(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005692
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】血糖値上昇抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20230111BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20230111BHJP
A61K 36/03 20060101ALI20230111BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/16
A61K36/03
A61P3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107773
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉永 恵子
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE03
4B018MD03
4B018MD04
4B018MD67
4B018ME03
4B018MF07
4C088AA13
4C088CA30
4C088MA41
4C088NA14
4C088ZC35
(57)【要約】
【課題】本発明は、食後の血糖値の上昇を抑制する血糖値上昇抑制剤を提供することを目的とする。
【解決手段】粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が2質量%以上、かつナトリウムが1.5質量%以下である粉末状褐藻類を有効成分とすることを特徴とする血糖値上昇抑制剤。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が2質量%以上、かつナトリウムが1.5質量%以下である粉末状褐藻類を有効成分とすることを特徴とする血糖値上昇抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値上昇抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食事により血糖値が上昇してもインスリンの働きによって過剰な血糖値の上昇は抑制され、血糖値は一定の範囲にコントロールされている。しかし、糖尿病を発症するとインスリンの分泌や働きが抑制されることで、血糖値が正常範囲へ下がりづらくなり、高血糖による動脈硬化等の合併症を引き起こすリスクが指摘されている。また、糖尿病とは診断されていないものの、食後の血糖値が急激に上昇したり、血糖値が高めの状態が続けば、同様の疾患を発症するおそれも指摘されている。このような糖尿病、高血糖は、食生活の乱れや運動不足に起因することが多く、生活習慣を見直すことで、これらを予防、改善することが期待されている。最近では、食生活の改善を目的に、安全で日々の生活で摂取しやすい食品に由来する機能性成分に着目した製品開発も進んでおり、特に血糖値上昇抑制に関与する成分を含んだ機能性表示食品等が各社から販売されている。
【0003】
食品に由来する成分を利用した血糖値上昇抑制に関する技術としては、アミロース含量が30質量%以上である米粒又は米粉を原料とし、レジスタントスターチ含量が0.4質量%以上かつ比重が0.50g/cm3以上1.00g/cm3以下である血中インスリン濃度上昇抑制用米菓組成物であって、さらに血糖値上昇抑制に用いられる米菓組成物(特許文献1)、カカオポリフェノール及び脂質を有効成分として含んでなる、食後の血糖値上昇抑制用組成物(特許文献2)、茶花エキス、桑の葉エキス、及びキトサンを有効成分として含有する食後血糖値上昇抑制用組成物(特許文献3)等が開示されている。また、食品のなかでも、海藻に由来する成分を利用した技術としては、ラムナン硫酸を有効成分とし、ラムナン硫酸が緑藻類ヒトエグサ科ヒトエグサ属ヒトエグサより抽出したものである、血糖値上昇抑制剤(特許文献4)、アラメに由来する多糖類の加水分解物であって、かつ10000Da~460000Daの重量平均分子量を有する加水分解物を含む、糖尿病治療剤(特許文献5)等が開示されている。
【0004】
しかし、これらの技術をもってしても、血糖値上昇抑制に関する効果は必ずしも十分とはいえず、より実用性があり、広く一般に利用されやすい血糖値上昇抑制に関する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-165696号公報
【特許文献2】特開2019-180399号公報
【特許文献3】特開2020-105094号公報
【特許文献4】特開2008-184390号公報
【特許文献5】特開2019-131486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、食後の血糖値の上昇を抑制する血糖値上昇抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題に対して鋭意検討を行った結果、海藻のなかでも褐藻類中に含まれるナトリウムを多価金属で置換し、粉末状褐藻類中の多価金属含有量及びナトリウム含有量を所定量とした粉末状褐藻類によって、前記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が2質量%以上、かつナトリウムが1.5質量%以下である粉末状褐藻類を有効成分とすることを特徴とする血糖値上昇抑制剤、から成っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の血糖値上昇抑制剤は、褐藻類中に含まれるナトリウムを多価金属で置換していない通常の粉末状褐藻類と比較し、食後の血糖値の上昇抑制効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、血糖値上昇抑制試験1について、摂取後経過時間(分)と血糖値の上昇値(Δ値)(mg/dl)との関係を示したグラフである。
【
図2】
図2は、血糖値上昇抑制試験2について、摂取後経過時間(分)と血糖値の上昇値(Δ値)(mg/dl)との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の血糖値上昇抑制剤の原料として用いられる褐藻類は、特に制限はないが、例えば、わかめ、こんぶ、もずく、あかもく等を挙げることができ、このなかでもわかめが好ましい。わかめとしては、例えば、ワカメ、ヒロメ、アオワカメ等を挙げることができる。本発明の血糖値上昇抑制剤の原料として用いられる褐藻類の部位に特に制限はないが、例えば、わかめの場合、葉、茎、芽かぶ等を挙げることができ、このなかでも葉が好ましい。本発明の血糖値上昇抑制剤の原料として用いられる褐藻類の産地に特に制限はないが、例えば、日本産、韓国産、中国産等を挙げることができる。
【0012】
本発明の血糖値上昇抑制剤の原料として用いられる褐藻類は、生の褐藻類(原藻)、生の褐藻類をボイルしたもの、これらに冷蔵、冷凍、塩蔵、乾燥、カット等の加工処理を施したもの等を挙げることができ、このなかでも原藻、カット加工処理を施したものが好ましい。加工処理を施したものとしては、例えば、塩蔵わかめ、ボイル塩蔵わかめ、乾燥わかめ、カットわかめ等を挙げることができる。
【0013】
ボイルわかめは、例えば、原藻を加温した海水等でボイルすることで得ることができ、これに食塩を添加し脱水させることでボイル塩蔵わかめを得ることができる。乾燥わかめは、例えば、ボイル塩蔵わかめを水で洗浄し、脱塩処理を施した後、自体公知の乾燥処理により得ることができる。
【0014】
本発明の血糖値上昇抑制剤の原料として用いられる褐藻類の大きさは、特に制限はないが、後述する多価金属イオンとの接触面積を広くする観点から、縦横それぞれ50mm以下が好ましく、縦横それぞれ20mm以下がより好ましい。本発明の血糖値上昇抑制剤の原料として用いられる褐藻類の形状は、特に制限はなく、多角形、不定形、粉末状等であってもよい。本発明では、褐藻類を1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類は、粉末状褐藻類中に含まれる多価金属が2質量%以上であり、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましい。多価金属としては、例えば、2~3価の金属イオンを発生する金属を挙げることができ、具体的には、カルシウム、マグネシウム等の2族元素の金属を挙げることができ、好ましくはカルシウムである。
【0016】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類は、粉末状褐藻類中に含まれるナトリウムが1.5質量%以下であり、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類中に含まれる多価金属とナトリウムの質量比(多価金属/ナトリウム)は、7以上が好ましく、12以上がより好ましく、25以上がさらに好ましい。本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類中に含まれるカルシウムとナトリウムの質量比(カルシウム/ナトリウム)は、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。
【0018】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類中に含まれる多価金属含有量及びナトリウム含有量は、例えば、粉末状褐藻類に硝酸を加えマイクロ波試料前処理装置(型式:ETHOS TC;マイルストーンゼネラル社製)で湿式分解後、ICP発光分析装置(型式:VISTA-MPX;VARIAN社製)を用いて測定することができる。なお、粉末状褐藻類中に含まれるこれらの含有量を測定する際、粉末状褐藻類に食品素材等の他の成分が別途混合、或いは付着している場合は、これを洗浄等により除去した上で測定することができる。
【0019】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類の水分含有量は、特に制限はないが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。水分含有量は、例えば、常圧加熱乾燥法(105℃、3~5時間乾燥)により測定することができる。
【0020】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類は、粉末状の形態であれば、粒子の大きさに特に制限はないが、例えば、目開き0.5mmの篩を通過する大きさが好ましく、目開き0.3mmの篩を通過する大きさがより好ましく、目開き0.2mmの篩を通過する大きさがさらに好ましい。
【0021】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類は、少なくとも褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程、多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する工程、洗浄された褐藻類を乾燥する工程を取ることで製造することができる。
【0022】
褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程で用いられる多価金属イオンは、例えば、2~3価の金属イオンを挙げることができ、このなかでも2族元素のイオンが好ましく、カルシウムイオン、マグネシウムイオンがより好ましく、カルシウムイオンがさらに好ましい。多価金属イオンを発生する多価金属イオン源は、安全衛生上、食品に用いることができ、水等の溶媒に溶解するものであれば、特に制限はないが、カルシウム塩、マグネシウム塩等の多価金属塩等を挙げることができる。カルシウム塩としては、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム及びこれらの水和物等を挙げることができる。マグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム及びこれらの水和物等を挙げることができる。これら多価金属イオン源のなかでも、塩化カルシウム、塩化カルシウムの水和物、酢酸カルシウム、酢酸カルシウムの水和物、塩化マグネシウム、塩化マグネシウムの水和物が好ましく、塩化カルシウム、塩化カルシウムの水和物、酢酸カルシウム、酢酸カルシウムの水和物がより好ましい。本発明では、多価金属イオン及び多価金属イオン源を1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類の製造方法における工程の1つである褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程は、褐藻類中のナトリウムをカルシウムで置換できる方法であれば、特に制限はないが、例えば、多価金属イオン源を水等の溶媒に溶解した溶液に褐藻類を投入し浸漬する方法、褐藻類と水等の溶媒との混合物に多価金属イオン源を添加し浸漬する方法、褐藻類を充填した容器に多価金属イオン源を水等の溶媒に溶解した溶液を通液し浸漬する方法、原藻等の水分含有量の多い褐藻類に直接多価金属イオン源を添加する方法等を挙げることができる。前記した方法を行う際は、振とう、攪拌、混合等の操作をしてもよい。
本発明では、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理させ、多価金属イオンを含む溶液を濾過、脱水等により除去した後、さらに褐藻類と多価金属イオンとを接触処理させることにより、複数回、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理させることが好ましい。
【0024】
多価金属イオンを水等の溶媒を介して褐藻類と接触処理する場合、多価金属イオン源と水等の溶媒との溶液における多価金属イオン濃度は、特に制限はないが、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する際の多価金属イオンと褐藻類の質量比(多価金属イオン/褐藻類)は、特に制限はないが、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。なお、多価金属イオン源と水等の溶媒との溶液における多価金属イオン濃度は、溶媒の質量をA、多価金属イオン源の質量をB、多価金属イオン源1モルあたりの質量をM、多価金属イオン源1モル中の多価金属の質量をmとすると、下記式によって算出することができる。
【0025】
多価金属イオン濃度(質量%)=B×(m/M)×100/(A+B)
【0026】
褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する時間は、特に制限はないが、10分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、60分以上がさらに好ましい。褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する際の温度は、特に制限はないが、室温(25±5℃)以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。
【0027】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類の製造方法における工程の1つである多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する工程は、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程で用いた多価金属イオンを含む溶液を濾過、脱水等により除去した褐藻類(以下、処理済み褐藻類ともいう)に付着している余分な多価金属イオンや食塩、褐藻類と多価金属イオンとを接触処理する工程で生成したナトリウム塩等を洗浄液により十分に洗い流すことができれば、特に制限はないが、例えば、洗浄液に処理済み褐藻類を投入し浸漬する方法、処理済み褐藻類を充填した容器に洗浄液を通液し浸漬する方法等を挙げることができ、浸漬する際に、振とう、攪拌、混合等の操作をしてもよい。本発明では、処理済み褐藻類の洗浄後、洗浄液を濾過、脱水等により除去した後、さらに洗浄工程を取ることで、複数回、処理済み褐藻類を洗浄することが好ましい。また、十分な洗浄の目安として、濾過、脱水等により除去した最後の洗浄液中のナトリウム濃度を測定してもよい。この場合、ナトリウム濃度は、0.005質量%未満が好ましい。洗浄液は、特に制限はないが、水、エタノール等のアルコール類を挙げることができ、このなかでも水が好ましい。
【0028】
多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する際の洗浄液と処理済み褐藻類の質量比(洗浄液/処理済み褐藻類)は、特に制限はないが、4以上が好ましく、10以上がより好ましい。多価金属イオンを接触処理させた褐藻類を洗浄する時間は、特に制限はないが、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましい。
【0029】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類の製造方法における工程の1つである洗浄された褐藻類を乾燥する工程は、洗浄工程を経た処理済み褐藻類を乾燥することができれば、特に制限はないが、例えば、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等の方法を挙げることができ、1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程における条件は、例えば、熱風乾燥の場合、80~100℃、1~5時間が好ましく、真空乾燥の場合、60~80℃、3~20時間が好ましい。
【0030】
本発明の血糖値上昇抑制剤の有効成分である粉末状褐藻類の製造方法では、粉末化工程を取ることもできる。粉末化工程は、特に制限はないが、ピンミル粉砕、気流式粉砕、剪断摩擦式粉砕、衝撃式粉砕、ロール式粉砕、凍結粉砕、超音波粉砕、超遠心粉砕等を挙げることができ、1種のみ、又は任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明の血糖値上昇抑制剤は、有効成分である粉末状褐藻類のみをそのまま用いてもよく、有効成分である粉末状褐藻類以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の任意の成分を混合し製剤として調整したものでもよい。製剤として調整する場合、製剤中における有効成分である粉末状褐藻類の含有量に特に制限はないが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
【0032】
前記した他の任意の成分としては、例えば、分岐デキストリン、環状デキストリン、難消化性デキストリン等のデキストリン、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギナン、マンナン、大豆多糖類、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム等の安定剤、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等の甘味料、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、カゼインナトリウム、リン酸塩、セルロース等の賦形剤等を挙げることができる。
【0033】
本発明の血糖値上昇抑制剤の使用方法は、ヒトに経口的に摂取できる方法であれば特に制限はなく、本発明の血糖値上昇抑制剤を直接又は飲食品に添加して摂取することができる。本発明の血糖値上昇抑制剤は、食事の60分前までに摂取することが好ましく、食事の30分前までに摂取することがより好ましく、食事と同時に摂取することがさらに好ましい。本発明の血糖値上昇抑制剤の使用量は、一回の食事に対して、有効成分である粉末状褐藻類が好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.5g以上、さらに好ましくは1g以上となるよう摂取するのがよい。摂取する上限に特に制限はないが、一回の食事に対して、有効成分である粉末状褐藻類が10g以下となるよう摂取することが好ましい。
【0034】
本発明の血糖値上昇抑制剤の飲食品への添加量に特に制限はないが、飲食品中に粉末状褐藻類が好ましくは0.1~100質量%、より好ましくは1~100質量%含有させるのがよい。
【0035】
本発明の血糖値上昇抑制剤を添加できる飲食品は、特に制限はないが、例えば、パン、菓子、麺、米飯、豆腐、水産練り製品、飲料、乳製品、スープ、調味料、プレミックス、介護食等の一般食品の他、健康食品等を挙げることができる。パンは、食パン、菓子パン、デニッシュ、ペストリー、クロワッサン、ブリオッシュ、フランスパン等を挙げることができる。菓子は、ガム、キャンディ、グミ、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パンケーキ、カステラ、バームクーヘン、ドーナツ、スティックバー、スナック菓子、米菓、氷菓、アイスクリーム等を挙げることができる。麺は、中華麺、うどん、そば、そうめん、パスタ、餃子の皮等を挙げることができ、生麺の他、茹で麺、蒸し麺、即席麺、冷蔵麺、冷凍麺等の調理済みの麺も含まれる。米飯は、炊き込みご飯、ピラフ、ドライカレー、リゾット等を挙げることができる。水産練り製品は、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、つみれ、さつま揚げ等を挙げることができる。飲料は、茶、コーヒー、インスタントコーヒー、果汁飲料、野菜飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、粉末スポーツ飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、栄養ドリンク、青汁、粉末青汁等を挙げることができ、固形状、粉末状、ペースト状、液状等のいずれの形態であってもよい。
【0036】
乳製品は、ヨーグルト、クリーム、チーズ、バター、粉乳、練乳等を挙げることができる。スープは、コーンスープ、コンソメスープ、中華スープ、ラーメンスープ、オニオンスープ、ミネストローネ、クラムチャウダー、ポタージュ、わかめスープ、味噌汁等を挙げることができ、固形状、粉末状、ペースト状、ゼリー状、ジュレ状、液状等のいずれの形態であってもよい。調味料は、醤油、味噌、ソース、たれ、つゆ、魚醤、エキス、ドレッシング、シーズニング等を挙げることができ、固形状、粉末状、ペースト状、ゼリー状、ジュレ状、液状等のいずれの形態であってもよい。プレミックスは、原料の一部があらかじめ混合された食品をいい、パン用プレミックス、ケーキ用プレミックス、パンケーキ用プレミックス、アイスクリーム用プレミックス、麺用プレミックス等を挙げることができる。健康食品は、栄養機能食品、栄養補助食品、健康補助食品、機能性食品、機能性表示食品、特定保健用食品、サプリメント、流動食等を挙げることができ、錠剤、カプセル、固形状、粉末状、ペースト状、ゼリー状、ジュレ状、液状等のいずれの形態であってもよい。
【0037】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例0038】
[血糖値上昇抑制剤の作製]
(1)血糖値上昇抑制剤の作製方法
1)実施例1
2Lステンレスビーカーに水900g、酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)14.4gを投入し、65℃で3分間攪拌し、多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.35質量%)を得た。この溶液に韓国産乾燥わかめ60gを投入後、65~70℃で20分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、1次処理済み褐藻類216gを得た。次に、2Lステンレスビーカーで水900gに酢酸カルシウム一水和物(商品名:カルフレッシュ;大東化学社製)3.6gを溶解した多価金属イオン溶液(カルシウムイオン濃度:0.09質量%)に1次処理済み褐藻類全量を投入後、65~70℃で20分間攪拌した後、濾過にて溶液を除去することで、2次処理済み褐藻類189gを得た。次に、2Lステンレスビーカーに2次処理済み褐藻類全量、洗浄液として水900gを投入後、室温で3分間攪拌して洗浄し、濾過にて洗浄液を除去した。さらに、同様の洗浄操作を1回行った。この際除去した洗浄液中のナトリウム濃度を測定したところ0.005質量%未満であり、十分に洗浄できていることを確認できた。洗浄液を除去した処理済み褐藻類を熱風乾燥機(テスト用乾燥炉;細山熱器社製)で、90℃、2時間乾燥した後、超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類Aを44.6g得た。粉末状褐藻類Aの水分含有量は4.2質量%であった。粉末状褐藻類Aをそのまま血糖値上昇抑制剤Aとした。
【0039】
2)比較例1
韓国産乾燥わかめ20gを超遠心粉砕機(型式:ZM200;RETSCH社製)で、14000rpm、スクリーン目開き0.2mmの条件で粉砕し、粉末状褐藻類Bを19.4g得た。粉末状褐藻類Bの水分含有量は4.8質量%であった。粉末状褐藻類Bをそのまま血糖値上昇抑制剤Bとした。
【0040】
[粉末状褐藻類中に含まれる多価金属、ナトリウムの測定]
(1)多価金属含有量、ナトリウム含有量の測定
粉末状褐藻類A、Bそれぞれについて、硝酸を加えマイクロ波試料前処理装置(型式:ETHOS TC;マイルストーンゼネラル社製)で湿式分解後、ICP発光分析装置(型式:VISTA-MPX;VARIAN社製)を用いて、多価金属含有量(カルシウム含有量、マグネシウム含有量)及びナトリウム含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
[血糖値上昇抑制試験1]
(1)試験方法
1)試験1(血糖値上昇抑制剤A摂取区)
12時間絶食した被験者に40mlの水を摂取させた後、インスタント味噌汁(商品名:いつものおみそ汁赤だし 三つ葉入り;アマノフーズ社製)1袋に熱湯160mlと血糖値上昇抑制剤A2gを混合したもの、及び白米(商品名:サトウのごはん 国内産コシヒカリ200g;サトウ食品社製)65gを40回程度の咀嚼とともに7分程度かけて摂取させた。摂取直後(0分後)、摂取30分後、摂取45分後、摂取60分後、摂取75分後に採血し、それぞれ血糖値を測定した。
【0043】
2)試験2(血糖値上昇抑制剤B摂取区)
血糖値上昇抑制剤Aを血糖値上昇抑制剤Bに変更すること以外は、試験1と同様の方法で、血糖値を測定した。
【0044】
3)試験3(対照区)
血糖値上昇抑制剤A2gを摂取しないこと以外は、試験1と同様の方法で、血糖値を測定した。
【0045】
4)試験4(参考例)
血糖値上昇抑制剤Aを国産乾燥わかめに変更すること以外は、試験1と同様の方法で、血糖値を測定した。
【0046】
試験1~4について、それぞれ摂取30分後、摂取45分後、摂取60分後、摂取75分後の血糖値と摂取直後(0分後)の血糖値との差である血糖値の上昇値(Δ値)(mg/dl)を求めた。結果を表2に示す。また、この結果をグラフ化し、
図1に示す。
【0047】
【0048】
表2及び
図1のとおり、摂取30分後において、実施例である血糖値上昇抑制剤Aを摂取した場合は、対照区及び比較例である血糖値上昇抑制剤Bを摂取した場合よりも、血糖値の上昇が顕著に抑制されていることがわかった。また、血糖値上昇抑制剤Aを摂取した場合の血糖値の上昇値のピークは、対照区及び血糖値上昇抑制剤Bを摂取した場合の血糖値の上昇値のピークよりも低いことがわかった。
【0049】
[血糖値上昇抑制試験2]
(1)試験方法
1)試験1(血糖値上昇抑制剤A摂取区)
12時間絶食した被験者に40mlの水を摂取させた後、白米(商品名:サトウのごはん 国内産コシヒカリ200g;サトウ食品社製)116gにカレー(商品名:小さめカレー 辛くない国産りんごと野菜のカレー;良品計画社製)1袋と血糖値上昇抑制剤A1.5gを混合したものを、水100mlを飲みながら40回程度の咀嚼とともに10分程度かけて摂取させた。摂取直後(0分後)、摂取30分後、摂取45分後、摂取60分後、摂取90分後、摂取120分後に採血し、それぞれ血糖値を測定した。
【0050】
2)試験2(血糖値上昇抑制剤B摂取区)
血糖値上昇抑制剤Aを血糖値上昇抑制剤Bに変更すること以外は、試験1と同様の方法で、血糖値を測定した。
【0051】
3)試験3(対照区)
血糖値上昇抑制剤A1.5gを摂取しないこと以外は、試験1と同様の方法で、血糖値を測定した。
【0052】
試験1~3について、それぞれ摂取30分後、摂取45分後、摂取60分後、摂取90分後、摂取120分後の血糖値と摂取直後(0分後)の血糖値の差である血糖値の上昇値(Δ値)(mg/dl)を求めた。結果を表3に示す。また、この結果をグラフ化し、
図2に示す。
【0053】
【0054】
表3及び
図2のとおり、摂取30分後から摂取90分後において、実施例である血糖値上昇抑制剤Aを摂取した場合は、対照区及び比較例である血糖値上昇抑制剤Bを摂取した場合よりも、血糖値の上昇が顕著に抑制されていることがわかった。また、血糖値上昇抑制剤Aを摂取した場合の血糖値の上昇値のピークは、対照区及び血糖値上昇抑制剤Bを摂取した場合の血糖値の上昇値のピークよりも低いことがわかった。
【0055】
[血糖値上昇抑制試験3]
(1)試験方法
1)試験1(血糖値上昇抑制剤A摂取区)
12時間絶食した被験者に40mlの水を摂取させた後、食事の直前に水100mlに血糖値上昇抑制剤A1gを混合したものを摂取させ、次に白米(商品名:サトウのごはん 国内産コシヒカリ200g;サトウ食品社製)65gを40回程度の咀嚼とともに5分程度かけて摂取させた。摂取直後(0分後)、摂取30分後に採血し、それぞれ血糖値を測定した。
【0056】
2)試験2(血糖値上昇抑制剤A摂取区)
血糖値上昇抑制剤A1gを血糖値上昇抑制剤A2gに変更すること以外は、試験1と同様の方法で、血糖値を測定した。
【0057】
3)試験3(対照区)
血糖値上昇抑制剤A1gを摂取しないこと以外は、試験1と同様の方法で、血糖値を測定した。
【0058】
試験1~3について、それぞれ摂取30分後の血糖値と摂取直後(0分後)の血糖値の差である血糖値の上昇値(Δ値)(mg/dl)を求めた。結果を表4に示す。
【0059】
【0060】
表4のとおり、実施例である血糖値上昇抑制剤Aを多く摂取した方が、血糖値の上昇抑制効果が高いことがわかった。