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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057212
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/32 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
H04R1/32 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166585
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 諭
(72)【発明者】
【氏名】有住 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】笠島 崇
(72)【発明者】
【氏名】高木 優
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA02
5D019BB02
5D019BB09
5D019BB25
5D019FF04
(57)【要約】
【課題】ビーム幅を確実に狭くすることが可能な超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】対向する一方主面11及び他方主面12に電極14が設けられた圧電素子10を備える超音波トランスデューサTであって、前記電極14の外縁14Aは、前記一方主面11及び他方主面12の外縁12Aよりも内側に位置し、前記電極14の外縁14Aと前記一方主面11及び他方主面12の外縁12Aとの間の最短の長さ寸法をLとし、駆動周波数での前記圧電素子10の内部の波長をλとしたとき、前記長さ寸法Lと前記波長λとは、0<L<0.50λを満たす。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一方主面及び他方主面に電極が設けられた圧電素子を備える超音波トランスデューサであって、
前記電極の外縁は、前記一方主面及び他方主面の外縁よりも内側に位置し、
前記電極の外縁と前記一方主面及び他方主面の外縁との間の最短の長さ寸法をLとし、
駆動周波数での前記圧電素子の内部の波長をλとしたとき、
前記長さ寸法Lと前記波長λとは、0<L<0.50λを満たす超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記長さ寸法Lと前記波長λとは、0.05λ<Lを満たす請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置に接続される超音波トランスデューサが知られている。下記特許文献1には、圧電素子の表面の電極が、圧電素子の表面の端部に存在しないように形成された超音波トランスデューサが記載されている。これによって、圧電素子の端部の不要な振動を抑制でき、超音波トランスデューサのビーム幅を狭くできる。超音波トランスデューサのビーム幅を狭くすることによって、映像化の解像度を改善したり、焦点領域での音圧や音の強さを増大したりできるという効果を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-268694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成の超音波トランスデューサは、圧電素子の表面において電極が存在しない面積を大きくしすぎると、ビーム幅を狭くできない場合があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ビーム幅を確実に狭くすることが可能な超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波トランスデューサは、対向する一方主面及び他方主面に電極が設けられた圧電素子を備える超音波トランスデューサであって、前記電極の外縁は、前記一方主面及び他方主面の外縁よりも内側に位置し、前記電極の外縁と前記一方主面及び他方主面の外縁との間の最短の長さ寸法をLとし、駆動周波数での前記圧電素子の内部の波長をλとしたとき、前記長さ寸法Lと前記波長λとは、0<L<0.50λを満たすものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ビーム幅を確実に狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例における超音波トランスデューサを示す断面図
図2】シミュレーションのモデルを説明する図
図3】第1モデルのシミュレーションの結果を示す表
図4】第2モデルのシミュレーションの結果を示す表
図5】第3モデルのシミュレーションの結果を示す表
図6】第1モデル、第2モデル及び第3モデルのビーム幅の算出結果を重ねて示すグラフ
図7】第1モデルの音圧の解析結果を示すグラフ
図8】第2モデルの音圧の解析結果を示すグラフ
図9】第3モデルの音圧の解析結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
【0010】
本発明の超音波トランスデューサにおいて、前記長さ寸法Lと前記波長λとは、0.05λ<Lを満たすものとしてもよい。このような構成によれば、高い音圧を得ることができる。
【0011】
<実施例>
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1図9を参照しつつ詳細に説明する。
(超音波トランスデューサTの構成)
まず、本実施例における超音波トランスデューサTの構成を説明する。超音波トランスデューサTは、医療用または産業用の超音波装置に用いられる。超音波トランスデューサTは、使い捨て品(ディスポーザブル品)とすることもできる。超音波トランスデューサTは、超音波を送受信する。超音波トランスデューサTは、図1に示すように、圧電素子10及び音響伝達部材20を備えている。
【0012】
超音波トランスデューサTは、図示しない制御ユニットと電気的に接続される。制御ユニットは、制御回路及び/またはコネクタを有している。コネクタは、外部機器と接続可能である。コネクタの端子は、制御回路に電気的に接続する。コネクタの端子を介して、制御回路から図示しない外部機器へ電気信号が出力され、外部機器から制御回路へ電気信号が入力される。以下、各構成部材において、制御ユニットが接続される側(図1の上側)を上側、その反対側(図1の下側)を下側として説明する。
【0013】
圧電素子10は、略円形の板状をなしている(図2参照)。圧電素子10の一方主面11及び他方主面12は平行である。圧電素子10は、圧電体13及び電極14を有している。圧電体13は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなる。電極14は、圧電素子10の対向する一方主面11及び他方主面12に配置されている。電極14は、金又は銀、銅、錫等の蒸着、メッキ、スパッタリング、焼付け等によって形成されている。一方主面11及び他方主面12のうち一方の電極14は、アース電極であり、他方の電極14は、出力電極である。電極14は、それぞれ図示しない電気接続部材によって制御回路と電気的に接続される。圧電素子10は、電気信号を制御回路に送信し、制御回路からの電気信号を受信する。
【0014】
電極14の外縁14Aは、一方主面11及び他方主面12の外縁11A,12Aと相似な平面視円形状である(図2参照)。電極14の外縁14Aは、一方主面11及び他方主面12の外縁11A,12Aよりも内側に位置する。圧電素子10の外周部15は、電極14が設けられていない部分である。圧電素子10の外周部15は、電極14の外縁14Aと一方主面11及び他方主面12の外縁11A,12Aとの間の部分である。圧電素子10の外周部15は、圧電素子10の全周に連続している。
【0015】
図2に示すように、電極14の外縁14Aと一方主面11及び他方主面12の外縁11A,12Aとの間の最短の長さ寸法をLとし、駆動周波数での圧電素子10の内部の波長をλとしたとき、長さ寸法Lと波長λとは、0<L<0.50λを満たす。長さ寸法Lは、一方主面11及び他方主面12と平行な方向の寸法である。この構成によれば、ビーム幅を確実に狭くすることができる。ビーム幅が狭いとは、一方主面11及び他方主面12の全域に電極14がある場合のビーム幅と比較して狭い、という意味である。また、長さ寸法Lと波長λとは、0.05λ<Lを満たすことが望ましい。この構成によれば、高い音圧を得ることができる。高い音圧とは、一方主面11及び他方主面12の全域に電極14がある場合の音圧と比較して高い、という意味である。この効果は、後述するシミュレーションによって、実証する。本実施例は、長さ寸法L=0(電極14が一方主面11及び他方主面12の全域にある)を含まない。
【0016】
圧電素子10の波長λは、圧電素子10の径方向(分極方向に対して直交する方向)の波長である。分極方向は、本実施例では上下方向である。圧電素子10の波長λは、駆動周波数及び音圧によって決まる。
【0017】
駆動周波数は、本実施例では2MHzである。駆動周波数は、2MHzに限らず、他の周波数とすることができる。駆動周波数は、10MHz以下の他の周波数であってもよく、1MHz以上5MHz以下の周波数であってもよい。
【0018】
音速は、圧電素子10の内部を伝わる音の速さである。音速は、圧電素子10の径方向の音速が好ましいけれども、圧電素子10の分極方向の音速で代替してもよい。音速は、圧電素子10の物性値(密度、圧電定数、コンプライアンスなど)によって算出してもよいし、圧電素子10の物性値を用いたシミュレーションによって算出してもよい。
【0019】
音響伝達部材20は、図1に示すように、圧電素子10の下面側に配置される。音響伝達部材20は、音響整合層21及び音響レンズ22を有している。音響整合層21と音響レンズ22とは、接着剤23によって接合されている。音響整合層21及び音響レンズ22は、上方から見ると、円形状である。音響整合層21及び音響レンズ22は、同軸の位置関係で積層される。
【0020】
音響整合層21は、圧電素子10の音響インピーダンスと、音響レンズ22の音響インピーダンスとの中間の大きさの音響インピーダンスを有する。圧電素子10と音響レンズ22との間に音響整合層21が介在することによって、超音波が音響レンズ22へ効率良く伝播される。音響整合層21と圧電素子10とは、接着剤23によって接合される。
【0021】
音響レンズ22は、音響整合層21の下側に設けられている。音響レンズ22は、超音波を集束する。音響レンズ22は、シリコーンゴムやウレタンゴム、プラスチックなどの樹脂材料で形成されている。音響レンズ22は、有底のケース24の底壁25を構成する。
【0022】
ケース24は、底壁25と周壁26とを有している。ケース24の内部には、圧電素子10及び音響整合層21が収容される。ケース24の周壁26は、底壁25の外縁から上方に垂直に立っている。周壁26は、底壁25の全周に連続している。周壁26は、円筒形状をなしている。
【0023】
(超音波トランスデューサTの製造方法)
次に、超音波トランスデューサTの製造方法の一例を説明する。超音波トランスデューサTは、圧電素子10を製造し、圧電素子10と音響伝達部材20とを接着する工程を経る。圧電素子10の製造は、まず、予め準備した圧電材料(本実施例ではPZT)の粉末をプレス成型し、焼成する。焼成後に、圧電体13の表裏両面を研磨加工して所望の厚さ寸法にする。圧電素子10の厚さ寸法をばらつきなく均一にすることによって、超音波トランスデューサTの特性のバラツキを抑制できる。
【0024】
次に、圧電体13の表裏両面に電極14を形成する。圧電体13の表裏両面に導電性ペーストを印刷し、焼結することによって電極14を形成する。その後、圧電素子10に高い電圧を加えて、分極処理を行う。これによって、圧電素子10が製造される。その後、圧電素子10と音響整合部材とを接着する。
【0025】
(シミュレーション)
次に、本実施例の効果を実証したシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、超音波トランスデューサTのモデルを作成し、規定した条件の電気信号をモデルに送り、超音波ビームの特性を評価した。
【0026】
モデルは、図2に示すように、円板状の圧電素子10及び電極14を有する。モデルの圧電素子10の主成分は、チタン酸ジルコン酸鉛である。電極14は、圧電素子10の一方主面11及び他方主面12と同心の円形状である。一方主面11の電極14の直径と、他方主面12の電極14の直径とは同一である。モデルは、圧電素子10の直径が異なる3つのモデル(第1モデル、第2モデル、及び第3モデル)を用いる。第1モデルの圧電素子10の直径は、18.5mmである。第2モデルの圧電素子10の直径は、16.0mmである。第3モデルの圧電素子10の直径は、13.0mmである。圧電素子10の径方向の音速は4240m/sである。そして、圧電素子10の波長λは2.12mmである。
【0027】
第1モデル、第2モデル及び第3モデルにおいて、一方主面11及び他方主面12の電極14が存在しない面積を変化させて超音波ビームの特性を評価する。具体的には、電極14の外縁14Aと、一方主面11及び他方主面12の外縁11A,12Aとの間の長さ寸法Lを0.05mmずつ変化させる。超音波ビームの特性は、超音波ビームの音圧を抽出し、超音波ビームのビーム幅を算出する。超音波ビームの音圧は、超音波ビーム内において音圧が最大となる点の値である。超音波ビームのビーム幅は、最大音圧から6dB(50%)低下する位置を結んだ線の長さを抽出する。
【0028】
図3図5には、各モデルのシミュレーション結果を示す。図3図5の表には、長さ寸法L(mm)、Lのλ比率、電極14の直径(mm)、ビーム幅(mm)、最大音圧(Pa)を示す。図3図5には、長さ寸法L(mm)が上から下に順に大きくなるように、シミュレーション結果を並べた。Lのλ比率は、長さ寸法Lと波長λとの比率(長さ寸法Lを波長λで除した値)である。図6には、第1モデル、第2モデル及び第3モデルのビーム幅の算出結果のグラフを重ねて示す。図7図9には、各モデルの最大音圧の解析結果のグラフを示す。
【0029】
(1)第1モデルのシミュレーション結果
図6に示すように、第1モデルは、0<L≦1.25mm(0.59λ)でビーム幅を狭くできる。この範囲のビーム幅は、3.45mm以下である。第1モデルは、0.15mm(0.07λ)≦L≦1.05mm(0.50λ)で、さらにビーム幅を狭くできる。この範囲のビーム幅は、3.35mm以下である。この範囲は、0<L<0.50λを満たす。図3の表には、0<L≦0.50λのビーム幅に網掛けをして示す。第1モデルのビーム幅が最も狭いのは、0.40mm(0.19λ)≦L≦0.75mm(0.35λ)である。この範囲のビーム幅は3.25mmである。第1モデルにおいて、1.25mm(0.59λ)<Lは、ビーム幅が広い。
【0030】
図3及び図7に示すように、第1モデルの超音波ビームの音圧は、0.45mm(0.21λ)≦L≦0.60mm(0.28λ)で非常に高い値(50500Pa以上)となる。第1モデルの超音波ビームの音圧は、0.30mm(0.14λ)≦L≦0.70mm(0.33λ)で比較的高い値(50000Pa以上)となる。第1モデルの超音波ビームの音圧は、0.10mm(0.05λ)≦L≦0.95mm(0.45λ)で高い値(48500Pa以上)となる。図3の表には、この範囲の音圧に網掛けをして示す。第1モデルの超音波ビームは、0.05λ<Lにおいて高い音圧を得ることができる。第1モデルの超音波ビームの音圧が最大値となるのは、L=0.50mm(0.24λ)である。図3の表には、音圧の最大値を太枠で囲って示す。このときの超音波ビームの音圧は、50604Paである。第1モデルの超音波ビームの音圧は、0.95mm(0.45λ)<Lで、Lが増すにつれて次第に下がる。
【0031】
(2)第2モデルのシミュレーション結果
図6に示すように、第2モデルは、0.05mm(0.02λ)≦L≦1.10mm(0.52λ)でビーム幅を狭くできる。この範囲のビーム幅は3.65mm以下である。第2モデルは、0.25mm(0.12λ)≦L≦0.80mm(0.38λ)で、ビーム幅をさらに狭くできる。この範囲のビーム幅は3.55mm以下である。この範囲は、0<L<0.50λを満たす。図4の表には、0<L≦0.50λのビーム幅に網掛けをして示す。第2モデルのビーム幅が最小となるのは、L=0.50mm(0.24λ)である。このときの第2モデルのビーム幅は、3.45mmである。第2モデルにおいて、1.10mm(0.52λ)<Lは、ビーム幅が広い。
【0032】
図4及び図8に示すように、第2モデルの超音波ビームの音圧は、0.45mm(0.21λ)≦L≦0.55mm(0.26λ)で非常に高い値(40000Pa以上)となる。第2モデルの超音波ビームの音圧は、0.20mm(0.09λ)≦L≦0.85mm(0.40λ)で比較的高い値(39000Pa以上)となる。第2モデルの超音波ビームの音圧は、0.10mm(0.05λ)≦L≦0.95mm(0.45λ)で高い値(38600Pa以上)となる。図4の表には、この範囲の音圧に網掛けをして示す。第2モデルの超音波ビームは、0.05λ<Lにおいて高い音圧を得ることができる。第2モデルの超音波ビームの音圧が最大値となるのは、L=0.50mm(0.24λ)である。図4の表には、音圧の最大値を太枠で囲って示す。このときの超音波ビームの音圧は、40064Paである。第2モデルの超音波ビームの音圧は、0.95mm(0.45λ)<LでLが増すにつれて次第に下がる。
【0033】
(3)第3モデルのシミュレーション結果
図6に示すように、第3モデルは、0<L≦1.30(0.61λ)でビーム幅を狭くできる。この範囲のビーム幅は3.75mm以下である。第3モデルは、0.15mm(0.07λ)≦L≦1.10mm(0.52λ)で、ビーム幅をより狭くできる。この範囲のビーム幅は、3.55mm以下である。第3モデルは、0.30mm(0.14λ)≦L≦0.95mm(0.45λ)で、ビーム幅をさらに狭くできる。この範囲のビーム幅は3.35mmである。この範囲は、0<L<0.50λを満たす。図5の表には、0<L≦0.50λのビーム幅に網掛けをして示す。第3モデルにおいて、1.30mm(0.61)<Lは、ビーム幅が広い。
【0034】
図5及び図9に示すように、第3モデルの超音波ビームの音圧は、0.45mm(0.21λ)≦L≦0.65mm(0.31λ)で非常に高い値(32500Pa以上)となる。第3モデルの超音波ビームの音圧は、0.15mm(0.07λ)≦L≦1.00mm(0.47λ)で比較的高い値(30100Pa以上)となる。第3モデルの超音波ビームの音圧は、0.10mm(0.05λ)≦L≦1.05mm(0.50λ)で高い値(29600Pa以上)となる。図5の表には、この範囲の音圧に網掛けをして示す。第3モデルの超音波ビームは、0.05λ<Lにおいて高い音圧を得ることができる。第3モデルの超音波ビームの音圧が最大値となるのは、L=0.55mm(0.26λ)である。図5の表には、音圧の最大値を太枠で囲って示す。このときの超音波ビームの音圧は、32722Paである。第3モデルの超音波ビームの音圧は、1.05mm(0.50λ)<LでLが増すにつれて次第に下がる。
【0035】
(4)第1モデル、第2モデル及び第3モデルのシミュレーション結果の比較
図6に示すように、第1モデル、第2モデル及び第3モデルにおいて、長さ寸法Lと波長λとが0<L<0.50λを満たす場合、0.50λ≦Lと比較して、ビーム幅を狭くできる傾向がある。また、第1モデルのビーム幅は、第2モデル及び第3モデルのビーム幅と比べて狭い傾向がある。第2モデルのビーム幅は、第1モデル及び第3モデルのビーム幅と比べて広い傾向がある。
【0036】
図7図9に示すように、第1モデル、第2モデル及び第3モデルの音圧は、0<L<0.50λを満たす場合、0.50λ≦Lと比較して、高い音圧を得られる傾向がある。また、第1モデル、第2モデル及び第3モデルの超音波ビームは、それぞれL=0.50mm(0.24λ)の近傍で最も高い音圧を得ることができる。第1モデル、第2モデル及び第3モデルの超音波ビームの音圧を比較すると、第1モデルの音圧が最も高く、第3モデルの音圧が最も低い。つまり圧電素子10の直径が大きいほど音圧は高い傾向がある。
【0037】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例の超音波トランスデューサTの圧電素子10は、一方主面11の外縁11A及び他方主面12の外縁12Aに沿って面取りしていてもよい。
(2)上記実施例において圧電素子10は、円板状である。これに限らず、圧電素子の形状は変更してもよい。
(3)上記実施例において圧電素子10の主成分は、チタン酸ジルコン酸鉛である。これに限らず、圧電素子の主成分は、変更してもよい。
(4)上記実施例において圧電素子10の波長λは2.12mmである。これに限らず、圧電素子の波長は、圧電素子の主成分や形状などから適宜算出したものを用いてよい。
【符号の説明】
【0038】
L…電極の外縁と一方主面及び他方主面の外縁との間の最短の長さ寸法
T…超音波トランスデューサ
λ…駆動周波数での圧電素子の内部の波長
10…圧電素子
11…一方主面
11A,12A…一方主面及び他方主面の外縁
12…他方主面
14…電極
14A…電極の外縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9