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特開2023-57174電荷制御剤および電荷制御剤を含む粒子分散物
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  • 特開-電荷制御剤および電荷制御剤を含む粒子分散物 図1
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  • 特開-電荷制御剤および電荷制御剤を含む粒子分散物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057174
(43)【公開日】2023-04-20
(54)【発明の名称】電荷制御剤および電荷制御剤を含む粒子分散物
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/167 20190101AFI20230413BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20230413BHJP
   C09C 3/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
G02F1/167
C09C3/10
C09C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023026211
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2021562359の分割
【原出願日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】62/846,304
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン ブズオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エル. マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェイ. テルファー
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン マクドナルド
(57)【要約】
【課題】 電荷制御剤および電荷制御剤を含む粒子分散物を提供すること
【解決手段】 複数の荷電した顔料粒子および1つまたは1つより多くの電荷制御剤を含む混合物が、開示される。上記電荷制御剤のうちの少なくとも1つは、カチオン性ヘッド基(例えば、アンモニウムカチオンまたはイミニウム化合物)、および非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む化学構造を有する。上記混合物は、電気泳動ディスプレイへと組み込まれ得る電気泳動媒体を形成するための分散物として有用である。あるいは、上記分散物は、電子写真トナーおよび他の印刷適用のための分散物を形成するために有用であり得る。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月10日出願の米国仮特許出願第62/846,304号(その内容は、その全体において本明細書に参考として援用される)の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、長年にわたって激しい研究および開発の対象であった。このようなディスプレイにおいて、複数の荷電した粒子(ときおり、顔料粒子ともいわれる)は、電場の影響下で流体を通って動く。上記電場は、代表的には、導電性フィルムまたはトランジスタ(例えば、電界効果トランジスタ)によって提供される。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較した場合、良好な輝度およびコントラスト、広い画角、状態の双安定性、ならびに低消費電力を有する。しかし、このような電気泳動ディスプレイは、LCDディスプレイよりスイッチング速度が遅く、電気泳動ディスプレイは、代表的には、リアルタイム動画をディスプレイするには遅すぎる。さらに、上記電気泳動ディスプレイは、低温では鈍重であり得る。なぜなら流体の粘性が、電気泳動粒子の動きを制限するからである。これらの欠点にもかかわらず、電気泳動ディスプレイは、日用品(例えば、電子書籍(e-リーダー)、携帯電話および携帯電話カバー、スマートカード、標識、時計、棚札、およびフラッシュドライブ)の中に見出され得る。
【0003】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡またはこれらの名義での数多くの特許および出願が、カプセル型電気泳動媒体(encapsulated electrophoretic media)および他の電気光学媒体において使用される種々の技術を記載している。このようなカプセル型媒体は、多くの小さなカプセルを含み、これらの各々は、それ自体が、流体媒体中で電気泳動によって動く粒子を含む内部相、および上記内部相を囲むカプセル壁を含む。代表的には、上記カプセルは、それ自体がポリマー結合剤の中に保持されて、2つの電極の間に配置されるコヒーレント層を形成する。これらの特許および出願の中で記載される技術は、以下を含む:
(a)電気泳動粒子、流体および流体添加剤;例えば、米国特許第7,002,728号および同第7,679,814号を参照のこと;
(b)カプセル、結合剤およびカプセル化プロセス;例えば、米国特許第6,922,276号および同第7,411,719号を参照のこと;
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法;例えば、米国特許第7,072,095号および同第9,279,906号を参照のこと;
(d)マイクロセルを充填および密封する方法;例えば、米国特許第7,144,942号および同第7,715,088号を参照のこと;
(e)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ;例えば、米国特許第6,982,178号および同第7,839,564号を参照のこと;
(f)ディスプレイにおいて使用されるバックプレーン、接着層、および他の補助層ならびに方法;例えば、米国特許第7,116,318号および同第7,535,624号を参照のこと;
(g)カラー形成およびカラー調整;例えば、米国特許第7,075,502号および同第7,839,564号を参照のこと;
(h)ディスプレイを駆動するための方法;例えば、米国特許第7,012,600号および同第7,453,445号を参照のこと;
(i)ディスプレイの適用;例えば、米国特許第7,312,784号および同第8,009,348号を参照のこと;ならびに
(j)非電気泳動ディスプレイ(米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に記載されるとおり);ならびにディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の適用;例えば、米国特許出願公開第2015/0005720号および同第2016/0012710号を参照のこと。
【0004】
多くの市販の電気泳動媒体は、本質的に2色のみをディスプレイし、両端の黒と白との間の階調度は、「グレースケール(grayscale)」として公知である。このような電気泳動媒体は、第1のカラーを、第2の異なるカラーを有する着色流体中に有する単一タイプの電気泳動粒子、または異なる第1のおよび第2のカラーを非着色の流体中に有する第1および第2のタイプの電気泳動粒子のいずれかを使用する。単一タイプ電気泳動粒子の場合、第1のカラーは、上記粒子がディスプレイの画面に隣接して置かれる場合にディスプレイされ、第2のカラーは、上記粒子が画面から間隔を置かれる場合にディスプレイされる。第1および第2のタイプの電気泳動粒子の場合、第1のカラーは、第1のタイプの粒子がディスプレイの画面に隣接して置かれる場合にディスプレイされ、第2のカラーは、第2のタイプの粒子が画面に隣接しておかれる場合にディスプレイされる。代表的には、上記2つのカラーは、黒および白である。
フルカラーディスプレイが望ましい場合、カラーフィルターアレイが、モノクローム(黒および白)ディスプレイの画面を覆って配置され得る。カラーフィルターアレイ付きのディスプレイは、領域共有およびカラーブレンドに依拠して、色刺激を作り出す。利用可能なディスプレイ領域は、赤/緑/青(RGB)または赤/緑/青/白(RGBW)のような3原色または4原色の間で共有され、フィルターは、一次元(ストライプ)または二次元(2×2)反復パターンで配列され得る。原色の他の選択または3色より多くの原色はまた、当該分野で公知である。3(RGBディスプレイの場合)または4(RGBWディスプレイの場合)の副画素は、十分小さいように選択され、その結果、意図した視距離において、それらは、均質な色刺激を伴う単一画素へと一緒に視覚的に混ざる(「混色(color blending)」)。領域共有の本質的不利益は、着色剤が常に存在することであり、カラーは、根底にあるモノクロームディスプレイの相当する画素を白または黒へと切り替える(その相当する原色をオンオフして切り替える)ことによって調節され得るに過ぎない。例えば、理想的なRGBWディスプレイにおいて、赤、緑、青および白の原色の各々は、ディスプレイ領域の1/4を占め(4つの副画素のうち1つの副画素)、白の副画素は、根底にあるモノクロームディスプレイの白と同程度に明るく、その有色の副画素の各々は、そのモノクロームディスプレイの白の1/3よりも明るくない。ディスプレイによって全体として示される白カラーの輝度は、白の副画素の輝度の1/2より大きくはなり得ない。これは、ディスプレイの白領域が、各4つの副画素のうちの1つの白の副画素をディスプレイすることによって生成されることに加えて、その有色の形態にある各有色の副画素が、白の副画素の1/3に等しいという事実によって引きおこされる。従って、3色の副画素を合わせても、1つの白の副画素を与えるに過ぎない。色の輝度および彩度は、カラー画素を黒に切り替えて領域共有することによって下げられる。領域共有は、黄色を混合する場合に特に問題となる。なぜなら黄色は、等しい輝度のいかなる他のカラーより明るく、飽和した黄色は、白とほぼ同程度に明るいからである。青画素(ディスプレイ領域のうちの1/4)を黒に切り替えると、黄色が暗くなりすぎる。
フルカラーディスプレイは、代わりに、種々の電気泳動移動度を有する複数の有色顔料を含む電気泳動媒体を使用することによって提供され得る。例えば、米国特許第9,921,451号は、光散乱粒子の1タイプ(代表的には白)および減法混色の3原色を提供する3つの実質的に非光散乱タイプの粒子を含む電気泳動媒体を含む有色の電気泳動ディスプレイを教示する。減法混色の原色を有する実質的に非光散乱粒子タイプの使用は、混色を可能にし、カラーフィルターで達成され得るより多くのカラー結果を、単一の画素で提供する。電気泳動媒体および電気泳動デバイス、特に、種々の変化および移動度を有す
る荷電した顔料の複数のセットを含むものは、複雑な挙動を示す。上記粒子を状態間で駆動するためには、複雑な「波形(waveform)」が必要とされる。電場の複雑さと合わさると、粒子(顔料)および流体の混合物は、電場の印加の際に、荷電された種とその周りの環境(例えば、カプセル化媒体)との間の相互作用に起因して、予測外の挙動を示し得る。さらに、予測外の挙動は、流体、顔料、またはカプセル化媒体中の不純物からも生じ得る。例えば、電気泳動粒子上の電荷は通常、電荷制御剤(CCA)または界面活性剤を上記電気泳動媒体に添加することによって制御される;しかし、市販されるCCAは、顕著なレベルの不純物を有し得る。よって、電気泳動ディスプレイが、内部相組成の変動にどの程度応答するかを推測することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,002,728号明細書
【特許文献2】米国特許第7,679,814号明細書
【特許文献3】米国特許第6,922,276号明細書
【特許文献4】米国特許第7,411,719号明細書
【特許文献5】米国特許第7,072,095号明細書
【特許文献6】米国特許第9,279,906号明細書
【特許文献7】米国特許第7,144,942号明細書
【特許文献8】米国特許第7,715,088号明細書
【特許文献9】米国特許第6,982,178号明細書
【特許文献10】米国特許第7,839,564号明細書
【特許文献11】米国特許第7,116,318号明細書
【特許文献12】米国特許第7,535,624号明細書
【特許文献13】米国特許第7,075,502号明細書
【特許文献14】米国特許第7,839,564号明細書
【特許文献15】米国特許第7,012,600号明細書
【特許文献16】米国特許第7,453,445号明細書
【特許文献17】米国特許第7,312,784号明細書
【特許文献18】米国特許第8,009,348号明細書
【特許文献19】米国特許第6,241,921号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2015/0277160号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2015/0005720号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2016/0012710号明細書
【特許文献23】米国特許第9,921,451号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
1つの局面において、本発明の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み、上記第1の電荷制御剤は、アンモニウムカチオンを含み、および式I;
【化1】
(ここでmは、0、1、2、または3であり;各Rは、アルキル基およびアリール基からなる群より独立して選択され;ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であ
り;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
によって表される化学構造を有する。
【0007】
別の局面において、本発明の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み、上記第1の電荷制御剤は、アンモニウムカチオンを含み、および式II;
【化2】
(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;R、Rは、アルキル基、アリール基、および基-[(Z)-X-HT]からなる群より独立して選択され;ここで式IIは、少なくとも1個の-[(Z)-X-HT]を含み;ここで基Zは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
によって表される化学構造を有する。
【0008】
別の局面において、本発明の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み、上記第1の電荷制御剤は、アンモニウムカチオンを含み、および式III;
【化3】
(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;ここでR、R、およびRは、アルキル基、アリール基、および基-[(Z)-X-HT]からなる群より独立して選択され;ここで式IIIは、少なくとも1個の-[(Z)-X-HT]基を含み;ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
によって表される化学構造を有する。
【0009】
別の局面において、本発明の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み、上記第1の電荷制御剤は、アンモニウムカチオンを含み、および式IV;
【化4】
(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;ここでR、R、およびRは、
アルキル基、アリール基、および基-[(Z)-X-HT]からなる群より独立して選択され;ここで式IVは、少なくとも1個の-[(Z)-X-HT]基を含み;ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
によって表される化学構造を有する。
【0010】
別の局面において、本発明の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み、上記第1の電荷制御剤は、アンモニウムカチオンを含み、および式V;
【化5】
(ここでR、およびR10は、アルキル基、アリール基、および基-[(Z)-X-HT]からなる群より独立して選択され;ここで式Vは、少なくとも1個の-[(Z)-X-HT]基を含み;ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
によって表される化学構造を有する。
【0011】
別の局面において、本発明の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子、第1の電荷制御剤、および第2の電荷制御剤を含み、ここで上記第2の電荷制御剤は、アンモニウムカチオン、非環式二級アミド基、および疎水性部分を含む。
【0012】
別の局面において、本発明の実施形態に従う混合物は、流体中の分散物中に存在し、ここで上記複数の荷電した粒子は、電場の印加の際に、上記流体を通って動き得る。電気泳動媒体を有する電気光学式ディスプレイは、上記分散物を含み得る。
【0013】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明に鑑みて明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に従う補助官能基としてのエステル基を含む電荷制御剤の種々の量と組み合わせた粒子のゼータ電位における変化を、非環式二級アミド基を含む電荷制御剤、およびその2つの50:50ブレンドに対して図示するグラフである。
【0015】
図2図2および図3は、複数のカラー粒子および非環式二級アミド基を含む電荷制御剤を含む分散物の色域を示す。
図3図2および図3は、複数のカラー粒子および非環式二級アミド基を含む電荷制御剤を含む分散物の色域を示す。
【0016】
図4図4は、図2および図3の複数のカラー粒子、および補助官能基としてエステル基を含む電荷制御剤と非環式二級アミド基を含む電荷制御剤とのブレンドを含む分散物の色域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
以下の詳細な説明において、多くの具体的な詳細が、関連する教示の完全な理解を提供するために、例示によって示される。しかし、本教示がこのような詳細なしに実施され得ることは、当業者に明らかなはずである。
【0018】
本発明は、顔料粒子および改善された電荷制御剤を含む混合物を提供する。広い帯域または選択された波長のいずれかで光を吸収、散乱、または反射する粒子は、有色粒子または顔料粒子として本明細書で言及される。光を吸収または反射する顔料(不溶性の有色物質を意味する場合の、その用語の厳密な意味での顔料)以外の種々の物質(例えば、色素またはフォトニック結晶など)はまた、本発明の混合物の中で使用され得る。
【0019】
上記混合物は、電気泳動媒体において有用であり、ディスプレイの中に、またはフロントプレーン積層板もしくは反転したフロントプレーン積層板(これらは、バックプレーンと組み合わされてディスプレイを形成する)の中に組み込まれる分散物へと組み込まれ得る。あるいは、上記混合物は、他の適用(例えば、印刷適用における電子写真トナーとしての使用のための組成物)において有用であり得る。
【0020】
電子写真またはゼログラフィーは、本明細書で使用される場合、基材上に画像を印刷する方法である。静電荷を含む潜像は、コーティングされたプレートまたはローラー上に形成され、続いて、(a)上記プレートまたはローラーの荷電した部分上に逆に荷電した粒子を付着させ、(b)上記荷電した粒子を基材上に移し、そして(c)上記粒子を、加熱することによって上記基材上に融合する。代表的な荷電した粒子は、カラー顔料、樹脂、および1つまたは1つより多くの電荷制御剤を含む。上記粒子は、「トナー」または「電子写真トナー」といわれる粉末の形態で使用され、ここで上記粉末は、特定の平均粒度を有する粒子を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、親水性部分および疎水性部分の両方を含む分子の「ヘッド基(head group)」は、上記分子のうちの親水性部分の官能基である。上記分子は、1個または1個より多くのヘッド基を有し得る。
【0022】
用語「分子量」または「MW」とは、本明細書で使用される場合、別段述べられなければ、重量平均分子量に言及する。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0023】
「補助官能基(ancillary functionality)」または「補助官能基(ancillary functional group)」とは、本明細書および請求項の全体を通じて使用される場合、電荷制御剤の非イオン性の極性官能基を意味する。「補助官能基」は、エステル基、ヒドロキシエステル基、三級アミド基、カルバメート基、非環式ウレア基、環式ウレア、環式アミド、環式アミド、および他の非イオン性極性官能基を含み得る。
【0024】
本発明の種々の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み得、上記第1の電荷制御剤は、カチオン性ヘッド基を含み、および式I:
【化6】
(ここでmは、0、1、2、または3であり;ここで各Rは、アルキル基およびアリール
基からなる群より独立して選択され;ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する。基Rは、メチル、エチル、プロピル、フェニルまたはベンジル基であり得る。1個より多くのアルキル基が、式Iの四級アンモニウム基のアミン原子に繋がれる場合、そのアルキル基は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、式Iは、トリメチルアンモニウムカチオン基、トリエチルアンモニウムカチオン基、ジメチルエチルアンモニウムカチオン基などを含み得る。基(Z)は、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などであり得る。基(Z)は、非分枝状の基-(CH-(ここでqは1~20であり得る)であり得る。あるいは、基(Z)は、分枝状アルカンジイル基(例えば、-CH(CH)CHCH-)であり得る。X部分は、種々の非イオン性の極性官能基(例えば、エステル基[-O-C(O)-]、ヒドロキシエステル基、チオエステル[-S-C(O)-]、三級アミド基[-N(アルキル)-C(O)-O-]、カルバメート基[-NH-C(O)-O-]または[-O-C(O)-NH-]、非環式ウレア基[-NH-C(O)-NH-]、環式ウレア、環式アミド、環式アミド、およびこれらの組み合わせを含み得る。
【0025】
あるいは、本発明の種々の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み得、上記第1の電荷制御剤は、カチオン性ヘッド基を含み、および式II,
【化7】
(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;R、Rは、アルキル基、アリール基、および基-[(Z)-X-HT]からなる群より独立して選択され;ここで式IIは、少なくとも1個の-[(Z)-X-HT]を含み;ここで基(Z)は、分枝状アルカンジイル基および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する。式IIによって表される化合物の1つの例において、RおよびRはともに、メチルである。上記基-(Z)-は、非分枝状または分枝状のメチリデン基であり得る。1つの例において、上記基-(Z)-は、-CHCH-である。別の例において、上記基-(Z)-は、-CHCHCH-である。上記X部分は、種々の非イオン性の極性官能基(例えば、エステル基、ヒドロキシエステル基、チオエステル、三級アミド基、カルバメート基、非環式ウレア基、環式ウレア、環式アミド、環式アミド、およびこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0026】
あるいは、本発明の種々の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み得、上記第1の電荷制御剤は、2個のカチオン性ヘッド基を含み、および式III,
【化8】
(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;ここでR、R、およびRは、アルキル基、アリール基、および基-[(Z)-X-HT]からなる群より独立して選択され;ここで式IIIは、少なくとも1個の-[(Z)-X-HT]基を含み;ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する。式IIIによって表される化合物の1つの例において、RおよびRはともに、メチルである。基-(Z)-は、非分枝状または分枝状のメチリデン基であり得る。1つの例において、上記基-(Z)-は、-CHCH-である。別の例において、上記基-(Z)-は、-CHCHCH-である。上記X部分は、種々の非イオン性の極性官能基(例えば、エステル基、ヒドロキシエステル基、チオエステル、三級アミド基、カルバメート基、非環式ウレア基、環式ウレア、環式アミド、環式アミド、およびこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0027】
あるいは、本発明の種々の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み得、上記第1の電荷制御剤は、カチオン性ヘッド基を含み、および式IV,
【化9】
(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;ここでR、R、およびRは、アルキル基、アリール基、および基-[(Z)-X-HT]からなる群より独立して選択され;ここで式IVは、少なくとも1個の-[(Z)-X-HT]基を含み;ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する。式IVによって表される化合物の1つの例において、RおよびRはともに、メチルである。基-(Z)-は、非分枝状または分枝状のメチリデン基であり得る。1つの例において、上記基-(Z)-は、-CHCH-である。別の例において、上記基-(Z)-は、-CHCHCH-である。上記X部分は、種々の非イオン性の極性官能基(例えば、エステル基、ヒドロキシエステル基、チオエステル、三級アミド基、カルバメート基、非環式ウレア基、環式ウレア、環式アミド、環式アミド、およびこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0028】
あるいは、本発明の種々の実施形態に従う混合物は、複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み得、上記第1の電荷制御剤は、カチオン性ヘッド基を含み、および式V,
【化10】
【0029】
(ここでRおよびR10は、アルキル基、アリール基、および基-[(Z)-X-HT]からなる群より独立して選択され;ここで式Vは、少なくとも1個の-[(Z)-X-HT]基を含み;ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そしてここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する。式Vによって表される化合物の1つの例において、基R10は、メチルである。別の例において、基R10は、エチルである。基-(Z)-は、非分枝状または分枝状のメチリデン基であり得る。1つの例において、上記基-(Z)-は、-CHCH-である。別の例において、上記基-(Z)-は、-CHCHCH-である。上記X部分は、種々の非イオン性の極性官能基(例えば、エステル基、ヒドロキシエステル基、チオエステル、三級アミド基、カルバメート基、非環式ウレア基、環式ウレア、環式アミド、環式アミド、およびこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0030】
電気泳動ディスプレイおよび他の分野において現在使用されるある特定の電荷制御剤(CCA)は、四級アンモニウムヘッド基、二級アミド-NH-C(O)-、および1つまたは1つより多くのポリマーテールを含む。代表的には、電気泳動ディスプレイの性能は、(1)電気泳動分散物中の電荷制御剤の相対的質量を調節すること;ならびに/または(2)イオン性ポリマーCCAおよび脂肪四級アンモニウム塩をブレンドすることによって電気泳動分散物の窒素含有量を調節すること、によって最適化される。上記電荷制御剤の化学構造に存在する補助官能基のタイプは従来、関連するとは考えられていなかった。
【0031】
驚くべきことに、本発明の発明者らは、顔料電荷が、カチオン性ヘッド基をも含む電荷制御剤の化学構造に存在する補助官能基のタイプの選択によって、影響を与えられて、制御され得ることを発見した。より具体的には、四級電荷制御剤の中に非環式二級アミド基以外の補助官能基を組み込むことで、電気泳動ディスプレイの性能が実質的に改変および改善される。
【0032】
本発明の種々の実施形態において使用される電荷制御剤は、モノ-四級アンモニウム物質に限定されない。その物質は、例えば、ビス-四級アンモニウム塩、トリス-四級アンモニウム塩などを含み得る。先に注記されるように、本発明の種々の実施形態に従って作製される上記分散物の中に組み込まれる電荷制御剤は、非環式二級アミド基に加えて、または非環式二級アミド基の代わりに補助官能基を含む。補助官能基は、非環式または環式の種々の環サイズのものであり得る。上記電荷制御剤の化学構造はまた、複数のタイプの補助官能基またはただ1つのタイプを含み得る。例えば、ビス-四級電荷制御剤(すなわち、1分子あたり2個の四級アミンヘッド基)は、一方のヘッド基と関連付けられる補助官能基として1個のウレア基、および他方のヘッド基と関連付けられる補助官能基として1個のエステルを含み得る。あるいは、エステル基(またはウレア基)は、ともに補助官能基として役立ち得る。さらに別の選択肢において、上記式I~Vにおける部分Xは、複数の補助官能基を含み得る;しかし、補助官能基のうちの一方(これは、上記ヘッド基に最も近い(すなわち、化学構造内でより近位にある))が、非環式二級アミド基以外の補助官能基であることは、好ましい。
【0033】
カチオン性ヘッド基、および非環式二級アミド基以外の補助官能基を含む電荷制御剤の化学構造の例としては、以下の構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【化11】
【化12】
【0034】
より具体的な例としては、式VII~XIIIによって表される以下の構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【化13】
【化14】
【化15】
【0035】
本発明の種々の実施形態において組み込まれる電荷制御剤を作製するための合成手順は、所望の官能基分布を提供するために任意の多くの方法で考案され得る。例えば、カチオン性ヘッド基および補助官能基を含む2つもしくは2つより多くのモノマーが、疎水性のオリゴマー性もしくはポリマー性テールを形成するために、1つもしくは1つより多くのモノマーまたはオリゴマーと共重合され得る。あるいは、上記電荷制御剤は、最初の電荷制御活性が、補助官能基の組み込みまたは改変の結果として変化させられる改変後技術によって調製され得る。本発明の種々の実施形態に従う混合物は、異なる電荷制御剤のブレンドを含み得る。例えば、いくらかのブレンドは、2つまたは2つより多くの電荷制御剤を含み得、ここで上記電荷制御剤のうちの少なくとも一方は、非環式二級アミド基以外の補助官能基と関連付けられる1つまたは1つより多くのカチオン性ヘッド基を有する。
【0036】
上記電荷制御剤の化学構造はまた、オリゴマー性またはポリマー性テールを含む、複数の疎水性部分を含み得る。上記オリゴマー性またはポリマー性テールは、分子量および疎水性を変動させるための1つもしくは1つより多くの異なるモノマーおよび/もしくはオリゴマーから得られ得、直線状であり得るか、または種々の程度の分枝を有し得る。式I~Vの疎水性部分HTは、オリゴマー性またはポリマー性テールであり得る。上記電荷制御剤が、分散物を含む電気泳動媒体の中に含まれる場合、上記疎水性部分は、好ましくは、上記分散物流体と適合性である。いくつかの実施形態において、上記疎水性オリゴマー性またはポリマー性テールは、不飽和であり得る、すなわち、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有し得る。上記オリゴマー性またはポリマー性疎水性テールは、リシノール酸およびイソブチレンが挙げられるが、これらに限定されない1つまたは1つより多くのモノマーから得られ得る。
【0037】
本発明のCCAの疎水性部分HTは、官能基A(ここでその官能基Aは、別の分子G-(Z)-Yの官能基Yと反応し得る)を有する試薬A-B(これは、便宜上、本明細書でCCA前駆体として言及される)の間の反応から形成され得る。その反応スキームは、式1に例証される:
【化16】
基(Z)は、得られるCCAの連結基に相当し、この連結基は、CCAの四級アンモニウム基と、非イオン性の極性官能基Xとを連結する。便宜上および単純にするために、Gは、上記連結基に繋がれるCCA前駆体の一部を表す。Gは、試薬A-Bと反応し得る1つまたは1つより多くのさらなる官能基Y(または他の反応性官能基)を含み得る。
【0038】
官能基Aと官能基Yとの間の反応は、縮合反応であり得る。それはまた、付加反応であり得る。例えば、官能基Aは、カルボン酸、カルボン酸無水物、アシルハライド、またはエポキシであり得る。これらの官能基は、上記CCA前駆体の
官能基Yと反応し得、ここでYは、ヒドロキシ、アミン、またはチオールであり得る。当然のことながら、CCAが疎水性部分HTを含むために、試薬A-Bはまた、疎水性基を含まなければならない。試薬A-Bはまた、モノマーであり得る。これは、疎水性ポリマーを提供するために重合され得る。例えば、試薬A-Bは、ヒドロキシ脂肪酸(例えば、ポリ(リシノール酸)へと重合されるリシノール酸)であり得る。あるいは、官能基Aは
、ヒドロキシ、アミン、またはチオールであり得、官能基Yは、カルボン酸、カルボン酸無水物、アシルハライド、またはエポキシであり得る。
【0039】
1つの実施形態において、上記HT疎水性部分は、CCA前駆体のY官能基および2つまたは2つより多くのモノマーの反応から形成され得る。1つの例において、上記Y官能基は、ヒドロキシ基である。上記2つのモノマーは、モノヒドロキシ,モノカルボン酸およびジヒドロキシ,モノカルボン酸であり得る。上記2つのモノマーの重合および上記CCA前駆体のヒドロキシ基との反応は、1つまたは1つより多くの分枝を有するポリエステル疎水性基を有するCCAをもたらす。このようなCCAの具体例は、(a)3-(ジメチルアミノ)-1-プロパノールと、(b)リシノール酸と、(c)2,2-ジメチロールプロピオン酸[CHC(CHOH)COOH]との間の縮合反応から形成され得る。
【0040】
試薬A-Bは、2つまたは2つより多くの基Aを含み得る。また、2つまたは2つより多くのモノマー試薬の混合物は、同じ調製物の中で使用され得る。これは、それらの疎水性HT部分における種々のポリマー構成の異なるCCAの調製を可能にし得る。
【0041】
試薬(A-B)として役立ち得る脂肪酸クラスの非限定的な例は、直線状の飽和脂肪酸、分枝状の飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸である。直線状の飽和脂肪酸は、約10~約35個の炭素原子のアルキル鎖を含み得る。分枝状の飽和脂肪酸の非限定的な例としては、約10個の炭素原子から約35個の炭素原子までを含むイソアルキル基を含む脂肪酸、約10個の炭素原子から約35個の炭素原子までを含むアンテイソアルキル基を含む脂肪酸、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカン酸、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン酸、4,8,12-トリメチルトリデカン酸、13,13-ジメチルテトラデカン酸、および10-メチルオクタデカン酸が挙げられる。イソ脂肪酸は、ω-2位置においてアルキル分枝を有する脂肪酸である。アンテイソ脂肪酸は、ω-2位置においてアルキル分枝を有する脂肪酸である。不飽和脂肪酸は、約10個の炭素原子から約35個の炭素原子までおよび1つまたは1つより多くの炭素-炭素二重結合を有する炭化水素鎖を含み得る。不飽和脂肪酸の非限定的な例としては、オレイン酸、パルミトレイン酸、ミリストレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノエライジン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、7-メチル-7-ヘキサデカン酸、およびドコサヘキサエン酸が挙げられる。
【0042】
疎水性ポリマーを提供するために重合され得るモノマー試薬(A-B)として役立ち得るヒドロキシ脂肪酸クラスの非限定的な例は、約6個の炭素原子から約35個の炭素原子までおよび1つまたは1つより多くのヒドロキシ基を含む炭化水素鎖を有する飽和脂肪酸、ならびに約6個の炭素原子から約35個の炭素原子まで、1つまたは1つより多くの炭素-炭素結合、および1つまたは1つより多くのヒドロキシ基を含む炭化水素鎖を有する不飽和脂肪酸である。このようなヒドロキシ脂肪酸の非限定的な例は、リシノール酸、w-ヒドロキシ-6-ドデセン酸、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカン酸、9,12,13-トリヒドロキシ-1-オクタデセン酸、9-ヒドロキシ-10,12-オクタデカジエン酸、13-ヒドロキシ-9,11-オクタデカジエン酸、8-ヒドロキシステアリン酸、2-ヒドロキシ-15-メチルヘキサン酸、3-ヒドロキシ-15-メチルヘキサン酸、ω-ヒドロキシ-6-ドデセン酸、2-ヒドロキシ-13-メチルテトラデカン酸、および2-ヒドロキシ-13-メチルテトラデカン酸である。
【0043】
1つの実施形態において、上記-X-HT基は、式XIVに示されるように、疎水性基R11を含むイミド基であり得る。
【化17】
これは、上記CCA前駆体G-(Z)n-Yとのその反応後に、相当するコハク酸無水物試薬A-B(疎水性置換基R11を有する)によって形成され得、ここで反応性官能基Yは、アミンである。上記疎水性前駆体G-(Z)n-Y(ここで反応性官能基Yは、アミンである)。上記疎水性置換基R11は、約10~約35個の炭素原子を含むアルキル基であり得る。上記アルキル基はまた、1個もしくは1個より多くのアルキル鎖および/または1個もしくは1個より多くの炭素-炭素二重結合を含み得る。あるいは、上記疎水性置換基は、ヒドロキシカルボン酸(例えば、リシノール酸)の重合によって形成されるオリゴエステルまたはポリエステル基であり得る。
【0044】
複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み、ここで上記電荷制御剤が、式I~Vによって表される本発明の混合物はまた、第2の電荷制御剤を含み得る。上記第2の電荷制御剤は、1つまたは1つより多くのアニオン性ヘッド基、および疎水性部分を含み得る。アニオン性ヘッド基の非限定的な例は、カルボン酸アニオン、スルホネートアニオン、スルフェートアニオン、ホスフェートアニオン、およびホスホネートアニオンである。上記第2の電荷制御剤は、非イオン性ヘッド基および疎水性部分を含み得る。非イオン性ヘッド基の非限定的な例は、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリプロピレングリコール、およびグルコシドである。上記第2の電荷制御剤は、カチオン性ヘッド基および疎水性部分を含み得る。カチオン性ヘッド基の非限定的な例は、アンモニウム塩(例えば、四級アンモニウム塩)である。上記第2の電荷制御剤は、アニオン性、非イオン性、またはカチオン性のヘッド基に加えて、アミド基を含み得る。上記第2の電荷制御剤は、カチオン性ヘッド基(例えば、四級アンモニウム塩)、非環式二級アミド官能基、および疎水性部分を含み得る。(a)四級アンモニウム塩、(b)非環式二級アミド官能基および(c)疎水性部分を含む第2の電荷制御剤の例としては、以下の式XV,
【化18】
(ここで各R21、R22、R23は、アルキル基およびアリール基からなる群より独立して選択され、ここでvは、20未満または20に等しい整数であり、そしてここでHTは、疎水性部分である)
によって表される物質が挙げられる。上記疎水性部分HTは、ポリエステルを含み得る。上記疎水性部分HTは、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)、ポリ(リシノール酸)、ポリ(イソブチレン)、および非分枝状または分枝状のアルキル基からなる群より選択される官能基を含み得、ここで上記非分枝状または分枝状のアルキル基は、約10~約35個の炭素原子を含む。1つの例において、R21、R22、R23は、メチル基であり、vは、3であり、HTは、ポリ(リシノール酸)である。別の例において、R21、R22、R23は、メチル基であり、vは、2であり、HTは、ポリ(リシノール酸)である。
【0045】
複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含み、ここで上記電荷制御剤が、式I~Vによって表される本発明の混合物はまた、第2の電荷制御剤を含み得る。上記第2の電荷制御剤は、以下の式XVIおよびXVIIによって表され得、ここでHTは、疎水性部分である。上記疎水性部分HTは、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)、ポリ(リシノール酸)、ポリ(イソブチレン)、および非分枝状または分枝状のアルキル基からなる群より選択される官能基を含み得、ここで上記非分枝状または分枝状のアルキル基は、約10~約35個の炭素原子を含む;
【化19】
【0046】
上記電荷制御剤は、100gの荷電した粒子あたり1gより多くの電荷制御剤という濃度で、荷電した顔料粒子の分散物(例えば、電気泳動媒体)に添加され得る。上記電荷制御剤は、1,000グラム/モルより大きい、例えば、2,000グラム/モルより大きい、例えば、3,000グラム/モルより大きい、例えば、4,000グラム/モルより大きい、例えば、5,000グラム/モルより大きい、例えば、6,000グラム/モルより大きい、例えば、7,000グラム/モルより大きい、例えば、8,000グラム/モルより大きい、例えば、9,000グラム/モルより大きい、例えば、10,000グラム/モルより大きい重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0047】
多くの実施形態において、本発明の種々の実施形態に従う混合物に含まれる電荷制御剤は、上記混合物中の粒子の表面上に吸着し、その粒子上の電荷を変動させる。しかし、本発明は、吸着されるCCAに限定されず、荷電した粒子および所望の性能を与えるCCAを含む任意の混合物が適切である。例えば、上記CCAは、荷電した粒子と錯体化されても、上記粒子の中に吸収されてもよいし、それらは、上記粒子の表面に共有結合されてもよい。上記粒子および上記CCAは、電荷錯体(charge complex)の中に存在してもよいし、ファン・デル・ワールス力を介して緩く会合していてもよい。
【0048】
先に記載されるように、非環式二級アミド基以外の補助官能基を有するカチオン性電荷制御剤は、本発明の実施形態に従って作製される種々の混合物の中で、非環式二級アミドを有するカチオン性電荷制御剤の別のタイプとブレンドされ得る。カチオン性電荷制御剤の他のタイプは、精製形態で購入されてもよいし、上記電荷制御剤は、四級アミン電荷制御剤を形成した反応生成物として購入されてもよい。例えば、SOLSPERSE 17000(Lubrizol Corporation)は、12-ヒドロキシ-オクタデカン酸ホモポリマーとN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンおよび重硫酸メチルとの反応生成物として購入され得る。
【0049】
電気泳動媒体に関して、さらなる電荷制御剤は、本発明の種々の実施形態に従う混合物の中に含まれる電気泳動粒子に、良好な電気泳動移動度を提供するために使用され得る。安定化剤は、上記電気泳動粒子の凝集を防止する、および媒体がカプセル内にカプセル化
される場合に、電気泳動粒子がカプセル壁上に不可逆的に沈積することを防止するために、使用され得る。いずれの構成要素も、広い範囲の分子量(低分子量、オリゴマー性、またはポリマー性)にわたる物質から構築され得、単一の純粋化合物または混合物であり得る。必要に応じた電荷制御剤または電荷ディレクター(charge director)が使用され得る。これらの成分は、代表的には、低分子量界面活性剤、ポリマー因子、または1つもしくは1つより多くの構成要素のブレンドからなり、上記電気泳動粒子上の電荷を安定化するか、またはその信号および/または大きさを別の方法で改変するために役立つ。関連し得るさらなる顔料特性は、粒度分布、化学的組成、および耐光性である。
【0050】
電荷補助剤(charge adjuvant)はまた、本発明の種々の実施形態に従う混合物に添加され得る。これらの物質は、電荷制御剤または電荷ディレクターの効果を増大させる。上記電荷補助剤は、ポリヒドロキシ化合物またはアミノアルコール化合物であり得、好ましくは、少なくとも2重量%の量で懸濁流体中に可溶性である。少なくとも2個のヒドロキシル基を含むポリヒドロキシ化合物の例としては、エチレングリコール、2,4,7,9-テトラメチルデシン-4,7-ジオール、ポリ(プロピレングリコール)、ペンタエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、グリセロールトリス(12-ヒドロキシステアレート)、プロピレングリセロールモノヒドロキシステアレート、およびエチレングリコールモノヒドロキシステアレートが挙げられるが、これらに限定されない。同じ分子の中に少なくとも1個のアルコール官能基および1個のアミン官能基を含むアミノアルコール化合物の例としては、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、o-アミノフェノール、5-アミノ-1-ペンタノール、およびテトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。上記電荷補助剤は、好ましくは、粒子質量の約1~約100ミリグラム/グラム(「mg/g」)、より好ましくは約50~約200mg/gの量で懸濁流体中に存在する。
【0051】
本発明の種々の実施形態に従う荷電した粒子CCA錯体を含む混合物は、先に記載された電気泳動ディスプレイのタイプ(すなわち、単一粒子、反対電荷二重粒子、同極性二重粒子および分散したポリマー)の全てにおいて有利に使用され得る。記載される荷電した粒子CCA錯体は、粒子の1タイプのみ(例えば、変速機ウインドウ(variable
transmission window)において使用される)を有する電気泳動媒体を構築するために使用され得る。記載される荷電した粒子CCA錯体は、黒/白ディスプレイ(すなわち、黒粒子および白粒子を含む)において使用されるべき電気泳動媒体を構築するために使用され得る。記載される荷電した粒子CCA錯体は、カラーディスプレイ(すなわち、例えば、3種、4種、5種、6種、7種、または8種の異なるタイプの粒子を含む)において使用されるべき電気泳動媒体を構築するために使用され得る。例えば、上記粒子が黒、白、および赤または黒、白、および黄色を含むディスプレイが、構築され得る。あるいは、上記ディスプレイは、赤、緑、および青の粒子、またはシアン、マゼンタ、および黄の粒子、または赤、緑、青、および黄の粒子を含み得る。
【0052】
電気泳動ディスプレイ適用のために、本発明の種々の実施形態に従う粒子および電荷制御剤の混合物は、懸濁流体中に分散され得、カプセル型電気泳動媒体を提供するためにカプセル化され得、これは、ディスプレイへと組み込まれ得る。本発明の種々の実施形態に従って作製される電気泳動媒体は、前述のMassachusetts Institute of TechnologyおよびE Ink Corporationの特許および出願におけるものと同じ構成要素および製造技術を使用し得る。
【0053】
例えば、上記粒子を含む懸濁流体は、密度、屈折率、および溶解度のような特性に基づいて選択されるべきである。好ましい懸濁流体は、低誘電率(約2)、高体積抵抗率(約
1015 Ω-cm)、低粘性(5センチストークス(「cst」)未満)、低い毒性および環境への影響、低水溶性(10パーツパーミリオン(「ppm」)未満)、高沸点(90℃超)、および低屈折率(1.2未満)を有する。
【0054】
非極性流体の選択は、化学的不活性、電気泳動粒子にマッチする密度、または電気泳動粒子および境界をなすカプセル(bounding capsule)の両方との化学的適合性(カプセル型電気泳動ディスプレイの場合)という考慮事項に基づき得る。上記流体の粘性は、上記粒子の動きが望ましい場合には低くあるべきである。上記懸濁流体の屈折率はまた、上記粒子のものに実質的にマッチしていてもよい。本明細書で使用される場合、懸濁流体の屈折率は、それらそれぞれの屈折率の間の差異が約0~約0.3との間であり、好ましくは約0.05~約0.2の間である場合に、粒子の屈折率に「実質的にマッチしている」。
【0055】
非極性有機溶媒(例えば、ハロゲン化有機溶媒、飽和直線状または分枝状炭化水素、シリコーン油、および低分子量ハロゲン含有ポリマー)は、いくつかの有用な非極性流体である。上記非極性流体は、単一の流体を含み得る。しかし、上記非極性流体はしばしば、その化学的および物理的特性を調整するために、1つより多くの流体のブレンドである。さらに、上記非極性流体は、電気泳動粒子または境界をなすカプセルの表面エネルギーまたは電荷を改変するためにさらなる表面改変因子を含み得る。マイクロカプセル化プロセスのための反応物または溶媒(例えば、油溶性モノマー)はまた、上記懸濁流体中に含まれ得る。さらなる電荷制御剤はまた、上記懸濁流体に添加され得る。
【0056】
有用な有機溶媒としては、エポキシド(例えば、デカンエポキシドおよびドデカンエポキシド);ビニルエーテル(例えば、シクロヘキシルビニルエーテルおよびDecave(International Flavors & Fragrances, Inc.(New York, N.Y.)の登録商標);および芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびナフタレン)が挙げられるが、これらに限定されない。有用なハロゲン化有機溶媒としては、テトラフルオロジブロモエチレン、テトラクロロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、1,2,4-トリクロロベンゼンおよび四塩化炭素が挙げられるが、これらに限定されない。これらの物質は、高密度を有する。有用な炭化水素としては、ドデカン、テトラデカン、Isopar(登録商標)シリーズ(Exxon, Houston, Tex.)、Norpar(登録商標)(直鎖パラフィン液体のシリーズ)、Shell-Sol(登録商標)(Shell, Houston, Tex.)、およびSol-Trol(登録商標)(Shell)の脂肪族炭化水素、ナフサ、ならびに他の石油系溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。これらの物質は通常、低密度を有する。シリコーン油の有用な例としては、オクタメチルシクロシロキサンおよびより高分子量の環式シロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ヘキサメチルジシロキサン、ならびにポリジメチルシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの物質は通常、低密度を有する。有用な低分子量ハロゲン含有ポリマーとしては、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)ポリマー(Halogenated Hydrocarbon Inc., River Edge, N.J.)、Galden(登録商標)(Ausimont(Morristown, N.J.)の過フッ素化エーテル)、またはdu
Pont(Wilmington, Del.)製のKrytox(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、上記懸濁流体は、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)ポリマーである。特に好ましい実施形態において、このポリマーは、約2~約10の重合度を有する。上記の物質のうちの多くは、ある範囲の粘性、密度、および沸点の中で利用可能である。
【0057】
上記非極性流体は、カプセルが形成される前に小さな液滴へと形成される能力がなければならない。小さな液滴を形成するためのプロセスとしては、フロースルージェット(f
low-through jet)、膜、ノズル、またはオリフィス、ならびに剪断ベースの乳化スキームが挙げられる。小滴の形成は、電場または音波場(sonic field)によって補助され得る。界面活性剤およびポリマーは、エマルジョンタイプカプセル化の場合に液滴の安定化および乳化を補助するために使用され得る。本発明のディスプレイにおける使用のための1つの界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムである。
【0058】
いくつかの実施形態において、上記非極性流体は、光吸収性色素を含む。この色素は、流体中で可溶性でなければならないが、上記カプセルの他の構成要素の中では概して不溶性である。色素物質の選択には、非常に融通性がある。上記色素は、特定のカラー(黒を含む)を達成するために、純粋化合物、または色素のブレンドであり得る。上記色素は、蛍光性であり得、これは、蛍光特性が上記粒子の位置に依存するディスプレイを生成する。上記色素は、光反応性であって、可視光または紫外線のいずれかで照射した際に別のカラーに変化するかまたは無色になり得、光学的応答を得るための別の手段を提供する。色素はまた、例えば、熱、光化学または化学拡散プロセスによって重合可能であり得、境界をなすシェルの内部に固体吸収性ポリマーを形成する。
【0059】
カプセル型電気泳動ディスプレイにおいて使用され得る多くの色素が存在する。ここで重要な特性としては、耐光性、懸濁液体中での溶解度、カラーおよびコストが挙げられる。これらの色素は概して、アゾ、アントラキノン、およびトリフェニルメタンタイプの色素のクラスから選択され、油相中でのそれらの溶解度を増大させ、粒子表面によるそれらの吸着を低減させるために、化学的に改変され得る。
【0060】
電気泳動ディスプレイの当業者に既に公知の多くの色素は、有用であると判明する。有用なアゾ色素としては、Oil Red色素、ならびにSudan RedおよびSudan Blackシリーズの色素が挙げられるが、これらに限定されない。有用なアントラキノン色素としては、Oil Blue色素、およびMacrolex Blueシリーズの色素が挙げられるが、これらに限定されない。有用なトリフェニルメタン色素としては、Michler’s hydrol、Malachite Green、Crystal Violet、およびAuramine Oが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
一般に、荷電は、連続相に存在するある部分と粒子表面との間の酸-塩基反応として生じると考えられる。従って、有用な物質は、このような反応において、または当該分野で公知の任意の他の荷電反応として、関与し得るものである。
【0062】
粒子分散安定化剤は、粒子の凝集またはカプセル壁への付着を防止するために添加され得る。電気泳動ディスプレイにおいて懸濁流体として使用される代表的な高抵抗性流体に関して、非水性界面活性剤が使用され得る。これらとしては、グリコールエーテル、アセチレングリコール、アルカノールアミド、ソルビトール誘導体、アルキルアミン、四級アミン、イミダゾリン、ジアルキルオキシド、およびスルホスクシネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
双安定性の電気泳動媒体が望ましい場合、上記懸濁流体中に、約20,000超の数平均分子量を有するポリマーを含めることは、望ましいことであり得、このポリマーは、電気泳動粒子に対して本質的に非吸収性である;ポリ(イソブチレン)は、この目的に好ましいポリマーである。2002年4月2日出願の出願番号第10/063,236号(公開番号2002/0180687;この同時係属中の出願の全開示は、本明細書に参考として援用される)、およびその対応国際出願番号PCT/US02/10267(公開番号WO 02/079869)を参照のこと。
【0064】
用語、双安定性の(bistable)および双安定性(bistability)は、当該分野でそれらの従来の意味において使用される。その用語は、少なくとも1つの光学的特性において異なる第1のディスプレイ状態および第2のディスプレイ状態を有するディスプレイ要素を含むディスプレイであって、その結果、任意の所定の要素が、有限の継続時間のアドレス指定パルスによって、その第1または第2のディスプレイ状態のいずれかをとるように駆動された後に、アドレス指定パルスが終了した後に、その状態が、ディスプレイ要素の状態を変化させるために必要とされるアドレス指定パルスの最小の継続時間を、少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍持続するディスプレイに言及する。グレースケールの能力があるいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの両端の黒および白の状態におけるのみならず、それらの中間のグレー状態においても安定であり、それが、電気光学式ディスプレイのいくつかの他のタイプにも該当することは、米国特許第7,170,670号に示される。このタイプのディスプレイは、正確には、双安定性というよりむしろマルチ安定性と称されるが、便宜上、用語双安定性は、双安定性ディスプレイおよびマルチ安定性ディスプレイ両方を網羅するために、本明細書で使用される。
【0065】
用語グレースケールは、画像化分野でその従来の意味において本明細書で使用される。その用語は、画素の2つの端の光学的状態の中間の状態に言及し、これら2つの端の状態の間の黒-白遷移(black-white transition)を必ずしも示唆しない。例えば、前述のE Ink特許および公開された出願のうちのいくつかは、その端の状態が白および深青色であり、その結果、中間のグレー状態が実際には淡青色である電気泳動ディスプレイを記載する。実際には、既に言及されるように、光学的状態における変化は、色の変化では全くない可能性がある。用語黒および白は、本明細書中以降、ディスプレイのその2つの端の光学的状態に言及するために使用され得、通常は、厳密には黒および白でない端の光学的状態(例えば、前述の白および深青色状態)を含むと理解されるべきである。
【0066】
次いで、上記懸濁流体、粒子、および電荷制御剤を含む分散物は、カプセル化され得る。カプセル型電気泳動ディスプレイは代表的には、旧来の電気泳動デバイスの密集化および沈降の失敗モードを被らず、さらなる利点(例えば、広く種々の可撓性および剛性の基材上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力)を提供する(語句印刷の使用は、以下が挙げられるが、これらに限定されない印刷およびコーティングの全ての形態を含むことが意図される:前計量コーティング(pre-metered coatings)(例えば、パッチダイコーティング、スロットコーティングまたは押し出しコーティング、スライドコーティングまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング);ロールコーティング(例えば、ナイフオーバーロールコーティング、フォワード・リバースロールコーティング(forward and reverse roll coating));グラビアコーティング;ディップコーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;ブラシコーティング;エアナイフコーティング;シルクスクリーン印刷プロセス;静電印刷プロセス;サーマルプリンティングプロセス;インクジェット印刷プロセス;電気泳動析出(米国特許第7,339,715号を参照のこと);ならびに他の類似技術。従って、得られるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、上記ディスプレイ媒体は(種々の方法を使用して)印刷され得ることから、上記ディスプレイ自体は、安価に作製され得る。
【0067】
上記電気泳動媒体のカプセル化は、多くの異なる方法で達成され得る。マイクロカプセル化のための多くの適切な手順は、Microencapsulation, Processes and Applications(I. E. Vandegaer,編), Plenum Press, New York, N.Y. (1974)およびGutcho, Microcapsules and Microencapsul
ation Techniques, Noyes Data Corp., Park
Ridge, N.J. (1976)の両方において詳述されている。上記プロセスは、いくつかの包括的カテゴリーの中に入り、それらのうちの全てが、本発明に適用され得る: 界面重合、インサイチュ重合、物理的プロセス(例えば、同時押し出しおよび他の相分離プロセス、液中硬化(in-liquid curing)、および単純/複合コアセルベーション)。
【0068】
多くの物質およびプロセスが、本発明のディスプレイを組み立てるにあたって有用であると判明するはずである。カプセルを形成するための単純コアセルベーションプロセスに有用な物質としては、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、およびセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースのような)が挙げられるが、これらに限定されない。複合コアセルベーションプロセスに有用な物質としては、ゼラチン、アカシア、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、加水分解スチレン無水物コポリマー、アガー、アルギネート、カゼイン、アルブミン、メチルビニルエーテルco-マレイン酸無水物、およびセルロースフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。相分離プロセスに有用な物質としては、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、エチルセルロース、ポリ(ビニルピリジン)、およびポリアクリロニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。インサイチュ重合プロセスに有用な物質としては、ポリヒドロキシアミド(アルデヒド、メラミン、またはウレアおよびホルムアルデヒドを伴う);メラミン、またはウレアおよびホルムアルデヒドの縮合の水溶性オリゴマー;ならびにビニルモノマー(例えば、スチレン、メチルメタクリレート(MMA)およびアクリロニトリルのような)が挙げられるが、これらに限定されない。最後に、界面重合プロセスに有用な物質としては、ジアシルクロリド(例えば、セバコイル、アジポイルのような)、およびジアミンもしくはポリアミンまたはアルコール、ならびにイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。有用な乳化重合物質としては、スチレン、ビニルアセテート、アクリル酸、ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、およびブチルメタクリレートが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0069】
生成されるカプセルは、硬化性キャリアへと分散され得、従来の印刷およびコーティング技術を使用して、大きなおよび任意の形状にしたまたは硬化した表面上に印刷またはコーティングされ得るインクを生じる。
【0070】
本発明の文脈において、当業者は、所望のカプセル特性に基づいて、カプセル化手順および壁物質を選択する。これらの特性は、カプセル半径の分布;上記カプセル壁の電気的、機械的、拡散、および光学的特性;ならびに上記カプセルの内部相との化学的適合性が挙げられる。
【0071】
上記カプセル壁は、概して、高い電気抵抗性を有する。比較的低い抵抗性を有する壁を使用することは可能であるが、これは、比較的より高いアドレス指定電圧を要求することにおいて性能を制限し得る。上記カプセル壁はまた、機械的に強くすべきである(が、最終のカプセル粉末がコーティングのための硬化性ポリマー結合剤の中に分散されるべき場合に、機械的強さは、さほど重要ではない)。上記カプセル壁は、概して多孔性ではないようにするべきである。しかし、多孔性カプセルを生成するカプセル化手順を使用することが望ましい場合、これらは、プロセス後工程においてオーバーコーティングされ得る(すなわち、第2のカプセル化)。さらに、上記カプセルが、硬化性結合剤の中で分散されるべき場合、上記結合剤は、上記孔を閉じるために役立つ。上記カプセル壁は、光学的に透明であるべきである。しかし、上記壁物質は、上記カプセルの内部相(すなわち、懸濁流体)または上記カプセルが分散されるべき結合剤の屈折率をマッチさせるように選択され得る。いくつかの適用(例えば、2つの固定された電極の間に介在させる)に関しては
、単分散性のカプセル半径が望ましい。
【0072】
本発明に適合されるカプセル化技術は、負に荷電したカルボキシル置換された直線状の炭化水素高分子電解質物質の存在下で、油/水エマルジョンの水相でのウレアとホルムアルデヒドとの間の重合を含む。得られるカプセル壁は、ウレア/ホルムアルデヒドコポリマーであり、これは、内部相を不連続に取り囲む。上記カプセルは透明であり、機械的に強く、良好な抵抗性特性を有する。
【0073】
インサイチュ重合の関連技術は、上記電気泳動流体(すなわち、顔料粒子の懸濁物を含む誘電性液体)を水性環境に分散させることによって形成される油/水エマルジョンを利用する。上記モノマーは重合して、上記水相に関してよりも内部相に関してより高い親和性を有するポリマーを形成し、従って、乳化した油性液滴の周りで縮合する。1つのインサイチュ重合プロセスにおいて、ウレアおよびホルムアルデヒドは、ポリ(アクリル酸)の存在下で縮合する(例えば、米国特許第4,001,140号を参照のこと)。米国特許第4,273,672号に記載される他のプロセスにおいて、水性溶液中に含まれる任意の種々の架橋剤は、微小油性液滴の周りに沈積される。このような架橋剤としては、アルデヒド(特にホルムアルデヒド、グリオキサール、またはグルタルアルデヒド);ミョウバン;ジルコニウム塩;およびポリイソシアネートが挙げられる。
【0074】
コアセルベーションアプローチはまた、油/水エマルジョンを利用する。1つまたは1つより多くのコロイドは、上記水相からコアセルベートされ(すなわち、凝集され)、温度、pHおよび/または相対濃度の制御を通じて、油性液滴の周りにシェルとして沈積され、それによって、マイクロカプセルを作り出す。コアセルベーションのために適した物質としては、ゼラチンおよびアラビアガムが挙げられる。例えば、米国特許第2,800,457号を参照のこと。
【0075】
界面重合アプローチは、電気泳動組成物における油溶性モノマーの存在に依拠し、このモノマーは、水性相にエマルジョンとして再び存在する。微小な疎水性液滴中のモノマーは、上記水性相に導入されるモノマーと反応し、上記液滴とその周りの水性媒体との間の界面で重合し、液滴に周りにシェルを形成する。得られた壁は、比較的薄くて浸透性であり得るが、このプロセスは、いくつかの他のプロセスに特徴的な高温を必要とせず、従って、誘電性液体を選択するという点でより大きな融通性を与える。
【0076】
さらなる物質は、電気泳動ディスプレイの構築を改善するためにカプセル型媒体に添加され得る。例えば、コーティング補助物質(coating aid)は、コーティングされたまたは印刷された電気泳動インク物質の均質性および品質を改善するために使用され得る。湿潤剤は、コーティング/基材界面において界面張力を調節する、および液体/空気表面張力を調節するために添加され得る。湿潤剤としては、アニオン性およびカチオン性の界面活性剤、ならびに非イオン性種(例えば、シリコーンまたはフルオロポリマーベースの物質)が挙げられるが、これらに限定されない。分散剤は、上記カプセルと結合剤との間の界面張力を改変するために使用され得、凝集および粒子沈降に対する制御を提供する。
【0077】
前述の特許および出願のうちの多くは、カプセル型電気泳動媒体中の不連続のマイクロカプセルの周りの壁が、連続相によって置き換えられ得、従って、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の不連続液滴およびポリマー物質の連続相を含む、いわゆるポリマー分散型電気泳動ディスプレイを生成し、このようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の不連続液滴が、不連続のカプセル膜が各個々の液滴と会合していないとしても、カプセルまたはマイクロカプセルとみなされ得ることを認識する;例えば、米国特許第6,866,760号を参照のこと。よって、本出願の目的のために、このようなポ
リマー分散型電気泳動媒体は、カプセル型電気泳動媒体の亜種とみなされる。
【0078】
電気泳動ディスプレイの関連するタイプは、いわゆるマイクロセル電気泳動ディスプレイである。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいて、荷電した粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されるのではなく、代わりに、キャリア媒体(代表的には、ポリマーフィルム)内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、米国特許第6,672,921号および同第6,788,449号(ともに、Sipix Imaging, Inc.に譲渡)を参照のこと。マイクロセルが電気泳動媒体で一旦充填されると、上記マイクロセルは密封され、電極(または電極アレイ)が、そのマイクロセルに貼り付けられ、その充填されたマイクロセルは、ディスプレイを作り出すように電場で駆動される。
【0079】
例えば、米国特許第6,930,818号に記載されるように、オス型は、導電性基材を押すために使用され得、その基材の上に、透明な導電性フィルムが形成される。次いで、熱可塑性または熱硬化性前駆体の層は、上記導電性フィルム上にコーティングされる。上記熱可塑性または熱硬化性前駆体の層は、ローラー、プレートまたはベルトの形態にあるオス型によって、上記熱可塑性または熱硬化性前駆体の層のガラス転移温度より高い温度でエンボス加工される。一旦形成されると、その型は、上記前駆体層が硬化されて、マイクロセルのアレイを現す間にまたはその後に離型される。上記前駆体層の硬化は、冷却、照射による架橋、熱または水分によって達成され得る。上記熱硬化性前駆体の硬化が、UV照射によって達成される場合、UVは、透明な導電性フィルム上に、2つの図面において示されるとおりのウェブの底または上から照射し得る。あるいは、UVランプは、上記型の内側に配置され得る。この場合、上記型は、UV光が予めパターン形成したオス型を通過して熱硬化性前駆体層上へと照射することを可能にするように、透明でなければならない。
【0080】
上記マイクロセルの調製のための熱可塑性または熱硬化性前駆体は、多官能性アクリレートまたはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシドおよびそれらのオリゴマー、ポリマーなどであり得る。可撓性を付与する架橋可能なオリゴマー(例えば、ウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレート)はまた、通常、エンボス加工されたマイクロセルの耐屈曲性を改善するために添加される。上記組成物は、ポリマー、オリゴマー、モノマーおよび添加剤、またはオリゴマー、モノマーおよび添加剤のみを含み得る。
【0081】
一般に、上記マイクロセルは、任意の形状のものであり得、それらのサイズおよび形状は、変動し得る。上記マイクロセルは、1つのシステムにおいて実質的に均質なサイズおよび形状のものであり得る。しかし、光学的効果を最大化するために、異なる形状およびサイズの混合物を有するマイクロセルが生成され得る。例えば、赤カラーの分散物で充填されたマイクロセルは、緑のマイクロセルまたは青のマイクロセルとは異なる形状またはサイズを有し得る。さらに、画素は、異なるカラーの異なる数のマイクロセルからなり得る。例えば、画素は、多くの小さな緑のマイクロセル、多くの大きな赤のマイクロセル、および多くの小さな青のマイクロセルからなり得る。その3色に関して同じ形状および数を有する必要はない。
【0082】
上記マイクロセルの開口部は、丸くても、正方形でも、矩形でも、六角形でも、任意の他の形状でもよい。上記開口部の間の分割領域は、好ましくは、所望の機械的特性を維持しながら、高いカラー飽和およびコントラストを達成するために小さく維持される。結論として、ハニカム形状の開口部が、例えば、円形の形状より好ましい。
【0083】
反射型電気泳動ディスプレイに関して、各個々のマイクロセルの寸法は、約10~約5×10μm、好ましくは約10~約5×10μmの範囲にあり得る。上記マ
イクロセルの深度は、約3~約100ミクロン、好ましくは約10~約50ミクロンの範囲内にある。開口部対壁比は、約0.05~約100、好ましくは約0.4~約20の範囲にある。開口部の距離は通常、開口部の縁部から縁部まで、約15~約450ミクロン、好ましくは約25~約300ミクロンの範囲にある。
【0084】
上記で注記されるように、電気泳動媒体は、流体の存在を必要とする。大部分の先行技術の電気泳動媒体において、この流体は液体であるが、電気泳動媒体は、ガス流体を使用して生成され得る;例えば、Kitamura, T.,ら, Electrical toner movement for electronic paper-like
display, IDW Japan, 2001, Paper HCS1-1、およびYamaguchi, Y.,ら, Toner display using insulative particles charged triboelectrically, IDW Japan, 2001, Paper AMD4-4)を参照のこと。米国特許第7,321,459号および同第7,236,291号も参照のこと。
【0085】
カプセル型電気泳動媒体は可撓性の基材に容易に適用されることから、電気泳動ディスプレイは、種々の積層手順を使用してアセンブリされ得る。前述の米国特許第6,982,178号は、電気泳動ディスプレイ(カプセル型電気泳動ディスプレイを含む)をアセンブリする方法を記載する。本質的に、この特許は、いわゆるフロントプレーン積層板(FPL)を記載し、これは、順に、光透過性の導電性層;上記導電性層と電気的に接触した状態にある固体電気光学媒体の層;接着層;および剥離シート(release sheet)を含む。代表的には、上記光透過性の導電性層は、上記基材が、直径10インチ(254mm)のドラム(たとえば)の周りに、恒久的に変形することなく手で巻き付けられ得るという意味で、光透過性の基材(これは、好ましくは可撓性である)上に保たれる。用語光透過性の、とは、この特許および本明細書では、そのように指定された層が、十分な光を伝導して、観察者が、その層を通して見ると、電気光学媒体のディスプレイ状態(これは、通常は、導電性層および隣接する基材(存在する場合)を通して見ることになる)の変化を観察できることを意味するために使用される;上記電気光学媒体が、非可視光の波長で反射率の変化を示す場合、用語光透過性の、は、当然のことながら、関連する非可視光の波長の透過に言及すると解釈されるべきである。基材は、代表的には、ポリマーフィルムであり、通常は、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは約2~約10ミル(51~254μm)の範囲の厚みを有する。上記導電性層は、便利なことには、例えば、アルミニウムまたは酸化インジウムスズ(ITO)の薄い金属層または金属酸化物層であるか、または導電性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えば、E.I. du Pont de Nemours & Company(Wilmington DE)のアルミニウム化Mylar(Mylarは登録商標である)として市販されており、このような市販の材料は、フロントプレーン積層板において良好な結果を伴って使用され得る。
【0086】
このようなフロントプレーン積層板を使用する電気光学式ディスプレイのアセンブリは、剥離シートをフロントプレーン積層板から除去し、接着層をバックプレーンに接着させるために有効な条件下で、接着層をバックプレーンに接触させ、それによって、接着層、電気光学媒体の層および導電性層をバックプレーンに固定することによって、もたらされ得る。このプロセスは、大量生産によく適合される。なぜなら上記フロントプレーン積層板は、代表的には、ロール・ツー・ロールコーティング技術を使用して大量生産され得、次いで、特定のバックプレーンとともに使用するために必要とされる任意のサイズの小片へと切断されるからである。
【0087】
米国特許第7,561,324号は、本質的には、前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーン積層板の単純化バージョンである、いわゆる二重剥離シートを記載する。上記二重剥離シートのうちの1つの形態は、2つの接着層(上記接着層のうちの一方または両方は、剥離シートによって覆われている)と間に挟まれた固体電気光学媒体の層を含む。上記二重剥離シートの別の形態は、2つの剥離シートの間に挟まれた固体電気光学媒体の層を含む。上記二重剥離フィルムの両方の形態は、電気光学式ディスプレイを、既に記載されたフロントプレーン積層板からアセンブリするが、2つの別個の積層を含むプロセスに概して類似するプロセスでの使用が意図される;代表的には、第1の積層では、上記二重剥離シートは、フロントサブアセンブリを形成するためにフロント電極に積層され、次いで、第2の積層では、上記フロントサブアセンブリは、最終ディスプレイを形成するためにバックプレーンに積層されるが、これらの2つの積層の順序は、所望であれば、逆にされ得る。
【0088】
米国特許第7,839,564号は、いわゆる反転したフロントプレーン積層板を記載し、これは、前述の米国特許第6,982,178号に記載されるフロントプレーン積層板の別形である。この反転したフロントプレーン積層板は、順に、光透過性の保護層および光透過性の導電性層のうちの少なくとも一方;接着層;固体電気光学媒体の層;ならびに剥離シートを含む。この反転したフロントプレーン積層板は、電気光学層とフロント電極またはフロント基材との間の積層接着剤の層を有する電気光学式ディスプレイを形成するために使用される;第2に、代表的には、接着剤の薄い層は、上記電気光学層とバックプレーンとの間に存在しても存在しなくてもよい。このような電気光学式ディスプレイは、良好な解像度と良好な低温性能とを併せ持ち得る。
【0089】
本発明の種々の実施形態に従う先に記載された電荷制御剤はまた、電子写真トナーを形成するために使用され得る。上記電荷制御剤は、ポリマー結合剤内で混合または分散され(例えば、同時押し出しされ)得、これは次いで、電子写真トナーを形成するためにすり潰される。上記結合剤を形成するにあたって有用なポリマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポリカーボネート、樹脂改変マレイン酸アルキドポリマー(resin-modified maleic alkyd polymer)、ポリアミド、フェノール-ホルムアルデヒドポリマーおよびその種々の誘導体、ポリエステル縮合物、改変されたアルキドポリマー、ならびに交互になったメチレンおよび芳香族ユニットを含む芳香族ポリマー、ポリエステル(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーエステル(例えば、ポリ(アルキルアクリレート))、ならびに種々のスチレン含有ポリマー。
【実施例0090】
本発明の好ましい電気泳動媒体の詳細を示すために、実施例がここで例証によってのみ示される。
【0091】
実施例1
【0092】
電荷制御剤の調製 - 疎水性モノマーの混合物を、補助官能基を有するモノマーの各々と別個に組み合わせた。以下の表1において特定されるヘッド基および補助官能基を提供する各モノマーを、疎水性部分を含むモノマーと混合した。各混合物を、窒素下で、トルエンを使用して水を共沸除去しながら、210℃に加熱した。酸価滴定によって決定されるとおりの反応の完了時に、反応混合物を冷却し、硫酸ジメチル(≦1当量のアミン)を添加し、メチル化反応を、少なくとも12時間の期間にわたって周囲条件下で発生させた。その反応の完了時に、過剰のトルエンを減圧蒸留によって除去し、その生成物を、必要とされる固体含有物に対して指定した溶媒(例えば、Isopar E)と混合した。生成したCCA分子の分子構造を、以下に提供する。
【表1】
【0093】
顔料粒子(黒、シアン、白、および黄)および上記CCAの各々を含む分散物のゼータ電位測定を、Isopar E中に分散させたサンプルに対して、Colloidal Dynamics AcoustoSizer IIおよびZetaProbeを使用して行った。以下の表2に提供される結果に基づいて、上記電荷制御剤に存在する補助官能基のタイプは、顔料粒子のゼータ電位に影響を及ぼした。各サンプルに関して、非環式二級アミド官能基は、エステル官能基より正のゼータ電荷を提供した。エステル官能基は、補助官能基としてのイミド基より正のゼータ電荷を提供した。
【表2】
【0094】
CCA 1124-89、106、および111の分子構造を、式XVIIIによって
表す。CCA 113および117の分子構造を、式XIXによって表す。CCA 116の分子構造を、式XXによって表す。CCA 118の分子構造を、式XXIによって表す。CCA 119の分子構造を、式XXIIによって表す。CCA 120の分子式を、式XXIIIによって表す。CCA 122の分子式を、式XXIVによって表す。
【化20】
【化21】
【化22】
【0095】
実施例2
【0096】
Isopar E中に分散した黄顔料粒子(YP190)および実施例1の1つまたは2つのCCAのいずれかを含む3つの異なる分散物を使用して、ゼータ電位測定を再び行った。第1の分散物サンプルにおいて、補助官能基としてエステル基を有するCCA(CCA 113)を、上記顔料分散物に徐々に添加し、そのゼータ電位を、各添加後に測定した。第2のサンプルにおいて、非環式二級アミド基を有するCCA(CCA 106)を、上記顔料分散物に徐々に添加し、そのゼータ電位を、各添加後に測定した。最後のサンプルにおいて、CCA 113およびCCA 106の50:50ブレンドを徐々に添加し、そのゼータ電位を、各添加後に測定した。上記分散物のゼータ電位を、Colloidal Dynamics AcoustoSizer IIおよびZetaProbeを使用して再び測定した。
【0097】
図1に図示されるように、非環式二級アミド基を含むCCAは、黄顔料を+29mVへと荷電した一方で、エステル官能基を含むCCAは、黄顔料を-32mVへと荷電した。その2つのCCAの50:50ブレンドを利用すると、わずかに正の平均ゼータ電位を生じた。これは、電荷のより大きな制御を提供する能力が、単純にブレンドすることを通じて、上記粒子に付与されたことを示す。
【0098】
実施例3
【0099】
4タイプの顔料粒子(WH93 白、CP207 シアン、YP190 黄、MP170 マゼンタ)および電荷制御剤を含む3つの分散物サンプルを調製した。第1の分散物は、非環式二級アミド基を含む市販のCCAの精製形態を含んだ。第2の分散物は、非環式二級アミド基を含む実施例1のCCAのうちの一方(CCA 106)を含んだ。最後の分散物は、CCA 106および補助官能基としてエステル基を含む実施例1のCCA(CCA 117)のブレンドを含んだ。
【0100】
その調製した分散物をカプセル化し、相当する電気泳動ディスプレイの電気泳動媒体層において使用した。各ディスプレイを電気的に駆動して、種々の光学的状態を生成し、その反射スペクトルを、分光測光計を使用して獲得した。各電気泳動ディスプレイからの反射光のCIE L*、a*およびb*値を測定した。各スペクトルサンプルに関して、その8つのSNAP(Specifications for Newsprint Advertising Production)標準原色の各々からのディスプレイのカラーのL*a*b*空間における最小距離を、ΔE*の単位で計算した。全ての測定した点からの全色域も、抽出した。原色は、赤、緑、青、黄、シアン、マゼンタ、白および黒(R、G、B、Y、C、M、W、およびK)であった。その距離が小さいほど、電気泳動ディスプレイの性能はSNAP目標に近い。これは、上記ディスプレイの光学的状態のより良好なカラー飽和を示す。結果を図2図3、および図4にまとめる。図の実線は、試験した電気泳動ディスプレイの色域に相当するのに対して、破線は、SNAP標準色域に相当する。(a)非環式二級アミド基および四級アンモニウム基をその分子の中に含む電荷制御剤、および(b)エステル基および四級アンモニウム基をその分子の中に含む電荷制御剤、を有する電荷制御剤のブレンドを利用すると、非環式二級アミド基および四級アンモニウム基をその分子の中に有する電荷制御剤のみを含むシステムに、より広い色域が提供されることは、色域プロットから明らかである。具体的には、赤-黄-緑空間におけるカラーの改善を、他のカラー領域における匹敵する性能を維持しながら達成した。
【0101】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書に示され記載されてきたが、このような実施形態が例示によって提供されるに過ぎないことは理解される。多くのバリエーション、変更、および置換は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で記載される発明の具体的実施形態において当業者に想起される。よって、前述の説明は全て、例証の意味で解釈されるべきであり、限定の意味において解釈されるべきではない。
【0102】
前述の特許および特許出願の全ては、それらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0103】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
複数の荷電した粒子および第1の電荷制御剤を含む混合物であって、前記第1の電荷制御剤は、アンモニウムカチオンを含み、および式I、式II、式III、式IV、式V、または式VI;
【化23】

(ここでmは、0、1、2、または3であり;
ここで各Rは、アルキル基、およびアリール基からなる群より独立して選択され;
ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;
ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;
ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そして
ここでHTは、疎水性部分である);
【化24】

(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;
ここでR 、R は、アルキル基、アリール基、および基-[(Z) -X-HT]からなる群より独立して選択され;
ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;
ここで式IIは、少なくとも1個の-[(Z) -X-HT]基を含み;
ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;
ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そして
ここでHTは、疎水性部分である);
【化25】

(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;
ここでR 、R 、およびR は、アルキル基、アリール基、および基-[(Z) -X-HT]からなる群より独立して選択され;
ここで式IIIは、少なくとも1個の-[(Z) -X-HT]基を含み;
ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;
ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;
ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そして
ここでHTは、疎水性部分である);
【化26】

(ここでRは、アルキル基またはアリール基であり;
ここでR 、R 、およびR は、アルキル基、アリール基、および基-[(Z) -X-HT]からなる群より独立して選択され;
ここで式IVは、少なくとも1個の-[(Z) -X-HT]基を含み;
ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;
ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;
ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そして
ここでHTは、疎水性部分である)
【化27】

(ここでR 、およびR 10 は、アルキル基、アリール基、および基-[(Z) -X-HT]からなる群より独立して選択され;
ここで式Vは、少なくとも1個の-[(Z) -X-HT]基を含み;
ここでZは、分枝状アルカンジイル基、および非分枝状アルカンジイル基のうちの一方であり;
ここでnは、20未満または20に等しい整数であり;
ここでXは、非環式二級アミド基以外の非イオン性の極性官能基を含む部分であり;そして
ここでHTは、疎水性部分である)
によって表される化学構造を有する、混合物。
(項2)
前記第1の電荷制御剤の前記非イオン性の極性官能基は、環式および非環式エステル、ヒドロキシエステル、イミド、カルバメート、ウレア、三級アミド、および環式二級アミド基からなる群より選択される、上記項1に記載の混合物。
(項3)
第2の電荷制御剤をさらに含み、ここで前記第2の電荷制御剤は、疎水性部分ならびにアニオン性官能基、非イオン性官能基、およびカチオン性官能基を含む群より選択されるヘッド基を含む、上記項1に記載の混合物。
(項4)
前記第2の電荷制御剤は、アンモニウムカチオン、非環式二級アミド基、および疎水性部分を含む、上記項3に記載の混合物。
(項5)
前記第2の電荷制御剤は、式XV;
【化28】

(ここで各R 21 、R 22 、R 23 は、アルキル基およびアリール基からなる群より独立して選択され;
ここでvは、20未満または20に等しい整数であり;そして
ここでHTは、疎水性部分である)
によって表される、上記項4に記載の混合物。
(項6)
前記疎水性部分HTは、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)、ポリ(リシノール酸)、ポリ(イソブチレン)、および非分枝状または分枝状のアルキル基からなる群より選択される官能基を含み、ここで前記非分枝状または分枝状のアルキル基は、約10~約35個の炭素原子を含む、上記項5に記載の混合物。
(項7)
前記第2の電荷制御剤は、式XVI;
【化29】

(ここでHTは、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)、ポリ(リシノール酸)、ポリ(イソブチレン)、および非分枝状または分枝状のアルキル基からなる群より選択される官能基を含む疎水性部分であり、ここで前記非分枝状または分枝状のアルキル基は、約10~約35個の炭素原子を含む)
によって表される、上記項4に記載の混合物。
(項8)
前記第2の電荷制御剤は、式XVII;
【化30】

(ここでHTは、ポリ(ヒドロキシステアリン酸)、ポリ(リシノール酸)、ポリ(イソブチレン)、および非分枝状または分枝状のアルキル基からなる群より選択される官能基を含む疎水性部分であり、ここで前記非分枝状または分枝状のアルキル基は、約10~約35個の炭素原子を含む)
によって表される、上記項4に記載の混合物。
(項9)
式I~Vの前記疎水性部分HTは、リシノール酸、イソブチレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーから得られる、上記項1に記載の混合物。
(項10)
前記第1の電荷制御剤は、式VII,
【化31】

(ここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する、上記項1に記載の混合物。
(項11)
前記第1の電荷制御剤は、式XI,
【化32】

(ここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する、上記項1に記載の混合物。
(項12)
前記第1の電荷制御剤は、式XII,
【化33】

(ここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する、上記項1に記載の混合物。
(項13)
前記第1の電荷制御剤は、式XIII,
【化34】

(ここでHTは、疎水性部分である)
に従う化学構造を有する、上記項1に記載の混合物。
(項14)
前記第1の電荷制御剤は、1000g/molより大きいかまたは1000g/molに等しい重量平均分子量を有する、上記項1に記載の混合物。
(項15)
ポリマー結合剤および上記項1に記載の混合物を含む、電子写真トナー組成物。
(項16)
流体および上記項1に記載の混合物を含む分散物であって、前記複数の荷電した粒子は、電場の印加の際に、前記流体を通じて動き得る、分散物。
(項17)
光透過性の導電性層、上記項16に従う分散物を含む層、および1つまたは1つより多くの電極を含む基材を含む電気光学式ディスプレイであって、ここで前記分散物を含む前記層は、前記光透過性の導電性層と前記基材との間に配置され、そして前記光透過性の導電性層および前記基材は、前記分散物を含む層に電場を印加するように構成される、電気光学式ディスプレイ。
(項18)
前記分散物を含む前記層は、結合剤および複数のカプセルを含み、ここで各カプセルは、前記分散物を含む、上記項17に記載の電気光学式ディスプレイ。
(項19)
上記項16に記載の分散物を含むフロントプレーン積層板または反転したフロントプレーン積層板。
(項20)
上記項16に記載の分散物を含む、電子書籍リーダー、ポータブルコンピューター、タブレット型コンピューター、携帯電話、スマートカード、標識、時計、棚札、フラッシュドライブ、窓、または窓用フィルム。

図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】