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特開2023-56864陸屋根の防水構造、及び、陸屋根の防水施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056864
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】陸屋根の防水構造、及び、陸屋根の防水施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 7/00 20060101AFI20230413BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20230413BHJP
   H02S 20/24 20140101ALI20230413BHJP
   H02S 20/10 20140101ALI20230413BHJP
【FI】
E04D7/00 F
E04D13/18 ETD
H02S20/24
H02S20/10 T
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166328
(22)【出願日】2021-10-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】染川 貴亮
(72)【発明者】
【氏名】荒井 登己子
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108KK01
2E108LL01
2E108MM09
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】陸屋根上の既設の防水層上に太陽光パネルが接着固定された構造において、太陽光パネルを取り外すことなく使用を継続しつつ、陸屋根の防水性を確保する。
【解決手段】陸屋根の防水構造12は、建物の陸屋根14上に設けられた第一防水層18に接着固定された太陽光パネル22と、第一防水層18において太陽光パネル22が無い部分を覆うと共に、第一防水層18の反対側で太陽光パネル22の全周にわたって太陽光パネル22に重なっている第二防水層24と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の陸屋根上に設けられた第一防水層に接着固定された太陽光パネルと、
前記第一防水層において前記太陽光パネルが無い部分を覆うと共に、前記第一防水層の反対側で前記太陽光パネルの全周にわたって前記太陽光パネルに重なっている第二防水層と、
を有する陸屋根の防水構造。
【請求項2】
前記第二防水層は、前記太陽光パネルの平面視で前記太陽光パネルの受光範囲を避けた位置で前記太陽光パネルに重なっている請求項1に記載の陸屋根の防水構造。
【請求項3】
前記太陽光パネルと前記第二防水層とを密着させるパネル側密着層を有する請求項1又は請求項2に記載の陸屋根の防水構造。
【請求項4】
前記第一防水層と前記第二防水層とを密着させる屋根側密着層を有し、
前記パネル側密着層の材質が、前記屋根側密着層の材質と異なっている請求項3に記載の陸屋根の防水構造。
【請求項5】
建物の陸屋根上に設けられた第一防水層に接着固定された太陽光パネルに対し、前記第一防水層において前記太陽光パネルが無い部分を覆うと共に、前記第一防水層の反対側で前記太陽光パネルの全周にわたって前記太陽光パネルに重なるように第二防水層を設ける、陸屋根の防水施工方法。
【請求項6】
液状の防水層材料を前記第一防水層及び前記太陽光パネルに塗布して前記第二防水層を形成する請求項5に記載の陸屋根の防水施工方法。
【請求項7】
前記太陽光パネルの受光範囲を被覆材で被覆した状態で前記防水層材料の塗布を行う請求項6に記載の陸屋根の防水施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、陸屋根の防水構造、及び、陸屋根の防水施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建造物躯体上にシート接合板を介して施工されるシート防水型太陽光発電パネルセットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-28803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のパネルセットは、金属製基板上に、結晶系シリコン製光電池モジュールを介して透明な上面保護層が配置された状態で、基板及び上面保護層間に充填された密封剤によって光電池モジュールが密封された複数の太陽光発電パネルと、シート接合板に固定可能な防水性の連結シートとを備えている。
【0005】
陸屋根の既設の防水層上に太陽光パネルが接着固定された構造において、既設の防水層の防水性能の低下などにより、あらたに防水性を確保する必要が生じることがある。しかし、既設の防水層に接着固定された太陽光パネルを取り外すことは困難であり、取り外しできたとしても、太陽光パネルの破損を招くおそれがある。
【0006】
本願は上記事実を考慮し、陸屋根上の既設の防水層上に太陽光パネルが接着固定された構造において、太陽光パネルを取り外すことなく使用を継続しつつ、陸屋根の防水性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様の陸屋根の防水構造は、建物の陸屋根上に設けられた第一防水層に接着固定された太陽光パネルと、前記第一防水層において前記太陽光パネルが無い部分を覆うと共に、前記第一防水層の反対側で前記太陽光パネルの全周にわたって前記太陽光パネルに重なっている第二防水層と、を有する。
【0008】
すなわち、第二防水層は、陸屋根上に設けられた第一防水層において、パネルが無い部分を覆っている。さらに、第二防水層は、第一防水層の反対側で、太陽光パネルの全周にわたって太陽光パネルに重なっている。このように、第一防水層から太陽光パネルの全周にわたる第二防水層を設けることで、既設の防水層上に太陽光パネルが接着固定された構造において、陸屋根の防水性を確保できる。また、第二防水層は、太陽光パネルを取り外すことなく、第一防水層のパネルが無い部分及び太陽光パネルの全周に設置できる。
【0009】
第二態様では、前記第二防水層は、前記太陽光パネルの平面視で前記太陽光パネルの受光範囲を避けた位置で前記太陽光パネルに重なっている。
【0010】
太陽光パネルの受光範囲を第二防水層が覆わないので、太陽光パネルの発電量の低下を招かない。
【0011】
第三態様では、前記太陽光パネルと前記第二防水層とを密着させるパネル側密着層を有する。
【0012】
パネル側密着層により、太陽光パネルと第二防水層との密着状態を確実に維持できる。
【0013】
第四態様では、前記第一防水層と前記第二防水層とを密着させる屋根側密着層を有し、 前記パネル側密着層の材質が、前記屋根側密着層の材質と異なっている。
【0014】
パネル側密着層を、太陽光パネルと第二防水層との密着に適した材料とすることで、より確実にこれらを密着させることができる。
【0015】
第五態様の陸屋根の防水施工方法では、建物の陸屋根上に設けられた第一防水層に接着固定された太陽光パネルに対し、前記第一防水層において前記太陽光パネルが無い部分を覆うと共に、前記第一防水層の反対側で前記太陽光パネルの全周にわたって前記太陽光パネルに重なるように第二防水層を設ける。
【0016】
すなわち、第二防水層を、陸屋根上に設けられた第一防水層において、パネルが無い部分を覆うように設ける。さらに、第二防水層を、第一防水層の反対側で、太陽光パネルの全周にわたって太陽光パネルに重ねて設ける。このように、第一防水層から太陽光パネルの全周にわたる第二防水層を設けることで、既設の防水層上に太陽光パネルが接着固定された構造において、陸屋根の防水性を確保できる。また、第二防水層は、太陽光パネルを取り外すことなく、第一防水層のパネルが無い部分及び太陽光パネルの全周に設置できる。
【0017】
第六態様では、液状の防水層材料を前記第一防水層及び前記太陽光パネルに塗布して前記第二防水層を形成する。
【0018】
液状の防水層材料を塗布して第二防水層を形成するので、たとえば固体状の材料を用いる場合と比較して施工が容易である。
【0019】
第七態様では、前記太陽光パネルの受光範囲を被覆材で被覆した状態で前記防水層材料の塗布を行う。
【0020】
太陽光パネルの受光範囲に、液状の防水層材料を塗布してしまう事態を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本願では、陸屋根上の既設の防水層上に太陽光パネルが接着固定された構造において、太陽光パネルを取り外すことなく使用を継続しつつ、陸屋根の防水性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は第一実施形態の陸屋根の防水構造が適用された陸屋根を示す平面図である。
図2図2は第一実施形態の陸屋根の防水構造が適用された陸屋根を示す図1の2-2線断面図である。
図3図3は開示の技術に用いられる太陽光パネルを示す斜視図である。
図4図4は第一実施形態の陸屋根の防水構造が適用された陸屋根を部分的に拡大して示す断面図である。
図5図5は第一実施形態の陸屋根の防水構造が適用された陸屋根を部分的に拡大して示す分解断面図である。
図6図6は第一実施形態の陸屋根の防水構造が適用される前の段階の陸屋根を示す平面図である。
図7図7は第一実施形態の陸屋根の防水構造が適用される前の段階の陸屋根を示す図7の7-7線断面図である。
図8図8は第一実施形態の陸屋根の防水構造を適用される前の段階の陸屋根を部分的に拡大して示す断面図である。
図9図9は第一実施形態の陸屋根の防水施工方法を行う途中の状態で陸屋根を部分的に拡大して示す断面図である。
図10図10は第一実施形態の陸屋根の防水施工方法を行う途中の状態で陸屋根を部分的に拡大して示す断面図である。
図11図11は第一実施形態の陸屋根の防水施工方法を行う途中の状態で陸屋根を部分的に拡大して示す断面図である。
図12図12は第一実施形態の変形例の陸屋根の防水構造が適用された陸屋根を部分的に拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本願の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0024】
図1には、第一実施形態の陸屋根の防水構造12が適用された陸屋根14が平面視で示されている。図2には、第一実施形態の陸屋根の防水構造12が、図1の2-2線断面として示されている。
【0025】
図2に示すように、建物の陸屋根14には、陸屋根14を構成する屋上材16上に第一防水層18が設けられている。この第一防水層18は、たとえばウレタンや繊維強化樹脂等を用いて形成されている。第一防水層18により、陸屋根14上の水が建物に浸入することが防止されており、この水は図示しない排水溝に流れるようになっている。
【0026】
第一防水層18には、1つ又は複数(図1に示す例では3つ)太陽光パネル22が接着剤20を用いて接着固定されている。
【0027】
図3に示すように、太陽光パネル22は平面視(矢印A方向視)にて4辺(長辺及び短辺)を有する長方形である。太陽光パネル22の受光面には、4辺に沿って枠状の縁部22Fが設定されており、この縁部22Fの内側の部分が、実際に発電するために太陽光を受ける受光範囲22Eである。
【0028】
本願の開示の技術に係る太陽光パネル22では、長方形状の長辺及び短辺の長さは十分に確保すると共に、厚みを薄くすることで、軽量化が図られている。このように薄型化、軽量化が図られた太陽光パネル22は、陸屋根14への設置が容易である。また、このように薄型化、軽量化が図られた太陽光パネル22は、台座等を用いることなく、陸屋根14の第一防水層18上に接着剤20によって直接的に接着固定されることで、太陽光パネル22の形状が安定的に維持されるようになっている。
【0029】
図1に示すように、第一防水層18には、太陽光パネル22が設置された部分と、太陽光パネル22が設置されていない部分とが存在している。
【0030】
図4及び図5にも示すように、第一実施形態の陸屋根の防水構造12では、さらに第二防水層24を有している。第二防水層24は、第一防水層18において太陽光パネル22が無い部分を少なくとも覆っている。第二防水層24は、たとえばウレタンを用いて形成されている。
【0031】
第一防水層18と第二防水層24との間には、屋根側密着層26が配置されている。この屋根側密着層26により、第二防水層24が第一防水層18に対し密着されている。屋根側密着層26は、第一防水層18及び第二防水層24の材料を考慮して、これらの密着性を効果的に高めることが可能な材料が選択されている。
【0032】
第二防水層24は、第一防水層18の反対側(鉛直方向の上側)では、太陽光パネル22の4辺に対応し全周にわたって太陽光パネル22に重なっている。第二防水層24において太陽光パネル22と重なっている部分を重なり部分24Pとする。
【0033】
太陽光パネル22の縁部22Fと、第二防水層24の重なり部分24Pとの間には、パネル側密着層28が配置されている。このパネル側密着層28により、第二防水層24の重なり部分24Pが、太陽光パネル22の縁部22Fに対し密着されている。したがって、第二防水層24の重なり部分24Pは、パネル側密着層28を介して太陽光パネル22の縁部22Fと重なっている。換言すれば、パネル側密着層28も太陽光パネル22の一部を成していると言える。
【0034】
パネル側密着層28は、太陽光パネル22と第二防水層24との材料を考慮して、これらの密着性を効果的に高めることが可能な材料が選択されている。特に本実施形態では、パネル側密着層28の材質は、屋根側密着層26の材質と異なっている。
【0035】
本実施形態では、パネル側密着層28は、一例として、0.1kg/m以上で、且つ0.3kg/m以下の面密度で形成されている。これにより、パネル側密着層28を過度に厚くすることなく、太陽光パネル22と第二防水層24とを確実に密着できるようになっている。パネル側密着層28は、第二防水層24を太陽光パネル22に密着させる場合の下塗り層(プライマー)として機能している。
【0036】
図4に示すように、第二防水層24の重なり部分24Pは、所定の幅W1及び厚みT1を有している。ここでいう幅W1とは、太陽光パネル22の4辺のそれぞれで、各辺の延在方向と直交する断面(図4に示す断面)における重なり部分24Pの横方向の長さである。また、厚みT1は、同じく図4に示す断面で、太陽光パネル22の法線方向(矢印A方向)での重なり部分24Pの長さである。
【0037】
重なり部分24Pの幅W1の上限は、太陽光パネル22の縁部22Fの幅W2よりも短く設定されている。したがって、第二防水層24が、太陽光パネル22の受光範囲22Eに被ることはない。重なり部分24Pの幅W1の上限は、一例として53mmである。
【0038】
重なり部分24Pの幅W1の下限は、第二防水層24がパネル側密着層28を介して太陽光パネル22と確実に密着するための所定の長さ以上を確保できるよう設定されている。重なり部分24Pの幅W1の下限は、一例として10mmである。
【0039】
また、重なり部分24Pでは、厚みT1が厚すぎる場合、及び薄すぎる場合のいずれであっても、太陽光パネル22に対する密着性が低下する。重なり部分24Pの厚みT1の上限及び下限は、第二防水層24が太陽光パネル22との密着性を充分に確保できる範囲に設定されている。重なり部分24Pの厚みの範囲は、一例として1.0mm以上3.0mm以下である
【0040】
次に、第一実施形態の陸屋根の防水構造12を得るための陸屋根の防水施工方法、及び陸屋根の防水構造12の作用を説明する。
【0041】
図7及び図8に示すように、陸屋根14の第一防水層18上には、接着剤20によって、太陽光パネル22が接着固定されている。太陽光パネル22を第一防水層18に接着固定する時期は、たとえば建物の施工時であってもよいし、施工後の特定の時期であってもよいが、少なくとも、第二防水層24を設ける前段階で、第一防水層18上に接着剤20によって太陽光パネル22が接着固定されている状態となっている。
【0042】
特に、太陽光パネル22の寿命(発電能力を所定範囲に維持できる期間)は、第一防水層18の寿命(防水性能を維持できる期間)よりも長いことが多い。たとえば、太陽光パネル22の寿命が20年から30年程度であるのに対し、第一防水層18の寿命は10年程度である場合がある。第一防水層18の寿命は、実質的に陸屋根14の防水性の寿命である。このように、陸屋根14の防水性を確保又は維持する必要は生じているが、太陽光パネル22の寿命は残っている状態の陸屋根14に対し、第一実施形態の防水施工方法を施す。
【0043】
まず、図9に示すように、太陽光パネル22において、受光面側に被覆材32を貼付する。被覆材32は、太陽光パネル22の4辺それぞれの縁部22Fの近傍において、少なくとも受光範囲22Eを覆うように設ける。被覆材32は、後の工程において、液状の防水層材料34(図11参照)を太陽光パネル22に塗布する場合に、防水層材料34が受光範囲22Eを覆わないようにする目的の部材である。したがって、太陽光パネル22の平面視における被覆材32の形状は、このような目的を達するために必要な形状であればよい。たとえば、太陽光パネル22の平面視で、受光範囲22E(図3参照)の中央部分まで被覆材32を設ける必要はない。
【0044】
次に、図10に示すように、第一防水層18に屋根側密着層26を形成すると共に、太陽光パネル22にパネル側密着層28を形成する。
【0045】
屋根側密着層26は、第一防水層18におけるパネルが無い部分に形成する。パネルが無い部分は、後の工程において、第一防水層18上で第二防水層24が形成される部分である。
【0046】
屋根側密着層26は、液状の密着層材料を第一防水層18に塗布することにより形成できる。屋根側密着層26の密着層材料としては、第一防水層18の材質と第二防水層24の材質とを考慮し、これらの密着に適した材料が選択される。
【0047】
パネル側密着層28は、太陽光パネル22における縁部22Fに形成する。縁部22Fは、後の工程において、太陽光パネル22上で第二防水層24が形成される部分である。太陽光パネル22には被覆材32が設けられているので、この被覆材32を、パネル側密着層28を形成する場合の位置基準として用いることができる。また、被覆材32が設けられていることで、パネル側密着層28が受光範囲22Eに被ってしまうことが防止されている。
【0048】
パネル側密着層28も、液状の密着層材料を太陽光パネル22の縁部22Fに塗布することにより形成できる。パネル側密着層28の密着層材料としては、太陽光パネル22の材質と第二防水層24の材質とを考慮し、これらの密着に適した材料が選択される。
【0049】
屋根側密着層26とパネル側密着層28とを形成する前後関係は問わず、いずれか一方が他方より先でも、また、実質的に同時でもよい。
【0050】
次に、第二防水層24(図2及び図4参照)を形成する。本実施形態では、第二防水層24の形成は、図11に示すように、第二防水層24を構成する液状の防水層材料34(たとえば液状のウレタン)を、第一防水層18においてパネルが無い部分、及び、太陽光パネル22の縁部22Fに塗布することにより行う。
【0051】
太陽光パネル22には、縁部22Fの近傍において受光範囲22Eを覆う被覆材32が設けられている。したがって、液状の防水層材料34を太陽光パネル22に塗布する際に、防水層材料34が流れ広がってしまっても、受光範囲22Eを覆ってしまう事態を防止できる。
【0052】
そして、液状の防水層材料34が固化することで、第二防水層24が形成される。防水層材料34が固化した状態で、あるいは完全に固化する前段階で、被覆材32を除去する。
【0053】
第一防水層18には屋根側密着層26が設けられているので、この屋根側密着層26により、第二防水層24が第一防水層18に密着した状態が得られる。同様に、太陽光パネル22にはパネル側密着層28が設けられているので、太陽光パネル22が第二防水層24に密着した状態が得られる。
【0054】
以上により、本願の開示の技術における陸屋根の防水構造12が得られる。この陸屋根の防水構造12では、第二防水層24が、第一防水層18においてパネルが無い部分を覆っており、さらに、太陽光パネル22の受光面(第一防水層18の反対側に位置する面)において4辺に沿って全周にわたり太陽光パネル22に重なった状態となっている。したがって、第一防水層18の防水性能が寿命により低下していても、第二防水層24によって、陸屋根14の防水性を確保することができる。
【0055】
特に、本願の開示の技術では、太陽光パネル22が設置された陸屋根14の防水構造を対象としている。陸屋根14では、荷重制限や高さ制限等のために、設置できる太陽光パネルの質量や厚みが制限を受けることがある。これに対し、本願の開示の技術における太陽光パネル22は、薄型化、軽量化を図ることで、陸屋根14に対しても、上記の制限を受けることなく設置が可能である。
【0056】
しかしながら、薄型化、軽量化された太陽光パネル22は、図7にも示したように、陸屋根14の屋上材16に対し、接着剤20によって直接的に接着固定されている。一旦接着固定された太陽光パネル22を取り外すことは難しく、取り外しによって太陽光パネル22の破損を招くこともある。
【0057】
本実施形態では、このように陸屋根14の防水性を確保するために、太陽光パネル22を屋上材16から取り外す必要がない。すなわち、太陽光パネル22を取り外すことなく、陸屋根14に防水構造を施すことが可能である。たとえば、第一防水層18が寿命を迎えても、寿命が残存している太陽光パネル22を継続して使用しつつ、陸屋根14の防水性を確保することができる。
【0058】
ただし、本願の開示の技術の適用対象は、薄型化、軽量化が図られた太陽光パネル22が設置された陸屋根14に限定されない。すなわち、たとえば図3に示す太陽光パネル22と比較すると厚みが厚く、且つ質量が大きい太陽光パネルが接着固定された陸屋根に対しても、本願の開示の技術を適用できる。
【0059】
なお、上記した第一実施形態の陸屋根の防水施工方法では、第二防水層24を形成するために液状の防水層材料34を使用している。このような液状の防水層材料34に代えて、所定形状に形成された防水性シートや防水性テープを第一防水層18及び太陽光パネル22に貼着して第二防水層24を形成してもよい。上記のように液状の防水層材料34を用いると、施工現場での取り扱いが容易であり、また、形状の自由度が高いため、各種の形状・サイズや配置の太陽光パネル22に対し第二防水層24を施工現場で容易に形成できる。
【0060】
第一実施形態では、パネル側密着層28を備えているが、このような第二防水層24がない構造であっても、第二防水層24の重なり部分24Pを太陽光パネル22の縁部22Fに接触させて配置し、陸屋根の防水構造12を形成することは可能である。すなわち、このような構造であっても、第一防水層18の防水性能が寿命により低下している場合に、第二防水層24によって、陸屋根14の防水性を確保することができる。
【0061】
第一実施形態ではさらに、パネル側密着層28によって、第二防水層24の重なり部分24Pが太陽光パネル22の縁部22Fに密着されている。このため、第二防水層24の重なり部分24Pが太陽光パネル22の縁部22Fとの密着を、パネル側密着層28がない構造と比較して強く維持できる。たとえば地震や周辺環境の振動等が作用しても、太陽光パネル22と第二防水層24との間に隙間や亀裂が生じることを抑制できる。そしてこれにより、太陽光パネル22と第二防水層24との間から水分が浸入し、この水分が第一防水層18に達することも抑制できる。
【0062】
パネル側密着層28としては、たとえば液状の密着層材料を用いることができる。液状の密着層材料を用いることで、各種の形状・サイズの太陽光パネル22に対しパネル側密着層28を施工現場で容易に形成できる。パネル側密着層28としてはこの他にも、シート状、テープ状の密着層材料を用いることができる。
【0063】
特に、本実施形態では、屋根側密着層26の密着層材料としては、第一防水層18の材質と第二防水層24の密着に適した材料が選択され、パネル側密着層28の密着層材料としても、太陽光パネル22の材質と第二防水層24の密着に適した材料が選択される。パネル側密着層28の密着層材料として、屋根側密着層26の密着層材料と異なる材料を選択し、太陽光パネル22と第二防水層24との密着性を高めることが可能である。もちろん、パネル側密着層28の密着層材料と、屋根側密着層26の密着層材料とが同じであってもよい。
【0064】
本実施形態の陸屋根の防水構造12では、図4に示すように、第二防水層24の重なり部分24Pの幅W1が所定の上限値以下に設定されており、第二防水層24は太陽光パネル22の受光範囲22Eを覆っていない。このため、太陽光パネル22の発電量に影響を与えない。
【0065】
また、第二防水層24の重なり部分24Pの幅W1は、所定の下限値以上であり、且つ、第二防水層24の厚みも所定の範囲内(上限値及び下限値の範囲内)に設定されている。このように第二防水層24の重なり部分24Pの幅W1及び厚みが所定の範囲を満足している構成では、たとえば第二防水層24の重なり部分24Pの幅W1が所定の下限値に満たない構成や、厚みが所定の範囲外である構成等と比較して、第二防水層24が太陽光パネル22に密着した状態を確実に維持できる。
【0066】
第二防水層24は、太陽光パネル22の4辺のそれぞれにおいて重なり部分24Pを有している。すなわち、太陽光パネル22の4辺のいずれにおいても、第二防水層24により防水性を確保できる。
【0067】
また、パネル側密着層28の構造も、図4に示したものに限定されない、たとえば、第一実施形態の変形例として図12に示す構造でもよい。
【0068】
この変形例では、パネル側密着層28が、太陽光パネル22の上面だけでなく、側面にも連続するように設けられている。この構造では、太陽光パネル22の側面においてもパネル側密着層28によって第二防水層24が密着するので、より密着性が高くなる。
【符号の説明】
【0069】
12 防水構造
14 陸屋根
16 屋上材
18 第一防水層
20 接着剤
22 太陽光パネル
22E 受光範囲
22F 縁部
24 第二防水層
24P 重なり部分
26 屋根側密着層
28 パネル側密着層
32 被覆材
34 防水層材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の陸屋根上に設けられた第一防水層に接着固定された太陽光パネルと、
前記第一防水層において前記太陽光パネルが無い部分の全体を覆うと共に、前記第一防水層の反対側で前記太陽光パネルの全周にわたって前記太陽光パネルに重なっている第二防水層と、
を有する陸屋根の防水構造。
【請求項2】
前記第二防水層は、前記太陽光パネルの平面視で前記太陽光パネルの受光範囲を避けた位置で前記太陽光パネルに重なっている請求項1に記載の陸屋根の防水構造。
【請求項3】
前記太陽光パネルと前記第二防水層とを密着させるパネル側密着層を有する請求項1又は請求項2に記載の陸屋根の防水構造。
【請求項4】
前記第一防水層と前記第二防水層とを密着させる屋根側密着層、をさらに有する請求項3に記載の陸屋根の防水構造。
【請求項5】
前記パネル側密着層の材質が、前記屋根側密着層の材質と異なっている請求項4に記載の陸屋根の防水構造。
【請求項6】
建物の陸屋根上に設けられた第一防水層に接着固定された太陽光パネルに対し、前記第一防水層において前記太陽光パネルが無い部分の全体を覆うと共に、前記第一防水層の反対側で前記太陽光パネルの全周にわたって前記太陽光パネルに重なるように第二防水層を設ける、陸屋根の防水施工方法。
【請求項7】
前記第一防水層と前記第二防水層とを屋根側密着層により密着させて前記第二防水層を設ける請求項6に記載の陸屋根の防水施工方法。
【請求項8】
液状の防水層材料を前記第一防水層及び前記太陽光パネルに塗布して前記第二防水層を形成する請求項6又は請求項7に記載の陸屋根の防水施工方法。
【請求項9】
前記太陽光パネルの受光範囲を被覆材で被覆した状態で前記防水層材料の塗布を行う請求項8に記載の陸屋根の防水施工方法。