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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057063
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】多電極カテーテルの組織近接性の測定
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022162194
(22)【出願日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】17/496,976
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
(72)【発明者】
【氏名】アロン・ボウメンディル
(72)【発明者】
【氏名】ウリ・アブニ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK63
(57)【要約】
【課題】機能電極が組織と接触しているかどうかを判定することができるシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】システムは、カテーテル及びプロセッサを含む。カテーテルは、患者の器官の空洞内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結された遠位端アセンブリを含み、遠位端アセンブリは、(i)空洞の壁組織と接触して配置されるように構成された1つ又は2つ以上の機能電極と、(ii)壁組織と接触せずに空洞内に配置されるように構成された参照電極と、を含む。プロセッサは、(i)機能電極のうちの1つ又は2つ以上と参照電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを推定し、インピーダンスに基づいて、1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、機能電極が壁組織と物理的に接触しているかどうかを判定するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の器官の空洞内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結された遠位端アセンブリを含むカテーテルであって、前記遠位端アセンブリが、(i)前記空洞の壁組織と接触して配置されるように構成された1つ又は2つ以上の機能電極と、(ii)前記壁組織と接触せずに前記空洞内に配置されるように構成された参照電極と、を含む、カテーテルと、
プロセッサであって、
前記機能電極のうちの1つ又は2つ以上と前記参照電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを推定し、
前記インピーダンスに基づいて、前記1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、前記機能電極が前記壁組織と物理的に接触しているかどうかを判定する
ように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、測定されたインピーダンスが、予め指定されたインピーダンス閾値よりも低いと判定することによって、前記機能電極が前記壁組織と物理的に接触していると判定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記参照電極が前記空洞内の血液と接触している間に、前記予め指定されたインピーダンスが測定される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記インピーダンスに基づいて、前記1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、前記機能電極と前記壁組織との間の距離を推定するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、インピーダンスと電極組織距離との間で変換する、較正された近接性データを使用して、前記距離を推定するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記カテーテルが、複数のスプラインを含む拡張可能なフレームを有するバスケットカテーテルであり、前記機能電極が、前記スプラインに連結されており、前記参照電極が、前記拡張可能なフレームの内部に位置している、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサの制御下で、(i)前記機能電極と前記参照電極との間のインピーダンスを測定するための第1の構成と、(ii)前記機能電極を使用して医療処置を行うための第2の構成との間で切り替えるように構成されているリレーアセンブリを備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療用プローブに関し、詳細には、多電極カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓組織とのカテーテルの電極の接触を検証するための様々な技法が、特許文献に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2007/0255162号は、複数の電極を有するシャフトを有するカテーテルを提供し、カテーテルを組織治療部位に位置決めし、複数の電極のうちの少なくとも2つの間に電流を印加し、複数の電極のうちの少なくとも2つの間のインピーダンス電圧を測定し、印加された電流によって生じた、測定されたインピーダンス電圧を処理して、接触評価を提供することにより、組織接触評価を提供するための方法及びシステムを記載している。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2020/0038101号は、シャフト、及びシャフトの遠位端にあるエンドエフェクタを含む装置を記載している。エンドエフェクタは、遠位端と近位端とを有し、遠位端と近位端との間に長手方向中間点を有する。エンドエフェクタは、心臓血管系内の解剖学的経路に適合するようにサイズ決めされている。エンドエフェクタは、少なくとも1つのセンサ電極と、参照電極と、を含む。少なくとも1つのセンサ電極は、心臓血管組織に接触し、それによって電位を取得するように構成されている。参照電極は、参照電極と接触している流体から電位を取得するように構成されている。参照電極は、エンドエフェクタの長手方向中間点に対して近位に位置している。エンドエフェクタは、参照電極が組織と接触することを防止するように構成されている。
【0004】
バスケットカテーテルの内部に配設された電極の電気生理学的使用が以前に報告されている。例えば、米国特許第10,045,707号は、バスケット形状のアセンブリを遠位端に有するカテーテルを用いて行われる心臓カテーテル法を記載している。複数のスプライン電極が、アセンブリのスプライン上に配設されている。遠距離場電極が、アセンブリの内部に配設されている。心内電位図及び遠距離場電位図は、スプライン電極及び遠距離場電極のうちの少なくとも一方によってそれぞれ得られる。遠距離場成分は、遠距離場電位図を使用して心内電位図から除去される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、カテーテルとプロセッサとを含むシステムを提供する。カテーテルは、患者の器官の空洞内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結された遠位端アセンブリを含み、遠位端アセンブリは、(i)空洞の壁組織と接触して配置されるように構成された1つ又は2つ以上の機能電極と、(ii)壁組織と接触せずに空洞内に配置されるように構成された参照電極と、を含む。プロセッサは、(i)機能電極のうちの1つ又は2つ以上と参照電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを推定し、インピーダンスに基づいて、1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、機能電極が壁組織と物理的に接触しているかどうかを判定するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、測定されたインピーダンスが、予め指定されたインピーダンス閾値よりも低いと判定することによって、機能電極が壁組織と物理的に接触していると判定するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、参照電極が空洞内の血液と接触している間に、予め指定されたインピーダンスが測定される。
【0008】
一実施形態では、プロセッサが、インピーダンスに基づいて、1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、機能電極と壁組織との間の距離を推定するように更に構成されている。
【0009】
別の実施形態では、プロセッサが、インピーダンスと電極組織距離との間で変換する、較正された近接性データを使用して、距離を推定するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、カテーテルが、複数のスプラインを含む拡張可能なフレームを有するバスケットカテーテルであり、機能電極が、スプラインに連結されており、参照電極が、拡張可能なフレームの内部に位置している。
【0011】
いくつかの実施形態では、システムは、プロセッサの制御下で、(i)機能電極と参照電極との間のインピーダンスを測定するための第1の構成と、(ii)機能電極を使用して医療処置を行うための第2の構成との間で切り替えるように構成されているリレーアセンブリを更に含む。
【0012】
追加的に、本発明の実施形態によれば、シャフトの遠位端に連結された遠位端アセンブリを含むカテーテルを患者の器官の空洞内に挿入することであって、遠位端アセンブリが、(i)空洞の壁組織と接触して配置されるように構成された1つ又は2つ以上の機能電極と、(ii)壁組織と接触せずに空洞内に配置されるように構成された参照電極と、を含む、挿入することを含む方法が提供される。1つ又は2つ以上のインピーダンスが、機能電極のうちの1つ又は2つ以上と参照電極との間で推定される。インピーダンスに基づいて、1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、機能電極が壁組織と物理的に接触しているかどうかの判定が行われる。
【0013】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による、バスケットカテーテルを含む、カテーテルベースの電気生理学的(electrophysiological、EP)マッピング、位置追跡及びアブレーションシステムの概略絵図である。
図2】本発明の一実施形態による、空洞壁組織と物理的に接触している図1のバスケットカテーテルの概略図である。
図3A】それぞれ、本発明の一実施形態による、機能電極が、血液プール内にあり、壁組織と接触している間の、内部電極に電気的に連結された機能電極の概略電気図である。
図3B】それぞれ、本発明の一実施形態による、機能電極が、血液プール内にあり、壁組織と接触している間の、内部電極に電気的に連結された機能電極の概略電気図である。
図4】本発明の一実施形態による、図2の内部電極を使用して壁組織との機能的な電気接触を判定するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
多電極心臓カテーテルは、典型的には、複数の電極が配設される遠位端アセンブリを備える。例えば、バスケットカテーテルは、典型的には、患者の器官の空洞内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結された、遠位端アセンブリの一種としてのスプラインの拡張可能なフレームを含む。別の例として、マルチアーム遠位端アセンブリを伴うカテーテルは、電極を搬送する、開放する複数のアームを有する。代替的には、多電極カテーテルは、ラッソーの弓形形状など、予め形成された形状を捕捉するように構成されている遠位端から作製され得る。
【0016】
電気生理学的(EP)診断及び/又はアブレーション処置の転帰を最良のものにするために、医師は、スパイン/アーム/予め形成された遠位端上に配設された複数の電極(これらの電極は、以下「機能電極」と呼ばれる)の各々が、診断及び/又はアブレーションされる空洞壁組織と物理的に接触していることを判定する必要がある場合がある。例えば、複数の機能電極を有するバスケットカテーテルが、肺室(pulmonary ventricle、PV)の心門の不整脈を測定するため、及び/又はこれをアブレーションするために使用されるときに、典型的には、カテーテルの横方向外周の全体に分散した機能電極のサブセットのすべては、それらがPV組織と完全に接触するように位置決めされるべきである。
【0017】
しかしながら、これらの機能電極のいくつかが、組織と接触するのではなく血液内に浸漬されることは珍しいことではない。そのような電極下の組織領域は正しく特徴付けられないか、又はアブレーションの場合に、これらの電極の印加された電力は、凝固物形成などの望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0018】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、機能電極が組織と接触しているかどうかを判定することができるシステム及び方法を提供する。実施形態は、(i)少なくとも1つの機能電極と、(ii)組織と接触しないように、アセンブリ上又はシャフトの遠位端上に配設された参照電極と、を含む遠位端アセンブリを提供する。この参照電極は、以下、「内部電極」又は「中心電極」とも呼ばれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、バスケットカテーテルの遠位端アセンブリは、1つ又は2つ以上の機能電極が配設された拡張可能なフレームと、容積がカテーテルのフレームによって画定されるフレームのバックボーン(例えば、収縮ワイヤ)に配設された参照電極と、を含む。このバックボーンに配設された電極は、以下、「内部電極」又は「中心電極」と呼ばれる。
【0020】
各機能電極と参照電極との間のインピーダンス測定値を使用して、EPマッピング/アブレーションシステムのプロセッサは、各機能電極について、それが壁組織と接触しているかどうかを判定する。
【0021】
いくつかの実施形態では、システムのプロセッサは、心腔の心臓壁組織と接触することを意図した機能電極と内部電極との間で心臓内で測定されたインピーダンスを比較する。機能電極が組織接触するとき、測定されるインピーダンスは、血液中の機能電極で測定されたインピーダンスよりも、少なくとも予め指定された最小値だけ小さい。例えば、既に組織と完全に接触している電極の数に応じて、インピーダンス差の異なる最小値が予め指定され得る。予め指定された最小値は、例えば、ルックアップテーブル内に記憶され得る。
【0022】
上述の予め指定された最小インピーダンス差分値は、典型的には、数十kHzのRF周波数で判定され、そこでの心臓組織インピーダンスは、典型的には、血液のものと同様であるか、又はそれよりも低い(両方とも、100Ω以下の範囲の範囲である)。RF周波数の関数としての組織対血液インピーダンスに関する更なる情報は、例えば、「Medical Instrumentation:Application and Design」,Webster(ed.)3rd Ed.,John Wiley & Sons,Inc.,New-York,1998において入手可能である。
【0023】
開示される測定形状は、血液及び組織における比較可能な経路長を伴うため、測定されるインピーダンスは、血液インピーダンスと並列にある十分な組織インピーダンスに起因して主に変化する。開示された技法のこの特性は、血液接触と組織接触との間の測定値に基づいて、プロセッサによって行われる区別の高い確実性を与える。
【0024】
機能電極が壁組織に近づくにつれて、測定されるインピーダンスは、組織と堅固に接触している電極のものに近づく。血液と組織接触との間のインピーダンスが経た十分な変化、及び測定の十分な精度により、いくつかの実施形態では、そのような機能電極の壁組織への近接推定を可能にする。そのような測定は、組織インピーダンスの総インピーダンスへの相対的な寄与により、機能電極と壁組織との間の血液中の距離の連続関数である変化(例えば、落下)を与える。
【0025】
必要なすべての機能電極について物理的接触が達成されない場合、医師は、開示された技法を使用して、バスケットカテーテルを操作して、バスケットカテーテルの横方向外周全体にわたって機能電極の組織とのより完全な接触を確立し、接触の十分性及び/又はその存在を再度確認し得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、器官内のバスケットカテーテルの位置を測定するために、開示のシステムは、機能電極と表面電極との間のインピーダンスを測定する位置追跡サブシステムを含む。以下に更に記載される方法は、Advanced Catheter Location(ACL)と呼ばれることもある。リレーアセンブリを使用して、システムは、電極位置と、その配置における組織との機能電極接触の程度とを互換的に測定するために、機能電極と表面電極との間、並びにバスケットカテーテルの機能電極と内部電極との間の電気接続を切り替えることができる。
【0027】
更に、リレーアセンブリを使用して、システムは、機能電極とバックパッチ電極との間で無線周波数(RF)信号を駆動することによってユニポーラーアブレーションを行うために、機能電極と(接触を評価するための)参照電極又は(位置を測定するための)表面電極との間の電気接続をバックパッチ電極に切り替えることができる。
【0028】
より一般的には、リレーアセンブリを使用して、システムは、プロセッサの制御下で、(i)機能電極と参照電極との間のインピーダンスを測定するための第1の構成と、(ii)アブレーション信号を機能電極に駆動することによってアブレーションを行うための第2の構成との間で、電気接続を切り替えることができる。
【0029】
典型的には、プロセッサは、以下に概説されるプロセッサ関連の工程及び機能の各々をプロセッサが実行することを可能にする、特定のアルゴリズムを含むソフトウェアでプログラムされる。
【0030】
組織と接触している機能電極及び組織と接触していない機能電極をリアルタイムで判定することによって、開示の技法は、多電極バスケットカテーテルを使用するカテーテル法処置の安全性及び有効性を増大させ得る。
【0031】
上記の技術は、バルーン、マルチアーム、及びラッソーカテーテルなどの様々な種類の多電極カテーテルについて、それらが、血液プールに浸漬され、組織に接触することができない少なくとも1つの参照電極、例えば、多電極カテーテルの拡張可能なフレームのすぐ近位のシャフトの遠位端に配設された電極を含む場合はいつでも有効である。
【0032】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、バスケットカテーテル40を備える、カテーテルベースの電気生理学的(EP)マッピング、位置追跡及びアブレーションシステム20の概略絵図である。具体的には、バスケットカテーテル40は、例えば、左心房において不整脈原生心臓組織を識別し、アブレーションするなどのEP診断及び/又は治療処置のために使用される。システム20は、シャフト22の遠位端に連結された、挿入図25内に見られるバスケットカテーテル40の位置を判定するために使用される。システム20は、例えば、診断及び/又はアブレーションを行う前に、バスケットカテーテル40の機能電極50の各々が組織と接触しているか、又は血液プール55内に浸漬しているかを判定するために更に使用される。
【0033】
医師30は、カテーテルの近位端の近くのマニピュレータ32を使用して、及び/又はシース23からの偏向を使用して、シャフト22を操作することによって、バスケットカテーテル40を患者28の心臓26内の標的配置に誘導する。バスケットカテーテル40は、シース23を通して折り畳まれた構成で挿入され、バスケットカテーテル40は、バスケットをシース23から後退させた後にのみ、その意図する機能形状を回復する。バスケットカテーテル40を折り畳まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的配置への途中での血管外傷を最小限に抑える働きをする。
【0034】
バスケットカテーテル40は、バスケットスプラインの外側表面上に配設された複数の機能電極50を含む。内部、すなわち中心電極51は、バスケットの拡張可能なフレーム内の収縮ワイヤ(図2に見られる)上に配設される。内部電極51は、機能電極50の各々が組織と接触しているか、又は血液プール55に浸漬しているかどうかを判定するために使用される。
【0035】
機能電極50及び内部電極51は、シャフト22を通るワイヤによってコンソール24内のインターフェース回路44に接続される。機能電極50及び内部電極51を含むバスケットカテーテル40の詳細図を図2に示す。
【0036】
加えて、前述のACL方法を用いて、機能電極50を使用して、ケーブル39を通るワイヤによって患者28の胸部に取り付けられた例示されたシステムに見られる表面電極49に対するインピーダンスを検知することによって、心臓26内のバスケットカテーテル40の位置を測定することができる。電極50の位置を追跡するためのACL方法は、様々な医療用途、例えば、Biosense-Webster Inc.(Irvine,California)製のCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第7,756,576号、同第7,869,865号、同第7,848,787号、及び同第8,456,182号に詳述されており、これらの開示はすべて参照により本明細書に援用される。コンソール24は、心臓26内のバスケットカテーテル40の追跡位置を示すディスプレイ27を駆動する。
【0037】
コンソール24は、プロセッサ41、典型的には汎用コンピュータ、並びにRF信号及び位置信号などの信号をそれぞれ送信及び受信するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路44を含む。インターフェース回路44はまた、表面電極49から、及び/又はカテーテル上に配設された任意の電極から、心電図を受信してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、プロセッサ41は、システム20内のリレーアセンブリ60を制御して、(i)機能電極と1つ又は2つ以上の体表面電極との間のインピーダンスを測定するための機能電極と表面電極49との間の接続部(62)を有する第1の構成と、(ii)機能電極と内部電極との間のインピーダンスを測定するためのバスケットカテーテルの機能電極と内部電極との間の接続部(64)を有する第2の構成であって、接続部62及び64が、電極位置と、その配置における組織との機能的電極接触の程度とを互換的に測定するために使用される、第2の構成と、(iii)機能電極とバックパッチ電極(図示せず)との間でRF信号を駆動することによってアブレーションを行うための機能電極とバックパッチ電極との間の接続部(66)と、のうちの2つ又は3以上の間の電気接続を切り替える。
【0039】
プロセッサ41は、典型的には、本明細書に記載の機能を実施するようにソフトウェアでプログラムされている。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードされてもよい、あるいは代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの非一時的実体的媒体に提供及び/又は記憶されてもよい。特に、プロセッサ41は、図4に含まれている本明細書に開示される専用のアルゴリズムを実行し、これは、以下で更に記載のように、プロセッサ41が本開示の工程を行うことを可能にする。
【0040】
図1は、簡略化及び明確化のために、開示された技術に関する要素のみを示す。システム20は、典型的には、灌注及び温度モジュールなどの開示された技術に直接関係しない追加のモジュール及び要素を備え、したがって、図1及び対応する説明から意図的に省略されている。
【0041】
バスケットカテーテルの組織近接性の測定
図2は、本発明の一実施形態による、空洞壁組織と物理的に接触している図1のバスケットカテーテル40の斜視概略図である。
【0042】
カテーテル40の示された部分は、シャフト22の遠位端と、遠位端に装着されたバスケット形状の電極アセンブリ43と、を含む。シャフト22は、単一の、軸性、又は中央の管腔(図示せず)を有する、細長い管状の構造を含む。シャフト22の外壁の厚さは重要ではないが、中央の管腔がプーラワイヤ、リードワイヤ、センサケーブル、及び他のワイヤ、ケーブル又はチューブを収容できるように、十分に薄いものであることが好ましい。本発明と関連して使用する上で好適なカテーテル本体の構造物の例は、米国特許第6,064,905号に記載及び図示されており、同特許の全開示内容は本明細書において参照により援用されている。
【0043】
図2に示すように、バスケット形状の電極アセンブリ43は、収縮ワイヤ47を含むバックボーン44の周囲に均等に間隔を空けて装着された6つのスプライン45を含み、このワイヤは、電極アセンブリ43の遠位先端部に接続され、場合に応じて、引張力又は押圧力が収縮ワイヤ47に長手方向に加えられたときに、電極アセンブリ43を収縮させ、引き込み、及び膨張させる。見られるように、収縮ワイヤ47を含むバックボーン44は、電極アセンブリ43の長手方向の対称軸62を形成する。スプライン45はすべて、それらの遠位端で収縮ワイヤ47に、及びそれらの近位端でシャフト22に直接的又は間接的に取り付けられる。スプライン45は、中心電極が位置する内部容積48を画定し、この中心電極は、スプラインによって、近くの組織から妨げられている。収縮ワイヤ47を長手方向に移動して電極アセンブリ43を膨張及び収縮させるとき、膨張位置でスプライン45は、外側に弓状に撓み、収縮位置でスプライン45は、概ね真っ直ぐである。当業者によって理解されるように、スプライン45の数は、必要に応じて、特定の用途に応じて変えることができ、これにより、電極アセンブリ43は、好ましくは、少なくとも3個のスプライン、及び8個以上ものスプラインを有する。本明細書において使用される場合、電極アセンブリ43を記載する際の「バスケット形状」という用語は、図に描かれた構成に限定されず、その近位端と遠位端とで直接的又は間接的に接続された複数の膨張可能なアームを含む、球形又は卵形のデザインのような他のデザインも含むことができる。
【0044】
スプライン45上の機能電極50の各々は、適切なマッピング又は監視サブシステム及び/又はアブレーションエネルギー源と電極リードワイヤ(図示せず)で、システム20に電気的に接続される。収縮ワイヤ47には、例えば、機能を以下に更に記載する、例えば、円筒形電極である中心電極51が設けられている。
【0045】
スプライン45の各々は、1つ又は2つ以上のリング機能電極50が装着される非導電性被覆付き可撓性ワイヤを含む。血液に深く浸漬された機能電極50は、50aで示され、一方、(例えば、心臓26の心内膜表面53を有する)壁組織53と物理的に接触している機能電極50は、50bで示されている。壁組織53に近接する様々なレベルにある電極は、50cで示されている。「十分な」という用語は、そのような電極(50c)のインピーダンス254が電極50aのインピーダンス252と電極50bのインピーダンス256との間に測定され得ることを示すグラフ250によって理解することができる。グラフ250を較正した後、プロセッサは、インピーダンス254から、例えばミリメートルで、機能電極50の組織への近接性を推定することができる。グラフ250は、較正された近接性ルックアップテーブルとしてシステム20のメモリに保存することができる。より一般的には、プロセッサは、インピーダンスと電極組織距離との間で変換する、較正された近接データを使用する。
【0046】
組織との近接性及び/又は接触の推定
図3A及び図3Bは、それぞれ、本発明の一実施形態による、機能電極50が、血液プール55内にあり、壁組織53と接触している間の、内部電極51に電気的に連結された機能電極の概略電気図である。図3Aの図は、血液プール55に深く浸漬された機能電極50aの場合を記載している。見られるように、機能電極50aと中心電極51との間のインピーダンス(例えば、インピーダンス252)は、血液及び/又は組織及び/又は他の導電性内腔内チャネルから生じる可能性のあるシャント抵抗Rと並列な血液のものRと等しい。簡単な表記において、これは、
【0047】
【数1】
として表される。
【0048】
図3Bの図は、図2の壁組織53と完全に接触している機能電極50bの場合を記載している。見られるように、アブレーション電極50bと中心電極51との間のインピーダンスは、シャント抵抗Rと並列にある、組織と並列にある血液のもの
【0049】
【数2】
である。簡単な表記において、これは、
【0050】
【数3】
として表される。以下、「インピーダンス閾値」と呼ばれる量である、例えば少なくとも数十オームだけ、
【0051】
【数4】
であるため、開示の方法は、2つの場合を差別化することができる。更に、それらの間の値、Z_254、Z_256<Z_254<Z_252を測定することができ、図2の較正されたグラフ250を使用することで、プロセッサは、電極50の組織への近接性を、Z_254から測定し得る。
【0052】
図3A及び図3Bに示される電気図は、概念を提示することを目的として、非常に単純化されている。実際の値は、経験的に、又はより精巧な電気モデルによって判定され得る。図3A及び図3Bは、組織から離れている中心電極51などの任意の電極に、例えば、各々、機能電極50のものと類似する機能の複数の組織感知/アブレーション電極が装着されている、バルーン、マルチアーム、又はラッソーカテーテルのすぐ近位のシャフトに配設された近位電極に、完全に適用可能である。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態による、機能電極50の壁組織53との接触を判定するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。本実施形態によるアルゴリズムは、バスケット位置決め工程80で、医師30が、肺静脈の心門などの心臓26の心腔内の標的配置に、部分的に拡張したバスケットカテーテル40を位置決めすることから始まるプロセスを実施する。次に、医師30はバスケットを拡張して、機能電極50の少なくとも一部分(例えば、サブセット)を、バスケット拡張工程82において、例えば、アセンブリ43の横方向外周全体にわたって組織と完全に接触させる。次に、インピーダンス測定工程84において、システム20は、機能電極50の各々と中心(すなわち、内部)電極51との間のインピーダンスを測定する。
【0054】
物理的接触判定工程86で、測定されたインピーダンスに基づいて、プロセッサ41は、各機能電極50について、上記で定義されたように、又は少なくとも十分な近接性で電極が組織と接触しているかどうかを判定する。接触チェック工程88において、すべての機能電極50が組織と接触しているとプロセッサが判定した場合、診断及び/又はアブレーション工程90において、プロセスは診断及び/又はアブレーションを継続して実施する。一方、1つ又は2つ以上の電極が血液プール(例えば、図1の血液プール55)に浸漬されており、したがって、組織から離れすぎているとプロセッサ41によって判定された場合、医師30は次に、接触の改善を試みてバスケットカテーテル40を再位置決めし、プロセスはループして工程84に戻って、接触の十分性を再評価する。
【0055】
図4に示されている例示的なフローチャートは、純粋に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。本実施形態はまた、心臓内心電図を取得するなど、アルゴリズムの追加工程も含み、これらは、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書の開示から意図的に省略されている。加えて、提示を明確にするために、温度測定及び灌注の適用などの他の工程も省略されている。
【0056】
本明細書に記述される実施形態は、主として心臓での用途に関するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、例えば腎臓神経除去などの他の用途で用いることもできる。
【0057】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
患者の器官の空洞内に挿入するためにシャフトの遠位端に連結された遠位端アセンブリを含むカテーテルであって、前記遠位端アセンブリが、(i)前記空洞の壁組織と接触して配置されるように構成された1つ又は2つ以上の機能電極と、(ii)前記壁組織と接触せずに前記空洞内に配置されるように構成された参照電極と、を含む、カテーテルと、
プロセッサであって、
前記機能電極のうちの1つ又は2つ以上と前記参照電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを推定し、
前記インピーダンスに基づいて、前記1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、前記機能電極が前記壁組織と物理的に接触しているかどうかを判定する
ように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(2) 前記プロセッサは、測定されたインピーダンスが、予め指定されたインピーダンス閾値よりも低いと判定することによって、前記機能電極が前記壁組織と物理的に接触していると判定するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記参照電極が前記空洞内の血液と接触している間に、前記予め指定されたインピーダンスが測定される、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサが、前記インピーダンスに基づいて、前記1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、前記機能電極と前記壁組織との間の距離を推定するように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記プロセッサが、インピーダンスと電極組織距離との間で変換する、較正された近接性データを使用して、前記距離を推定するように構成されている、実施態様4に記載のシステム。
【0059】
(6) 前記カテーテルが、複数のスプラインを含む拡張可能なフレームを有するバスケットカテーテルであり、前記機能電極が、前記スプラインに連結されており、前記参照電極が、前記拡張可能なフレームの内部に位置している、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサの制御下で、(i)前記機能電極と前記参照電極との間のインピーダンスを測定するための第1の構成と、(ii)前記機能電極を使用して医療処置を行うための第2の構成との間で切り替えるように構成されているリレーアセンブリを備える、実施態様1に記載のシステム。
(8) 方法であって、
シャフトの遠位端に連結された遠位端アセンブリを含むカテーテルを患者の器官の空洞内に挿入することであって、前記遠位端アセンブリが、(i)前記空洞の壁組織と接触して配置されるように構成された1つ又は2つ以上の機能電極と、(ii)前記壁組織と接触せずに前記空洞内に配置されるように構成された参照電極と、を含む、挿入することと、
前記機能電極のうちの1つ又は2つ以上と前記参照電極との間の1つ又は2つ以上のインピーダンスを推定することと、
前記インピーダンスに基づいて、前記1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、前記機能電極が前記壁組織と物理的に接触しているかどうかを判定することと、
を含む、方法。
(9) 前記機能電極が前記壁組織と物理的に接触していると判定することは、測定されたインピーダンスが、予め指定されたインピーダンス閾値よりも低いと判定することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記参照電極が前記空洞内の血液と接触している間に、前記予め指定されたインピーダンスが測定される、実施態様9に記載の方法。
【0060】
(11) 前記インピーダンスに基づいて、前記1つ又は2つ以上の機能電極の中から少なくともある機能電極について、前記機能電極と前記壁組織との間の距離を推定することを含む、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記距離を推定することが、インピーダンスと電極組織距離との間で変換する、較正された近接性データを使用して行われる、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記カテーテルが、複数のスプラインを含む拡張可能なフレームを有するバスケットカテーテルであり、前記機能電極が、前記スプラインに連結されており、前記参照電極が、前記拡張可能なフレームの内部に位置している、実施態様8に記載の方法。
(14) (i)前記機能電極と前記参照電極との間のインピーダンスを測定するための第1の構成と、(ii)前記機能電極を使用して医療処置を行うための第2の構成との間で切り替えることを含む、実施態様8に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
【外国語明細書】