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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056965
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
B65D1/02 230
B65D1/02 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166502
(22)【出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 玲太
(72)【発明者】
【氏名】安川 大樹
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA17
3E033CA02
3E033DD02
3E033EA01
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】角形ボトルにおける底部コーナー部の接地部付近を起点とする座屈変形を抑制する。
【解決手段】胴部側面部41と、各胴部側面部41の間に位置する面取りされた胴部コーナー部42とを含むように胴部4を形成し、各胴部側面部41の下方に位置する底部側面部51と、各胴部コーナー部42の下方に位置し、かつ、各底部側面部51の間に位置して、底面側に向かって容器内方に絞り込まれるように形成された底部コーナー部52と、底面に形成された接地部55とを含み、接地部55の外周縁が、接地部55から離れるにつれて、縦断面形状が円弧状、又は楕円弧状となるように立ち上がる接地部隣接領域54を介して、底部側面部51及び底部コーナー部52のそれぞれに連続するように底部5を形成し、底部コーナー部52に、下端側が接地部隣接領域54の上端54aを超えて、接地部隣接領域54内に突出している凹溝部53を設ける。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部、及び底部を備える合成樹脂製容器であって、
前記胴部が、胴部側面部と、前記胴部側面部の間に位置する胴部コーナー部とを含み、
前記底部が、前記胴部の前記胴部側面部の下方に位置する底部側面部と、前記胴部の前記胴部コーナー部の下方に位置し、かつ、前記底部側面部の間に位置して、前記底部の底面側に向かって容器内方に絞り込まれるように形成された底部コーナー部と、前記底部の底面に形成された接地部とを含み、
前記接地部の外周縁が、前記接地部から離れるにつれて、縦断面形状が円弧状、又は楕円弧状となるように立ち上がる接地部隣接領域を介して、前記底部側面部及び前記底部コーナー部のそれぞれに連続し、
前記底部コーナー部に、高さ方向上方から下方に向かって延在する少なくとも一つの凹溝部が設けられ、かつ、前記凹溝部の下端側が、前記接地部隣接領域の上端を超えて、前記接地部隣接領域内に突出していることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
高さ方向に沿った前記接地部から前記凹溝部の下端までの高さが、0.5~3mmである請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記肩部が、前記胴部の前記胴部側面部の上方に位置して、左右対称に横幅を徐々に狭めて前記口部の下端に連接する肩部側面部と、前記胴部の前記胴部コーナー部の上方に位置し、かつ、前記肩部側面部の間に位置する肩部コーナー部とを含み、
前記肩部コーナー部側に始端を有し、前記胴部コーナー部側に終端を有する肩部側凹溝部が設けられている請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記肩部コーナー部の両側縁に沿って側縁溝部が設けられている請求項3に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記胴部コーナー部の両側縁に沿って縦溝部が設けられているとともに、前記縦溝部が、前記側縁溝部の延長線上に配設されている請求項4に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて、射出成形や圧縮成形などによって有底筒状のプリフォームを作製し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形によってボトル状に成形してなる合成樹脂製容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。
【0003】
この種の合成樹脂製容器にあっては、内容物を充填密封して出荷された後、その搬送や保管に際して、箱詰めされた状態で積み重ねられることが多々あり、そのときに軸方向に加わる荷重によって座屈変形するなどして、商品価値を損ねてしまわないようにすることが要求される。
【0004】
座屈変形の起点となり易い部位が何処になるかは、容器全体の形状と細部の形状との兼ね合いによるが、例えば、特許文献1では、丸形ボトルと称される容器において、側面強度を高めるために形成された環状の溝部を起点とする座屈変形を抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-179847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、角形ボトルと称される容器において、特に、底部コーナー部の接地部付近を起点とする座屈変形を抑制すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る合成樹脂製容器は、口部、肩部、胴部、及び底部を備える合成樹脂製容器であって、前記胴部が、胴部側面部と、前記胴部側面部の間に位置する胴部コーナー部とを含み、前記底部が、前記胴部の前記胴部側面部の下方に位置する底部側面部と、前記胴部の前記胴部コーナー部の下方に位置し、かつ、前記底部側面部の間に位置して、前記底部の底面側に向かって容器内方に絞り込まれるように形成された底部コーナー部と、前記底部の底面に形成された接地部とを含み、前記接地部の外周縁が、前記接地部から離れるにつれて、縦断面形状が円弧状、又は楕円弧状となるように立ち上がる接地部隣接領域を介して、前記底部側面部及び前記底部コーナー部のそれぞれに連続し、前記底部コーナー部に、高さ方向上方から下方に向かって延在する少なくとも一つの凹溝部が設けられ、かつ、前記凹溝部の下端側が、前記接地部隣接領域の上端を超えて、前記接地部隣接領域内に突出している構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、角形ボトルにおける底部コーナー部の接地部付近を起点とする座屈変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す側面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す底面図である。
図5図4のA-A要部端面図である。
図6図4のB-B要部端面図である。
図7図5に示す端面のうち一点鎖線で囲む部分を実線で示し、図6に示す端面のうち一点鎖線で囲む部分を鎖線で示して、これらを重ねて示す説明図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。
図10】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す側面図である。
図11】本発明の第二実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す底面図である。
図12図11のC-C要部端面図である。
図13図11のD-D要部端面図である。
図14図12に示す端面のうち一点鎖線で囲む部分を実線で示し、図13に示す端面のうち一点鎖線で囲む部分を鎖線で示して、これらを重ねて示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図であり、図2は、同正面図、図3は、同側面図、図4は、同底面図である。
【0012】
これらの図に示す容器1は、口部2、肩部3、胴部4、及び底部5を備えており、胴部4が概ね角筒状に形成された、一般に、角形ボトルと称される容器形状を有している。
【0013】
このような容器1は、熱可塑性樹脂を使用して、射出成形や圧縮成形などにより有底筒状に成形されたプリフォームを作製し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などにより所定の容器形状に成形することによって製造することができる。
【0014】
使用する熱可塑性樹脂としては、ブロー成形が可能な任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,非晶ポリアリレート,ポリ乳酸,ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステルが使用でき、特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが好適に使用できる。これらの樹脂は二種以上混合してもよく、他の樹脂をブレンドしてもよい。ポリカーボネート,アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン-エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用できる。
また、プリフォームは、単層に成形するに限らず、容器1に求められる特性に応じて、ガスバリヤー層などを含む多層に成形することもできる。
【0015】
口部2は、内容物の注入出口となる円筒状の部位であり、口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのネジ山2aが設けられている。
また、口部2には、周方向に沿って外方に突出する環状のネックリング2bが設けられている。ネックリング2bの直下から、概ね同一径で円筒状に垂下する首下部2cを含めて口部2というものとし、このような口部2の下端が、口部2と胴部4との間をつなぐ肩部3に連接している。
【0016】
胴部4は、容器1の高さ方向の大半を占める部位であり、上端が肩部3に連接し、下端が底部5に連接している。
ここで、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、この状態(図2に示す状態)で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0017】
本実施形態において、概ね角筒状に形成された胴部4は、角部がR面取り状又はC面取り状に面取りされた方形状(正方形状又は長方形状;図示する例では、長方形状)の横断面形状(中心軸Cに直交する面で切断した断面の形状)を有しており、対向する二組の胴部側面部41と、各胴部側面部41の間に位置する面取りされた胴部コーナー部42とを含むように形成されている。
【0018】
なお、図示する例では、胴部4の長辺側に位置する胴部側面部41に符号41a、胴部4の短辺側に位置する胴部側面部41に符号41bを付して便宜上区別しているが、これらを総称して胴部側面部41というものとする。
【0019】
胴部4の高さ方向中央から底部5側に寄った部位には、当該部位の剛性を高めるなどの目的で、周方向に沿って延在する周溝40が設けられている。このような周溝40は適宜省略してもよいが、図示する例において、周溝40によって上下に分けられた上胴部4aと下胴部4bには、それぞれの胴部側面部41に減圧吸収パネル45a,45bが設けられている。減圧吸収パネル45a,45bは、容器1の殺菌処理を兼ねて、加熱殺菌された内容液を高温のまま充填(ホット充填)する場合に、容器内を密封した後の内圧減少に伴う容器1の不均一な形状変化を防止するためのものであり、要求される減圧吸収性能に応じて種々のパネル形状を採用することができる。
【0020】
また、図示する例では、胴部コーナー部42の両側縁に沿って、縦溝部48が設けられている。このような態様は、胴部4をより薄肉に形成しながらも、胴部4の強度を確保できるようにする上で好ましい。
【0021】
このような胴部4と、円筒状に形成された口部2との間をつなぐ肩部3は、その横断面形状が、胴部4側から口部2側に向かって、胴部4の横断面形状(角部が面取りされた方形状の横断面形状)から、口部2の横断面形状(円形状の横断面形状)へと連続的に変化するように形成される。図示する例にあっては、肩部3の横断面形状がこのように変化するべく、胴部4の各胴部側面部41の上方に位置して、左右対称に横幅を徐々に狭めて口部2の下端に連接する肩部側面部31と、胴部4の各胴部コーナー部42の上方に位置し、かつ、各肩部側面部31の間に位置する肩部コーナー部32とを含むように形成された肩部3によって、胴部4と口部2との間をつないでいる。
【0022】
一方、胴部4の下端に連接する底部5は、胴部4の各胴部側面部41の下方に位置する底部側面部51と、胴部4の各胴部コーナー部42の下方に位置し、かつ、各底部側面部51の間に位置する底部コーナー部52とを含み、底部コーナー部52は、底部5の底面側に向かって容器内方に絞り込まれるように形成されている。図示する例において、底部5の底面中央には、ドーム状の上げ底部50が形成されており、内周縁が段差部を以て多角形状(図示する例では十六角形状)に画成された接地部55が、上げ底部50の周りを取り囲むようにして、底部5の底面に形成されている。このようにすることで、内容物を充填する際の充填圧などによって、底部5の底面中央が接地部55を越えて突出して、自立安定性を損ねてしまうことを有効に回避できるようにしている。
【0023】
また、底部5の底面に形成される接地部55は、その外周縁が、接地部55から離れるにつれて、縦断面形状(中心軸Cを含む面で切断した断面の形状)が円弧状、又は楕円弧状となるように立ち上がる接地部隣接領域54を介して、底部側面部51及び底部コーナー部52のそれぞれに連続するように形成されている。
なお、接地部隣接領域54は、底部側面部51及び底部コーナー部52の下端側の一部として、これらに含まれるものとする。
【0024】
このように形成された容器1にあっては、軸方向に荷重が加わると、肩部3の肩部コーナー部32、胴部4の胴部コーナー部42、底部5の底部コーナー部52が、柱の如く機能して、これらで受けた荷重が接地部55に向かって伝搬していくことになる。その際、底部5の底部コーナー部52に荷重が集中してしまうと、底部コーナー部52の接地部55付近を起点に座屈変形が生じ易い傾向にある。
【0025】
本実施形態にあっては、このような底部コーナー部52の接地部55付近を起点とする座屈変形を抑制できるようにするために、底部コーナー部52に、高さ方向上方から下方に向かって延在する少なくとも一つ(図示する例では三つ)の凹溝部53を設けるとともに、かかる凹溝部53の下端側が、接地部隣接領域54の上端54aを超えて、接地部隣接領域54内に突出するようにしている。
【0026】
ここで、接地部隣接領域54は、その縦断面形状が、曲率半径が一定の円弧状、又は接地部55から離れるにつれて曲率半径が単調減少する楕円弧状となるように形成することができる。そして、接地部隣接領域54の縦断面形状が、曲率半径が一定の円弧状に形成されている場合には、底部側面部51又は底部コーナー部52の縦断面形状において、曲率半径が変化する境界となる部位を接地部隣接領域54の上端54aとするものとし(図7参照)、接地部隣接領域54の縦断面形状が、接地部55から離れるにつれて曲率半径が単調減少する楕円弧状に形成されている場合には、底部側面部51又は底部コーナー部52の縦断面形状において、曲率半径が増加に転じる境界となる部位を接地部隣接領域54の上端54aとするものとする(図14参照)。
【0027】
このようにして、底部コーナー部52に凹溝部53を設けるにあたり、凹溝部53の配置は、特に限定されない。例えば、底部コーナー部52に一つの凹溝部53を設ける場合には、底部コーナー部52の周方向中央部に設けるのが好ましく、複数の凹溝部53を設ける場合には、できるだけ対称性の高い配置とするのが好ましい。図示する例では、胴部4の胴部コーナー部42の両側縁に沿って設けられた縦溝部48の延長線上とその間に、合わせて三つの凹溝部53を対称性の高い配置で設けているが、凹溝部53の配置は、容器全体の形状と細部の形状との兼ね合いから、座屈変形の起点となり易い部位に応じて適宜設計することができる。
【0028】
底部コーナー部52に設ける凹溝部53の形態も、特に限定されない。例えば、直線状の溝底部で溝側面が交わる断面V字状の溝形状としてもよく、断面U字状の溝形状としてもよいが、座屈変形をより有効に抑制して、軸方向に加わる荷重に対する耐荷重強度(縦圧縮強度)を向上させる上で、当該凹溝部53は、図示するように、所定の幅の溝底部を有し、当該溝底部の幅方向両側縁から溝側面が立ち上がる断面台形状の溝形状とするのが好ましい。特に図示しないが、底部コーナー部52に設ける凹溝部53の上端側と下端側との両方、又はいずれか一方が、先細り状に形成されていてもよく、当該凹溝部53の上端側が、底部5と胴部4との連接部を跨いで、胴部コーナー部42側に至るように設けられていてもよい。
【0029】
また、底部コーナー部52の接地部55付近を起点とする座屈変形を抑制する上で、底部コーナー部52に設ける凹溝部53の下端は、接地部55により近接しているのが好ましい。ただし、凹溝部53の下端が接地部55に近接し過ぎてしまうと、容器1をブロー成形する際の接地部55の賦形性に影響を与えてしまい、接地部55の賦形不良を招いてしまうことが懸念される。接地部55が良好に賦形されていないと、例えば、次のような不具合が考えられる。すなわち、内容物が充填密封された容器1は、多くの場合に、熱収縮性のシュリンクフィルムからなる帯状のラベルが装着されて販売に供されており、容器1にラベルを装着する際には、底部5の底面側を負圧吸引して容器1のセンターリングを行ってからラベルを装着することが知られているが、このとき、接地部55が良好に賦形されていないと、負圧吸引に支障を来してしまう虞がある。
【0030】
このような不具合を有効に回避するために、底部コーナー部52に設けられる凹溝部53の下端は、接地部55からある程度の距離を以て離れているのが好ましい。より具体的には、高さ方向に沿った接地部55から凹溝部53の下端までの高さhが、0.5~3mmとなるようするのが好ましい。
【0031】
また、ブロー成形された容器1を成形型から取り出す際に、通常、容器1は十分に冷却されていない。このため、滑らかな平面又は曲面が比較的広い範囲に存在している部分があると、そのような部分は成形型の成形面に貼り付き易く、成形面に貼り付いた部分には、離型の際に、当該部分を撓むように変形させながら成形面から引き剥がそうとする負荷がかかってしまう。そして、成形面に貼り付いた部分が十分に冷却されないまま、そのような負荷がかかると、一般にヒケと称される痕跡が生じてしまうことに加え、周囲の形状を歪めてしまう虞がある。
【0032】
図示する例にあっては、底部側面部51に凹部56を形成することによって、このような不具合を有効に回避して、負圧吸引に支障を来してしまうような歪みが、接地部55に生じてしまうのを抑制している。
【0033】
また、図示する例では、軸方向に加わる荷重をコーナー部32,42,52で受けた際に、肩部3と胴部4との境界付近を起点とする座屈変形が生じてしまうのを抑制する目的で、肩部コーナー部32側に始端を有し、胴部コーナー部42側に終端を有するように、肩部3と胴部4との連接部を跨いで延在する肩部側凹溝部36を設けている。
【0034】
この肩部側凹溝部36の形態は、特に限定されない。断面V字状の溝形状、断面U字状の溝形状、断面台形状の溝形状などとすることができるのは、底部コーナー部52に設ける凹溝部53と同様であるが、図示するように、肩部コーナー部32側に位置する始端に向かって先細り状に設けられているのが好ましい。
【0035】
また、肩部側凹溝部36が肩部3の表面に沿って延在するように設けられていれば、肩部側凹溝部36の始端の位置は、特に限定されない。肩部側凹溝部36の始端は、口部2側に寄った位置にあるのが好ましく、口部2と肩部3との連接部に始端が位置するのが特に好ましい。肩部側凹溝部36が肩部3と胴部4との連接部を跨いで、胴部コーナー部42側に至るように延在していれば、肩部側凹溝部36の終端の位置も、特に限定されないが、胴部コーナー部42の上端側に位置するのが好ましい。さらに、肩部側凹溝部36は、肩部コーナー部32の横幅方向中央部に沿って延在して、胴部コーナー部42の横幅方向中央部に至るように設けられているのが好ましい。これらの態様は、コーナー部32,42の肩部3と胴部4との境界付近を起点とする座屈変形をより有効に抑制できるように、適宜選択することができる。
【0036】
また、肩部3には、肩部コーナー部32の両側縁に沿って側縁溝部37を設けることができる。これにより、肩部3をより薄肉に形成しながらも、肩部3の強度を確保することができるとともに、このような態様は、コーナー部32,42の肩部3と胴部4との境界付近を起点とする座屈変形を抑制する上でも有利である。
【0037】
肩部3に設けられた側縁溝部37は、胴部コーナー部42の両側縁に沿って設けられた縦溝部48の延長線上に配設されているのが好ましい。このような態様とすることで、容器1に軸方向に荷重が加わった際に、コーナー部32,42で受けた当該荷重が、肩部3に設けられた側縁溝部37と、胴部4に設けられた縦溝部48とを伝わって、縦溝部48の下端側(図示する例にあっては、周溝40の付近)まで、その途中で座屈変形を生じることなく伝搬されていくようにすることができる。その結果、座屈変形の起点となり得る部位が、肩部3と胴部4との境界付近から、縦溝部48の下端側の部位に移動することになるが、容器1をブロー成形する際の成形条件を適宜調整し、当該部位を選択的に厚肉に形成して、当該部位での座屈変形が生じ難くすることによって、容器1を全体的により薄肉に形成しながらも、縦圧縮強度をさらに向上させることが可能になる。
【0038】
このような本実施形態について、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いて重量約34gのプリフォームを射出成形し、かかるプリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって、図1等に示す容器形状となるように容量720mLの容器1を成形して、内容物を充填密封した状態で軸方向に荷重を加え、徐々に荷重を増加させていったところ、約360Nの荷重で胴部4に座屈変形が生じるまで、底部コーナー部52の接地部55付近を起点とする座屈変形は生じなかった。一方、接地部隣接領域54の上端54aを超えないようにして、凹溝部53を設けた以外は同一に成形された容器について、同様の耐荷重試験を行ったところ、約130Nの荷重で、底部コーナー部52の接地部55付近を起点とする座屈変形が生じた。
【0039】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図8は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図であり、図9は、同正面図、図10は、同側面図、図11は、同底面図である。
【0040】
これらの図に示す容器1は、容器1を薬液で滅菌処理し、無菌状態に管理された環境下で内容液を常温で充填(アセプティック充填)する用途に用いる一例を示している。このため、胴部4には、減圧吸収パネルが設けられていない。さらに、胴部4の高さ方向中央から底部5側に寄った部位が括れた形状とされている点においても前述した第一実施形態とは異なるが、胴部4が概ね角筒状に形成され、対向する二組の胴部側面部41と、各胴部側面部41の間に位置する面取りされた胴部コーナー部42とを含むように形成されている点などにおいて、容器1の基本的な形態は、前述した第一実施形態と共通している。
【0041】
また、前述した第一実施形態では、底部コーナー部52に三つの凹溝部53を設けた例を図示して説明したが、本実施形態では、底部コーナー部52に二つの凹溝部53が設けられている。
【0042】
また、前述した第一実施形態では、接地部隣接領域54の縦断面形状が、曲率半径が一定の円弧状となるように形成した例を図示して説明したが(図7参照)、本実施形態において、接地部隣接領域54の縦断面形状は、接地部55から離れるにつれて曲率半径が単調減少する楕円弧状となるように形成されている(図14参照)。
【0043】
このような本実施形態について、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いて重量約28gのプリフォームを射出成形し、かかるプリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって、図8等に示す容器形状となるように容量720mLの容器1を成形して、内容物を充填密封した状態で軸方向に荷重を加え、徐々に荷重を増加させていったところ、約337Nの荷重が加わるまで、底部コーナー部52の接地部55付近を起点とする座屈変形は生じなかった。一方、底部コーナー部52に凹溝部53を設けていない以外は同一に成形された容器について、同様の耐荷重試験を行ったところ、約277Nの荷重で、底部コーナー部52の接地部55付近を起点とする座屈変形が生じた。
【0044】
本実施形態について、前述した第一実施形態と異なる点を中心に説明したが、第一実施形態と共通する構成については、第一実施形態と同一の符号を図面に付して、重複する説明は省略する。
【0045】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 容器
2 口部
3 肩部
31 肩部側面部
32 肩部コーナー部
36 肩部側凹溝部
37 側縁溝部
4 胴部
41 胴部側面部
42 胴部コーナー部
48 縦溝部
5 底部
51 底部側面部
52 底部コーナー部
53 凹溝部
54 接地部隣接領域
54a 接地部隣接領域の上端
55 接地部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14