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特開2023-57231ハンド装置およびこのハンド装置を用いた食品群形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057231
(43)【公開日】2023-04-21
(54)【発明の名称】ハンド装置およびこのハンド装置を用いた食品群形成方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20230414BHJP
【FI】
B25J15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166614
(22)【出願日】2021-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000152815
【氏名又は名称】株式会社日本キャリア工業
(72)【発明者】
【氏名】向井 隆裕
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS12
3C707BT05
3C707CV09
3C707CY01
3C707DS02
3C707ES03
3C707ES08
3C707ET08
3C707EV02
3C707EW01
3C707HS12
3C707HS27
3C707HT02
3C707KT01
3C707KT06
3C707NS26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】採取した食品を平面視で略U字状に成形して適正な位置に置くことができるものとする。
【解決手段】開閉作動する左右の指状部と、この左右の指状部の間の空間へ進退する掬い上げ部とを備えたハンド装置であって、左右の指状部のそれぞれに、上下方向に所定の長さを有する第1部材および第2部材を備え、これら左右の第1部材と左右の第2部材とを独立して開閉作動するように構成する。掬い上げ部が左右の指状部の間へ進入し、左右の第1部材および左右の第2部材が閉じる方向へ作動した状態で、掬い上げ部の側端と第1部材の間に形成される第1間隙が、掬い上げ部の側端と第2部材の間に形成される第2間隙よりも小さくなるように設定する。また、第2部材に前後方向の空間部を形成し、この空間部から第1部材の内側縁部が出没するように構成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉作動する左右の指状部と、この左右の指状部の間の空間へ進退する掬い上げ部とを備えたハンド装置であって、前記左右の指状部のそれぞれに、上下方向に所定の長さを有する第1部材および第2部材を備え、これら左右の第1部材と左右の第2部材とを独立して開閉作動するように構成したことを特徴とするハンド装置。
【請求項2】
前記掬い上げ部が左右の指状部の間へ進入し、前記左右の第1部材および左右の第2部材が閉じる方向へ作動した状態で、前記掬い上げ部の側端と第1部材の間に形成される第1間隙が、前記掬い上げ部の側端と第2部材の間に形成される第2間隙よりも小さくなるように設定した請求項1に記載のハンド装置。
【請求項3】
前記各指状部において第1部材と第2部材を近接して配置し、前記第1部材の内側縁部が第2部材の内側縁部に対して出没するように構成した請求項1または請求項2に記載のハンド装置。
【請求項4】
前記第2部材に空間部を形成し、この空間部から前記第1部材の内側縁部が出没するように構成した請求項3に記載のハンド装置。
【請求項5】
前記左右の第1部材および左右の第2部材の夫々の内側縁部を上下方向に形成し、前記左右の第1部材の下端部に、対向側へ延在する係合部を備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハンド装置。
【請求項6】
前記左右の第1部材の開閉と、前記左右の第2部材の開閉と、前記掬い上げ部の進退とを個別に又は連動して行わせる駆動装置を、ハンド装置の上部に配置した請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のハンド装置。
【請求項7】
前記掬い上げ部に、上下方向に所定の角度で傾斜した帯状の搬送部材を備えた請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のハンド装置。
【請求項8】
前記掬い上げ部が左右の指部の間に進入したときに、前記左右の第1部材が前記左右の第2部材よりも先行して閉じる方向へ作動するように構成した請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のハンド装置。
【請求項9】
前記掬い上げ部が左右の指部の間から退避する前に前記左右の第1部材が開き、前記掬い上げ部が左右の指部の間から退避する過程で、または、前記掬い上げ部が左右の指部の間から退避したときに、前記左右の第2部材が開くように構成した請求項8に記載のハンド装置。
【請求項10】
採取位置に位置する食品を、前記ハンド装置に備えた掬い上げ部によって斜め上方へ掬い上げ、前記左右の第1部材と前記左右の第2部材を閉じる方向へ作動させて、前記掬い上げられた食品を平面視で略U字状に変形させた状態で採取する第1工程と、前記食品を採取したハンド装置を、前記採取位置から離間した設定領域上へ移動させる第2工程と、前記設定領域上において、前記左右の第1部材を開く方向へ作動させ、前記第2部材によって食品の端部の開きを規制しながら掬い上げ部によって斜め下方へ降ろすことにより、前記食品を平面視で略U字状のままで前記設定領域内に載置する第3工程を含み、これら第1工程から第3工程までを自動的に反復して実行し、前記設定領域内に複数の食品からなる食品群を形成する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のハンド装置を用いた食品群形成方法。
【請求項11】
所定の厚さに形成された食品を、採取位置にて、前記ハンド装置に備えた掬い上げ部によって斜め上方へ掬い上げ、前記左右の第1部材と左右の第2部材を閉じる方向へ作動させて平面視で略U字状に変形させた状態で採取する第1工程と、前記食品を採取したハンド装置を、前記採取位置から離間した設定領域上へ移動させる第2工程と、前記設定領域上において、前記左右の第1部材を開く方向へ作動させ、前記第2部材によって食品の端部の開きを規制しながら掬い上げ部によって斜め下方へ降ろすことにより、前記食品を平面視で略U字状のままで前記設定領域内の個別の位置に載置する第3工程を含み、これら第1工程から第3工程までを自動的に反復して実行し、前記設定領域内に複数の食品からなる食品群を形成するにあたり、前記食品群を形成する食品の数を各食品の大きさに応じて自動的に変更し、この食品群の重量を設定範囲内に調整する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のハンド装置を用いた食品群形成方法。
【請求項12】
前記第1工程から第3工程までを自動的に反復して実行し、前記設定領域内に複数の食品からなる食品群を形成するにあたり、前記設定領域内に、食品を並べて置くための複数の行と複数の列を設定し、前記各行における列の数、または、前記各行における列の数と各列の間隔を、各行の先頭に置かれる食品の大きさに応じて自動的に変更する請求項11に記載の食品群形成方法。
【請求項13】
採取される前の食品を撮像する撮像手段を備え、この撮像手段による撮像結果から前記食品の大きさを得る請求項11または請求項12に記載の食品群形成方法。
【請求項14】
前記設定領域を食品用のトレーの底面上に設定する請求項11または請求項12または請求項13に記載の食品群形成方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロボットアーム等に備えるハンド装置、および、このハンド装置を用いて食品群を形成する食品群形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば食品加工工場では、生肉等の塊状食品を切断装置によってその先端部から所定間隔で切断し、これによって所定の厚さに形成された複数の食品(薄肉片等)を、手作業によってコンベア上から掬い上げ、食品用のトレーに盛り付ける。
トレーに盛り付けられて群を形成した食品は、このトレーごと包装され、食品の種類、計測された総重量や価格等のラベルが貼られて、商品として出荷される。
近年、このような食品群の形成を自動化する試みがなされており、特許文献1には、コンベア上の食品をロボットアームに備えた吸着ヘッドによって採取して移動させ、これを繰り返して食品群を形成する技術が開示されている。
また、この食品群をハンド装置に備えた一対の把持部材で把持して採取し、トレーに盛り付ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6626411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような技術によって、例えば生肉のような油脂を含有する食品や粘着性を有する食品等を吸着ないし把持して採取した場合、この食品が吸着ヘッドや把持部材に付着する。
このため、吸着や把持を解除しても食品が脱落しにくく、この採取した食品を適正な位置に安定した姿勢で置くことができにくくなる問題がある。
また、特許文献1のような技術は、単に食品を採取して移動させるだけのものであり、採取した食品自体を所定の形状に成形して置くことはできない。
【0005】
また、例えば生肉等の塊状食品は、先端部から後端部まで均一な断面形状ではなく、この断面形状は不規則に変化するため、これを均一な厚さに切断しても、切断された食品の大きさ(表面積等)や重量は均一にならない。
このため、切断された同一数の食品から群を形成した場合、この食品群ごとの重量がばらつく。
このように食品群ごとの重量がばらついた場合、商品としての表示重量帯やこれに伴う表示価格帯等を揃えることが難しくなるため、手作業での重量調整(食品片の追加等)を要することとなり、生産能率が低下するような問題が生じうる。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決し、採取した食品を所定の形状に成形して適正な位置に安定した姿勢で置くことができるハンド装置と、このハンド装置を用いて形成された食品群の重量を設定範囲内に自動的に調整して生産能率を高めることのできる食品群形成方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、開閉作動する左右の指状部と、この左右の指状部の間の空間へ進退する掬い上げ部とを備えたハンド装置であって、前記左右の指状部のそれぞれに、上下方向に所定の長さを有する第1部材および第2部材を備え、これら左右の第1部材と左右の第2部材とを独立して開閉作動するように構成したことを特徴とするハンド装置とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記掬い上げ部が左右の指状部の間へ進入し、前記左右の第1部材および左右の第2部材が閉じる方向へ作動した状態で、前記掬い上げ部の側端と第1部材の間に形成される第1間隙が、前記掬い上げ部の側端と第2部材の間に形成される第2間隙よりも小さくなるように設定した請求項1に記載のハンド装置とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記各指状部において第1部材と第2部材を近接して配置し、前記第1部材の内側縁部が第2部材の内側縁部に対して出没するように構成した請求項1または請求項2に記載のハンド装置とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記第2部材に空間部を形成し、この空間部から前記第1部材の内側縁部が出没するように構成した請求項3に記載のハンド装置とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記左右の第1部材および左右の第2部材の夫々の内側縁部を上下方向に形成し、前記左右の第1部材の下端部に、対向側へ延在する係合部を備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハンド装置とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記左右の第1部材の開閉と、前記左右の第2部材の開閉と、前記掬い上げ部の進退とを個別に又は連動して行わせる駆動装置を、ハンド装置の上部に配置した請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のハンド装置とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記掬い上げ部に、上下方向に所定の角度で傾斜した帯状の搬送部材を備えた請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のハンド装置とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、前記掬い上げ部が左右の指部の間に進入したときに、前記左右の第1部材が前記左右の第2部材よりも先行して閉じる方向へ作動するように構成した請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のハンド装置とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、前記掬い上げ部が左右の指部の間から退避する前に前記左右の第1部材が開き、前記掬い上げ部が左右の指部の間から退避する過程で、または、前記掬い上げ部が左右の指部の間から退避したときに、前記左右の第2部材が開くように構成した請求項8に記載のハンド装置とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、採取位置に位置する食品を、前記ハンド装置に備えた掬い上げ部によって斜め上方へ掬い上げ、前記左右の第1部材と前記左右の第2部材を閉じる方向へ作動させて、前記掬い上げられた食品を平面視で略U字状に変形させた状態で採取する第1工程と、前記食品を採取したハンド装置を、前記採取位置から離間した設定領域上へ移動させる第2工程と、前記設定領域上において、前記左右の第1部材を開く方向へ作動させ、前記第2部材によって食品の端部の開きを規制しながら掬い上げ部によって斜め下方へ降ろすことにより、前記食品を平面視で略U字状のままで前記設定領域内に載置する第3工程を含み、これら第1工程から第3工程までを自動的に反復して実行し、前記設定領域内に複数の食品からなる食品群を形成する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のハンド装置を用いた食品群形成方法とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、所定の厚さに形成された食品を、採取位置にて、前記ハンド装置に備えた掬い上げ部によって斜め上方へ掬い上げ、前記左右の第1部材と左右の第2部材を閉じる方向へ作動させて平面視で略U字状に変形させた状態で採取する第1工程と、前記食品を採取したハンド装置を、前記採取位置から離間した設定領域上へ移動させる第2工程と、前記設定領域上において、前記左右の第1部材を開く方向へ作動させ、前記第2部材によって食品の端部の開きを規制しながら掬い上げ部によって斜め下方へ降ろすことにより、前記食品を平面視で略U字状のままで前記設定領域内の個別の位置に載置する第3工程を含み、これら第1工程から第3工程までを自動的に反復して実行し、前記設定領域内に複数の食品からなる食品群を形成するにあたり、前記食品群を形成する食品の数を各食品の大きさに応じて自動的に変更し、この食品群の重量を設定範囲内に調整する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のハンド装置を用いた食品群形成方法とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、前記第1工程から第3工程までを自動的に反復して実行し、前記設定領域内に複数の食品からなる食品群を形成するにあたり、前記設定領域内に、食品を並べて置くための複数の行と複数の列を設定し、前記各行における列の数、または、前記各行における列の数と各列の間隔を、各行の先頭に置かれる食品の大きさに応じて自動的に変更する請求項11に記載の食品群形成方法とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、採取される前の食品を撮像する撮像手段を備え、この撮像手段による撮像結果から前記食品の大きさを得る請求項11または請求項12に記載の食品群形成方法とする。
【0020】
請求項14に記載の発明は、前記設定領域を食品用のトレーの底面上に設定する請求項11または請求項12または請求項13に記載の食品群形成方法とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のハンド装置によれば、採取した食品を平面視で略U字状に成形して適正な位置に安定した姿勢で置くことができる。
さらに、このハンド装置を用いた食品群形成方法によれば、食品群を形成する食品の数を各食品の大きさに応じて自動的に変更し、この食品群の重量を設定範囲内に調整できるので、手作業での重量調整を少なくして生産能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の食品盛り付け装置(食品群形成方法を実施する装置)の概略側面図。
図2】実施形態の食品盛り付け装置の概略平面図。
図3】(a)は実施形態のハンド装置の説明用側面図、(b)は指状部開閉駆動用のエアシリンダ部の斜視図。
図4】実施形態のハンド装置の説明用平面図。
図5】実施形態の掬い上げ部の説明用正面図。
図6】実施形態のハンド装置における開状態の指状部と掬い上げ部の説明用正面図。
図7】(a)は実施形態のハンド装置における閉状態の指状部と掬い上げ部の説明用正面図、(b)は指状部の先端部(下端部)の拡大図。
図8】実施形態のハンド装置における指状部の説明用左側面図。
図9】(a)は実施形態の掬い上げ部が左右の指状部の間から+Y方向へ退避した状態を示す説明用側面図、(b)は掬い上げ部が-Y方向へ移動して左右の指状部の間に進入した状態を示す説明用側面図。
図10】実施形態の食品盛り付け制御装置のブロック図。
図11】実施形態の食品盛り付け制御のメインフローチャート。
図12】実施形態の食品盛り付け制御のフローチャート。
図13図12に続くフローチャート。
図14】実施形態の制御点の軌道を側面視した説明図。
図15】実施形態の制御点の軌道を平面視した説明図。
図16】食品の採取開始初期の状態を模式的に示す平面図、側面図、正面図であって、(a)は待機状態の説明図、(b)は採取開始状態の説明図、(c)は掬い上げ途中状態の説明図。
図17図16(c)に続き、食品の採取完了までの状態を模式的に示す平面図、側面図、正面図であって、(d)は掬い上げ完了状態の説明図、(e)は食品を抱え込む状態の説明図、(f)は食品を採取し移動を開始する状態の説明図。
図18図17(f)に続き、採取した食品を移動させた後に所定位置へ置くまでの状態を模式的に示す平面図、側面図、正面図であって、(g)は食品の抱え込みを解除した状態の説明図、(h)は食品を所定位置へ置き始めた状態の説明図、(i)は食品を所定の位置へ置いた状態の説明図。
図19図18(i)に続き、食品を所定位置へ置いた後に、この食品から掬い上げ部を退避させた状態を模式的に示す平面図、側面図、正面図であって、(j)は食品を置き終えた状態の説明図、(k)は食品から掬い上げ部を退避させた状態の説明図。
図20】(a)は実施形態における盛り付け領域(設定領域)の説明図、(b)は食品を捻って置いた状態の説明用平面図。
図21】(a)~(c)は、食品が盛り付け領域に行列配置されていく状態を示す説明図。
図22】(a)~(f)は、盛り付け領域での食品の移動状態を示す説明図。
図23】枚数制御状態の一例を示す説明図。
図24】枚数制御状態の別例を示す説明図。
図25】枚数制御状態の別例を示す説明図。
図26】食品(薄肉)の大きさと盛り付け後の食品の総重量の関係を概念的に示す図。
図27】(a)及び(b)は、他の実施形態の移載装置の説明図。
図28】ロボットの防水兼安全カバーを示す説明用の3面図であって、(a)は+Y側から視た側面図、(b)は平面図、(c)は-X側から視た側面図である。
図29】ロボットの支持台の構造を示す説明用の3面図であって、(a)は+Y側から視た側断面図、(b)は平面図、(c)は+X側から視た側断面図である。
図30】防水兼安全カバーを装着したロボットとスライサーの第1搬送装置とを示す説明図であって、(a)は+Y側から視た側面図、(b)は平面図、である。
図31】第1形態において、ロボットをスライサーの第1搬送装置から離間させた状態を示す説明図であって、(a)は+Y側から視た側面図、(b)は平面図である。
図32】第2形態において、ロボットをスライサーの第1搬送装置から離間させた状態を示す説明図であって、(a)は+Y側から視た側面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に詳述する実施形態において、対象とする食品を、チルド状態の塊状肉をスライサー1によってスライスした生の薄肉Eとして説明する。
また、この薄肉Eは、スライサー1によって、切断後に二つに折り畳まれたものとしてもよい。
なお、この食品は、薄肉Eに限定されず、他の食品であってもよく、柔軟性や粘着性を有する食品生地等であってもよい。
【0024】
(第1搬送装置及び第2搬送装置)
図1図2に示すように、スライサー1から切り出された薄肉Eは、そのX軸方向における長さ(幅)が、そのY軸方向における長さよりも長い状態で、第1搬送装置2におけるベルト3の搬送面3a上に載置される。
食品盛り付け装置(本発明の食品群形成方法を実現する装置)4は、第1搬送装置2に対して、その下流側の左側の位置に配置するが、この位置に限定されない。
第1搬送装置2は、従動ローラ群と駆動ローラ(共に図示省略)にわたって無端状のベルト3を巻回したベルトコンベアとする。
【0025】
この第1搬送装置2の終端側には、第1搬送装置2の搬送方向と平面視で直交し、左右方向に延在した第2搬送装置5を配置する。
この第2搬送装置5は、後述するように食品用のトレー6を第1搬送装置2の搬送終端に臨む待機位置へ搬送するものであり、従動スプロケットと駆動スプロケット(共に図示省略)にわたって無端状のチェーン7を巻回したチェーンコンベアとする。
なお、この第2搬送装置5を、トレー6を載置状態で搬送するベルト式のコンベアとしてもよい。
【0026】
また、第1搬送装置2のベルト3は、図10に示すサーボモータ8によって駆動される。
このサーボモータ8の回転位相は、図10に示すエンコーダ9により検出され、この検出値がスライサーコントローラ10に入力される。
このスライサーコントローラ10からの出力によってサーボモータ8を制御し、ベルト3を駆動することにより、このベルト3上の薄肉Eを図2に示す採取位置Tまで搬送する。
ベルト3の駆動によって薄肉Eが採取位置Tまで搬送されると、ベルト3が一時的に停止し、この停止状態において、採取位置Tにある薄肉Eが採取される。
また、第2搬送装置5は、食品盛り付け装置4によって、トレー6への設定数の薄肉Eの盛り付けが完了するまで(食品群の形成が完了するまで)は、このトレー6の搬送を停止している。
そして、トレー6への薄肉Eの盛り付けが完了した後に、第2搬送装置5を駆動してこのトレー6を搬出し、次の空のトレーを上述の待機位置まで送り出すように構成する。
【0027】
(カメラ)
また、図1及び図2に示すように、採取位置Tよりも上流側の上方の位置に、採取位置Tに搬送される前(採取される前)の搬送面3a上の薄肉Eを撮像するカメラ(請求項の「撮像手段」)11を配置する。
【0028】
(ロボットアーム)
図1図2に示すように、食品盛り付け装置4は、ロボットアーム12を備えたロボットである。
このロボットアーム12は、複数の能動関節の軸J1~J6を中心として、全体の旋回および各部の回動を自在とする。
図10に示すように、この能動関節の軸J1~J6の全てに、サーボモータ13~18を備え、これらのサーボモータ13~18のそれぞれに、回転位置検出器としてのエンコーダ19~23Sを備える。
【0029】
また、このロボットアーム12は、基台25、旋回ベース26、ロアアーム27、アッパアーム28、リスト29、及びハンド取付座30から構成する。
基台25は、加工工場のフロアまたはスライサー1側に連結された支持台24上に固定し、この基台25には、鉛直方向の軸J1周りに旋回ベース26を旋回自在に設ける。
この旋回ベース26には、水平方向の軸J2周りにロアアーム27を上下回動自在に軸支し、このロアアーム27の上端には、水平方向の軸J3周りにアッパアーム28の基部28aを上下方回動自在に軸支する。
基部28aの先端に取り付ける回転体28bは、基部28aの軸線に沿う軸J4の周りに回転自在に支持する。なお、軸J4は、軸J3と直交する。
回転体28bの先端には、リスト29を横方向の軸J5周りに回動自在に支持する。この軸J5は、軸J4と直交する。
リスト29の先端には、ハンド取付座30を上下方向の軸J6周りに旋回自在に装着する。
各軸J1~J6に備えたサーボモータ13~18は、後述する食品盛り付け制御装置31のロボットコントローラ34からの出力によって駆動する。
【0030】
(盛り付け領域R)
図2に示すように、第2搬送装置5によって搬送され、第1搬送装置2の終端よりも下流側に離間する位置に待機させたトレー6の底面上に、盛り付け領域(請求項の「設定領域」)Rを設定する。
図20(a)に示すように、この盛り付け領域Rは、Y軸方向長さをr1とし、X軸方向長さをr2とする矩形の領域として設定する。
また、この盛り付け領域Rを設定する位置は、トレー6の底面上以外に、スライサー1周辺の固定位置など、適宜の位置に設定可能とする。
この盛り付け領域R内に複数の薄肉Eが置かれることで、薄肉Eの群(請求項の「食品群」)が形成される。
【0031】
(方向の定義)
なお、上述の第1搬送装置2の搬送方向において、スライサー1側を上流側とし、その反対側を下流側とする。
図において、「-Y」は上流側の方向を示し、「+Y」は下流側の方向を示す。
「+X」はスライサー1側から下流側に向いた状態での右手側の方向を示し、「-X」はスライサー1側から下流側に向いた状態での左手側の方向を示す。
「-Z」は下方向、「+Z」は上方向を示す。
X、Y、Zで示す方向は相互に直交し、それぞれが三次元座標軸となる。
【0032】
(盛り付け領域Rにおける行と列の定義)
上述の盛り付け領域Rにおいて、薄肉Eを盛り付け領域Rの一端から他端まで連続的に盛り付けていく方向を「行」と定義し、この「行」と直交する方向を「列」と定義する。
これにより、薄肉Eが1つの行に全て置かれた後に、次の行頭への盛り付けが開始され、これを反復して、盛り付け領域R内の全ての行および全ての列に、盛り付けを完了することとなる。
なお、本実施形態においては、X軸方向に「行」を設定し、Y軸方向に「列」を設定する。これにより、複数の「行」がY軸方向に間隔をおいて平行に並ぶ。
【0033】
(ハンド装置)
図1に示すように、ハンド取付座30の下面に、採取部32を有するハンド装置33を装着する。
図3(a)、図4に示すように、このハンド装置33は、枠体36を基体として構成する。
この枠体36の上部には、ハンド取付座30の下面に装着するための取付板35を固定する。
【0034】
(掬い上げ部)
図3図4に示すように、枠体36の内側部には、Y軸方向に伸縮作動する電動シリンダ(請求項の「駆動装置」の一つ)37のシリンダ部を固定し、この電動シリンダ37の作動ロッドの先端部に、補強部材38を介して連動ケース39を取り付ける。これにより、電動シリンダ37は、ハンド装置33の上部に配置され、水(スライサー1洗浄時の洗浄水等)や肉屑の影響を受けにくくなる。
この連動ケース39は、その下部を「-Y」方向へ突出形成し、側面視(X軸方向視)でL字状に屈折した形状とする。
この連動ケース39内の上部には、エアシリンダ40のシリンダ部を上下方向に向けて固定し、下方へ突出するピストンの先端部に、L字状に屈折形成したステー41の上壁部を固定する。
このステー41の縦壁部には、上下方向に間隔をおいて上側ピン42と下側ピン43を水平方向姿勢で固定する。
【0035】
また、連動ケース39内において、上側ピン42の上側の部位に第1ローラ44を水平方向の軸心を中心として回転自在に軸支し、下側ピン43に対して下方へ離間した部位に第2ローラ45を水平方向の軸心を中心として回転自在に軸支する。
また、連動ケース39内において、第2ローラ45に対して斜め上側の部位に第3ローラ46を水平方向の軸心を中心として回転自在に軸支する。
連動ケース39の下部における-Y方向への突出端部には、開口部47を形成し、この突出端部の内部における開口部47付近の部位に、上下方向に間隔をおき前後方向に偏倚した上側の第4ローラ48および下側の第5ローラ49を、水平方向の軸心を中心として回転自在に軸支する。
【0036】
また、連動ケース39の突出端部の内側下部における開口部47付近の部位に、支持ステー50の基部を固定しし、この支持ステー50の先端部を開口部47から外方(-Y方向)へ突出させる。
この支持ステー50の先端部を-X側へ屈折させると共に、この屈折端部に-Y側へ下がり傾斜した面を形成し、この面に、幅狭の矩形に形成した案内板51の基部を沿わせて固着する。
これにより、案内板51は、-Y側へ所定の角度で下がり傾斜した姿勢で連動ケース39側に支持される。
【0037】
また、この案内板51の先端部(延在端部)は上面側へ折り返し、この折り返し端部(実質的に案内体51の先端となる)に曲面を形成する。
また、この案内板51の基部の左右両側に、板状のガイド52,52を起立姿勢で固着する。このガイド52,52は案内板51と一体成型してもよい。
そして、案内板51の左右幅と同等の幅に形成した樹脂製のベルト(請求項の「帯状の搬送部材」)53の両端部にループ状の係止部を形成し、一端側の係止部を上側ピン42に係止する。
このベルト53を、第1ローラ44の上側周面、第3ローラ46の下側周面、第4ローラ48の上側周面を経て、案内板51の上面に沿わせて支持した後、この案内板51の先端で下面側へ折り返す。
折り返したベルト53の他端側の部位は、案内板51の下面に略沿わせ、第5ローラ49の上側周面、第2ローラ45の下側周面を経て、その他端側の係止部を下側ピン43に係止する。
なお、上側ピン42、下側ピン43、第1ローラ44、第2ローラ45、第4ローラ48、第5ローラ49、案内板51は、エアシリンダ40によって上側ピン42と下側ピン43が上下動しても、ベルト53の巻き掛け周長が変化しない位置に配置している。
【0038】
以上の構成により、電動シリンダ37が伸縮作動すると、作動ロッドの先端部に支持された連動ケース39が、Y軸方向に往復移動する。
また、エアシリンダ40が伸縮作動すると、上側ピン42と下側ピン43が上下動し、ベルト53が往復移動する。
すなわち、エアシリンダ40の伸長作動によって上側ピン42が下降すると、この上側ピン42に係止されたベルト53の一端側の係止部が下方へ引かれる。
これによって、ベルト53における案内板51の上面に支持されている部位が、この案内板51の上面に沿って斜め上方へ移動する。
このとき、下側ピン43も下降することによって、ベルト53の巻き掛け周長は略変化せず、ベルト53の張力も所定範囲に維持される。
【0039】
一方、エアシリンダ40の短縮作動によって下側ピン43が上昇すると、この下側ピン43に係止されたベルト53の他端側の係止部が上方へ引かれる。
これによって、ベルト53における案内板51の上面に支持されている部位が、この案内板51の上面に沿って斜め下方へ移動する。
このとき、上側ピン42も上昇することによって、ベルト53の巻き掛け周長は略変化せず、ベルト53の張力も所定範囲に維持される。
なお、案内板51の上面に摺接して移動するベルト53の軌道は、左右のガイド52,52によって適正位置に保持される。
以上のようにして、ベルト53における案内板51の上面に支持された部位を主体として、掬い上げ部54が形成される。
【0040】
(指状部)
図3(a)に示すように、上述の枠体36の下面部には、左右の指状部55L,55Rを開閉駆動する第1エアシリンダ(請求項の「駆動装置」の一つ)56および第2エアシリンダ(請求項の「駆動装置」の一つ)57をY軸方向に間隔をおいて固定する。これにより、第1エアシリンダ56と第2エアシリンダ57は、ハンド装置33の上部に配置され、水(スライサー1洗浄時の洗浄水等)や肉屑の影響を受けにくくなる。
図3(b)、図8に示すように、+Y側に配置した第1エアシリンダ56は、シリンダブロック56Aの+Y側の側面に左右方向(X軸方向)のガイドレール56Bを形成する。
このガイドレール56Bに、左右一対のスライダ56L,56Rを摺動自在に嵌合する。
シリンダブロック56Aの内部には、上下のシリンダ孔を平行に穿設し、各シリンダ孔内に個別のピストン(図示省略)を往復摺動自在に内蔵し、各ピストンに左右のスライダ56L,56Rを連結する。
なお、エアの供給によって各ピストンが互いに反対方向に摺動するように構成し、これによって、各ピストンに連結された左右のスライダ56L,56Rは互いに反対方向へ摺動する。
【0041】
一方、-Y側に配置した第2エアシリンダ57は、シリンダブロック57Aの-Y側の側面に左右方向(X軸方向)のガイドレール57Bを形成する。
このガイドレール57Bに、左右一対のスライダ57L,57Rを摺動自在に嵌合する。
シリンダブロック57Aの内部には、上下のシリンダ孔を平行に穿設し、各シリンダ孔内に個別のピストン(図示省略)を往復摺動自在に内蔵し、各ピストンに左右のスライダ57L,57Rを夫々連結する。
そして、エアの供給によって各ピストンが互いに反対方向に摺動するように構成し、これによって、各ピストンに連結された左右のスライダ57L,57Rは互いに反対方向へ摺動する。
なお、左右の指状部55L,55Rには、左右の第1部材58L,58R、および、左右の第2部材59L,59Rを備える。
【0042】
(第1部材)
図6図8に示すように、左右の第1部材58L,58Rは、第1エアシリンダ56側の左右のスライダ56L,56Rに夫々支持する。
すなわち、左右方向に延在する板状の左右の第1支持部材60L,60Rの内側端部を、左右のスライダ56L,56Rの+Y側の面に固定する。
この左右の第1支持部材60L,60Rの外側端部は、下向きに屈折して下方(-Z方向)へ延在した後に、-Y方向へ屈折して延在させる。
このようにして形成された左右の延在端部の下面に、左右方向に延在する第1副支持部材61L,61Rの外側端部を、角棒状の第1補強部材RI,RIを介して夫々固定する。
【0043】
この左右の第1副支持部材61L,61Rの内側端部を下向きに屈折し、下方(-Z方向)へ延在させて左右のインナーフィンガー58IFL,58IFRを形成する。
更に、各インナーフィンガー58IFL,58IFRの下端部から所定の高さに亘る部位を左右幅広に形成する。この左右幅広の部位を第1部材58L,58Rと称する。
この左右の第1部材58L,58Rの内側縁部は、その下端部付近まで略垂直な方向(請求項の「上下方向」)に延在させる。
そして、この左右の第1部材58L,58Rの下端部内側縁は円弧状に内側(対向する側)へ延在させ、左右の係合部58LS,58RSを形成する。
【0044】
(第2部材)
図6図8に示すように、左右の第2部材59L,59Rは、第2エアシリンダ57側の左右のスライダ57L,57Rに夫々支持する。
すなわち、左右方向に延在する板状の左右の第2支持部材62L,62Rの内側端部を、左右のスライダ57L,57Rの-Y側の面に固定する。
この左右の第2支持部材62L,62Rの外側端部は、下向きに屈折して下方(-Z方向)へ延在した後に、+Y方向へ屈折して延在させる。
このようにして形成された左右の延在端部の下面に、左右方向に延在する第2副支持部材63L,63Rの外側端部を、第2補強部材RJ,RJを介して夫々固定する。
【0045】
この左右の第2副支持部材63L,63Rの内側端部を下向きに屈折し、下方(-Z方向)へ延在させて左右のアウターフィンガー59IFL,59IFRを形成する。
更に、各アウターフィンガー59IFL,59IFRの下端部から所定の高さに亘る部位を左右幅広に形成する。この左右幅広の部位を第2部材59L,59Rと称する。
この左右の第2部材59L,59Rの内側縁部は、その下端部まで略垂直な方向(請求項の「上下方向」)に延在させる。
【0046】
図8に示すように、左側の第2副支持部材63Lと左側のアウターフィンガー59IFLを一体的に形成したものを2つ設け、上述の左側の第2補強部材RJの前面と後面(-Y側の面と+Y側の面)に夫々固定する。
これによって、左側の前後の第2部材59L,59Lの間にY軸方向の隙間(請求項の「空間部」)SPが形成される。
また、右側の第2副支持部材63Rと右側のアウターフィンガー59IFRを一体的に形成したものを2つ設け、上述の右側の第2補強部材RJの前面と後面(-Y側の面と+Y側の面)に夫々固定する。
これによって、右側の前後の第2部材59R,59Rの間にもY軸方向の隙間(請求項の「空間部」)SPが形成される。
これら左右の隙間SP,SPに対して、左右の第1部材58L、58Rの夫々を退避および突出(請求項の「出没」)自在に配置する。
【0047】
(採取部)
図3に示すように、掬い上げ部54と左右の指状部55L,55Rから採取部32が形成される。
図9(a)に示す初期状態では、連動ケース39が+Y方向へ離間し、掬い上げ部54の案内板51の上面に支持されたベルト53の先端部は、左右の指状部55L,55Rの間から+Y方向へ退避している。
図9(b)に示すように、電動シリンダ37が短縮作動して連動ケース39が-Y方向へ設定距離だけ移動すると、掬い上げ部54が左右の指状部55L,55Rの間に進入する。
この状態で、掬い上げ部54の先端部(ベルト53における案内板51の上面に支持された部位の-Y側の端部)が、左右の指状部55L,55Rよりも-Y側へ突出する。
図6に、掬い上げ部54が、開いた状態の左右の第1部材58L,58Rおよび左右の第2部材59L,59Rの間へ進入した状態を示す。(図9(b)に対応)
【0048】
また、図7(a)には、掬い上げ部54が左右の第1部材58L,58Rおよび左右の第2部材59L,59Rの間へ進入した状態で、この左右の第1部材58L,58Rおよび左右の第2部材59L,59Rが、夫々のストローク端まで閉じる方向へ移動した状態を示す。
図7(b)に一部拡大して示すように、この状態では、掬い上げ部54の左側端(ベルト53の側端)と、左側の第1部材58Lの内側縁部の間に形成される第1間隙T1が、掬い上げ部54の側端と第2部材59Lの内側縁部の間に形成される第2間隙T2よりも小さくなるように、夫々のストローク端の位置関係を設定する。
図示を省略しているが、掬い上げ部54の右側端と、右側の第1部材58Rおよび右側の第2部材59Rとの各位置関係についても同様に設定する。
この第1間隙T1および第2間隙T2の設定は、上述の左右の指状部55L,55Rを構成する各部材の左右方向の延在長さ、および、第1エアシリンダ56および第2エアシリンダ57の摺動ストローク端の位置設定等によって行う。
【0049】
(食品盛り付け制御装置)
図10に示すように、演算部、記憶部等を備えたロボットコントローラ34に対して、その入力側に、上述のエンコーダ19~23Sと、カメラ11を接続する。
一方、ロボットコントローラ34の出力側には、上述のサーボモータ13~18と、第1エアシリンダ56、第2エアシリンダ57、電動シリンダ37、エアシリンダ40を連繋する。
なお、図示を省略しているが、ロボットコントローラ34の出力側には、各サーボモータ13~18と電動シリンダ37を作動させる個別のリレー回路と、各エアシリンダ40,56,57を作動させる個別のバルブソレノイドが介在している。
なお、各エアシリンダへのエア供給源は、工場内の圧縮空気供給設備、または、スライサー1に備えたエアポンプである。
【0050】
一方、スライサー1側のスライサーコントローラ10には、その入力側に上述のエンコーダ9を接続し、その出力側は上述のサーボモータ8を接続する。
なお、スライサー1の作動制御に関する他のセンサー類およびアクチュエータ類は図示を省略している。
そして、ロボットコントローラ34とスライサーコントローラ10を、通信線SLを介して接続する。
以上により、食品盛り付け制御装置31が構成される。
【0051】
(盛り付け制御)
本発明を実施する盛り付け制御(食品群形成制御)について説明する。
図2に示すように、スライサー1によって塊状肉が所定の厚さに切断され、切断された薄肉Eが第1搬送装置2におけるベルト3の搬送面3a上に順次載置される。この薄肉Eは二つに折り畳まれたものとしてもよい。
この薄肉Eが採取位置Tに到達したときに、スライサーコントローラ10からロボットコントローラ34へ採取開始信号を出力する。
これにより、搬送面3a上に載置された薄肉Eの移動状態と、この搬送面3a上の薄肉Eを採取するタイミングとが同期する。
なお、設定数の薄肉Eを採取しその盛り付けが全て完了したときには、ロボットコントローラ34からスライサーコントローラ10へ盛付完了信号が出力される。
【0052】
以下に述べる「制御点」は、左の第1部材58Lの係合部58LSの先端(内側端)と、右の第1部材58Rの係合部58RSの先端(内側端)との間の中心位置である。
図14図15に示すように、ロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP0~P2~P9、及びP9~P14~P0の各円(または球)の中心位置に移動させる。
しかして、図11図13に盛り付け制御のフローチャートを示し、図16図18に、ハンド装置33によって薄肉Eを採取する状態から、略U字状に変形させた薄肉Eを載置する状態までの過程を示す。
【0053】
(S10A)
図16(a)に示すように、盛り付け制御が開始されると、S10Aにおいて、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を駆動制御し、左右の指状部55L,55Rと掬い上げ部54を、それぞれの初期位置に位置付ける。
左右の指状部55L,55Rの初期位置であるポイントP0は、薄肉Eの採取位置Tから-Y側にオフセット量f(図16(a)参照)だけ偏倚した位置において、搬送面3aから直上方へ所定距離離間した位置に設定される。
このとき、掬い上げ部54は、ポイントP0よりも所定距離+Y方向へ偏倚した位置に配置される。
なお、オフセット量fは、掬い上げ部54の先端が採取位置TからポイントP0の直下位置まで移動する間において、斜め上方へ移動する掬い上げ部54のベルト53によって、採取位置Tに位置する薄肉Eを掬い上げることのできる量に設定されている。
また、このポイントP0において、ハンド装置33の左右の指状部55L,55Rは互いに離間した開放状態となる。
【0054】
すなわち、左右のインナーフィンガー58IFL,58IFRと左右のアウターフィンガー59IFL,59IFRは、夫々最大間隔まで離間した開放状態となる。
この状態において、左右のインナーフィンガー58IFL,58IFRに備えた第1部材58L,58Rは、左右のアウターフィンガー59IFL,59IFRに備えた第2部材59L,59Rの隙間SP,SP内に退避する。
これによって、左右の第1部材58L,58Rの内側縁部は、左右の第2部材59L,59Rの内側縁部に対して外側方へ(隙間SP内へ)退避している。
【0055】
(S12)
S12では、スライサーコントローラ10によって、採取位置Tへ搬送中の薄肉Eの属性の取得を行う。
すなわち、スライサーコントローラ10には、スライサー1側に設けられ、スライス前の塊状肉の先端部の厚さ(高さ)を検出する厚さ(高さ)センサー(図示省略)から、その検出結果が入力される。
スライサー1は、横向き姿勢で供給された塊状肉を、その先端部から上下方向に切断するものであるため、この塊状肉の先端部の厚さ(高さ)は、搬送面3a上に載置される薄肉EのY軸方向での長さに近似した寸法となる。
なお、Y軸方向の中央部で折り畳まれた薄肉Eの場合、この薄肉EのY軸方向での長さは、この厚さ(高さ)の約1/2の長さとなる。
【0056】
スライサーコントローラ10は、このスライス前の塊状肉の先端部の厚さ(高さ)を、ロボットコントローラ34に送る。
また、ロボットコントローラ34では、カメラ11で撮像した薄肉Eの画像を処理し、この結果に基づいて、薄肉Eの大きさ(薄肉EのX軸方向での長さ(幅)と面積)を取得する。
そして、取得された薄肉Eの大きさから、この薄肉Eを大・中(標準)・小・採取不適の4つのクラスに分類する。
【0057】
(採取に適した薄肉Eの採取および盛り付け)
以下では、カメラ11で撮像した薄肉Eが、上述の大・中・小のいずれかのクラスに分類された場合の基本的な処理について説明する。
【0058】
(S14)
S14では、ロボットコントローラ34により、固定値として記憶された複数の所定行数Mのうち、使用するトレー6の大きさに対応する所定行数Mが選択される。
また、塊状肉の厚さ(高さ)及び画像処理に基づく薄肉Eの大きさに基づいて、所定列数Nが自動的に算出される。
これにより、図20(a)に示すように、トレー6の内底面の盛り付け領域R内に、所定行数Mの行と、所定列数Nの列が設定される。
なお、各行および各列は、それぞれが等間隔で設定される。
以下、まず、最初に算出された所定列数Nを全ての行に適用する場合(全ての行にN列(N枚)の薄肉Eを置く場合)の処理について説明する。
なお、この所定列数Nを、行ごとに算出する処理については、後述する。
【0059】
(S16)
S16では、ロボットコントローラ34により、行カウンタのカウント値m及び列カウンタのカウント値nにそれぞれ1をセットし、S18Aの「薄肉盛り付け処理」に移行する。
【0060】
(S18A:薄肉盛り付け処理)
図12図13に示すS200~S234は、S18Aにおける薄肉盛り付け処理のフローチャートである。
図20(a)に示すように、トレー6の内底面は、複数の薄肉配置区画に行列状に区分される。本実施形態では、(m,n)=(1,1),(1,2),(1,3),(1,4),(2,1),(2,2),…,(M,N)のように第1行から列順に薄肉盛り付け処理され、1つの行が終了すると、隣接する次の行において同様の盛り付け処理がなされる。
第1行を意味する「m=1」は、トレー6の内底面において、最も-Y側の位置に配置される。
第1列を意味する「n=1」は、トレー6の内底面において、最も+X側の位置に配置される。
【0061】
(S200)
まず、S200において、ロボットコントローラ34は、「採取目標位置設定処理」、及び、「軌道生成処理」を行う。
【0062】
(採取目標位置設定処理)
カメラ11による撮像結果から得られた薄肉Eの大きさに基づき、薄肉EにおけるX軸方向の中央部位または中央部位の近傍の位置を被支持部B(図2参照)として設定し、この被支持部Bの採取目標位置を算出する。
【0063】
(軌道生成処理)
軌道生成処理は、図14図15に示すポイントP0~P2~P9~P14までの採取から盛り付け終了までの軌道、及びポイントP14からポイントP0へ戻る軌道の生成処理であり、時間毎のハンド装置33の位置および姿勢をロボットコントローラ34によって制御する。
【0064】
(制御点の移動)
図14図15に基づいて各ポイント間における制御点の移動について説明する。
ポイントP0は、制御点の初期位置であり、第1搬送装置2のベルト3の中心線tの直上に固定配置する。
ポイントP1は、ポイントP0とポイントP2の間の経路に含まれる中間点である。
ポイントP2は、左右の指状部55L,55Rの下端および掬い上げ部54のベルト53の下端(先端)が、それぞれ搬送面3aと接触しない程度の僅かな隙間を有する高さに設定する。
ポイントP9のY軸座標値は、ポイントP2から移動するハンド装置33が盛り付け領域R上に達する前の値に設定し、ポイントP9のX軸座標値は、ポイントP2のX軸座標値と同じ値に設定する。
本実施形態では、ポイントP9のZ軸座標値は、ポイントP0のZ軸座標値よりも高い値に設定し、ハンド装置33に支持された薄肉Eがトレー6の周壁6a上を通過する際に、この薄肉Eの両端(垂下端)が周壁6aに干渉しないものとする。
【0065】
ポイントP10~ポイントP14については、説明の便宜上、ポイントP12から先に説明する。
ポイントP12は、前述した薄肉配置区画(m,n)毎に、盛り付け領域Rであるトレー6の内底面上に設定された肉降下点Rmnに対して直上方に配置する。
すなわち、ポイントP12のX軸座標値およびY軸座標値は、肉降下点RmnのX軸座標値およびY軸座標値と一致する。
なお、肉降下点Rmnは、薄肉配置区画(m,n)の中心点である。
後述するS20A、S24A、S28Aによって列n及び/または行mが更新される毎に、ポイントP12のX及びY軸座標値は、更新後の肉降下点RmnのX軸座標値およびY軸座標値となる。
ポイントP12のZ軸座標値は、ポイントP9のZ軸座標値よりも小さく設定し、掬い上げ部54のベルト53の下端(先端)と左右の指状部55L,55Rの下端が、盛り付け領域Rにおけるトレー6の内底面から上方へ離間する高さに設定する。
この高さは、採取部32に支持された薄肉Eが、トレー6の内底面に接触しない高さに設定する。
【0066】
ポイントP12に制御点が到達すると、薄肉Eの支持が解除されて、この薄肉Eがトレー6の内底面に降ろされる。
図15に示すように、ポイントP10のX軸座標値は、ポイントP12のX軸座標値に対して-X側に偏倚するように所定距離d2だけ離間した値に設定する。
ポイントP10のY軸座標値は、ポイントP12のY軸座標値よりも+Y側に偏倚するように所定距離d3だけ偏倚した値に設定する。
ポイントP10のZ軸座標値は、ポイントP12と同じ値に設定する。
なお、ポイントP11は、ポイントP10とポイントP12を結ぶ直線経路上の中間ポイントである。
このポイントP11の三次元座標値は、ポイントP10とポイントP12間を結ぶ直線経路上の座標値とする。
【0067】
制御点がポイントP9からポイントP10まで移動する際にロボットアーム12が姿勢制御され、ハンド装置33は、ポイントP10において、図20(b)に示すようにY軸方向に対して捻り角θ3を有する姿勢となる。
これにより、左右の指状部55L,55Rの並ぶ方向が、X軸に沿う方向から、Y軸方向に対して捻り角θ3で交差する交差線に対して直交する方向に変更される。
この捻りにより、掬い上げ部54は、Y軸方向に対して捻り角θ3分傾いた状態で、電動シリンダ37の短縮作動によって-Y側へ移動する。
【0068】
図21(a)~図21(f)に、薄肉Eが、採取位置Tからトレー6の内底面上の肉降下点Rmnに載置されるまでの状態を平面視で示す。
採取位置Tに到達した薄肉Eの形状を符号Eaで示し、この薄肉Eの肉降下点Rmnでの仮想形状を符号Ebで示す。
また、ポイントP13,P14は、ポイントP12から連続する一直線上に位置する。
図15に示すように、このポイントP13,P14のX軸座標値は、ポイントP12のX軸座標値と同じ値に設定する。
また、このポイントP13,P14のY軸座標値は、ポイントP12のY軸座標値よりも+Y側へ順次間隔をおいて偏倚した値に設定する。
図14に示すように、ポイントP13のZ軸座標値は、ポイントP12のZ軸座標値よりも大きく設定し、ポイントP14のZ軸座標値はさらに大きく設定する。
【0069】
(ハンド装置の姿勢)
本実施形態では、制御点がポイントP9~P10へ移動する時に捻り角θ3の姿勢制御を実行し、P12に移動した際に、捻り角θ3を解消する姿勢制御を実行する。
このポイントP9~P10間を除く、残りのポイント間の軌道では、左右の指状部55L,55Rの並ぶ方向がX軸方向に沿うように姿勢制御が行われる。
【0070】
(S202~S206)
ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP0からポイントP1に移動させる。
【0071】
(S202)
図16(a)における左上の平面視で示す図のように、初期状態におけるハンド装置33において、左右の指状部55L,55RはX軸方向に最大間隔を形成する位置まで開いている。
すなわち、左右の第1部材58L,58Rおよび左右の第2部材59L,59Rが、夫々最大位置まで開き、各第1部材58L,58Rの内側縁部が、各第2部材59L,59Rの内側縁部に対して外側方へ偏倚した位置へ退避している。
このS202において、同図および図21(a)に示すように、第1搬送装置2によって搬送される薄肉Eが採取位置Tに到達したときに、ロボットコントローラ34がスライサーコントローラ10から採取開始信号を受信(取得)する。
これによってS204に移行する。
【0072】
(S204)
S204では、ロボットコントローラ34において、ポイントP2の3次元座標のうち、X軸座標値をS200で得られた採取目標位置におけるX軸座標値に変更する。
なお、採取目標位置のY軸座標値及びZ軸座標値は変更しない。
続いてS206に移行する。
【0073】
(S206)
S206では、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点を開始位置(ポイントP0)からポイントP1へ移動させ、S208へ移行する。
【0074】
(S208)
S208では、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP1からポイントP2へ緩速で下降させる。
これにより、図16(a)における左下の側面視で示す図のように、指状部55L,55Rの下端(第1部材58L,58Rの下端および第2部材59L,59Rの下端)と掬い上げ部54のベルト53の下端(先端)が、それぞれ搬送面3aに接触しない程度の僅かな隙間を残して可及的に近接する。
なお、ベルト53の下端は搬送面3aに軽く接触させてもよい。
続いてS210に移行する。
【0075】
(S210)
S210では、上述のようにして制御点がポイントP2に達した後、ロボットコントローラ34からの出力によって電動シリンダ37を短縮作動させ、掬い上げ部54を初期位置から掬い上げ位置へ(-Y方向へ)移動させる。
すなわち、掬い上げ部54を、第1搬送装置2の下流側(+Y側)から、薄肉EにおけるX軸方向の中間部(被支持部B)付近に向けて上流側(-Y側)へ移動させ、S212へ移行する。
【0076】
(S212)
S212では、掬い上げ部54の移動開始から設定時間経過後に、ロボットコントローラ34からの出力によってエアシリンダ40を伸長作動させ、案内板51上のベルト53を傾斜上がり方向へ移動(正方向移動)させる。
なお、上述の設定時間は、掬い上げ部54が初期位置から採取位置Tに位置する薄肉Eに到達するまでの時間に対して、同じ時間または僅かに短い時間に設定する。
これによって、図16(b)から図16(c)に示すように、傾斜上がり方向へ移動するベルト53によって、採取位置Tに位置する薄肉Eの幅方向(X軸方向)の中央部が斜め上方へ掬い上げられていく。
このとき、ベルト53上に支持されていない薄肉Eの両端部が、自重によって垂れ下がり変形し始める。
なお、掬い上げ部54におけるベルト53の斜め上方への移動速度は、掬い上げ部54の-Y方向への移動速度に対して、同速度または稍々高速に設定するのが好ましい。
このように設定することにより、搬送面3aからベルト53への薄肉Eの引き継ぎが良好に行われ、この薄肉Eに皺が形成されにくくなる。
【0077】
図17(d)に示すように、掬い上げ部54が-Y側へさらに移動すると、ベルト53によって中央部を掬い上げられた薄肉Eの両端部が、左右に配置された+Y側の第2部材59L,59Rの内側縁部に当接し、この当接抵抗によって薄肉Eの姿勢がベルト53の上面に沿う姿勢に修正される。また、左右の第2部材59L,59Rおよび左右の第1部材58L,58Rは、共に開放した状態を維持している。
この状態で、掬い上げ部54が、薄肉Eを掬い上げたまま左右の指状部55L,55Rの間に進入する。
これによって、掬い上げ部54の先端部(ベルト53の先端部)は、左右の指状部55L,55Rの間から-Y側へ突出する。
続いて、S214へ移行する。
【0078】
(S214)
S214では、掬い上げ部54のベルト53の移動を停止させた後、ロボットコントローラ34からの出力によって、第1エアシリンダ56の作動を開始し、左右の指状部55L,55Rにおける左右のインナーフィンガー58IFL,58IFRの内側方(互いに接近する方向)への移動を開始する。
図17(e)に示すように、左右のインナーフィンガー58IFL,58IFRが内側方へ移動開始すると、左右の第1部材58L,58Rの内側縁部が薄肉Eの両端部に当接し、この当接部位を内側方へ押し始める。
このとき、左右の係合部58LS,58RSが薄肉Eの下側へ進入し、この薄肉Eを抱え込み始める。
そしてS216へ移行する。
【0079】
(S216)
S216では、左右のインナーフィンガー58IFL,58IFRが内側方への移動を開始してから設定時間が経過した後に、左右のアウターフィンガー59IFL,59IFRを内側方(互いに接近する方向)へ移動させる。
図17(f)に示すように、薄肉Eの両端部は、左右の第1部材58L,58Rの内側縁部によってベルト53の両側端側へ押圧され、平面視で略U字状(馬蹄形に近似した形状)に変形する。
この状態で、薄肉Eは、接近した左右の係合部58LS,58RSによって掬い上げ部54の下側(ベルト53の下側)へ抱え込まれるようにして支持される。
【0080】
以上のポイントP2におけるハンド装置33によって薄肉Eを支持して採取する工程が、請求項の第1工程に相当する。
なお、このとき、左右の第1部材58L,58Rの内側縁部と掬い上げ部54(ベルト53)の左右側端との間に第1間隙T1,T1が残るため、薄肉Eを強く挟みすぎて損傷させることはない。
また、左右の第2部材59L,59Rの内側縁部も掬い上げ部54の左右側端に接近するが、この左右の第2部材59L,59Rの内側縁部と掬い上げ部54の左右側端との間に、第1間隙T1,T1よりも大きい第2間隙T2,T2が残る。
この第2間隙T2,T2の存在により、左右の第2部材59L,59Rの内側縁部を薄肉Eに積極的に当接させないようにしている。
このようにして薄肉Eを支持した後、S218へ移行する。
【0081】
(S218)
図14図15に示すように、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP2からポイントP9に移動させる。
このポイントP9への制御点の移動時に、薄肉Eの両端が搬送面3aから浮上し、更にトレー6の周壁6aの高さよりも高い位置を維持する。
これによって、制御点が盛り付け領域R上に移動する際に、薄肉Eと周壁6aとの干渉が防止される。
続いて、図13に示すS220に移行する。
【0082】
(S220)
S220では、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点を、ポイントP9からトレー6の周壁6a上方を通過させて、盛り付け領域R上方のポイントP10に移動させる。
これにより、盛り付け領域Rが設定されたトレー6の内底面に対して、左右の指状部55L,55Rの下端及び掬い上げ部54のベルト53の下端(先端)が接近する。
このポイントP10は、薄肉Eが降ろされる肉降下点Rmnが属する第m番目の行よりも下流側(+Y側)に設定する。
このポイントP9からポイントP10への移動中に、ロボットコントローラ34によってロボットアーム12を制御し、ポイントP10ではハンド装置33がY軸方向に対して捻り角θ3を有する姿勢となる。
ポイントP2からポイントP10へのハンド装置33の移動が、請求項の第2工程に相当する。
続いてS222へ移行する。
【0083】
(S222)
S222では、図14図15に示すように、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP10からポイントP11へ移動させる。
このポイントP10からポイントP11への移動中、薄肉Eの両端部は、トレー6の内底面上を引きずられる。
続いてS224へ移行する。
【0084】
(S224)
S224では、制御点がポイントP11への移動を開始してから予め設定された時間が経過した後、ロボットコントローラ34からの出力によって第1エアシリンダ56を逆方向へ作動させる。
これによって、図18(g)に示すように、左右の指状部55L,55Rにおける左右のインナーフィンガー58IFL,58IFRが外側方(互いに離間する方向)へ移動する。
また、薄肉Eに対する左右の第1部材58L,58Rの内側縁部によるベルト53の両側端側への押圧と、左右の係合部58LS,58RSによる抱え込みが解除される。
【0085】
ただし、この時点では、ロボットコントローラ34から第2エアシリンダ57へは出力がなされず、左右のアウターフィンガー59IFL,59IFRは互いに接近した位置に維持される。
これにより、薄肉Eと当接する部材が、左右の第1部材58L,58Rの内側縁部から、左右の第2部材59L,59Rの内側縁部に切り替わる。
すなわち、第1部材58L,58Rの内側縁部に(押圧されることによって)付着していた薄肉Eが、第2部材59L,59Rの内側縁部に持ち替えられるようにして、この第1部材58L,58Rおよび第2部材59L,59Rから離脱される。
続いてS226へ移行する。
【0086】
(S226)
S226では、図14図15に示すように、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP11からポイントP12に移動させる。
この移動中に、ロボットコントローラ34からの出力によってエアシリンダ40を短縮作動させる。
これによって、掬い上げ部54のベルト53が斜め下方(逆方向)へ移動し、図18(h)に示すように、薄肉Eがトレー6の内底面に向けて斜め下方へ降ろされ始める。
【0087】
このとき、左右のアウターフィンガー59IFL,59IFRは互いに接近した位置に維持され、掬い上げ部54の側端と左右の第2部材59L,59Rの内側縁部の間には第2間隙T2,T2が形成されている。
また、第2部材59L,59Rの下端部には、第1部材58L,58Rにおけるような係合部が無い。
このため、図18(i)から図18(j)への状態変化に示すように、斜め下方へ降ろされる薄肉Eの左右両辺部は、左右の第2部材59L,59Rの内側縁部によって略U字状から元の形状への復元を規制されながら(請求項の「食品の端部の開きを規制しながら」)、この第2間隙T2,T2を通過して円滑に降ろされる。
【0088】
降ろされた薄肉Eは、略U字状の形状を保持した状態で、トレー6の内底面に載置される。
また、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、ハンド装置33の捻り角θ3を0にして、左右の指状部55L,55Rが並ぶ方向をX軸方向に戻す。
以上、制御点をポイントP10からポイントP12へ移動させる工程が、請求項の第3工程に相当する。
この後、S228へ移行する。
【0089】
(S228)
S228では、図14図15に示すように、ロボットコントローラ34からの出力によって、ベルト53の移動を停止させた後、ロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP12からポイントP13へ移動させる。
これにより、ハンド装置40は、ポイントP12よりも上方へかつ、+Y方向(下流側)へ移動し、降ろした薄肉Eから離間する。
続いてS230へ移行する。
【0090】
(S230)
S230では、図19(k)に示すように、制御点がポイントP12からの移動を開始したときに、ロボットコントローラ34からの出力によって電動シリンダ37を伸長作動させ、掬い上げ部54を初期位置へ移動させる。
これと共に、ロボットコントローラ34からの出力によって第2エアシリンダ57を逆方向へ作動させ、左右のアウターフィンガー59IFL,59IFRが外側方(互いに離間する方向)へ移動し、左右の第2部材59L,59Rの内側縁部の間隔が拡大する。
続いてS232へ移行する。
【0091】
(S232)
S232では、図14図15に示すように、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP13からさらに下流側(+Y側)であって、ポイントP13よりも高い位置にあるポイントP14に移動させる。
この後、S234へ移行する。
【0092】
(S234)
図14図15に示すように、ロボットコントローラ34からの出力によってロボットアーム12を制御し、制御点をポイントP14から初期位置のポイントP0に移動させる。
以上で、肉降下点Rmnに対する1枚の薄肉Eの盛り付け処理が終了し、図11のフローにおけるS20Aへ移行する。
【0093】
(S20A)
上述のようにして肉降下点Rmnに対する1枚の薄肉Eの盛り付け処理が終了した後、S20Aで列カウンタのカウント値nをインクリメントし、S22Aへ移行する。
【0094】
(S22A)
S22Aでは、ロボットコントローラ34によって、列カウンタのカウント値nが所定列数Nを超えているか否かを判定する。
カウント値nが所定列数Nを超えていない場合には、S18Aにリターンして、現在の行mにおいて、次の列順の肉降下点Rmnに対する薄肉Eの盛り付け処理を行う。
従って、この薄肉Eの盛り付け処理は、1行当たりN回実行されることになる。
カウント値nが、所定列数Nを超えている場合には、S24Aに移行する。
【0095】
(S24A)
S24Aでは、行カウンタのカウント値mをインクリメントし、S26Aへ移行する。
【0096】
(S26A)
S26Aでは、行カウンタのカウント値mが、所定行数Mを超えていない場合には、S28Aに移行し、行カウンタのカウント値mが、所定行数Mを超えている場合には、このフローチャートの処理を一旦終了する。
【0097】
(S28A)
S28Aでは、列カウンタのカウント値nを1にセットし、S18Aにリターンする。
S18Aにリターンすると、次の行の最初の列の肉降下点Rmnに対する薄肉Eの盛り付け処理が開始される。
以上の処理を反復し、所定行数M及び所定列数Nにおける全ての肉降下点Rmnへの薄肉Eの盛り付けを完了する。
【0098】
(3行4列での盛り付け例)
ここで、所定行数Mを「3」とし、かつ、所定列数Nを「4」にして、上記フローチャートを実行した場合の例を、図20(a)および図21の(a)~(c)に示す。
図21(a)は、第1行第1列の肉降下点Rmn(=R11)に、薄肉Eの盛り付けが終了した状態のトレー6を平面視した説明図である。
図21(b)は、第1行の全肉降下点Rmnと、第2行第1列の肉降下点Rmn(=R21)に、薄肉Eの盛り付けが終了した状態のトレー6を平面視した説明図である。
図21(c)は、第1行及び第2行の全肉降下点Rmnと、第3行第1列の肉降下点Rmn(=R31)に、薄肉Eの盛り付けが終了した状態のトレー6を平面視した説明図である。
【0099】
(所定列数Nを行ごとに算出する処理)
以上は、最初に算出された所定列数Nを全ての行に適用する場合(全ての行にN列(N枚)の薄肉Eを置く場合)の処理について説明した。
これに対し、図23図25に示すように、上述のS14における所定列数Nを、各行の先頭に置かれる薄肉Eの大きさに応じ、行ごとに算出する処理としてもよい。
なお、図23図25において、盛り付け領域R内に置かれる薄肉Eの位置を円で示し、この円内に、置かれる順番に番号を付している。
【0100】
(中(標準)クラスの薄肉Eが揃う場合)
S18Aの薄肉盛り付け処理において、図22に示すように盛り付けがなされる。
すなわち、盛り付け領域R内の最も-Y側に位置する第1行において、この第1行の先頭(最も+X側の位置)に置かれる1番目の薄肉Eが「中(標準)」のクラスに分類されたものである場合、この第1行には4列(4枚)の薄肉Eを置くことが決定される。
これに従い、第1行には、1番目の薄肉Eから4番目の薄肉Eの順に(+X側から-X側へ)、4列(4枚)の薄肉Eが等間隔で置かれる。
【0101】
続いて、第1行の+Y側に隣接する第2行への盛り付け処理が開始される。
そして、この第2行の先頭に置かれる5番目の薄肉Eが同じく「中」のクラスに分類されたものである場合、この第2行にも4列(4枚)の薄肉Eを置くことが決定され、5番目の薄肉Eから8番目の薄肉Eの順に、4列(4枚)の薄肉Eが等間隔で置かれる。
【0102】
続いて、第2行の+Y側に隣接する第3行への盛り付け処理が開始される。
そして、この第3行の先頭に置かれる9番目の薄肉Eが同じく「中」のクラスに分類されたものである場合、この第3行にも4列(4枚)の薄肉Eを置くことが決定され、9番目の薄肉Eから12番目の薄肉Eの順に、4列(4枚)の薄肉Eが等間隔で置かれる。
【0103】
以上により、盛り付け領域R内に合計12枚の薄肉Eが置かれ、1つのトレー6への盛り付け処理が終了する。
なお、スライサー1から搬送面3a上への薄肉Eの切り出し位置からして、X軸方向において、「中(標準)」のクラスに分類された薄肉Eの被支持部Bは、搬送面3aのX軸方向の幅の中心位置Xcに略一致する。
このため、採取位置Tにおける制御点の基準位置を、X軸方向へ位置補正する必要はない。
【0104】
(中・小クラスの薄肉Eが混在する場合)
S18Aの薄肉盛り付け処理において、図24に示すように盛り付けがなされる。
すなわち、上述の第1行において、この第1行の先頭に置かれる1番目の薄肉Eが「中」のクラスに分類されたものである場合、この第1行には、上述の場合と同様にして、1番目の薄肉Eから4番目の薄肉Eの順に、4列(4枚)の薄肉Eが置かれる。
【0105】
続いて、第2行への盛り付け処理が開始され、この第2行の先頭に置かれる5番目の薄肉Eが「小」のクラスに分類されたものである場合、この第2行には5列(5枚)の薄肉Eを置くことが決定される。
これに従い、第2行には、5番目の薄肉Eから9番目の薄肉Eの順に、5列(5枚)の薄肉Eが等間隔で置かれる。
【0106】
続いて、第3行への盛り付け処理が開始され、この第3行の先頭に置かれる10番目の薄肉Eも「小」のクラスに分類されたものである場合、この第3行にも5列(5枚)の薄肉Eを置くことが決定され、10番目の薄肉Eから14番目の薄肉Eの順に、5列(5枚の薄肉Eが等間隔で置かれる。
【0107】
以上により、盛り付け領域R内に合計14枚の薄肉Eが置かれ、1つのトレー6への盛り付け処理が終了する。
なお、X軸方向において、「小」のクラスに分類された薄肉Eの被支持部Bは、搬送面3aの中心位置Xcに対して-X側へ距離Xaだけ偏倚するため、採取位置Tにおける制御点の基準位置を、-X側へ距離Xaだけ位置補正する。
【0108】
(中・大クラスの薄肉Eが混在する場合)
S18Aの薄肉盛り付け処理において、図25に示すように盛り付けがなされる。
すなわち、上述の第1行において、この第1行の先頭に置かれる1番目の薄肉Eが「中」のクラスに分類されたものである場合、この第1行には、上述の場合と同様にして、1番目の薄肉Eから4番目の薄肉Eの順に、4列(4枚)の薄肉Eが置かれる。
【0109】
続いて、第2行への盛り付け処理が開始され、この第2行の先頭に置かれる5番目の薄肉Eが「大」のクラスに分類されたものである場合、この第2行には3列(3枚)の薄肉Eを置くことが決定される。
これに従い、第2行には、5番目の薄肉Eから7番目の薄肉Eの順に、3列(3枚)の薄肉Eが等間隔で置かれる。
【0110】
続いて、第3行への盛り付け処理が開始され、この第3行の先頭に置かれる8番目の薄肉Eも「大」のクラスに分類されたものである場合、この第3行にも3列(3枚)の薄肉Eを置くことが決定され、8番目の薄肉Eから10番目の薄肉Eの順に、3列(3枚)の薄肉Eが等間隔で置かれる。
【0111】
以上により、盛り付け領域R内に合計10枚の薄肉Eが置かれ、1つのトレー6への盛り付け処理が終了する。
なお、各行における列数を自動的に変更することにより、各列の間隔も自動的に変更される。
なお、X軸方向において、「大」のクラスに分類された薄肉Eの被支持部Bは、搬送面3aの中心位置Xcに対して+X側へ距離Xbだけ偏倚するため、採取位置Tにおける制御点の基準位置を、+X側へ距離Xbだけ位置補正する。
【0112】
(総重量の収束)
しかして、以上の盛り付け処理における盛り付け枚数の自動調整によって、図26に示すように、トレー6内の盛り付け領域Rに盛り付けられた薄肉Eの総重量(請求項の「食品群の重量」)が設定範囲α内に収まる。
なお、この図26において、枚数制御した場合を示す実線における垂直落下部分(段差部分)は、トレー6に盛り付けられる薄肉Eの枚数が減ったときに現出する。
すなわち、同じ枚数のまま、薄肉Eの大きさが大きくなるに従い、盛り付け後の薄肉Eの総重量は徐々に増加するが、枚数が1枚減少することで、総重量は一旦低下する。
図23図25に示す例では、薄肉Eの盛り付け枚数が、12枚、14枚、10枚と異なるが、このように薄肉Eの大きさに応じて盛り付け枚数を増加または減少させることで、その総重量は設定範囲内に収まる。
また、この薄肉Eの枚数制御によって、隣接する薄肉Eの間隔も自動調整され、盛り付け領域R内に整然と盛り付けられる。
【0113】
(盛り付け領域の設定位置の別実施例)
なお、図27の(a)および(b)に示すように、第2搬送装置5の上側に移載装置300を配置し、この移載装置300側に盛り付け領域R1,R2を設定してもよい。
この移載装置300は、一対の移載ベルト304,304と、一対の受板308,308と、各受板308,308の直下に配置された一対の牽引板306,306とを有する。
両受板308,308は、第2搬送装置5上方の仮想平面に含まれるとともに相互に対向するように配置され、駆動源(図示省略)により、X軸方向(左右方向)に開閉自在に往復駆動される。
これにより、各受板308,308の位置は、両対向縁部が最接近して第2搬送装置5の上方を閉鎖する閉鎖位置S0,S0と、両対向縁部が離間して第2搬送装置5の上方を開放する開放位置E0,E0とに切り替わる。
【0114】
図27(a)において、閉鎖位置S0,S0と開放位置E0,E0は、それぞれ対向縁部の位置を示す。
開放位置E0,E0は、第2搬送装置5上に載置された一対のトレー6,6の上方が開口された位置である。
各受板308,308が開放位置E0,E0に位置したときの位置よりも、X軸方向における外側の位置には、Y軸方向へ延出する一対のフレーム302,302を固定位置に配置する。
各移載ベルト304,304は、各フレーム302,302に一端を連結するとともに他端を各牽引板306,306に連結することにより、中間部を両受板308,308の対向縁部間の間隙を通過させて各受板308,308の対向縁部に巻き掛ける。
各牽引板306,306は、駆動源(図示省略)により、X軸方向(左右方向)に往復移動するように駆動される。
【0115】
盛り付け領域R1,R2は、両受板308,308が閉鎖位置S0,S0に位置し、かつ、両受板308,308のそれぞれの下方にトレー6,6が配置されている状態において、薄肉Eが盛り付けられる移載ベルト304,304の上面に設定する。
この盛り付け領域R1,R2に対して、ロボットコントローラ34からの出力により、薄肉Eを、第1実施形態の盛り付け態様、または第2実施形態の盛り付け態様でそれぞれ盛り付ける。
移載装置300は、移載ベルト304,304の上部を介して盛り付け領域R1,R2上に薄肉Eの集団が盛り付けられると、受板308,308、及び牽引板306,306がX軸方向へ駆動される。
これによって、図27(b)に示すように、受板308,308の対向縁部での移載ベルト304,304の折り返し移動によって、移載ベルト304,304上に盛り付けられた薄肉Eの群が移載ベルト304,304の表面から剥離され、トレー6,6内に落下して収容される。
薄肉Eの群を収容したトレー6,6は、第2搬送装置5によって-X側へ搬出される。
【0116】
(食品盛り付け装置の防水兼安全カバー)
上述の食品盛り付け装置4を囲う防水兼安全カバーを設けてもよい。
従来より、ロボットを備えた食品盛り付け装置は、盛り付け作業時に自律的に動作するため、各部の可動領域に作業者が進入できないようにして安全性を確保する必要がある。
または、作業者が食品盛り付け装置の周囲に設定された所定の領域に進入した場合に、ロボットの動作を自動停止させて安全性を確保する必要がある。
このような技術として、例えば特開平5-96480に開示されたものがある。
すなわち、ロボットの可動領域内に進入した物体を検出するセンサーを備え、このセンサー信号によってロボットを停止させる安全回路を備えたというものである。
しかしながら、ロボットの可動領域を記憶させる必要があること、および、作業者の人体を検出するセンサー等を必要とすることにより、安価に提供することができない。
【0117】
一方、スライサーは、作業によって各部に肉屑や油脂が付着するため、作業終了後に洗浄して衛生的に保つ必要がある。
この洗浄作業は、食品加工工場内で作業者が洗浄水(薬剤混合液)を各部に噴き付けて行う。
このような環境下でロボットを使用する場合、普及型のロボットでは防水性が低いため、スライサー洗浄時に飛散する水からロボットを保護し、電気系統の異常発生を抑える必要がある。
この保護手段として、ロボットにジャケットを装着する必要があり、このジャケットの着脱に手間を要して作業能率が低下する問題がある。
また、防水性の高いロボットが存在するものの、高価なものとなる。
【0118】
以上のような問題を解決するために、以下のような防水兼安全カバーを構成する。
なお、図28図32では、ロボットアーム12からハンド装置33を取り外した状態で示している。
【0119】
図28に示すように、上述の基台25を、加工工場のフロア上に設置された支持台24上に、X軸方向へ移動自在に支持する。
具体的には、図29に示すように、まず、支持台24の上部における-Y側に偏倚した部位と+Y側に偏倚した部位に、X軸方向の2本のレール307,307を固定する。
一方、上部に載置面を形成し、-Y側の端部と+Y側の端部を下方へ向けて屈折させた支持板308Sの下面に、ベアリングを備えた2つの摺動支持部309,309を取り付ける。
この2つの摺動支持部309,309を上述の2本のレール307,307に夫々嵌合させることによって、支持板308Sを支持台24に対してX軸方向へ摺動自在に支持する。
また、支持台24の上部における-X側に偏倚した部位に電動モータ310を固定し、この電動モータ310で駆動される雄螺子軸311を+X方向へ延在させ、この雄螺子軸311を、支持板308Sの下部に取り付けた雌螺子部材312に螺合させる。
そして、この支持板308Sの上面に、ロボット4(食品盛り付け装置)の基台25を固定する。
これにより、電動モータ310を正転駆動すると、ロボット4が支持台24に対して+X方向へ移動し、一方、電動モータ310を逆転駆動すると、ロボット4は支持台24に対して-X方向へ移動する。
【0120】
また、図28に示すように、ロボット4の基台25および旋回ベース26の四側方を、+Y側の壁体313Aと、-Y側の壁体313Bと、+X側の壁体313Cと、-X側の壁体313Dとからなる下部壁体313で囲う。
そして、この下部壁体313を上述の支持板308Sに固定する。
また、この下部壁体313の上縁部に、透視可能な板体を備え、ロボット4の旋回ベース26の上部からロボットアーム12の上端を越える高さを有し、ロボットアーム12の可動領域を三側方から囲う上部壁体314の下縁部を固定する。
この上部壁体314は、+Y側の壁体313Aの上側に位置する壁体314Aと、-Y側の壁体313Bの上側に位置する壁体314Bと、-X側の壁体313Dの上側に位置する壁体314Dとから構成する。
上述の透視可能な板体は、アクリル樹脂や熱可塑性プラスチック(ポリカーボネート等)などの有機ガラスから形成するとよい。
これにより、+X側の壁体313Cの上側は、上部壁体314によって覆われることなく、開放面315が形成される。
【0121】
また、上述の+Y側の壁体314Aにおける+X側の端部と、-Y側の壁体314Bにおける+X側の端部に、二枚の扉体316A,316Bを、垂直方向の軸心を有する上下のヒンジ317を介してそれぞれ開閉自在に取り付ける。
なお、+Y側の壁体314Aに、ロボット4のみを始動させる始動スイッチおよび停止させる停止スイッチと、異常発生時にスライサー1とロボット4の両方を緊急停止させる緊急停止スイッチを配置する。(いずれのスイッチも図示省略している。)
また、これらのスイッチの上側にタッチパネル(図示省略)を配置し、このタッチパネルの一部に「洗浄位置」を表示する。
なお、下部壁体313、上部壁体314、扉体316A,316Bから防水兼安全カバーが形成される。
【0122】
以上の構成により、図30に示すように、二枚の扉体316A,316Bを開放し、電動モータ310をスイッチ(図示省略)の操作によって正転駆動させると、ロボット4が、下部壁体313、上部壁体314、および扉体316A,316Bと一体で+X方向へ移動し、第1搬送装置2の-X側の側部に接近する。
この状態で、スライサー1を始動し、始動スイッチを押してロボット4を始動し、ロボットアーム12の先端を開放面315から第1搬送装置2の搬送面3a上へ延出させて、前述の盛り付け作業を行う。
このとき、ロボットアーム12の可動領域が、上部壁体314によって三側方から囲われているため、ロボット4による盛り付け状態を板体越しに監視する作業者が、ロボットアーム12に接触することがなく、安全性が向上する。
また、二枚の扉体316A,316Bを反転姿勢まで開放し、各扉体316A,316Bの内側面を第1搬送装置2の-X側の側縁に沿う姿勢とすることで、作業者が作動中のロボットアーム12やこの先端部(ハンド装置)に触れにくくなり、さらに安全性が高まる。
【0123】
盛り付け作業が終了した後、上述のタッチパネルに表示されている「洗浄位置」を押すことによって、ロボットコントローラ34から出力がなされ、図31に示すように、ロボットアーム12が第1搬送装置2上から上部壁体314内の格納位置まで折り畳まれるようにして退避した後、停止する。
そして、電動モータ310をスイッチの操作によって逆転駆動し、ロボット4を、下部壁体313、上部壁体314、および扉体316A,316Bと一体で-X方向へ移動させ、第1搬送装置2から-X方向へ離間させる。
この状態において、二枚の扉体316A,316Bを手動操作で閉鎖し、スライサー1の洗浄作業を行う。
このとき、ロボット4は、下部壁体313、上部壁体314、扉体316A,316Bによって囲われているため、洗浄水が飛散してもロボット4にかかることがなく、普及型のロボットであっても、電気系統の異常が発生しにくくなる。
【0124】
図32に示すように、上述の構成に加え、下部壁体313における+X側の壁体313Cの内側に、昇降調節自在な遮蔽板318を設けてもよい。
すなわち、壁体313Cと同等の幅および高さを有した矩形の遮蔽板318を、壁体313Cの内側における+Y側と-Y側の部位にそれぞれ立設した二つのレール(図示省略)に対して、上下方向に摺動自在に支持する。
この遮蔽板318は、下降位置において、その上端縁が壁体313Cの上端縁と同等の高さに至り、上昇位置において、その上端縁が格納状態にあるロボット4の上端と同等の高さに至るように、上下方向の摺動ストロークが設定されている。
なお、遮蔽板318の上昇および下降は手動操作で行う構成としている。
【0125】
これによって、上述のように二枚の扉体316A,316Bを反転姿勢まで開放して第1搬送装置2の-X側の側縁に沿う姿勢としたままで、遮蔽板318を上昇させて第1搬送装置2とロボット4の間を遮蔽することができる。
これにより、スライサー1を洗浄する際に、二枚の扉体316A,31Bを閉鎖操作する必要がなく、洗浄作業を能率よく行うことができる。
なお、上述の二枚の扉体316A,316Bの開閉と、遮蔽板318の昇降を、それぞれ電動モータ等の駆動装置によって行わせる構成とし、上述の電動モータ310の正逆転駆動に連携させる構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0126】
4 食品盛り付け装置(ロボット)
6 トレー
11 カメラ(撮像手段)
33 ハンド装置
37 電動シリンダ(駆動装置)
53 ベルト(帯状の搬送部材)
54 掬い上げ部
55L 左の指状部
55R 右の指状部
56 第1エアシリンダ(駆動装置)
57 第2エアシリンダ(駆動装置)
58L 左の第1部材
58R 右の第1部材
58LS 左の係合部
58RS 右の係合部
58IFL 左のインナーフィンガー
58IFR 右のインナーフィンガー
59L 左の第2部材
59R 右の第2部材
59IFL 左のアウターフィンガー
59IFR 右のアウターフィンガー
E 薄肉(食品)
R 盛り付け領域(設定領域)
SP 隙間(空間部)
T1 第1間隙
T2 第2間隙

図1
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【手続補正書】
【提出日】2022-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6