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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057064
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ロドプシンの新規変異体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/31 20060101AFI20230413BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20230413BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230413BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230413BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230413BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C07K14/195
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162218
(22)【出願日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2021165940
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、光駆動ATP再生系によるVmax細胞の創製、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】原 清敬
(72)【発明者】
【氏名】原(弘埜) 陽子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 創平
(72)【発明者】
【氏名】中野 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 真由
(72)【発明者】
【氏名】松田 史生
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 吉博
(72)【発明者】
【氏名】清家 泰介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健介
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065BC48
4B065CA60
4H045AA10
4H045CA11
4H045DA50
4H045FA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロドプシンの変異体およびそのタンパク質部分、これらをコードする核酸、これらを含む細胞、並びに当該細胞の培養方法を提供する。
【解決手段】高いプロトン輸送活性を発揮することができる、新しいアミノ酸配列を有する種々の変異ロドプシンを提供する。変異ロドプシンを発現する細胞を光照射条件下において培養する、前記細胞の培養方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]配列番号10または11に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分;
[B]配列番号5~7、および13のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分;または
[C]配列番号4に記載のアミノ酸配列(ここで31番目のアミノ酸はQであり、128番目のアミノ酸はGである)と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
【請求項2】
(1)配列番号12に記載のアミノ酸配列を有し、
配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる;
(2)配列番号4に記載のアミノ酸配列を有し、
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる;または
(3)配列番号8に記載のアミノ酸配列を有し、
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる;
ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
【請求項3】
配列番号4、5~7、10、11および13のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する、請求項2に記載のロドプシンまたはそのタンパク質部分。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質部分をコードする核酸。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のロドプシンまたはそのタンパク質部分を含む、細胞。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質部分をコードする核酸を含む、細胞。
【請求項7】
請求項5または6に記載の細胞を培養する方法であって、
当該細胞をその培養に適した培養条件下で培養することを含む、方法。
【請求項8】
培養が、光照射条件下において培養することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アミノ酸配列または当該アミノ酸配列をコードする核酸配列を同定または選択する方法であって、
(a1)配列番号4に記載のアミノ酸配列(ここで31番目のアミノ酸はQであり、128番目のアミノ酸はGである)と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{配列番号4に記載のアミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有するアミノ酸配列から、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、
(b1)配列番号5~7、および13のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{配列番号5~7、および13のいずれかに記載のアミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有するアミノ酸配列}を有するアミノ酸配列から、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、または
(c1)配列番号10または11に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{配列番号10または11に記載のアミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有するアミノ酸配列から、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、方法。
【請求項10】
アミノ酸配列または当該アミノ酸配列をコードする核酸配列を同定または選択する方法であって、
(a2)配列番号4に記載のアミノ酸配列から、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、
(b2)配列番号8に記載のアミノ酸配列において、上記(1)~(67)からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を有するオプシンから、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、または、
(c2)配列番号12に記載のアミノ酸配列から、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロドプシンの変異体およびそのタンパク質部分、これらをコードする核酸、これらを含む細胞、並びに当該細胞の培養方法に関する。
【0002】
微生物や細胞、生物を利用した物質生産は、化学物質の生産プロセスにおいて注目を集める1分野である。特許文献1では、ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシン(dR)をミトコンドリア内膜に発現した酵母が開示されている。
【0003】
特許文献1では、得られた酵母は光依存的にプロトン輸送能を示し、酵母のエネルギー産生を促進し、グルタチオン、トレハロース、およびコハク酸の産生能が向上することが示されている。特許文献2では、デルタロドプシン(dR)およびマリン・ピコプランクトン由来のプロテオロドプシン(pR)を発現した大腸菌が開示されている。
【0004】
特許文献2では、得られた大腸菌は光依存的にプロトン輸送能を示し、大腸菌のエネルギー産生を促進し、イソプレノールの産生能が向上することが示されている。特許文献3では、外来性のオプシンを導入された藍藻類などの光独立栄養生物に対してエネルギーを供給し、倍加時間、CO2固定速度、および/または炭素ベース産物形成の改善の効果をもたらすことが開示されている。非特許文献1では、CHO細胞などの哺乳動物細胞のミトコンドリアにおけるオプシンの発現が、細胞にエネルギーを供給できることが示されている。例えば、これによりロテノンによる呼吸鎖複合体Iの阻害によりもたらされる細胞死を抑制し得ることが示されている。細胞へのエネルギー供給は、光駆動性の生物生産に適用されると期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2015/170609A
【特許文献2】WO2020/050113A
【特許文献3】WO2009/062190A
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hara et al., Sci. Rep., 3:1635, 2013
【発明の概要】
【0007】
本発明は、外来性のオプシンおよび当該ロドプシンを発現した細胞を提供する。本発明はまた、当該細胞を培養する方法を提供する。
【0008】
本発明者らは、ロドプシンをコードする遺伝子に改変を加えて、新しいアミノ酸配列を有する種々のロドプシンを得た。本発明はこのような発明に基づくものである。
【0009】
本発明によれば、例えば、以下の発明が提供される。
[1](1)配列番号12に記載のアミノ酸配列を有し、
配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる;
(2)配列番号4に記載のアミノ酸配列を有し、
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる;または
(3)配列番号8に記載のアミノ酸配列を有し、
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる;
ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
{ここで、タンパク質部分とは、オールトランスレチナールと結合していない形態のオプシンであり得、以下同様である。}
[2]配列番号4、5~7、10~13のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する、上記[1]に記載のロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[3]上記[1]または[2]に記載のタンパク質部分をコードする核酸。
[4]上記[1]または[2]に記載のロドプシンまたはそのタンパク質部分を含む、細胞。
[5]上記[1]または[2]に記載のタンパク質部分をコードする核酸を含む、細胞{好ましくは、上記[1]または[2]に記載のロドプシンまたはタンパク質部分をさらに含んでいてもよい}。
[6]上記[4]または[5]に記載の細胞を培養する方法であって、
当該細胞をその培養に適した培養条件下で培養することを含む、方法。
[7]培養が、光照射条件下において培養することを含む、上記[6]に記載の方法。
【0010】
[8]配列番号4に記載のアミノ酸配列を有し、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[9]上記[8]に記載のロドプシンまたはそのタンパク質部分であって、
配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸がQであり、128番目のアミノ酸がIである;
配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸がAであり、128番目のアミノ酸がGである;または
配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸がQであり、128番目のアミノ酸がGである、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[10]配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[11]配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[12]配列番号7に記載のアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[13]配列番号8に記載のアミノ酸配列を有し、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[14]配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[15]配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[16]配列番号12に記載のアミノ酸配列を有し、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[17]配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[18](A)配列番号10または11に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{好ましくは、配列番号10または11に記載のアミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有し、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分;
(B)配列番号5~7、および13のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{好ましくは、配列番号5~7、および13のいずれかに記載のアミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有し、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分;または
(C)配列番号4に記載のアミノ酸配列(ここで31番目のアミノ酸はQであり、128番目のアミノ酸はGである)と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{好ましくは、上記アミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有し、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[19]配列番号8のアミノ酸配列を有し、配列番号8のアミノ酸配列において、下記(1)~(62)からなる群から選択される1以上の変異を有し、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができる、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[20]上記[8]~[19]のいずれかに記載のタンパク質部分をコードする核酸。
[21]上記[8]~[19]のいずれかに記載のロドプシンまたはそのタンパク質部分を含む、細胞。
[22]上記[8]~[19]のいずれかに記載のタンパク質部分をコードする核酸を含む、細胞{好ましくは、上記[8]~[19]のいずれかに記載のロドプシンまたはそのタンパク質部分をさらに含んでいてもよい}。
[23]上記[21]または[22]に記載の細胞を培養する方法であって、
当該細胞をその培養に適した培養条件下で培養することを含む、方法。
[24]培養が、光照射条件下において培養することを含む、上記[23]に記載の方法。
[25]アミノ酸配列または当該アミノ酸配列をコードする核酸配列を同定または選択する方法であって、
(a1)配列番号4に記載のアミノ酸配列(ここで31番目のアミノ酸はQであり、128番目のアミノ酸はGである)と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{好ましくは、上記アミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有するアミノ酸配列を提供することと、当該アミノ酸配列を有するオプシン(またはドロプシン)から、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシン(またはロドプシン)よりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、
(b1)配列番号5~7、および13のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{好ましくは、配列番号5~7、および13のいずれかに記載のアミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有するアミノ酸配列}を有するアミノ酸配列を提供することと、当該アミノ酸配列を有するオプシン(またはドロプシン)から、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシン(またはロドプシン)よりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、または
(c1)配列番号10または11に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列{好ましくは、配列番号10または11に記載のアミノ酸配列から1から数個のアミノ酸変異(特に、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1以上の変異)を有するアミノ酸配列}を有するアミノ酸配列を提供することと、当該アミノ酸配列を有するオプシン(またはドロプシン)から、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するオプシン(またはロドプシン)よりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、方法。
[26]アミノ酸配列または当該アミノ酸配列をコードする核酸配列を同定または選択する方法であって、
(a2)配列番号4に記載のアミノ酸配列を提供することと、当該アミノ酸配列を有するオプシン(またはドロプシン)から、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシン(またはロドプシン)よりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、
(b2)配列番号8に記載のアミノ酸配列において、下記(1)~(67)からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を提供することと、当該アミノ酸配列を有するオプシン(またはドロプシン)から、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシン(またはロドプシン)よりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、または、
(c2)配列番号12に記載のアミノ酸配列を提供することと、当該アミノ酸配列を有するオプシン(またはドロプシン)から、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するオプシン(またはロドプシン)よりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む、方法。
[27]上記[25]または[26]に記載の方法により得られたオプシンまたはオプシンをコードする核酸。
[28]上記[27]に記載のオプシンまたはオプシンをコードする核酸を含む細胞。
[29]上記[28]に記載の細胞を培養する方法であって、
当該細胞をその培養に適した培養条件下で培養することを含む、方法。
[30]培養が、光照射条件下において培養することを含む、上記[29]に記載の方法。
【0011】
[31]配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸が、A以外のアミノ酸であるアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[32]配列番号4に記載のアミノ酸配列の128番目のアミノ酸が、I以外のアミノ酸であるアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[33]配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸が、Qであるアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[34]配列番号4に記載のアミノ酸配列の128番目のアミノ酸が、Gであるアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[35]配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸が、A以外のアミノ酸であり、128番目のアミノ酸が、I以外のアミノ酸であるアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[36]配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸が、Qであり、128番目のアミノ酸が、Gであるアミノ酸配列を有する、ロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[37]上記[31]~[36]のいずれか記載のタンパク質部分をコードする核酸。
[38]上記[31]~[36]のいずれか記載のタンパク質部分を含む、細胞。
[39]上記[31]~[36]のいずれか記載のタンパク質部分をコードする核酸を含む、細胞{好ましくは、上記[31]~[36]のいずれか記載のロドプシンまたはタンパク質部分をさらに含んでいてもよい}。
[40]上記[38]または[39]に記載の細胞を培養する方法であって、
当該細胞をその培養に適した培養条件下で培養することを含む、方法。
[41]培養が、光照射条件下において培養することを含む、上記[40]に記載の方法。
【0012】
[50]レチナール合成系を含む、上記[4]、[5]、[16]、[18]、[38]または[39]に記載の細胞。
[51]上記[50]に記載の細胞を培養する方法であって、
当該細胞をその培養に適した培養条件下で培養することを含む、方法。
[52]培養が、光照射条件下において培養することを含む、上記[51]に記載の方法。
【0013】
[70]上記いずれかのロドプシンを細胞膜に有する原核細胞である、上記いずれかの細胞。
[71]上記いずれかのロドプシンをミトコンドリア内膜に有する真核細胞である、上記いずれかの細胞。
[72]ミトコンドリア移行シグナルをさらに有する上記いずれかのロドプシンまたはそのタンパク質部分。
[73]ミトコンドリア移行シグナルをさらに有する上記いずれかのロドプシンをミトコンドリア内膜に有する真核細胞である、上記いずれかの細胞。
[74]上記[70]~[73]のいずれかに記載の細胞を培養する方法であって、
当該細胞をその培養に適した培養条件下で培養することを含む、方法。
[75]培養が、光照射条件下において培養することを含む、上記[74]に記載の方法。
【0014】
[90]光照射が、2000μmol photons m-2-1以下で行われる、上記いずれかに記載の方法。
[91]光照射が、1000μmol photons m-2-1以下で行われる、上記いずれかに記載の方法。
[92]光照射が、500μmol photons m-2-1以下で行われる、上記いずれかに記載の方法。
[93]光照射が、100μmol photons m-2-1以下で行われる、上記いずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、MG-E59変異体とMG-E104変異体のプロトン輸送活性の天然型デルタロドプシンの活性に対する相対値を示す。
図2図2は、各種OP27変異体を発現させた細胞のOP27発現細胞に対する相対プロトン輸送活性(左パネル)および細胞あたりの相対プロトン輸送活性(右パネル)を示す。
図3図3は、各種OP27変異体を発現させた細胞のOP27発現細胞に対する相対細胞濃度(左パネル)および相対プロトン輸送活性(右パネル)を示す。
図4図4は、各種OP27変異体を発現させた細胞のOP27発現細胞に対する相対グルタチオン産生量(左パネル)および細胞あたりの相対グルタチオン産生含量(右パネル)を示す。
図5図5は、OP27―A170変異体を発現させた細胞のOP27発現細胞に対する相対細胞濃度(左パネル)および相対プロトン輸送活性(右パネル)を示す。
図6図6は、OP27―A170変異体を発現させた細胞のOP27発現細胞に対する相対グルタチオン産生量(左パネル)および細胞あたりの相対グルタチオン産生含量(右パネル)を示す。
【発明の具体的な説明】
【0016】
「ロドプシン」とは、オプシン(Opsin)というタンパク質とレチナール(Retinal)の複合体である。ロドプシンの種類としては、例えばデルタロドプシン(dR)、バクテリオロドプシン(bR)およびbR型ロドプシン(例えば、アーキアロドプシン、クルックスロドプシン)、センサリーロドプシンI、センサリーロドプシンII、プロテオロドプシン(pR)およびpR型ロドプシン、チャンネルロドプシンI、チャンネルロドプシンII、ハロロドプシン、キサントロドプシン、ナトリウムポンプ型ロドプシン、ヘリオロドプシンなどが挙げられる。例えば、デルタロドプシン、バクテリオロドプシン、およびプロテオロドプシンは、原核生物の細胞膜に局在し、明条件(光照射)によりプロトンを原核生物の内部から外部へ汲み出す機能を有する。原核生物においては、細胞膜内外のプロトン濃度勾配は、ATP産生に利用され得る。真核生物においては、ミトコンドリア内膜は酸化的リン酸化経路を有し、膜内から膜外にプロトンを輸送してプロトン濃度勾配を形成する。このプロトン濃度勾配は、ATP産生に利用される。したがって、真核生物に対しては、ミトコンドリア内膜にオプシンを発現させることによって、プロトン濃度勾配を光依存的に形成させ、ATP産生を促進することができる。
【0017】
本明細書では、「オプシン」は、7回膜貫通構造を有する膜タンパク質である。ビタミンA誘導体であるレチナールが結合することにより光受容能を獲得する。オプシンの例としては、例えば、表1に記載のオプシンが挙げられる。しかし、これらがすべて異種生物においてプロトン輸送能を奏するわけではない。オプシンとしては、特に限定されないが、Gloeobacter violaceus、Roseiflexus sp.、Octadecabacter antarcticus、Photobacterium sp. SKA34、Exiguobacterium sibiricum、Uncultured marine bacterium 66A03、Rhodobacterales bacterium、Uncultured bacterium MedeBAC35C06、Uncultured marine bacterium HF1019P19、およびPsychroflexus torquisからなる群から選択される少なくとも1つの種のオプシンが挙げられる。これらのオプシンは、有意なプロトン輸送能を有する。光依存的にプロトンの濃度勾配を形成させることができるオプシンの機能的変種もオプシンに含まれる。
【0018】
本明細書では、「オプシンをコードする遺伝子」とは、制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結したオプシンをコードする遺伝子である。制御配列は、宿主(遺伝子を導入した細胞)においてオプシンの転写を誘導することができる。オプシンをコードする遺伝子は、宿主に対してコドン最適化がなされていてもよい。宿主によってコドン使用が異なるために特に異種のオプシンを導入する場合には、コドン最適化を行うことが好ましい。オプシンをコードする遺伝子は、宿主における複製に適した複製起点を有する、または有しないベクター(例えば、プラスミド)上に組み込まれ得る。ベクターは、栄養要求性マーカーおよび/または薬剤選択マーカーを有していてもよく、栄養要求性マーカーおよび/または薬剤選択マーカーを有する場合には、当該栄養および/または薬剤でベクターが導入された宿主を選択することができる。制御配列は、構成的プロモーターであっても、誘導性プロモーターであってもよい。オプシンは細胞において発現し、膜内でレチナールと結合するとロドプシンと呼ばれる。ロドプシンを発現しているとは、膜内でレチナールと結合した形態のオプシンを有することを意味する。本明細書では、「ロドプシンをコードする遺伝子」が用いられ得るが、オプシンをコードする遺伝子と同義である。
【0019】
本明細書では、生物は、原核生物と真核生物に大別される。また、生物は、単細胞生物と多細胞生物にも大別される。通常は、原核生物は単細胞であり、真核生物には、単細胞生物であるものと多細胞生物であるものとが存在する。原核生物としては、例えば、細菌、古細菌(アーキア)、ラン藻(シアノバクテリア)および放線菌が挙げられる。具体的には、大腸菌(例えば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli))、枯草菌(例えば、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis))、乳酸菌(例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus))、酢酸菌(例えば、アセトバクテラセエ(Acetobacteraceae))、コリネ型細菌(Corynebacterium)、シュードモナス属細菌(Pseudomonas bacteria)、メタン生成菌(例えば、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、メタノサルシナ(Methanosarcina))、ストレプトミセス属(Streptomyces)、アクチノマイセス属(Actinomyces)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)等が挙げられる。真核生物としては、動物、植物、菌類(真菌類)が挙げられる。真菌類としては、例えば、分裂酵母または出芽酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・フラギリス(Saccharomyces fragilis)、サッカロミセス・ルーキシー(Saccharomyces rouxii)などのサッカロミセス属、シゾサッカロミセス・ポンべ(Shizosaccharomyces pombe)などのシゾサッカロミセス属、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)などのキャンディダ属、キサントフィロマイセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous)などのキサントフィロマイセス(Xanthophyllomyces)属、ピキア(Pichia)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、ヤロイワ(Yarrowia)属、ハンゼニュラ(Hansenula)属、エンドマイセス(Endomyces)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属などの酵母が挙げられる。中でも、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、キャンディダ属、キサントフィロマイセス属またはピキア属の酵母が好ましく、サッカロミセス属のサッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)、シゾサッカロミセス属のシゾサッカロミセス・ポンべ(S. pombe)、キャンディダ属のキャンディダ・ユーティリス(C. utilis)がより好ましく、最も好ましくはS. cerevisiaeである。糸状菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus),トリコデルマ(Trichoderma),ヒュミコラ(Humicola),アクレモニウム(Acremonium),フザリウム(Fusarium),ブラケスリア・トリスポラ(Blakeslea trispora)及びペニシリウム(Penicillium)種)、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)由来細胞、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)由来細胞)、カイコ、線虫、植物細胞、藻類(大型藻類、微細藻類)、植物(例えば、シロイヌナズナ、タバコ)、哺乳類培養細胞(たとえばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒト細胞)が挙げられる。細胞は、藻類(大型藻類、微細藻類)であってもよい。細胞または生物は、光合成する細胞または生物(光合成細胞または光合成生物)であってもよいし、光合成しない細胞または生物(非光合成細胞または非光合成生物)であってもよい。オプシンの導入によって、どのような場合でもプロトン濃度勾配形成が促進され、エネルギー産生が促進されるからである。オプシンをコードする遺伝子が導入される生物または細胞を、本明細書では「宿主」と呼ぶことがある。
【0020】
本明細書では、「外来性」は、宿主以外の生物に由来することを意味する。典型的には、制御配列は、外来性であり得る。また、発現させる遺伝子も外来性であり得る。したがって、制御配列に作動可能に連結された遺伝子は、制御配列および当該遺伝子の両方が外来性であり得る。「内因性」は、宿主自体が有するものであることを意味する。
【0021】
本明細書では、「レチナール合成系」とは、イソペンテニル二リン酸(IPP)からオールトランスレチナール(ATR)を合成する多段階経路である。レチナール合成系では、下記[1]~[7]により、IPPからATRが合成される。
[1]IPPは、IPPδ-イソメラーゼにより、ジメチルアリール二リン酸(DMAPP)に変換される。
[2]DMAPPは、FPP合成酵素(ispA)により、ファルネシル二リン酸(FPP)に変換される。
[3]FPPは、ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(crtE)により、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)に変換される。
[4]GGPPは、フィトエン合成酵素(crtB)により、フィトエンに変換される。
[5]フィトエンは、フィトエン脱水素酵素(crtI)により、リコペンに変換される。
[6]リコペンは、リコペンシクラーゼ(crtY)により、β-カロテンに変換される。
[7]β-カロテンは、15,15’-β-カロテンジオキシゲナーゼ(blh)により開裂し、2つのオールトランスレチナール(ATR)に変換される。
IPPは、メバロン酸経路または非メバロン酸経路により産生され得る。
【0022】
本明細書では、「レチナール合成系の一連の酵素」とは、上記[1]~[7]の酵素一式をいう。細胞によっては、内在性の酵素を有している場合がある。例えば、大腸菌および酵母は、IPPδ-イソメラーゼとispAを有している。したがって、crtE、crtB、crtI、crtYを大腸菌に追加すると当該大腸菌および酵母はβ-カロテンを合成するようになる。大腸菌および酵母にblhをさらに追加することによって、当該大腸菌および酵母は、オールトランスレチナールを合成するようになる。このようにレチナール合成系の一連の酵素を有するとは、外来性の酵素と内在性の酵素とを合わせてレチナール合成系の一連の酵素をすべて有することを含む。もちろん、レチナール合成系の一連の酵素のすべてを外来性に供給してもよい。細胞が、いずれの酵素を有するかは、遺伝子の有無を解析することによって、あるいは遺伝子産物を解析することによって当業者であれば適宜決定することができる。ある態様では、宿主は、IPPδ-イソメラーゼ、FPP合成酵素(ispA)、ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(crtE)、フィトエン合成酵素(crtB)、フィトエン脱水素酵素(crtI)、リコペンシクラーゼ(crtY)、および15,15’-β-カロテンジオキシゲナーゼ(blh)からなる群から選択されるすべての酵素を発現している。ある態様では、宿主は、IPPδ-イソメラーゼ、FPP合成酵素(ispA)、ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(crtE)、フィトエン合成酵素(crtB)、フィトエン脱水素酵素(crtI)、リコペンシクラーゼ(crtY)、および15,15’-β-カロテンジオキシゲナーゼ(blh)からなる群から選択される一部、またはすべてをコードする外来性の遺伝子を有する{但し、宿主が内因性に有する酵素または遺伝子は有しなくてもよい}。
【0023】
本開示によれば、新規変異を有するロドプシンまたはそのタンパク質部分(すなわちオプシン部分)が提供され得る。本開示によれば、新規変異を有するロドプシンまたはそのタンパク質部分(すなわちオプシン部分)をコードする核酸(例えば、DNAまたはmRNA)が提供され得る。本開示によればまた、当該核酸を有する細胞(例えば、真核細胞または原核細胞)が提供され得る。本開示によれば、当該核酸を有する細胞(例えば、真核細胞または原核細胞)を培養する方法が提供され得る。真核細胞は、新規変異を有するロドプシンまたはそのタンパク質部分(すなわちオプシン部分)をミトコンドリア内膜上に発現していることができる。原核細胞は、新規変異を有するロドプシンまたはそのタンパク質部分(すなわちオプシン部分)を形質膜(すなわち細胞膜)上に発現していることができる。
【0024】
ある態様では、新規変異を有するロドプシンまたはそのタンパク質部分(すなわちオプシン部分)は、配列番号3に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。本開示によれば、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮し得るロドプシンまたはそのタンパク質部分が提供され得る。本開示によれば、細胞に発現させたときに、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高い細胞増殖能を付与することができるロドプシンまたはそのタンパク質部分が提供され得る。
【0025】
本開示によれば、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮し得るロドプシンまたはそのタンパク質部分が提供され得る。本開示によれば、細胞に発現させたときに、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高い細胞増殖能を付与することができるロドプシンまたはそのタンパク質部分が提供され得る。
【0026】
本開示によれば、本開示のロドプシン変異体は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有し得る。ある態様では、配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸が、Aではない。ある態様では、配列番号4に記載のアミノ酸配列の128番目のアミノ酸が、Iではない。ある態様では、配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸がAではなく、128番目のアミノ酸がIではない。好ましくは、上記ロドプシン変異体は、好ましくは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮し得る。ある態様では、配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸が、Qである。ある態様では、配列番号4に記載のアミノ酸配列の128番目のアミノ酸が、Gである。ある態様では、配列番号4に記載のアミノ酸配列の31番目のアミノ酸が、Qであり、かつ、配列番号4に記載のアミノ酸配列の128番目のアミノ酸が、Gである。
【0027】
本開示のロドプシン変異体は、ある態様では、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有し得る(但し、配列番号3のアミノ酸配列とは異なる配列を有する)。
【0028】
以下本開示の好ましいロドプシン変異体が有する配列の説明が提供される。本開示の好ましいロドプシンは、配列番号8のアミノ酸配列を有し、配列番号8のアミノ酸配列において、下記(1)~(62)からなる群から選択される1以上の変異を有する(但し、配列番号3のアミノ酸配列とは異なる配列を有する):
(1)1番目のXaaは、存在しないまたは天然のアミノ酸であり得、好ましくは存在しない、またはMであり得る;
(2)32番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはQ)であり得る;
(3)34番目のアミノ酸は、NまたはN以外のアミノ酸(好ましくはD)であり得る;
(4)36番目のアミノ酸は、YまたはY以外のアミノ酸(好ましくはF)であり得る;
(5)48番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはM)であり得る;
(6)49番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(7)51番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(8)53番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(9)57番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはM)であり得る;
(10)59番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(11)60番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはNまたはQ)であり得る;
(12)63番目のアミノ酸は、EまたはE以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(13)64番目のアミノ酸は、GまたはG以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(14)67番目のアミノ酸は、KまたはK以外のアミノ酸(好ましくはR)であり得る;
(15)73番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(16)79番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはI)であり得る;
(17)93番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(18)97番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはT)であり得る;
(19)108番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(20)113番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはQ)であり得る;
(21)115番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはI)であり得る;
(22)122番目のアミノ酸は、RまたはR以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(23)124番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(24)125番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはG)であり得る;
(25)126番目のアミノ酸は、KまたはK以外のアミノ酸(好ましくはNまたはA)であり得る;
(26)129番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(27)136番目のアミノ酸は、MまたはM以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(28)140番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(29)144番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはI)であり得る;
(30)145番目のアミノ酸は、GまたはG以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(31)148番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(32)151番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(33)155番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはN)であり得る;
(34)156番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(35)158番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(36)161番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(37)165番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(38)168番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはIまたはV)または場合によってはLまたはL以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(39)180番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはG)であり得る;
(40)182番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(41)183番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(42)185番目のアミノ酸は、DまたはD以外のアミノ酸(好ましくはE)であり得る;
(43)186番目のアミノ酸は、EまたはE以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(44)188番目のアミノ酸は、PまたはP以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(45)189番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはE)であり得る;
(46)190番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(47)192番目のアミノ酸は、QまたはQ以外のアミノ酸(好ましくはK)であり得る;
(48)195番目のアミノ酸は、FまたはF以外のアミノ酸(好ましくはY)であり得る;
(49)196番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはN)であり得る;
(50)197番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(51)204番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(52)215番目のアミノ酸は、MまたはM以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(53)219番目のアミノ酸は、NまたはN以外のアミノ酸(好ましくはAまたはT)であり得る;
(54)223番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはD)であり得る;
(55)225番目のアミノ酸は、EまたはE以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(56)226番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはT)であり得る;
(57)229番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(58)233番目のアミノ酸は、FまたはF以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(59)236番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはF)であり得る;
(60)237番目のアミノ酸は、MまたはM以外のアミノ酸(好ましくはLまたはV)であり得る;
(61)244番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;および
(62)245番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る。
【0029】
以下本開示の好ましいロドプシン変異体が有する配列の説明が提供される。本開示の好ましいロドプシンは、配列番号8のアミノ酸配列を有し、配列番号8のアミノ酸配列において、下記(1A)~(67A)からなる群から選択される1以上の変異を有する(但し、配列番号3のアミノ酸配列とは異なる配列を有する):
(1A)1番目のXaaは、存在しないまたは天然のアミノ酸であり得、好ましくは存在しない、またはMであり得る;
(2A)32番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはQ)であり得る;
(3A)34番目のアミノ酸は、NまたはN以外のアミノ酸(好ましくはD)であり得る;
(4A)36番目のアミノ酸は、YまたはY以外のアミノ酸(好ましくはF)であり得る;
(5A)43番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはI)であり得る;
(6A)48番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはM)であり得る;
(7A)49番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(8A)51番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(9A)53番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(10A)57番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはM)であり得る;
(11A)59番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(12A)60番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはNまたはQまたはG)であり得る;
(13A)63番目のアミノ酸は、EまたはE以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(14A)64番目のアミノ酸は、GまたはG以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(15A)67番目のアミノ酸は、KまたはK以外のアミノ酸(好ましくはR)であり得る;
(16A)73番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(17A)79番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはI)であり得る;
(18A)93番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(19A)97番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはT)であり得る;
(20A)108番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(21A)113番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはQ)であり得る;
(22A)115番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはI)であり得る;
(23A)122番目のアミノ酸は、RまたはR以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(24A)124番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(25A)125番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはG)であり得る;
(26A)126番目のアミノ酸は、KまたはK以外のアミノ酸(好ましくはNまたはA)であり得る;
(27A)129番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(28A)136番目のアミノ酸は、MまたはM以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(29A)139番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(30A)140番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(31A)144番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはI)であり得る;
(32A)145番目のアミノ酸は、GまたはG以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(33A)148番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(34A)151番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(35A)155番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはN)であり得る;
(36A)156番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(37A)157番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはW)であり得る;
(38A)158番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(39A)161番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(40A)165番目のアミノ酸は、LまたはL以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(41A)168番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはIまたはV)であり得る;
(42A)180番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはG)であり得る;
(43A)182番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(44A)183番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(45A)185番目のアミノ酸は、DまたはD以外のアミノ酸(好ましくはE)であり得る;
(46A)186番目のアミノ酸は、EまたはE以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(47A)188番目のアミノ酸は、PまたはP以外のアミノ酸(好ましくはS)であり得る;
(48A)189番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはE)であり得る;
(49A)190番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(50A)192番目のアミノ酸は、QまたはQ以外のアミノ酸(好ましくはK)であり得る;
(51A)195番目のアミノ酸は、FまたはF以外のアミノ酸(好ましくはY)であり得る;
(52A)196番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはN)であり得る;
(53A)197番目のアミノ酸は、TまたはT以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(54A)200番目のアミノ酸は、WまたはW以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(55A)204番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(56A)215番目のアミノ酸は、MまたはM以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(57A)219番目のアミノ酸は、NまたはN以外のアミノ酸(好ましくはAまたはTまたはG)であり得る;
(58A)223番目のアミノ酸は、SまたはS以外のアミノ酸(好ましくはD)であり得る;
(59A)224番目のアミノ酸は、DまたはD以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(60A)225番目のアミノ酸は、EまたはE以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る;
(61A)226番目のアミノ酸は、AまたはA以外のアミノ酸(好ましくはT)であり得る;
(62A)229番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る;
(63A)233番目のアミノ酸は、FまたはF以外のアミノ酸(好ましくはLまたはV)であり得る;
(64A)236番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはF)であり得る;
(65A)237番目のアミノ酸は、MまたはM以外のアミノ酸(好ましくはLまたはV)であり得る;
(66A)244番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;および
(67A)245番目のアミノ酸は、IまたはI以外のアミノ酸(好ましくはV)であり得る。
【0030】
本開示の好ましいロドプシン変異体は、配列番号8のアミノ酸配列を有し、配列番号8のアミノ酸配列において、上記(1)~(62)からなる群から選択される2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、28以上、29以上、30以上、31以上、32以上、33以上、34以上、35以上、35以上、36以上、37以上、38以上、39以上、40以上、41以上、42以上、43以上、44以上、45以上、46以上、47以上、48以上、49以上、50以上、51以上、52以上、53以上、54以上、55以上、56以上、57以上、58以上、59以上、または60以上を有し得る。本開示の好ましいロドプシン変異体は、配列番号8のアミノ酸配列を有し、配列番号8のアミノ酸配列において、上記(1A)~(62A)からなる群から選択される2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、28以上、29以上、30以上、31以上、32以上、33以上、34以上、35以上、35以上、36以上、37以上、38以上、39以上、40以上、41以上、42以上、43以上、44以上、45以上、46以上、47以上、48以上、49以上、50以上、51以上、52以上、53以上、54以上、55以上、56以上、57以上、58以上、59以上、または60以上を有し得る。
【0031】
本発明のある態様では、配列番号4に記載のアミノ酸配列から、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む方法が提供される。
【0032】
本発明のある態様では、配列番号8に記載のアミノ酸配列において、上記(1)~(62)からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を有するオプシンから、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む方法が提供される。本発明のある態様では、配列番号8に記載のアミノ酸配列において、上記(1A)~(67A)からなる群から選択される1以上の変異を有するアミノ酸配列を有するオプシンから、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む方法が提供される。
【0033】
本発明のある態様では、配列番号12に記載のアミノ酸配列から、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するオプシンよりも高いプロトン輸送活性を有するオプシンを選択することを含む方法が提供される。
【0034】
本開示の好ましいロドプシン変異体は、例えば、配列番号12のアミノ酸配列を有する{但し、配列番号9のアミノ酸配列を有するものを除く}。本開示の好ましいロドプシン変異体は、例えば、配列番号12のアミノ酸配列において、
下記(1A)~(3A)からなる群から選択される1以上の変異を有する{但し、配列番号9のアミノ酸配列を有するものを除く}:
(1A)125番目のアミノ酸は、FまたはF以外のアミノ酸(好ましくはL)であり得る;
(2A)142番目のアミノ酸は、RまたはR以外のアミノ酸(好ましくはH)であり得る;および
(3A)242番目のアミノ酸は、VまたはV以外のアミノ酸(好ましくはA)であり得る。
【0035】
本開示の好ましいロドプシン変異体は、配列番号5のアミノ酸配列を有し得る。本開示の好ましいロドプシン変異体は、配列番号6のアミノ酸配列を有し得る。本開示の好ましいロドプシン変異体は、配列番号7のアミノ酸配列を有し得る。
【0036】
本開示のロドプシン変異体は、上記ロドプシン変異体と90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の配列同一性を有し、配列番号3のアミノ酸配列を有するロドプシンよりも高いプロトン輸送活性を発揮することができるロドプシンおよびそのタンパク質部分が提供され得る。本開示のロドプシン変異体は、上記ロドプシン変異体のアミノ酸配列から、挿入、欠失、置換、付加および削除からなる群から選択される1から数個のアミノ酸変異(好ましくは1つ、2つ、または3つ、より好ましくは、3つ、さらに好ましくは1つ)を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0037】
本開示のロドプシン変異体は、好ましくは、シグナル配列との融合タンパク質であり得る。
【0038】
ある好ましい態様では、本開示のロドプシン変異体は、ミトコンドリア局在化シグナルと連結されていてもよい。したがって、本開示によれば、ミトコンドリア局在化シグナルと連結した単離されたオプシン、および当該オプシンをコードする遺伝子が提供される。ある態様では、本開示のロドプシン変異体は、ミトコンドリア局在化シグナルとオプシンとを含み、両者がペプチド結合で直接または間接的に連結された融合タンパク質であり得る。ミトコンドリア局在化シグナルと連結されたオプシンは、真核細胞または真核生物において発現させると、ミトコンドリアに移行する。このようにして、ミトコンドリアで発現するロドプシンを有する真核細胞または真核生物を得ることができる。ミトコンドリアで発現したロドプシンは、ミトコンドリア内膜の内外でプロトン濃度勾配を形成し、ATP合成を促進し得る。したがって、ミトコンドリア局在化シグナルと連結されたオプシンは、真核細胞または真核生物において発現させることに適している。ミトコンドリア局在化シグナルとしては、当業者に周知のものを用いることができ、例えば、ALA合成酵素であるHem1、S2ペプチド、またはオリゴアルギニン(例えば、オクタアルギニン)、peroxiredoxin PRX1、ピルベートデヒドロゲナーゼβサブユニット、ヒートショックタンパクHSP60、ATP合成酵素のγサブユニット、ATP合成酵素のαサブユニット、シトクロムc酸化酵素のサブユニット2およびサブユニット4、サブユニット6、Succinate dehydrogenasecytochrome b small subunit、citrate synthase 1 (CIT1)、Acetolactatesynthasecatalytic subunit (ILV2)、Keto l-acid reductoisomerase、Mitfilin、cytochrome c分解酵素(Sue)、などを用いることができる。ミトコンドリア局在化シグナルを有しなくても、ミトコンドリアでオプシンを翻訳させることによっても、オプシンをミトコンドリアに局在させ得る。例えば、トリプトファンのコドンを、TAAに変更するとこのようなオプシンはミトコンドリアでのみ翻訳され得る。TGAは、細胞質での翻訳においては終止コドンであり、ミトコンドリアでの翻訳においてはトリプトファンをコードする。ミトコンドリアでの終止コドンとしては、TAAを用いることができる。したがって、ある態様では、オプシンをコードする遺伝子は、トリプトファンをコードするコドンとしてTGAを含み得る。上記ロドプシン変異体は、形質膜に発現するように原核細胞に発現させることができる。
【0039】
本開示によれば、上記ロドプシン変異体をコードする核酸が提供される。核酸は、例えば、DNAまたはmRNAであり得る。
【0040】
上記ロドプシン変異体をコードするDNAは、好ましくは、制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結している。制御配列は、宿主(遺伝子を導入した細胞)においてオプシンの転写を誘導することができる。オプシンをコードする遺伝子は、宿主に対してコドン最適化がなされていてもよい。宿主によってコドン使用が異なるために特に異種のオプシンを導入する場合には、コドン最適化を行うことが好ましい。オプシンをコードする遺伝子は、宿主における複製に適した複製起点を有する、または有しないベクター(例えば、プラスミド)上に組み込まれ得る。ベクターは、栄養要求性マーカーおよび/または薬剤選択マーカーを有していてもよく、栄養要求性マーカーおよび/または薬剤選択マーカーを有する場合には、当該栄養および/または薬剤でベクターが導入された宿主を選択することができる。制御配列は、構成的プロモーターであっても、誘導性プロモーターであってもよい。オプシンは細胞において発現し、膜内でレチナールと結合するとロドプシンと呼ばれる。ロドプシンを発現しているとは、膜内でレチナールと結合した形態のオプシンを有することを意味する。
【0041】
制御配列は、例えば、プロモーターである。プロモーターとしては、例えば、クラスIプロモーター(rRNA前駆体の転写に用いることができる)、クラスIIプロモーター(コアプロモーターと上流のプロモーター要素を含み、mRNAの転写に用いることができる)、クラスIIIプロモーター(さらにタイプI、II、IIIに分類される)などが挙げられる。制御配列は、調節配列とも呼ばれ、動物細胞や植物細胞などの細胞内でmRNAを転写することができるプロモーターであればよい。例えば、第1の制御配列として、様々なpol IIプロモーターを用いることができる。pol IIプロモーターとしては、CMVプロモーター、EF1プロモーター(EF1αプロモーター)、SV40プロモーター、MSCVプロモーター、hTERTプロモーター、β-アクチンプロモーター、CAGプロモーター、CBhプロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、プロモーターには、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーターなどのバクテリオファージ由来のRNAポリメラーゼを駆動するプロモーターや、U6プロモーターなどのpol IIIプロモーターも含めることができる。T7プロモーターは環状DNAからの転写に好ましく用いられ、SP6プロモーターは直鎖状DNAからの転写に好ましく用いられる。また、プロモーターは、誘導性プロモーターであってもよい。誘導性プロモーターとは、プロモーターを駆動するインデューサーの存在下でのみ、プロモーターに動作可能に連結されたポリヌクレオチドの発現を誘導することができるプロモーターである。誘導性プロモーターの中には、プロモーターの活性を抑制する阻害剤の非存在下でのみ、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドの発現を誘導できるものがある。誘導性プロモーターには、ヒートショックプロモーターなど、加熱により遺伝子発現を誘導するプロモーターが含まれるが、これに限定されるものではない。また、誘導可能なプロモーターには、薬剤で駆動可能なプロモーターも含まれる。このような薬物誘導可能なプロモーターとしては、例えば、cumateオペレーター配列、ラムダオペレーター配列(例えば、12×ラムダOp)、テトラサイクリン誘導可能なプロモーターなどが挙げられる。テトラサイクリン誘導性プロモーターとしては、例えば、テトラサイクリンまたはその誘導体(例えば、ドキシサイクリン)または逆テトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)の存在下で遺伝子発現を駆動するプロモーターが挙げられる。テトラサイクリン誘導性プロモーターの例としては、TRE3Gプロモーターが挙げられる。
【0042】
上記ロドプシン変異体をコードするmRNAは、5’非翻訳領域(UTR)と3’UTRとを有し得る。mRNAは、5’末端にキャップ構造を有し得る。(Furuichi Y & Miura K. Nature. 1975;253(5490):374-5)。Cap構造は、Capアナログを用いたAnti-Reverse Cap Analogues(ARCA)法によってCap0構造をmRNAに付加することができる(Stepinski J et al. RNA. 2001 Oct;7(10):1486-95)。2’-Oメチルトランスフェラーゼ処理をさらに実施することにより、mRNAのCap0構造をCap1構造に変換することができる。これらは、常法により行うことができ、例えば、市販のキット、例えば、ScriptCap m7G Capping System、およびScriptCap 2’-O-Methyltransferase Kit、またはT7 mScript Standard mRNA Production System(AR Brown CO., LTD)によっても実施することができる。mRNAは、ポリA鎖を有することができる。ポリA鎖の付加は、常法により行うことができ、例えば、A-Plus Poly(A) Polymerase Tailing Kit(AR Brown CO., LTD)により行うことができる。したがって、ある態様では、mRNAは、5’末端にCap構造を有し、3’末端にポリAを有し、好ましくはウリジンの少なくとも一部または全部がシュードウリジン(好ましくは、1-メチルシュードウリジン)であるmRNAであり得る。mRNAは、単離されたmRNAまたは合成されたmRNAであり得る。
【0043】
本開示によれば、上記ロドプシン変異体をコードする核酸を含む細胞(例えば、真核細胞または原核細胞)が提供される。細胞は、上記宿主のいずれかであり得る。真核細胞は、新規変異を有するロドプシンまたはそのタンパク質部分(すなわちオプシン部分)をミトコンドリア内膜上に発現していることができる。原核細胞は、新規変異を有するロドプシンまたはそのタンパク質部分(すなわちオプシン部分)を形質膜(すなわち細胞膜)上に発現していることができる。
【0044】
本開示によれば、上記細胞は、当該細胞の培養に適した条件下で培養することができる。本開示によれば、上記細胞は、当該細胞の培養に適した条件下で培養することにより増殖させることができる。細胞の培養に適した条件は、例えば、細胞の培養に適した培地、温度(例えば、室温から37℃など)、二酸化炭素濃度(例えば、約5%)、酸素濃度(例えば、約10%~25%、例えば、約20%)、時間などの様々なパラメータにより構成され、当業者であれば適宜決定することができる。本開示によれば、上記細胞は、好ましくは、当該細胞の培養に適した条件かつ光照射条件下で培養することができる(それぞれが引用によりその全体が本明細書に取り込まれる、WO2015/170609A、WO2020/050113A、WO2009/062190A、およびHara et al., Sci. Rep., 3:1635, 2013参照)。
【0045】
細胞(すなわち、宿主)は、原核生物または真核生物であり得る。宿主はまた、単細胞生物または多細胞生物であり得る。宿主は、微生物であり得る。宿主は、光合成細胞または光合成生物であり得る。宿主は、非光合成細胞または非光合成生物であり得る。宿主はまた、細菌、古細菌(アーキア)、ラン藻(シアノバクテリア)および放線菌からなる群から選択される生物であり得る。宿主はある態様では、大腸菌(例えば、エシェリシア・コリ(Escherichia coli))、枯草菌(例えば、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis))、乳酸菌(例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus))、酢酸菌(例えば、アセトバクテラセア(Acetobacteraceae))、コリネ型細菌(Corynebacterium)、シュードモナス属細菌(Pseudomonas bacteria)、メタン生成菌(例えば、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、メタノサルシナ(Methanosarcina))、ストレプトミセス属(Streptomyces)、アクチノマイセス属(Actinomyces)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)からなる群から選択される生物であり得る。宿主はある態様では、動物、植物、および菌類(真菌類)からなる群から選択される生物であり得る。宿主はある態様では、酵母であり得る。宿主はある態様では、分裂酵母または出芽酵母であり得る。宿主はある態様では、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・フラギリス(Saccharomyces fragilis)、サッカロミセス・ルーキシー(Saccharomyces rouxii)などのサッカロミセス属、シゾサッカロミセス・ポンべ(Shizosaccharomyces pombe)などのシゾサッカロミセス属、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)などのキャンディダ属、キサントフィロマイセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous)などのキサントフィロマイセス(Xanthophyllomyces)属、ピキア(Pichia)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、ヤロイワ(Yarrowia)属、ハンゼニュラ(Hansenula)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、およびエンドマイセス(Endomyces)属からなる群から選択される酵母であり得る。宿主はある態様では、糸状菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus),トリコデルマ(Trichoderma),ヒュミコラ(Humicola),アクレモニウム(Acremonium),フザリウム(Fusarium),ブラケスリア・トリスポラ(Blakeslea trispora)及びペニシリウム(Penicillium)種)、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)由来細胞、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)由来細胞)、線虫、カイコ、植物細胞、藻類(大型藻類、微細藻類)、植物(シロイヌナズナ、タバコ)、および哺乳類培養細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒト細胞)からなる群から選択され得る。宿主はまた、藻類(大型藻類、微細藻類)であってもよい。これらの宿主に導入されるオプシンは外来性であり得る。宿主とオプシンは異種でありうる。動物は、非ヒトであり得る。宿主が原核生物の場合には、オプシンは細胞膜上に発現させ得る。宿主が真核生物の場合には、オプシンはミトコンドリア内膜上に発現させ得る。発現させる方法は、当業者に周知の技術を用い得る。
【0046】
宿主は、外来性のオプシンをコードする遺伝子に加えて、レチナール合成系の一連の酵素すべてを有していることができる。これによって、宿主がレチナールを自己合成できる場合、培地へのレチナールの添加量を低減することができる。宿主によるレチナールの合成量が十分である場合、培地にレチナールを添加しなくてもよい。宿主が、レチナール合成系の一連の酵素の一部を有しない場合、宿主が有しない当該酵素をコードする外来性の遺伝子を宿主に導入することができる。宿主が有しない当該酵素をコードする外来性の遺伝子は、制御配列に作動可能に連結されたものであり得、ベクター中の発現カセット内に導入される。宿主が、酵素を有するか否かは、生化学的な分析(例えば、ウェスタンブロット)、遺伝学的な分析(例えば、シークエンシング、またはPCR)により当業者であれば適宜決定することができる。
【0047】
ロドプシンを発現した宿主は、当該宿主に適した培養条件下で培養することができる。培養条件は、当業者であれば適宜決定することができるであろう。ロドプシンを発現した宿主は、光照射条件下で培養することができる。光照射下で培養することによって、ロドプシンを発現した宿主では、ATP合成が促進され、光照射によりエネルギーが供給されることとなる。光照射は、ロドプシンが光を受容する程度の照射であれば特に限定されないが、例えば、0.01μmol photons m-2-1以上、0.02μmol photons m-2-1以上、0.03μmol photons m-2-1以上、0.04μmol photons m-2-1以上、または0.05μmol photons m-2-1以上の強度とすることができる。光照射はまた、0.1μmol photons m-2-1以下、0.2μ photons molm-2-1以下、0.3μmol photons m-2-1以下、0.4μmol photons m-2-1以下、0.5μmol photons m-2-1以下、0.6μmol photons m-2-1以下、0.7μmol photons m-2-1以下、0.8μmol photons m-2-1以下、0.9μ photons molm-2-1以下、1.0μmol photons m-2-1以下、1.1μmol photons m-2-1以下、1.2μmol photons m-2-1以下、1.3μmol photons m-2-1以下、1.4μmol photons m-2-1以下、1.5μmol photons m-2-1以下、1.6μmol photons m-2-1以下、1.7μmol photons m-2-1以下、1.8μmol photons m-2-1以下、1.9μmol photons m-2-1以下、2μmol photons m-2-1以下、3μmol photons m-2-1以下、4μmol photons m-2-1以下、5μmol photons m-2-1以下、6μmol photons m-2-1以下、7μmol photons m-2-1以下、8μmol photons m-2-1以下、9μmol photons m-2-1以下、10μmol photons m-2-1以下、15μmol photons m-2-1以下、20μmol photons m-2-1以下、20μmol photons m-2-1以下、30μmol photons m-2-1以下、40μmol photons m-2-1以下、50μmol photons m-2-1以下、60μmol photons m-2-1以下、70μmol photons m-2-1以下、80μmol photons m-2-1以下、90μmol photons m-2-1以下、100μmol photons m-2-1以下、110μmol photons m-2-1以下、120μmol photons m-2-1以下、130μmol photons m-2-1以下、140μmol photons m-2-1以下、150μmol photons m-2-1以下、160μmol photons m-2-1以下、170μmol photons m-2-1以下、180μmol photons m-2-1以下、190μmol photons m-2-1以下、200μmol photons m-2-1以下、300μmol photons m-2-1以下、400μmol photons m-2-1以下、500μmol photons m-2-1以下、600μmol photons m-2-1以下、700μmol photons m-2-1以下、800μmol photons m-2-1以下、900μmol photons m-2-1以下、1000μmol photons m-2-1以下、1500μmol photons m-2-1以下、または2000μmol photons m-2-1以下であり得る。照射する光は、電球(例えば、白熱電球、ハロゲン電球等)、蛍光灯、高圧放電ランプ、低圧放電ランプ、LED、EL、化学発光、生物発光および太陽光のいずれでもよく、例えば、300~800nm、450~650nm、例えば、550nmの波長を含む光を用いることができる。光照射は、連続的に行われてもよく、間欠的に行われてもよい。
【0048】
光照射により宿主にエネルギーが提供されると、宿主は、エネルギー産生のために用いる炭素源の消費量を低減しうる。光照射により宿主にエネルギーが提供されると、宿主は、物質産生に関わる経路(例えば、ペントースリン酸経路等)で炭素源等の原料のより多くを用いることができるようになる。したがって、光照射により宿主は、物質産生に適した状態となる。そのため、宿主に炭素源等の原料を供給することによって、物質生産を好ましく行うことができる。
ロドプシンを発現した微生物は、光照射条件下で低pH耐性、および/または高温耐性を示し得る。
【0049】
低pH耐性とは、宿主の能力(増殖能、ATP合成能、および物質産生能からなる群から選択される1以上の能力)が低下するpHの低い環境下(例えば、pH5.0未満)において、非照射時と比較して、光照射条件下で、および/またはロドプシンの非発現時と比較して、発現条件下で、増殖能、ATP合成能、および物質産生能からなる群から選択される1以上の能力が、高まることを意味する。低pH耐性とは、例えば、酵母の場合、pH5.0未満、pH4.5以下、pH4.0以下、例えば、pH3.2~3.7(例えば、pH3.5)のpH条件下において、増殖能、ATP合成能、および物質産生能からなる群から選択される1以上の能力が、非照射条件下および/またはロドプシン非発現条件下での対応する能力よりも高まることを意味する。ロドプシンを発現し、低pH耐性を備えた宿主は、低pH条件下においても好ましく培養し得る。低pH条件下では、他の混入微生物の増殖、ATP合成能、および物質産生能からなる群から選択される1以上の能力が抑えられ、宿主を選択的に培養することが可能となり得る。
【0050】
高温耐性とは、宿主の能力(増殖能、ATP合成能、および物質産生能からなる群から選択される1以上の能力)が低下する高温環境下において、非照射時と比較して、光照射条件下で、および/またはロドプシンの非発現時と比較して、発現条件下で、増殖能、ATP合成能、および物質産生能からなる群から選択される1以上の能力が、高まることを意味する。高温耐性とは、例えば、酵母の場合、32℃以上、33℃以上、34℃以上、例えば、34℃~36℃(例えば、35℃)またはそれ以上の条件下において、増殖能、ATP合成能、および物質産生能からなる群から選択される1以上の能力が、非照射条件下および/またはロドプシン非発現条件下での対応する能力よりも高まることを意味する。高温条件下では、他の混入微生物の増殖が抑えられ、宿主を選択的に培養することが可能となり得る。
【0051】
ロドプシンを発現した微生物は、光照射条件下で、低pH耐性および高温耐性を備え得る。この場合、ロドプシンを発現し、低pH耐性および高温耐性を備えた宿主は、低pHおよび高温条件下において好ましく培養し得る。低pHおよび高温条件下では、他の混入微生物の増殖、ATP合成能、および物質産生能からなる群から選択される1以上の能力が抑えられ、宿主を選択的に培養することが可能となり得る。
【0052】
物質生産は、上記条件下において、ロドプシンを発現する細胞または生物を培養することによって好ましく行われ得る。ロドプシンを発現する細胞または生物は、特定の物質の産生量を増大させるために、当該物質の産生に適した条件下で培養され得る。培養条件は、低pH条件下および高温条件下のいずれかまたは両方を満たし得る。特定の物質の産生量を増大させるためには、ロドプシンを発現する細胞または生物に対してさらなる改変を加えることが許容される。そのような改変としては、例えば、当該物質の産生経路に関する酵素を変異および/または導入する改変;当該物質の分解に関する酵素の破壊、発現量の低減、活性の欠失や低減;および/または競合する経路に関する酵素の破壊、発現量の低減、および/または活性の欠失や低減が挙げられる。
【0053】
物質生産により、産生される物質としては、例えば有機酸、ペプチド、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオシド、ビタミン、糖、糖アルコール、アルコール、イソプレノイド類及び脂質などをあげることができる。より具体的には以下があげられる。有機酸としては、酢酸、乳酸、コハク酸、αーケト酸(2-オキソ酸)などをあげることができる。ペプチドとしてはグルタチオン、アラニルグルタミン、γグルタミルバリルグリシンなどをあげることができ、ポリペプチドとしては、ポリリジン、ポリグルタミン酸をあげることができる。アミノ酸としては、L-アラニン、グリシン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-リジン、L-メチオニン、L-スレオニン、L-ロイシン、L-バリン、L-イソロイシン、L-プロリン、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-システイン、L-3-ヒドロキシプロリン、L-4-ヒドロキシプロリン、5-アミノレブリン酸などをあげることができる。タンパク質としては、ルシフェラーゼ、イノシンキナーゼ、Glutamate 5-kinase (EC 2.7.2.11)、Glutamate-5-semialdehydedehydrogenase (EC 1.2.1.41)、Pyrroline-5-carboxylatereductase (EC 1.5.1.2)、γ-グルタミルシステイン合成酵素(EC 6.3.2.2)、グルタチオン合成酵素(EC 6.3.2.3)、ヒト顆粒球コロニー刺激因子、キシロースレダクターゼ、P450などをあげることができる。ヌクレオシドとしては、イノシン、グアノシン、イノシン酸、グアニル酸、アデニル酸などをあげることができる。ビタミンとしては、リボフラビン、チアミン、アスコルビン酸などをあげることができる。糖としては、キシロース、マンノースなどをあげることができ、糖アルコールとしては、キシリトール、マンニトールなどをあげることができ、アルコールとしてはエタノールなどをあげることができる。イソプレノイド類としては、メバロン酸(MVA:Mevalonate)、イソプレノール、アスタキサンチン、イソプレン、イソペンテノール、リモネン、ピネン、ファルネセン、ビサボレンなどをあげることができる。脂質としては、プロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などをあげることができる。本発明における有用物質では、有機酸では酢酸、ペプチドではグルタチオン、イソプレノイド類ではメバロン酸、イソプレノール、脂質ではヒドロキシプロピオン酸が特に好適である。産生される物質としては、例えば、ATP、グルタチオン、イソプレノイドが挙げられる。
【実施例0054】
実施例1:dRのランダム変異
デルタロドプシン(dR)遺伝子(753bp;配列番号9)に対し、Leung DWらの方法(Leung DW et al., (1989) Biotechniques, 1(1):11-15)に従い、pCDF-dRのdR遺伝子部分にDNA 1kbあたり2個程度の変異が導入されるエラープローンPCRの条件を設定した。一方、ベクターのインバースPCRは使用したDNA polymerase(KOD plus neo)に添付のマニュアルの推奨条件に従った。増幅したDNA断片についてPureLinkTM PCR Purification Kit (Invitrogen)による精製を行った後、Gibson Assembly Master Mix (NEW ENGLAND BioLabs)を用いてライゲーションを行った。得られたランダム変異を持つpCDFDuet-dRの変異プラスミドライブラリを用いて、ヒートショック法でMG1655株を形質転換した。LB-ストレプトマイシンプレート培地に塗布し、37℃で一晩培養して形質転換体を約7000株得た。プレートの表面に適当な量のmilliQ滅菌水を加えて、コロニーを全て混ぜ合わせ形質転換体を含む菌体懸濁液を作製し、等量の50%グリセロールと混合し、グリセロールストックを作製した。
【0055】
得られたdRのランダム変異株ライブラリのグリセロールストックについて、LB-ストレプトマイシンプレート培地に塗布し、37℃で一晩培養した。出現したシングルコロニーをそれぞれLB-ストレプトマイシン液体培地5mLに植菌し、150rpmで一晩培養を行った。得られた培養液を200mLフラスコ内のM9-ストレプトマイシン選択培地50mLにOD600=0.05となるように植菌し、37℃、150rpmで一晩前培養した。得られた培養液を新たなM9-ストレプトマイシン選択培地50mLにOD600=0.05となるように植菌し、37℃、150rpmで4時間培養した後、10μMオールトランスレチナールと25μM イソプロピルβ-D-チオガカクトピラノシド(IPTG)を添加し、37℃、150rpmにて暗所で24時間培養した。
【0056】
次いで、50μEの光照射条件下で耐塩性スクリーニングを行った。具体的には、培養液30mLについて、6000rpmの遠心分離を2分間行い、上澄みを捨てた。プロトンポンプ活性測定用非緩衝液(10mM NaCl、10mM MgSO4、0.1mM CaCl2)を2mL添加し、静かに懸濁を行った。得られた菌体懸濁液について再度6000rpmの遠心分離を2分間行い、上澄みを捨てた。菌体ペレットについてOD600=0.5となるようにプロトンポンプ活性測定用非緩衝液で懸濁した。得られた菌体懸濁液について、等量の50%グリセロールと混合し、グリセロールストックを作製した。プロトン輸送活性の高い株をさらに濃縮するために、このグリセロールストックから再度同じ方法で2ラウンド目の耐塩性スクリーニングを行った。2ラウンド目の耐塩性スクリーニングを完了した菌体懸濁液についても、等量の50%グリセロールを混合し、グリセロールストックを作製した。
【0057】
耐塩性スクリーニング完了後の菌体懸濁液について、LB-ストレプトマイシン選択プレート培地に塗布し、37℃で一晩培養を行った結果得られたシングルコロニーについて110株をランダムに選択し、それぞれ2mLのLB-ストレプトマイシン選択培地に植菌し、150rpmで一晩培養を行った。続いて5mLのM9-ストレプトマイシン選択培地にOD600=0.05となるように継代し、150rpmで一晩培養を行った。続いて新たな5mLのM9-ストレプトマイシン選択培地にOD600=0.05となるように継代し、150rpmで4時間培養を行った。その後オールトランスレチナールとIPTGをそれぞれ終濃度10μM、25μMとなるように添加し、150rpmにて暗所で一晩培養を行った。培養液の色を観察し、dRに特徴的なピンク色が特に強い菌体を21株選抜した。
【0058】
選抜した21株について、培養を行い、プロトンポンプ活性測定を行った。結果は、天然型を100とし、変異体の天然体に対するプロトン輸送活性の比(相対プロトン輸送活性)により表す。その結果、図1に示されるように、MG-E59発現株およびMG-E104発現株において、天然型のMG-dR発現株よりも高いプロトン輸送活性が確認された(図1)。
【0059】
また、これらの菌体について5mLのLB-ストレプトマイシン選択培地に植菌し、得られた菌体についてLabo PassTM Mini (COSMO)を用いたプラスミド抽出を行い、dR遺伝子部分の配列についてシーケンス解析を行った。シーケンス解析に使用したプライマーの配列を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
MG-E59株、MG-E104株においてはどちらについてもアミノ酸変異が起きたことが確認された。プロトン輸送速度の高かったMG-E104株およびMG-E59のdR(それぞれ配列番号10および11)において同定された変異をそれぞれ表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例2:OP27の部位特異的変異
ロドプシンOP27の部位特異的変異体であるOP27-A31Q、OP27-I128G、OP27-A31Q/I128G(A31QとI128Gの両方を有する)を(配列番号4{ここで、X1はQであり、および/または、X2はGである})それぞれ大腸菌に導入した。具体的にはOP27およびOP27-A31Q、OP27-I128G、OP27-A31Q/I128Gをコードする核酸(DNA)をpCDF-Duet1ベクターに導入し、pCDF-OP27およびpCDF-OP27-A31Q、OP27-I128G、OP27-A31Q/I128Gを作製した。ヒートショック法によりpCDF-OP27およびpCDF-OP27-A31Q、pCDF-OP27-I128G、pCDF-OP27-A31Q/I128Gを用いて大腸菌MG1655(DE3)株を形質転換した。大腸菌MG1655(DE3)株にpCDF-OP27を導入した株を「OP27発現大腸菌」といい、コントロール株として用いた。また、pCDF-OP27-A31Q、pCDF-OP27-I128G、pCDF-OP27-A31Q/I128Gを導入した大腸菌MG1655(DE3)形質転換体をそれぞれ「pCDF-OP27-A31Q発現大腸菌」、「pCDF-OP27-I128G発現大腸菌」、「pCDF-OP27-A31Q/I128G発現大腸菌」、あるいは3株まとめて「OP27部位特異的変異体発現大腸菌」という。使用直前まで-80℃でグリセロールストックとして保存した。
【0064】
ロドプシン変異体の発現大腸菌の培養は以下のように行った。OP27部位特異的変異体発現大腸菌およびOP27発現大腸菌をグリセロールストックからLB(ストレプトマイシンを添加)培地プレートに37℃で1日間静置培養し、出現したコロニーを、3つピックアップしてLB培地5mL、200rpmで37℃で16時間、前培養した。OP27部位特異的変異体発現大腸菌およびOP27発現大腸菌をLB培地20mLに0.4mLを接種し、振とう培養器(BR-43FL、タイテック、日本)内にて、37℃、200rpmにて培養した。OD600が0.4~1.0になった時点で、培地に10μMのオールトランスレチナールおよび1mMのIPTGを添加し、37℃、200rpmにて3時間培養した。
【0065】
回収した培養液を5,000×g、25℃で10分間遠心分離してOP27部位特異的変異体発現大腸菌およびOP27発現大腸菌を回収した。回収したロドプシン発現大腸菌を100mM NaCl溶液で3回洗浄し、OD600=2となるように100mM NaCl溶液に懸濁した。ロドプシン発現大腸菌懸濁液に対し、バンドパスフィルター(PBO530-120、朝日スペクトラ、日本:530±120nm)を装着した300Wハロゲンプロジェクターランプ(JCD100V-300W)を使用して、100μEの光を照射した。照射した光強度は、フォトアナライザーLA-105(NKシステム、大阪、日本)を用いて測定した。OP27部位特異的変異体発現大腸菌およびOP27発現大腸菌の懸濁液のpH変化の時間経過を、PCに接続したpHメーター(F-72、堀場、日本)を使用して記録した。OP27-A31Q発現大腸菌、OP27-I128G発現大腸菌、OP27-A31Q/I128G発現大腸菌およびOP27発現大腸菌のプロトン輸送活性は、pH変化の初期勾配から決定した。また、細胞あたりのプロトン輸送量はプロトン輸送活性を細胞濃度で除して求めた。プロトン輸送活性および細胞あたりのプロトン輸送量の結果を図2に示される通りであった。図2に示されるように、プロトン輸送活性は変異により増大したことが示唆された。
【0066】
実施例3:OP27の人工設計
ロドプシンOP27の人工設計変異体であるOP27-A10、OP27-A20、OP27-A110、およびOP27-A170(それぞれ配列番号5~7、および13)をそれぞれ大腸菌に導入した。
【0067】
【化1】
【0068】
具体的にはOP27およびOP27-A10、OP27-A20、OP27-A110、OP27-A170をコードする核酸(DNA)にNdeI/KpnI制限酵素配列を導入し、大腸菌にコドン最適化して人工合成した。この合成OP27遺伝子およびOP27-A10、OP27-A20、OP27-A110、OP27-A170遺伝子をそれぞれpCDF-Duet1ベクターに導入し、pCDF-OP27、pCDF-OP27-A10、OP27-A20、OP27-A110、およびOP27-A170を作製した。ヒートショック法によりpCDF-OP27およびpCDF-OP27-A10、pCDF-OP27-A20、pCDF-OP27-A110、およびpCDF-OP27-A170をそれぞれ用いて大腸菌MG1655(DE3)株を形質転換した。大腸菌MG1655(DE3)株にpCDF-OP27を導入した大腸菌を「OP27発現大腸菌」といい、コントロール株として用いた。また、pCDF-OP27-A10、pCDF-OP27-A20、pCDF-OP27-A110、およびpCDF-OP27-A170を導入した大腸菌をそれぞれ「OP27-A10発現大腸菌」、「OP27-A20発現大腸菌」、「OP27-A110発現大腸菌」、「OP27-A170発現大腸菌」、あるいは4株まとめて「OP27人工設計変異体発現大腸菌」という。使用直前まで-80℃でグリセロールストックとして保存した。
【0069】
ロドプシン発現大腸菌の培養は以下のように行った。OP27発現大腸菌およびOP27人工設計変異体発現大腸菌をグリセロールストックからLB(ストレプトマイシンを添加)培地プレートに37℃で1日間静置培養し、出現したコロニーを、3つピックアップしてLB培地5mL、200rpmで37℃で16時間、前培養した。OP27人工設計変異体発現大腸菌およびOP27発現大腸菌をМ9培地10mLに初期OD600が0.2となるように接種し、振とう培養器(BR-43FL、タイテック、日本)内にて、37℃、200rpmにて暗所で培養した。OD600が0.6になった時点で培地に、10μMのオールトランスレチナールおよび培地には、20μMのイソプロピル-β-チオガラクトピラノシドを添加し、37℃、200rpmにて暗所で3時間培養した時点でLC-LED 450W(TAITEC、日本)によって±50μmolm-2-1光照射を開始し、引き続き37℃、200rpmで培養を行った。
【0070】
OP27人工設計変異体発現大腸菌およびOP27発現大腸菌を適切な時間培養後に回収した。培養液中の細胞濃度、プロトン輸送活性および細胞内のグルタチオン含有量の測定を行った。各実験条件に対して実験を3回繰り返した。
【0071】
本培養18時間後、培養液を回収し、適宜希釈してOD600を測定することで細胞濃度を求めた。一方で回収した培養液を5,000×g、25℃で10分間遠心分離してOP27人工設計変異体発現大腸菌およびOP27発現大腸菌を回収した。回収したロドプシン発現大腸菌を100mM NaCl溶液で3回洗浄し、OD600=2となるように100mM NaCl溶液に懸濁した。ロドプシン発現大腸菌懸濁液に対し、バンドパスフィルター(PBO530-120、朝日スペクトラ、日本:530±120nm)を装着した300Wハロゲンプロジェクターランプ(JCD100V-300W)を使用して、光を照射した。照射した光強度は、フォトアナライザーLA-105(NKシステム、大阪、日本)を用いて測定した。OP27人工設計変異体発現大腸菌およびOP27発現大腸菌の懸濁液のpH変化の時間経過を、PCに接続したpHメーター(F-72、堀場、日本)を使用して記録した。各培養物中の変異体発現大腸菌の相対細胞濃度を求めた。OP27-A10発現大腸菌、OP27-A20発現大腸菌、OP27-A110発現大腸菌およびOP27発現大腸菌のプロトン輸送活性は、pH変化の初期勾配から決定した。結果を図3および図5に示す。図3および図5に示されるように、OP27-A10およびOP27-A170は、細胞増殖能を向上させ、プロトン輸送活性も同時に向上させた。これに対して、OP27-A20およびOP27-A110では、細胞増殖能を向上させたが、プロトン輸送活性は低下していた。
【0072】
サンプリングにより回収した培養液を7,000×gで2分間遠心分離して、細胞を分離した。細胞を50mM Tris-HClバッファー(pH8.0)に懸濁し、細胞破壊装置(Shake Master NEO、Bio Medical Sciences)で1500rpmで10分間破砕し、16,000×g、4℃で10分間遠心分離して細胞破砕断片を除去した。細胞抽出液のグルタチオン(GSH)濃度を、Hara et al、2009に記載の5、5’-ジチオビス(2-ニトロベンゾン酸)-グルタチオンレダクターゼサイクリングアッセイ法を用いて測定した。また、細胞内グルタチオン含有量はグルタチオン濃度を細胞濃度で除して求めた。結果は、図4および図6に示される通りであった。図4および図6に示されるように、OP27-A10、A20、A110、およびA170のいずれの株においてもグルタチオン産生能は向上していたが、OP27-A10においてはグルタチオン産生能が顕著に向上していた。OP27は、プロトン輸送活性が高い一方で、細胞増殖の抑制効果を有すると考えられる。OP27変異体は、プロトン輸送活性を顕著に高めるものは無かったものの、細胞増殖の抑制を解除することによって、(細胞数)×(細胞あたりのプロトン輸送量)の総計が大きくなり、これによりATP産生の総量も増大し、物質生産に使用できるエネルギー量を増加させることができたものと考えられる。
【0073】
本明細書で引用された文献は、その全体が引用されることにより本明細書の組込まれる。
【0074】
配列表の説明
配列番号1:プライマー配列
配列番号2:プライマー配列
配列番号3:OP27のアミノ酸配列
配列番号4:OP27変異体1のアミノ酸配列(31、128)
配列番号5:OP27-A10変異体のアミノ酸配列
配列番号6:OP27-A20変異体のアミノ酸配列
配列番号7:OP27-A110変異体のアミノ酸配列
配列番号8:OP27変異体2のアミノ酸配列(A10、A20、A110、A170)
配列番号9:デルタロドプシン(dR)のアミノ酸配列
配列番号10:E104変異体のアミノ酸配列
配列番号11:E59変異体のアミノ酸配列
配列番号12:デルタロドプシン変異体のアミノ酸配列(E104、E59)
配列番号13:OP27-A170変異体のアミノ酸配列
【0075】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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