(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057053
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】後加工可能な印刷層付紙材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 29/00 20060101AFI20230413BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230413BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20230413BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230413BHJP
C09D 11/10 20140101ALI20230413BHJP
【FI】
B32B29/00
B32B27/00 E
B41M3/00 Z
B41J2/01
B41J2/01 123
C09D11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161543
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021165996
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】島田 真典
(72)【発明者】
【氏名】新谷 栄一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】志水 基修
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA30
2C056FB04
2C056FB09
2C056FB10
2C056HA44
2H113AA04
2H113AA06
2H113BA01
2H113BB02
2H113BB05
2H113BB22
2H113CA05
2H113FA48
4F100AH01C
4F100AH02C
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4F100AK21C
4F100AK25D
4F100AK54C
4F100AR00C
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4F100BA04
4F100BA07
4F100DG10B
4F100EH46C
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4F100GB15
4F100HB31A
4F100JB09C
4F100JK09
4F100JM01C
4J039AB02
4J039AD02
4J039AD06
4J039AE07
4J039BC07
4J039BC13
4J039CA03
4J039CA04
4J039GA09
(57)【要約】
【課題】OPニスを印刷パターンの変更に影響されない1種類のみのOPニス用印版を用いてフレキソ印刷を行うことにより、印版の変更を伴わず、生産性を向上させると共に、段ボールへの後加工適性を確保することを目的とする。
【解決手段】印刷層を紙材の表面の一部分又は全面に設けた印刷層付紙材の表面の一部に、後加工補助剤及びOPニスを含有する後加工可能層を設け、後加工可能層以外の印刷層付紙材の表面にOPニス層を設けた後加工可能な印刷層付紙材を用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷層を紙材表面の一部分又は全面に設けた印刷層付紙材の表面の一部に、後加工補助剤及びオーバープリントニスを含有する後加工可能層を設け、
前記後加工可能層以外の印刷層付紙材の表面にオーバープリントニス層を設けた後加工可能な印刷層付紙材。
【請求項2】
前記後加工可能層は、前記印刷層の表面、及び前記印刷層が設けられていない紙材の表面から選ばれる少なくとも一方の表面に設ける請求項1に記載の後加工可能な印刷層付紙材。
【請求項3】
前記後加工補助剤は、水性樹脂、多価アルコール及びグリコールエーテルから選ばれる水性材料の水溶液、又は流動パラフィン及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる油性材料の有機溶媒溶液である請求項1又は2に記載の後加工可能な印刷層付紙材。
【請求項4】
前記紙材は、段ボール原紙、白板紙又は段ボールシートである請求項1又は2に記載の後加工可能な印刷層付紙材。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の後加工可能な印刷層付紙材を、フレキソ印刷法を用いて製造する後加工可能な印刷層付紙材の製造方法であって、
前記後加工可能層を設ける部位に相当するフレキソ版の部分に前記後加工補助剤を供給し、
アニロックスロールに供給された前記オーバープリントニスを前記フレキソ版に転写し、
前記フレキソ版の前記後加工補助剤及びオーバープリントニスを印刷層付紙材に転写する、後加工可能な印刷層付紙材の製造方法。
【請求項6】
前記後加工補助剤は、インクジェット法で前記フレキソ版に供給される請求項5に記載の後加工可能な印刷層付紙材の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の後加工可能な印刷層付の段ボール原紙又は白板紙を表ライナとして、中芯及び裏ライナと貼り合わせた、後加工可能な印刷層付段ボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、後加工可能な印刷層付紙材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
段ボールには、あらかじめ美粧印刷が施された板紙の一種である段ボール原紙を使用して、段ボールの貼合せを行う、いわゆる「プレプリント」と呼ばれる方式で製造されたものが知られている。その段ボール原紙への印刷方法としては、従来、主に凸版によるフレキソ印刷方式が採用されてきた。このフレキソ印刷においては、色数に応じた印版(フレキソ版)が用いられている。
また、グラビア印刷やオフセット印刷などで美粧印刷が施された板紙の一種である白板紙が、化粧品や加工食品などを包装するための紙器に用いられている。
【0003】
これに対し、近年、板紙に美粧印刷を行う方法として、印版を必要としないインクジェット印刷方式が注目されている。
この印刷方式では、直接、基材にインクジェットヘッドからインクを吐出してパターンを形成するだけでなく、例えば、特許文献1には、オフセット印刷において、湿し液をインクジェットで転写体に噴射してパターンを形成し、その上にインクを塗布して、得られたイメージをメディアに転写・作像する方法が開示されている。これらの方法は、無版での美粧印刷を可能とする。
【0004】
ところで、段ボールや紙器の印刷面は、加工や輸送時の物理的作用により、印刷面が破損したり汚染されたりする可能性がある。これを予防するため、一般的に、印刷面の上にオーバープリントニス(以下「OPニス」と略することがある。)が塗工されている。このOPニスとして、段ボールでは主にコストの低い水性ニスが使用されており、紙器においてはUV照射により硬化するUVニスが使用されることもある。
【0005】
このOPニスを無版で塗工する方法としては、美粧印刷と同様に、インクジェット方式を利用することが考えられるが、印刷面の保護性を確保するには、OPニスをかなり多量に塗工する必要がある。しかしながら、OPニスの塗液は、粘度が高く、またインクジェットヘッド内で乾燥して詰まるのを防ぐのに、固形分濃度を低下させたり、保湿剤を添加したりする必要があることから、吐出量に限界がある既存のインクジェットヘッドでは対応が難しい。対策として、インクジェットヘッドを増設することも考えられるが、乾燥が不十分になるため、現実的にこのインクジェット方式を適用することは困難であった。
【0006】
このため、現状では、このOPニス塗工には、必要な塗工量を確保できる上に、段ボール等への表面印刷にも用いられ、また人体への影響や環境負荷が小さい水性ニスによるフレキソ印刷方式が採用されている。このフレキソ印刷方式においては、全面塗工することで、印刷パターンの変化に影響することなく、OPニス塗工を簡便に行うことが可能となる。
【0007】
ところで、プレプリント方式により製造された美粧印刷付板紙を使用して製造された段ボール箱や紙器は、通常、ユーザー側において、内容物を収納した後の製函や封緘のためのホットメルト接着剤塗布や、品番を示すバーコードやロット番号のインクジェット方式での印字などの後加工が行われる。
【0008】
しかしながら、OPニスを全面に塗工すると、前記の後加工に支障をきたすおそれがある。具体的には、前記のホットメルト接着剤の塗布をOPニス塗膜上へ行うと、ホットメルト接着剤の板紙への浸透が妨げられ、十分な接着性を得られないおそれがある。また、印字をOPニス塗膜上へ行うと、使用されるインクには水性と油性があるものの、その種類に係わらず、いずれの場合においても、インクの板紙への浸透が妨げられ、十分なインク密着性が得られず、輸送時の振動や摩擦等によって印字部分を汚してしまうおそれがある。
【0009】
従って、OPニスが塗工されていることで、後加工に支障が生じるのを防ぐ必要がある。そのため、後加工を行う位置にOPニスが塗工されないような印刷パターンを有するOPニス用の印版を用いてフレキソ印刷が行われている。その場合、箱毎に後加工される位置やサイズなどが異なるため、それぞれに専用のOPニス用の印版が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、美粧印刷パターンが変更されると、前記のOPニス用の印版の交換作業が必要となり、生産性が低下する。また、美粧印刷パターン毎に専用のOPニス用の印版が必要なため、コスト高を招くことになる。
【0012】
このOPニス用の印版変更を省略する方法として、OPニスとして、後加工に影響の少ないOPニスを用いることが考えられる。すなわち、後加工のホットメルト接着剤や印字用インクの板紙への浸透性や密着性を有する組成のOPニスを用いることである。これに関し、本発明者等が鋭意検討したが、印刷面保護性と後加工適性を両立できるOPニス処方を見出すことはできなかった。
【0013】
そこで、この発明は、OPニスを印刷パターンの変更に影響されない1種類のみのOPニス用の印版を用いて全面にフレキソ印刷を行うことにより、OPニス用の印版の交換を不要として生産性を向上させると共に、美粧印刷パターン毎に専用のOPニス用の印版も不要となり、コストアップを抑制させ、さらに、後加工適性を確保すること、例えば、ホットメルト接着剤やインキの密着性を向上させることで、接着性の保持や、印字部分の振動や摩擦等による汚れの発生防止等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、印刷層付紙材の表面の一部に、後加工補助剤及びOPニスを有する後加工可能層を設けることにより、前記の課題を解決したものであり、その要旨は、下記の[1]~[7]に存する。
【0015】
[1]印刷層を紙材表面の一部分又は全面に設けた印刷層付紙材の表面の一部に、後加工補助剤及びオーバープリントニスを含有する後加工可能層を設け、前記後加工可能層以外の印刷層付紙材の表面にオーバープリントニス層を設けた後加工可能な印刷層付紙材。
[2]前記後加工可能層は、前記印刷層の表面、及び前記印刷層が設けられていない紙材の表面から選ばれる少なくとも一方の表面に設ける[1]に記載の後加工可能な印刷層付紙材。
[3]前記後加工補助剤は、水性樹脂、多価アルコール及びグリコールエーテルから選ばれる水性材料の水溶液、又は流動パラフィン及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる油性材料の有機溶媒溶液である[1]又は[2]に記載の後加工可能な印刷層付紙材。
[4]前記紙材は、段ボール原紙、白板紙又は段ボールシートである[1]~[3]のいずれか一項に記載の後加工可能な印刷層付紙材。
【0016】
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の後加工可能な印刷層付紙材を、フレキソ印刷法を用いて製造する後加工可能な印刷層付紙材の製造方法であって、前記後加工可能層を設ける部位に相当するフレキソ版の部分に前記後加工補助剤を供給し、アニロックスロールに供給された前記オーバープリントニスを前記フレキソ版に転写し、前記フレキソ版の前記後加工補助剤及びオーバープリントニスを印刷層付紙材に転写する、後加工可能な印刷層付紙材の製造方法。
[6]前記後加工補助剤は、インクジェット法で前記フレキソ版に供給される[5]に記載の後加工可能な印刷層付紙材の製造方法。
[7][4]に記載の後加工可能な印刷層付の段ボール原紙又は白板紙を表ライナとして、中芯及び裏ライナと貼り合わせた、後加工可能な印刷層付段ボール。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る後加工可能な印刷層付紙材は、後加工可能層を設ける部位に相当するフレキソ版、すなわち、印版の部分に後加工補助剤が供給され、その上面にアニロックスロール経由でオーバープリントニス(OPニス)が転写されて供給されるので、後加工可能層を設ける部位に供給されるOPニスの量は、他の部位に供給されるOPニスの量より減少する。この後加工可能層に配されるOPニスの減少により、OPニスによる印刷層の保護効果が低減する。言い換えれば、OPニスの減少により、後加工適性を確保することができる。例えば、ホットメルト接着剤を塗布しても、OPニスによる紙材への浸透を抑制する効果が減少しているため、ホットメルト接着剤による接着性を確保できる。また、印字用インクを用いて後印刷をしても、その印字用インクが水性であっても油性であっても、OPニスによる紙材への浸透の抑制効果が減少しているため、印字用インクの紙材への密着性が向上し、印字部分が輸送中などに振動や摩擦等を受けても、汚れが生じるのを防止することができる。
このことにより、OPニスの塗工のためのフレキソ印刷用の印版は、全面塗工用のみで対応が可能となり、版替え等による生産性の低下を抑制できるだけでなく、美粧印刷パターン毎のOPニス専用の印版も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)(b)本願発明にかかる後加工可能な印刷層付き紙材を示す断面図
【
図2】(a)(b)本願発明にかかる後加工可能層を示す断面図
【
図3】本願発明にかかる後加工可能な印刷層付き紙材(巻取りした紙材)の製造工程を示す模式図
【
図4】本願発明にかかる後加工可能な印刷層付き紙材(平板状の紙材)の製造工程を示す模式図
【
図5】(a)(b)本願発明にかかる紙材にプレ後加工可能層が転写された状態を示す断面図
【
図6】(a)(b)本願発明にかかる紙材上のプレ後加工可能層を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明について説明する。
この発明にかかる後加工可能な印刷層付紙材は、表面に印刷層を設けた紙材の印刷層側にオーバープリントニス(OPニス)層と後加工可能層を設けた紙材である。この紙材としては、一般ライナ、白ライナ等の段ボール原紙や白板紙、段ボールシート等が挙げられる。
具体的には、まず、
図1(a)、(b)に示すように紙材11aの表面の一部又は全面に美粧印刷等の印刷層12を設ける。この印刷層12は、フレキソ印刷やグラビア印刷、インクジェット印刷等の印刷方式で印刷することができる。
【0020】
そして、前記印刷層12を設けた紙材11aの表面の一部、すなわち、印刷層12の外表面(
図1(a))の一部、又は印刷層12を設けた側の紙材11aの表面のうち、印刷層12のない部分(
図1(b))の一部に後加工可能層13を設ける。
また、印刷層12を設けた紙材11aの印刷層側表面の、後加工可能層13を設けた部分以外の部分にOPニス層14を設ける。
なお、図には示さないが、印刷層12を設けた側の紙材11aの表面であって、印刷層12を設けた部分と印刷層12が設けられていない紙材11aの表面の部分にまたがって、OPニス層14または後加工可能層13を設けてもよい。また、紙材11aの表面に、印刷層12、OPニス層14、後加工可能層13の何れも存在しない部分があってもよい。
【0021】
前記の後加工可能層13は、後加工補助剤及びOPニスを含有する層であり、1層、2層、又は2つの成分がその界面部分で混じった不均一の層のいずれかの層である。すなわち、
図2(a)に示すように、後加工補助剤層15とOPニス層14とが積層した2層からなる層、
図2(b)に示すように、後加工補助剤とOPニスが混合して一体化した層15aの1層のみからなる層、及び図示しないが、後加工補助剤とOPニスとが界面部分で混じり、後加工補助剤、OPニス、及びその混合物が存在する不均一の層のうち、いずれかの層構造を有する。
【0022】
<後加工可能な印刷層付紙材の製造方法>
前記後加工可能な印刷層付紙材は、次の方法で製造することができる。具体的には、紙材が使用単位に切断されていない巻取紙の場合は、
図3に示すフレキソ印刷法を用いて、また、紙材が使用単位に切断されて平板状となっている場合は、
図4に示すフレキソ印刷法を用いて製造することができる。
【0023】
(紙材が使用単位に切断されていない巻取紙からなる紙材11aの場合)
紙材が使用単位に切断されていない巻取紙からなる紙材11aを用いる場合、
図3に示すフレキソ印刷法を用いて後加工可能な印刷層付紙材を製造することができる。
まず、紙材11aに、
図3には示していないが、印刷工程により印刷を行う。具体的には、印刷対象部分の紙材11aの表面の一部分又は全部に美粧印刷等の印刷を施して印刷層12を設け、印刷層付紙材11bを製造する。
【0024】
次いで、後加工可能層となるプレ後加工可能層13’及びOPニス層となるプレOPニス層14’をフレキソ版24上の特定の位置に設ける。
具体的には、チャンバー21から前記OPニスをアニロックスロール22に供給する。
一方、後加工補助剤供給部23から後加工補助剤をフレキソ版24の特定の位置に供給する。この特定の位置とは、前記フレキソ版24の表面に配された剤を前記印刷層付紙材11bの印刷層12側に転写したとき、後加工可能層13が設けられる部位に相当する位置である。
前記の後加工補助剤をフレキソ版24の特定の位置に供給する方法として、インクジェット法を用いると、無版でフレキソ版24の任意の位置に効率よく供給することができるので、生産性が向上するという特徴を発揮することができる。
そのときのインクジェットヘッドとしては、市販の製品を使用することができ、幅方向の解像度としては300~600dpi、液適量では3~25pL程度で、また使用する後加工補助剤が水性または油性の何れであっても、接液部にはそれに対応する材質のものが提供されている。
【0025】
そして、後加工補助剤をフレキソ版24の特定の位置に供給した後、アニロックスロール22に供給された前記OPニスを前記フレキソ版24に転写する。次いで、フレキソ版24上の剤を印刷層付紙材11bに転写・塗工する。これにより、
図5(a)(b)に示すように、OPニスのみが配された層がプレOPニス層14’を形成し、後加工補助剤及びOPニスの両方を含有する層は、プレ後加工可能層13’を形成する。
【0026】
(紙材が使用単位に切断された平板状の紙材11cの場合)
紙材が使用単位に切断された平板状の紙材11cを用いる場合、
図4に示すフレキソ印刷法を用いて後加工可能な印刷層付紙材を製造する。
まず、紙材が使用単位に切断された平板状の紙材11cに、
図4には示していないが、印刷工程により印刷を行う。具体的には、印刷対象部分の紙材11cの表面の一部分又は全部に美粧印刷等の印刷を施して印刷層12を設け、印刷層付紙材11dを製造する。
この印刷層付紙材11dは、
図4に示すコンベア25によって移動させることができる。なお、印刷層付紙材11dを移動させる手段としては、コンベア25に限られるものではなく、印刷層付紙材11dを搬送できる設備であれば、特に限定されない。
【0027】
次いで、後加工可能層となるプレ後加工可能層13’及びOPニス層となるプレOPニス層14’をフレキソ版24上の特定の位置に設ける。
具体的には、ニス液パン等のチャンバー21’から前記OPニスをアニロックスロール22’に供給する。
一方、後加工補助剤供給部23’から後加工補助剤をフレキソ版24’の特定の位置に供給する。この特定の位置とは、前記フレキソ版24’の表面に配された剤を前記印刷層付紙材11dの印刷層12側に転写したとき、後加工可能層13が設けられる部位に相当する位置である。
前記の後加工補助剤をフレキソ版24’の特定の位置に供給する方法として、インクジェット法を用いると、無版でフレキソ版24’の任意の位置に効率よく供給することができるので、生産性が向上するという特徴を発揮することができる。
そのときのインクジェットヘッドとしては、前述と同様に、市販の製品を使用することができる。
【0028】
そして、後加工補助剤をフレキソ版24’の特定の位置に供給した後、アニロックスロール22’に供給された前記OPニスを前記フレキソ版24’に転写する。次いで、フレキソ版24’上の剤を印刷層付紙材11dに転写・塗工する。これにより、
図5(a)(b)に示すように、OPニスのみが配された層がプレOPニス層14’を形成し、後加工補助剤及びOPニスの両方を含有する層は、プレ後加工可能層13’を形成する。
【0029】
(後加工可能な印刷層付紙材)
前記の方法で製造された後加工可能な印刷層付紙材11bに形成されたプレ後加工可能層13’は、印刷層12の表層(
図5(a))や紙材11aの表層(
図5(b))に形成される。
このとき、フレキソ版24、24’に形成されるOPニスのみが配された層又は後加工補助剤及びOPニスの両方を含有する層は、ほぼ均一の厚みとなるので、後加工補助剤が供給されたフレキソ版24、24’の部分から転写・塗工された印刷層付紙材11bの表層部分、すなわち、プレ後加工可能層13’は、後加工補助剤の分だけOPニスの量が減少することとなる。
【0030】
なお、図には示さないが、印刷層12が設けられている側の紙材11aの表面であって、印刷層12が設けられた部分と印刷層12が設けられていない紙材11aの表面の部分にまたがって、プレ後加工可能層13’が設けられてもよい。
【0031】
また、前記のプレ後加工可能層13’は、後加工補助剤及びOPニスを含有する層であり、1層、2層、又は2つの成分が界面部分で混じった不均一の層のいずれかの層である。すなわち、
図6(a)に示すように、印刷層付紙材11bへの浸透前の後加工補助剤層15’ とプレOPニス層14’とが積層した2層からなる層、
図6(b)に示すように、後加工補助剤とOPニスが混合して一体化した、印刷層付紙材11bへの浸透前の層15bの1層のみからなる層、及び図示しないが、後加工補助剤とOPニスとが界面部分で混じり、後加工補助剤、OPニス、及びその混合物が存在する不均一の層のうち、いずれかの層構造を有する。
【0032】
次に、熱風乾燥等の任意の乾燥方法により乾燥させて、後加工可能層13及びOPニス層14を印刷層12側の表層に設けた、後加工可能な印刷層付紙材11bを得ることができる。
ところで、使用した紙材が段ボールシートの場合(紙材11c)は、そのまま印刷層付段ボールとして使用できる。また、使用した紙材が一般ライナ、白ライナ等の段ボール原紙や白板紙の場合(紙材11a)は、得られた後加工可能な印刷層付紙材11bを表ライナとし、任意の方法により、中芯及び裏ライナと貼り合わせることにより、この発明にかかる後加工可能な印刷層付段ボールを製造して使用することができる。
【0033】
前記のプレOPニス層14’及び前記のプレ後加工可能層13’の一部を構成するOPニス、及び前記のプレ後加工可能層13’の一部を構成する後加工補助剤は、いずれも印刷層付紙材11b、11dに浸透するが、前記プレ後加工可能層13’に後加工補助剤が含まれることで、印刷層付紙材11b、11dの表面に残存するOPニスの量が減少し、OPニスが皮膜を形成し難くなる。さらに、後加工補助剤に溶剤が含まれる場合、乾燥により蒸発し、後加工補助剤は乾燥後、主剤のみとなって、後加工への影響はより小さくなる。これらのため、プレOPニス層14’は、その一部が印刷層付紙材11b、11dへ浸透し、印刷層付紙材11b、11dの表面に残る部分がOPニス層14となる。また、プレ後加工可能層13’は、その一部が印刷層付紙材11b、11dへ浸透すると共に、溶剤がある場合は乾燥により蒸発し、印刷層付紙材11b、11dの表面に残る部分が後加工可能層13となる。この結果、
図1(a)(b)に示すように、後加工可能層13は、OPニス層14よりOPニスが少ない層となる。
【0034】
[オーバープリントニス(OPニス)]
前記OPニス層14は、印刷層12を保護し、印刷層12の破損、汚染を防止するために印刷層12の表面を覆う層である。このOPニスの材料としては、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0035】
OPニス層14のOPニスの塗工量は、固形分で、1g/m2以上がよく、2g/m2以上が好ましい。1g/m2より少ないと、印刷面を十分に保護することが困難となる。一方、4g/m2以下がよく、3g/m2以下が好ましい。4g/m2より多くてもよいが、4g/m2あれば印刷面を十分に保護できるので、4g/m2以下で十分である。
なお、上記のOPニスの塗工量は、プレ後加工可能層13’に塗工されるOPニスの塗工量を含まない。
【0036】
[後加工補助剤]
前記後加工補助剤は、前記プレ後加工可能層13’におけるOPニスの量を低減させ、後加工で使用されるホットメルト接着剤や印字用インク等の一部が紙材へ浸透するのを妨げずに、ホットメルト接着剤の接着性や印字用インクの密着性を損なわない剤が好ましい。
前記後加工補助剤としては、含有量が少なくても粘度が高い水性材料や油性材料を主剤に用いることができる。そして、この主剤は、水や有機溶媒等の溶剤で希釈して用いてもよい。
【0037】
前記水性材料としては、水性樹脂、多価アルコール、グリコールエーテル等を挙げることができ、溶剤として水を用いたとき、後加工補助剤は、これら水性材料の水溶液となる。
前記水性樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-ビニルアセトアミド、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリアクリルアミド等が挙げられる。前記多価アルコールとしては、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール等が挙げられる。前記グリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
また、前記油性材料としては、流動パラフィン、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げることができ、溶剤として、ヘキサン、エタノール等の有機溶媒を用いたとき、後加工補助剤は、これら油性材料の有機溶媒溶液となる。
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸モノグリセライド、ジグリセリライドおよびトリグリセライドや、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等が挙げられるが、常温で液状のものが好ましい。前記脂肪酸トリグリセライドとしては、炭素数が16以下の長鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)、短鎖脂肪酸トリグリセライドが挙げられる。例として、長鎖脂肪酸トリグリセライドでは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の飽和脂肪酸や、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸のグリセリンエステルが、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)では、カプリル酸やカプリン酸のグリセリンエステル、短鎖脂肪酸トリグリセライドでは、カプロン酸等のグリセリンエステルが挙げられるが、粘度等の点から中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)が好ましい。また、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの例としては、カプリル酸デカグリセリンエステル、ラウリン酸ヘキサグリセリンエステル、ラウリン酸デカグリセリンエステル等が挙げられる。さらに、これらグリセリン脂肪酸エステルは一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。
さらに、これらの油性材料は、高粘度の場合、インクジェットヘッドから吐出したり、紙材に浸透し易くなったりする程度まで、ヘキサン、エタノール等の有機溶媒を溶剤として希釈して用いてもよい。
【0039】
なお、インクジェットヘッドから吐出する粘度や紙材への浸透性等を考慮すると、前記流動パラフィンとしては、平均炭素数が30以下のものが好ましい。また、流動パラフィンは、石油原油から蒸留や精製などの工程を経て得られた炭化水素類の混合物で、平均炭素数や炭素数の分布によって粘度が異なるため、溶剤が必要となる場合がある。
【0040】
この後加工補助剤中の主剤の含有量としては、水性樹脂の場合、0.2重量%以上がよく、1.0重量%以上が好ましい。0.2重量%より少ないと、後加工補助剤の粘度が低過ぎるため、フレキソ版上で塗れ広がり易く、フレキソ版への転移量が少なくなって、OPニスの転写を阻害する効果が不十分になるおそれがある。一方、10.0重量%以下がよく、5.0重量%以下が好ましく、4.5重量%以下がより好ましい。10.0重量%より多いと、後加工補助剤の粘度が高過ぎるため、インクジェットヘッドへの充填や吐出が困難になるおそれがある。
また、主剤が油性材料の場合は、10重量%以上が良く、15重量%以上が好ましい。10重量%より少ないと、水性樹脂と同様にOPニスの転写を阻害する効果が不十分になるおそれがある。一方、インクジェットヘッドから吐出可能であれば100重量%でも良いが、90重量%以下がより好ましい。
【0041】
前記後加工補助剤には、前記主剤以外に、必要に応じて、保湿剤、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤を添加してもよい。また、撥水剤を添加すると、OPニスの転写を阻害する効果が高まる場合がある。
上記界面活性剤の種類としては、アセチレン系、シリコーン系、鉱物油系などが挙げられ、添加量としては上記後加工補助剤の表面張力が所定の範囲となる必要があるが、0.05~1重量%、好ましくは0.1~0.5重量%である。
【0042】
前記後加工補助剤の表面張力は、25℃で20mN/m以上、40mN/m以下が好ましい。前記後加工補助剤の表面張力が25℃で20mN/mより小さいと、インクジェットヘッドから吐出し難く、40mN/mより大きいとインクジェットヘッド内部での流れが悪化し、結果として何れもインクジェットヘッドからの吐出が不安定になる。なお、前記後加工補助剤の表面張力は、界面活性剤を添加することで調整することができる。
【0043】
前記後加工補助剤の粘度は、インクジェットヘッド内では加温により調整されることもあるが、25℃では1mPa・s以上がよく、2mPa・s以上が好ましい。1mPa・sより低いと、フレキソ版24に供給したとき、OPニスが供給されるまでにその状態を保持するのが困難となるおそれがあり、プレ後加工可能層13’の形成が困難となるおそれがある。一方、40mPa・s以下がよく、20mPa・s以下が好ましく、7mPa・s以下がより好ましく、6mPa・s以下がさらに好ましい。40mPa・sより高いと、インクジェットヘッドへの充填や吐出が困難になるおそれがある。
【0044】
前記プレ後加工可能層13’への前記後加工補助剤の供給量は、プレ後加工可能層13’に含まれるOPニスの塗工量が固形分として1g/m2以下となる量がよく、0.5g/m2以下となる量が好ましい。プレ後加工可能層13’に含まれるOPニスの塗工量が1g/m2より多いと、前記プレ後加工可能層13’に供給されるOPニスが増大し、設けられる後加工可能層13におけるOPニスが多すぎる状態となり、紙材へのホットメルト接着剤の接着性や印字用インクの紙材への密着性を低下させるおそれがある。
また、プレ後加工可能層13’に含まれるOPニスの塗工量の下限は、少ない方が好ましく、0g/m2が特によい。なお、前記した後加工可能な印刷層付紙材の製造方法を用いた場合、若干のOPニスが塗工されることとなる。
【0045】
前記プレ後加工可能層13’への前記後加工補助剤の供給量は、フレキソ版24の特定の位置に供給される前記後加工補助剤の量と、アニロックスロール22に供給される前記OPニスの量を適宜調整することにより調整することができる。
【0046】
<後加工可能な印刷層付紙材の特徴>
前記の方法で得られる後加工可能な印刷層付紙材は、OPニス層14により、段ボール箱や紙器として、印刷面に振動や摩擦等の力が加わっても、破損や汚れが生じるのが防止され、印刷面の状態が保護される。
また、後加工可能層13にホットメルト接着剤を接着させても、その接着強度は十分であり、接着部を剥がそうとすると、接着界面で剥がれるのではなく、段ボール表面で材料破壊が生じることとなる。
さらに、後加工可能層13に水性インクや油性インクで印刷又は印字したとき、所定時間経過後に印刷又は印字された部分を擦っても、該当部分の汚損がほとんど生じず、印刷又は印字された状態が保持される。
【実施例0047】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
まず、本実施例又は本比較例で使用した原材料及び評価方法を示す。
【0048】
<原材料>
[紙材(段ボール原紙、白板紙)]
・白板紙…レンゴー(株)製:CRC230
・白ライナ…日本製紙(株)製:NCW210
・一般ライナ…レンゴー(株)製:RKA210
【0049】
[紙材(段ボール原紙、白板紙)(プレコート有)]
前記の紙材(段ボール原紙、白板紙)に下記のプレコート剤を、卓上自動テストコーター(RK Print Coat Instruments社製:フレキシプルーフ100/UV)を用いて0.06g/m2(固形分)塗工した後、100℃の乾燥機に5秒間入れて乾燥したものを、紙材(段ボール原紙、白板紙)(プレコート有)とした。
[プレコート剤]
水94質量部に、塩化カルシウム(キシダ化学(株)製:試薬)3質量部、アクリル樹脂エマルジョン(日信化学工業(株)製:ビニブラン2687)3質量部を加え、攪拌してプレコート剤を得た。
【0050】
[紙材(段ボールシート)]
・表ライナが白板紙のEフルート(レンゴー(株)製)…表ライナ(白板紙:CRC230g)/中しん(KS120g)/裏ライナ(一般ライナ:CN160g)
・表ライナが白ライナのEフルート(レンゴー(株)製)…表ライナ(白ライナ:CWA170g)/中しん(KS120g)/裏ライナ(一般ライナ:CN160g)
・表ライナが一般ライナのEフルート(レンゴー(株)製)…表ライナ(一般ライナ:CN160g)/中しん(KS120g)/裏ライナ(白ライナ:CWA170g)
なお、前記の段ボール各構成部材である「白板紙:CRC230g」、「KS120g」、「一般ライナ:CN160g」、「白ライナ:CWA170g」は、いずれもレンゴー(株)製である。
【0051】
[後加工補助剤-水性材料]
・ポリビニルアルコール…富士フイルム和光純薬(株)製:PVA1500、以下「PVA」と称する。
・ポリエチレングリコール…片山化学工業(株)製:PEG20000、以下「PEG」と称する。
・ポリビニルピロリドン…アシュランド・ジャパン(株)製:PVP K-90、以下「PVP」と称する。
・ポリ-N-ビニルアセトアミド…昭和電工(株)製:GE191-104、以下「PNVA」と称する。
・カルボキシメチルセルロースナトリウム塩…ダイセルミライズ(株)製:CMC1330、以下「CMC」と称する。
・グリセリン…キシダ化学(株)製
【0052】
[後加工補助剤-油性材料]
・流動パラフィン…関東化学(株)製:炭素数=15~20程度
・グリセリン脂肪酸エステル…中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT):中央化成(株)製:MASESTER-E6000(以下、「MCT」と称する。)
・油性インキ…山崎産業(株)製:BLACK 81K01(石油系溶剤、高級アルコールを含む)
・ヒマシ油…山桂産業(株)製
【0053】
[後加工補助剤-その他]
・界面活性剤…日信化学工業(株)製:オルフィン E1004(アセチレン系界面活性剤)
・ヘキサン…キシダ化学(株)製
・エタノール…キシダ化学(株)製
【0054】
[OPニス]
・ニューFK MR OPニス N-2000…サカタインクス(株)製、アクリル系樹脂、以下「N-2000」と称する。
・FK ACV G-902…サカタインクス(株)製、アクリル系樹脂、以下「G-902」と称する。
・ハイドリックFCG OPニス…大日精化工業(株)製、スチレンアクリル系樹脂、以下「FCG」と称する。
【0055】
<評価方法>
[後加工補助剤の粘度測定]
各実施例及び比較例で得られた後加工補助剤について、粘弾性測定装置(アントンパール社製:レオメータMCR102)を用いて、25℃でせん断速度100s-1時のせん断粘度(mPa・s)を測定した。
【0056】
[後加工補助剤の表面張力測定]
各実施例及び比較例で得られた後加工補助剤について、25℃で全自動接触角計(協和界面科学(株)製:DM-701)を用いて形成した液滴の輪郭形状および密度差の値からYoung-Laplace法で表面張力(mN/m)を算出した。なお、後加工補助剤の液体密度は、密度計(アントンパール社製:DMA5000)を用いて25℃で測定した。
【0057】
[水性インク適性]
各実施例及び比較例で得られた試験体を段ボールシートに貼り合わせて、インクジェットプリンター(山崎産業(株)製:グラフィカミニキーMKHP4-401WQP)により、後記する特定層の位置にバーコードを印字した。
一定時間経過毎(印字から2分後、5分後、10分後)に綿棒の綿球部で印字部を擦り、印字品質と汚損について以下の基準で判定を行った。
【0058】
(1)印字品質:印字の状態をOPニス無塗工部と比較して、評価した。
◎:同等以上の色の濃さであり、輪郭も鮮明である。
○:同等な色の濃さであり、輪郭が鮮明である。
△:色の濃さ、輪郭の鮮明さが不十分である。
×:印字面でインクがにじむ。
【0059】
(2)汚損:印字から10分経過後に擦った結果を評価した。
◎:ほとんどバーコードに汚損がない。
○:バーコードに汚損がほぼなく、印字内容が認識できる。
△:バーコードに汚損が多く、印字内容が読み取りにくい。
×:バーコードに激しい汚損があり、印字内容が全くわからない。
【0060】
[油性インク適性評価]
油性黒インクとしてIJプリンター用オイルベースインク(山崎産業(株)製:BLACK81K01)を2g取り、シャーレ上でキムタオルに染み込ませ、回転印(サンビー(株)製:テクノタッチ)に押し付けて黒インクを採取し、各実施例及び比較例で得られた試験体の後記する特定層の位置に押印した。
一定時間経過毎(押印から2分後、5分後、10分後)に綿棒の綿球部で押印部を擦り、汚損を確認し、以下の基準で判定を行った。
【0061】
(1)押印品質:押印の状態をOPニス無塗工部と比較して、評価した。
○:同等な色の濃さであり、輪郭が鮮明である。
×:色の濃さ、輪郭の鮮明さが不十分である。
【0062】
(2)汚損:押印から10分経過後に擦った結果を評価した。
○:ほとんど押印部に汚損がない。
△:押印部に汚れが多く、押印内容は読み取りにくい。
×:押印部に激しい汚損があり、押印内容が全くわからない。
【0063】
[ホットメルト接着適性(HM適性)]
段ボール箱を組み立てる際に縦横のフラップが貼り合わされる場面を想定して、ホットメルト接着剤の接着性を評価した。
各実施例及び比較例で得られた試験体を、印刷時の紙材の走行方向が長手になるように70mm×50mmの大きさに裁断してAシートを得た。
予め用意した段ボールシート(Bフルート:RKLP120〔表ライナ〕/S140〔中芯〕/RKLP120〔裏ライナ〕:何れの原紙もレンゴー(株)製)から、貼合方向と幅方向がそれぞれ長手になるように100mm×50mmの大きさで、各1枚ずつ切り出してBシートを得た。
(なお、貼合方向:段ボールシートの段目に交差する方向、幅方向:段ボールシートの段目に平行な方向、とした。)
【0064】
貼合方向を長手にして切り出したBシートの表ライナ側に、Aシートの裏面に両面テープを貼り付け、端面を揃えて接着して、A-Bシートを得た。
幅方向を長手にして切り出したBシートの裏ライナ側に、ホットメルトアプリケータ(ノードソン製)を用いて、150℃で溶融したオレフィン系ホットメルト接着剤(レンゴー(株)製:RH-115)を0.1g塗布してB’シートを得た。
ホットメルト接着剤を塗布してから約1秒後に、段ボールシートに貼り合せたA-BシートのAシートの面の後記特定層の位置と、B’シートのホットメルト接着剤を塗布した面とを長手を揃えて重ね、1kgの重りを載せて3秒間押し付けた。
こうして得られた試験体を、5℃の環境下で24時間保管した後、恒温槽付引張試験機(テスター産業(株)製)を用いて、試験体の各段ボールシートの端部をチャックで掴み、5℃のまま100mm/minの速度でT字剥離させた際のAシートのホットメルト接着部の材料破壊率を測定し、以下の基準で判定を行った。
○:材料破壊率が80%以上。
△:材料破壊率が50%以上。
×:材料破壊率が50%未満。
【0065】
[印刷面の耐摩擦性評価]
JIS P 8136に従って、学振型摩擦試験機(日本T.M.C.(株)製:紙材の耐摩耗強さ試験機)を使用し、摺動台に試験体を、摩擦部に試験体と同種の未加工紙材を取り付け、印刷面(後記特定層の位置を除く)に接するように置き、500gfの荷重をかけて500往復摺動した後、印刷面の色の剥がれを、下記の基準にしたがって、目視で判定した。
○…印刷面の色剥がれがない、もしくは軽微である。
×…印刷面の色剥がれが顕著である。
【0066】
(実施例1~16)
[後加工補助剤の製造]
表1に示す主剤、添加剤及び溶剤を、表1に示す量を混合して後加工補助剤を製造した。
【0067】
[試験体の製造]
図3に示すフレキソ印刷装置の代用として、前記卓上自動テストコーターを使用して、下記の方法で、試験体を製造した。
まず、後加工補助剤供給部23として、インクジェットヘッド(600dpi)を用い、表1に示す水性樹脂を有する前記後加工補助剤を、フレキソ版24のロールの所定の位置にインクジェット法で0.1g/m
2(固形分)吐出した。
【0068】
また、チャンバー21に表1に記載のOPニスを入れて、これをアニロックスロール22に転写した。
次に、後加工補助剤をフレキソ版24へ吐出してから3秒後に、アニロックスロール22に転写されたOPニスを前記フレキソ版24に転写し、続いて、表面に美粧意匠を施した紙材を圧胴ロールに取り付けて、その印刷層側に転写した。これにより、表面に美粧意匠を施した紙材の印刷層側の所定の位置に後加工補助剤及びOPニスを塗工した。
塗工後、熱風乾燥機に105℃、5秒間で乾燥し、その後、温度23℃、湿度50%の環境下で24時間保管して試験体を得た。
なお、前記の後加工補助剤が配された層を「特定層」と称する。
得られた試験体を用いて前記の評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、表1において、後加工補助剤の固形分着量は、特定層に塗工された後加工補助剤の固形分量をいい、OPニスの固形分着量は、特定層以外の部分に塗工されたOPニスの固形分量をいう。
なお、特定層におけるOPニスの固形分着量は、白板紙では0.3g/m2、白ライナ及び一般ライナでは0.7g/m2であった(プレコートの有無にかかわらず。)。
【0069】
(実施例17~19)
前記卓上自動テストコーターの代わりに
図4に示すフレキソ印刷装置((株)トライテック製)を用い、表1に示す紙材に対して、表1に示す後加工補助剤及びOPニスの量を使用した以外は、実施例1と同様にして試験体を製造した。得られた試験体を用いて前記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
(比較例1、11)
後加工補助剤及びOPニスの塗工を行わなかったときの白板紙及び段ボールシートの場合を比較例1、11とした。
【0071】
(比較例2~4、12)
後加工補助剤を用いず、表2に記載のOPニスを用いて塗工した以外は、実施例1、17と同様にして、試験体を得た。その結果を表2に示す。
【0072】
(比較例5~8)
紙材として表2に記載のものを、後加工補助剤の代わりに精製水を、また表2に記載のOPニスを用いて塗工した以外は、実施例1と同様にして、試験体を得た。その結果を表2に示す。
【0073】
(比較例9、10)
比較例9、10は、後加工補助剤のインクジェット吐出ができなかった。このため、評価を行うことができなかった。
【0074】
【0075】