(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056894
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】回収装置に接続可能な掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20230413BHJP
A47L 5/38 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A47L9/28 N
A47L5/38 C
A47L9/28 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166378
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】秀熊 哲平
(72)【発明者】
【氏名】樽谷 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 雅規
(72)【発明者】
【氏名】井上 友介
【テーマコード(参考)】
3B057
【Fターム(参考)】
3B057DA01
(57)【要約】
【課題】掃除機において回収気流によって吸引ファンが回転することを抑制して、吸引ファンの回転による騒音の発生を抑制できる掃除機及び回収装置を提供する。
【解決手段】掃除機100は、塵埃を吸引するように構成された掃除機であって、駆動力を発生するように構成されたモータ182とモータ制御部175と吸込気流を発生させる回転羽根部180と吸込気流に含まれる塵埃を捕捉するフィルタ部115が収容されている貯塵室152とを備えている。貯塵室152は、貯塵室152内の塵埃を吸引するように構成された回収装置200の吸引力を受けて貯塵室152内の塵埃を排出可能に構成されている。モータ182の停止時において、モータ制御部175は、回収装置200の吸引力によって生じた回収気流により、回転羽根部180が回転することを抑制する回転抑制制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を吸引するように構成された掃除機であって、
駆動力を発生するように構成されたモータと、
前記モータによって回転駆動されて塵埃を吸い込む吸込気流を発生させるように構成された回転羽根部と、
前記吸込気流に含まれる塵埃を捕捉するフィルタ部が収容されているとともに前記フィルタ部が補足した塵埃を貯留する貯塵室と、
前記モータを制御するモータ制御部と、を備え、
前記貯塵室は、前記貯塵室内の塵埃を吸引するように構成された回収装置の吸引力を受けて、前記回収装置に前記貯塵室内の塵埃を排出可能に構成されており、
前記モータ制御部は、前記モータの停止時において、前記回収装置の吸引力によって生じる回収気流によって前記回転羽根部が回転することを抑制する回転抑制制御を行うように構成されている、掃除機。
【請求項2】
前記モータは、前記回転羽根部に接続されたロータと、複数のコイルと、複数のスイッチング素子をオンオフさせながら前記複数のコイルに電流を供給することにより前記ロータを回転させる回転磁界を生じさせるように構成されたモータ回路と、を含んでおり、
前記モータ制御部は、前記モータの駆動時には前記回転磁界が生じるように前記複数のスイッチング素子をオンオフさせる吸引制御を行う一方で、前記モータの停止時には前記回転抑制制御として前記複数のコイルを互いに連通させる閉回路を形成させるように前記複数のスイッチング素子のオンオフを設定し、
前記閉回路には、前記回収気流によって前記回転羽根部が回転すると電流が流れる、
請求項1に記載の掃除機。
【請求項3】
前記モータは、前記回転羽根部に接続されたロータと、複数のコイルと、複数のスイッチング素子をオンオフさせながら前記複数のコイルに電流を供給することにより前記ロータを回転させる回転磁界を生じさせるように構成されたモータ回路と、を含んでおり、
前記モータ制御部は、
前記モータの駆動時において、前記回転磁界が生じるように前記複数のスイッチング素子をオンオフさせる吸引制御を行い、
前記モータの停止時において、前記回転抑制制御として、前記複数のコイルのうち少なくとも1つのコイルにおいて静磁界が形成されるように前記複数のスイッチング素子のオンオフを設定して前記複数のコイルそれぞれに電流を流す、請求項1に記載の掃除機。
【請求項4】
前記回収装置に塵埃回収の指示を出す回収指示部と、
前記モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出部と、をさらに備え、
前記回収指示部は、前記蓄電量検出部が検出した前記蓄電量が所定の閾値を上回る場合に、前記回収装置に前記塵埃回収の指示を出すように構成されており、
前記回収装置は、前記掃除機から塵埃回収の指示を受けた場合に、前記貯塵室内の塵埃を吸引するための吸引力を発生させる、請求項3に記載の掃除機。
【請求項5】
前記モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出部と、をさらに備え、
前記モータは、前記回転羽根部に接続されたロータと、複数のコイルと、複数のスイッチング素子をオンオフさせながら前記複数のコイルに電流を供給することにより前記ロータを回転させる回転磁界を生じさせるように構成されたモータ回路と、を含んでおり、
前記回転抑制制御は、
前記複数のスイッチング素子のオンオフを設定して前記ロータの回転を抑制する静磁界を形成する第1回転抑制制御と、
前記複数のスイッチング素子のオンオフを設定して前記複数のコイルを互いに連通させる閉回路を形成する第2回転抑制制御と、を含み、
前記モータ制御部は、
前記モータの駆動時において、前記回転磁界が生じるように前記複数のスイッチング素子をオンオフさせる吸引制御を行い、
前記モータの停止時において、前記蓄電量検出部が検出した前記蓄電量が所定の閾値を上回る場合には前記第1回転抑制制御を行う一方で、前記蓄電量検出部が検出した前記蓄電量が所定の閾値上回らない場合には前記第2回転抑制制御を行い、
前記第2回転抑制制御において、前記閉回路には、前記回収気流による前記回転羽根部の回転によって電流が流れる、請求項1に記載の掃除機。
【請求項6】
前記バッテリを充電する充電回路をさらに備え、
前記充電回路は、前記モータ制御部が前記第2回転抑制制御を行う状態において、前記バッテリに電力を供給して前記バッテリを充電する、請求項5に記載の掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収装置に接続可能な掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
図12に示すように、スティック型の掃除機300が開示されている。この掃除機300は、掃除機本体310と、掃除機本体310から下方に延設された吸引管320と、吸引管320の下端に接続された吸込ノズル330と、を備えている。掃除機本体310は、吸込ノズル330を通じて塵埃を吸い込むとともに、吸い込んだ塵埃を貯留するように構成されている。掃除機本体310は、塵埃を吸引するための吸引力を発生する吸引ファン312と、吸引ファン312を収容するファン収容室315と、塵埃を貯留する貯塵室317と、ファン収容室315と貯塵室317を区画するとともに塵埃を捕捉するフィルタ部313と、を有している。
【0003】
特許文献1では、
図13に示すように、貯塵室317に貯留された塵埃を回収するために、掃除機300と接続された状態で掃除機300から塵埃を回収する回収装置400が用いられる。回収装置400は、筐体410と、塵埃回収を行うための吸引力を発生する吸塵源420と、吸塵源420を駆動させる制御部414と、回収した塵埃を捕集する回収室440と、回収室440から延設された塵埃流路430と、を備えている。塵埃流路430の先端は、掃除機300の貯塵室317に設けられた排塵口319に接続可能である。回収装置400は、吸塵源420の吸引力により、塵埃流路430を通じて貯塵室317内の塵埃を回収室440に回収するように構成されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の掃除機300では、清掃作業時に、吸引ファン312の吸引力により貯塵室317に塵埃を吸い込むための吸引気流が発生する一方で、塵埃回収時に、吸塵源420の吸引力により貯塵室317から塵埃を吸い出すための回収気流が発生する。吸塵源420の吸引力により生じる回収気流は、吸引ファン312を回転させるような回転力を生じさせ得る。このとき、吸引ファン312の回転によって、使用者に不快感を与えるような騒音が生じることがある。
【0006】
本発明は、掃除機において回収気流によって吸引ファンが回転することを抑制して、吸引ファンの回転による騒音の発生を抑制する掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における掃除機は、塵埃を吸引するように構成された掃除機であって、駆動力を発生するように構成されたモータと、前記モータによって回転駆動されて塵埃を吸い込む吸込気流を発生させるように構成された回転羽根部と、前記吸込気流に含まれる塵埃を捕捉するフィルタ部が収容されているとともに前記フィルタ部が補足した塵埃を貯留する貯塵室と、前記モータを制御するモータ制御部と、を備えている。前記貯塵室は、前記貯塵室内の塵埃を吸引するように構成された回収装置の吸引力を受けて、前記回収装置に前記貯塵室内の塵埃を排出可能に構成されている。前記モータ制御部は、前記モータの停止時において、前記回収装置の吸引力によって生じる回収気流によって前記回転羽根部が回転することを抑制する回転抑制制御を行うように構成されている。
【0008】
このように構成された掃除機では、回転羽根部のモータによる回転駆動によって、塵埃を掃除機内に吸引する吸込気流が発生する。このとき、吸込気流に含まれる塵埃はフィルタ部により捕捉されて貯塵室に貯留される。貯塵室内に貯留された塵埃を回収装置に回収する際に、貯塵室内の塵埃は回収装置からの吸引力を受けて貯塵室から排出される。このとき、回収装置の吸引力により生じた回収気流が、掃除機の回転羽根部を回転させるように作用することがある。しかしながら、この掃除機ではモータの停止時において、回転羽根部の回収気流による回転を抑制すような回転抑制制御が行われるため、回転羽根部の回転を抑制できる。この結果、掃除機において回収気流によって吸引ファンが回転することを抑制して、吸引ファンの回転による騒音の発生を抑制できる。
【0009】
前記モータは、前記回転羽根部に接続されたロータと、複数のコイルと、複数のスイッチング素子をオンオフさせながら前記複数のコイルに電流を供給することにより前記ロータを回転させる回転磁界を生じさせるように構成されたモータ回路と、を含んでいてもよい。前記モータ制御部は、前記モータの駆動時には前記回転磁界が生じるように前記複数のスイッチング素子をオンオフさせる吸引制御を行う一方で、前記モータの停止時には前記回転抑制制御として前記複数のコイルを互いに連通させる閉回路を形成させるように前記複数のスイッチング素子のオンオフを設定してもよく、前記閉回路には、前記回収気流によって前記回転羽根部が回転すると電流が流れてもよい。
【0010】
この態様では、掃除機において吸引制御が行われるときには、複数のコイルの周囲にはロータを回転させるような回転磁界が形成される一方で、回転抑制制御が行われるときには、回転羽根部の回転によって複数のコイルに電流が流れるような閉回路が形成される。この回転抑制制御では、回転羽根部の回転によって複数のコイルでは起電力が生じて閉回路には電流が流れ、この閉回路ではジュール熱が発生する。これにより、回転羽根部を回転させようとする回転エネルギーの一部が、複数のコイルにおいて熱エネルギーに変換されて消費され、残りの回転ネルギーのみが回転羽根部の回転に寄与する。したがって、回収気流によって回転羽根部が回転した場合でも、回転羽根部の回転を抑制できる。
【0011】
前記モータは、前記回転羽根部に接続されたロータと、複数のコイルと、複数のスイッチング素子をオンオフさせながら前記複数のコイルに電流を供給することにより前記ロータを回転させる回転磁界を生じさせるように構成されたモータ回路と、を含んでいてもよい。前記モータ制御部は、前記モータの駆動時において、前記回転磁界が生じるように前記複数のスイッチング素子をオンオフさせる吸引制御を行ってもよく、前記モータの停止時において、前記回転抑制制御として、前記複数のコイルのうち少なくとも1つのコイルにおいて静磁界が形成されるように前記複数のスイッチング素子のオンオフを設定して前記複数のコイルそれぞれに電流を流してもよい。
【0012】
この態様では、吸引制御時にはモータ回路から複数のコイルへの電力供給によりロータを回転させる回転磁界が形成される一方で、回転抑制制御時にはスイッチング素子のオンオフの設定に応じて複数のコイルのうち少なくとも1つのコイルにおいて静磁界が形成される。したがって、回収装置の回収気流により回転羽根部が回転した場合でも、静磁界によってロータには回転を抑制する力が生じるため、回転羽根部の回転を抑制できる。
【0013】
前記掃除機は、前記回収装置に前記塵埃回収の指示を出す回収指示部と、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出部と、をさらに備えていてもよい。前記回収指示部は、前記蓄電量検出部が検出した前記蓄電量が所定の閾値を上回る場合に、前記回収装置に前記塵埃回収の指示を出すように構成されていてもよい。前記回収装置は、前記掃除機から塵埃回収の指示を受けた場合に、前記貯塵室内の塵埃を吸引するための吸引力を発生させてもよい。
【0014】
コイルに静磁界を形成させるような回転抑制制御が行われる場合には、コイルに電流を流すための所定の蓄電量をバッテリが有している必要がある。この態様では、バッテリの蓄電量が所定の閾値を上回る場合において、回収指示部から回収装置への塵埃回収の指示により、回収装置が吸引力を発生するように構成されている。すなわち、回収装置の吸引力によって回転羽根部が回転するような状態において、静磁界を形成するために必要な蓄電量をバッテリが有しているため、回転抑制制御により回転羽根部の回転を確実に抑制できる。
【0015】
前記掃除機は、前記モータに電力を供給するバッテリと、前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出部と、をさらに備えていてもよい。前記モータは、前記回転羽根部に接続されたロータと、複数のコイルと、複数のスイッチング素子をオンオフさせながら前記複数のコイルに電流を供給することにより前記ロータを回転させる回転磁界を生じさせるように構成されたモータ回路と、を含んでいてもよい。前記回転抑制制御は、前記複数のスイッチング素子のオンオフを設定して前記ロータの回転を抑制する静磁界を形成する第1回転抑制制御と、前記複数のスイッチング素子のオンオフを設定して前記複数のコイルを互いに連通させる閉回路を形成する第2回転抑制制御と、を含んでいてもよい。前記モータ制御部は、前記モータの駆動時において、前記回転磁界が生じるように前記複数のスイッチング素子をオンオフさせる吸引制御を行ってもよく、前記モータの停止時において、前記蓄電量検出部が検出した前記蓄電量が所定の閾値を上回る場合には前記第1回転抑制制御を行う一方で、前記蓄電量検出部が検出した前記蓄電量が所定の閾値上回らない場合には前記第2回転抑制制御を行ってもよい。前記第2回転抑制制御において、前記閉回路には、前記回収気流による前記回転羽根部の回転によって電流が流れてもよい。
【0016】
第1回転抑制制御を行う場合には、コイルに電流を流すための所定の蓄電量をバッテリが有している必要がある。一方で、第2制御転抑制制御を行う場合には、コイルに電流を流す必要がないためバッテリの蓄電量はほとんど必要ない。この態様では、バッテリの蓄電量が所定の閾値を上回る場合において第1回転抑制制御が行われ、バッテリの蓄電量が所定の閾値を上回らない場合において第2回転抑制制御が行われる。すなわち、掃除機ではバッテリの蓄電量によらずに、第1回転抑制制御又は第2回転抑制制御によって回転抑制制御を行うことできるため、回収気流により回転羽根部が回転した場合に、回転羽根部の回転を確実に抑制できる。
【0017】
前記掃除機は、前記バッテリを充電する充電回路をさらに備えていてもよい。前記充電回路は、前記モータ制御部が前記第2回転抑制制御を行う状態において、前記バッテリに電力を供給して前記バッテリを充電してもよい。
【0018】
この態様では、掃除機においてバッテリの蓄電量がほとんど必要ない第2回転制御が行われる場合に、充電回路によりバッテリを充電させつつ回転抑制制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回収装置からの回収気流によって掃除機の吸引ファンが回転することを抑制して、吸引ファンの回転による騒音の発生を抑制できる掃除機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】第1実施形態における貯塵室の周囲の掃除機及び回収装置の断面図
【
図4】第1実施形態におけるモータ及び制御部の概略的な機能構成図
【
図5】第1実施形態に係る掃除機及び回収装置の断面図
【
図6】第1実施形態に係る掃除機及び回収装置を上から見た断面図
【
図8】第1実施形態おける接続回路の概略的な機能構成図
【
図9】第1実施形態におけるモータの概略的な機能構成図
【
図10】第1実施形態におけるモータの概略的な機能構成図
【
図11】第2実施形態におけるモータ及び制御部の概略的な機能構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明するが、当業者の理解を容易にするために、例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0022】
(掃除機の全体的な構造)
スティック型の掃除機100について、
図1及び
図2を参照しつつ説明する。掃除機100は、
図1に示すように、床面上の塵埃を吸い込む吸込ノズル130と、吸込ノズル130が取り付けられた掃除機本体110と、掃除機本体110の上端112から上方に延設された把持部140と、を備えている。掃除機本体110及び把持部140は、吸込ノズル130に対して前後方向に傾動可能である。
図1及び
図2において、掃除機本体110及び把持部140は、吸込ノズル130に対して直立した姿勢をとっており、この直立姿勢より前方には傾動しない。掃除機100の使用時には、掃除機本体110及び把持部140は、吸込ノズル130に対して後方に傾動した姿勢で使用者によって保持される。
【0023】
吸込ノズル130は、塵埃を吸い込むための幅広の吸込空間131を形成するように、掃除機本体110よりも幅広のノズルケース132を備えている。吸込空間131は、ノズルケース132の前側部分において、床面に向けて開口している。この開口部分の後側では、吸込空間131は、ノズルケース132の底部により閉じられている。吸込空間131には、回転式の掻取ブラシ133が配置されており、掻取ブラシ133は、吸込空間131の開口を通じて床面に接触可能にノズルケース132から露出している。
【0024】
掃除機本体110は、上下方向に細長い筐体111を有している。筐体111の下端は、掃除機本体110の前後方向の傾動を許容するように、ノズルケース132の後部に取り付けられている。筐体111の上部は、筐体111の上端112に向けて細くなっており、上端112から把持部140が上方に延設されている。把持部140は、使用者により握持される太さを有している棒状の部分である。把持部140には、
図2に示すように、使用者によって操作される操作部141(操作ボタン)が設けられている。
【0025】
筐体111は、床面上の塵埃を吸い上げるとともに吸い上げた塵埃を貯留するための様々な部品を内蔵するように構成されている。詳細には、筐体111内には、
図1に示すように、筐体111の上部に配置されたファン収容室153と、ファン収容室153の下側に配置された貯塵室152と、貯塵室152の下側に配置されており上下方向に延設された吸引管113と、が設けられている。ファン収容室153と、貯塵室152と、吸引管113とは互いに連通している。
【0026】
ファン収容室153には、床面上の塵埃を吸い上げるための上向きの吸引気流を生じさせる吸引ファン116と、吸引ファン116に電力を供給するバッテリ117と、吸引ファン116を作動させるための制御部170と、が配置されている。
【0027】
吸引管113は、筐体111内で固定されており、掃除機本体110が直立姿勢から後方に傾動すると、筐体111とともに後方に傾動する。掃除機本体110が直立姿勢にあるときには、吸引管113の下端はノズルケース132の底部によって閉じられた閉状態になっている。一方で、掃除機本体110が直立姿勢から後方に傾動した場合には、吸引管113の下端の回動により(
図1の矢印A参照)、吸引管113の内部空間とノズルケース132の吸込空間131とが互いに連通する。
【0028】
吸引管113の上端には、吸引ファン116の停止時において、吸引管113の上端の開口を塞ぐように形成された逆止弁114が配置されている。逆止弁114は、吸引ファン116の上向きの吸引力により変形して、吸引管113の上端の開口を開放するように構成されている。
【0029】
吸引ファン116は、複数の羽根板によって構成された回転羽根部180と、回転羽根部180を回転駆動させるモータ182とを含んでいる。使用者が吸引ファン116を作動させるように操作部141を操作すると、操作部141から制御部170に、吸引ファン116を作動させるための信号が送信される。使用者が吸引ファン116を停止させるように操作部141を操作すると、操作部141から制御部170に、吸引ファン116の作動を停止させるための信号が送信される。
【0030】
筐体111の前壁には、
図2に示すように、ファン収容室153につながる排気口151と、排気口151の上側に配置された電気接点171及び磁性板173と、が設けられている。吸引ファン116の吸引力により生じた吸引気流は、排気口151を通じて、ファン収容室153から掃除機100外に排気される。排気口151は、後述する回収装置200の通気口236と当接可能に形成されている。電気接点171は、制御部170と電気的に接続されており、後述する回収装置200の接触部283に接触するように突出して形成されている。磁性板173は、後述する回収装置200の保持部297に当接可能に形成されている。
【0031】
貯塵室152内には、
図3に示すように、下向きに開口する容器状のフィルタ部115が配置されている。フィルタ部115は、吸引ファン116の吸引力により生じた吸引気流の通過を許容する一方で、吸引気流に含まれている塵埃を捕捉するように構成されている。フィルタ部115は、例えば不織布フィルタによって構成される。フィルタ部115によって捕捉された塵埃は貯塵室152内に貯留される。
【0032】
貯塵室152には、筐体111の前壁に開口する排塵口124と、排塵口124を開閉するために回動可能に形成された蓋体121と、が設けられている。蓋体121は、排塵口124を閉じるように直立した状態の閉姿勢と、排塵口124を開くように閉姿勢の状態から所定の角度(90°以下の回動角度)だけ下方に回動した状態の開姿勢との間で回動可能に構成されている(
図3の矢印参照)。
【0033】
排塵口124は、
図3に示すように、掃除機100が回収装置200に接続された状態において、後述する回収装置200の回収口216と対向して塵埃流路230につながるように形成されている。このとき、蓋体121が塵埃流路230内に入り込むように回動して開姿勢となり、貯塵室152と塵埃流路230とが互いに連通する。貯塵室152と塵埃流路230とが連通した状態では、後述する回収装置200の吸引力によって生じる回収気流によって、貯塵室152内に貯留された塵埃を塵埃流路230に流入させることができる。すなわち、掃除機100は、掃除機100が回収装置200に接続した状態において、貯塵室152から回収装置200に塵埃を排出できるように構成されている。
【0034】
(掃除機のモータと制御部の説明)
ここで、掃除機100におけるモータ182と制御部170の構成について、
図4を参照しつつ説明する。モータ182は、モータ本体186と、バッテリ117から供給された電流をモータ本体186に伝達するモータ回路184と、を含んでいる。モータ回路184は、制御部170を通じてバッテリ117から供給された直流電流を、モータ本体186を駆動するための三相交流の駆動電流に変換してモータ本体186に供給する。
【0035】
モータ本体186は、円筒状のロータ188と、ロータ188を周方向に囲むように形成されたステータ190と、ロータ188及びステータ190を収容する図略のモータケースと、を含んでいる。ステータ190の内周面は、全体としてロータ188の外周面に沿う形状に形成されている。ロータ188は、回転羽根部180(
図1を参照)と回転軸を共有している。吸引ファン116では、ロータ188が回転することにより回転羽根部180が回転するように構成されている。
【0036】
ステータ190の内周面には、所定の間隔をあけて配置された3つ芯部192が設けられている。3つの芯部192にはそれぞれ、モータ回路184から三相交流の駆動電流(U相、V相、W相)が流れるようにコイル192a,192b,192cが巻き付けられている。コイル192a,192b,192cに駆動電流が流れると、コイル192a,192b,192cの周囲には回転磁界が形成される。この回転磁界は、時間的に変動する磁界であり、ロータ188が回転するような磁性的な力をロータ188に生じさせる。
【0037】
ロータ188には、ロータ188の周方向において複数の磁極が現れるように配置された複数の磁性部が設けられている。
図4には、ロータ188の外周面においてN極の磁極とS極の磁極とが現れていることを「N」と「S」の記号で示している。上述のように、本実施形態では、モータ本体186は二極三相の同期電動機によって構成されている。ただし、モータ本体186の構成はこれに限られない。
【0038】
モータ回路184は、供給された直流電流を三相交流の駆動電流に変換するための6つのスイッチング素子Tr1~Tr6が設けられたインバータ回路として構成されている。スイッチング素子Tr1~Tr6はそれぞれ、制御部170により、電流が流れるオン状態と、電流が流れないオフ状態と、の間で状態が切り替えられる。スイッチング素子Tr1~Tr6には、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の半導体スイッチング素子が用いられる。なお、モータ回路184には、スイッチング素子Tr1~Tr6の負荷電流を転流させるためのFWD(フリーホイールダイオード)が設けられていてもよい。また、モータ回路184には、PWM制御(パルス幅変調制御)によってモータ本体186の回転数を制御するためのパルス変調器が設けられていてもよい。
【0039】
制御部170は、モータ182の回転駆動を制御するモータ制御部175と、バッテリ117の蓄電量を検出する蓄電量検出部177と、バッテリ117に電力を供給するための充電回路178と、を有している。掃除機100が回収装置200に接続された状態では、制御部170は後述する回収装置200の回収装置制御部260と電気的につながり、回収装置制御部260から制御部170に電力が供給される。回収装置制御部260から制御部170に電力が供給されており且つバッテリ117からモータ182に電力が供給されていない状態において、充電回路178からバッテリ117に電力が供給されて、バッテリ117の充電が行われる。
【0040】
(回収装置の全体的な構造)
次に、掃除機100と接続された状態で掃除機100の貯塵室152から塵埃を回収するための回収装置200について、
図5~
図7を参照しつつ説明する。回収装置200は掃除機100が接続可能に構成されており、筐体210と、塵埃流路230と、回収室240と、吸塵源250と、回収装置制御部260と、を備えている。
【0041】
塵埃流路230は、
図5に示すように、筐体210後面の回収口216と回収室240とに接続されている。吸塵源250は、回収装置制御部260の制御下において吸引力を発生させて、掃除機100の貯塵室152から回収装置200の回収室240に塵埃を吸い出すための回収気流を生じさせる。この回収装置制御部260には、電源ケーブルを通じて外部電源から電力が供給される。
【0042】
筐体210の左右の側面には、外部から筐体210内に空気を流入させる吸気口と、筐体210内から外部に空気を流出させる排気口と、が設けられている。筐体210の後面には、
図6に示すように、掃除機本体110を接続させる接続壁214が形成されている。接続壁214には、
図7に示すように、上下方向に延びる凹溝部215と、接触部283と、保持部297と、通気口236と、回収口216と、が形成されている。凹溝部215は、
図6に示すように、掃除機本体110の前側部分と相補的に形成されており、直立姿勢の掃除機本体110の前側部分が嵌め込み可能である。
【0043】
接触部283は、掃除機本体110が凹溝部215に嵌め込まれたときに、掃除機100の電気接点171に対向するように形成されている。接触部283は、接続壁214に形成された穴部において出没可能であり、前記穴部から突出する方向に付勢されている。掃除機本体110が凹溝部215に嵌め込まれたときに、接触部283は電気接点171と接触して、接触部283と電気接点171とは電気的に接続されて、
図8に示すような接続回路203が形成される。一方で、掃除機本体110が凹溝部215に嵌め込まれていない状態では、接触部283と電気接点171とは互いに絶縁された状態になっている。
【0044】
保持部297は、掃除機本体110が凹溝部215に嵌め込まれたときに掃除機本体110の磁性板173と対向する位置に形成されている。保持部297は、例えば、磁性板173を磁気的に吸着する磁石板によって構成されている。保持部297と磁性板173との間で作用する磁力により、掃除機本体110は回収装置200に対して上下方向及び左右方向に位置決めされる。この磁力はさらに、回収装置200に接続された掃除機本体110の接続状態を保持するための保持力となる。これにより、掃除機本体110が凹溝部215に嵌め込まれた状態では、回収装置200に対する掃除機100の位置及び姿勢が保持される。
【0045】
回収室240内には、掃除機100から回収した塵埃を集積させるための空間が形成されている。回収室240の底壁245には、回収室240内の空間と吸塵源250とを連通する円形の連通口が形成されている。この連通口には、
図6に示すように、空気の通過を許容する一方で通過する空気に含まれた塵埃を捕捉する除塵フィルタ247が取り付けられている。
【0046】
吸塵源250は、除塵フィルタ247を通じて回収室240内の空気を吸い込むように構成されている。吸塵源250の吸引力は、掃除機100が回収装置200に接続された状態において、回収室240及び塵埃流路230を通じて、掃除機100の蓋体121に作用する。吸塵源250は、蓋体121を閉姿勢から開姿勢に傾動させるとともに貯塵室152内の塵埃を吸引する大きさの吸引力が得られるように構成されている。吸塵源250は、例えば、ファン及びモータにより構成されている。
【0047】
吸塵源250に吸引された空気は、吸塵源250と周壁部271との間に形成された空間に流出して、排気口から筐体210の外部に排気される。すなわち、掃除機100及び回収装置200では、
図5に示すように、ファン収容室153、貯塵室152、塵埃流路230、回収室240及び吸塵源250をつなぐようにして、吸塵源250の吸引力により生じた気流である回収気流を流す流路が形成される。
【0048】
(検出回路の構成)
ここで、掃除機100が回収装置200に接続されたことを検出するための接続回路203について、
図8を参照しつつ説明する。掃除機100が回収装置200に接続された状態では、掃除機本体110に形成された電気回路201と、回収装置200に形成された電気回路202とによって、掃除機本体110が回収装置200に接続されたことを検出するための接続回路203が形成される。
【0049】
掃除機100の電気回路201は、制御部170と電気接点171とを電気的につなぐ第1電流経路172を含んでいる。電気回路201において、制御部170とバッテリ117とが電気的に接続されており、バッテリ117と吸引ファン116とが電気的に接続されている。
【0050】
回収装置200の電気回路202は、回収装置制御部260と接触部283とを電気的に接続する第2電流経路284と、第2電流経路284を流れる電流を検出する接続検出部286と、を含んでいる。電気回路202において、回収装置制御部260は吸塵源250と電気的に接続されており、回収装置制御部260には電源ケーブルを通じて外部電源からの電力が供給されている。
【0051】
掃除機100が回収装置200に接続された状態では、接触部283と電気接点171の接触により、第1電流経路172と第2電流経路284とが電気的に接続されて、制御部170と回収装置制御部260とを電気的につなぐ接続回路203が形成される。このとき、外部電源からの電力が回収装置制御部260に供給されていれば、接続回路203に電流が流れる。接続検出部286が接続回路203の第2電流経路284を流れる電流を検出した場合には、接続検出部286から制御部170及び回収装置制御部260に、掃除機100が回収装置200に接続されたことを示す接続検出信号が送信される。
【0052】
回収装置200は、接続検出部286からの接続検出信号に応じて、吸塵源250を作動させて、貯塵室152から回収室240に塵埃を吸い出す塵埃回収を行うように構成されている。吸塵源250の作動による塵埃回収が開始された回収装置200は、掃除機100に対して塵埃回収の開始を示す信号を送信する。掃除機100は、回収装置200からの塵埃回収の開始を示す信号を受け付けた場合に、回収気流による回転羽根部180の回転を抑制するために回転抑制制御が行われるように構成されている。
【0053】
(掃除機の動作及び制御方法の説明)
掃除機100による清掃作業の開始時には、制御部170は操作部141から、吸引ファン116を作動させるための信号を受け付けて吸引ファン116を作動させる。このとき、バッテリ117から吸引ファン116に電力が供給される。モータ制御部175は、コイル192a,192b,192cの周囲にロータ188を回転させる回転磁界が形成されるように、モータ回路184のスイッチング素子Tr1~Tr6のオンオフ状態を切り替えて、コイル192a,192b,192cに所望の駆動電流を流す。
【0054】
コイル192a,192b,192cの周囲に形成された回転磁界によりロータ188が回転するとともに、ロータ188の回転に伴って回転羽根部180が回転駆動される。これにより、吸引ファン116は吸引力を発生して、吸込ノズル130から吸引管113、貯塵室152、ファン収容室153、排気口151へと流れる吸引気流が発生する。貯塵室152において吸引気流に含まれている塵埃はフィルタ部115により捕捉されて、貯塵室152には補足された塵埃が貯留される。
【0055】
掃除機100による清掃作業の停止時には、制御部170は操作部141から、吸引ファン116を停止させるための信号を受け付けて吸引ファン116の作動を停止させる。
【0056】
掃除機100による清掃作業が終わった後に、貯塵室152に貯まった塵埃を掃除機100から回収装置200に回収するために、使用者が掃除機100を回収装置200に接続することにより、掃除機100から回収装置200への塵埃回収が行われる。具体的に、回収装置制御部260は、接続検出部286からの接続検出信号を受け付けると吸塵源250を作動させて、貯塵室152から回収室240に塵埃を回収するための吸引力を発生させる。
【0057】
吸塵源250の吸引力により、掃除機100の蓋体121が開姿勢となり、排塵口124が開放されて、貯塵室152とファン収容室153とは塵埃流路230により連通する。このとき、吸塵源250の吸引力により、
図5に矢印で示すように、筐体210の側面に設けられた吸気口から、通気口236、排気口151、ファン収容室153、貯塵室152、排塵口124、塵埃流路230及び回収室240を通過して吸塵源250に流れる回収気流が発生する。回収気流は、貯塵室152から塵埃流路230、回収室240へと塵埃を排出する。回収室240では、回収気流に含まれている塵埃が除塵フィルタ247によって捕捉されて、補足されて塵埃が回収室240内に貯留される。
【0058】
制御部170は、吸引ファン116の作動停止時に、掃除機100が回収装置200に接続されて掃除機100から回収装置200への塵埃回収が行われる場合に、回収気流による回転羽根部180の回転を抑制するための回転抑制制御を行う。以下、掃除機100における回転抑制制御について説明する。
【0059】
(回転抑制制御の説明)
回収装置200の塵埃回収時には、ファン収容室153を流れる回収気流が回転羽根部180に回転力を発生させて回転羽根部180が回転し、使用者が不快感を受けるような騒音が発生することがある。掃除機100の回転抑制制御は、回収気流による回転羽根部180の回転を抑制して、掃除機100における騒音の発生を抑制するために行われる。掃除機100では、コイル192a,192b,192cに電流を流して静磁界を形成することにより回転羽根部180の回転を抑制する第1回転抑制制御と、コイル192a,192b,192cに起電力を生じさせる閉回路を形成することにより回転羽根部180の回転を抑制する第2回転抑制制御と、によって回転抑制制御が行われる。
【0060】
制御部170は、吸引ファン116の作動停止時に、回収装置200から塵埃回収の開始を示す信号を受け付けることにより回転抑制制御を開始する。掃除機100では、回収装置200による塵埃回収が行われている期間、回転抑制制御が維持される。このとき、蓄電量検出部177により検出されたバッテリ117の蓄電量が所定の電力閾値を上回る場合には第1回転抑制制御による回転抑制制御が行われ、所定の電力閾値を上回らない場合には、第2回転抑制制御による回転抑制制御が行われる。
【0061】
第1回転抑制制御は静磁界を形成するために所定の電力が必要である一方で、第2回転抑制制御は閉回路を形成するだけなので電力をほとんど必要としない。すなわち、所定の電力閾値とは第1回転抑制制御に必要な電力量を示す閾値であり、掃除機100では、バッテリ117の蓄電量が第1回転抑制制御に必要な電力量を有していない場合に第2回転抑制制御が行われる。以下、第1回転抑制制御と第2回転抑制制御について、
図9及び
図10を参照しつつ、具体的に説明する。
図9には、第1回転抑制制御が行われる際のモータ回路184の状態が、
図10には、第2回転抑制制御が行われる際のモータ回路184の状態がそれぞれ示されている。
【0062】
第1回転抑制制御において、モータ回路184は、
図9に示すように、スイッチング素子Tr1~Tr6のうちスイッチング素子Tr1,Tr4がオン状態に切り替えられ且つスイッチング素子Tr2,Tr3,Tr5,Tr6がオフ状態に切り替えられている。この状態では、モータ回路184及びモータ本体186には、バッテリ117からの電流が一定の方向に流れる通電経路195が形成される。一定方向に流れる電流によって、コイル192a,192b,192cの周囲には時間的に変動しない静磁界が形成される。
【0063】
具体的に、3つのコイル192a,192b,192cのうち、U相のコイル192aにはロータ188に対してS極が現れるような電流が流れ、V相のコイル192c及びW相のコイル192bにはロータ188に対してN極が現れるような電流が流れる。すなわち、ロータ188の磁性部のうちN極側の面とU相のコイル192a間と、ロータ188の磁性部のうちS極側の面とV相のコイル192c及びW相のコイル192b間と、には磁性的な力が発生する。すなわち、回転羽根部180が回転した状態では、コイル192a,192b,192cの静磁界とロータ188の磁性部との間に生じる磁性的な力により、回転羽根部180の回転を抑制するブレーキ力が生じる。
【0064】
第2回転抑制制御において、モータ回路184は、
図10に示すように、スイッチング素子Tr1~Tr6のうちスイッチング素子Tr2,Tr4,Tr6がオン状態に切り替えられ且つスイッチング素子Tr1,Tr3,Tr5がオフ状態に切り替えられている。この状態では、コイル192a,192b,192cを互いに連通させるような閉回路である通電経路197が形成される。通電経路197には、バッテリ117からの電流は流れない。
【0065】
モータ182に通電経路197が形成された状態において回転羽根部180が回転した場合、ロータ188の磁性部の回転に伴い時間的に変動する磁界によって、コイル192a,192b,192cそれぞれには、
図10に矢印で示すような起電力が発生する。この起電力により通電経路197には電流が流れて、ロータ188の回転エネルギーが通電経路197において熱エネルギーに変換され、ロータ188に、ロータ188の回転を抑制するようなブレーキ力を作用させることができる。
【0066】
制御部170はさらに、掃除機100において第2回転抑制制御による回転抑制制御が行われている期間に、充電回路178を通じてバッテリ117に電力を供給して、バッテリ117を充電させる充電制御を行う。ただし、制御部170は、掃除機100において第2回転抑制制御による回転抑制制御が行われている期間には充電制御を行わず、なくてもよい。
【0067】
(効果等)
このように構成された掃除機100では、回転羽根部180のモータ182による回転駆動によって、塵埃を掃除機100内に吸引する吸込気流が発生する。このとき、吸込気流に含まれる塵埃はフィルタ部115により捕捉されて貯塵室152に貯留される。貯塵室152内に貯留された塵埃を回収装置200に回収する際に、貯塵室152内の塵埃は回収装置200からの吸引力を受けて貯塵室152から排出される。このとき、回収装置200の吸引力により生じた回収気流が、掃除機100の回転羽根部180を回転させるように作用することがある。しかしながら、この掃除機100ではモータ182の停止時において、回転羽根部180の回収気流による回転を抑制するような回転抑制制御が行われるため、回転羽根部180の回転を抑制できる。この結果、回収装置200からの回収気流によって掃除機100の吸引ファン116が回転することを抑制して吸引ファン116の回転による騒音の発生を抑制できる。
【0068】
掃除機100において吸引制御が行われる場合には、複数のコイル192a,192b,192cの周囲にはロータ188を回転させるような回転磁界が形成される。
【0069】
掃除機100において第1回転抑制制御による回転抑制制御が行われる場合には、モータ回路184のスイッチング素子Tr1~Tr6のオンオフ状態に応じてコイルに静磁界が形成される。したがって、回収装置200の回収気流により回転羽根部180が回転した場合でも、静磁界によってロータ188には回転を抑制する力が生じるため、回転羽根部180の回転を抑制できる。
【0070】
掃除機100において第2回転抑制制御による回転抑制制御が行われる場合には、コイル192a,192b,192cが互いに連通されて、回転羽根部180の回転により電流が流れるような閉回路である通電経路197が形成される。回収気流による回転羽根部180の回転に伴うコイル192a,192b,192cにおける起電力により通電経路197には電流が流れて、通電経路197では通電に伴うジュール熱が発生する。このため、回転羽根部180を回転させようとする回転エネルギーの一部が通電経路197において熱エネルギーに変換されて消費されるため、残りの回転ネルギーのみが回転羽根部180の回転に寄与する。したがって、回収気流により回転羽根部180が回転した場合でも、第2回転抑制制御によって回転羽根部180の回転を抑制できる。
【0071】
第1回転抑制制御を行う場合には、コイル192a,192b,192cに電流を流すための所定の蓄電量をバッテリ117が有している必要がある。一方で、第2制御転抑制制御を行う場合には、コイル192a,192b,192cに電流を流す必要がないためバッテリ117の蓄電量はほとんど必要ない。掃除機100では、バッテリ117の蓄電量が所定の電力閾値を上回る場合において第1回転抑制制御が行われ、バッテリ117の蓄電量が所定の電力閾値を上回らない場合において第2回転抑制制御が行われる。すなわち、掃除機100では、バッテリ117の蓄電量によらず、第1回転抑制制御又は第2回転抑制制御によって回転抑制制御を行うことできるため、回収気流により回転羽根部180が回転した場合に、回転羽根部180の回転を確実に抑制できる。
【0072】
掃除機100ではさらに、バッテリ117の蓄電量がほとんど必要ない第2回転制御が行われる場合に、充電回路178によりバッテリ117を充電させる充電制御を行いつつ回転抑制制御を行うことができる。
【0073】
なお、本実施形態では、接続検出部286が第2電流経路284を流れる電流を検出することにより、掃除機100が回収装置200に接続されたことを検出するが、このような構成には限られない。例えば、回収装置200には、掃除機100が回収装置200に接続された場合に開状態と閉状態が切り替わるように構成されたスイッチが設けられており、接続検出部286は、このスイッチの状態を検出することにより、掃除機100が回収装置200に接続されたこと判定するように構成されていてもよい。この場合、接続回路203は、掃除機100が回収装置200に接続したことを電気的に検出するための回路としては機能しない。
【0074】
また、モータ本体186は、回転抑制制御において、3つのコイル192a,192b,192cそれぞれに静磁界が形成されるように構成されているが、これに限らない。例えば、モータ本体186は、3つのコイル192a,192b,192cのうちいずれか1つのコイルに静磁界が形成されるように構成されていてもよい。
【0075】
また、掃除機100は、バッテリ117の蓄電量に応じて、第1回転抑制制御による回転抑制制御と、第2回転抑制制御による回転抑制制御とが行われるように構成されているが、これに限らない。例えば、掃除機100は、第1回転抑制制御による回転抑制制御と第2回転抑制制御による回転抑制制御のうち、いずれか一方の回転抑制制御だけが行われるように構成されていてもよい。
【0076】
また、制御部170は、モータ制御部175が第2回転抑制制御を行うときに、充電回路178を通じてバッテリ117を充電させる充電制御を行わなくてもよい。この場合、掃除機100では、回転抑制制御が行われていない状態において、制御部170により充電制御が行われる。
【0077】
また、掃除機100は、バッテリ117からモータ182への電力供給ではなく、回収装置200からモータ182への電力供給により、第1回転抑制制御による回転抑制制御が行われるように構成されていてもよい。掃除機100が回収装置200に接続された状態において、接続回路203を通じて回収装置制御部260からモータ182に制御部170を通じて電力が供給される。したがって、バッテリ117が所定の電力閾値を上回る蓄電量を有していない場合でも、掃除機100において第1回転抑制制御による回転抑制制御により、回収気流による回転羽根部180の回転を確実に抑制できる。この場合、掃除機100では第2回転抑制制御による回転抑制制御が行われなくてもよい。
【0078】
(第2実施形態)
第2実施形態の掃除機100では、
図11に示すように、制御部170は、回収装置200に塵埃回収の指示を送信するための回収指示部179をさらに有している点において、第1実施形態の掃除機100とは異なっている。この態様では、第1回転抑制制御による回転抑制制御が行われ、第2回転抑制制御による回転抑制制御は行われない。
【0079】
掃除機100の回収指示部179は、バッテリ117の蓄電量が所定の電力閾値を上回ることを条件に、回収装置200の回収装置制御部260に塵埃回収の指示を示す信号を送信するように構成されている。掃除機100が回収装置200に接続されたときに、回収装置200の回収装置制御部260は、回収指示部179から塵埃回収の指示を示す信号を受け付けたことを条件に吸塵源250を作動させる。このとき、バッテリ117は所定の電力閾値を上回る蓄電量を有しているので、掃除機100では第1回転抑制制御による回転抑制制御が行われて、コイル192a,192b,192cの周囲には静磁界が形成され、回転羽根部180の回転は確実に抑制される。
【0080】
一方で、バッテリ117が所定の電力閾値を上回る蓄電量を有していない場合には、掃除機100が回収装置200に接続されたとしても、回収指示部179は回収装置200に塵埃回収の指示を示す信号を送信しない。このため、回収装置200による塵埃回収は行われず、掃除機100における回転抑制制御は不要となる。回収指示部179は、バッテリ117が所定の電力閾値を上回る蓄電量まで充電された後に、回収装置200に塵埃回収の指示を示す信号を送信する。
【0081】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
上述の実施形態の掃除機は、清掃作業に用いられる装置に好適に利用される。
【符号の説明】
【0083】
100 掃除機
115 フィルタ部
117 バッテリ
152 貯塵室
175 モータ制御部
177 蓄電量検出部
178 充電回路
179 回収指示部
180 回転羽根部
182 モータ
184 モータ回路
188 ロータ
192 コイル
200 回収装置
Tr1~Tr6 スイッチング素子