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特開2023-57028透過接続デバイス、そのデバイスを使用した接続方法、及び結果として得られる接続構造
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  • 特開-透過接続デバイス、そのデバイスを使用した接続方法、及び結果として得られる接続構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057028
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】透過接続デバイス、そのデバイスを使用した接続方法、及び結果として得られる接続構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/16 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
B29C65/16
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022142951
(22)【出願日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】21201762.8
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522238491
【氏名又は名称】ブランソン ウルトラスチャル ニーデルラッスン デル エマーソン テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング アンド カンパニー オーエイチジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オリバー キール
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA17
4F211AA32
4F211AD01
4F211AE03
4F211AH33
4F211AR02
4F211AR06
4F211AR12
4F211TA01
4F211TC03
4F211TD11
4F211TJ11
4F211TN27
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】透過接続デバイス、そのデバイスを使用した接続方法、及び結果として得られる接続構造を提供すること。
【解決手段】光吸収材料で作られた第1の構成要素(3)を光透過材料で作られた第2の構成要素(5)に、光透過接合技術によって接続するための本発明の透過接続デバイス(1)は、第1の構成要素(3)を保持する第1の支持体(12)に取り付けられた第1のツール(10)と、第2の構成要素(5)を保持する第2の支持体(22)に取り付けられた第2のツール(20)と、を備え、第1のツール(10)及び第2のツール(20)は、相対的に移動可能であり、第1のツール(10)は、高い熱抵抗を有する断熱体(14)の層で少なくとも部分的に作られるか、又はそれを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収材料で作られた第1の構成要素(3)を光透過材料で作られた第2の構成要素(5)に、光透過接合技術によって接続するための透過接続デバイス(1)であって、
a.前記第1の構成要素(3)を保持する第1の支持体(12)に取り付けられた第1のツール(10)と、
b.前記第2の構成要素(5)を保持する第2の支持体(22)に取り付けられた第2のツール(20)と
を備え、
c.前記第1のツール(10)及び前記第2のツール(20)が、相対的に移動可能であり、
d.前記第1のツール(10)が、高い熱抵抗を有する断熱体(14)の層で少なくとも部分的に作られるか、又はそれを備える、
透過接続デバイス(1)。
【請求項2】
前記断熱体(14)が、λ≦2W/(mK)の熱伝導率を有する、請求項1に記載の透過接続デバイス(1)。
【請求項3】
前記断熱体(14)が、tmp≧200℃の融点を有する、請求項1又は2に記載の透過接続デバイス(1)。
【請求項4】
前記断熱体(14)が、熱可塑性材料である、請求項1又は2に記載の透過接続デバイス(1)。
【請求項5】
前記断熱体(14)が、1mm≦t≦10cmの範囲内の厚さを有する、請求項1又は2に記載の透過接続デバイス(1)。
【請求項6】
前記第1のツール(10)が、前記断熱体(14)に隣接する非粘着コーティング(16)を更に備え、これにより、前記非粘着コーティング(16)が、前記第1のツール(10)の前記第1の構成要素(3)との少なくとも接触領域に存在する、請求項1に記載の透過接続デバイス(1)。
【請求項7】
前記非粘着コーティング(16)が、ポリテトラフルオロエチレンを備える、請求項6に記載の透過接続デバイス(1)。
【請求項8】
前記第1の支持体(12)及び/又は前記第2の支持体(22)が、少なくとも部分的に金属で作られている、請求項1、2、6又は7に記載の透過接続デバイス(1)。
【請求項9】
光吸収材料で作られた第1の構成要素(3)を光透過材料で作られた第2の構成要素(5)に接続するための請求項1に記載の透過接続デバイス(1)を使用した接続方法であって、前記第1の構成要素(3)が、少なくとも接続部分において高い熱伝導率を有し、前記接続方法が、
a.前記第1の構成要素(3)を前記第1のツール(10)内に配置するステップと、
b.前記第2の構成要素(5)を前記第2のツール(20)内に配置するステップと、
c.前記第1のツール(10)及び前記第2のツール(20)を、前記第1の構成要素(3)及び前記第2の構成要素(5)が少なくとも部分的に互いに当接する接続位置に、相対的に移動させるステップと、その後、
d.前記第1の構成要素(3)及び前記第2の構成要素(5)に溶接力を印加し、前記溶接力を印加しつつ、光源によって前記第1の構成要素(3)及び前記第2の構成要素(5)を照射するステップと、その後、
e.前記第1のツール(10)及び前記第2のツール(20)を前記接続位置から相対的に移動させるステップと
を含む、接続方法。
【請求項10】
前記光源が、レーザ光源である、請求項9に記載の接続方法。
【請求項11】
前記第2の構成要素(5)を前記第2のツール(20)内に配置する前記ステップが、
b1.前記第2の構成要素(5)を、前記第1のツール(10)内の前記第1の構成要素(3)上に配置するステップと、
b2.前記第1のツール(10)及び前記第2のツール(20)を、前記第2のツール(20)が前記第2の構成要素(5)を受ける移動位置に、相対的に移動させるステップと
を含む、請求項9又は10に記載の接続方法。
【請求項12】
前記第1の構成要素(3)の前記熱伝導率が、λ≧50W/(mK)の範囲内である、請求項9又は10に記載の接続方法。
【請求項13】
光吸収材料で作られた第1の構成要素(3)と、光透過材料で作られた第2の構成要素(5)と、を備える接続構造(7)であって、前記第1の構成要素(3)が、前記第2の構成要素(5)に接続される少なくとも接続部分に高い熱伝導率を有する、接続構造(7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収材料で作られた第1の構成要素を光透過材料で作られた第2の構成要素に、光透過接合、又は溶接技術によって接続するための透過接続デバイス、その透過接続デバイスを使用した接続方法、並びに光吸収材料で作られた第1の構成要素及び光透過材料で作られた第2の構成要素からなる、結果として得られる接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー貯蔵、特に電気エネルギーを貯蔵する分野では、様々な解決策が存在する。これらの解決策の1つは、近年ますます重要になってきているバッテリの使用である。
【0003】
バッテリの分野では、やはりいくつかの代替的な解決策が存在する。とりわけ、フローバッテリ又はレドックス・フロー・バッテリが使用され、これは、化学エネルギーが、膜の別々の側面で、システムを通ってポンプ輸送される液体に溶解した2つの化学成分によって供給される電気化学セルの1つのタイプである。レドックスバッテリの一例は、欧州特許出願公開第0312875号明細書に記載されている。
【0004】
このようなバッテリシステムでは、電極は、大きな電気化学電位窓のために、通常グラファイトで構成される。それぞれのグラファイト電極の例示的な製造方法は、欧州特許出願公開第2519479号明細書に記載されている。この中で、層状複合材料が、少なくとも1つの織物の層と、グラファイト粒子が少なくとも1つの固体有機添加剤と混合して混合物を形成し、このようにして得られた混合物が圧縮される方法によって得られる少なくとも1つのグラファイト含有成形体と、を含んで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0312875号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2519479号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に先行技術に鑑みて、本発明の課題は、電気化学セルで使用するためのそれぞれのグラファイト電極を製造する代替方法、並びにそのようなグラファイト電極を製造するそれぞれのデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、独立請求項1に記載の透過接続デバイス、独立請求項9に記載の本発明の透過接続デバイスを使用した接続方法、並びに独立請求項13に記載の接続構造によって解決される。更なる好ましい実施形態及び開発は、以下の説明、図面及び添付の特許請求の範囲から生じる。
【0008】
光吸収材料で作られた第1の構成要素を光透過材料で作られた第2の構成要素に、光透過接合技術によって接続するための本発明の透過接続デバイスは、第1の構成要素を保持する第1の支持体に取り付けられた第1のツールと、第2の構成要素を保持する第2の支持体に取り付けられた第2のツールと、を備え、第1のツール及び第2のツールは、相対的に移動可能であり、第1のツールは、高い熱抵抗を有する断熱体の層で少なくとも部分的に作られるか、又はそれを備える。
【0009】
例えば、透過溶接デバイスなどの透過接続デバイスの一般的な構成、並びに手続きの流れは、従来技術、特にプラスチック溶接の分野で知られている。その中で、透過溶接デバイスは、光又はレーザ吸収材料の第1のプラスチック構成要素を、光又はレーザ透過材料の第2のプラスチック構成要素に接続するために使用される。それぞれのプロセスは、2つのプラスチック構成要素を接続する概念は同じであるが、レーザプラスチック溶接、透過溶接又はポリマー溶接としても示される。
【0010】
この結合又は接続方法の基本原理は、接続を形成するために、1つのプラスチック構成要素、すなわち透過構成要素を通してレーザ放射を透過させることである。エネルギーが材料の表面に印加される標準的な溶接とは異なり、透過接続方法は、それらの界面で2つのプラスチック構成要素間にエネルギーを印加する。これは、完全な接続部分、接続構造又は溶接線を同時に照射することによって、すなわち、同時の光又はレーザ透過溶接によって行われ得る。更なる方法は、他の方法に加えて、擬似同時透過溶接又は輪郭溶接である。本発明内では、同時法の使用が特に好ましい。
【0011】
ここで、本発明の透過接続デバイスの構造及び機能が、電気化学セルなどに使用するためのグラファイト電極の例示的な製造に基づいて論じられる。
【0012】
例示的なグラファイト電極は、光又はレーザ吸収材料で作られた第1の構成要素からなる。好ましい例では、第1の構成要素は、グラファイト粒子で充填されたプラスチックマトリックス材料である。第2の構成要素は、例えば、第1の構成要素を含むグラファイトをレドックス・フロー・バッテリ・セル・スタックに後で取り付けるためのフレームを設け、好ましくは、使用される光又はレーザに対して透明なプラスチックからなる。
【0013】
第1の構成要素を第2の構成要素に接続する、すなわち接合又は溶接するために、最初に第1の構成要素及び第2の構成要素は、第1のツールと第2のツールとの間に配置される。例えば、第1の構成要素は、第1のツール内に配置され、第2の構成要素は、第1の構成要素上に、あるいは第2のツール内に配置される。これに関して、接続構造又は接続部分において第1の構成要素を加熱するための光、特にレーザ光は、第2のツールから来るので、第2の構成要素を最初に通過すると仮定される。例えば、第1の支持体に取り付けられる第1のツールは、下部ツールであり、第1の支持体は、昇降台である。したがって、第2の支持体に取り付けられる第2のツールは、導波路を備える上部ツールであり、導波路は、出口端部に透明プレートを有し、反対側の入口端部を用いて上部支持体としての上部取付けプレートに取り付けられる。好ましくは、第1及び/又は第2の支持体は、金属、特に鋼又はアルミニウムで、少なくとも部分的に作られる。
【0014】
構成要素がデバイス内に配置された後、第1の構成要素及び第2の構成要素が、少なくとも部分的に、好ましくはそれぞれの接続部分に互いに当接する接続位置に、第1のツール及び第2のツールは、相対的に移動される。
【0015】
その後、溶接力が、第1の構成要素及び第2の構成要素に印加され、第1の構成要素及び第2の構成要素は、溶接力の間に光源によって照射され、したがって、結果として生じる接触圧力が維持される。好ましくは、第1の構成要素及び第2の構成要素は、接続部分において照射される。透明又は上部の第2の構成要素を通る、光透過、特にレーザ光透過の後、入射光は、下部の第1の構成要素によって吸収され、材料内で熱に変換される。レーザ光が吸収構成要素によって熱に変換されると、熱エネルギーは、透明構成要素に伝達され、透明構成要素が軟化して、溶融することを可能にする。2つの構成要素が密接に接触することを確実にすることによって、熱エネルギーを透明構成要素に伝導することができる。
【0016】
例示的な第1の構成要素、すなわち、グラファイト粒子で充填されたプラスチックマトリックス材料と組み合わせて透過接続方法を使用し得ることについて、レーザ透過溶接の既知のデバイスは適切ではない。特に、一般的なレーザ透過溶接デバイスでは、信頼性の高い接続が得られるように接続されるべき構成要素を十分に加熱することができないことが分かった。光源によって構成要素に導かれるエネルギー量を増加させても、この欠点を完全に克服することはできなかった。
【0017】
集中的な研究の後、第1のツールとして断熱体を使用するか、又は第1のツールで断熱体の層を使用すると、この欠点を克服することが分かった。この断熱体を使用することにより、上述のような例示的なグラファイト電極を製造するための透過接続方法を適用することが実現される。断熱体は、例えば、第1の支持体への熱伝導を少なくとも阻害するか、好ましくは防止するからである。これについては以下で説明する。
【0018】
本方法の最後のステップとして、特に光源がオフにされ、軟化した材料を硬化させるために構成要素が溶接力と共に押圧される十分な時間が経過した後、第1のツール及び第2のツールは、接続位置から相対的に移動される。ここで、ユーザは、製造された接続構造、すなわち、レドックス・フロー・バッテリを組み立てるためのフレーム要素を有する例示的なグラファイト電極を取り外すことができる。
【0019】
上記の説明に基づいて、グラファイト電極を製造するために光透過接合技術が使用されることは、従来技術との第1の違いであり、本発明の特定の技術的利点である。特に、この技術の使用は、製造を容易で、費用効率的にする。更なる利点は、そのようなグラファイト電極を製造するために光透過接合技術を適用することができるデバイスが開発されたことである。
【0020】
これに関して、特に透過接続デバイスに関して、第1の構成要素としての光又はレーザ吸収及び高熱伝導材料が、光又はレーザ透過性の第2の構成要素に接続される、すなわち接合又は溶接される任意の用途に、好ましくは任意の電気化学用途に、本発明の透過接続デバイスを、更に使用できることが分かった。
【0021】
グラファイトは、λ=119~165W/(mK)の熱伝導率を有するので、λ≧50W/(mK)、好ましくはλ≧75W/(mK)、特に好ましくはλ≧100W/(mK)の範囲の熱伝導率を有する材料はすべて、高熱伝導材料と見なされる。これに関して、材料の熱伝導率は、熱を伝導する能力を示す強い意味を持つ特性であることが指摘される。熱伝導率の測定方法に関しては、レーザフラッシュ分析又はレーザフラッシュ法を参照されたい。この分析又は方法は、平面平行試料の一方の面を加熱するエネルギーパルスによって様々な異なる材料の熱拡散率を測定するために使用され、エネルギー入力による裏面の結果として生じる時間依存性の温度上昇を検出する。
【0022】
完全を期すために、使用されるプロセス、すなわち光透過接合技術に起因して、断熱体は、低い熱伝導率で、更に、この技術に固有の更なる要件を満たさなければならないことが指摘される。例えば、上述のように、第1の構成要素又は吸収構成要素は、レーザ光によって加熱される。したがって、断熱体は、それぞれの熱抵抗を有する必要がある。言い換えれば、断熱体の融点は、接続方法中に、吸収構成要素が加熱される温度よりも十分に高くなければならない。
【0023】
更に、2つの構成要素を互いに接続するために印加される溶接力を考慮しなければならない。したがって、この溶接力及び結果として生じる接触圧力に耐えなければならない断熱体は、この点でもそれぞれの耐性を有する必要がある。
【0024】
これらの要因はすべて、適切な断熱体を評価する際に考慮されなければならない。以下では、これらの要件は、好ましい実施形態に基づいてより明確になるであろう。
透過接続デバイスの好ましい実施形態では、断熱体は、λ≦2W/(mK)、好ましくはλ≦1W/(mK)の熱伝導率を有する。この要件により、断熱体が低い熱伝導率を有し、適切な断熱をもたらし、したがって第1のツールへの熱伝導を防止することが特に保証される。
【0025】
本発明の透過接続デバイスでは、断熱体がtmp≧200℃、好ましくはtmp≧250℃の融点を有することが更に好ましい。この要件によって、上述の第2の項目が対処される。特に、断熱体は、2つの構成要素の接続中に溶融しない。
上記の結果として、断熱体が熱可塑性材料、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であることが特に有利である。断熱体の特に好ましい材料としてのPEEKは、一方では約λ=0.25W/(mK)の極めて低い熱伝導率を有し、他方では約tmp=335℃の高い融点を有する。更に、これは、上述したように、印加された溶接力に対して十分な耐性を有する。
【0026】
断熱体は、1mm≦t≦10cm、好ましくは2.5mm≦t≦7.5cm、特に好ましくは5mm≦t≦5cmの範囲の厚さを有することが更に好ましい。これらの厚さ範囲によって、熱伝導を確実に防止することができる。これに関して、第1のツール又はそれぞれの層の厚さは、使用される材料に依存し、使用される材料と相互に関連する。例えば、高い熱伝導率を有する材料は、第1の支持体への熱伝導を防止するために厚い厚さが必要とされ得るが、PEEKのような低い熱伝導率を有する材料は、高い熱伝導率を有する材料と比較して、薄い厚さで存在し得る。
【0027】
透過接続デバイスの特に好ましい実施形態によれば、第1のツールは、断熱体に隣接する非粘着コーティングを更に備え、これにより、非粘着コーティングは、第1のツールの第1の構成要素との少なくとも接触領域に存在する。好ましくは、非粘着コーティングは、ポリテトラフルオロエチレンからなる。このコーティングにより、第1の構成要素の第1のツールへの粘着を、処理の確実な方法で防止することができる。
【0028】
耐力性に関する要件に関して、上述したように、第1のツールの断熱体は、使用中に断熱体の十分な安定性が存在するように、力、特に圧縮力に耐えることが好ましい。具体的には、亀裂形成など、溶接されるべき構成要素を互いに押圧するために印加される力に起因する断熱体の損傷が生じないようにする。
【0029】
光吸収材料で作られた第1の構成要素を光透過材料で作られた第2の構成要素に接続するための本発明の透過接続デバイスを使用した本発明の接続方法であって、第1の構成要素が、少なくとも接続部分において高い熱伝導率を有し、本発明の接続方法は、以下のステップ、すなわち、第1の構成要素を第1のツールに配置するステップと、第2の構成要素を第2のツールに配置するステップと、第1のツール及び第2のツールを、第1の構成要素及び第2の構成要素が少なくとも部分的に、好ましくはそれぞれの接続部分に当接する接続位置に、相対的に移動させるステップと、その後、第1の構成要素及び第2の構成要素に溶接力を印加し、更に溶接力を印加しつつ光源によって第1の構成要素及び第2の構成要素を照射するステップと、を含み、第1の構成要素及び第2の構成要素は、好ましくは、接続部分で照射され、その後、本発明の接続方法は、第1のツール及び第2のツールを接続位置から相対的に移動させるステップを含む。この方法によって、上記の例示的なグラファイト電極のような接続構造を、透過接合技術によって製造することができる。繰り返しを避けるために、結果として生じる技術的効果及び利点に関して上記の説明を参照されたい。
【0030】
接続方法の好ましい実施形態によれば、光源はレーザ光源である。また、溶接力は、接続工程中に、互いに溶接されるべき構成要素、及び断熱体が損傷しない範囲であることが好ましい。両方の好ましい実施形態に関して、透過接続デバイス及びそのそれぞれの好ましい実施形態の上記の説明も参照されたい。
【0031】
好ましくは、第2の構成要素を第2のツール内に配置するステップは、第2の構成要素を第1のツール内の第1の構成要素上に配置するステップと、第1のツール及び第2のツールを、第2のツールが第2の構成要素を受ける移動位置に、相対的に移動させるステップと、を含む。したがって、第2の構成要素は、第2のツール内に自動的に移動され、これは、第2の構成要素を第2のツール内に配置するそれぞれの手動ステップを排除する。このようにして、方法は更に自動化される。
【0032】
一般に、製造される接続構造としての例示的なグラファイト電極に関して、方法は、第1の構成要素として、グラファイト、又はグラファイトで充填されたプラスチックマトリックス材料の使用に限定されない、しかし、光を吸収し、λ≧50W/(mK)、好ましくはλ≧75W/(mK)、特に好ましくはλ≧100W/(mK)の範囲の熱伝導率を有する第1の構成要素として、任意の材料と組み合わせた方法を使用することが特に好ましい。
最後に、本発明の接続構造は、光吸収材料で作られた第1の構成要素と、光透過材料で作られた第2の構成要素とからなり、第1の構成要素は、第2の構成要素に接続される少なくとも接続部分に高い熱伝導率を有する。これに関して、繰り返しを避けるために上記の説明も参照される。
【0033】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図面において、同じ参照符号は、同じ要素及び/又は構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】初期状態の本発明の透過接続デバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図2】接触位置にある本発明の透過接続デバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図3】圧力位置にある本発明の透過接続デバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図4】接続段階の開始時の接続位置にある本発明の透過接続デバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図5】接続段階の中間の接続位置にある本発明の透過接続デバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図6】接続段階の終了時の接続位置にある本発明の透過接続デバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図7】除去又は取外し位置にある本発明の透過接続デバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図8】本発明の接続方法の好ましい実施形態のフローチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の透過接続デバイス1の例示的な実施形態について説明する。通常、透過接続デバイスは、例えば自動車産業の分野において、尾灯などを製造する際に、2つのプラスチック構成要素を互いに溶接するために使用される。それぞれのプロセスは、2つのプラスチック構成要素を接続する概念は同じであるが、レーザプラスチック溶接、透過溶接又はポリマー溶接としても示される。
【0036】
この結合又は接続方法の基本原理は、接続を形成するために、1つのプラスチック構成要素、すなわち透過構成要素を通してレーザ放射を透過させることである。エネルギーが、接続される構成要素の表面に印加される標準的な溶接とは異なり、透過接続方法は、それらの界面で2つのプラスチック構成要素間にエネルギーを印加する。これは、完全な接続部分、接続構造又は溶接線を同時に照射することによって、すなわち、同時の光又はレーザ透過溶接によって行われ得る。更なる方法は、他の方法に加えて、擬似同時透過溶接又は輪郭溶接である。本発明内では、同時法の使用が特に好ましい。
【0037】
しかしながら、本発明によって提供される透過接続デバイス1は、異なる技術的応用分野、特に、例えばレドックス・フロー・バッテリの電気化学セルに使用するためのグラファイト電極の技術分野に適合される。以下に説明するように、透過接続デバイス1は、グラファイト電極の製造、又はグラファイトの加工に限らず、光吸収特性を有し、更に熱伝導率の高い任意の構成要素と組み合わせて使用され得る。
【0038】
この点において、グラファイトは、λ=119~165W/(mK)の熱伝導率を有するので、特に、λ≧50W/(mK)、好ましくはλ≧75W/(mK)、特に好ましくはλ≧100W/(mK)の範囲内の熱伝導率を有するすべての材料は、高熱伝導材料と見なされる。
【0039】
ここで図1を参照すると、透過接続デバイス1の一般的な構成を説明している。透過接続デバイス1は、第1の構成要素3を受け入れるために、すなわち使用中に第1の構成要素3を保持するために、第1の支持体12に取り付けられた第1のツール10を備える。更に、透過接続デバイス1は、第2の構成要素5を受け入れるために、すなわち使用中に第2の構成要素5を保持するために、第2の支持体22に取り付けられた第2のツール20を備える。
【0040】
図示のように、第1のツール10は、下部ツールである。したがって、第1の支持体12は昇降台等であってもよい。したがって、第2のツール20は、上部ツールであり、これにより、第2の支持体22は、上部取付けプレートを呈し得る。第1の支持体12としての昇降台及び/又は第2の支持体22としての取付けプレートは、金属、好ましくは鋼又はアルミニウムである。
【0041】
第2の支持体22には、光ガイド又はレーザファイバ30を締結するための開口部が設けられている。光ガイド又はレーザファイバ30は、対向する端部を用いてレーザ光源(図示せず)に接続される。第2のツール20は、負の導波路24、すなわち、その内部にキャビティを画定する導波路24として存在し、キャビティは、後の使用中にレーザファイバ30を出るレーザ光32が反射される。導波路24は、レーザ光32の出口端部に、第2のツール20によって接続される構成要素3、5に力を印加するための透明プレート26を備える。
【0042】
上述したように、第1の支持体22は昇降台である。この特徴により、第1のツール10及び第2のツール20は、相対的に移動可能である。これに関して、第1のツール10と第2のツール20との間の相対運動をもたらす他の構成も可能であることに留意されたい。
【0043】
更に、第1のツールは、高い熱抵抗を有する断熱体14の層を備える。断熱体として適格であるためには、断熱体14は、λ≦2W/(mK)、好ましくはλ≦1W/(mK)の熱伝導率を有することが好ましい。
【0044】
使用されるプロセス、すなわち光透過接合技術に起因して、断熱体14は、この低い熱伝導率で、更に、この技術に固有の更なる要件を満たさなければならない。例えば、第1の構成要素又は吸収構成要素3は、レーザ光によってプロセス中に加熱される。したがって、断熱体14は、上述したように、それぞれの熱抵抗を有する必要がある。言い換えれば、断熱体の融点は、接続方法中に吸収構成要素3が加熱される温度よりも十分に高くなければならない。この目的のために、断熱体は、好ましくはtmp≧200℃、好ましくはtmp≧250℃の融点を有する。
【0045】
更に、2つの構成要素3、5を互いに接続するために使用中に印加される溶接力を考慮しなければならない。したがって、この溶接力及び結果として生じる接触圧力に耐えなければならない断熱体14は、この点でもそれぞれの耐性を有する必要がある。
【0046】
上記の要件を満たす例示的な材料は、熱可塑性材料、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。断熱体14の特に好ましい材料としてのPEEKは、一方では約λ=0.25W(mK)の極めて低い熱伝導率を有し、他方では約tmp=335℃の高い融点を有する。更に、これは、上述したように、通常印加される溶接力Fに対して十分な耐性を有する。
【0047】
完全を期すために、断熱体14は、1mm≦t≦10cm、好ましくは2.5mm≦t≦7.5cm、特に好ましくは5mm≦t≦5cmの範囲の厚さを有する。これらの厚さ範囲によって、熱伝導を少なくとも妨げ、あるいは確実に防止することができる。これに関して、断熱体14の厚さは、使用される材料に依存し、使用される材料と相互に関連する。例えば、高い熱伝導率を有する材料は、第1の支持体12への熱伝導を妨害又は防止するために厚い厚さが必要とされ得るが、PEEKのような低い熱伝導率を有する材料は、高い熱伝導率を有する材料と比較して、薄い厚さで存在し得る。
【0048】
断熱体14の層の上には、非粘着コーティング16が存在する。したがって、非粘着コーティング16は、第1のツール10の第1の構成要素3との少なくとも接触領域に存在する。非粘着コーティング16は、好ましくはポリテトラフルオロエチレンからなる。このコーティングにより、以下に説明するように、第1の構成要素3の第1のツール10への粘着を、処理の確実な方法で防止することができる。
【0049】
ここで、適応した透過接続デバイス1の構造及び機能を、電気化学セルなどに使用するために、結果として得られる接続構造7としてのグラファイト電極の例示的な製造に基づいて説明する。
【0050】
例示的なグラファイト電極は、最初に、光又はレーザ吸収材料で作られた第1の構成要素3からなる。本実施例では、第1の構成要素3は、グラファイト粒子で充填されたプラスチックマトリックス材料である。第2の構成要素5は、例えば、第1の構成要素3を含むグラファイトをレドックス・フロー・バッテリ・セル・スタックに後で取り付けるためのフレームを設け、使用される光又はレーザ光に対して透明なプラスチックからなる。それにもかかわらず、上述したように、高い熱伝導率を有する任意の他の材料、例えば別の鉱物で充填されたプラスチックマトリックス材料を吸収構成要素3として使用することができる。
【0051】
第1の構成要素3を第2の構成要素5に接続する、すなわち接合又は溶接するために、最初に第1の構成要素3及び第2の構成要素5は、第1のツール10と第2のツール20との間に配置される。この状態を図1に示す。ここで、第1の構成要素3は、第1のツール10上に配置され、第2の構成要素5は、第1の構成要素3上に配置されている。それにもかかわらず、接続構造又は部分において第1の構成要素3を加熱するための光、特にレーザ光が、第2のツール20から来るので、第2の構成要素5を最初に通過するといった、任意の構成を選択し得る。
【0052】
構成要素3、5が透過接続デバイス1内に配置された後、第1のツール10及び第2のツール20は、図2に示すように、接触位置に相対的に移動される。ここで、第1の構成要素10及び第2の構成要素20は、少なくとも部分的に、好ましくはそれぞれの接続部分で互いに当接する。
【0053】
その後、図3に溶接力Fによって示すように、第1の構成要素3及び第2の構成要素5に接触圧力が印加される。印加される溶接力Fは、通常、接続される構成要素に依存する。具体的には、溶接力Fは、構成要素の損傷を回避しつつ、同時に構成要素間に確実な接続が形成されるように選択されなければならない。したがって、第1のツール10の断熱体14は、構成要素を互いに適切に接続するために必要な範囲で、力の印加、特に圧縮力に耐える。
【0054】
印加された溶接力Fを維持しつつ、レーザ光源がオンにされ、そして第1の構成要素3及び第2の構成要素5は、レーザファイバ30を通って導波路24に、更にプレート26を通って進む図示しないレーザ光源から出るレーザ光32によって照射される。これを図4及び図5に示す。好ましくは、第1の構成要素3及び第2の構成要素5は、接続部分又は接続構造において照射される。
【0055】
入射したレーザ光32は、下部の第1の構成要素3によって吸収され、材料内で熱に変換される。レーザ光32が吸収構成要素3によって熱に変換されると、熱エネルギーは、透明構成要素5に伝達されて、透明構成要素が溶融ゾーンを生じるように軟化して、溶融することを可能にする。2つの構成要素3、5が密接に接触することを確実することによって、熱エネルギーを透明構成要素5に伝導することができる。
【0056】
光透過接合技術によって信頼性の高い接続を確立するために、透過接続デバイス1は断熱体14を備える。この断熱体14を使用することにより、上述のような例示的なグラファイト電極を製造するための透過接続方法を適用することが実現される。これは、断熱体14が、例えば第1の支持体12への熱伝導を少なくとも阻害するか、好ましくは防止するためである。その結果、熱エネルギーの損失が回避され、接続プロセスが容易になる。
図6に示すように、軟化した材料を硬化させるためにレーザ光がオフにされた後であっても、2つの構成要素3、5は互いに押圧される。特に、軟化又は溶融した材料の再結晶が達成される。
【0057】
最後に、図7に示すように、第1のツール10及び第2のツール20は、接続位置から相対的に移動される。ここで、ユーザは、製造された接続構造7、すなわちレドックス・フロー・バッテリを組み立てるためのフレーム要素を有する例示的なグラファイト電極を取り外すことができる。
【0058】
上記の説明に基づいて、グラファイト電極を製造するために光透過接合技術が使用されることは、従来技術との第1の違いであり、特定の技術的利点である。特に、この技術の使用は、グラファイト電極の製造を容易で、費用効率的にする。
【0059】
これに関して、特に透過接続デバイス1に関して、第1の構成要素3としての光又はレーザ吸収及び高熱伝導材料が、光又はレーザ透過性の第2の構成要素5に接続される、すなわち接合又は溶接される任意の用途に、好ましくは任意の電気化学用途に、透過接続デバイス1を、更に使用できることが分かった。
【0060】
ここで図8を参照すると、光吸収材料で作られた第1の構成要素3を光透過材料で作られた第2の構成要素5に接続するための透過接続デバイス1を使用する本発明の接続方法の一実施形態のフローチャートを、説明している。上述したように、第1の構成要素3は、少なくとも接続部分において高い熱伝導率を有する。高い熱伝導率は、λ≧50W/(mK)、好ましくはλ≧75W/(mK)、特に好ましくはλ≧100W/(mK)の範囲にあると考えられる。
【0061】
第1の方法ステップiでは、第1のツール10内に第1の構成要素3を配置するステップが行われる。第1のステップiの前、後、又は同時に実施され得る第2のステップiiでは、第2の構成要素5の第2のツール20への配置が行われる。本方法を更に自動化するために、第2のステップiiは、第2の構成要素5を第1のツール10内の第1の構成要素3上に配置するステップ(ステップii1)と、第1のツール10及び第2のツール20を、第2のツール20が第2の構成要素5を受ける移動位置に、相対的に移動させるステップ(ステップii2)と、を含むことが好ましい。このように進めることにより、第2の構成要素5は、第2のツール20内に自動的に伝達され、これにより、それぞれの手動ステップが排除される。
【0062】
両方の構成要素3、5が適切に配置された後、ステップiiiにおいて、第1のツール10及び第2のツール20を、第1の構成要素3及び第2の構成要素5が少なくとも部分的に、好ましくはそれぞれの接続部分を互いに当接する接続位置に、相対的に移動するステップが、実施される。
【0063】
接続位置では、ステップivにおいて、溶接力が、第1の構成要素3及び第2の構成要素5に印加される。更に、第1の構成要素3及び第2の構成要素5は、溶接力を印加又は維持しつつ光源によって照射される。各光源は、レーザ光源であることが好ましい。
【0064】
続いて、ステップvにおいて、接続位置からの第1のツール10と第2のツール20の相対的な移動のステップが、実施される。このステップが実行された後、ユーザは、得られた接続構造7を透過接続デバイス1から除去、又は取り外すことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 透過接続デバイス
3 第1の構成要素
5 第2の構成要素
7 接続構造
10 第1のツール
12 第1の支持体
14 断熱体
16 非粘着コーティング
20 第2のツール
22 第2の支持体
24 導波路
26 プレート
30 光ガイド又はレーザファイバ
32 レーザ光
F 溶着力

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】