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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056902
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】摩擦係合装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/0638 20060101AFI20230413BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20230413BHJP
   F16D 11/00 20060101ALI20230413BHJP
   F16D 13/70 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F16D25/0638
F16D13/52 C
F16D11/00 Z
F16D13/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166392
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000204882
【氏名又は名称】株式会社ダイナックス
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅俊
【テーマコード(参考)】
3J056
3J057
【Fターム(参考)】
3J056AA03
3J056AA60
3J056BA04
3J056BB41
3J056BE07
3J056CC34
3J056GA12
3J057AA04
3J057BB01
3J057BB04
3J057CA03
3J057DA20
3J057HH02
3J057JJ04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作動油を供給し続けなくても締結状態を維持することができ、部品点数が少なく、生産性の高い摩擦係合装置を提供する。
【解決手段】摩擦係合装置100は、作動油が供給されることにより、ピストン30が第一弾性体34を圧縮しながら軸方向の他方側に移動し、突起36が第三傾斜部に沿って移動することにより周方向に回転しながら、トルク伝達機構40を作動させ、作動油の供給が停止されたとき、第一弾性体34の反発力によってピストン30が軸方向の一方側に押し戻されるとともに、突起36が第一傾斜部又は第二傾斜部に沿って第一係合点又は第二係合点に係合し、突起36が第一係合点に係合したときにトルク伝達機構40を解放状態とし、第二係合点に係合したときにトルク伝達機構40の係合状態を維持するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム、ハブ、ピストン、及び該ピストンの作動によって前記ドラムとハブの間でトルクを伝達するトルク伝達機構を具え、
前記ドラムの内側面には、周方向に亘ってドラム溝が形成され、
前記ドラム溝は、軸方向の一方側に拡開する方向に形成され、周方向に交互に連続する第一傾斜部及び第二傾斜部と、軸方向の多方側に拡開する方向に形成され、周方向に連続する複数の第三傾斜部を具え、
周方向に隣り合う前記第一傾斜部と第二傾斜部は、それぞれ、軸方向に位置の異なる第一係合点及び第二係合点を形成し、
前記第一係合点及び第二係合点の周方向の位置は、前記第三傾斜部の傾斜面に対向するように設けられ、
前記ピストンは、前記ドラム溝に嵌合する突起を具え、第一弾性体によって軸方向の一方側に付勢されており、
前記ドラムとピストンの間に作動油が供給されることにより、該ピストンが前記第一弾性体を圧縮しながら軸方向の他方側に移動し、前記突起が前記第三傾斜部に沿って移動することにより周方向に回転しながら、前記トルク伝達機構を作動させ、作動油の供給が停止されたとき、前記第一弾性体の反発力によって前記ピストンが軸方向の一方側に押し戻されるとともに、前記突起が前記第一傾斜部又は第二傾斜部に沿って前記第一係合点又は第二係合点に係合し、前記突起が前記第一係合点に係合したときに前記トルク伝達機構を解放状態とし、前記第二係合点に係合したときに前記トルク伝達機構の係合状態を維持するように構成されていることを特徴とする、
摩擦係合装置。
【請求項2】
前記ピストンと該ピストンが接し得る前記トルク伝達機構との間にスラストベアリングが配設されている、請求項1の摩擦係合装置。
【請求項3】
前記トルク伝達機構が、
前記ドラムの内側面に、軸方向に延びるように形成されたドラム側スプラインと、
前記ドラム側スプラインにスプライン嵌合する、ドラム側ドグ及び複数枚のプレートと、
前記ハブに形成された、軸方向に延びるハブ側スプライン及び周方向に連続するハブ側ドグと、
前記ハブ側スプラインにスプライン嵌合する、前記プレートの間に位置する摩擦板で構成され、
前記ピストンが軸方向の他方側に移動したとき、前記ドラム側ドグを前記プレート方向に押して、前記プレートと摩擦板を摩擦係合させるとともに前記ドラム側ドグとハブ側ドグを嵌合させるように構成されている、請求項1又は2の摩擦係合装置。
【請求項4】
前記ドラム側ドグと前記プレートの間に第二弾性体が配設されている、請求項3の摩擦係合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧の供給を止めた後も、締結状態を維持することができる摩擦係合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の変速機などで用いられている多板クラッチや多板ブレーキなどの摩擦係合装置は、油圧によって、ピストンを作動させ、ドラム側のプレートとハブ側の摩擦板を摩擦係合させて摩擦係合装置を締結状態とし、ドラムとハブの間でトルク伝達を可能にするというものが知られている。
【0003】
従来の摩擦係合装置では、その締結状態を維持するために、油圧の供給を継続する必要がある。そのため、多くの作動油量を必要とするので、作動油のタンクや比較的大型のオイルポンプを用いる必要がある。これは、摩擦係合装置全体の大型化の要因の1つである。また、作動油の供給をし続けることによるオイルポンプへの負荷や、シール部の摩擦損失なども生じ易い。そこで、以下のようなものが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-216501号公報
【特許文献2】特開2017-133674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、ピストンが固定された後に作動油の供給を止めても、摩擦係合状態を維持することができる自動変速機のピストン構造が開示されている。具体的には、まず、作動油の供給を開始すると、第1のピストン部材が第2のピストン部材に押されて、プレート及び摩擦板の方向に移動する。第1のピストン部材が所定の位置まで移動すると、第1のピストン部材の本体が回転して、第1のピストン部材がピストンカバーの係合溝と係合し、その状態で固定される。これにより、作動油の供給停止後も摩擦係合状態を維持することができるとされている。
【0006】
特許文献2には、部品の摩耗を防止し、作動油の供給を停止して油圧を解放させても十分な締結荷重を実現しながら、クラッチの摩擦係合状態を維持できる油圧クラッチが開示されている。具体的には、ピストンの移動によって、ピストンとプレートの間に設けられたノックカムが作動し、作動油の供給を停止してもプレートと摩擦板の締結状態を維持することができるとされている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の発明は、必要な部品の数が多く、それぞれの部品の形状が複雑であるため、製造コストが掛かりやすい。また、特許文献2の発明でも、部品点数が比較的多いという課題がある。
【0008】
そこで、作動油を供給し続けなくても締結状態を維持することができ、部品点数が少なく、生産性の高い摩擦係合装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ドラム、ハブ、ピストン、及び該ピストンの作動によって前記ドラムとハブの間でトルクを伝達するトルク伝達機構を具え、
前記ドラムの内側面には、周方向に亘ってドラム溝が形成され、
前記ドラム溝は、軸方向の一方側に拡開する方向に形成され、周方向に交互に連続する第一傾斜部及び第二傾斜部と、軸方向の多方側に拡開する方向に形成され、周方向に連続する複数の第三傾斜部を具え、
周方向に隣り合う前記第一傾斜部と第二傾斜部は、それぞれ、軸方向に位置の異なる第一係合点及び第二係合点を形成し、
前記第一係合点及び第二係合点の周方向の位置は、前記第三傾斜部の傾斜面に対向するように設けられ、
前記ピストンは、前記ドラム溝に嵌合する突起を具え、第一弾性体によって軸方向の一方側に付勢されており、
前記ドラムとピストンの間に作動油が供給されることにより、該ピストンが前記第一弾性体を圧縮しながら軸方向の他方側に移動し、前記突起が前記第三傾斜部に沿って移動することにより周方向に回転しながら、前記トルク伝達機構を作動させ、作動油の供給が停止されたとき、前記第一弾性体の反発力によって前記ピストンが軸方向の一方側に押し戻されるとともに、前記突起が前記第一傾斜部又は第二傾斜部に沿って前記第一係合点又は第二係合点に係合し、前記突起が前記第一係合点に係合したときに前記トルク伝達機構を解放状態とし、前記第二係合点に係合したときに前記トルク伝達機構の係合状態を維持するように構成されていることを特徴とする摩擦係合装置によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作動油を供給してピストンを作動させ、摩擦係合装置を締結状態とし、その状態から作動油の供給を停止しても、ピストンの突起がドラム溝の第二係合点に係合し、トルク伝達機構の係合状態が維持されるので、作動油を供給し続けなくても、摩擦係合装置の締結状態を維持することができる。また、部品点数が少なく、シンプルな構造であるため、生産性が高い摩擦係合装置とすることができる。
【0011】
また、ピストンと、ピストンが接し得るトルク伝達機構との間にスラストベアリングが配設されている構成とすれば、ピストンの回転による、ピストンやトルク伝達機構の摩耗を防止することができる。
【0012】
また、トルク伝達機構が、ドラムの内側面に、軸方向に延びるように形成されたドラム側スプラインと、ドラム側スプラインにスプライン嵌合する、ドラム側ドグ及び複数枚のプレートと、ハブに形成された、軸方向に延びるハブ側スプライン及び周方向に連続するハブ側ドグと、ハブ側スプラインにスプライン嵌合する、プレートの間に位置する摩擦板で構成され、ピストンが軸方向の他方側に移動したとき、ドラム側ドグをプレート方向に押して、プレートと摩擦板を摩擦係合させるとともにドラム側ドグとハブ側ドグを嵌合させるように構成されているのがよい。本構成によれば、プレートと摩擦板の摩擦係合によってドラムとハブが回転同期され、ドラム側ドグとハブ側ドグを嵌合させ易く、また、ドラム側ドグとハブ側ドグの嵌合によりトルク伝達されるため、トルク伝達容量を大きくすることができる。
【0013】
さらに、ドラム側ドグとプレートの間に第二弾性体が配設されている構成とすれば、ドラム側ドグがプレート方向に押され、摩擦係合装置が締結状態に移行するときに、第二弾性体の反発力によってプレートが摩擦板方向に押され、摩擦板と摩擦係合を開始するので、ドラムとハブの回転を同期させ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の摩擦係合装置の径方向断面図。
図2図1のドラムのドラム溝部分の斜視図。
図3図1の摩擦係合装置の締結状態又は解放状態への過渡期の径方向断面図。
図4図1の摩擦係合装置の締結状態の径方向断面図。
図5】ピストンの突起のドラム溝内での移動を説明した図。
図6】ドラム側ドグとハブ側ドグの嵌合状態の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図1~6を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の摩擦係合装置100を示す。なお、摩擦係合装置100は、基本的に軸Xに対して対称的な構成を有するため、図1では、便宜上、径方向半分のみを示している。摩擦係合装置100は、ドラム10、ハブ20、ピストン30、及びピストン30の作動によってドラム10とハブ20の間でトルクを伝達するトルク伝達機構40を具えている。
【0017】
ドラム10の内側面には、軸方向に延びるドラム側スプライン12と周方向に亘ってドラム溝14(図2も参照)が形成されている。摩擦係合装置100では、ドラム側スプライン12はドラム10の外周側の内側面に、ドラム溝14は内周側の内側面にそれぞれ設けられている。ドラム10の内周側の内側面には、環状の第一リテーナ32が回転自在に取り付けられている。また、第一リテーナ32に対し、ピストン30の反対側に位置するように、環状の第二リテーナ18が回転不能に配設されている。第二リテーナ18は、第一スナップリング19によって抜け止めされている。よって、第一リテーナ32は、第二リテーナ18によって抜け止めされている。
【0018】
ドラム側スプライン12には、ドラム側ドグ41と複数枚のプレート42がスプライン嵌合している。プレート42は、第二スナップリング46によって抜け止めされている。プレート42の枚数は適宜決定すればよい。
【0019】
図5に示すように、ドラム溝14には、軸方向の一方側(図中下側)に拡開する方向に傾斜した第一傾斜部14aと第二傾斜部14bが形成されている。第一傾斜部14aと第二傾斜部14bは、周方向に交互に連続するように形成されている。また、軸方向の他方側(図中上側)に拡開する方向に傾斜した複数の第三傾斜部14cも形成されている。第三傾斜部14cは、周方向に連続するように形成されている。第一乃至第三傾斜部14a~14cの傾きや傾斜方向は、後述する動作を実現できるものであれば、適宜変更してもよい。
【0020】
周方向に隣り合う第一傾斜部14aと第二傾斜部14bは、それぞれ、軸方向に位置の異なる第一係合点14dと第二係合点14eを形成している。第一係合点14dは、第二係合点14eの軸方向位置よりも軸方向の一方側に位置するようにする。また、第一係合点14dと第二係合点14eの周方向の位置は、第三傾斜部14cの径斜面に対向するように形成する。
【0021】
図1に示すように、ハブ20には、軸方向に延びるハブ側スプライン26と周方向にハブ側ドグ24が形成されている。ハブ側ドグ24は、ハブ側スプライン26よりも軸方向の一方側(図中左側)に位置するように形成される。ハブ側スプライン26には、プレート42同士の間に位置するように摩擦板22をスプライン嵌合させる。
【0022】
ピストン30は、ドラム側ドグ41よりも軸方向の一方側(図中左側)に位置するように配設され、ドラム溝14に嵌合する突起36を周方向に少なくとも1つ具える。また、ピストン30は、第一リテーナ32と係合し、ドラム10に対して回転自在な第一弾性体34によって軸方向の一方側(図中左側)に付勢されている。第一弾性体34は、図示しているようなコイルばねの場合、周方向に複数設けてもよく、コイルばねに代えて皿ばねなど、他の弾性体を用いることもできる。第一弾性体34として皿ばねを使用する場合には、皿ばねをドラム10に対して回転自在に配設し、スナップリング19で抜け止めすればよい。要するに、第一弾性体34がピストン30を軸方向の一方側(図中左側)に付勢するように構成すればよい。なお、ピストン30とドラム10の間には、シール部材62,64が設けられている(図3参照)。このように、摩擦係合装置100は、部品点数が少なく、シンプルな構造であるため、生産性が高い。
【0023】
次に、摩擦係合装置100の動作について説明する。摩擦係合装置100が解放状態のときは、図1に示す状態であり、このとき、ピストン30の突起36は、ドラム溝14の第一係合点14d(図5参照)に位置している。この状態からドラム10とピストン30の間に作動油供給路16から供給される作動油(図示省略)が流れ込むと、ピストン30が第一弾性体34を圧縮しながら軸方向の他方側(図中右側)に移動し図3に示す状態となる。このとき、ピストン30の突起36がドラム溝14の第三傾斜部14cに沿って移動するので、ピストン30は、周方向に回転しながら、ドラム側ドグ41をプレート42方向に押し、プレート42と摩擦板22を摩擦係合させる。これにより、ドラム10とハブ20が回転同期され、ドラム側ドグ41とハブ側ドグ24を嵌合させ易くすることができる。なお、ピストン30と第一リテーナ32は、第一弾性体34の付勢力により、ピストン30の周方向回転に伴い、第一リテーナ32も回転する。
【0024】
作動油がさらに供給されると、ピストン30はさらに軸方向の他方側(図中右側)に移動し、ドラム側ドグ41を押して、ドラム側ドグ41とハブ側ドグ24を嵌合させ、図4に示す状態となる。より具体的には、ドラム側ドグ41の周方向に複数形成されたドグ歯48がハブ側ドグ24に嵌合することにより、ドラム側ドグ41とハブ側ドグ24が締結状態となる(図6参照)。かくして、ドラム側ドグ41とハブ側ドグ24の嵌合によりドラム10とハブ20との間でトルク伝達が行われるため、トルク伝達容量を大きくすることができる。このとき、ピストン30の突起36は、図5に示すように、ドラム溝14の第三傾斜部14cの第三終点14fの位置に移動している。この状態から、作動油の供給が停止されると、ピストン30は第一弾性体34の反発力によって軸方向の一方側(図中下側)に押し戻され、ピストン30の突起36が第二傾斜部14bに沿って移動し、第二係合点14eに係合する。この状態で、プレート42と摩擦板22の摩擦係合状態及びドラム側ドグ41とハブ側ドグ24の嵌合が維持されるので、作動油を供給しなくても大きなトルク伝達容量を実現することができる。
【0025】
摩擦係合装置100の締結状態から解放状態へ移行させるときは、作動油を再度供給して、ピストン30を軸方向の他方側(図中右側)に移動させる。そうすると、ピストン30の突起36は、第二係合点14eから第三傾斜部14cの径斜面に沿って移動し、第三傾斜部の第四係合点14gの位置に移動する。この状態で作動油の供給が停止されると、ピストン30は第一弾性体34の反発力によって軸方向の一方側(図中下側)に押し戻され、ピストン30の突起36が第一傾斜部14aに沿って移動し、第一係合点14dの位置に移動する。かくして、摩擦係合装置100は図1に示す解放状態となる。
【0026】
ここで、図1に示すように、ピストン30とドラム側ドグ41の間、及び第一リテーナ32と第二リテーナ18の間にそれぞれスラストベアリング52,54を配設するのがよい。上述したように、ピストン30及び第一リテーナ32は、ピストン30の軸方向移動に伴い、周方向に回転する。すなわち、ピストン30とドラム側ドグ41の間、及び第一リテーナ32と第二リテーナ18の間で相対回転が生じるので、スラストベアリング52,54を配設することにより、ピストン30と第一リテーナ32の回転による、ピストン30、ドラム側ドグ41、第一リテーナ32、及び第二リテーナ18の摩耗を防止することができる。
【0027】
また、ドラム側ドグ41とプレート42の間に第二弾性体44を設けるのがよい。ピストン30が作動し、ドラム側ドグ41がプレート42方向に押され、摩擦係合装置100が締結状態に移行するときに、第二弾性体44の反発力によってプレート42が摩擦板22方向に押され、摩擦板22と摩擦係合を開始するので、ドラム10とハブ20の回転を同期させ易くすることができる。これにより、ドラム側ドグ41とハブ側ドグ24を嵌合させ易くすることができる。第二弾性体44としては、コイルばねや皿ばね等の弾性体を用いることができる。
【0028】
摩擦係合装置100では、トルク伝達機構40が、ドラム10の内側面に、軸方向に延びるように形成されたドラム側スプライン12と、ドラム側スプライン12にスプライン嵌合する、ドラム側ドグ41及び複数枚のプレート42と、ハブ20に形成された、軸方向に延びるハブ側スプライン26及び周方向に連続するハブ側ドグ24と、ハブ側スプライン26にスプライン嵌合する、プレート42の間に位置する摩擦板22で構成されている。しかし、トルク伝達機構40の構成はこれに限られず、例えば、ドグクラッチ、プレートと摩擦板、テーパーコーンのそれぞれ又はこれらの組合せによって構成することができる。要するに、ピストン30の作動によって係合状態と解放状態が切換るものであればよい。
【0029】
以上に説明したように、本発明によれば、作動油を供給し続けなくても締結状態を維持することができ、部品点数が少なく、生産性の高い摩擦係合装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 ドラム
12 ドラム側スプライン
14 ドラム溝
14a 第一傾斜部
14b 第二傾斜部
14c 第三傾斜部
14d 第一係合点
14e 第二係合点
18 第二リテーナ
20 ハブ
22 摩擦板
24 ハブ側ドグ
26 ハブ側スプライン
30 ピストン
32 第一リテーナ
34 第一弾性体
36 突起
40 トルク伝達機構
41 ドラム側ドグ
42 プレート
44 第二弾性体
52,54 スラストベアリング
100 摩擦係合装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6