(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023056987
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】テーブル及びハンガー兼用免震装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20230413BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F16F15/02 M
E04B9/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166542
(22)【出願日】2021-10-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】520351358
【氏名又は名称】要 賢一
(72)【発明者】
【氏名】要 賢一
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA07
3J048AD06
3J048BG06
3J048CB06
3J048EA13
(57)【要約】
【課題】地震や乗り物等の揺れを伝わりにくくして、荷台の上に載せたり天井から吊るしたりする物等への被害を、簡単で安価な構成要素のみで防げる免震装置を提供することを目的とした。
【解決手段】上フレーム1と下フレーム3の中心に両端に首振りアジャスター2aを取付けた支柱2を立て、支柱2の周りに4本のロープ4を張り、ロープ4の内側に接して拘束するようにガイドスタンド5を中央に置き、支柱2を中心に対向するロープ4同士が互いに引っ張り合ってバランスを取り、揺動が起きても上フレーム1を水平な状態に保ち、且つ支柱2を元の垂直な状態に戻す力が発生するような構造にした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下のフレームと両端に首振りアジャスター等の関節部を設けた支柱、ロープ、ガイドスタンド等を主な構成要素とし、上下のフレームの中心或いは中心を軸に対向するように外周に支柱を立て、中心の周りに4本のロープを張り、中心に向かってロープの内側に接するように水平部材を設けたガイドスタンドを設置してロープを拘束し、中心を軸に対向するロープ同士が互いに引っ張り合ってバランスを取り、揺動が起きても上フレームを水平な状態に保ち、且つ支柱を元の垂直な状態に戻す力が発生するような構造にしたことを特徴とする免震装置。
【請求項2】
ロープと接するガイドスタンドが、揺れのないときと揺れ方が小さいときは中央に固定されて動かずにロープを拘束し、揺れ方が大きくなるとロープから押される力により中央からずれ、ロープが曲がる変曲点も内側に移動して、上フレームを引き戻そうとする力が小さくなり、反対側への揺れ返しの振幅を小さくするようにしたことを特徴とする、請求項1の免震装置。
【請求項3】
各ロープのガイドスタンドの接点と上フレームのフック部間の距離をそれぞれ別々に異なるようにして、揺動が起こり各ロープが折れ曲がったときの固有周期をそれぞれ異なるようにすることにより、揺動の半周期ごとにロープが異なる固有周期に変化して、一定周期の外力が加わわっても共振現象を起こしにくくしたことを特徴とする、請求項1の免震装置。
【請求項4】
ガイドスタンドの4箇所のロープの内側と接する水平部材に加え、中心に向かって右側或いは左側のどちらか片方に接して拘束できるように水平部材を設け、揺動が起こり支柱が傾いたときにロープ4本の内の1本、或いは隣り合った2本がガイドスタンドとの接点を変曲点に折れ曲がり、上フレームを中心を軸にねじろうとする力が発生して、それにより揺動エネルギーをねじりエネルギーに変換し、揺れを早く抑えさせるようにしたことを特徴とする、請求項1の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震や乗り物等の揺れを伝わりにくくして、荷台に載せたり吊るしたりした物等が落ちたり倒れたりする被害を防ぐ免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本では昔から地震が発生しては人や建物、家財、設備等に多大な被害を及ぼしてきて、以前よりそれらを揺れから守るために多くの制震、免震装置や器具等が開発されてきた。
【0003】
また、乗り物等に設置するテーブル等にも、その上に載せた物が落ちたり倒れたりしないように免震ゴム等を用いて揺れを緩和する等の工夫がなされているが、小さな振動や揺れは抑えられても大きな揺れに対してはあまり効果が期待できない。
【0004】
水害や地震が起きた時の対策として、特願2021-155441にて、ばねと油圧シリンダ及びフロートバルブ等を利用して架台をワイヤーロープで吊り下げ、浸水時に無人無動力で架台が自動的に上昇する防災装置を発案したが、この装置の場合、住宅等の建物や大きくて重たい機械、設備等を載せるのに適した構造になっており、室内で使うような電化製品や倒れると壊れやすい陶器等の物を載せる用途には大掛かりで、また水害に遭う恐れのない場所では過剰な機能ともなってしまう。
【0005】
室内で使うような物を載せる用途のために簡単な要素で構成された免震装置としては、特許文献1のような、ばねを下面中央から斜め上にテーブルの四隅に懸けて水平振動を抑制するものなどが挙げられるが、他は概ねリニアガイドやばね、ダンパー等の機械要素を組み合わせて構成されている装置が多く、複雑な機構で高額なものが多くなっている。
またこれらの要素を用いて構成する場合、剛性を要する基礎やフレームが必要となる場合が多く、重量的にもかさばりがちで、乗り物や天井等の高い場所に設置する場合には不向きなものになりがちである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、地震や乗り物等の揺れを伝わりにくくして、荷台の上に載せたり天井から吊るしたりした物等への被害を、簡単で安価な構成要素のみで防げる免震装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の免震装置は、上下のフレームと両端に首振りアジャスターを取付けた支柱、ロープ、ガイドスタンド等を主な構成要素とし、上下のフレームの中心に支柱を立て、支柱の周りに4本のロープを張り、ロープの内側に接して拘束するようにガイドスタンドを中央に置き、支柱を中心に対向するロープ同士が互いに引っ張り合ってバランスを取り、揺動が起きても上フレームを水平な状態に保ち、且つ支柱を元の垂直な状態に戻す力が発生するような構造にした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の免震装置による効果は、簡単で安価な構成要素でありながらも地震や乗り物等の揺れを伝わりにくくして、荷台の上に載せた物や天井から吊るした物等への被害を防げるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】荷台を広げて支柱を4本用いた場合の実施例を示した側面図
【
図6】既存のテーブルを本免震装置に載せた実施例を示した側面図
【
図7】本免震装置を天井ハンガーに利用した実施例を示した側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に本発明の実施形態の一例を示す。
全体構成は、物等を載せるための荷台7を取付ける上フレーム1と、それらを支える支柱2とそれを立てる下フレーム3と、支柱2の周りに張られている4本のロープ4と、ロープ4に接するように立てられているガイドスタンド5とに大別される。
【0013】
上フレーム1の中心には、支柱2の上端部に取付けられた首振りアジャスター2aがはめ込まれ、その周りにターンバックル4aを介して4本のロープ4が支柱2に平行に張られている。
上フレーム1の上には物等を載せられるように荷台7が取付けられる。
【0014】
支柱2の下端部にも上端部と同じく首振りアジャスター2aが取付けられて下フレーム3の中心にはめ込まれており、上フレーム1と荷台7が支柱2と4本のロープ4に拘束されて床面と水平に揺動できるようになっている。
【0015】
下フレーム3は中心で支柱2を支え、その周りに支柱2に平行に4本のロープ4が掛けられており、ロープ4の内側に接するガイドスタンド5のベースリング5bが中央に配置され、且つ横向きに強い力が加わるとずれて移動できるように、傾斜部3aを付けたガイド部が設けられている。
また下フレーム3の四隅には、防振アジャスター6が取付けられており、床から伝わる微振動を減少させて、荷台7を水平に設置できるようになっている。
【0016】
ロープ4は、伸縮性の小さいワイヤーロープや大きいゴムロープ等、荷台に載せる物の重さ等使用目的に応じて材質を選択し、支柱2を中心にしてその周りに均等に4本がターンバックル4aを介して上フレーム1が水平になるように支柱2に平行に張られ、支柱2が傾くとロープ4も同じように平行に傾いて上フレーム1と荷台7を水平に保つようになっている。
【0017】
ガイドスタンド5にはロープ4の支柱2に向かって内側と右側に接するように水平部材5aが設けられており、ロープ4がそれらの方向には自由に移動できないように拘束している。
ガイドスタンド5の基底部はベースリング5bで一体化されており、ベースリング5bが下フレーム3の4箇所の傾斜部3aに沿って中央に拘束して置かれている。
このガイドスタンド5は、揺れのないときと揺れ方が小さいときは傾斜部3aに拘束されて中央に位置したままロープ4に接して支柱2が傾かないようにしているが、揺れ方が大きくなったときはロープ4に強く押されてベースリング5bが傾斜部3aを乗り上がり、外側の止め板3bに当たるまで横にずれて移動することができるようになっている。
【0018】
図2は、
図1の支柱2が傾いた状態を表した側面図である。
支柱2に平行に張られているロープ4が、内側に接するように置かれているガイドスタンド5の水平部材5aとの接点P1を変曲点に折れ曲がり、上フレーム1を傾いた反対側に引っ張る力T1が発生することにより支柱2を元の垂直状態に戻そうとする。
このロープ4が支柱2を中心に四方に均等な力で張られていて、かつ内側がガイドスタンド5の水平部材5aと接して拘束されていることにより、
図1の状態のように揺れのないときと揺れ方が小さいときは、ガイドスタンド5のベースリング5bが下フレーム3の傾斜部3aに拘束されて中央に位置して動かないため、支柱2がどの方向にも傾かずに垂直に立った状態を保つことができる。
そして揺れ方が大きくなったときは、
図2のようにガイドスタンド5がロープ4に強く押されてベースリング5bが傾斜部3aを乗り上がり、外側の止め板3bに当たるまで横にずれるため、その瞬間ロープと水平部材5aとの接点P1、即ちロープ4の折れ曲がる変曲点が内側に移動して、上フレーム1を引き戻そうとする力T1が小さくなり、反対側へ揺れ返したときの振幅も小さくなり、揺動を早く収束させることができる。
【0019】
4箇所のガイドスタンド5のロープ4と接する水平部材5aは、それぞれ互いに異なった高さの位置にずらして設けられており、各ロープ4の上フレーム1のフック部1aから水平部材5aとの接点P1との距離L1が4本とも異なるようにして張られており、それにより揺動が始まると4本のロープ2の内、水平部材5aと接触して折れ曲がったロープ2のみが他の折れ曲がっていないロープ2と固有周期が異なり、揺れる方向が変わる度に水平部材5aと接触して折れ曲がるロープ2も変わるため、揺動の半周期ごとにロープ2がそれぞれ異なった固有周期に変化することにより、遠方で起きた大地震等で起こる長周期振動や一定周期の外力によって引き起こされる共振現象が起きにくくなり、上フレーム1と荷台7がゆりかごのような状態になって大きく揺れるのを防ぐことができる。
【0020】
図3は、
図2のA-Aから見た断面矢視図である。
ガイドスタンド5の各ロープ4の内側に接する水平部材5aは、中心に向かって右側にも接して拘束できるようにしてあり、これにより
図2のように揺れが大きくなり支柱2が傾いたときに、ロープ4が水平部材5aとの接点P1を変曲点に折れ曲がり、上フレーム1を支柱2を中心に時計回りの方向にねじろうとする力T2が発生して、それにより揺動エネルギーをねじりエネルギーに変換して揺れを早く抑えることができる。
ガイドスタンド5のベースリング5bには回り止め5cが設けられており、下フレーム3の側面と接してねじれの反力点となってガイドスタンド5が回るのを防いでいる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
図4は、
図1の実施例を荷台7を透視して示した斜視図である。
上フレーム1の上に荷台7を取付ければそのまま免震スタンドとして利用でき、この上に落ちたり倒れたりすると壊れやすい物等を載せておけば、地震が起きても床から伝わる揺れを減少させて、それらが荷台7から落ちたり倒れたりしにくくすることができる。
【0022】
また
図5のように荷台7が広い場合は、
図1では中央に配置していた1本だけの支柱2を、荷台7の広さや形状に応じて4本や6本等、数本の支柱2をロープ4の外側に配置して免震装置を構成することもでき、荷台7に載せる物の大きさや重さに応じた形状、サイズの免震テーブルにすることができる。
【0023】
利用場所については、各ロープ4の固有周期が揺動の半周期ごとにそれぞれ異なって変化する機能により共振現象が起きにくくなるため、遠方で起こった大地震により発生する長周期振動による揺れが起こりやすいビルの高層階や、駅やホール等大きな建物の高い場所に設置しても影響されにくく、また船舶や大型バス、鉄道客車内のような一定周期の外力が加わわりやすい場所に設置しても、ゆりかごのような揺れ方をすることを防いで落下や転倒事故を起きにくくすることができる。
【0024】
また
図6のように、荷台7の代わりに床面近くの高さに脚受台8を設け、そこに既存のテーブル9を載せれば、既存のテーブル9にも本免震装置と同じ免震機能を持たせることができる。
【0025】
さらに
図7のように、上フレーム1を天井10に天井アンカー10a等で固定し、下フレーム3に物を吊り下げて免震ハンガーとして利用することもでき、この場合支柱2は不要となり外すことができる。
公共施設等の天井照明11やスピーカー、大型ファン等を本装置を介して吊り下げれば、地震が起きても揺動を抑えて落下事故を起きにくくすることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 上フレーム
1a フック部
2 支柱
2a 首振りアジャスター
3 下フレーム
3a 傾斜部
3b 止め板
4 ロープ
4a ターンバックル
5 ガイドスタンド
5a 水平部材
5b ベースリング
5c 回り止め
6 防振アジャスター
7 荷台
8 脚受台
9 既存のテーブル
10 天井
10a 天井アンカー
11 天井照明
P1 ロープとガイドスタンドの水平部材との接点
L1 フック部1aと接点P1間距離
T1 揺動により発生する上フレーム1を引き戻す力
T2 揺動により発生する上フレーム1をねじる力