
【0035】
コンクリートCの打設前、柱型コンクリート体2内には、柱型コンクリート体2の周方向に等間隔を隔てて配筋される複数の立ち上がり筋13aと、立ち上がり筋13aの高さ方向に多段に等間隔を隔てて、かつ、これら立ち上がり筋13aをそれらの外側から包囲して配筋される複数のフープ筋13bとからなる鉄筋籠13が据え付け架台6及びアンカーボルト組立体7を包囲して建て込まれる。
【0036】
また、基礎梁3の梁主筋の折り曲げ端部が、柱型コンクリート体2内へ延設される。これら梁主筋及び鉄筋籠13が配筋された後に、型枠が組まれ、基礎梁3と柱型コンクリート体2のコンクリートCが打設される。
【0037】
他方、柱型コンクリート体2上に設置される鉄骨柱1には、柱脚部1aの下端に、四角形状のベースプレート14が溶接接合される。ベースプレート14には、アンカーボルト8の配列に対応させて、ボルト挿入穴が複数形成される。
【0038】
最後に、柱型コンクリート体2上に突出するアンカーボルト8からテンプレート10が取り去られ、柱型コンクリート体2上にレベルモルタル15が施工され、ベースプレート14のボルト挿入穴にアンカーボルト8を通して、レベルモルタル15上に鉄骨柱1が載置される。
【0039】
そして、ベースプレート14上から、すべてのアンカーボルト8にナット16が締結されることにより、柱型コンクリート体2上に、当該柱型コンクリート体2内に埋設した複数のアンカーボルト8を介して、鉄骨柱1の柱脚部1aが設置固定される。
【0040】
図3(A)は、構築された鉄骨柱1の露出型柱脚構造を示す側断面図、図3(B)は、図3(A)中、Q-Q線矢視断面図である。
【0041】
本実施形態では、アンカーボルト8は、平断面四角形状の柱型コンクリート体2の4つの各側面2a~2dに面して、2本ずつ8本が配設されている。
【0042】
柱型コンクリート体2には、上述したように、4つの側面2a~2dのうちの1つの側面2aに対し、一方向から基礎梁3が接合され、従って、柱型コンクリート体2は、当該1つの基礎梁3の延設方向で、基礎梁3が接合される接合側面2aと、基礎梁3が接合されない非接合側面2bを有している。
【0043】
本実施形態に係る鉄骨柱の露出型柱脚構造にあっては、柱型コンクリート体2内において、接合側面2a側に配設される4本の接合側アンカーボルト8cと、非接合側面2b側に配設される2本の非接合側アンカーボルト8tとが設けられていて、これら接合側アンカーボルト8cと非接合側アンカーボルト8tとの間に、接合側アンカーボルト8cと非接合側アンカーボルト8tとを連結して、上述の変形防止用板状材12が設けられる。
【0044】
ここで、図4(A)に示すように、アンカーボルト8との関係で接合側面2a側とは、鉄骨柱1に曲げモーメントが生じたときに圧縮力が作用する、柱型コンクリート体2における基礎梁3側の半分の圧縮領域Sをいい、この圧縮領域Sに配設されるアンカーボルト8を接合側アンカーボルト8cという。
【0045】
また、同様に、アンカーボルト8との関係で非接合側面2b側とは、鉄骨柱1に曲げモーメントが生じてアンカーボルト8に引張力(引抜力)が作用すると共に、鉄骨柱1の曲げ変形に起因してコンクリートCが非接合側面2b側へ押し出される押し出し領域Tをいい、この押し出し領域Tに配設されるアンカーボルト8を非接合側アンカーボルト8tという。
【0046】
図2及び図3の図示例では、変形防止用板状材12は、非接合側アンカーボルト8tから接合側アンカーボルト8cにわたる環状形態で形成され、柱型コンクリート体2内に設けられる。
【0047】
図示例では、アンカーボルト8は、平断面四角形状の柱型コンクリート体2の角部2eに対しては設けられていない。
【0048】
アンカーボルト8が角部2eに対して設けられる場合には、それらが非接合側面2b側や接合側面2a側に配設されているアンカーボルト8であっても、これら角部2eのアンカーボルト8を除いて、変形防止用板状材12が形成され、柱型コンクリート体2内に設けられる。
【0049】
変形防止用板状材12は、非接合側アンカーボルト8tと接合側アンカーボルト8cとの間で力の伝達を行うもので、その形状は問われない。
【0050】
図示例では、変形防止用板状材12は、柱型コンクリート体2の4つの各側面2a~2dに沿って配置される4枚の長尺プレート材16と、柱型コンクリート体2の4つの各角部2eに対する位置で、2枚の長尺プレート材16の隣り合う端部間に掛け渡してこれら端部に重ねて配置され、長尺プレート材16同士をつないで連結する4枚の平板状の短尺プレート材17とが、柱型コンクリート体2の周方向に一連に溶接接合されて、枠体状に構成されている。
【0051】
各長尺プレート材16には、アンカーボルト8の配設位置に、当該アンカーボルト8の下端部分8xが挿通される挿通穴16aが形成される(図5参照)。
【0052】
アンカーボルト8は、挿通穴16aに挿通され、長尺プレート材16の上下からダブルナット11で当該長尺プレート材16に締結固定され、これにより、変形防止用板状材12と結合される。
【0053】
従って、アンカーボルト8は、これが挿通される挿通穴16aを介して、その周方向全周が長尺プレート材16によって包囲される。
【0054】
図示例では、短尺プレート材17が長尺プレート材16と重なる位置にアンカーボルト8が配設されるため、挿通穴16aは、重ねられた長尺プレート材16及び短尺プレート材17に一連に貫通形成され、挿通穴16aに挿通されるアンカーボルト8は、これら長尺プレート材16及び短尺プレート材17に対し、上下からダブルナット11で締結固定されている。
【0055】
変形防止用板状材12が取り付けられるアンカーボルト8の下端部分8xは、柱型コンクリート体2への定着部であり、従って、変形防止用板状材12は、アンカーボルト8の定着部に位置付けて設けられ、定着金物として、コンクリートCからのアンカーボルト8の引き抜きに抵抗することができる。
【0056】
長尺プレート材16は、コンクリートCへの定着を確保する水平方向の横面16bと、横面16bを補剛して長尺プレート材16の強度を増強する上下方向の縦面16cを有する断面L字状に形成される。
【0057】
縦面16cは、横面16bに対して上向きに形成しても、下向きに形成してもよいが、上向きにすれば、長尺プレート材16周りへのコンクリートCの充填性が向上される。
【0058】
この長尺プレート材16の縦面16cは、当該縦面16cよりもアンカーボルト8の方が柱型コンクリート体2の内方に位置するように、アンカーボルト8よりも外側に位置付けられる。長尺プレート材16は、必ずしも断面L字状に限らず、平板状であってもよい。
【0059】
アンカーボルト組立体7に組み込まれる変形防止用板状材12は、図5に示すように、据え付け架台6上への設置時、短尺プレート材17が支持支柱5の上端に当接され、これにより、アンカー組立体7は、据え付け架台6上に載置される。
【0060】
変形防止用板状材12において、非接合側アンカーボルト8tを非接合側面2bへ押し出す力が作用するとき、当該押し出す力は、非接合側アンカーボルト8tを包囲する挿通穴16aを介して変形防止用板状材12の長尺プレート材16に受け止められる。
【0061】
長尺プレート材16で受け止められた力は、環状形態の変形防止用板状材12を周方向に辿り、反対側の接合側面2aにおいて、長尺プレート材16の挿通穴16aを介して接合側アンカーボルト8cに伝達され、この接合側アンカーボルト8cによって支持される。
【0062】
本実施形態に係る鉄骨柱の露出型柱脚構造の作用について説明する。図6は、鉄骨柱1の曲げ変形に起因する柱型コンクリート体2のコンクリートCの孕み出しの様子を説明する説明図であって、図6(A)は、柱脚部1a周辺の側断面図、図6(B)は、その平面図である。
【0063】
図示するように、地震力等により鉄骨柱1に曲げ変形が発生すると、その柱脚部1aに曲げモーメントが作用する。
【0064】
この曲げモーメントで圧縮を受ける圧縮領域Sに配設されているアンカーボルト8cには圧縮力が作用し、当該曲げモーメントで引っ張りを受ける押し出し領域Tに配設されているアンカーボルト8tには引張引抜力が作用する。
【0065】
基礎梁3が接合されない非接合側面2bを有する柱型コンクリート体2では、非接合側アンカーボルト8tに引抜力が作用すると、この非接合側アンカーボルト8tには、さらに、鉄骨柱1の曲げ変形によって、水平方向横向きに押し出す力が加わって変形が生じる。
【0066】
非接合側面2bでは、非接合側アンカーボルト8tのこの変形により、コンクリートCが外方へ向けて押し出され、当該コンクリートCが外側へ膨らむように孕み出しが生じて、柱型コンクリート体2の損傷や、アンカーボルト8の定着力の低下が生じる。
【0067】
なお、図示と反対向きの曲げモーメントが発生し、接合側面2a側の接合側アンカーボルト8cに水平横向きに押し出す力が加わっても、基礎梁3が接合されていることにより、当該接合側アンカーボルト8cの変形が抑止され、コンクリートCの孕み出しが防止される。
【0068】
本実施形態にあっては、変形防止用板状材12は、非接合側アンカーボルト8tに作用する力を接合側アンカーボルト8cに伝達支持させることができ、非接合側アンカーボルト8tが柱型コンクリート体2の非接合側面2bに向かって変形するのを防止することができる。
【0069】
すなわち、鉄骨柱1の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体2に孕み出しが生じることを抑止することができ、これにより、柱型コンクリート体2におけるコンクリートCの損傷やアンカーボルト8の定着力の低下を防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、変形防止用板状材12を設けるだけで、非接合側アンカーボルト8tの変形を抑え込むことができるので、柱型コンクリート体2に埋設する鉄筋量を増やしたり、柱型コンクリート体2のサイズを大きくする必要が無く、施工性の低下や、コストアップを防止できる。
【0071】
また、本実施形態では、背景技術とは異なり、アンカーボルト8を挿通穴16aで包囲する長尺プレート材16を備えた変形防止用板状材12によってアンカーボルト8に作用する力を伝達するようにしたので、非接合側アンカーボルト8tに生じる変形を効果的かつ十分に抑制でき、非接合側アンカーボルト8tの変形によるコンクリートCの押し出しを確実に防止することができる。
【0072】
また、鉄骨柱1の曲げ変形に起因する、非接合側アンカーボルト8tを押し出す力の影響は、柱型コンクリート体2の角部2eに対して配置されるアンカーボルト8では小さいため、変形防止用板状材12を角部2eのアンカーボルト8に設けると、却って柱型コンクリート体2の角部2eに損傷を生じさせてしまうおそれがあるため、変形防止用板状材12を、角部2eを除くアンカーボルト8に設けるようにしていて、柱型コンクリート体2が意図せずに損傷を受けることを防止することができる。
【0073】
同様な観点から、柱型コンクリート体2の角部2eに位置する変形防止用板状材12の短尺プレート材17は、平板状に形成されていて、これにより、柱型コンクリート体2の角部2eに発生する応力を低減することができる。
【0074】
長尺プレート材16には、縦面16cを形成しているので、非接合側アンカーボルト8tに作用する押し出し力を縦面16cで分散させることができる。
【0075】
縦面16cがない場合には、非接合側アンカーボルト8tに作用する押し出し力がコンクリートCに対し局所的に集中的に作用して高い応力が発生し、コンクリートCに損傷が発生しやすいが、縦面16cによって応力を小さく分散して、コンクリートCの損傷を防止できる。
【0076】
変形防止用板状材12は、ほぼ平坦であり、かつ中央を封鎖しない環状形態であるので、周囲の立ち上がり筋13aやフープ筋13bと干渉せず、また、基礎梁3の梁主筋の折り曲げ端部や、杭頭接合部の鉄筋と干渉することもなく、良好な施工性を確保することができる。
【0077】
図7には、変形防止用板状材12の各種変形例及び変形防止用板状材12に代えて適用される変形防止用ループ状鉄筋18と変形防止用金物19が示されている。
【0078】
図7(A)では、変形防止用板状材12を、直線状の平板材20とし、平板材20の長さ方向両端の挿通穴20aに、1本の接合側アンカーボルト8c及び1本の非接合側アンカーボルト8tをそれぞれ挿通し、これらアンカーボルト8c,8tの間に設けた当該平板材20でこれらアンカーボルト8c,8tを連結して力を伝達するようにしている。
【0079】
図7(B)では、上記変形防止用板状材12にループ状鉄筋21を組み合わせるようにしている。具体的には、柱型コンクリート体2の各側面2a~2dで互いに隣接関係にある、すなわち1枚の長尺プレート材16で連結されるアンカーボルト8間に、当該長尺プレート材16に重ねてこれらアンカーボルト8に周回されるループ状鉄筋21を設けている。ループ状鉄筋21により、強度を増強して力の伝達を行うことができる。
【0080】
図7(C)では、変形防止用板状材12に代えて、変形防止用ループ状鉄筋18を適用した例である。
【0081】
変形防止用ループ状鉄筋18は、1本の非接合側アンカーボルト8tと1本の接合側アンカーボルト8cとの間に周回され、非接合側アンカーボルト8tに作用する力を接合側アンカーボルト8cへ伝達して支持させて、非接合側アンカーボルト8tが柱型コンクリート体2の非接合側面2bに向かって変形するのを防止するようにしている。
【0082】
図7(D)では、図7(C)に示した変形防止用ループ状鉄筋18が、複数本の非接合側アンカーボルト8tと複数本の接合側アンカーボルト8cとの間で周回され、変形防止用ループ状鉄筋18により、非接合側アンカーボルト8tが柱型コンクリート体2の非接合側面2bに向かって変形するのを接合側アンカーボルト8cで防止するようにしている。
【0083】
特に、変形防止用ループ状鉄筋18を用いる場合、複数本の非接合側アンカーボルト8tと複数本の接合側アンカーボルト8cとが、変形防止用ループ状鉄筋18の折曲げによる隅角に嵌まった状態で配置されることで、非接合側アンカーボルト8tに作用する力を、接合側アンカーボルト8cに伝達して支持させることができ、非接合側アンカーボルト8tが柱型コンクリート体2の非接合側2bに向かって変形することを防止できる。
【0084】
図7(E)では、変形防止用板状材12に代えて、変形防止用金物19を適用した例である。変形防止用金物19は、非接合側アンカーボルト8t及び接合側アンカーボルト8cのいずれか一方が挿通される挿通穴22aを有する板材22と非接合側アンカーボルト8t及び接合側アンカーボルト8cのいずれか他方を係止するフック状鉄筋23とを接合して形成される。
【0085】
変形防止用金物19は、非接合側アンカーボルト8tに作用する力を接合側アンカーボルト8cへ伝達して支持させて、非接合側アンカーボルト8tが柱型コンクリート体2の非接合側面2bに向かって変形するのを防止するようにしている。
【0086】
図7(F)では、図7(E)に示した変形防止用金物19の設置位置を変更している。上記板材22は、一般部のアンカーボルト8に設けられていて、この板材22は、アンカーボルト8tが挿通される挿通穴24aを有する力伝達用の連結板24を介して、非接合側アンカーボルト8tと連結されている。また、フック状鉄筋23は、接合側面2a側の接合側アンカーボルト8cを係止している。
【0087】
図7に示したいずれの例であっても、非接合側アンカーボルト8tと接合側アンカーボルト8cとを連結して力の伝達を行うようにしていて、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0088】
図8には、上記実施形態にかかる鉄骨柱の露出型柱脚構造に適用されるアンカーボルト8の配列例が示されている。
【0089】
図8(A)は、アンカーボルト8が8本、図8(B)は、アンカーボルト8が12本であって、柱型コンクリート体2の角部2eにもアンカーボルト8が配設される場合である。
【0090】
この場合は、図中、×印で示しているように、上記の変形防止用板状材12等は、角部2eに対して配置されるアンカーボルト8を除いて設けられる。
【0091】
鉄骨柱1の曲げ変形に起因して非接合側アンカーボルト8tに作用する押し出す力を接合側アンカーボルト8cに伝達させる際に、角部2eに、不必要な応力が発生することを避けるためである。
【0092】
図8(C)は、アンカーボルト8が8本、図8(D)は、アンカーボルト8が12本であって、柱型コンクリート体2の角部2eに対してはアンカーボルト8が配設されない場合であり、上記の変形防止用板状材12等は、接合側アンカーボルト8cと非接合側アンカーボルト8tとの間に差し渡したり、周回するようにして設けられる。これら配列例は一例であって、当該配列例に限定されないことはもちろんである。
【0093】
アンカーボルト8の配列が柱型コンクリート体2の角部2eを含むか否かを問わず、非接合側アンカーボルト8tと接合側アンカーボルト8cとを連結して力の伝達を行って、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0094】
すなわち、変形防止用板状材12や上記代替部材は、柱型コンクリート体2の角部2eにアンカーボルト8が配設される場合(図8(A),(B)参照)には、当該角部2eに配設されるアンカーボルト8を除いて、接合側面側に配設される接合側アンカーボルト8cと、非接合側面側に配設される非接合側アンカーボルト8tとの間に設ける態様で、また他方、柱型コンクリート体2の角部2eにアンカーボルト8が配設されない場合(図8(C),(D)参照)には、接合側面側に配設される複数の接合側アンカーボルト8cの、少なくともいずれかの接合側アンカーボルト8cと、非接合側面側に配設される複数の非接合側アンカーボルト8tの、少なくともいずれかの非接合側アンカーボルト8tとの間に設ける態様で、柱型コンクリート体2内に備えられる。
【0095】
図4には、柱型コンクリート体2と基礎梁3との接合関係の各種例が示されている。上述した図4(A)に示す構成のように、基礎梁3が柱型コンクリート体2の4つの側面2a~2dのうち、1つの側面2aに対して一方向から接合される場合だけでなく、図4(B)に示すように、基礎梁3が柱型コンクリート体2の4つの側面2a~2dのうち、直角関係にある2つの側面2a,2cに対して二方向から接合される場合や、図4(C)に示すように、基礎梁3が柱型コンクリート体2の4つの側面2a~2dのうち、1つの面2bを除く、3つの側面2a,2c,2dに対して三方向から接合される場合であっても、アンカーボルト8との関係で接合側面2a側として、鉄骨柱1の曲げ変形時に圧縮力を受ける圧縮領域Sを考慮し、この圧縮領域Sに配設されるアンカーボルト8を接合側アンカーボルト8cとし、また、非接合側面2b側として、鉄骨柱1に曲げモーメントが生じてアンカーボルト8に引張力(引抜力)が作用すると共に、鉄骨柱1の曲げ変形に起因してコンクリートCが非接合側面2b側へ押し出される押し出し領域Tを考慮し、この押し出し領域Tに配設されるアンカーボルト8を非接合側アンカーボルト8tとして、上記の変形防止用板状材12等を設ければ、鉄骨柱1の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体2に孕み出しが生じることを抑止することができ、これにより、柱型コンクリート体2におけるコンクリートCの損傷やアンカーボルト8の定着力の低下を防止して、上記実施形態と同様の作用効果を確保することができる。
【0096】
以上の説明は、柱型コンクリート体2に対する基礎梁3の接合関係に基づくけれども、図6で基礎梁3を破線で示しているように、基礎梁3が一切接合されない独立した柱型コンクリート体2であっても、地盤の状況によっては、鉄骨柱1の曲げ変形が特定の向きに偏って発生する場合がある。
【0097】
このような場合、柱型コンクリート体2の角部2eに配設されるアンカーボルト8を除き、柱型コンクリート体2を横断する方向で互いに向かい合うアンカーボルト8同士の間に、これらアンカーボルト8が挿通される挿通穴(例えば、上記挿通穴16a)を有し、柱型コンクリート体2を横断する方向で、非接合側アンカーボルト8tに相当する一方側のアンカーボルト8に作用する力を、接合側アンカーボルト8cに相当する他方側のアンカーボルト8へ伝達して支持させて、一方側のアンカーボルト8が柱型コンクリート体2の外方へ向かって変形するのを防止する上記の変形防止用板状材12を設けることで、基礎梁3が接合されない独立の柱型コンクリート体2であっても、鉄骨柱1の曲げ変形に起因して柱型コンクリート体2に孕み出しが生じることを抑止することができ、これにより、柱型コンクリート体2におけるコンクリートCの損傷やアンカーボルト8の定着力の低下を防止して、上記実施形態と同様の作用効果を確保することができる。
【0098】
また、基礎梁3が一切接合されない独立した当該柱型コンクリート体2に対しても、変形防止用板状材12に代えて、一方側のアンカーボルト8と他方側のアンカーボルト8との間に周回される変形防止用ループ状鉄筋18を設け、一方側のアンカーボルト8に作用する力を他方側のアンカーボルト8へ伝達して支持させて、一方側のアンカーボルト8が柱型コンクリート体2の外方へ向かって変形するのを防止するようにしても良いことはもちろんである。
【0099】
そして、変形防止用板状材12や上記代替部材は、独立した柱型コンクリート体2であっても、柱型コンクリート体2の角部2eにアンカーボルト8が配設される場合(図8(A),(B)参照)には、当該角部2eに配設されるアンカーボルト8を除いて、柱型コンクリート体2を横断する方向で互いに向かい合うアンカーボルト8同士の間に設ける態様で、また他方、柱型コンクリート体2が平断面四角形状であって、当該柱型コンクリート体2の角部2eにアンカーボルト8が配設されない場合(図8(C),(D)参照)には、柱型コンクリート体2の平断面四角形状のいずれかの一辺に沿って配設される複数の一方側のアンカーボルト8の、少なくともいずれかの一方側のアンカーボルト8(例えば、非接合側アンカーボルト8tに相当)と、いずれかの一辺と向かい合う他辺に沿って配設される複数の他方側のアンカーボルト8の、少なくともいずれかの他方側のアンカーボルト8(例えば、接合側アンカーボルト8cに相当)との間に設ける態様で、柱型コンクリート体2内に備えるようにすればよい。
【符号の説明】
【0100】
1 鉄骨柱
1a 柱脚部
2 柱型コンクリート体
2a,2c,2d 接合側面
2b 非接合側面
2e 角部
3 基礎梁
8 アンカーボルト
8c 接合側アンカーボルト
8t 非接合側アンカーボルト
8x 下端部分
12 変形防止用板状材
16a,20a,22a,24a 挿通穴
18 変形防止用ループ状鉄筋
19 変形防止用金物
21 ループ状鉄筋
22 板材
23 フック状鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8