(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056958
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】菌床連結シート、その製造方法および菌床連結シートを用いたキノコ類の栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 18/65 20180101AFI20230413BHJP
【FI】
A01G18/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166481
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】521439671
【氏名又は名称】ジャパンアグリテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】森 隆久
【テーマコード(参考)】
2B011
【Fターム(参考)】
2B011EA02
2B011EA03
2B011EA05
2B011FA02
2B011GA03
2B011GA09
2B011GA10
(57)【要約】
【課題】キノコ類の品質を高品質に保ちながらもオートメーション化を図り、低コストでの菌床の製造およびキノコ類の栽培方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の菌床連結シートは、上面に開口を有する可撓性樹脂からなる容器本体8に菌床培地6が収容され、上記容器本体8の上面開口がシール用樹脂9によって密封された菌床13を複数有し、上記複数の菌床13が上記容器本体8および/または上記シール用樹脂9によって互いに列状に連結されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口を有する可撓性樹脂からなる容器本体に菌床培地が収容され、上記容器本体の上面開口がシール用樹脂によって密封された菌床を複数有し、上記複数の菌床が上記容器本体および/または上記シール用樹脂によって互いに列状に連結されている菌床連結シート。
【請求項2】
請求項1記載の菌床連結シートの製造方法であって、下記の工程(1)~(4)を備えるの菌床連結シートの製造方法。
(1)上面に開口を有する容器本体を、直列状に並んだ状態で搬送路上に送り出す容器本体供給工程。
(2)上記搬送路上に供給された容器本体を下流側に搬送しながら、上記容器本体の上面開口から菌床培地を充填する培地充填工程。
(3)上記菌床培地が充填された容器本体を下流側に搬送しながら、上記容器本体の上面開口を、シール用樹脂によって密封することにより菌床を得るトップシール工程。
(4)上面開口が密封された菌床を、上記搬送路の下流側から取り出すか、他の処理工程に送り出す取り出し・送り出し工程。
【請求項3】
容器本体供給工程(1)における容器本体の供給が、深絞包装機によって樹脂フィルムを容器本体形状に連続成形しながら搬送路上に送り出すことによってなされる請求項2記載の菌床連結シートの製造方法。
【請求項4】
上記搬送路上に取り出される容器本体が、個別に切断されることなく互いに繋がっている請求項2または3記載の菌床連結シートの製造方法。
【請求項5】
培地充填工程(2)の後、トップシール工程(3)の前に、菌床培地表面をプレスする工程(2-1)を備えた請求項2~4のいずれか一項に記載の菌床連結シートの製造方法。
【請求項6】
トップシール工程(3)において、シール用樹脂が巻き回されたシール用樹脂ロールと、通気フィルターが巻き回された通気フィルターロールとを準備し、上記シール用樹脂ロールからシール用樹脂を巻き出して所定の間隔で孔を設け、上記通気フィルターロールから通気フィルターを巻き出して上記シール用樹脂の孔を塞ぐ配置で上記シール用樹脂に重ねて一体化したシール用樹脂を連続的に作製し、上記シール用樹脂によって連続的に容器本体の上面開口をシールし、上記シール用樹脂は個別に切断されることなく互いに繋がっている請求項2~5のいずれか一項に記載の菌床連結シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1の菌床連結シートを用いるキノコ類の栽培方法であって、下記の工程(I)~(VI)を備えるキノコ類の栽培方法。
(I)上記搬送路の下流側から送り出された菌床連結シートを培養室に導入する菌床連結シート導入工程。
(II)上記培養室が、菌床連結シートを載置可能な栽培棚と、上記栽培棚と上記菌床連結シートとの間に配置される帯状のフロアマットとを有しており、上記フロアマットを、その上に載置された上記菌床連結シートごと水平方向に搬送して、導入された菌床連結シートを上記培養室内の所定位置に位置決めする第1の位置決め工程。
(III)上記培養室において、上記フロアマット上に載置された菌床連結シートの各菌床の菌糸を蔓延させて、菌床の熟成を行う培養工程。
(IV)培養工程(III)の後、上記培養室内のフロアマットを、その上に載置された上記菌床連結シートごと水平方向に搬送して、熟成させた菌床を有する菌床連結シートを育成室に送り出す送り出し工程。
(V)上記育成室が、熟成させた菌床を有する菌床連結シートを載置可能な育成棚と、上記育成棚と上記熟成させた菌床を有する菌床連結シートとの間に配置される帯状のフロアマットとを有しており、上記フロアマットを、その上に載置された上記熟成させた菌床を有する菌床連結シートごと水平方向に搬送して、熟成させた菌床を有する菌床連結シートを上記育成室内の所定位置に位置決めする第2の位置決め工程。
(VI)上記育成室において、上記各菌床の容器本体の上面開口の密封を解除し、熟成させた菌床からキノコ類を発茸させ、その育成を行う育成工程。
【請求項8】
第1の位置決め工程(II)および/または第2の位置決め工程(V)において、上記帯状のフロアマットの両端縁のそれぞれにワイヤが取り付けられているとともに、上記フロアマットの両端縁の外側に上記ワイヤに対応するウインチがそれぞれ設けられており、上記一対のウインチによるワイヤの巻き取りおよび巻き出しを連動させることにより、上記フロアマットの搬送が行われる請求項7記載のキノコ類の栽培方法。
【請求項9】
さらに、育成工程(VI)の後、上記育成室内のフロアマットを、その上に載置された上記キノコ類の育成が行われた菌床を有する菌床連結シートごと水平方向に搬送して、上記キノコ類の収穫を行う収穫工程(VII)を備えた請求項7または8記載のキノコ類の栽培方法。
【請求項10】
収穫工程(VII)において、上記キノコ類に当接してキノコ類を菌床から刈り取るための収穫刃を有する収穫用具を、上記収穫刃が搬送される菌床のキノコ類に当接しうる配置に設け、上記フロアマット上に載置されたキノコ類の育成が行われた菌床を有する菌床連結シートが、上記フロアマットごと搬送される途中で、上記収穫用具の収穫刃が上記キノコ類に順次当接し、上記キノコ類が菌床から刈り取られるようになっている請求項9記載のキノコ類の栽培方法。
【請求項11】
収穫工程(VII)において、キノコ類を収穫した後に、容器本体を廃棄するようになっており、上記容器本体の廃棄が、上記容器本体を平たく潰してロール状に巻き取ることにより行われる請求項10記載のキノコ類の栽培方法。
【請求項12】
収穫工程(VII)において、キノコ類を収穫した後に、菌床培地を廃棄するようになっており、上記菌床培地の廃棄が上記容器本体の巻き取り動作に関連させて行われる請求項11記載のキノコ類の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノコ類の栽培に用いる菌床を複数有する菌床連結シート、その菌床連結シートを製造する方法および菌床連結シートを用いたキノコ類の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キノコ類の栽培は、容器(例えば、ボトルや袋等の栽培容器)に菌床培地原料を充填し、上記容器ごと菌床培地原料の殺菌を行い、放冷して得られる菌床培地に対してキノコ類を植菌して行われている(例えば、特許文献1)。
しかし、特許文献1の方法は、品質に優れるキノコ類の収穫ができるものの、放冷に時間がかかるため、連続して作業を行うことができず、栽培の効率化の点で改善の余地がある。
【0003】
このため、例えば、特許文献2では、オートメーション化に適応するキノコ栽培容器が提案されている。また、特許文献3では、栽培容器の形状やその栽培容器に敷設する菌床培地の厚み、植菌の方法等を規定することにより、栽培効率を上げる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-271918号公報
【特許文献2】特開2020-39316号公報
【特許文献3】特開2020-130034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2のものは、オートメーション化に適することを優先するものであり、その栽培容器は特殊な形状を有する。このため、栽培容器の製造およびこの特殊な形状の栽培容器を搬送、培養、育成する工程で用いる装置の開発、製造に莫大なコストがかかる。また、特許文献3のものは、栽培効率がある程度高められているものの、栽培容器を個別に管理することが必要であるため、大量生産にはさらなる改善が必要である。
【0006】
そこで、本発明ではこのような背景下において、キノコ類の品質を高品質に保ちながらも全行程のオートメーション化を図り、低コストかつ効率よく菌床の製造およびそれにより得られた菌床を用いたキノコ類の栽培を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはかかる事情に鑑み、栽培容器の搬入から廃棄に至るすべての工程をオートメーション化することにより、迅速かつ低コストでキノコ類の栽培を行うことができるのではないかと考え鋭意検討した。その結果、栽培容器を直列状に並べて搬送路に送り出し、この栽培容器に連続的に菌床培地の充填を行うとともに、この栽培容器の密封をシール用樹脂によって連続的に行うことで、菌床の製造を低コストかつ効率よく行うことができ、しかも得られるキノコ類の品質を高品質に保つことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の要旨は、次の通りである。
[1] 上面に開口を有する可撓性樹脂からなる容器本体に菌床培地が収容され、上記容器本体の上面開口がシール用樹脂によって密封された菌床を複数有し、上記複数の菌床が上記容器本体および/または上記シール用樹脂によって互いに列状に連結されている菌床連結シート。
[2] [1]記載の菌床連結シートの製造方法であって、下記の工程(1)~(4)を備える菌床連結シートの製造方法。
(1)上面に開口を有する容器本体を、直列状に並んだ状態で搬送路上に送り出す容器本体供給工程。
(2)上記搬送路上に供給された容器本体を下流側に搬送しながら、上記容器本体の上面開口から菌床培地を充填する培地充填工程。
(3)上記菌床培地が充填された容器本体を下流側に搬送しながら、上記容器本体の上面開口を、シール用樹脂によって密封することにより菌床を得るトップシール工程。
(4)上面開口が密封された菌床を、上記搬送路の下流側から取り出すか、他の処理工程に送り出す取り出し・送り出し工程。
[3] 容器本体供給工程(1)における容器本体の供給が、深絞包装機によって樹脂フィルムを容器本体形状に連続成形しながら搬送路上に送り出すことによってなされる[2]記載の菌床連結シートの製造方法。
[4] 上記搬送路上に送り出される容器本体が、個別に切断されることなく互いに繋がっている[2]または[3]記載の菌床連結シートの製造方法。
[5] 培地充填工程(2)の後、トップシール工程(3)の前に、菌床培地表面をプレスする工程(2-1)を備えた[2]~[4]のいずれかに記載の菌床連結シートの製造方法。
[6] トップシール工程(3)において、シール用樹脂が巻き回されたシール用樹脂ロールと、通気フィルターが巻き回された通気フィルターロールとを準備し、上記シール用樹脂ロールからシール用樹脂を巻き出して所定の間隔で孔を設け、上記通気フィルターロールから通気フィルターを巻き出して上記シール用樹脂の孔を塞ぐ配置で上記シール用樹脂に重ねて一体化したシール用樹脂を連続的に作製し、上記シール用樹脂によって連続的に容器本体の上面開口をシールし、上記シール用樹脂は個別に切断されることなく互いに繋がっている[2]~[5]のいずれかに記載の菌床連結シートの製造方法。
【0009】
[7] [1]記載の菌床連結シートを用いるキノコ類の栽培方法であって、下記の工程(I)~(VI)を備えるキノコ類の栽培方法。
(I)上記搬送路の下流側から送り出された菌床連結シートを培養室に導入する菌床導入工程。
(II)上記培養室が、菌床連結シートを載置可能な栽培棚と、上記栽培棚と上記菌床菌床連結シートとの間に配置される帯状のフロアマットとを有しており、上記フロアマットを、その上に載置された上記菌床連結シートごと水平方向に搬送して、導入された菌床連結シートを上記培養室内の所定位置に位置決めする第1の位置決め工程。
(III)上記培養室において、上記フロアマット上に載置された菌床連結シートの各菌床の菌糸を蔓延させて、菌床の熟成を行う培養工程。
(IV)培養工程(III)の後、上記培養室内のフロアマットを、その上に載置された上記菌床連結シートごと水平方向に搬送して、熟成させた菌床を有する菌床連結シートを育成室に送り出す送り出し工程。
(V)上記育成室が、熟成させた菌床を有する菌床連結シートを載置可能な育成棚と、上記育成棚と上記熟成させた菌床を有する菌床連結シートとの間に配置される帯状のフロアマットとを有しており、上記フロアマットを、その上に載置された上記熟成させた菌床を有する菌床連結シートごと水平方向に搬送して、熟成させた菌床を有する菌床連結シートを上記育成室内の所定位置に位置決めする第2の位置決め工程。
(VI)上記育成室において、上記各菌床の容器本体の上面開口の密封を解除し、熟成させた菌床からキノコ類を発茸させ、その育成を行う育成工程。
[8] 上記第1の位置決め工程(II)および/または上記第2の位置決め工程(V)において、上記帯状のフロアマットの両端縁のそれぞれにワイヤが取り付けられているとともに、上記フロアマットの両端縁の外側に上記ワイヤに対応するウインチがそれぞれ設けられており、上記一対のウインチによるワイヤの巻き取りおよび巻き出しを連動させることにより、上記フロアマットの搬送が行われる[7]記載のキノコ類の栽培方法。
[9] さらに、育成工程(VI)の後、上記育成室内のフロアマットを、その上に載置された上記キノコ類の育成が行われた菌床を有する菌床連結シートごと水平方向に搬送して、上記キノコ類の収穫を行う収穫工程(VII)を備えた[7]または[8]記載のキノコ類の栽培方法。
[10] 収穫工程(VII)において、上記キノコ類に当接してキノコ類を菌床から刈り取るための収穫刃を有する収穫用具を、上記収穫刃が搬送される菌床のキノコ類に当接しうる配置に設け、上記フロアマット上に載置されたキノコ類の育成が行われた菌床を有する菌床連結シートが、上記フロアマットごと搬送される途中で、上記収穫用具の収穫刃が上記キノコ類に順次当接し、上記キノコ類が菌床から刈り取られるようになっている[9]記載のキノコ類の栽培方法。
[11] 収穫工程(VII)において、キノコ類を収穫した後に、容器本体を廃棄するようになっており、上記容器本体の廃棄が、上記容器本体を平たく潰してロール状に巻き取ることにより行われる[10]記載のキノコ類の栽培方法。
[12] 収穫工程(VII)において、キノコ類を収穫した後に、菌床培地を廃棄するようになっており、上記菌床培地の廃棄が上記容器本体の巻き取り動作に関連させて行われる[11]記載のキノコ類の栽培方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の菌床連結シートは、菌床培地を収容する容器本体の導入からその廃棄に至るまでキノコ類栽培のオートメーション化を実現可能にするものであり、本発明の菌床連結シートの製造方法は、高品質なキノコ類の栽培が可能な菌床を複数有する菌床連結シートを、低コストかつ短時間で製造することができる。また、本発明のキノコ類の栽培方法は、上記菌床連結シートを用いることにより、菌床の培養およびキノコ類の育成においてもオートメーション化を実現可能にできるものであり、低コストかつ効率よく高品質なキノコ類を効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は本発明の一実施の形態である菌床連結シートを上方から見た平面図であり、(b)は(a)のX-X縦断面図である。
【
図2】(a)は他の実施の形態である菌床連結シートを上方から見た平面図であり、(b)は(a)のY-Y縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態である菌床連結シートの製造方法に用いられる装置の模式的な説明図である。
【
図4】(a)~(c)はいずれも上記菌床連結シートに用いるシール用樹脂の構成を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施の形態であるキノコ類の栽培方法に用いられる設備の模式的な説明図である。
【
図6】上記キノコ類の栽培方法における収穫工程を示す模式的な説明図である。
【
図7】上記キノコ類の栽培方法に用いる設備の一部の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例の形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明の菌床連結シートは、キノコ類の栽培に用いられる菌床を複数有し、互いに列状に連結されているものであり、その製造方法は、複数の菌床を有する菌床連結シートをほぼオートメーション化して製造する方法である。そして、本発明のキノコ類の栽培方法は、上記菌床連結シートを用いて菌床を培養し、キノコ数を育成する方法である。上記キノコ類としては、例えば、シイタケ、マッシュルーム、エノキダケ、シメジ、マイタケ、ヒラタケ等があげられる。また、本発明において、菌床とは、植菌された後に容器に密封された状態の菌床培地を意味する。また、密封とは、キノコ類の呼吸を妨げないものの、雑菌の侵入を防止するように封をすることを意味する。
【0014】
一般に、栽培瓶等の容器を用いてキノコ類を栽培するには、まず、上記栽培瓶等の容器に菌床培地原料を充填し、上記容器ごと加熱殺菌を行って得られた菌床培地にキノコ類の種菌を植菌する。植菌された菌床培地は、雑菌等が侵入しないように密封され、菌床となる。ついで、この菌床を培養室で菌糸が菌床内に蔓延した状態(熟成させた菌床)となるまで培養し、育成室で密封を解除された後、子実体として収穫されるまで育成される。本発明におけるキノコ類の栽培(培養および育成)は、概ねこの流れにしたがって行われる。ただし、栽培瓶等の硬質な容器やプラスチック袋等の個別容器を必須としない点で、本発明は従来法とは大きく異なっている。
【0015】
<菌床連結シート>
本発明の一実施の形態である菌床連結シートは、例えば、
図1(a)、(b)に示すように、複数の菌床13が容器本体8およびシール用樹脂9によって互いに列状に連結されている。上記菌床連結シートを上方から見た平面図を
図1(a)に示し、そのX-X断面を
図1(b)に示す。なお、
図1(a)において、上記シール用樹脂9の樹脂フィルム11が透明であるため、その下に位置する菌床培地6が見えている。
このように、複数の菌床13は、隣り合う容器本体8が切り離されずに互いに繋がっているとともに、シール用樹脂9によって連続的に密封されているため、シール用樹脂9によっても互いに繋がっている。また、上記樹脂フィルム11は透光性を有するため、上記菌床培地6の表面に対し菌床13の培養に十分な照度を確保することができる。
【0016】
上記菌床13の容器本体8は、可撓性樹脂からなるボトムフィルム5が深絞包装機によって成形されたものであり(
図3参照)、上記可撓性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエチレン、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等があげられ、これらは単独または2種以上併せて用いることができる。また、上記ボトムフィルム5は、これらの材料からなる層を単層備えるものであっても、複層備えるものであってもよい。
【0017】
上記ボトムフィルム5の厚みは、容器本体8の可撓性を担保できるものであれば特に限定するものではないが、通常、50~1000μmであり、軽量化を図る観点から、好ましくは80~500μm、より好ましくは100~300μmであり、さらに好ましくは150~250μmである。本発明において容器本体8の可撓性が担保されるとは、菌床培地6を収容した状態で容器本体8を持ち上げるとその菌床培地6が崩れる等して、その形状を保つことができない程度に容器本体8自体が変形することを意味し、持ち上げても内部に収容した菌床培地6の形状をそのまま保つことができる、硬質のプレスチック製品(例えば、プランタ、コンテナ)とは異なることを意味する。また、上記ボトムフィルム5は、予定しない箇所からの発茸を防止する点から、遮光性を有するものが好ましく用いられる。
【0018】
上記容器本体8(1つの菌床13に対応するもの)の大きさは、特に限定するものではないが、栽培施設等の大きさや、取り扱いの容易性の観点から、例えば、幅および長さが100~1000mmであることが好ましく、200~800mmであることがより好ましく、300~500mmであることがさらに好ましい。上記容器本体の幅および長さは同じであっても、互いに異なっていてもよい。また、上記容器本体の高さは、特に限定するものではないが、菌床培地6とシール用樹脂9との間の空隙(ヘッドスペースS)(
図1参照)を所定の大きさに設定することが容易となる点から、例えば、30~500mmであることが好ましく、40~400mmであることがより好ましく、50~300mmであることがさらに好ましい。上記ヘッドスペースSとして、菌床培地6とシール用樹脂9との間の空隙が一定の形状を保つように設けると、菌床13の熟成が促進され、より早く菌床13全体に均一な状態で菌糸を蔓延させることができる。
【0019】
上記シール用樹脂9は可撓性を有しており、通気フィルター10と可撓性樹脂からなる樹脂フィルム11とで形成されており、通常、その過半が透光性を有している。上記通気フィルター10としては、空気を透過させるものの、雑菌の侵入を防止できるものであれば、特に限定するものではなく、菌床栽培用として市販されているものを用いることもできる。上記樹脂フィルム11としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエチレン、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等があげられ、これらは単独または2種以上併せて用いることができる。また、上記樹脂フィルム11は、これらの材料からなる層を単層備えるものであっても、複層備えるものであってもよい。さらに、通気フィルター10が予めシールテープ状に形成されているものであってもよい。この場合、樹脂フィルム11に対する接着作業をより容易にできる。
【0020】
上記通気フィルター10と樹脂フィルム11との接着方法は、特に限定するものではなく、例えば、ヒートシール、インパルスシール、超音波シール等の熱溶着や、接着剤による接着、また、上記通気フィルター10がシールテープ状の場合、その接着層を利用した接着によるものであってもよい。なお、上記通気フィルター10は、樹脂フィルム11の菌床培地6に対峙しない面から重ねて接着することが好ましい。このようにすると、通気フィルター10に余分な水分が含まれることを抑制でき、雑菌の侵入をより防止できるとともに、通気性をより確保できる傾向がみられる。また、菌床培地6およびキノコ類の菌糸に接する面積をより少なくでき、通気フィルター10自体に雑菌が繁殖することを抑制できる傾向がみられる。
【0021】
上記シール用樹脂9の厚みは、その可撓性を担保できるものであれば特に限定するものではないが、通常、その大部分を占める樹脂フィルム11の厚みが30~1000μmであり、軽量化を図る観点から、樹脂フィルム11の厚みが、好ましくは50~300μm、より好ましくは50~100μmである。上記シール用樹脂9の可撓性は、上記容器本体の可撓性の基準に準ずるものであり、硬質のプレスチック製品(例えば、プランタの蓋、コンテナの蓋)とは異なるものを意味する。
【0022】
また、シール用樹脂9は、
図2(a)、(b)に示すように、平面フィルム形状ではなく、密封した際に菌床培地6とシール用樹脂9との間の空隙(ヘッドスペースS)がより大きくなるように、外側に向けて凸部を設けた形状としてもよい。菌床培地の厚み(高さ)が一定であれば、上記ヘッドスペースSが大きい方がキノコ類の収穫量が増加する傾向がみられる。上記シール用樹脂9の凸部は、ヘッドスペースSをより多く確保できる点から、上記容器本体8と対峙する箇所全体が凸部に形成されていることが好ましい。このように、容器本体8と対峙する箇所全体を凸部に形成すると、容器本体8の高さまで菌床培地6を収容してもヘッドスペースSを確保できるようになるため、上記容器本体8の上端と菌床培地6の上面とを面一に合わせることができ、キノコ類の収穫時に、キノコ類の根元ギリギリに収穫用具の収穫刃を当てやすくなる。なお、上記菌床培地6は、培養および育成により膨張する傾向がみられることから、キノコ類の収穫の際には、上記容器本体8の上端より菌床培地6の上面が高くなることが多く、より一層、キノコ類の根元ギリギリに収穫刃を当てやすくなる。
【0023】
上記シール用樹脂9を外側に向けて凸部を設けた形状とした場合には、上記シール用樹脂9自体が立体的な成形となるため、その厚みはある程度の厚みがあることが好ましい。具体的には、上記シール用樹脂9の厚みが、50~1000μmであることが好ましく、軽量化を図る観点からは、より好ましくは80~500μm、さらに好ましくは100~300μmである。
【0024】
上記ヘッドスペースSの、容器本体における高さ(菌床培地6からシール用樹脂9までの距離H)は、キノコ類の根元ギリギリに収穫用具の収穫刃を当てることができる点および菌床13全体が大きくなり過ぎない点から、例えば、10~100mmであることが好ましく、15~90mmであることがより好ましく、20~80mmであることがさらに好ましい。シール用樹脂9が凸部を設けた形状である場合には、上記凸部のもっとも高いところ(菌床培地6からシール用樹脂9までの距離Hが最大になるところ)をその高さとする。
【0025】
上記容器本体に収容される菌床培地6の厚みは、特に限定するものではないが、容器本体の高さとヘッドスペースSの一定量の確保の点から、例えば、10~400mmであることが好ましく、20~300mmであることがより好ましく、30~200mmであることがさらに好ましい。
【0026】
なお、上記実施の形態では、複数の菌床13が容器本体8およびシール用樹脂9によって互いに列状に連結されているが、容器本体8のみ、またはシール用樹脂9のみによって互いに列状に連結されていてもよい。いずれか一方が連結されていれば、本発明の菌床連結シートとしての効果を発揮できるためである。ただし、複数の菌床13が容器本体8およびシール用樹脂9の両方で連結されるものであると、容器本体8の製造および菌床13の密封の解除作業がより容易となる傾向がみられる。
【0027】
<菌床連結シートの製造方法>
本発明の一実施の形態により複数の菌床13を有する菌床連結シートを製造するには、例えば、
図3に示す装置を用いることができる。この装置は、上面に開口を有する容器本体8を連続的に製造する深絞包装機1に、殺菌された菌床培地6を容器本体8に充填する培地供給装置3と、上記容器本体8に充填された植菌済の菌床培地6表面に上から圧をかけて内部の空気を抜くプレス機4(第1のプレス機4a、第2のプレス機4b)とが付設されたものである。なお、図において、2は菌床培地6を製造する殺菌ブレンダーである。
【0028】
上記深絞包装機1は、
図3の矢印Pで示す方向、すなわち、上流(紙面の左側)から下流(紙面の右側)に向かって樹脂製のボトムフィルム5を送り出し、途中に配置される成形金型7によって、このボトムフィルム5から、上面が開口した容器本体8を連続成形し、さらにその下流側において、シール金型17によって植菌済の菌床培地6が充填された上記容器本体8の上面開口をシール用樹脂9で連続的に密封することができるものである。なお、上記深絞包装機1は、ハム、ソーセージ等の畜産加工品、水産練り製品、農産物の包装に広く用いられるものを援用してもよい。
【0029】
より詳しく説明すると、上記深絞包装機1は、上記ボトムフィルム5を巻き回し可能な第1の巻き出しロール5aと、成形金型7と、容器本体8を搬送するロールコンベア(図示せず)と、シール金型17と、第2の巻き出しロール10aと、第3の巻き出しロール11aとを備えており、第1の巻き出しロール5aから巻き出されたボトムフィルム5を成形金型7で容器本体8形状に連続的に(上記ロール5aの巻き出しと連動して)深絞成形し、得られた容器本体8を上記ロールコンベアで下流側に搬送するようになっている。また、第2の巻き出しロール10aから巻き出された通気フィルター10と、第3の巻き出しロール11aから巻き出された樹脂フィルム11とが、所定の配置で重ねられて一体化したシール用樹脂9を、上記容器本体8の上面開口を塞ぐように配置し、シール金型17を用いてその上面開口を上記シール用樹脂9で連続的に密封(トップシール)するようになっている。
【0030】
なお、上記容器本体8の上面開口の密封に用いるシール用樹脂9に対する殺菌を行うため、上記容器本体8の内周面に向けられる面と対峙する配置でUV殺菌機12が備えられている。図において、15はボトムフィルム5に対するニップロール、16は通気フィルター10またはシール用樹脂9に対するニップロールである。
【0031】
一方、上記深絞包装機1において形成された容器本体8に菌床培地6を充填するための培地供給装置3は、殺菌ブレンダー2において殺菌された菌床培地6を搬送するベルトコンベア、スクリューコンベア等と、搬送中の菌床培地6に対してキノコ類の種菌を植菌する植菌機3aと、搬送された植菌済の菌床培地6を容器本体8の上面開口から内部に充填する充填ノズル3bとを備えるものである。上記植菌機3aとしては、例えば、所定量のオガ菌を上記菌床培地6に投入する機能を有するものや、所定の濃度に調整した種菌の水溶液を上記菌床培地6の表面に均一的に噴霧する機能を有するもの等があげられる。また、上記充填ノズル3bとしては、例えば、菌床等を所定量量り取って容器本体8に充填する汎用の自動充填装置があげられる。
【0032】
そして、容器本体8に植菌済の菌床培地6が充填された後、
図3に示すように、その菌床培地6内部に含まれる空気を排除し、設定された形状に菌床培地6表面をプレスするプレス機4が付設されている。上記プレス機4は、第1のプレス機4aおよび第2のプレス機4bを備えており、植菌済の菌床培地6の厚みおよび軟度に応じて複数回のプレスを行うことができるようになっている。
【0033】
上記プレス機4の下流側には、シール金型17が設けられており、このシール金型17によって、プレス後の容器本体8に対し、その上面開口をシール用樹脂9で被覆し密封することが行われるようになっている。すなわち、上記シール金型17は、上記上面開口を塞ぐ配置で重ねられたシール用樹脂9を熱シールして、次々と搬送され送り出される上記容器本体8を連続的に密封できるようになっている。
【0034】
このような装置を用い、例えば、つぎの(1)~(4)の工程を経由させることにより、複数の菌床13(植菌済の菌床培地6が密封状態で容器本体8に収容されたもの)が互いに列状に連結された菌床連結シートを得ることができる。なお、本実施の形態では、(3)トップシール工程までの工程を全てクリーンルーム内で行っている。また、ボトムフィルム5およびシール用樹脂9等は、予めエチレンオキサイドガス滅菌(EOG滅菌)等のガス滅菌やγ線照射等により殺菌したものを用いており、安全を期すために、ロールを解いて暴露した部分のみ、さらにUV殺菌機12等を用いて殺菌を行っている。なお、容器本体8は成形金型7で熱成形され、シール用樹脂9は熱シールされているため、いずれも熱による殺菌が行われた状態になっている。
【0035】
(1)容器本体供給工程
上記深絞包装機1の第1の巻き出しロール5aからボトムフィルム5を巻き出し、その途中に配置される成形金型7によって、ボトムフィルム5に凹部を連続的に成形し、上記凹部を上面に開口を有する容器本体8として工程に供給する工程である。これにより、容器本体8を個別に切断することなく互いに繋がった状態とし、ボトムフィルム5の長さ方向(直列状)に並んだ状態で、深絞包装機1上面に配置されたロールコンベア(図示せず)上に送り出すことができる。
【0036】
すなわち、この工程では、深絞包装機1によってボトムフィルム5に凹部を連続的に成形することで容器本体8を搬送路上に送り出しているため、殺菌済みの容器本体を個別に準備し、保管する等の手間がなくなり低コストを実現できる。また、容器本体8の殺菌を迅速かつ厳密に行うことができるため、キノコ類の栽培における雑菌混入を確実に抑制することができる。また、上記容器本体8が個別に切断されることなく互いに繋がっているため、直列状に並んだ状態で搬送路上に効率よく送り出すことができる。
なお、上記直列状とは、列状に連なって並べられたもの全般を意味し、一列に並べられたものだけでなく、複数列に並べられたものも含まれる。また、上記搬送路とは、容器本体8を搬送する送路そのものを意味し、必ずしもロールコンベアで構成される必要はない。
【0037】
上記容器本体8は、互いに切断されずに互いに繋がっているため、各容器本体8に自立性を持たせる必要がなく、厚みの薄いフィルムや柔軟性に富む樹脂フィルムによって成形されたものであってもよい。厚みの薄いフィルムや柔軟性に富む樹脂フィルムによって上記容器本体8が成形されていると、容器本体8自体が軽量であるため搬送が容易となり、後述するように、使用後の廃棄までオートメーション化が容易となる。上記容器本体8に用いる樹脂フィルムの厚みは、特に限定するものではないが、耐久性の点から100μm以上あることが好ましい。
【0038】
また、上記容器本体8に用いるボトムフィルム5は、子実体の原基が容器本体8の側面や底面に形成することを防止できる点から、遮光性のある樹脂フィルムを用いることが好ましい。そして、上記ボトムフィルム5として遮光性がない樹脂フィルムを用いた場合には、遮光性のあるフィルムや外容器で上記容器本体8の上面開口以外の部分を被覆することが好ましい。
なお、本発明において、ボトムフィルム5およびシール用樹脂9に用いる樹脂フィルムとは、巻き取れる程度の厚み、柔軟性を有する平たい樹脂をいい、その厚みは問わないものである。
【0039】
(2)培地充填工程
上記ロールコンベア上に送り出され、下流側に搬送される容器本体8に対し、培地供給装置3を用いてその上面開口から植菌済の菌床培地6を充填する工程である。例えば、殺菌ブレンダー2で製造された殺菌済みの菌床培地6に対し、植菌機3aによって搬送中にキノコ類の種菌を植菌する。ついで、充填ノズル3bによって植菌済の菌床培地6を容器本体8の上面開口から内部に連続的に充填する。これにより、菌床13を効率よく製造することができる。この実施の形態では、上記菌床培地6に(シイタケ種菌)を植菌している。
なお、上記菌床培地6の充填は、上記容器本体8が搬送される途中で行うものであればよく、必ずしも動いている最中の容器本体8に対して充填を行わなくてもよい。例えば、上記容器本体8の搬送は断続的に行われるものであってよく、その停止するタイミングで菌床培地6の充填を行ってもよい。
【0040】
(2-1)プレス工程
上記培地充填工程(2)の後、上記容器本体8に充填された植菌済の菌床培地6表面に対し、プレス機4等を用いてプレスを行う工程である。上記菌床培地6に対するプレスを行うことにより、上記菌床培地6の形状および厚みを整えることができ、後述する菌床の培養(熟成)工程での菌糸の蔓延速度を加速することができる。上記プレスは繰り返し行うことができ、この実施の形態では、
図3に示すように、第1のプレス機4aによるプレスを行い、さらに第2のプレス機4bによるプレスを行っている。菌床培地6の表面を繰り返しプレスすることにより、その形状の保持性を高めることができる。菌床培地6の保持性を高めることにより、菌糸の蔓延に伴って菌床13が野放図に膨れることを防止できる傾向がみられ、結果として得られるキノコ類の収量を高めることができる。なお、一般に、菌床13の内部に含まれる空気は菌床培地6全体の30~50体積%程度であり、内部の菌糸まで十分に空気が行き渡るようになっている。
【0041】
(3)トップシール工程
上記植菌済の菌床培地6が充填された容器本体8を下流側に搬送しながら、上記容器本体8の上面開口を、シール金型17を用いてシール用樹脂9を熱シールして密封する工程である。これにより、複数の菌床13を有する菌床連結シートを連続的に効率よく得ることができる。
【0042】
上記シール用樹脂9としては、例えば、
図4(a)に示すように、樹脂フィルム11と通気フィルター10とが重ねられ一体化したものを用いることができる。上記シール用樹脂9は、予め貫通孔11bが所定間隔で設けられた樹脂フィルム11を準備するか、搬送の途中で貫通孔11bを所定間隔で設ける樹脂フィルム11を
図3の白抜き矢印の方向に走行させ、上記通気フィルター10(
図4(c)参照)を上記樹脂フィルム11の走行に同期して走行させながら、上記貫通孔11bを塞ぐ配置(
図4(b)において破線で示す箇所)で重ねて接着させることにより、連続的に形成することができる。
なお、上記通気フィルター10としては、通常、通気性を有するが一般の雑菌を透過させないものが好ましく用いられる。また、上記樹脂フィルム11としては、通常、透光性を有するが通気性が少ないか、全く有しないものが好ましく用いられる。
【0043】
(4)取り出し・送り出し工程
上記得られた複数の菌床13を有する菌床連結シートを、深絞包装機1の下流側から取り出して、そのまま菌床13の培養およびキノコ類の育成に供するための商品として提供する工程である。また、あるいは、得られた複数の菌床13を有する菌床連結シートを、菌糸を蔓延させるための培養室へ送り出し、そのまま菌床13の培養およびキノコ類の育成を行ってキノコ類の収穫に供する工程である。どちらの工程を選択してもよい。
【0044】
上記一連の工程を経由させることによれば、菌床培地6を充填する対象である容器本体8の導入からオートメーション化を図ることができ、高品質なキノコ類を栽培できる菌床13を低コストかつ短時間で製造することができる。また、得られた菌床連結シートの菌床13は個々に密封され互いに繋がった状態であるため、万が一、雑菌に汚染された場合でも汚染された菌床13のみを取り除くことで菌床全体に汚染が広がることを防止でき、最小の損失に留めることができるようになっている。さらに、容器本体8が遮光性を有し、シール用樹脂9の過半が透光性を有していると、培養・育成工程において、菌床培地6の表面のみが高い照度が与えられるため、菌床培地6の表面にのみ菌糸層を発達させることができ、キノコ類の発生箇所を菌床培地6の表面のみに限定できる傾向がみられる。
【0045】
なお、本実施の形態では、(1)容器本体供給工程において、容器本体8が個別に切断されることなく互いに繋がっているが、容器本体8を直列状に並んだ状態で搬送路上に送り出すことができるものであれば、容器本体8はそれぞれ個別になっているものを用いてもよく、深絞包装機1を用いずに他の装置を用いてもよい。特に、容器本体8がそれぞれ個別になっている場合には、上記容器本体8を下から受けるためのU受けを上記容器本体供給工程に設けることが好ましい。すなわち、上記U受けを設けると、容器本体8が可撓性を有するものであっても直列状に並んだ状態で搬送路上に送り出すことが容易となる。
【0046】
また、本実施の形態では、(1)容器本体供給工程において、深絞包装機1を用いて容器本体8を連続的に成形しているが、容器本体8を直列状に並んだ状態で搬送路上に連続的に送り出すことができれるものであれば、深絞包装機1を用いなくてもよい。ただし、容器本体8の搬送と、栽培・収穫が終わった後の廃棄が容易であるため、容器本体8は連続的に成形されたものであることが好ましい。
【0047】
そして、本実施の形態では、搬送中の菌床培地6に対してキノコ類の種菌を植菌する植菌機3aを有しているが、他の方法で菌床培地6にキノコ類の種菌を植菌することができれば、上記植菌機3aは必ずしも用いなくてもよい。菌床培地6にキノコ類の種菌を植菌する他の方法としては、例えば、キノコ類の種菌を殺菌ブレンダー2に直接投入することがあげられる。また、搬送過程で種菌を投入する方法としては、上記殺菌ブレンダー2の直下にホッパーを設け、そこに集積した菌床培地6と種菌とを混合する装置を設けることがあげられる。
【0048】
そして、本実施の形態では、(3)トップシール工程において、樹脂フィルム11の貫通孔11bを、通気フィルター10で塞いでシール用樹脂9を形成しているが、上記貫通孔11bを塞ぐために用いるのは通気フィルター10でなくてもよく、例えば、酸素透過性を有する樹脂フィルム等を用いてもよい。ただし、コストおよび加工性の点から、通気フィルター10が好ましく用いられる。また、シール用樹脂9は採光性と通気性を担保できるものであれば、どのようなものであってもよく、このように複数の素材を組み合わせて一体化したものだけでなく、単独の素材からなるものを用いてもよい。さらに、後の工程における剥離性(イージーピール性)を考慮して、ボトムフィルム5に対して剥離しやすい素材からなるものを用いてもよい。
【0049】
さらに、本実施の形態では、(2-1)プレス工程を設け、上記容器本体8に充填された植菌済の菌床培地6表面に対するプレスを行っているが、上記菌床培地6の状態や植菌された種菌の種類によっては、このプレスは必ずしも行わなくてもよい。また、本実施の形態では、第1のプレス機4aによるプレスを行った後、さらに第2のプレス機4bによるプレスを行い合計2回のプレスを行っているが、プレスの回数は2回に限るものではなく、1回だけでも、3回以上であってもよい。
【0050】
<キノコ類の栽培方法>
つぎに、本発明の一実施の形態により、上記複数の菌床を有する菌床連結シートを用いたキノコ類の栽培方法について説明する。まず、上記取り出し・送り出し工程で装置から取り出した複数の菌床13を有する菌床連結シートを、例えば
図5に示す、栽培のための設備に導入し、後述する培養室20において、その菌床連結シートの菌床13内に菌糸を蔓延させる熟成を行い、ついで、育成室27において、シール用樹脂9を剥離して容器本体8の上面開口の密封を解除し、熟成させた菌床から発茸を促し、発茸したキノコ類の育成を行う。
すなわち、本発明のキノコ類の栽培方法における設備には、培養室20と育成室27とが設けられている。以下、各室20、27について説明する。
【0051】
(培養室)
上記複数の菌床13を有する菌床連結シートを載置する培養室20は、菌床13の熟成に適した温度および湿度に調整することが可能であり、熟成を促進させるための照明装置、フレッシュな空気を供給し二酸化炭素を低濃度に維持するための換気装置、培養室20内の空気を循環させるための送風機や、温度計、湿度計、温度制御装置、湿度制御装置等が備えられている。そして、複数の菌床13を有する菌床連結シートを載置可能な栽培棚21として、棚板22が上下方向に多段に昇降自在に設けられたものが複数配置されている。上記棚板22の上には、上記棚板22と略同じ形状のフロアマット23が配置され、その両端縁には、ウインチ26で巻き取り可能なワイヤ24がそれぞれ取り付けられている。上記ウインチ26は、帯状のフロアマット23またはワイヤ24を巻き取るため、上記栽培棚21の棚柱25の、上記棚板22を支持する箇所の近傍に設けられている。これにより、上記一対のウインチ26の、上記ワイヤ24の巻き取りおよび巻き出しを連動させることで、上記フロアマット23を水平方向に搬送できるようになっている。
【0052】
上記フロアマット23は、例えば、合成樹脂、合成ゴム等の材料で形成されたものであり、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂、スチレン・ブタジエンゴム等の合成ゴムからなるものを用いることができる。本実施の形態では、耐水性が高く、軽量で搬送しやすく、巻き取り時の柔軟性に富むことから、ポリエチレン樹脂を用いいている。そして、平面視における形状は、その上に載置される複数の菌床13を有する菌床連結シートと一体化した搬送が容易となる点から、互いに繋がって全体が帯状になっている菌床連結シートより大きく、かつ、上記棚板22より小さくなっている。また、通水性を担保するため、上下方向に貫通孔が多数設けられており、その上面に載置される菌床連結シートをしっかりホールドできるように、その上面が摩擦による負荷が大きい形状になっている。一方で、棚板22の上をスムーズに搬送できるように、その底面が摩擦による負荷が小さい形状になっている。
【0053】
(育成室)
上記培養室20で培養した熟成した菌床13を育成する育成室27は、熟成した菌床13の発茸を促し、発茸したキノコ類(子実体28)を育成するのに適した温度および湿度に調整することが可能であり、図示しない、キノコ類を育成するために必要な照明装置、フレッシュな空気を供給し二酸化炭素を低濃度に維持するための換気装置、育成室27内の空気を循環させるための送風機や、温度計、湿度計、温度制御装置、湿度制御装置等が備えられている。また、上記菌床13に対する散水を行うための散水管(図示せず)と、上記菌床連結シートの菌床13のシール用樹脂9を、その一端を掴んで上方に引っ張ることで剥離して容器本体8の上面開口の密封を解除する剥離装置(図示せず)と、子実体28を連続的に収穫するための収穫用具29が備えられている。なお、上記育成室27において、他の構成は上記培養室20と同じであり、同一部分には同一番号を付してその説明を省略する。
【0054】
上記収穫用具29は、
図6に示すように、フロアマット23の進行方向(図において白抜き矢印が指す方向)に対して上り傾斜になっている分離台29aと、上記分離台29aの上に配置され、収穫した子実体28を収集機34にまで搬送する上りコンベア29bと、その刃先が子実体28の根元に当たるように設定された収穫刃29cを有しており、上記フロアマット23上に載置された複数の菌床13を有する菌床連結シートをフロアマット23ごと上記収穫用具29に向かう方向に搬送することにより、上記収穫用具29の収穫刃29cが上記子実体28の根元に順次当接し、上記子実体28を菌床13から連続的に刈り取ることができるようになっている。本実施の形態では、上記収穫刃29cとしてバンドソーのノコ刃を用いている。
【0055】
なお、上記培養室20と上記育成室27の間には、
図7でその一部を拡大して示すように、ガイドバー36と、上記ガイドバーに沿って昇降自在の渡りコンベア37が備えられており、上記複数の菌床13を有する菌床連結シートを上記培養室20から上記育成室27へ自動的に搬送できるようになっている。この実施の形態では、上記渡りコンベア37としてベルトコンベアを用いており、まず、上記渡りコンベア37を培養室20と育成室27の棚板22と同じ高さになるようにガイドバー36に沿って昇降させ、ついで、菌床13が互いに繋がって全体が帯状になっている菌床連結シートの一端を渡りコンベア37の一端に載置し、その状態で渡りコンベア37を作動させることにより、仮想線13’で示すように複数の菌床13を有する菌床連結シートを他端側へ搬送することができるようになっている。これにより、培養室20から育成室27に熟成した菌床13を自動的に移動させることができ、省力化を達成することができる。
【0056】
また、上記育成室27の外部には、子実体28の収穫後に容器本体8を巻き取って廃棄するための巻き取りロール31と、廃棄される菌床培地6を収集する回収箱33と、収穫した子実体28を自動的に回収する収集機34とが設置されている。
【0057】
上記巻き取りロール31は、上記ウインチ26と連動しており、上記フロアマット23の搬送とともに複数の菌床13を有する菌床連結シートを搬送し、収穫が終わり廃棄する容器本体8を巻き取るようになっている。すなわち、上記容器本体8の巻き取りにおいて、その上面開口が地面方向を向く際に、上記容器本体8に収容された菌床培地6が重力にしたがって落下するが、その落下地点近傍に回収箱33を配置することによって上記菌床培地6を回収できるようになっている。上記収集機34は、収穫した子実体28を所定位置まで搬送するものであり、本実施の形態では、ベルトコンベアを用いている。
【0058】
上記設備を用い、例えば、つぎの(I)~(VI)の工程を経由させることにより、上記菌床連結シートを用いてキノコ類を栽培することができる。
【0059】
(I)菌床連結シートを培養室に導入する菌床連結シート導入工程。
(II)菌床連結シートを上記培養室内の所定位置に位置決めする第1の位置決め工程。
(III)菌床連結シートの各菌床の熟成を行う培養工程。
(IV)熟成させた菌床を有する菌床連結シートを育成室に送り出す送り出し工程。
(V)熟成させた菌床を有する菌床連結シートを上記育成室内の所定位置に位置決めする第2の位置決め工程。
(VI)熟成させた菌床からキノコ類を発茸させ、その育成を行う育成工程。
【0060】
(I)菌床連結シート導入工程
上記得られた複数の菌床13を有する菌床連結シートを、例えば、昇降自在の棚差し機(図示せず)を用いることにより、培養室20の栽培棚21に載置する工程である。このとき、上記フロアマット23の大部分を上記棚差し機側のウインチ26に巻き取らせ、巻き出されているフロアマット23の上に、菌床13が互いに繋がって全体が帯状になっている菌床連結シートの一端を載置することにより、フロアマット23の搬送とともに複数の菌床13を有する菌床連結シートを搬送し、培養室20に導入することができる。
【0061】
(II)第1の位置決め工程
ついで、上記栽培棚21の育成室27側に配置されたウインチ26によるワイヤ24の巻き取りと、上記栽培棚21の棚差し機側に配置されたウインチ26によるワイヤ24の巻き出しを連動させて、上記ワイヤ24が取り付けられたフロアマット23を所定位置まで搬送する工程である。上記フロアマット23を所定位置まで水平方向に搬送することにより、上記複数の菌床13を有する菌床連結シートも同様に搬送され、培養室20の所定位置に位置決めされる。
【0062】
(III)培養工程
上記所定位置まで搬送された菌床連結シートの各菌床13を、育成室27で所定期間培養(熟成)する工程である。これにより、菌床内に菌糸が蔓延して子実体の原基形成が促される。本実施の形態では、培養室20内の温度を22℃、湿度70%に設定し、所定の間隔で光を照射すると、およそ50~70日間で菌床13を上記状態にまで熟成させることができる。
【0063】
(IV)送り出し工程
上記両ウインチ26を連動させ、フロアマット23をその上に載置された上記熟成した菌床13を有する菌床連結シートごと水平方向に搬送して、培養室20から取り出し、上記培養室20と育成室27との間に配置された渡りコンベア37を利用して育成室27に送り出す工程である。そして、育成室27のフロアマット23の大部分を上記培養室20側のウインチ26に巻き取り、上記熟成した菌床13を有する菌床連結シートの一端を上記ウインチ26から巻き出されたフロアマット23の上に載置することで、つぎの(V)第2の位置決め工程の準備を行う。
【0064】
(V)第2の位置決め工程
上記第1の位置決め工程(II)と同様に、上記一対のウインチ26によるワイヤ24の巻き取りおよび巻き出しを連動させることにより、上記ワイヤ24が取り付けられたフロアマット23を所定位置まで搬送する工程である。上記フロアマット23を所定位置まで水平方向に搬送することにより、上記熟成した菌床13を有する菌床連結シートも同様に搬送され、育成室27の所定位置に位置決めされる。
【0065】
(VI)育成工程
上記所定位置まで搬送された菌床連結シートの、熟成された菌床13の密封を解除して発茸を促し、発茸したキノコ類を育成する工程である。すなわち、本実施の形態では、上記菌床13について、シール剥離装置(図示せず)を用い、容器本体8の上面開口を被覆しているシール用樹脂9を剥離してその密封を解除し、温度5~10℃程度の寒冷下で1日経過させて、発茸刺激を行う。ついで、育成室27の温度13~18℃、湿度90%に設定し、所定の間隔で光を照射することにより、上記発茸したキノコ類(子実体28)をおよそ7~14日間で収穫できる程度の大きさに成長させている。
【0066】
(VII)収穫工程
上記収穫できる大きさにまで育成された子実体28に対し、上記フロアマット23の搬送と収穫用具29の作動とを組み合わせて、連続的に刈り取りを行う。すなわち、本実施の形態では、上記収穫用具29の収穫刃29cが上記子実体28の根元に当たるように設定されているため、上記棚板22の上に上記収穫用具29を配置し、上記フロアマット23を上記収穫用具29に向かう方向に搬送だけで、上記フロアマット23の上に載置された複数の菌床13を有する菌床連結シートも一緒に上記収穫用具29に向かって搬送される。このため、
図6に示すように、順次送られてくる子実体28が上記収穫刃29cに次々当接し、上記収穫用具29自体は固定したままで子実体28を連続的に刈り取ることができるようになっている。
【0067】
上記一連の工程を経由させることによれば、キノコ類の栽培においてもオートメーション化を実現でき、低コストかつ短時間で高品質なキノコ類を栽培することができる。
【0068】
なお、キノコ類の菌床栽培においては、一般に、子実体28を菌床13から刈り取った後、再度、上記菌床13に発茸刺激を与えることで2回目の子実体28を発茸させ育成することが行われる。しかし、本発明の栽培方法では、菌床連結シートの各菌床13において、子実体28の発茸および育成を1回限りのものとすることが好ましい。このため、本実施の形態では、子実体28の刈り取り(収穫)した後に、上記子実体28以外の部分(菌床培地6、容器本体8)はすべて廃棄している。。
【0069】
キノコ類の収穫が終わった複数の菌床13を有する菌床連結シートは、例えば、つぎのように容器本体8と菌床培地6とに分別されて、それぞれ廃棄される。
【0070】
すなわち、使用済みの容器本体8の廃棄に関して、本実施の形態では、容器本体8がボトムフィルム5からなり、個別に切断されることなく互いに繋がっているため、巻き取りロール31に巻き回してロール状に巻き取り、容器本体8の回収を連続的に行っている。このため、上記巻き回されたロールを交換するだけで上記容器本体8を廃棄でき、容器本体8の廃棄を容易に行うことができる。さらに、容器本体8自体の嵩を減らすことができ、この点においても廃棄物の取り扱いが容易になっている。
【0071】
また、使用済みの菌床培地6の廃棄に関して、本実施の形態では、上記容器本体8の廃棄(上記容器本体8の巻き取り動作)に関連して行っている。
図5に示すように、上記容器本体8は巻き取りロール31で巻き取られているため、上記容器本体8の上面開口が下面を向くと、内部に収容されている菌床培地6は重力に従い落下する。よって、上記菌床培地6の落下地点近傍に、これを回収して廃棄するための回収箱33を設置し、菌床培地6を自動的に廃棄できるようになっている。
【0072】
なお、本実施の形態では、培養室20および育成室27に備えられるフロアマット23の材料としてポリエチレン樹脂を用いているが、菌床13および菌床連結シートの大きさや重量によっては、他の樹脂、ゴム等を用いてもよい。また、上記実施の形態では、上記フロアマット23の大きさが、平面視における形状として、互いに繋がって全体が帯状になっている複数の菌床13を有する菌床連結シートより大きく、かつ、上記棚板22より小さくなっているが、上記棚板22に載置可能な大きさであればどのようなものであってもよい。また、上記記フロアマット23の通気性が十分に担保されている場合には、上下方向に貫通孔を設ける必要がない。また、フロアマット23の表面および裏面の形状は任意のものに形成してもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、培養室20に設けられる渡りコンベア37として、ベルトコンベアを用いているが、上記渡りコンベア37は必ずしもベルトコンベアを用いなくてもよい。また、本実施の形態では、育成室27に設けられる収穫用具29の収穫刃29cとして、バンドソーのノコ刃を用いているが、上記収穫刃29cは必ずしもバンドソーのノコ刃を用いなくてもよく、例えば、鋭利な刃物等を用いてもよい。そして、本実施の形態では、育成室27に設けられる収集機34として、ベルトコンベアを用いているが、上記収集機34は必ずしもベルトコンベアを用いなくてもよく、例えば、スクリューコンベア等を用いてもよい。
【0074】
そして、本実施の形態では、(I)菌床連結シート導入工程において、昇降自在の棚差し機を用いて複数の菌床13を有する菌床連結シートを培養室20に導入しているが、必ずしも棚差し機を用いなくてもよく、他の機械を用いて行うようにしてもよい。また、複数の菌床13を有する菌床連結シートを手動によって培養室20に導入してもよい。
【0075】
また、本実施の形態では、(II)第1の位置決め工程において、一対のウインチ26を連動させてワイヤ24が取り付けられたフロアマット23の搬送を行っているが、フロアマット23の搬送は他の方法で行ってもよい。また、フロアマット23の搬送は手動で行ってもよい。
【0076】
さらに、本実施の形態では、(III)培養工程において、培養室20内の温度を22℃、湿度70%に設定し、50~70日間の培養を行っているが、培養工程における培養室20の温度および湿度、菌床13の培養日数は、キノコ類の種類やその菌の状態に応じて適宜設定することが好ましい。
【0077】
そして、本実施の形態では、(IV)送り出し工程において、渡りコンベア37を利用して熟成させた菌床13を有する菌床連結シートを育成室27に搬入しているが、必ずしも渡りコンベア37を用いなくてもよく、他の機械を用いて行うようにしてもよい。また、熟成させた菌床13を有する菌床連結シートを手動によって育成室27に搬入してもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、(V)第2の位置決め工程において、一対のウインチ26を連動させてワイヤ24が取り付けられたフロアマット23の搬送を行っているが、フロアマット23の搬送は他の方法で行ってもよい。また、フロアマット23の搬送は手動で行ってもよい。
【0079】
さらに、本実施の形態では、(VI)育成工程において、シール用樹脂9の一端をつかみ上方へ引っ張るシール剥離装置を用いて菌床13のシール用樹脂9(トップシール)を剥離しているが、必ずしもこのようなシール剥離装置を用いなくてもよく、他の装置を用いてシール用樹脂9の剥離を行ってもよい。また、シール用樹脂9を剥離するのではなく、容器本体8の上部開口に沿ってシール用樹脂9に切り込みを入れて菌床13の密封を解除するようにしてもよい。このように、シール用樹脂9に切り込みを入れて菌床13の密封を解除すれば、切込みを入れた箇所以外の部分においてシール用樹脂9で菌床13が互いに繋がった状態を維持することができる。シール用樹脂9において凸部を設けた形状とした場合にも、同様に、菌床13の密封の解除を、シール用樹脂9の剥離でも、切込みを入れても行うことができる。また、シール用樹脂9は装置によらず手動によって剥離または切込みをいれてもよい。
【0080】
そして、本実施の形態では、(VII)収穫工程を設けているが、子実体28の収穫に際してこの工程は必須ではなく、例えば、子実体28の収穫を手動で行ってもよい。
【0081】
さらに、(VII)収穫工程において、フロアマット23の搬送と収穫用具29の作動とを組み合わせることで、連続的な刈り取りを行っているが、必ずしもこれらを組み合わせて行わなくてもよく、他の方法によって子実体28の刈り取りを行うようにしてもよい。また、上記収穫用具29として、分離台29aと、上りコンベア29bと、収穫刃29cとを有するものを用いているが、必ずしもこれに用いなくてもよく、他の器具を用いてもよい。
【0082】
また、本実施の形態では、収穫が終わった後の容器本体8の廃棄を、巻き取りロール31に巻き回してロール状に巻き取って行っているが、必ずしも巻き取りロール31を用いて行わなくてもよい。例えば、上記容器本体8を切断したり、折り畳んだりして上記容器本体8を廃棄してもよい。
【0083】
さらに、本実施の形態においても複数の菌床13を有する菌床連結シートを使い回し、発茸刺激を与えて何度も子実体28を育成することは可能である。しかし、2回目以降の発茸刺激には菌床13を浸水する等の大掛かりな作業が必要となり、作業にかかる時間、労力や浸水を行う装置等が余分に必要となる。また、浸水させた菌床13は水分を多く含むため、虫が産卵する等の害虫被害を受けやすくなる。このため、複数の菌床13を有する菌床連結シートを使い回すと材料コストは低減するが、育成工程において害虫対策に多大な注意および対策が必要となり生産コストが上昇する。また、2回目以降の子実体は一般に収量が低減したり、見栄えが悪くなったりする傾向がみられる。これらを総合的に勘案した結果、高品質な子実体28を低コストで提供するため、複数の菌床13を有する菌床連結シートを一度きりの使用とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の菌床連結シート、その製造方法および菌床連結シートを用いたキノコ類の栽培方法は、高品質のキノコ類を低コストで効率よく栽培するのに好適である。
【符号の説明】
【0085】
6 菌床培地
8 容器本体
9 シール用樹脂
13 菌床