(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056935
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】パンツ型着用物品及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20230413BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20230413BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61F13/49 315Z
A61F13/534 100
A61F13/496
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166448
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】519372272
【氏名又は名称】DSGジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝利
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA12
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA08
3B200DA01
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB12
3B200DB23
3B200EA11
3B200EA24
(57)【要約】
【課題】吸収体の垂れ下がりに伴う漏れを抑制すると共に、外観デザインの見栄え悪化及び肌の直接締め付けに伴う着用感悪化を抑制することを課題とする。
【解決手段】パンツ型着用物品は、股部の厚み方向に積層された少なくとも2つの吸収層を含んで構成された吸収体を備え、弾性部材が、股部の厚み方向に隣り合う2つの吸収層の間に、吸収体に伸縮性を付与するために配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
股部の厚み方向に積層された少なくとも2つの吸収層を含んで構成された吸収体と、
前記股部の厚み方向に隣り合う2つの吸収層の間に、前記吸収体に伸縮性を付与するために配置された弾性部材と、
を備えたパンツ型着用物品。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記股部の前身頃領域と後見頃領域を結ぶ方向に伸縮するように配置される、請求項1に記載のパンツ型着用物品。
【請求項3】
前記弾性部材は、糸ゴムである、請求項1又は2に記載のパンツ型着用物品。
【請求項4】
前記吸収体と前記弾性部材は、超音波により溶着されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のパンツ型着用物品。
【請求項5】
前記股部の厚み方向に隣り合う2つの吸収層は、熱溶着されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のパンツ型着用物品。
【請求項6】
厚み方向に積層された少なくとも2つの吸収層を含んで構成された吸収体と、
厚み方向に隣り合う2つの吸収層の間に、前記吸収体に伸縮性を付与するために配置された弾性部材と、
を備えた吸収性物品。
【請求項7】
前記弾性部材は、長手方向に伸縮するように配置される、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記弾性部材は、糸ゴムである、請求項6又は7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体と前記弾性部材は、超音波により溶着されている、請求項6から8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
厚み方向に隣り合う2つの吸収層は、熱溶着されている、請求項6から9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型着用物品及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術1)
【0003】
特許文献1には、使い捨ておむつの吸収体に、パルプ繊維等の液体吸収性繊維によって形成される繊維層に吸収性ポリマーを含有させたシート状の吸収性コアを用いるという発明が記載されている。
【0004】
(従来技術2)
【0005】
特許文献2には、使い捨ておむつの吸収体の左右外側に沿って直線状に弾性部材を防漏れ壁として配置し、弾性部材をトップシート又はバックシートに直接接合するという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-99439号公報
【特許文献2】特開2020-28677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術1によれば、吸収性コアにより、尿等の被吸収物が吸収される。しかしながら、被吸収物が多量である場合には、被吸収物を吸収した吸収体が重くなり垂れ下がる。これより使い捨ておむつの脚周りに隙間が生じ、尿等が漏れるという問題が生じるおそれがある。
【0008】
従来技術2によれば、弾性部材の伸縮に応じた段差等のおむつ表面の形態変化が、おむつ外側のバックシートで顕現してしまい、おむつの外観の見栄えが悪化するという問題が生じるおそれがある。また弾性部材が伸縮すると弾性部材が着用者の肌を直接締め付けることになり着用感が悪化するという問題が生じるおそれがある。また弾性部材の伸縮がトップシート又はバックシートに直接的な損傷を与え、トップシート又はバックシートの経年劣化が早まるという問題が生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、吸収体の垂れ下がりに伴う漏れを抑制すると共に、外観デザインの見栄え悪化及び肌の直接締め付けに伴う着用感悪化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様は、股部の厚み方向に積層された少なくとも2つの吸収層を含んで構成された吸収体と、前記股部の厚み方向に隣り合う2つの吸収層の間に、前記吸収体に伸縮性を付与するために配置された弾性部材と、を備えたパンツ型着用物品である。
【0011】
第2の態様は、第1の態様において、前記弾性部材は、前記股部の前身頃領域と後見頃領域を結ぶ方向に伸縮するように配置される、パンツ型着用物品である。
【0012】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、前記弾性部材は、糸ゴムである、パンツ型着用物品である。
【0013】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記吸収体と前記弾性部材は、超音波により溶着されている、パンツ型着用物品である。
【0014】
第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記股部の厚み方向に隣り合う2つの吸収層は、熱溶着されている、パンツ型着用物品である。
【0015】
第6の態様は、厚み方向に積層された少なくとも2つの吸収層を含んで構成された吸収体と、厚み方向に隣り合う2つの吸収層の間に、前記吸収体に伸縮性を付与するために配置された弾性部材と、を備えた吸収性物品である。
【0016】
第7の態様は、第6の態様において、前記弾性部材は、長手方向に伸縮するように配置される、吸収性物品である。
【0017】
第8の態様は、第6の態様又は第7の態様において、前記弾性部材は、糸ゴムである、吸収性物品である。
【0018】
第9の態様は、第6から第8の態様のいずれかにおいて、前記吸収体と前記弾性部材は、超音波により溶着されている、吸収性物品である。
【0019】
第10の態様は、第6から第9の態様のいずれかにおいて、厚み方向に隣り合う2つの吸収層は、熱溶着されている、吸収性物品である。
【発明の効果】
【0020】
第1から第10の態様によれば、従来技術1と比較して、吸収体の垂れ下がりに伴う漏れを抑制することができる。また従来技術2と比較して、外観デザインの見栄え悪化及び肌の直接締め付けに伴う着用感悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は実施形態のおむつを示す平面図である。
【
図3】
図3は
図2の3X-3X線に沿った股部の断面図である。
【
図5】
図5は
図4の5X-5X線に沿った吸収体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明に係るパンツ型着用物品及び吸収性物品の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、実施形態のパンツ型着用物品の一例であるおむつ20を示す図である。
図1は、おむつ20を展開させ、かつ伸長させた状態について示す平面図である。なお、おむつ20を展開させ、かつ伸長させた状態とは、おむつ20の展開状態において、おむつ20に生じていた皺が実質的に視認されなくなる程に伸長させた状態であり、おむつ20を構成する各部材(例えば、後述するトップシート等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまでおむつ20が伸長した状態である。
【0024】
(おむつ)
【0025】
図1に示すように、おむつ20は、大きくは、股部100と、胴回り部200とを含んで構成されている。おむつ20は、胴回り部200に、股部100が接合されて構成されている。
【0026】
図1において図面下側をおむつ20の前側とし、図面上側をおむつ20の後側とする。また図面左側をおむつ20の左側とし図面右側をおむつ20の右側とする。また
図1において図面上下方向をおむつ1の前後方向Lとし、前後方向Lに直交する方向(図面左右方向)をおむつ20の幅方向Wとする。
【0027】
図1において、前後方向L及び幅方向Wに直交する方向を、おむつ20の厚み方向T(
図1の紙面に垂直な方向)とする(後述する
図3参照)。
図1において紙面表側が着用者の肌側(内側)で、紙面裏側が非肌側(外側)となる。
【0028】
股部100は、股下領域100Mと、股下領域100Mの前側の前見頃領域100Fと、股下領域100Mの後側の後見頃領域100Rとを有する。前見頃領域100Fは、着用者の前部(腹側、前胴回り)に位置する部分である。後見頃領域100Rは、着用者の後部(背側、後胴回り)に位置する部分である。
【0029】
胴回り部200は、中央領域200Mと、中央領域200Mの左側の左サイドフラップ200Lと、中央領域200Mの右側の右サイドフラップ200Rとを有する。胴回り部200には、左右方向に伸縮可能な胴回り弾性部材(図示せず)、例えば糸ゴムが設けられている。この胴回り弾性部材によって、着用者の胴回り方向に伸縮性が付与される。胴回り部200の中央領域200Mに、股部100の後見頃領域100Rが接合されている。
【0030】
実施形態のおむつ20は、前部22と、股下部24と、後部26とを有している。前部22と、股下部24と、後部26は、おむつ20の前後方向Lの各部を構成する。
【0031】
実施形態のおむつ20は、中央帯状領域28と、サイドフラップ30とを有している。サイドフラップ30は、中央帯状領域28の左右両側に位置する部位である。中央帯状領域28と、サイドフラップ30は、おむつ20の幅方向Wの各部を構成する。
【0032】
前部22は、着用者の前部(腹側、前胴回り)に位置することになる部分である。また、後部26は、着用者の後部(背側、後胴回り)に位置することになる部分である。股下部24は、前部22と後部26との間に位置することになる部分である。おむつ20の後部26は、胴回り部200に対応する。
【0033】
中央帯状領域28は、おむつ20の幅方向の中央部に位置する帯状の領域(
図1参照)であり、前部22、股下部24及び後部26に亘っている。
【0034】
中央帯状領域28は、股部100と胴回り部200の中央領域200Mで構成される。サイドフラップ30は、胴回り部200の左側の左サイドフラップ200L、右サイドフラップ200Rに対応する。
【0035】
中央帯状領域28の前部22、つまり股部100の前見頃領域100Fには、ターゲットテープ50が設けられている。ターゲットテープ50は、股部100の非肌側に配置されている。サイドフラップ30、つまり左サイドフラップ200L、右サイドフラップ200Rにはそれぞれ、ファスニングテープ48が設けられている。ファスニングテープ48は、左サイドフラップ200L、右サイドフラップ200Rの肌側に配置されている。ターゲットテープ50は、ファスニングテープ48に係合可能な部材であり、例えば不織布によって形成されている。ファスニングテープ48は、例えば、面ファスナーで構成される。
【0036】
(股部)
【0037】
図2は、
図1から股部100を取り出して示す平面図である。
図3は、
図2の3X-3X線に沿った股部100の断面を示す図である。
図3の図中上側が肌側で、図中下側が非肌側となる。
【0038】
股部100は、おむつ20において、着用者によって排泄された尿等の被吸収物を吸収して保持する部位である。股部100は、肌側から非肌側へ向かう厚み方向Tに沿って、トップシート42、吸収性本体40、防漏シート44、バックシート46が順次重ねられて構成されている。
【0039】
吸収性本体40は、被吸収物を吸収することが可能な部材で構成される。
【0040】
トップシート42は、吸収性本体40の肌側に配置され、液透過性の部材で構成される。
【0041】
防漏シート44は、吸収性本体40の非肌側に配置され、液不透過性と透湿性を有する部材で構成される。
【0042】
バックシート46は、おむつ20の非肌側の外装を構成する部材(外装シート)であり、例えば不織布で構成されている。このバックシート46と吸収性本体40との間に防漏シート44が配置されている。
【0043】
吸収性本体40は、吸収体52と、この吸収体52を包む液透過性を有するラップシート54とを含んで構成されている。
【0044】
(吸収体)
【0045】
図4は、吸収体52を肌側からみた
図3の上面図である。なお、吸収体52の内部に配置された後述する弾性部材70を視認可能に一部破断図として示す。
図5は、
図3から吸収体52を取り出した吸収体52の断面図である。
【0046】
以下では、吸収体52の長手方向をシート長手方向(
図4における矢印SLで示す方向)、吸収体52の幅方向をシート幅方向(
図4における矢印SWで示す方向)、吸収体52の厚み方向をシート厚み方向(
図5における矢印STで示す方向)と呼ぶ。また、吸収体の52のシート長手方向SL、シート幅方向SW、シート厚み方向STは、それぞれおむつ20の長手方向L、幅方向W、厚み方向Tに対応している。
【0047】
吸収体52は、吸収性ポリマーを含有し、液体の吸収により膨張するシート状の吸収体で構成される。吸収体52の一方のシート面52Aには、シート長手方向SLに沿って延びる溝部56が形成されている。溝部56は、吸収体52の全長に亘って形成されている。溝部56は、吸収体52のシート長手方向SLの一端から他端までシート長手方向SLに沿って連続して延びており、吸収体52のシート長手方向SLの両端にそれぞれ開口している。
【0048】
吸収体52は、他方のシート面52Bを形成する第1吸収層58と、一方のシート面52Aを形成し、シート幅方向SWに間隔をあけて第1吸収層58に積層された複数の第2吸収層60とを有している。溝部56は、隣り合う第2吸収層60のそれぞれの対向面60Sと第1吸収層58の表面58Sとで形成されている。
【0049】
第2吸収層60が第1吸収層58のシート幅方向SWの中央線CLを挟んでシート幅方向SWの両側に一対配置されている。このため、溝部56は、第1吸収層58の中央線CL上に中央線CLに沿って形成されている。また、本実施形態では、一対の第2吸収層60が同一寸法形状とされている。
【0050】
また、吸収体52を構成する第1吸収層58及び第2吸収層60のそれぞれの厚みは、略同じ厚みになっている。
【0051】
吸収体52を構成する第1吸収層58及び第2吸収層60は、それぞれ吸収性ポリマーを含有する繊維層である。具体的には、第1吸収層58及び第2吸収層60は、熱融着繊維(例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維)を所定形状に成形した繊維層であり、その内部には吸収性ポリマー(所謂SAP)等が混入されている。なお、本実施形態では、繊維層としてポリオレフィン系繊維を用いたエアスルー不織布を用いているが、この構成に限定されない実施も可能である。
【0052】
また、吸収体52では、第2吸収層60における単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量C2が、第1吸収層58における単位面積当たりの吸収性ポリマーの含有量C1よりも多くなっている。具体的には、含有量C2は、含有量C1の150%~500%の範囲内、好ましくは、250%~400%の範囲内とされている。
【0053】
また、第2吸収層60の第1吸収層58と反対側の部分60Aを形成する繊維には、第2吸収層60の第1吸収層58側の部分60Bを形成する繊維よりも、繊維の親水性を持続させる耐久親水性が付与されている。なお、繊維への親水性の付与については、公知の方法を用いることができる。なお、本実施形態では、第2吸収層60の部分60Aを形成する繊維に、公知の親水性繊維処理剤(一例として特許3362348号公報に記載された処理剤)を用いて耐久親水性を付与している。一方、第2吸収層60の部分60Bを形成する繊維には、一般的な親水性が付与されている。本実施形態では、第2吸収層60を2層構造とし、部分60Aと部分60Bとをそれぞれ別の処理を施した繊維層(一例としてエアスルー不織布)を積層することで、第2吸収層60を形成している。
【0054】
第1吸収層58の第2吸収層60と反対側の部分58Aを形成する繊維には、第1吸収層58の第2吸収層60側の部分58Bを形成する繊維よりも、繊維の親水性を持続させる耐久親水性が付与されている。なお、本実施形態では、第1吸収層58の部分58Aを形成する繊維に、第2吸収層60の部分60Aと同様に、公知の親水性繊維処理剤を用いて耐久親水性を付与している。一方、第1吸収層58の部分58Bを形成する繊維には、一般的な親水性が付与されている。本実施形態では、第1吸収層58を2層構造とし、部分58Aと部分58Bとをそれぞれ別の処理を施した繊維層(一例としてエアスルー不織布)を積層することで、第1吸収層58を形成している。
【0055】
このように構成された吸収体52を有する吸収性本体40は、トップシート42と防漏シート44との間で、吸収体52の溝部56が形成された一方のシート面52Aがトップシート42側に位置し、吸収体52の他方のシート面52Bが防漏シート44側に位置するように配置されている。
【0056】
(弾性部材)
【0057】
吸収体52の厚み方向STに隣り合う第1吸収層58と第2吸収層60の間には、弾性部材70が配置されている。弾性部材70は、吸収体52の幅方向SWに沿って、複数個配列されている。弾性部材70は、例えば糸ゴムである。糸ゴムは、糸状の天然ゴム、スチレン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレンなどの合成ゴムで構成することができる。
【0058】
弾性部材70は、超音波による溶着(超音波シール)、ホットメルト接着剤による接着などにより第1吸収層58及び第2吸収層60に接合されている。第1吸収層58と第2吸収層60は、熱溶着(ヒートシール)、例えば超音波による溶着(超音波シール)、高周波による溶着(高周波シール)、ホットメルト接着剤による接着により互いに接合されている。
【0059】
複数の弾性部材70は、その長手方向が、溝部56の長手方向、つまりシート長手方向SLに一致するように配置されている。弾性部材70は、おむつ20の長手方向Lに伸縮可能である。これにより股部100の前身頃領域100Fと後見頃領域100Rとを結ぶ方向Lに伸縮性が付与される。
【0060】
つぎに吸収体52に溝部56を設けたことによる作用効果について説明する。
【0061】
本実施形態の吸収体52には、一方のシート面52Aにシート長手方向に延びる溝部56が形成されている。ここで、吸収体52に対して一方のシート面52A側から液体が流入した場合、流入した液体の一部が溝部56を通ってシート長手方向に移動しながら吸収体52に吸収される。このように吸収体52では、一方のシート面52A(トップシート42側)に溝部56を形成するため、例えば、一方のシート面が平坦な構成と比べて、液体のシート長手方向SLの拡散を早めることができる。これにより、吸収体52の吸収性が向上する。
【0062】
つぎに弾性部材70を、股部100の厚み方向Tに隣り合う2つの吸収層58、60の間に配置したことによる作用効果について説明する。
【0063】
実施形態によれば、吸収体52により、尿等の被吸収物が吸収される。ここで被吸収物が多量であり、被吸収物を吸収した吸収体52が重くなったとしても、弾性体70により股部100の前身頃領域100Fと後見頃領域100Rとを結ぶ方向Lに沿って収縮力が発現されるため、吸収体52の垂れ下がりが抑制される。これよりおむつ20が着用者の肌側に密着され着用者の脚周りに隙間が生じることがない。この結果、従来技術と比較して尿等が漏れるという問題発生を最小限に抑えることができる。
【0064】
また実施形態によれば、弾性体70が、2つの吸収層58、60の間に配置されているため、弾性部材70の伸縮に応じた段差等のおむつ表面の形態変化が、おむつ外側のバックシート46で顕現することがない。この結果、従来技術と比較しておむつ20の外観の見栄えが悪化するという問題発生を最小限に抑えることができる。
【0065】
また実施形態によれば、弾性体70が、2つの吸収層58、60の間に配置されているため、弾性部材70が伸縮したとしても弾性部材70が着用者の肌を直接締め付けることにはならない。この結果、従来技術と比較して着用感が悪化するという問題発生を最小限に抑えることができる。
【0066】
また実施形態によれば、弾性体70が、2つの吸収層58、60の間に配置されているため、弾性部材70の伸縮がトップシート42又はバックシート46に直接的な損傷を与えることはない。この結果、従来技術と比較してトップシート42又はバックシート46の経年劣化が早まるという問題発生を最小限に抑えることができる。
【0067】
以上のとおり実施形態によれば吸収体52の垂れ下がりに伴う漏れが抑制されると共に、外観デザインの見栄え悪化及び肌の直接締め付けに伴う着用感悪化が抑制される。
【0068】
更に複数の弾性部材70は、その長手方向が、溝部56の長手方向、つまりシート長手方向SLに一致するように配置されている。これにより弾性部材70を配置しない場合と比較して、液体のシート長手方向SLの拡散を早めることができる。この結果、吸収体52の吸収性が更に向上する。
【0069】
実施形態では、平面に展開させることが可能なパンツ型着用物品を想定して説明した。しかし、実施形態の吸収体52は、あらゆる形態のパンツ型着用物品に適用可能である。平面に展開させることが実質的に不可能な完全パンツ型の着用物品に適用することができる。また実施形態の吸収体52は、パンツ型着用物品の適用に限定されるわけでなく、尿取りパッド、軽失禁パッド、生理用パッドなどのあらゆる形態の吸収性物品に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
20 おむつ
40 吸収性本体
52 吸収体
58 第1吸収層
60 第2吸収層
70 弾性部材
100 股部
100F 前見頃領域
100R 後身頃領域